説明

印刷不良警告画像及び印刷物

【課題】両面印刷機において印刷された印刷画像の中に発生する印刷不良を警告する、印刷不良警告画像を提供する。
【解決手段】両面印刷機において印刷された印刷画像の中に発生する白抜け状の印刷不良の発生を警告する画像であって、オモテまたはウラの画像面に網点面積率20〜80%相当の第1画像部、該第1画像部の反対面のウラまたはオモテの画像面に網点面積率40〜100%相当の第2画像部を配置し、オモテ・ウラ画像面において20%以上の網点面積率差を生じさせるように構成したことを特徴とする印刷不良警告画像である。目標とする印刷画像の、オモテ及びウラ画像面の網点面積率差よりも10%以上網点面積率差を大きくすることが好ましい。また、前記印刷不良警告画像を印刷したことを特徴とした印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面印刷機において印刷された印刷画像の中に発生する印刷不良の発生を警告する画像に関する。
【背景技術】
【0002】
巻き取り紙に印刷をするオフセット輪転印刷機では、ブランケット胴に紙が取られる”デラミネーション”と呼ばれる現象が発生することがある。これは、上下胴ブランケットの網点面積率のアンバランス、インキ粘着性の高さ、印刷機の張力不足などの場合に発生し易く、この現象に起因して印刷画像の白抜けやダブリなどの印刷不良が発生する。
【0003】
このデラミネーションについて、図3を用いて説明する。図3は、正常時とデラミネーション発生時の印刷用紙の走行性を示す説明図である。印刷用紙3は右から左へと走行しており、上流側の下胴ブランケット6と上胴ブランケット7の間を通過しつつ該ブランケット上のインキが印刷用紙3に転移し、所定の色の印刷画像を印刷用紙のウラ面及びオモテ面に印刷した後、図示していない下流側の上下胴ブランケットに至り、そこで他の色の印刷画像が印刷される。
【0004】
ここで、下胴ブランケット6に比べて上胴ブランケット7が印刷用紙3の走行方向に進んでいるのは、スタッカード量と呼ばれるもので、印刷用紙3をブランケットへの巻き付き量Xのように常時約5°程度巻き付けることにより、印刷用紙3が上下胴ブランケットの間を通過する際の張力変動を抑えるためのものである。従って、正常な印刷用紙の走行性は、実線のように上下胴ブランケットに約5°程度巻き付いて走行しており、この状態の走行性を維持することにより正常な印刷が可能となる。
【0005】
それに対し、点線Yや点線Zで示されているのは、デラミネーション発生時の印刷用紙の走行状態であり、下胴ブランケット6の網点面積率が大きく(インキ盛り量が多い)、上胴ブランケット7の網点面積率が小さい(インキ盛り量が少ない)場合には、下胴ブランケット6側に印刷用紙3が引っ張られるため、点線のデラミネーション発生時の走行状態Yのようなデラミネーションが発生し、その反対の場合は上胴ブランケット7側に印刷用紙3が引っ張られるため、点線のデラミネーション発生時の走行状態Zのようなデラミネーションが発生する。
【0006】
このデラミネーションに起因する印刷不良の中で、図4における白抜け状の印刷不良が発生した印刷画像8に示すような印刷不良が発生する機構について、図5を用いて説明する。図5は、デラミネーション発生時の印刷用紙へのインキ転移性を示す説明図である。図5において、下胴ブランケット6の網点面積率が大きく(下胴インキ9の盛り量が多い)、上胴ブランケット7の網点面積率が小さい(上胴インキ10の盛り量が少ない)場合、下胴ブランケット6側は印刷用紙3がブランケットへの巻き付き量Xのように正常に巻き付けられるのに対して、上胴ブランケット7側は印刷用紙3が下胴ブランケット6側に引っ張られ、点線のデラミネーション発生時の走行状態Yのようなデラミネーションが発生し、正常な巻き付き量が保てなくなる。その結果、上胴ブランケット7から印刷用紙3へのインキ転移が不十分となり、その状態で印刷を進めることにより上胴ブランケット7に微量なインキ残り11が生じ、最終的にはインキ残り11が堆積、乾燥される。
【0007】
図6は、上胴ブランケット7にインキ残りが堆積され、乾燥されてインキ皮膜部12が形成された状態を示す説明図である。図6で示されるように、上胴ブランケット7にインキ残りに起因するインキ皮膜部12が形成されると、インキ皮膜部12は周辺部と比べてインキ着肉性に劣るため、白抜け状の印刷不良が発生すると考えられている。
【0008】
