説明

印刷シート

【課題】プリンタの基材搬送部の汚損を防止して、タグなどのカード基材部に必要な情報を印刷することができる印刷シートを提供する。
【解決手段】印刷シート10は、プリンタに挿入して使用する印刷用のシートであって、基礎基材40と、基礎基材40の片面に設けられた再剥離可能な擬似接着層30と、擬似接着層30を介して基礎基材40に擬似接着され、基礎基材40から剥離自在に設けられたカード基材部21と、カード基材部21を剥離しても基礎基材40に残り、プリンタの基材搬送を補助する補助基材部22とを有したシート状基材20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに挿入して使用する印刷シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、商品の値札などに使用されるタグは、表面に、商品のブランド名や会社名が印刷され、裏面には、商品の価格や識別バーコードなどが印刷されたラベルが貼付されている(例えば、特許文献1)。このようなラベルは、作製の効率化を考慮して、タックシートのタック基材を、ハーフカットにより複数枚に分割して形成されている。
ラベルが必要なときは、このタックシートをプリンタに挿入し、必要な枚数のラベルを印刷し、印刷したラベルを、タックシートから剥がして、上述した値札などのタグの裏面に貼付していた。例えば、1枚のタックシートに、縦6行、横4列、合計24枚のラベルが剥離可能に構成されており、4枚のラベルが必要な場合は、プリンタでタックシート上の4枚のラベルのみに必要事項を印刷する。印刷されたラベルは、タックシートから剥がされ、各タグに貼付される。残った20枚の未使用のラベルは、タックシートに残され、再びラベルが必要になるときまで保管される。
【0003】
ラベルが再び必要となったときは、前述の4枚のラベルが剥がされたタックシートを再びプリンタに挿入して、必要枚数のラベルを印刷する。このようなラベルを形成したタックシートは、プリンタで必要枚数分のラベルを繰り返し印刷できるので、無駄なラベルの作製を回避でき、また、印刷内容の変更などにも応じ易いなどの利点があった。
しかし、上述したように、タックシートが、繰り返しプリンタに挿入されると、ラベルを剥離した後のタックシートの断面部が、プリンタの基材搬送部(ローラ)に接触してしまい、断面部に残存したタックシートの粘着剤が、基材搬送部に付着することがあった。これにより、プリンタの基材搬送部は汚損され、紙詰りやプリンタ自体の不具合を発生させる問題があった。また、印刷したラベルは、使用者によりタグに貼り付けなければならないので、作業の手間を減少させたい旨の要望があった。
【特許文献1】特開2004−309591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、プリンタの基材搬送部の汚損を防止して、タグなどのカード基材部に必要な情報を印刷することができる印刷シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を括弧内に付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、プリンタ(100)に挿入して使用する印刷シート(10)であって、基礎基材(40)と、前記基礎基材(40)の片面に設けられた再剥離可能な擬似接着層(30)と、前記擬似接着層(30)を介して前記基礎基材(40)に擬似接着され、前記基礎基材(40)から剥離自在に設けられたカード基材部(21)と、前記カード基材部(21)を剥離しても前記基礎基材(40)に残り、前記プリンタ(100)の基材搬送を補助する補助基材部(22)とを有したシート状基材(20)とを備える印刷シート(10)である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の印刷シート(10−2)において、前記補助基材部(22)は、前記プリンタ(100)の基材搬送方向と略平行した方向に沿って、2本以上設けられることを特徴とする印刷シート(10−2)である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の印刷シート(10)において、前記補助基材部(22)は、前記カード基材部(21)の一部又は全部を囲むようにして、格子状に設けられることを特徴とする印刷シート(10)である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の印刷シート(10)において、前記補助基材部(22)の幅寸法は、当該印刷シートがA4サイズであるときに、1〜10mmの範囲で形