説明

印刷方法、この印刷方法を用いて形成されたパターン膜、および、この印刷方法に用いるインク組成物

【課題】押圧によるインク層膜厚の減少をほとんど起こすことなく転写を実現でき、所望の膜厚及び均一性の膜として転写できる印刷方法、この印刷方法を用いて形成されたパターン膜、および、この印刷方法に用いるインク組成物を提供する。
【解決手段】第一の基体11の全面にインク層14を形成する第一の工程と、インク層14を介して、第一の基体11に第二の基体15を加圧する第二の工程と、第二の基体15を第一の基体11より離脱することで、第一の基体11の撥インク層12の上面に配されるインク層14aを第二の基体15に転写する第三の工程とを備えた印刷方法であり、かつ、第1溶媒および第2溶媒を含むインクを用い、T×S/x<y<(1+(x/x))×T×S/xの範囲のインク量yを塗布し、第二の溶媒グループ揮発完了から第一の溶媒グループ揮発完了までの時間で、上記第二の工程を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、この印刷方法を用いて形成されたパターン膜、および、この印刷方法に用いるインク組成物に関し、より詳細には、印刷過程で起こるインク層の膜減りを抑制する、印刷方法、この印刷方法を用いて形成されたパターン膜、および、この印刷方法に用いるインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パターンを形成する技術として直接印刷する方法やオフセット印刷法が知られている。オフセット印刷とは、印刷パターンが形成された版に付けられたインクを、一旦ブランケットなどの中間転写体に転写(オフ)した後、紙あるいは基板などの媒体にセットする方法である。
【0003】
一方、電子デバイス等に適用しうる微細パターンを形成する技術が求められている中、印刷法により、微細パターンを形成する技術として、樹脂に対して撥樹脂性である撥樹脂層による画線部と、樹脂に対して親樹脂性である親樹脂層による非画線部とが形成される画像形成版(印刷版)を用い、画像形成版の全面に、樹脂たとえばインクを塗布した後、撥樹脂層上のインクのみを、別の撥樹脂層が設けられた画像転写シートつまりブランケット上に転写し、さらに画像転写シート上に転写されたインクを基板上に転写して画像形成を行なう印刷方法(例えば特許文献1)や、シリコンシート(ブランケット)にインクを塗布して塗布面を形成し、形成した塗布面に対して所定の形状で形成された凸版を押圧して凸部にインクを転写・除去し、塗布面に残ったインクを基板に転写する凸版反転印刷方法(例えば特許文献2)が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の印刷方法の模式図を図14に示す。印刷工程としては、図14(A)に示す印刷版101全面にインクを塗布し、インク層104を形成する工程1、図14(B)に示す転写版105を印刷版に押し当てる工程2、図14(C)に示す転写版105を印刷版から離脱させる工程3、図14(D)に示す基板106に転写する工程4から構成されている。
【0005】
ここで、特許文献1に記載の印刷方法では、印刷版として、樹脂に対して撥樹脂性である撥樹脂層103と、樹脂に対して親樹脂性である親樹脂層102を有するものを用いており、印刷版に押し当てた転写版を離脱させる際、すなわち上記図14(C)に示す工程において、樹脂に対して撥樹脂性である撥樹脂層上のインク層104を印刷版に残すことなく、転写版に全量転写できることが特徴である。
【0006】
したがって、従来のオフセット印刷のように、インク層104を分断してしまうことがなく、印刷版の撥樹脂層上に形成したインク層104に含まれる固形分が全量基板に転写できるため、特許文献1に記載の印刷方法は、単に微細パターンを形成できるだけではなく、膜厚制御性に優れた印刷技術である。
【特許文献1】特開2004−249696号公報
【特許文献2】特許第3689536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1ならびに特許文献2には、いずれも、インク粘度を含む転写のタイミングに関する記載はないが、印刷版(転写版)に塗布後、転写版(印刷版)への転写までの時間が短いと、インク粘度が小さいために、転写版と印刷版とを押し付ける際の印圧によってインク層が圧縮され、所望の膜厚よりも薄くなってしまう膜減りが生じ、また、印圧のばらつきに由来した膜表面の凹凸ムラが発生してしまい、所望の膜厚ならびに均一性の膜を形成できない課題があった。
【0008】
図15に印刷版(転写版)にインク層104を塗布後、転写版(印刷版)105への転写までの時間が短い場合のインク層104の転写の模式図を示す。すなわち、印刷版(転写版)にインク層104を塗布後、転写版(印刷版)105への転写までの時間が短い場合、図15(A)の状態から転写版を押し付け図15(B)の状態となる際に、インク層104が圧縮される結果、図中矢印Aで示す分だけインク層104の膜減りが生じてしまい、結果的に図15(C)の膜厚となってしまう課題があった。
【0009】
一方、塗布後、転写までの時間が長いと、版上でインクが乾燥しすぎた結果、インク粘度が高くなりすぎてしまい、印刷版(転写版)から転写版(印刷版)へのインク転写が実現できなくなる課題があった。
【0010】
図16に印刷版(転写版)にインク層104の塗布後、転写版(印刷版)105への転写までの時間が長い場合のインク層転写の模式図を示す。すなわち、印刷版(転写版)に塗布後、転写版(印刷版)への転写までの時間が長い場合、図16(A)の状態から転写版(印刷版)を押し付け図16(B)の状態となっても膜減りは起こらないが、続いて、図16(C)に示すように、転写版(印刷版)を離脱させる際に、インク粘度が高くなりすぎているために、印刷版(転写版)からインクを転写できなくなる課題があった。
【0011】
以上のように、従来の印刷方法では、全量転写が可能な特許文献1、2の印刷方法においても所望の膜厚及び均一性の膜を転写するためには、塗布から転写までの時間を厳密に管理しなければならず、非常にプロセスウィンドウが狭いものであった。
【0012】
したがって、この発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、押圧によるインク層膜厚の減少をほとんど起こすことなく転写を実現でき、押圧分布の影響による表面凹凸ムラの小さい均一な膜の転写を可能とする、印刷方法、この印刷方法を用いて形成されたパターン膜、および、この印刷方法に用いるインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に基づいた印刷方法によれば、撥インク層と親インク層とを有する第一の基体の全面にインク組成物を塗布してインク層を形成する第一の工程と、上記インク層を介して、上記第一の基体に第二の基体を加圧する第二の工程と、上記第二の基体を上記第一の基体より離脱することで、上記第一の基体の上記撥インク層の上面に配されるインク層を上記第二の基体に転写する第三の工程と、を備えた印刷方法であって、以下の工程を備えている。
【0014】
上記インク組成物が沸点の異なる第一溶媒グループと第二溶媒グループとを有し、上記第一溶媒グループを構成する溶媒のうち、最高沸点のものの沸点を上記第一溶媒グループの沸点とし、上記第二溶媒グループを構成する溶媒のうち、最低沸点のものの沸点を上記第二溶媒グループの沸点とするとき、上記第二溶媒グループが揮発完了後、上記第一溶媒グループが完全揮発までの間に、上記第二の工程を行なう。
【0015】
上記印刷方法において、上記インク層の必要膜厚Tに対し、上記第一の工程にて、下記(1)式を満足するyの量の上記インク組成物を塗布する。
【0016】
T×S/x<y<(1+(x/x))×T×S/x・・・式(1)
式(1)において、yはインク塗布量(cm)、x1は上記インク層全体に対する第一溶媒グループの体積割合、x2は上記インク層全体に対する第二溶媒グループの体積割合、x3は上記インク層(14)全体に対する固形分の体積割合、Sは第一の基体の表面積を表す。
【0017】
上記印刷方法において、上記第二溶媒グループの揮発完了が、第二溶媒グループのみを基板に塗布したときに、体積残が基板に塗布した直後の体積に対して10%となった時点である。
【0018】
上記印刷方法において、上記第一溶媒グループの完全揮発が、上記第一溶媒グループのみを基板に塗布したときに、体積残が基板に塗布した直後の体積に対して10%となった時点である。
【0019】
上記印刷方法において、上記第一の基板、上記第二の基板のうち少なくとも一方が親撥液パターンを有する。
【0020】
上記印刷方法において、上記第二の基体は転写版であり、さらに、上記転写版上のインク層(14a)を第三の基体(16)に転写させる工程を備える。
【0021】
上記印刷方法において、上記第一の基体は転写版であり、さらに、転写版上のインク層を第三の基体に転写させる工程を備える。
【0022】
上記印刷方法において、上記第三の工程は、上記第二の基体を上記第一の基体より離脱することで、上記第二の基体の上記撥インク層と接触するインク層を上記第一の基体から除去する工程を含む。
【0023】
この発明に基づいたパターン膜においては、上記印刷方法を用いて形成されている。
この発明に基づいたインク組成物においては、上記印刷方法に用いるインク組成物であって、当該インク組成物は、25°Cから2°C/minで昇温させた条件において、上記第一溶媒グループおよび第二溶媒グループが完全に乾燥する時間が1500秒〜5000秒の範囲である。
【0024】
この発明に基づいたインク組成物においては、上記印刷方法に用いるインク組成物であって、上記インク組成物の全体に対する上記第一溶媒グループの体積割合が30%以下である。
【0025】
この発明に基づいたインク組成物においては、当該インク組成物の固形分が、ポリイミド樹脂、BCB樹脂、アクリル樹脂、SOG、フッ素系樹脂から選択される絶縁材料である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に基づいた印刷方法、この印刷方法を用いて形成されたパターン膜、および、この印刷方法に用いるインク組成物によれば、第一溶媒グループの揮発完了後、第二溶媒グループの揮発完了までの範囲内で転写を行なうことより、押圧によるインク層膜厚の減少をほとんど起こすことなく転写を実現でき、所望の膜厚及び均一性の膜として転写することが可能となる。このとき、上記式(1)を満たす範囲のインク量を塗布することで、後述するとおり、(x2/(x1+x2))×T〜(1+x1/x2)×Tの範囲内まで高度に膜厚を制御することができる。