また、一旦白抜け状の印刷不良が発生すると、該インキ皮膜部12を洗浄しなければ白抜け状の印刷不良は解消できないため、印刷の作業効率は悪くなる。さらには、白抜け状の印刷不良が発生すると印刷物の商品価値が損なわれるため、印刷会社からは最も嫌われている印刷不良の一つと言われている。
【0009】
従来より、このようなデラミネーションに起因する印刷不良を防止するため、上下胴ブランケットの張力差を少なくさせることを目的として、インキに添加剤を含有させてインキの粘度を低下させたり、印刷機の張力をアップさせたり、あるいはデラミネーション自体を防止することを目的として、エアーノズル装置の設置、などの対策が採用されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、インキ中への添加剤含有では色調などの印刷条件が変わること、印刷機の張力を高めると紙切れを起こすこと、また、デラミネーション自体を防止させるためにエアーノズル装置などの新たな設備の設置を必要とし、さらに印刷オペレーターの作業スペースも狭くなる、などの問題点があった。
【0011】
さらには、目標とする印刷画像の中に白抜け状の印刷不良が発生することを、印刷中に視認、警告できる印刷不良警告画像が有効であるのだが、今まではそのようなものは無かった。
【特許文献1】特開平10−211687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記の問題を解決することにあり、両面印刷機において印刷された印刷画像の中に発生する白抜け状の印刷不良の発生を警告する画像を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記に鑑み鋭意研究した結果、本発明の印刷不良警告画像を発明するに至った。
【0014】
すなわち、両面印刷機において印刷された印刷画像の中に発生する白抜け状の印刷不良の発生を警告する画像であって、オモテまたはウラの画像面に網点面積率20〜80%相当の第1画像部を配置し、該第1画像部の反対面のウラまたはオモテの画像面に網点面積率40〜100%相当の第2画像部を配置し、オモテ及びウラの画像面において20%以上の網点面積率差を生じさせるように構成したことを特徴とする印刷不良警告画像である。
【0015】
本発明において、上記印刷不良警告画像が、目標とする印刷画像のオモテ及びウラの画像面の網点面積率差よりも10%以上網点面積率差を大きくしたことを特徴とする。
【0016】
本発明において、上記印刷不良警告画像を印刷したことを特徴とした印刷物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明における印刷不良警告画像により、両面印刷機において印刷された印刷画像の中に発生する白抜け状の印刷不良の発生を警告できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の印刷不良警告画像について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の印刷不良警告画像の一実施態様を示す構成図である。該構成図は、オモテまたはウラの画像面である網点面積率20〜80%相当の第1画像部1と、該第1画像部の反対面のウラまたはオモテの画像面である網点面積率40〜100%相当の第2画像部2が、印刷用紙3を基準に展開している態様を示している。
【0020】
該第1画像部1及び該第2画像部2を使用して両面印刷を行うと、印刷開始時は問題無く印刷が出来るものの、印刷が進むにつれて該第1画像部1には該第2画像部2と同形状の白抜けが発生してくる。その態様を示したのが、白抜け状の印刷不良が発生した第1画像部4である。
【0021】
白抜け状の印刷不良の典型的な発生パターンは、例えば第1画像部1の網点面積率が50%程度、第2画像部2の網点面積率が100%程度で双方の画像部の網点面積率差が50%程度の場合、印刷用紙の種類や画像部の大きさなど印刷条件によりばらつきはあるものの、約1万枚程度の印刷で白抜け状の印刷不良が発生した第1画像部4のような印刷不良が発生する。
【0022】
該白抜け状の印刷不良は、オモテ及びウラの画像面において20%以上の網点面積率差が生じた場合に発生すること、さらにはオモテ及びウラの画像面の網点面積率差が大きいほど少ない印刷枚数で印刷不良が発生する性質を持っている。従って、この性質を利用した印刷不良警告画像を任意の場所に配置することにより、実際に見本や商品として使用する印刷画像、すなわち目標とする印刷画像の中に白抜け状の印刷不良が発生することを印刷中に警告できるようになる。