成されることを特徴とする印刷シート(10)である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の印刷シート(10)において、前記カード基材部(21)は、前記擬似接着層(30)と擬似接着される面に、情報表示印刷層(21−1)を備えることを特徴とする印刷シート(10)である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の印刷シート(10)において、前記シート状基材(20)及び前記基礎基材(40)は、各基材(20、40)の目の方向が前記プリンタ(100)の基材搬送方向に略平行であることを特徴とする印刷シート(10)である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
(1)印刷シートは、カード基材部及び補助基材部を有したシート状基材に、擬似接着層を介して基礎基材を貼り合せているので、カード基材部が剥がされ、擬似接着層が表出した印刷シートをプリンタに挿入したとしても、補助基材部により、プリンタの基材搬送部と表出した擬似接着層との接触を減らすことができ、基材搬送部の汚損を減少することができる。また、カード基材部を剥離した後の擬似接着層は、粘着性を有さないので、仮に基材搬送部に接触したとしても汚損の程度を軽減することができる。
(2)補助基材部は、プリンタの基材搬送方向と平行した方向に沿って、2本以上設けられているので、プリンタの基材搬送部による印刷シートの搬送を安定させることができる。
【0012】
(3)補助基材部は、カード基材部の一部又は全部を囲むようにして、格子状に設けられているので、プリンタへの印刷シートの挿入方向は、縦横の2方向に対応させることができる。
(4)補助基材部の幅寸法は、1〜10mmの範囲、好ましくは3〜8mmの範囲で形成されているので、プリンタの基材搬送部の搬送力を十分に印刷シートへ伝達することができ、プリンタの安定した基材搬送を実現することができる。
【0013】
(5)カード基材部は、擬似接着層と擬似接着される面に、情報表示印刷層を備えているので、印刷シートをプリンタにより印刷することで、カード基材部の両面に情報を記載することができ、また、ラベル貼りなどの作業をなくし、カード基材部の作製効率に向上させることができる。
(6)シート状基材及び基礎基材は、各基材の目の方向が前記プリンタの基材搬送方向に平行であるので、印刷シートをプリンタに挿入したときに、プリンタのロールによる印刷シートの搬送を、より円滑にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、プリンタの基材搬送部の汚損を防止して、タグなどのカード基材部に必要な情報を印刷することができる印刷シートを提供するという目的を、カード基材部及び補助基材部を有したシート状基材に、擬似接着層を介して基礎基材を擬似接着することにより実現する。
【実施例】
【0015】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による実施例の印刷シートの詳細を示す図である。なお、図1(B)は、図1(A)のA−A断面の断面図であり、図1(C)は、値札タグの擬似接着面を示す図である。また、図2は、印刷シートの印刷から、値札タグの剥離までの形態を示す図であり、図2(A)に、印刷シートをプリンタに配置したときの図を示し、図2(B)に、印刷された印刷シートを示し、図2(C)に、商品に取り付けた値札タグを示す。さらに、図3は、値札タグを、再度、印刷するときの形態を示す図であり、図3(A)に、ローラに搬送される印刷シートを示し、図3(B)に、印刷された印刷シートを示す。
【0016】
印刷シート10は、商品110に取り付ける値札タグ21を複数枚、同時にプリンタ100により印刷することができるA4サイズ(297mm×210mm)のシートであり(図2参照)、図1に示すように、シート状基材20を、擬似接着層30を介して基礎基材40に剥離可能に擬似接着する構成である。
シート状基材20は、切り込み線23により、縦6行、横4列、合計24枚の値札タグ(カード基材部)21と、補助基材部22とに分割される値札の台紙である。
値札タグ21は、商品110の価格を表示するタグであり、図1(C)に示すように、擬似接着層30と擬似接着される面(裏面)に、予め、商品110のブランド表示24(情報表示印刷層)が印刷されている。また、値札タグ21の表面には、プリンタ100によって、商品110に応じた価格及び識別バーコード25が印刷される(図2(B)参照)。
【0017】