【0027】
上記条件下では、より沸点の高い溶媒がある程度含まれる状態、すなわち、表面が完全には乾燥していない状態であるため、インク層にタック性(べたつき具合)を付与することができる。この条件下で転写を行なうため、転写されるべき場所のインク層のタック性を利用することが可能であり、より効率的に転写を実現できる。すなわち、本発明の印刷方法によれば膜厚確保と転写性の両立が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
まず、1種類の溶媒と固形分を含むインクの乾燥挙動をもとに、印刷版(転写版)にインクを塗布した直後からの乾燥時間とインク層粘度との相関性から、従来の印刷方法における課題について考察する。
【0029】
図1は、インク層粘度の印刷版(転写版)にインクを塗布した直後からの乾燥時間依存性を示す模式図である。図1に示すとおり、インクを第一の基体に塗布してインク層を形成すると、塗布直後から溶媒が乾燥し、時間tがt=t,t=t,t=t(t<t<t)と経過すると共に、インク層粘度が増加していく。
【0030】
このとき、特許文献1に記載の印刷方法における上記工程1を実施後、工程2を実施するまでの時間の長さによって、転写はするが膜減りが大きい状態(領域1)、転写し、且つ、膜減りがほとんどない状態(領域2)、転写できない状態(領域3)の3種類に区分される。
【0031】
領域1とは、工程1の後に工程2を実施するまでの時間を短くし、工程2を実施した場合(例えばt=t1の場合)であり、図1に示すとおり、工程2直前インク層粘度が低いため、印刷版(転写版)に転写版(印刷版)を押し当てることでインクが流動し、インク層の膜減りが生じる。一方で、インク層表面は乾燥していないため、印刷版(転写版)から転写版(印刷版)へのインク転写は可能である。したがって、上記課題の図15(A)−(C)に示すように、印刷版(転写版)から転写版(印刷版)へのインク転写はできるが、インク層が圧縮されることによるインク層膜減りが生じる。
【0032】
領域3とは、工程1の後に工程2を実施するまでの時間を長くとり、工程2を実施した場合(例えばt=tの場合)であり、図1に示すとおり、工程2直前インク層粘度高いため、印刷版(転写版)に転写版(印刷版)を押し当てることによるインク流動はなく、インク層の膜減りは生じないが、インク層表面は乾燥してしまうために、転写版(印刷版)への密着性が低下し、印刷版(転写版)から転写版(印刷版)へのインク転写はできなくなる。したがって、この領域では、上記課題の図16(A)−(C)に示すように、印刷版(転写版)から転写版(印刷版)へのインク転写はできなくなる。
【0033】
領域2とは、工程1の後に工程2を実施するまでの時間が領域1と領域3の間の時間(例えばt=t)の場合であり、図1に示すとおり、工程2直前インク層粘度は比較的高く、印刷版(転写版)に転写版(印刷版)を押し当てることによるインク流動が抑制可能であり、インク層の膜減りは生じない。さらに、インク層表面は完全には乾燥していないため、印刷版(転写版)から転写版(印刷版)へのインク転写は可能である。
【0034】
この関係は、転写版(印刷版)上に形成できるインク層膜厚、印刷版(転写版)上に残るインク層膜厚の工程1後工程2を実施するまでの時間依存性として、それぞれ図2および図3のように模式的に示すことが可能である。
【0035】
上記課題は、従来の印刷方法において、転写時間を厳密に管理していない結果、上記3種類の領域区分のうち、上記領域2での転写が実現できていなかったことが原因である。したがって、上記領域2で工程2を実施することで解決することができる。しかしながら、1種類の溶媒の場合、図2および図3で示す領域2の時間が非常に小さく、時間マージンを拡大することが求められる。
【0036】
そこで、本発明では、溶媒を2種類以上用い、上記時間マージンを拡大した上で、時間マージン内で転写することで、転写後のインク層膜減りを抑制する方法を提案する。
【0037】
次に、本発明の印刷方法の概念を説明する。なお、本発明の印刷方法は、第一の基体の全面にインク層を形成する第一の工程、インク層を介して、第一の基体に第二の基体を加圧する第二の工程、第二の基体を第一の基体から離脱させインク層を転写させる第三の工程、の3段階の工程から構成される。
【0038】
まず、2種類以上の溶媒を便宜上、高沸点溶媒が含まれる第一溶媒グループ、低沸点溶媒が含まれる第二溶媒グループとすると、インク層粘度の第一の基板上にインクを塗布した直後からの乾燥時間依存性は、図4のようになる。すなわち、1種類の溶媒の場合と同様に、インクを第一の基体に塗布してインク層を形成すると、塗布直後から溶媒が乾燥し、時間tがt=t,t=t,t=t,t=t(t<t<t<t)と経過すると共に、インク層粘度が増加していく。
【0039】
ここで、時間t=t,t=tはそれぞれ第二溶媒グループ揮発完了の時間(同量の溶媒単体の90%が乾燥するために必要な時間と定義する)、第一溶媒グループ揮発完了の時間(同量の溶媒単体の90%が乾燥するために必要な時間と定義する)である。1種類の溶媒の場合と異なり、2種類以上の溶媒を含む場合、より沸点の低い第二溶媒グループの揮発が優先的に起こり、その後第一溶媒グループの揮発が起こるため、時間依存性としては、図5に示すようなショルダーを有するものになる。
【0040】
なお、上記の「同量の溶媒単体の90%が乾燥するために必要な時間と定義する」とは、混合溶媒に含まれる1種類の溶媒が先に揮発する場合、90%程度までは単独の場合と同様の乾燥挙動を示すが、それ以上になると、残存する他の溶媒の影響を受け始める。したがって、ここでは、90%揮発したとき(残存が10%のとき)揮発完了と定義している。
【0041】
このとき、上記第一の工程を実施後、第二の工程を実施するまでの時間の長さによって、上記1種類の溶媒の場合と同様に、転写はするが膜減りが大きい状態(領域1:t=tが含まれる領域)、転写し、且つ、膜減りがほとんどない状態(領域2:t=t,t=tが含まれる領域)、転写できない状態(領域3:t=tが含まれる領域)の3種類に区分される。このとき、溶媒組成と塗布量を調整することで、第二溶媒グループ揮発完了後、第一溶媒グループ揮発完了までの間(t<t<t)を領域2に相当する時間領域とすることができる。
【0042】
また、上記領域2において、インク層の組成は、第一の工程直後、第二の工程直前、第三の工程直前、第三の工程3の後インクが乾燥した状態、のそれぞれで図7に示すように変化する。なお、溶媒は固形分中に略均一に分散しているが、説明の便宜上、図5においては、一部溶媒と固形分とを分けて図示する場合がある。
【0043】
すなわち、図5に示すように、第一の基体にインク組成物を塗布しインク層を形成した直後の、塗布量yのインク層においては、第一溶媒グループの固形分(構成成分1)、第二溶媒グループの固形分(構成成分2)、第一溶媒グループ(構成成分3)、第二溶媒グループ(構成成分4)にて構成されている。
【0044】
しかし、時間が経過し、工程2直前の状態では、第二溶媒グループの揮発が完了しており、インク層においては、構成成分1、構成成分2、構成成分4’にて構成されることとなる。この状態で第二の基体と接触させると、揮発していない第一溶媒グループに溶解する固形分が流動し、その分に相当する膜厚が減少して、工程3直前のインク層である構成成分1、構成成分2’、構成成分4’’となる。この状態で第二の基体にインク層が転写されるため、第二の基体上で乾燥すると、最終的にインク層は構成成分1、構成成分2’から構成される。
【0045】
この関係は、第二の基体に形成できるインク層膜厚、第一の基体上に残るインク層膜厚の、第一の工程の後第二の工程を実施するまでの時間依存性として、それぞれ図6、図7のように模式的示すことが可能である。
【0046】
本発明は、溶媒組成と塗布量を調整し、第二溶媒グループ揮発完了後、第一溶媒グループ揮発完了までの間(t<t<t)を領域2となるようにした上で、この時間領域内で第二の工程を実施することが特徴である。
【0047】
続いて、本発明の印刷方法を実現する上で必要となる、溶媒組成と塗布量を定義する。具体的には、2種類以上の溶媒を用い、第一の工程の後第二の工程までの時間が領域2の範囲として転写したときに必要膜厚Tとなる条件を、前提条件のもと、インク塗布量ならびに溶媒組成によって示すことで、本発明の印刷方法を実現する上で必要な溶媒組成と塗布量を定義する。まず、前提条件及び定義は以下の通りである。
【0048】
条件1.各溶媒には同じ割合で固形分が溶解し、かつ、溶媒が揮発後、溶解していた固形分は別の溶媒に再溶解せず、膜化する。
【0049】
条件2.第一の基体と第二の基体とは全面にわたり接触させ、所定の大きさで加圧する。
【0050】
条件3.上記加圧条件では、接触時に揮発していない溶媒に溶解している固形分のみ加圧によって流動し、すでに揮発した分に溶解していた固形分の膜厚は変化しないものとする。
【0051】
また、インク組成物全体に対する第一溶媒グループの体積割合をx、インク組成物全体に対する第二溶媒グループの体積割合をx、インク組成物全体に対する固形分の体積割合をx、インク層を形成した直後の第一溶媒グループに溶解している固形分の体積割合をx3−1、第二溶媒グループに溶解している固形分の体積割合をx3−2、t=tで工程2を実施したときの膜厚をT、t=tで工程2を実施したときの膜厚をT、第一の基体の表面積S、インク塗布量をyとする。
【0052】
なお、xとxとxとの割合の合計は、1であり、x3−1とx3−2との合計はxであり、x3−1/x3−2をx/xと仮定する。
【0053】
また、t=tでは、第二溶媒グループに含まれる固形分x3−2のみが第三の工程ののち、第二の基体に転写されるため、Tは、
=y×x−2/S=(x/(x+x))×x×y/S
であり、Tは無負荷で乾燥させたときと同じ膜厚となるため、T
=y×x
である。
【0054】
上記前提条件ならびに定義を踏まえ、必要膜厚Tを領域2の時間領域での転写によって達成するためには、T<T<Tが必要である。これはインク塗布量yの式に変換すると、下記の式(1)が必要であることと同義である。
T×S/x<y<(1+(x/x))×T×S/x・・・式(1)
すなわち、必要膜厚Tを転写版上に形成するには、式(1)の範囲のインク塗布量yを塗布し、かつ、第二溶媒グループ揮発完了後、第一溶媒グループ揮発完了までの時間領域で上記第二の工程を実施することがよく、このことが本発明の印刷方法における重要な点である。
【0055】
一方、本発明の印刷方法によって形成した場合、上記範囲内の最小膜厚Tは、t=tすなわち第二溶媒グループ揮発完了直後に工程2を実施した場合であり、T=(x/(x+x))×Tとなる。一方、最大膜厚Tは第一溶媒グループ揮発完了直前に工程2を実施した場合であり、T=(1+x/x)×Tとなる。すなわち、上記式(1)の範囲内のインク塗布量yを塗布し、第一溶媒グループ揮発完了までに転写を実施することで、(x/(x+x))×T<T<(1+x/x)×Tの範囲での膜厚制御を達成することができる。
【0056】
本発明のポイントは、上述したインク層2の乾燥状態に合わせて、印刷方法の各工程を行なうことである。本発明に基づいた実施の形態における印刷方法について、図8から図12を参照しながら説明する。なお、図8から図12は、本実施の形態における印刷方法によってパターンを形成するときの、各々の工程におけるインクの授受を模式的に示した第1から第5の図である。
【0057】
図8に示すように、第一の基体11の全面にインク層14を形成する第一の工程、図9に示すように、インク層14を介して、第一の基体11に第二の基体15を加圧する第二の工程、図10に示すように、第二の基体15を第一の基体11から離脱させインク層14aを転写させる第三の工程、の3段階の工程をこの順に経てパターン膜17を形成する。
【0058】
まず、図8を参照して、第一の工程では、第一の基体11にインクを塗布し、図8のように第一の基体11の全面にインク層14を形成する。ここで、インク塗布量yは、上述のとおり、インク層14の最終必要膜厚Tに対し、T×S/x<y<(1+(x/x))×T×S/xの範囲の量とする。このとき、本発明に基づいた実施の形態における印刷方法では、後述のようなインク組成物を用いるため、第一の基体11の全面に均一にインク層14を形成できる。また、第一の基体11は、所定のパターンに配置された、撥インク層12と親インク層13とを有している。
【0059】
第一の基体11の撥インク層12としては、後述する第三の工程でのインクの離型性が高いものが必要であり、シリコン系ゴム、または、ジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン、メチルフルオロビニルシロキサンもしくはメチルフェニルビニルシロキサン等のポリマー、または、これらのポリマーと、ニトリルブタジエンゴム(以下「NBR」という)、エチレンプロピレンジエンモノマー(以下「EPDMという」もしくはスチレンブタジエンゴム(以下「SBR」という)とのブレンドおよび共重合系、または、NBR、EPDMもしくはSBR等にシリコンオイル等を混ぜ込んだもの等のゴム部材が挙げられる。また、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォンもしくはポリイミドフィルム等の有機系の樹脂材料の表面、または、金属、ゴム、樹脂もしくはセラミック等の表面に離型剤で離型処理したものが挙げられる。
【0060】
また、親インク層13としては、後述する第三の工程でインクを離型しないことが必要であり、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルム等の有機系の樹脂材料や、金属、ゴム、樹脂、セラミックが挙げられる。
【0061】
第一の基体11へのインク層14の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、キャスト法等、一般的な手法が適用可能である。
【0062】
続いて、第二の工程を行なう前に、第一の基体11上のインク層14を風乾させる。ここで、乾燥時間は上記第二溶媒グループ揮発完了から第一溶媒グループ揮発完了までの範囲である。このとき、後述するような、乾燥時間の長いインクを用いることで、上記時間を長くとることができる。上記時間が長いほど、インク層14面内の乾燥ムラの抑制が可能であり、押圧分布の影響を小さくできるため、結果的に、転写後の表面凹凸を小さくすることができる。
【0063】
第二の工程では、図9のように、インク層14を介して第一の基体11と第二の基体15とを接触させる。ここで、第二の基体15としては、第一の基体11の撥インク層12よりもインク組成物との密着性が高く、かつ、第一の基体11の親インク層13よりもインク組成物との密着性が低いものとして、第一の基体11に合わせて、上述した第一の基体11の撥インク層12、ならびに親インク層13の材料の範囲内から選択する。接触させる際の加圧力としては、インク層14の膜厚の減少を極力抑制することを考慮すると、全面にわたり接触する範囲内でできる限り小さいほうが好ましい。
【0064】
第三の工程では、図10のように第二の基体15を離型することで、撥インク層12の上面に配されるインク層14aを第二の基体15に転写させる。
【0065】
以上の工程によって、本発明の印刷方法によって、所定のパターンを有するパターン膜17を形成できる。パターン膜の種類としては、インクの固形分として適切な選択を行なうことで、配線パターン、絶縁膜パターン等を形成することができる。
【0066】
また、第二の基体を転写版15とし、第三の工程までで転写版15にインクを転写したのち、さらに、転写版15上のインク層を第三の基体に転写させる工程が含まれていても良い。
【0067】
この場合、図8に示すような第一の基体11の全面にインク層14を形成する第一の工程、インク層14を風乾させた後、図9に示すような第一の基体11と第二の基体(転写版)15とを接触させる第二の工程、図10に示すような第二の基体(転写版)15を第一の基体から離脱させインク層14aを転写させる第三の工程、図11に示すような第二の基体(転写版)15と第三の基体16とを接触させる第四の工程、図12に示すような第二の基体(転写版)15を第三の基体16から離脱させインク層14aを転写させる第五の工程をこの順に経てパターンを形成する。
【0068】
また、転写版15の材料条件は、第二の基体と同様に、転写版15の撥インク層12よりもインク組成物との密着性が高く、かつ、転写版15の親インク層13よりもインク組成物との密着性が低いものであれば特に限定されず、転写版15に合わせて選択することができる。
【0069】
また、第三の基体16としては、第二の基体(転写版)15よりもインク組成物との密着性が高いものであれば特に限定されず、第二の基体(転写版)15に合わせて、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルム等から選択することができる。
【0070】
ここまで、撥インク層12と親インク層13とを含む第一の基体11にインク層を塗布し、別の第二の基体15に転写する方法について述べたが、インク層を塗布する基体に限定はなく、逆に第二の基体15にインクを塗布し、撥インク層12と親インク層13とを有する第一の基体11と接触、離脱させることで、上記第一の基体11の親インク層13と接触するインク層14bを上記第二の基体15から除去する印刷方法であってもよい。
【0071】
この場合、第二の基体15にインク層14を形成する工程、インク層14を風乾させた後、上記第一の基体11と接触させる工程、上記第一の基体11を第二の基体15から離脱させ、上記第一の基体11の親インク層13と接触するインク層14bを上記第二の基体15から除去する工程をこの順に行なうことでパターンを形成できる。
【0072】
(印刷方法に用いるインク組成物)
続いて、本発明に基づいた上記実施の形態における印刷方法に用いるインク組成物について以下に説明する。実施の形態において用いられるインク組成物は、固形分と第一溶媒グループおよび第二溶媒グループとから構成されている。なお、溶媒の種類は2種に限らず、適宜3種以上用いることが可能である。
【0073】
ここで、固形分としては、溶媒に分散していても、溶解していてもよく、目的とするパターンに求める特性に応じて、種々の導電材料、絶縁材料から選択することができる。具体的には、導電材料として例えば銀、金、銅、ITO、SiO、TiO等の金属又は金属等の酸化物の微粒子が挙げられ、絶縁材料として、ポリイミド樹脂、BCB樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の有機系樹脂、SOG等が挙げられる。
【0074】
また、第一溶媒グループ,第二溶媒グループとしても上記固形分を分散あるいは溶解させられるものであれば特に限定されないが、上述のモデルのもと、第二溶媒グループが乾燥してから、第一溶媒グループが乾燥するまでの時間を長くすることを考慮すると、インクを25°Cから2°C/minで昇温させた条件において、第一溶媒グループ揮発完了が1500秒〜5000秒の範囲であることを特徴とするインク組成物が好ましい。
【0075】
1500秒以上あれば、第一の工程でインク層を形成後、第二の工程を実施する際、第一の基体の面内で乾燥をより均一にできるためであり、5000秒以下だと、250°C以下でインクを揮発できるために、最終的に膜を形成するプロセスの低温化が図れるためである。
【0076】
第一溶媒グループあるいは第二溶媒グループの溶媒の具体的な例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤; ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、ナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール等のアルコ−ル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等のケトン系溶剤;ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;水等が挙げられる。このうち、上記記載の理由により、第一溶媒グループの溶媒としては、例えばジプロピレングリコールエーテルモノメチルエーテルアセテートのような、沸点の高いものを選択することが好ましい。
【0077】
また、上記モデルを考慮すると、インク全体に対する第一溶媒グループの体積割合は、インク全体に対する第二溶媒グループの体積割合よりも小さいことが求められる。
【0078】
さらに、上述に示した第一の基体11、第二の基体15にインク層を均一に形成することを考慮すると、インクの表面張力は低いほうがよい。
【0079】
インクの表面張力を低下させるために、添加剤として界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。また、インク層の厚膜化のために、添加剤としてチキソ剤を添加してもよい。チキソ剤としては、例えばシリカ、カーボン等の微粒子、変性ウレア等のリンカー等が挙げられる。
【0080】
より具体的に示すために、絶縁膜パターンの形成例を示す。例えば、0.6μmの絶縁膜パターンを形成する場合、親インク層(感光性の有機樹脂)と撥インク層(例えば強撥液性のシリコーン樹脂)を有する版(例えば、東レ製水なし版が利用できる)上に、絶縁膜材料インクを一般的な塗布方法(例えば、バーコーター)により塗布すれば、版上に均一なインク層を形成できる。絶縁膜材料インクの組成としては、例えば以下のものが利用できる。
【0081】
固形分:フッ素系樹脂(0.01−0.2、例えば0.7),フッ素系界面活性剤(0.0001−0.01、例えば0.01)
第一溶媒グループ:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(0.1−0.3、例えば0.21)
第二溶媒グループ:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(0.5−0.8、例えば0.71)
また、このときのインク塗布量は、例えば24μlとする。
【0082】
続いて、インク層を一定時間(例えば5分)乾燥させた後、インク層を含む版に対して、転写体(例えば弱撥液性のシリコーンゴム)を押し当て、離脱することで、版の撥インク層の上面に配されたインク層を転写体に転写できる。その後、パターンを有する転写体を基体(例えばガラス基板)に押し当て、離脱することで基体上へ転写できる。
【0083】
基体上のパターンを所定条件(例えば200°C〜300°C、30分〜2時間、窒素雰囲気下で焼成)より、基体上に膜厚0.6μmの絶縁膜パターンを形成できる。上記例に対し、インク塗布量を24μlとし、インク乾燥時間を変化させたときの転写膜依存性を、図13に示す。
【0084】
上記例において、第二溶媒グループの揮発完了は2分であり、第一溶媒グループの揮発完了は10分であるため、本発明の印刷方法として好ましい乾燥時間は2分〜10分である。
【0085】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】1種類の溶媒を含むインクを用いたときの、第一の基体上に形成されたインク層粘度の時間依存性を示した模式図である。
【図2】1種類の溶媒を含むインクを用いたときの、第一の基体上にインク層を形成した後、第二の基体と接触、離脱後の第二の基体上に転写したインク層膜厚の、第一の工程の後、第二の工程を実施するまでの時間依存性を示した模式図である。
【図3】2種類以上の溶媒を含むインクを用いたときの、第一の基体上にインク層を形成した後、第二の基体と接触、離脱後の第一の基体に残るインク層膜厚の、第一の工程の後、第二の工程を実施するまでの時間依存性を示した模式図である。
【図4】2種類以上の溶媒を含むインクを用いたときの、第1の基体上に形成されたインク層粘度の時間依存性を示した模式図である。
【図5】第一の基体にインクを塗布したのち、第2の基体と接触、離脱させたときのインク層の構成の変化を示す模式図である。
【図6】2種類以上の溶媒を含むインクを用いたときの、第一の基体上にインク層を形成した後、第二の基体と接触、離脱後の第二の基体上に転写したインク層膜厚の、第一の工程の後、第二の工程を実施するまでの時間依存性を示した模式図である。
【図7】2種類以上の溶媒を含むインクを用いたときの、第一の基体上にインク層を形成した後、第二の基体と接触、離脱後の第一の基体に残るインク層膜厚の、第一の工程の後、第二の工程を実施するまでの時間依存性を示した模式図である。
【図8】本実施の形態における印刷方法によってパターンを形成するときの、各々の工程におけるインクの授受を模式的に示した第1の図である。
【図9】本実施の形態における印刷方法によってパターンを形成するときの、各々の工程におけるインクの授受を模式的に示した第2の図である。
【図10】本実施の形態における印刷方法によってパターンを形成するときの、各々の工程におけるインクの授受を模式的に示した第3の図である。
【図11】本実施の形態における印刷方法によってパターンを形成するときの、各々の工程におけるインクの授受を模式的に示した第4の図である。
【図12】本実施の形態における印刷方法によってパターンを形成するときの、各々の工程におけるインクの授受を模式的に示した第5の図である。
【図13】インク塗布量と押圧による膜減り割合との関係を示す図である。
【図14】背景技術における印刷方法の工程を示した模式図である。
【図15】背景技術における課題である、インク層膜減りを示した模式図である。
【図16】背景技術における課題である、印刷版へのインク層残りを示した模式図である。
【符号の説明】
【0087】
1 第二溶媒グループの固形分、2 第一溶媒グループの固形分、3 第二溶媒グループの溶媒、4 第一溶媒グループの溶媒、10 第一の基体、11 第一の基体、12 撥インク層、13 親インク層、14,14a,14b インク層、15 第二の基体(転写版)、16 第三の基体、17 パターン膜、101 印刷版、102 親樹脂層、103 撥樹脂層、104 インク、105 転写版、106 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥インク層と親インク層とを有する第一の基体の全面にインク組成物を塗布してインク層を形成する第一の工程と、前記インク層を介して、前記第一の基体に第二の基体を加圧する第二の工程と、前記第二の基体を前記第一の基体より離脱することで、前記第一の基体の前記撥インク層の上面に配されるインク層を前記第二の基体に転写する第三の工程と、を備えた印刷方法であって、
前記インク組成物が沸点の異なる第1溶媒グループと第2溶媒グループとを有し、
前記第1溶媒グループを構成する溶媒のうち、最高沸点のものの沸点を前記第1溶媒グループの沸点とし、前記第2溶媒グループを構成する溶媒のうち、最低沸点のものの沸点を前記第2溶媒グループの沸点とするとき、
前記第2溶媒グループが揮発完了後、前記第1溶媒グループが完全揮発までの間に、前記第二の工程を行なうことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記インク層の必要膜厚Tに対し、前記第一の工程にて、下記式(1)を満足するyの量の前記インク組成物を塗布することを特徴とする、請求項1の印刷方法。
T×S/x<y<(1+(x/x))×T×S/x・・・式(1)
[式(1)において、yはインク塗布量(cm)、xは前記インク層全体に対する第1溶媒グループの体積割合、xは前記インク層全体に対する第2溶媒グループの体積割合、xは前記インク層全体に対する固形分の体積割合、Sは第一の基体の表面積を表す。]
【請求項3】
前記第2溶媒グループの揮発完了が、第2溶媒グループのみを基板に塗布したときに、体積残が基板に塗布した直後の体積に対して10%となった時点である、請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記第1溶媒グループの完全揮発が、前記第1溶媒グループのみを基板に塗布したときに、体積残が基板に塗布した直後の体積に対して10%となった時点である、請求項1から3のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記第一の基板、前記第二の基板のうち少なくとも一方が親撥液パターンを有する、請求項1から4のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項6】
前記第二の基体は転写版であり、さらに、前記転写版上のインク層を第三の基体に転写させる工程を備えた、請求項1から5のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項7】
前記第一の基体は転写版であり、さらに、転写版上のインク層を第三の基体に転写させる工程を備えた、請求項1から6のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項8】
前記第三の工程は、前記第二の基体を前記第一の基体より離脱することで、前記第二の基体の前記撥インク層と接触するインク層を前記第一の基体から除去する工程を含む、請求項1から7のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の印刷方法を用いて形成されたパターン膜。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の印刷方法に用いるインク組成物であって、
当該インク組成物は、25°Cから2°C/minで昇温させた条件において、前記第1溶媒グループおよび前記第2溶媒グループが完全に乾燥する時間が1500秒〜5000秒の範囲であることを特徴とするインク組成物。
【請求項11】
請求項1から8のいずれかに記載の印刷方法に用いるインク組成物であって、
当該インク組成物の固形分が、ポリイミド樹脂、BCB樹脂、アクリル樹脂、SOG、フッ素系樹脂から選択される絶縁材料であるインク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−52351(P2010−52351A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221524(P2008−221524)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】