説明

印刷方法、印刷装置、およびそれに用いる印刷版並びにパターン膜

【課題】インク転写が良好な印刷方法、印刷装置、およびそれに用いる印刷版ならびにパターン膜を提供することを目的とする。
【解決手段】印刷方法は、凸部3が親インク層13であり、凹部2が撥インク層12である撥凹版を用い、撥凹版の全面にインク層14を塗布する工程と、インク層14を介して、撥凹版に基体1を接触させる工程と、基体1を撥凹版より離脱することで、撥凹版の撥インク層の上面に配されるインク層を基体に転写する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、装置とそれを用いて形成されるパターン膜並びにそれに用いる印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パターンを形成する技術として直接印刷する方法やオフセット印刷法が知られている。オフセット印刷とは、印刷パターンが形成された版に付けられたインクを、一旦ブランケットなどの中間転写体にオフつまり転写した後、紙あるいは基板などの媒体にセットする方法である。
【0003】
一方、電子デバイス等に適用しうる微細パターンを形成する技術が求められている中、印刷法により、微細パターンを形成する技術として、樹脂に対して撥樹脂性である撥樹脂層による画線部と、樹脂に対して親樹脂性である親樹脂層による非画線部とが形成される画像形成版(印刷版)を用い、画像形成版の全面に、樹脂たとえばインクを塗布した後、撥樹脂層上のインクのみを、別の撥樹脂層が設けられた画像転写シートつまりブランケット上に転写し、さらに画像転写シート上に転写されたインクを基板上に転写して画像形成を行う印刷方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
手法は、版の撥液部(撥樹脂層)を画線部とし、画線部上のインク層をブランケット側に全量転写させること、ならびに、版全面に形成されたインク層を版の非画線部と画線部との界面でせん断分離させることを利用した方法であり、版からインクを離脱させる際、ならびに、インクを分断する際の糸曳きをなくすことができるために、微細パターン形成が可能であり、20μmの線幅のブラックマトリクスや60μmの線幅のカラーフィルターといった微細パターンを形成できる優れた印刷技術である。
【0005】
印刷方法では版全面にインク層を形成することが前提となる。ここで、特許文献1の図面によると印刷版には、凸部が撥インク層であり、且つ、凹部が親インク層である撥凸版、より具体的には、例えば東レ社製の水なし版(PS版)を用いており、ブラックマトリクスやカラーフィルター用途のように、撥インク層に対するインク接触角の小さいインクを用い、かつ、形成するパターンに相当する版の撥インク層の面積を大きくする必要性がない場合、版全面にインク層を形成するという前提条件を満たせるために、手法を用いることで高精細な印刷ができる。ここで、水なし版とは、凹部と凸部との高低差が2μm程度あり、かつ、凸部が撥インク性を示す版である。しかしながら、電子デバイスに一般に使用される配線、絶縁膜、透明導電材料を含むインクの多くは、撥インク層102に対する接触角を上記ブラックマトリクスあるいはカラーフィルタ用途のインクほど下げられないものが多い。このような撥インク層に対する接触角が大きなインクを上記の撥凸版に塗布すると、凸部(撥インク層)102でインクはじきが生じ、このはじいたインクが凹部の親インク層103に流動してしまい、図31のように版101全面にインク層104を形成できなくなる。すなわち、撥インク層102に対する接触角の大きいインクに対しては、印刷方法の前提条件が満たせないために、印刷方法が適用できない課題があった。
【0006】
また、従来の印刷版として、例えば、版の頂部面111を親インク性とし、凹部112を撥インク性とした親凸版(例えば特許文献2)が提案されている。特許文献2に記載の凸版の構造としては、図32に示すとおりであり、親インク層/撥インク層の積層体に対し、その上面より撥インク層の深部にまで掘り込みを入れ、凸部が親インク性で凹部が撥インク性となる凹凸構造を形成している。つまり、撥インク層上に対しても、深い掘り込みがされている。特許文献2によると、凸版にインクを塗布すると、図33に示すとおり、頂部面(親インク層)のみにインク層が形成され、この頂部面のインク層を垂直に分断しながら、ブランケット、基板の順に転写していくことで、基板上にパターンが形成される。すなわち、撥インク層が深く掘り込まれているために、頂部面(親インク層)のインクしか印刷に寄与しないように構成された特許文献2に記載の印刷版では、特許文献1に記載されるような微細パターンを形成することには適していない。また、別の従来の印刷版としては、全面を撥インク性とした凹版(例えば特許文献3)が提案されている。特許文献3に記載の凹版の構造としては、図34に示すとおりであり、凹版全面に撥インク層がコーティングされている。凹版は、インクを塗布すると、図35に示すとおり、凹部のみにインク層が形成されるように設計されている。すなわち、いずれも、版上の局所的なパターン部にのみインクを残すように設計されており、版全面をインク層が被覆させることを前提とした印刷方法に適用することは困難であった。
【特許文献1】特開2004−249696号公報
【特許文献2】特開2007−90596号公報
【特許文献3】特許第2765258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は撥液パターンからなる印刷版の全面にインクを塗布し、撥液層上のインクを転写する印刷方法において、インク転写が良好な印刷方法、印刷装置、およびそれに用いる印刷版ならびにパターン膜を提供することを目的とする。
【0008】
より具体的には、上記課題に対し、本発明では、1つの局面として、凸部が親インク性を示し、かつ、凹部が撥インク性を示す印刷版を用いる印刷方法を提案する。また、別の局面として、親インク性を示す層と撥インク性を示す層から構成されるその表面が略平坦となる印刷版を用いる印刷方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの局面に従った印刷方法は、凸部が親インク層であり、凹部が撥インク層である撥凹版を用い、撥凹版の全面にインクを塗布する工程と、インク層を介して、撥凹版に第一の基体を接触させる工程と、第一の基体を撥凹版より離脱することで、撥凹版の撥インク層の上面に配されるインク層を基体に転写する工程とを備える。
【0010】
本発明の別の局面に従った印刷方法は、第一の基体の全面にインクを塗布する工程と、
インク層を介して、第一の基体に、凸部が親インク層であり、凹部が撥インク層である撥凹版を接触させる工程と、撥凹版を第一の基体より離脱することで、撥凹版の親インク層と接触するインク層を第一の基体から除去する工程とを備える。
【0011】
好ましくは、撥凹版に第一の基体を接触させる工程と転写する工程との間に、さらに、第一の基体を加圧することで、凹部にインクを充填する工程を備える。
【0012】
好ましくは、第一の基体は転写版であり、さらに、転写版上のインク層を第二の基体に転写させる工程を備える。
【0013】
好ましくは、親インク層の側面が撥インク性である。
好ましくは、撥インク層がシリコーン樹脂である。
【0014】
好ましくは、記親インク層が金属材料又はその酸化物からなる。
本発明に従った印刷版は、上記のいずれかの印刷方法に用いる印刷版であって、基体上に撥インク層と親インク層をこの順に形成する工程と、部分的に親インク層を除去する工程とによって形成される。
【0015】
好ましくは、部分的に親インク層を除去する工程において、その下層の撥インク層の撥液性が損なわれないように、撥インク層の上部の親インク層が選択的に除去加工されることで形成される。
【0016】
好ましくは、レーザ照射によって親インク層を部分的に除去する。
好ましくは、マスクの開口部を介したレーザ照射により、その開口部に対応する領域の親インク層が除去されてなる。
【0017】
好ましくは、マルチショットのレーザ照射により形成されてなる。
好ましくは、マルチショットにおける最終ショットの照射エネルギー強度を最終ショット以外の最大強度と比較して小さくすることによって形成されてなる。
【0018】
好ましくは、マルチショットにおける照射エネルギー強度を照射ごとに段階的に小さくするエネルギー変調型マルチショット法によって形成される。
【0019】
本発明に従ったパターン膜は、上記のいずれかの印刷方法によって形成される。
本発明の1つの局面に従った印刷装置は、凸部が親インク層であり、凹部が撥インク層である撥凹版と、撥凹版の全面にインクを塗布する手段と、インク層を介して、撥凹版に第一の基体を接触させる手段と、第一の基体を撥凹版より離脱することで、撥凹版の撥インク層の上面に配されるインク層を基体に転写する手段とを備える。
【0020】