補助基材部22は、各値札タグ21の間に設けられた格子状の幅5mmの余白部である。この補助基材部22を基礎基材40から剥がさずに残しておくことで、印刷シート10がプリンタ100に挿入されたときに、値札タグ21の有無に関係なく、プリンタ100の基材搬送部であるローラ101(図3参照)の回転力を、印刷シート10に安定して伝達させて、印刷シート10を搬送することができる。
【0018】
ここで、本実施例のように印刷シート10がA4サイズである場合、補助基材部22の幅寸法は、1〜10mmの範囲、好ましくは3〜8mmの範囲で形成されることによって、印刷シート10を安定してプリンタ内で搬送することができる。仮に、補助基材部22の幅寸法が前記寸法範囲から外れた場合、例えば、幅寸法が1mm以下に設定されたとき、ローラ101の回転力を安定して印刷シート10へ伝達させることができなくなり、ローラ101に対する擬似接着層30の接着剤の付着を完全に防止できなくなったり、また、幅寸法が10mm以上に設定されたときは、幅寸法が上記範囲内であるときに比べ接着剤の付着防止効果の差がほとんど無く、値札タグ21の活用面積を減少させてしまったりする問題が生じる。
【0019】
切り込み線23は、値札タグ21の周囲に設けられたハーフカットである。
擬似接着層30は、酢酸ビニル樹脂又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を主体とするエマルション型接着剤と、剥離層とを順に、基礎基材40上に積層して、厚さ約10μmで形成し、擬似的な接着特性を持たせた接着層である。
基礎基材40は、表面に擬似接着層30が設けられ、剥離可能にシート状基材20に接着される。
プリンタ100は、印刷シート10の値札タグ21に、価格及び識別バーコード25を印刷する印刷機である。
ローラ101は、印刷シート10をプリンタ100内に搬送する基材搬送部である。
【0020】
次に、印刷シート10の使用方法について説明する。
商品110に取り付ける値札タグ21が4枚必要な場合には、まず、図2(A)に示すように、印刷シート10をプリンタ100に配置して、印刷シート10の所定の値札タグ21に、商品110の価格及び識別バーコード25を印刷するように、PC端末(不図示)からプリンタ100に指令を出す。プリンタ100は指令に応じて、印刷シート10を印刷し(矢印B)、図2(B)に示すように、印刷シート10の最下行の4枚の値札タグ21に、商品110の価格(¥25,000)及び識別バーコード25を印刷する。
印刷を終えたら、印刷シート10から印刷された値札タグ21を剥がして(矢印C)、図2(C)に示すように、値札タグ21に孔を設けて、値札タグ21を所定の商品110に取り付ける。なお、印刷シート10には、20枚の未印刷の値札タグ21が残っている。
【0021】
値札タグ21がさらに必要になったときは、上述した値札タグ21の印刷で使用した印刷シート10を、再びプリンタ100に配置して、その印刷シート10に残った未印刷の値札タグ21の所定の値札タグ21に、価格及び識別バーコード25を印刷する。このとき、印刷シート10の最下行の値札タグ21は、前述したように剥がされているが、図3(A)に示すように、ローラ101が回転(矢印D)することにより、印刷シート10は、補助基材部22を介してプリンタ100の内部へと安定して搬送される(矢印E)。なお、印刷シート10の値札タグ21が剥がされた部位には、擬似接着層30が残っているが、値札タグ21の周囲に補助基材部22が設けられているので、ローラ101は擬似接着層30に接触することなく、印刷シート10の搬送及び印刷を行なうことができる。
新たに印刷された値札タグ21は、図3(B)に示すように、印刷シート10から剥がされて(矢印F)、商品110に取り付けられる。
なお、印刷シート10には、15枚の未印刷の値札タグ21が残っているので、次回の印刷まで保管しておく。
【0022】
以上より、本実施例の印刷シートには以下のような効果がある。
(1)印刷シート10は、値札タグ21及び補助基材部22を有したシート状基材20に、擬似接着層30を介して基礎基材40を貼り合せているので、値札タグ21が剥がされ、擬似接着層30が表出した印刷シート10をプリンタ100に挿入したとしても、補助基材部22により、プリンタ100のローラ101と表出した擬似接着層30との接触を減らすことができ、ローラ101の汚損を減少することができる。また、値札タグ21を剥離した後の擬似接着層30は、粘着性を有さないので、仮にローラ101に接触したとしても汚損の程度を軽減することができる。
【0023】
(2)補助基材部22は、値札タグ21の一部又は全部を囲むようにして、格子状に設けられているので、プリンタ100のローラ101による印刷シート10の搬送を安定させることができ、また、プリンタ100への印刷シート10の挿入方向は、縦横の2方向に対応させることができる。