【0023】
具体的には、目標とする印刷画像の構成が、オモテまたはウラの画像面が網点面積率50%、ウラまたはオモテの画像面が網点面積率100%で双方の画像部の網点面積率差が50%の場合、印刷不良警告画像の構成は、例えばオモテまたはウラの画像面を網点面積率40%、ウラまたはオモテの画像面を網点面積率100%で双方の画像部の網点面積率差を60%にするなど、目標とする印刷画像よりも意図的に網点面積率差を大きくする。
【0024】
その結果、目標とする印刷画像では約1万枚程度の印刷で白抜け状の印刷不良が発生するところ、印刷不良警告画像ではそれ未満の枚数で白抜け状の印刷不良が発生するため、その警告に沿って目標とする印刷画像の中に白抜け状の印刷不良が発生する以前に、ブランケットに形成されたインキ皮膜部を洗浄できるようになる。従って、印刷物の商品価値を損なうことは無くなる。
【0025】
前記の印刷不良警告画像の構成例では、網点面積率差を目標とする印刷画像よりも10%大きくしたが、白抜け状の印刷不良の発生パターンは印刷用紙の種類や画像部の大きさなど印刷条件によりばらつきがある。従って、実際の印刷不良警告画像の網点面積率差の構成は、目標とする印刷画像よりも10%以上の任意の網点面積率差を選択することが好ましい。
【0026】
なお、印刷不良警告画像の形状は、図1では第1画像部1を四角、第2画像部2を三角で構成しているが、白抜け状の印刷不良が視認し易い形状であれば、第1画像部1及び第2画像部2の形状はどのような形状でも良い。また、第1画像部1と第2画像部2相互の配置については、相互の画像部の全面または一部が重なっており、第1画像部1の全面または一部に第2画像部2に影響された白抜け状の印刷不良が発生する配置であれば良い。
【0027】
さらに、印刷不良警告画像を配置する場所については、目標とする印刷画像の印刷品質に影響が出ないようにすることが好ましいため、図2の本発明の印刷不良警告画像を用いて印刷された印刷物の平面図に示すように、印刷物の製品では断裁されてしまう例えばトンボ5付近に配置することが適当である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、両面印刷機において印刷された印刷画像の中に発生する印刷不良の警告に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の印刷不良警告画像の一実施態様を示す構成図である。
【図2】本発明の印刷不良警告画像を用いて印刷された印刷物の平面図である。
【図3】正常時とデラミネーション発生時の印刷用紙の走行性を示す説明図である。
【図4】白抜け状の印刷不良が発生した印刷画像を示す平面図である。
【図5】デラミネーション発生時の印刷用紙へのインキ転移性を示す説明図である。
【図6】上胴ブランケットにインキ皮膜部が形成された態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 第1画像部
2 第2画像部
3 印刷用紙
4 白抜け状の印刷不良が発生した第1画像部
5 トンボ
6 下胴ブランケット
7 上胴ブランケット
8 白抜け状の印刷不良が発生した印刷画像
9 下胴インキ
10 上胴インキ
11 インキ残り
12 インキ皮膜部
X ブランケットへの巻き付き量
Y、Z デラミネーション発生時の印刷用紙の走行状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面印刷機において印刷された印刷画像の中に発生する白抜け状の印刷不良の発生を警告する画像であって、オモテまたはウラの画像面に網点面積率20〜80%相当の第1画像部を配置し、該第1画像部の反対面のウラまたはオモテの画像面に網点面積率40〜100%相当の第2画像部を配置し、オモテ及びウラの画像面において20%以上の網点面積率差を生じさせるように構成したことを特徴とする印刷不良警告画像。
【請求項2】
目標とする印刷画像の、オモテ及びウラの画像面の網点面積率差よりも10%以上網点面積率差を大きくした、請求項1記載の印刷不良警告画像。
【請求項3】
請求項1記載の印刷不良警告画像を印刷したことを特徴とした印刷物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate