説明

印刷処理装置及び印刷処理装置の制御方法

【課題】 ネットワークを介して発行された印刷ジョブの印刷出力にあたり、ユーザの印刷処理装置への到着タイミングに合わせて印刷ジョブの印刷出力を可能とすることを目的とする。
【解決手段】 印刷ジョブを発行したユーザの位置と印刷処理装置との距離を取得し、前記距離と、複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件をユーザと前記印刷処理装置の距離によって定義したテーブルとに基づいて、複数の印刷工程に対応する複数の処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して印刷出力する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータやスマートフォンなどのクライアント装置から、ネットワークに接続された印刷処理装置に対して印刷ジョブを発行し、印刷物を出力する技術が知られている。
その一方で、印刷ジョブが発行された順番に印刷出力するのではなく、定められた条件に従って印刷ジョブを優先度付けし、優先度の高い印刷ジョブを先に印刷出力することが知られている。特許文献1は、印刷処理装置に接近したユーザの発行した印刷ジョブの優先度を高くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−227795号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、優先度の高いジョブから次々に印刷出力されるため、ユーザが印刷処理装置に到着する前に印刷された印刷物の持ち去られてしまうことが考えられる。一方、印刷ジョブを事前処理して記憶領域に保持し、ユーザ認証後に印刷する場合には、次々と処理される印刷ジョブの事前処理データを記憶しておくための大きな記憶領域が必要になる。本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、ネットワークを介して発行された印刷ジョブの印刷出力にあたり、ユーザの印刷処理装置への到着タイミングに合わせて印刷ジョブの印刷出力を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成する、本発明に係る印刷処理装置は、複数の印刷工程に対応する複数の処理手段と、前記複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件を、ユーザと前記印刷処理装置の距離によって定義したテーブルを保持する保持手段と、印刷ジョブを発行したユーザの位置と、前記印刷処理装置との距離を取得する取得手段と、前記テーブルと前記取得した距離とに基づいて、前記印刷ジョブに対して、前記複数の処理手段の制御を行う制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ネットワークを介して発行された印刷ジョブの印刷出力にあたり、ユーザの印刷処理装置への到着タイミングに合わせて印刷ジョブの印刷出力を可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明にかかる端末装置101と印刷処理装置102の機能ブロック図。
【図2】本発明にかかる印刷処理部702のブロック図。
【図3】本発明にかかる印刷処理装置のフローチャート。
【図4】本発明にかかるテーブルと管理情報の一例。
【図5】変形例1における印刷処理装置102のフローチャート。
【図6】変形例2における印刷処理装置102のフローチャート。
【図7】変形例3における印刷処理装置102の機能ブロック図。
【図8】変形例3における印刷処理装置102のフローチャート。
【図9】第1の実施形態における端末装置101のフローチャート。
【図10】第2の実施形態における端末装置101、印刷処理装置102及び管理サーバ103の機能ブロック図。
【図11】第2の実施形態における管理サーバ103のフローチャート。
【図12】第2の実施形態における印刷処理装102のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0009】
<第1の実施形態>
[システム全体の説明]
図1は、本実施形態におけるシステム概要の一例を示す。図1において、端末装置101,印刷処理装置102は、ネットワークを介してデータの受け渡しを行う。尚、図1では、端末装置が1つの場合を図示したが、複数の端末装置がネットワークを介して、印刷処理装置とつながっているとする。
【0010】
<端末装置101>
ユーザが印刷処理装置102に対して印刷指示を出す端末装置101を説明する。
【0011】
文書データ管理部501は、印刷処理装置102において印刷するための文書データを保持する。例えば、文書データが端末装置101に蓄積された書籍データなどであれば、ハードディスクやメモリ上のデータとして管理したり、インターネット上のウェブコンテンツであれば、ウェブブラウザとしてHTMLデータや画像データの管理を行う。ユーザに文書データのプレビュー画像を表示する機能を保持することにより、ユーザが発行する印刷ジョブの内容を確認させることも可能である。
【0012】
印刷ジョブ発行部502は、ユーザが印刷指示を出した文書データを印刷ジョブのデータ形式としてデータの準備をして、ネットワーク通信部504を介して、印刷処理装置102に送信する。印刷物の部数指定や面付けの指定がある場合には、ユーザが指定した情報を印刷ジョブに追加してもよい。本実施形態における印刷ジョブとは、ユーザが指定した文書データと、印刷要求を発行したユーザの認証に使われるユーザ認証情報によって構成される。文書データは、テキストデータ,書籍データ,画像データやウェブページなどである。さらに、印刷ジョブは、文書データのデータサイズやページ数,データ形式などによって構成されるプロパティ情報、文書データの面付けや印刷枚数などの印刷制御情報を含んでもよい。尚、本実施形態では、XPS(XML Paper Specification)のフォーマットで記述された文書データを印刷するとする。
【0013】
位置情報取得部503は、印刷ジョブを発行したユーザの位置情報を取得する。本実施形態では、端末装置101をユーザが所持しているとし、端末装置101の位置を取得する。取得の方法は、人工衛星や携帯電話の基地局を使ったGPS技術を利用して位置情報を取得してもよいし、または端末装置101に割当てられたIPアドレスから位置情報を推測して位置情報を取得してもよい。或いは、ユーザから入力された住所を用いた位置情報を利用することも可能である。
【0014】
ネットワーク通信部504は、印刷ジョブや位置情報を印刷処理装置102に送信する。例えば、ネットワーク通信部504は有線LAN,無線LANまたは携帯無線端末の通信処理を制御し、印刷処理装置102とのデータ通信を行う。
【0015】
<印刷処理装置102>
ユーザが発行した印刷ジョブを印刷出力する印刷処理装置102の構成を説明する。
【0016】
ネットワーク通信部701は、端末装置101からネットワークを介してデータを取得する。ネットワーク通信部701は、印刷出力する印刷ジョブのデータを保持部703へ、印刷ジョブを発行したユーザの位置情報を位置情報取得部704へ、印刷ジョブに含まれる文書データを印刷処理部702へ渡す。ネットワーク通信部701は、有線LAN,無線LANまたは携帯無線端末の通信処理を制御して、端末装置データ通信を行う。
【0017】
保持部703は、複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件を、ユーザと印刷処理装置の距離によって定義したテーブルと、印刷ジョブの処理状況を示す管理情報と、印刷処理装置102の位置情報を保持する。
【0018】
ここで、テーブルとは、複数の印刷工程に対応する処理について、それぞれの処理を開始するための条件を、印刷ジョブを発行したユーザと印刷処理装置102の間の距離を用いて定義したものである。図4(A)は、テーブルの一例である。本実施形態では、印刷にかかる処理は、文書データダウンロード処理、解凍処理、外部文書データ取得処理、レンダリング処理の順で処理されるものとする。文書データダウンロード処理、解凍処理、外部文書データ取得処理、レンダリング処理は、それぞれ、ユーザと印刷処理装置との距離が、1000m、750m、500m、250mになったら処理が開始されることを表す。印刷が開始される距離は、処理される順に、長い距離が割り当てられるものとする。
【0019】
尚、テーブルは、印刷処理装置102の製造時や設置時に予め設定されるものとするが、ネットワークを介して外部装置から取得してもよい。印刷にかかる処理は、これらに限定されない。また、処理を開始する距離の値についても、印刷処理装置の設置場所によって、適宜設定されるのが望ましい。例えば、都市部にある印刷処理装置は、処理を開始する距離の値を小さく設定し、郊外にある印刷処理装置は、処理を開始する距離の値を大きく設定するとよい。
【0020】
管理情報とは、印刷ジョブを、複数の印刷工程に対応する処理の進捗を管理するためのものである。図4(B)は、管理情報の一例である。ジョブ1、ジョブ2、ジョブ3の現在の処理は、それぞれ、レンダリング処理、解凍処理、文書データダウンロード処理であることを示す。管理情報は後述の判定部705に渡され、処理の遷移の開始判定に利用される。
【0021】
印刷処理装置102の位置情報は、印刷処理装置102の設置時に予め位置情報を保持部703に保持させておく。尚、印刷処理装置102が固定の場所に設置されない場合は、印刷処理装置102の位置情報を所定のタイミングで取得して、保持してもよい。取得の方法としては、人工衛星や携帯電話の基地局を使ったGPS技術を利用して位置情報を取得してもよいし、または印刷処理装置102に割当てられたIPアドレスから位置情報を推測して位置情報を取得してもよい。位置情報取得部704は、印刷ジョブを発行したユーザの位置情報をネットワーク通信部701から取得して判定部705に渡す。
【0022】
判定部705は、保持部703から渡された印刷ジョブに対して、テーブルを用いて、印刷ジョブを発行したユーザと印刷処理装置102との距離に応じて印刷処理部702に処理の開始を指示する。具体的には、判定部705は、位置情報取得部704から受け取ったユーザの位置情報と印刷処理装置102の位置情報からユーザと印刷処理装置との距離を算出する。そして、テーブルに記載された処理を開始する距離として小さい値を持つ処理が、管理情報に記載された現在の処理に含まれない場合に、処理を進めるよう、印刷処理部702に指示する。
【0023】
ユーザ認証部706は、印刷ジョブを発行したユーザの認証を行い、認証に成功した場合には印刷処理部702に対して印刷出力の開始を指示する。本実施形態では、印刷ジョブに含まれるユーザ認証情報と、印刷処理装置102に入力されるユーザ認証情報とで認証を行う。認証方法は、例えばユーザIDとパスワードによる認証を行ってもよいし、スマートフォンや携帯電話,ICカードによるデバイスの所持に応じた認証を行ってもよい。印刷処理部702は、判定部705の指示に従って、印刷ジョブを印刷出力するために必要な複数の処理を経て印刷ジョブを処理する。そして、印刷ジョブを発行したユーザの認証の成功がユーザ認証部706から通知された場合には、ユーザの発行した印刷ジョブの印刷出力を開始する。
【0024】
図2は、印刷処理部702の構成の示す図である。
【0025】
印刷制御部801は、判定部705からの印刷指示に従って、印刷ジョブに対して定義された処理を開始させる。印刷制御部801は、文書データダウンロード部802,解凍処理部803,外部文書データ取得部804、レンダリング処理部805の順番に印刷ジョブを処理させる。ここで、文書データダウンロード部802,解凍処理部803,外部文書データ取得部804,レンダリング処理部805の順に、処理を進める度に、処理をした結果を記憶しておくために必要な記憶容量が大きくなる。
【0026】
文書データダウンロード部802は、印刷ジョブで印刷指定されたXPS形式の文書データを、ネットワーク通信部701を介して外部装置からダウンロードし、印刷データ蓄積部806に記憶させる。
【0027】
解凍処理部803は、文書データダウンロード部802が印刷データ蓄積部806に記憶させたZIP形式で圧縮されたXPSを解凍処理して印刷データ蓄積部806に記憶させる。
【0028】
外部文書データ取得部804は、解凍処理部803が印刷データ蓄積部806に記憶させた解凍済みの文書データを解析し、印刷に必要な外部文書データを取得する。例えば、文書データに記述されたURLなどの識別子で参照し、文書データの一部として利用されるJPEG形式などの画像データを外部のサーバから取得して印刷データ蓄積部806に蓄積させる。
【0029】
レンダリング処理部805は、解凍処理部803が解凍した文書データと、外部文書データ取得部804が取得した外部文書データをレンダリング処理して文書データのビットマップデータを生成して印刷データ蓄積部806に記憶させる。レンダリングとは、PDFやPostScriptなどのPDLで記述された文書データをビットマップデータに変換する処理である。
【0030】
印刷データ蓄積部806は、文書データダウンロード部802,解凍処理部803,外部文書データ取得部804及びレンダリング処理部805で処理した文書データを記録して保持する。印刷データ蓄積部806はDRAMなどの揮発性メモリによって実現してもよいし、ハードディスクなどの不揮発性記録媒体によって実現してもよい。揮発性メモリに実現する場合においては、記憶したデータが揮発性メモリの容量を超えるデータをハードディスク装置などの揮発性記録媒体にスワップ処理しても構わない。
【0031】
プリント出力部807は、ユーザ認証部706からのユーザ認証成功通知に従って、レンダリング処理部805が印刷データ蓄積部806に記憶させたビットマップデータを紙媒体に印刷出力する。
【0032】
<端末装置101のフロー>
図9は、端末装置101における印刷ジョブ発行処理の一例を示すフローチャートである。
【0033】
S901は、文書データ管理部501に保存された文書データから印刷する文書データをユーザが選択する。文書データは、不図示のキーボードやマウス,タッチパネル等の入力デバイスによってユーザから指示される。
【0034】
S902は、S901で選択した文書データの印刷宛先を選択する。例えば、印刷処理装置102の識別子を用いて印刷出力先を指定してもよいし、ユーザの識別子を用いて印刷出力先を指定してもよい。ユーザの識別子を用いて印刷出力先を指定する場合には、当該ユーザに対応する印刷処理装置102に対して印刷ジョブが発行される。
【0035】
S903は、文書データを前述の印刷ジョブのフォーマットとしてデータを生成し、印刷処理装置102に対して印刷を指示する。
【0036】
<印刷処理装置102のフロー>
図3は、印刷処理装置102のフローチャートである。
【0037】
S301は、ネットワーク通信部701が、端末装置101から、印刷ジョブを受信する。S302は、位置情報取得部704が、印刷ジョブを発行したユーザの位置情報を取得する。S303は、取得した位置情報と印刷処理装置102の位置情報とからユーザと印刷処理装置との距離を求める。S304は、判定部705が保持部703で保持されている管理情報とテーブルとS303で求めた距離を用いて、印刷の処理を進めるかを判定する。具体的には、S303で求めた距離より、テーブルに記載された処理を開始する距離として小さい値を持つ処理が、管理情報に記載された現在の処理に含まれない場合に、処理を進める。
【0038】
例えば、管理情報に、「解凍処理」と記載され、S303で求めた距離が450mだった場合は、外部文書データ取得処理まで進め、管理情報に、「解凍処理」と記載され、S303で求めた距離が150mだった場合は、レンダリング処理まで進める。
【0039】
S304で印刷の処理を進めると判定された場合、S305で、判定部705は、テーブルに記載された処理のうち、ユーザと印刷処理装置との距離が、処理を開始する距離以下となった処理を実行する、印刷制御部801に指示を送る。このとき、管理情報を用いて、既に処理を行っている処理については、指示を送らない。具体的には、ユーザと印刷処理装置との距離が550mと算出され、管理情報に現在の処理が「文書データダウンロード処理」と記載されている場合、処理を開始する距離以下で、かつ、処理を行っていない、解凍処理を実行するよう、指示する。S304で印刷の処理を進めると判定されなかった場合は、印刷ジョブの処理を待機させ、所定の時間後に、再び、ユーザの位置情報を取得し(S302)、ユーザと印刷処理装置102の間の距離を求める(S303)。
【0040】
そして、S306は、印刷制御部801が、判定部から受けた指示に基づいて、文書データダウンロード部802、解凍処理部803、外部文書データ取得部804、レンダリング処理部805を制御する。このとき、複数の処理を実行する場合は、文書データダウンロード部802、解凍処理部803、外部文書データ取得部804、レンダリング処理部805の順で処理を実行する。
【0041】
S307は、判定部705が、指示した処理に基づいて、保持部703に保持されている管理情報を更新する。このとき、判定部705は、印刷制御部801に、処理が実行されたかどうかを問い合わせ、実行されたと通知を受けてから、管理情報を更新してもよい。
【0042】
S308は、判定部705が、全ての印刷にかかる処理を実行したかを判定し、全て実行されていないと判定された場合は、S302へ戻る。S308で、全ての処理の実行が完了したと判定された場合は、S309で、ユーザが入力したユーザ認証情報によってユーザ認証部706がユーザ認証を行う。ユーザ認証が成功した場合には、S310で、プリント出力部807は、ユーザが発行した印刷ジョブの印刷出力を開始し、紙媒体に印刷出力する。一方で、ユーザ認証部706においてユーザの認証に失敗した場合には、S311は、印刷出力を中止する。
【0043】
ここで、これらの文書データダウンロード部802,解凍処理部803,外部文書データ取得部804,レンダリング処理部805の一連の処理において、印刷データ蓄積部806が必要とする記憶容量はより大きくなっていくことに注意されたい。そして、印刷処理装置102はこれらの複数の印刷工程に対応する処理の開始タイミングを端末装置101との間の距離に応じて判断するため、離れた位置にいるユーザの印刷ジョブを処理することによる記憶領域の浪費を軽減することが可能である。
【0044】
以上説明した本実施の形態によれば、印刷処理装置102は印刷ジョブを発行した端末装置101との距離に応じて予め定義された印刷の処理を進める。これにより、印刷処理装置102の設置された場所に端末装置101を保持するユーザが到着した時点において、印刷ジョブのダウンロードや印刷ジョブのデータ形式の検証などの前処理が終わっていることが期待される。これにより、ユーザが認証情報を入力して印刷出力の開始を指示した場合は、より短い待ち時間で印刷出力を開始することが可能である。
【0045】
上記実施形態の印刷処理は、文書データダウンロード処理、解凍処理、外部文書データ取得処理、レンダリング処理の4つの処理で実現されるものとして説明したが、これに限定されず、少なくとも2つ以上の処理があればよい。また、文書データダウンロード処理、解凍処理、外部文書データ取得処理、レンダリング処理以外の処理によって構成される場合にも適用可能である。しかしながら、次の処理を行った後に必要な記憶容量が大きくなる場合に、距離に応じて処理を進めるかを判定する(図3のS303の処理)のが望ましい。必要な記憶容量が大きくならない場合は、判定せずに処理を進めるようにして構わない。
【0046】
尚、具体的な処理の例としては、印刷ジョブのデータ形式の整合性を検査するプリフライト処理、印刷ジョブがテンプレートにデータを挿入して印刷する差込み印刷を利用する場合にはデータ差込み処理がある。他には、文書データのレンダリングを高速化するために印刷処理装置102がレンダリングしやすい順番に文書データ内のデータを整列させる成形処理、印刷ジョブに含まれる不要なデータを除去するデータ圧縮処理を処理としてもよい。また、印刷ジョブの処理はこれらの処理に限定されず、印刷処理装置102のキャリブレーションや印刷処理装置102の動作確認テスト,印刷ジョブに付与されたディジタル署名データの検証処理などの印刷処理前に実行可能な処理に適用することが可能である。
【0047】
上記実施形態では、印刷処理装置102が端末装置101の位置を正確に把握できる場合には、ユーザ認証部706で、ユーザによる認証情報の入力を行わず、1m以下などの十分に近い位置に来たユーザを認証成功と判断してもよい。
【0048】
さらに、本実施の形態では、端末装置101と印刷処理装置102の距離に応じて処理が進むため、紙出力を要求される可能性の高いユーザの印刷ジョブを優先的に処理することが可能である。結果として、紙出力を要求される可能性の高いユーザの印刷ジョブに対してメモリや演算リソースを多く割り当てることになり、印刷処理装置102のデータをより効率的に利用して印刷出力することが可能である。
【0049】
本実施形態では、端末装置101が、印刷ジョブを発行したが、別の装置から、印刷ジョブを発行してもよい。例えば、固定設置されたパーソナルコンピュータから印刷ジョブを発行する。この場合は、印刷ジョブに、ユーザ位置情報を取得する端末に関する情報を含めるようにし、印刷処理装置102は、この情報をもとに、ユーザ位置情報を取得するようにする。あるいは、管理サーバが、印刷ジョブとユーザ位置情報を取得する端末とを管理し、その情報を、印刷処理装置102に知らせるようにしてもよい。
【0050】
上記実施形態では、異なるユーザが印刷ジョブを発行する場合、印刷処理装置に十分に近づいたユーザの印刷ジョブの処理が先に進められる。そのため、ユーザが印刷処理装置102にユーザ認証情報を入力して印刷の開始指示を出した場合において、印刷処理装置102はより短い待ち時間で印刷出力を開始させることが可能である。
【0051】
尚、本実施形態で説明した印刷処理装置の処理の一部を、他の別の装置で行ってもよい。
【0052】
また、本実施形態では、端末装置101が、印刷処理装置102に、直接、印刷ジョブを送っていたが、印刷ジョブ管理サーバなどを経由して送ってもよい。さらに、上記実施形態では、印刷処理装置102は、ユーザの位置情報を端末装置101から直接取得するものとして説明したが、ユーザの位置情報を例えば管理サーバから間接的に取得することも可能である。具体的には、端末装置101における位置情報取得部503がユーザの位置情報を定期的に管理サーバに通知する。そして、印刷処理装置102は、ユーザの位置情報を管理サーバから取得することによってユーザと印刷処理装置102の間の距離を算出し、印刷ジョブの処理工程を遷移させる。
【0053】
<第1の実施形態の変形例1>
変形例1では、印刷ジョブのデータサイズを考慮したテーブルを用いる。
変形例1は、保持部703と判定部705以外、第1の実施形態の印刷処理装置102のブロック図の機能と同じものを持つものとする。さらに、保持部703で保持するテーブルが第1の実施形態で説明したテーブルと異なるものである。
【0054】
保持部703は、第1の実施形態で説明した機能に加え、ネットワーク通信部701を介して得た印刷ジョブのデータサイズを保持する。また、保持部703が保持するテーブルの一例は、図4(C)に示す。テーブルは、複数の印刷工程に対応する処理について、それぞれの処理を開始するための条件を、ユーザと印刷処理装置の距離と印刷ジョブのデータサイズを用いて定義したものである。処理1、処理2、処理3、処理4は、文書データダウンロード処理、解凍処理、外部文書データ取得処理、レンダリング処理に対応するものとし、処理1、処理2、処理3、処理4の順に、印刷処理がされる。印刷が開始される距離は、処理される順に、長い距離が割り当てられ、かつ、データサイズが大きいものから、長い距離が割り当てられるものとする。
【0055】
判定部705は、保持部703で保持されたテーブルを用いて、印刷ジョブを発行したユーザと印刷処理装置102との距離と、印刷ジョブのデータサイズに応じて印刷処理部702に処理の開始を指示する。具体的には、テーブルの記載された、印刷ジョブのデータサイズに対応する距離と、ユーザと印刷処理装置との距離を比較することによって、処理の開始を指示する。
【0056】
図5は、変形例1における印刷処理装置102のフローチャートである。
S601とS602以外は、第1の実施形態と同じ処理であるので、説明を省略する。S601は、保持部703が、S301で受信した印刷ジョブのデータサイズを取得し、保持部に保持する。S602は、保持部703に保持した印刷ジョブのデータサイズとテーブルを用いて、印刷ジョブを発行したユーザと印刷処理装置102との距離に応じて印刷処理部702に処理の開始を指示する。
【0057】
図4(C)のテーブルを用いて、例を説明すると、データサイズが15MByteであり、距離が900mである場合は、10MByte〜の行にある、距離が900mより大きい値を持つ処理、すわなち、処理1と処理2と処理3が実行されることになる。
【0058】
尚、変形例1では、データサイズを用いて説明したが、データサイズの代わりに、文書データのページ数を用いてもよい。
【0059】
大きなデータサイズの文書データを印刷する印刷ジョブでは、小さなデータサイズの文書データを印刷する印刷ジョブに比べて、印刷ジョブのダウンロードやレンダリングにより長い処理時間がかかる。よって、変形例2で説明したように、データサイズが大きいものほど、処理の開始を早めることで、ユーザが印刷処理装置102に到着したときに印刷準備を完了させる、あるいは、到着したユーザの待ち時間を短縮することが可能になる。
【0060】
<第1の実施形態の変形例2>
変形例2では、印刷ジョブを発行したユーザの移動速度を考慮したテーブルを用いる。変形例2は、位置情報取得部704と判定部705以外、第1の実施形態の印刷処理装置102のブロック図の機能と同じものを持つものとする。さらに、保持部703で保持するテーブルが第1の実施形態で説明したテーブルと異なるものである。
【0061】
位置情報取得部704は、ユーザの位置情報を取得するだけなく、ユーザの移動速度も取得する。移動速度の取得方法としては、端末装置101から通知された移動速度や、印刷ジョブの発行時にユーザによって入力された移動手段から移動速度を推定して利用してもよい。あるいは、保持部703に、ユーザの位置情報の履歴を保持し、履歴情報に含まれる位置と時刻から移動速度を推定してもよい。
【0062】
保持部703が保持するテーブルの一例は、図4(D)に示す。テーブルは、複数の印刷工程に対応する処理について、それぞれの処理を開始するための条件を、ユーザと印刷処理装置の距離とユーザの移動速度を用いて定義したものである。処理1、処理2、処理3、処理4は、文書データダウンロード処理、解凍処理、外部文書データ取得処理、レンダリング処理に対応するものとし、処理1、処理2、処理3、処理4の順に、印刷処理がされる。印刷が開始される距離は、処理される順に、長い距離が割り当てられ、かつ、ユーザの移動速度が速いものから、長い距離が割り当てられるものとする。
【0063】
判定部705は、保持部703で保持されたテーブルを用いて、印刷ジョブを発行したユーザと印刷処理装置102との距離と、ユーザの移動速度に応じて印刷処理部702に処理の開始を指示する。具体的には、テーブルの記載された、ユーザの移動速度に対応する距離と、ユーザと印刷処理装置との距離を比較することによって、処理の開始を指示する。
【0064】
図6は、変形例2における印刷処理装置102のフローチャートである。
【0065】
S603とS604以外は、第1の実施形態と同じ処理であるので、説明を省略する。S603は、位置情報取得部704が、ユーザの位置情報と移動速度を取得する。S604は、ユーザの移動速度とテーブルを用いて、印刷ジョブを発行したユーザと印刷処理装置102との距離に応じて印刷処理部702に処理の開始を指示する。
【0066】
図4(D)のテーブルを用いて、例を説明すると、ユーザの移動速度が6km/hであり、距離が1000mである場合は、4km/h〜10km/hの行にある、距離が1000mより大きい値を持つ処理、すわなち、処理1と処理2が実行されることになる。
【0067】
移動時間の速い交通手段で印刷処理装置102に移動するユーザは、徒歩などのゆっくり移動するユーザに比べて早く印刷処理装置に到着する可能性が高い。よって、変形例2で説明したように、移動速度の速いユーザのジョブに関しては、処理の開始を早めることで、ユーザが印刷処理装置102に到着したときに印刷準備を完了させる、あるいは、到着したユーザの待ち時間を短縮することが可能になる。
【0068】
<第1の実施形態の変形例3>
第1の実施形態では、印刷処理装置102における処理を一方向に先に進める場合を例として説明をした。本変形例では、低リソースの印刷処理装置を想定し、印刷処理装置102のリソースを考慮しながら、印刷物を受け取りに来ていないユーザの印刷ジョブは、優先度を下げることを行う。例えば、ユーザが印刷処理装置102に印刷物を取りに来る途中で引き返した場合には、不要な印刷ジョブのダウンロードやレンダリングが実行されてしまい、印刷処理装置102のリソースを浪費してしまう場合が考えられる。本変形例における印刷処理装置102のリソースとは印刷データ蓄積部806の記憶リソース,レンダリング処理などの演算リソース,ネットワーク通信部701の通信リソースがある。
【0069】
図7は、変形例3における印刷処理装置102の機能ブロック図である。
【0070】
変形例3は、保持部703と判定部705とリソース使用率取得部707以外、第1の実施形態の印刷処理装置102のブロック図の機能と同じものを持つものとする。また、端末装置101は、第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0071】
保持部703は、第1の実施形態で説明した機能に加え、ユーザと印刷処理装置の距離の履歴と、リソース使用率の閾値を、保持する。距離の履歴は、時刻とその時刻におけるユーザと印刷処理装置の距離を履歴として保持する。
【0072】
リソース使用率取得部707は、メモリリソース、演算リソース、通信リソースなどの印刷処理装置102のリソースの使用率を取得する。具体的には、印刷処理装置102のメモリの使用率やCPU処理時間の使用率、ネットワークトラフィックの使用量を計測することによって使用率を取得する。
【0073】
判定部705は、第1の実施形態で説明した機能に加え、さらに、リソースの使用率に応じて、処理を切り替えるよう指示する。処理の切り替えについては、後述する。
【0074】
図8は、変形例3における印刷処理装置102のフローチャートである。S605〜S609以外は、第1の実施形態と同じ処理であるので、説明を省略する。
【0075】
S605は、判定部705が、取得した位置情報と印刷処理装置102の位置情報とからユーザと印刷処理装置との距離を求め、そのときの時刻と求めた距離とを履歴として、保持部703へ記憶させる。S606は、リソース使用率取得部707が、メモリリソース,演算リソース、通信リソースなどの印刷処理装置102のリソースの使用率を取得する。
【0076】
S607は、判定部705が、S606で取得したリソースの使用率と、保持部703で保持されているリソースの使用率の閾値とを比較し、リソースの使用率が閾値以上かを判定する。リソースの使用率が閾値以上でないと判定された場合は、S304以降の処理を進める。リソースの使用率が閾値以上と判定された場合は、S608で、判定部705が、保持部703に保持している距離の履歴を用いて、処理の優先度を下げるかどうかを判定する。ここでは、距離の履歴を用いて、距離の変化が所定の値以下、つまり、ユーザが移動していない場合と、距離の値が大きくなっている、つまり、ユーザが印刷処理装置102から遠ざかっている場合に、処理の優先度を下げると判定する。ユーザが移動していない場合には、ユーザが印刷物を受け取るために移動していないと判断でき、ユーザが印刷処理装置102から遠ざかるように移動している場合には、ユーザが印刷物を受け取るために移動していないと判断できる。
【0077】
S609は、処理の優先度を下げると判定された場合は、優先度を下げる処理を行う。ここで、優先度を下げる処理では、高価なメモリから安価なハードディスクなどの記憶媒体に優先的にスワップ処理をしたり、データを圧縮処理して記憶容量を減らす。或いは、記憶媒体に前の処理工程の印刷データ(印刷データA)を保持しておき、現在の処理工程の処理結果の印刷データ(印刷データB)を消去して現在処理されている工程の一つ前の工程(印刷データA)に戻す処理である。この場合、印刷データAと印刷データBのデータサイズの差が、印刷データBよりも小さければ、印刷データAを消去してもよい。これにより、記憶媒体の容量を削減することができる。また、優先度を下げる処理では、単純に現在の印刷データを消去して印刷情報に記録された印刷ジョブの工程を戻し、印刷処理をやり直す方法も可能である。
【0078】
高価なメモリから安価なハードディスクなどの記憶媒体に優先的にスワップ処理をすることで、印刷処理装置102に近づいてきているユーザの印刷ジョブを高速なメモリで優先的に処理することが可能である。また、複数の印刷工程に対応する処理のうち、現在処理されている処理の1つ前の処理に戻す処理は、第1の実施形態の例によれば、現在の処理が、外部文書データ取得処理である場合は、1つ前の処理である、解凍処理に戻す。これは、複数の印刷工程に対応する処理のうち、1つ前の処理に戻すことによって、メモリなどの印刷データ蓄積部806に保持されるデータ量が小さくなることが期待できる。つまり、第1の実施形態における外部文書データ取得部804が取得した外部文書データを削除することで、メモリなどの記憶領域を有効活用することが可能である。
【0079】
上記変形例では、印刷ジョブの優先度を下げる場合、複数の印刷工程に対応する処理のうち、1つ前の処理に戻したが、1つ前に限らず、2つ前や3つ前でも構わない。その場合、処理を戻し、その後再開して処理するので、印刷処理装置102の演算リソース或いは通信リソースが繰り返し消費になる場合が考えられる。そのため、どの処理まで戻すかを、それまでの印刷ジョブの処理に使用したリソースの量を基準として決定し、適切に処理を戻すことで、演算リソースの更なる節約が可能である。例えば、印刷処理装置102は、印刷ジョブの各処理におけるそれぞれの演算リソース使用量,通信リソース使用量,メモリリソース使用量を計測し、保持部703に保持しておく。そして、処理を前に戻す場合には、処理を前に戻すことによってキャンセルされる印刷ジョブのそれまでに消費したリソースが許容閾値よりも小さくなるようにすることで、処理工程の再開によるリソースの消費を軽減することが可能である。以上、本変形例によれば、より低リソースの印刷処理装置102においても、印刷ジョブの印刷を効率的に処理することが可能となる。特に、印刷物を受け取りに移動していると見込まれるユーザの印刷ジョブが優先的に処理されることから、印刷処理装置におけるユーザの待ち時間を短縮することが可能である。
【0080】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、端末装置101と印刷処理装置102の間の距離に応じて印刷処理装置102が印刷工程の遷移を判断し、印刷出力する場合を例として説明をした。しかしながら、印刷工程の遷移を印刷処理装置102の外部の管理サーバにおいて判断し、印刷処理装置102における印刷工程の遷移を制御することも可能である。
【0081】
本実施形態では、印刷処理装置102での工程遷移の判断処理を管理サーバにおいて行うことにより、印刷処理装置102を簡易な構成で実現する。
【0082】
図10に本実施形態におけるシステム概要の一例を示す。図10において、端末装置101,印刷処理装置102及び管理サーバ103は、ネットワークを介してデータの受け渡しを行う。また、本実施形態における端末装置101の構成、処理フローは、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
<管理サーバ103>
ユーザが発行した印刷ジョブの印刷処理の管理を行う管理サーバ103の構成を説明する。
【0084】
ネットワーク通信部1001は、端末装置101が発行した印刷ジョブデータを宛先判断部1002へ、印刷ジョブを発行したユーザ及び印刷処理装置102の位置情報を判断部1004へ渡す。さらに、印刷ジョブは判断部1004における印刷ジョブの工程遷移の判断指示情報を印刷処理装置102に渡す。ネットワーク通信部1001は、有線LAN,無線LANまたは携帯無線端末の通信処理を制御して、端末装置101及び印刷処理装置102とデータ通信を行う。
【0085】
宛先判断部1002は、端末装置101が発行した印刷ジョブデータを受け取り、当該印刷ジョブの受け取りユーザの保持する端末装置101及び、印刷ジョブをプリント出力する印刷処理装置102のペアを解決する。宛先判断部1002は、宛先ユーザの識別子と端末装置101の識別子の対応表を管理し、印刷ジョブに指定されている受け取りユーザの識別子から端末装置101を特定する。或いは、印刷ジョブに対して、受け取りユーザの端末装置101の識別子が指定されている場合には、当該識別子の端末装置101を受け取りユーザの端末として設定する。印刷ジョブ蓄積部1003は、ネットワーク通信部1001から受け取った印刷ジョブデータと、宛先判断部1002において特定された受け取りユーザの保持する端末装置101及び、印刷ジョブが出力される印刷処理装置102の識別子を管理する。
【0086】
判断部1004は、第1の実施形態において説明したテーブル情報を保持し、印刷ジョブ蓄積部1003に蓄積された印刷ジョブの工程遷移を判定する。具体的には、判断部1004は印刷ジョブに対して指定された端末装置101及び印刷処理装置102から位置情報を取得する。そして、これらの情報を基に両装置間の距離を計算し、テーブルの遷移条件を基に印刷ジョブの工程遷移を判断する。両装置間の距離に従って、印刷ジョブの工程の移行を判断した場合には、当該印刷ジョブの工程遷移の判断指示情報を印刷処理装置102に対して送信する。ここで、端末装置101及び印刷処理装置102の位置情報は、管理サーバからそれぞれの端末に位置情報を問い合わせて取得してもよいし(PULL型位置情報取得)、両端末から位置情報を定期的に受け取ってもよい(PUSH型位置情報取得)。
【0087】
<印刷処理装置102>
ユーザが発行した印刷ジョブの印刷出力を行う印刷処理装置102の構成を説明する。
【0088】
印刷処理装置102に関する本実施形態と第1実施形態における差異は、印刷ジョブの工程遷移の判断を、管理サーバ103から受け取った工程遷移指示に従って行う点である。
【0089】
このため、印刷処理部702,保持部703及びユーザ認証部706の構成及び処理は第1の実施形態における夫々の処理部と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
ネットワーク通信部701は、印刷ジョブデータ及び印刷ジョブの工程遷移の判断指示情報を管理サーバ103から受け取り印刷処理部702に渡す。印刷処理部702は、判断指示情報に従って印刷ジョブの処理の制御を行う。一方、保持部703から印刷処理装置102の位置情報を受け取り、管理サーバ103に送信する。
【0091】
以上、本変形例によれば、第1実施形態に比べて印刷処理装置102の構成を省略することが可能である。
【0092】
<管理サーバ103のフロー>
図11は、管理サーバ103における印刷ジョブの工程遷移処理の一例を示すフローチャートである。
【0093】
S1101は、ネットワーク通信部1001が印刷ジョブデータを受信する。次に、S1102は、印刷ジョブの宛先情報から、受け取りユーザの端末装置101及び印刷処理装置102を決定する。続いて、ネットワーク通信部1001は端末装置101の位置情報の取得(S1103)と印刷処理装置102の位置情報の取得(S1104)を行う。そして、端末装置101及び印刷処理装置102の間の距離が工程遷移テーブルで定義された遷移条件を満たしている場合には(S1105でYES)、印刷処理装置102に印刷ジョブの工程遷移指示を発行する(S1006)。端末装置101及び印刷処理装置102の間の距離が工程遷移テーブルで定義された遷移条件を満たさない場合は(S1105でNO)、一定時間後に再度S1103及びS1104を繰り返す。
【0094】
印刷ジョブに対して、全ての印刷処理工程を終えた場合には(S1107でYES)、印刷ジョブの印刷処理を終了し、印刷ジョブ蓄積部1003から印刷ジョブを削除する。未処理の印刷処理工程が残っている場合には、S1103〜S1106の処理を繰り返す。
【0095】
<印刷処理装置102のフロー>
図12は、印刷処理装置102における印刷ジョブの印刷処理の一例を示すフローチャートである。
【0096】
S1201は、印刷処理装置102のネットワーク通信部701が、当該印刷処理装置102に対して発行された印刷ジョブの発生を受信する。
【0097】
続いて、印刷処理装置102は管理サーバ103から、印刷ジョブの工程遷移指示を受信し(S1202)、当該工程処理を実行する(S1203)。また、印刷処理装置102は、必要に応じて、S1202及びS1203を繰り返すことにより、印刷ジョブをプリント出力する。
【0098】
以上、本実施形態における印刷ジョブの発行からプリント出力までの処理の流れを説明した。本実施形態のように、端末装置101及び印刷処理装置102の位置情報の取得及び、印刷ジョブの工程遷移の判断を印刷処理装置外部の管理サーバで行うことにより、印刷処理装置102を簡易な構成で実現することが可能となる。
【0099】
(その他の実施形態)
また、本発明の構成要素は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、カメラ、複写機、ファクシミリ装置など)に適用しても良い。本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のデータ保存部、ROMなどを用いることが出来る。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部を行う。さらに、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるデータ保存部に書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷処理装置であって、
複数の印刷工程に対応する複数の処理手段と、
前記複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件を、ユーザと前記印刷処理装置の距離によって定義したテーブルを保持する保持手段と、
印刷ジョブを発行したユーザの位置と、前記印刷処理装置との距離を取得する取得手段と、
前記テーブルと前記取得した距離とに基づいて、前記印刷ジョブに対して、前記複数の処理手段の制御を行う制御手段を有することを特徴とする印刷処理装置。
【請求項2】
前記複数の処理手段は、処理を進める度に、処理をした結果を記憶しておくために必要な記憶容量が大きくなることを特徴とする請求項1に記載の印刷処理装置。
【請求項3】
前記複数の処理手段とは、少なくとも、文書データダウンロード処理、解凍処理、外部文書データ取得処理、レンダリング処理のいずれか2つであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷処理装置。
【請求項4】
前記ユーザの認証を行う認証手段と、
前記複数の処理手段を経た印刷ジョブを、前記認証手段で認証が成功した場合に、プリント出力する出力手段を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の印刷処理装置。
【請求項5】
前記印刷処理装置のリソースの使用率を取得する取得手段を有し、
前記制御手段は、前記取得したリソースの使用率と、前記テーブルと、前記距離とに基づいて、前記複数の処理手段の制御を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の印刷処理装置
【請求項6】
前記テーブルは、前記複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件を、印刷ジョブのデータサイズと、ユーザと前記印刷処理装置の距離とによって定義されたものである請求項1〜4の何れか1項に記載の印刷処理装置。
【請求項7】
前記テーブルは、前記複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件を、ユーザの移動速度と、ユーザと前記印刷処理装置の距離とによって定義されたものである請求項1〜4の何れか1項に記載の印刷処理装置。
【請求項8】
印刷処理装置の制御方法であって、
取得手段が、印刷ジョブを発行したユーザの位置と、前記印刷処理装置との距離を取得する取得工程と、
処理手段が、前記取得した距離と、複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件をユーザと前記印刷処理装置の距離によって定義したテーブルとに基づいて、前記印刷ジョブに対して、複数の印刷工程に対応する複数の処理を行う処理工程を有することを特徴とする印刷処理装置の制御方法。
【請求項9】
前記複数の処理工程は、処理を進める度に、処理をした結果を記憶しておくために必要な記憶容量が大きくなることを特徴とする請求項8に記載の印刷処理装置の制御方法。
【請求項10】
前記複数の処理工程は、少なくとも、文書データダウンロード処理、解凍処理、外部文書データ取得処理、レンダリング処理のいずれか2つであることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の印刷処理装置の制御方法。
【請求項11】
認証手段が、前記ユーザの認証を行う認証工程と、
出力手段が、前記複数の処理工程を経た印刷ジョブを、前記認証工程で認証が成功した場合に、プリント出力する出力工程を有することを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の印刷処理装置の制御方法。
【請求項12】
取得手段が、前記印刷処理装置のリソースの使用率を取得する取得工程を有し、
前記処理手段が、前記取得したリソースの使用率と、前記テーブルと、前記距離とに基づいて、前記複数の処理工程を行うことを特徴とする請求項8〜11の何れか1項に記載の印刷処理装置の制御方法。
【請求項13】
前記テーブルは、前記複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件を、印刷ジョブのデータサイズと、ユーザと前記印刷処理装置の距離とによって定義されたものである請求項8〜11の何れか1項に記載の印刷処理装置の制御方法。
【請求項14】
前記テーブルは、前記複数の印刷工程におけるそれぞれの処理の開始条件を、ユーザの移動速度と、ユーザと前記印刷処理装置の距離とによって定義されたものである請求項8〜11の何れか1項に記載の印刷処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−187915(P2012−187915A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13038(P2012−13038)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】