(3)補助基材部22の幅寸法は、5mmで形成されているので、ローラ101の回転を十分に印刷シート10へ伝達することができ、プリンタ100の安定した基材搬送を実現することができる。
(4)値札タグ21は、擬似接着層30と擬似接着される面(裏面)に、商品110のブランド表示24が印刷されているので、表面に、価格及び識別バーコード25を印刷することにより、値札タグ21の両面を有効に使用することができ、また、ラベル貼りなどの作業をなくし、値札タグ21の作製効率に向上させることができる。
【0024】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)実施例では、補助基材部22は、値札タグ21の一部又は全部を囲むようにして、格子状に設けられていたが、図4に示すように、プリンタ100の基材搬送方向(矢印G)と平行した方向に、縞状に設けてもよい。ただし、この場合は、ローラ101による印刷シート10−2の搬送を安定させるために、縞状の補助基材部22を2本以上設ける必要があり、また、プリンタ100への挿入は、縞状の補助基材部22の長手と、基材搬送方向とを平行にする必要がある。
【0025】
(2)印刷シート10は、シート状基材20及び基礎基材40の目の方向を、プリンタ100の基材搬送方向に平行にしてもよい。シート状基材20及び基礎基材40の目の方向を、プリンタ100の基材搬送方向に平行にすることにより、印刷シート10に適当な強度(コシ)を持たせてローラ101に沿わせることができるので、印刷シート10の搬送をより円滑にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による実施例の印刷シートを示す図である。
【図2】本発明による実施例の印刷シートの印刷から、値札タグの剥離までの形態を示す図である。
【図3】本発明による実施例の印刷シートを再度、印刷するときの形態を示す図である。
【図4】本発明による実施例の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
10 印刷シート
20 シート状基材
21 値札タグ
22 補助基材部
30 擬似接着層
40 基礎基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタに挿入して使用する印刷シートであって、
基礎基材と、
前記基礎基材の片面に設けられた再剥離可能な擬似接着層と、
前記擬似接着層を介して前記基礎基材に擬似接着され、前記基礎基材から剥離自在に設けられたカード基材部と、前記カード基材部を剥離しても前記基礎基材に残り、前記プリンタの基材搬送を補助する補助基材部とを有したシート状基材と、
を備える印刷シート。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷シートにおいて、
前記補助基材部は、前記プリンタの基材搬送方向と略平行した方向に沿って、2本以上設けられること、
を特徴とする印刷シート。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷シートにおいて、
前記補助基材部は、前記カード基材部の一部又は全部を囲むようにして、格子状に設けられること、
を特徴とする印刷シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の印刷シートにおいて、
前記補助基材部の幅寸法は、当該印刷シートがA4サイズであるときに、1〜10mmの範囲で形成されること、
を特徴とする印刷シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の印刷シートにおいて、
前記カード基材部は、前記擬似接着層と擬似接着される面に、情報表示印刷層を備えること、
を特徴とする印刷シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の印刷シートにおいて、
前記シート状基材及び前記基礎基材は、各基材の目の方向が前記プリンタの基材搬送方向に略平行であること、
を特徴とする印刷シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−15030(P2009−15030A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176995(P2007−176995)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】