本発明の別の局面に従った印刷装置は、凸部が親インク層であり、凹部が撥インク層である撥凹版と、第一の基体の全面にインクを塗布する手段と、インク層を介して、第一の基体に、撥凹版を接触させる手段と、撥凹版を第一の基体より離脱することで、撥凹版の親インク層と接触するインク層を第一の基体から除去する手段とを備える。
【0021】
本発明の別の局面に従った印刷方法は、親インク層と撥インク層から構成されたその表面が略平坦である平版を用い、平版の全面にインクを塗布する工程と、インク層を介して、平版に第一の基体を接触させる工程と、第一の基体を平版より離脱することで、平版の撥インク層の上面に配されるインク層を基体に転写する工程とを含む。
【0022】
本発明のさらに別の局面に従った印刷方法は、第一の基体の全面にインクを塗布する工程と、インク層を介して、第一の基体に親インク層と撥インク層から構成されたその表面が略平坦である平版を接触させる工程と、平版を第一の基体より離脱することで、平版の親インク層と接触するインク層を第一の基体から除去する工程とを備える。
【0023】
好ましくは、第一の基体として転写版を用い、さらに、転写版上のインク層を第二の基体に転写させる工程を備える。
【0024】
好ましくは、撥インク層がシリコーン樹脂である。
好ましくは、親インク層が金属材料又はその酸化物からなる。
【0025】
上記の印刷方法に用いる印刷版は、開口部を有する親液版の開口部に撥インク層材料を注入、焼成させることによって形成される。
【0026】
好ましくは、基板上に離型剤を介して特定の開口部を有する親液版を密着させる工程と、親液版の開口部に撥インク層材料を注入、焼成させる工程と、離型剤を含む層で親液版と基板とを剥離する工程とによって形成される。
【0027】
本発明に従ったパターン膜は、上記の印刷方法によって形成される。
本発明のさらに別の局面に従った印刷装置は、親インク層と撥インク層から構成されたその表面が略平坦である平版と、平版の全面にインクを塗布する手段と、インク層を介して、平版に第一の基体を接触させる手段と、第一の基体を平版より離脱することで、平版の撥インク層の上面に配されるインク層を基体に転写する手段とを含む。
【0028】
本発明のさらに別の局面に従った印刷装置は、親インク層と撥インク層から構成されたその表面が略平坦である平版と、第一の基体の全面にインクを塗布する手段と、インク層を介して、第一の基体に平版を接触させる手段と、平版を第一の基体より離脱することで、平版の親インク層と接触するインク層を第一の基体から除去する手段とを備える。
【発明の効果】
【0029】
本発明の1つの局面に従った印刷方法は、以下の特徴を有する。
(1)凸部を親インク層とし、かつ、凹部を撥インク層とした撥凹版を用い、よりインクを残しにくい撥インク層を凹部とするという形状効果によって、印刷版へのインク塗布の工程において、撥部でのインクはじきを起こりにくくする。
(2)インク塗布直後、撥凹版の撥インク層上においてインクがインク層を形成できるだけ十分に残しきれていなかったとしても、続いて版と基体とを接触させることで、版の凹部である撥インク層上にもインクを充填できる。また、このとき、版と基体とを接触させた後に加圧することで、凹部の深さに応じた厚みで凹部にインクを充填できる。
【0030】
本発明の特徴によって、配線材料のように、原材料の溶解性が低い等の理由により溶媒濃度が高くされた場合、撥インク層に対する接触角が高いインクを用いた場合、インク層の大半を基板に印刷するような版の撥インク層の面積が大きいパターンの場合であっても、本発明の印刷方法を適用することによって、撥液部でのインクはじきを防止して印刷版の全面にインクを塗布することができ、その結果微細なパターン膜を形成できる。さらに、本発明の特徴(2)によって、厚膜、あるいは高アスペクト比の微細パターンであっても良好に形成できる。このとき、親インク層の側面を撥インク性とした撥凹版を用いることで、凹部のインクをより効率的に転写できるため、インク転写をさらに良好に達成できる。
【0031】
本発明の別の局面に従った印刷方法は、以下の特徴を有する。
(3)親インク層と撥インク層から構成されたその表面がほぼ平坦な平版を用いることで、略平坦であるという形状効果によって撥部でのインクはじきを起こりにくくする。
(4)撥インク層上において、インクがインク層を形成できるだけ十分に残しきれていなかったとしても、版と基体とを接触させることで、インク層を一部流動させ、撥インク層上にもインク層を維持できる。
【0032】
本発明の特徴によって、配線材料のように、原材料の溶解性が低い等の理由により溶媒濃度が高くされた場合、撥インク層に対する接触角が高いインクを用いた場合、インク層の大半を基板に印刷するような版の撥インク層の面積が大きいパターンの場合であっても、本発明の印刷方法を適用することによって、撥液部でのインクはじきを防止して印刷版の全面にインクを塗布することができ、その結果微細なパターン膜を形成できる。このとき、本発明では平版を用いているため、印刷版からのインク層の離型性が良く、一層微細なパターンを形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
まず、本発明の1つの局面に従った印刷方法ならびにそれに用いる印刷版について、下記第一の形態として説明する。
【0034】
本発明の1つの局面に従った印刷方法
特許文献1に記載の印刷方法では、上述のとおり、撥インク層に対する接触角が小さい場合しか印刷ができなかった。発明者らが確認した範囲では、具体的にはその接触角は20°以下の範囲であった。これに対し、本発明の印刷方法は、従来と比較して、撥インク層に対する接触角の大きなインクであっても適用できる。しかしながら、あまりにも接触角が大きなインクに対しては、本発明の印刷方法を適用してもパターン形成は困難であり、溶液を増粘させる等の他の手法をあわせる必要があるが、少なくとも、撥インク層に対するインクの接触角が80°以下であれば、本発明の印刷方法を適用できる。上記の範囲のインクとしては、例えばAg、Cu、Auなどの配線材料、In、SnO2,ITOなどの透明導電材料やポリイミド系、アクリル系、フッ素系樹脂等の層間絶縁材料を含むものが該当し、これらのインクを用いたとしても、本発明の印刷方法を適用することで配線膜、透明導電膜、絶縁膜等、各種パターン膜を形成できる。また、本発明の印刷方法では、撥凹版の形状効果を利用するため、版の撥部のパターンサイズとしても、従来と比較して大きくすることが可能である。具体的には、版の撥部が50μm□(一辺が50μmの正方形)〜200μm□であっても、上記範囲のインクを用いて版全面にインク層を形成できる。
【0035】
続いて、本発明の1つの局面に従った印刷方法について、図面に従って説明する。なお、図1〜図8では親インク層と撥インク層を隣接して交互に配置した構造を示しているが、後述する版の製造方法によっては、図9〜図11や図16に示すような、撥インク層上に親インク層を積層した構造が採用される。但し、凸部の親液層と凹部の撥液層との段差を精度良く管理するためには、撥部と親部が積層された印刷版(図9〜図11や図16)が好ましい。
【0036】
図1、図2、図4は本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図であり、図1に示すような版全面にインク層を形成する第一の工程、図2に示すような版と基体1とを接触させる第二の工程、図4に示すような基体1を版から離脱させインクを転写させる第三の工程の3段階の工程をこの順に経てパターンを形成する。
【0037】
第一の工程では、版11にインクを塗布し、図1のように版全面にインク層14を形成する。塗布方法としては、一般的な手法が適用可能である。ここで、本発明の印刷方法では、版として、凸部3が親インク層13であり、凹部2が撥インク層12である撥凹版を用いていることが特徴であり、このような版を用い、図1のように、隣接する親インク層間のブリッジと、撥インク層を凹部とした形状効果を利用することで、版全面にインク層を形成する。上記手法を利用することで、別の基体に転写するまでの一定時間であれば、版の撥液部であってもはじくことなく、均一な形状を維持することができる。
【0038】
第二の工程では、図2のように、インクを介して版11と基体1とを接触させる。このとき、インクが押圧され、凹部にインクが充填される。ここで、基体1としては、版の撥インク層よりもインク組成物との密着性が高く、かつ、版の親インク層よりもインク組成物との密着性が低いものであれば特に限定されず、版に合わせて、シリコン系ゴム、または、ジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン、メチルフルオロビニルシロキサンもしくはメチルフェニルビニルシロキサン等のポリマー、または、これらのポリマーとニトリルブタジエンゴム(以下「NBR」という)、エチレンプロピレンジエンモノマー(以下「EPDMという)もしくはスチレンブタジエンゴム(以下「SBR」という)とのブレンドおよび共重合系、または、フッ素ゴム、または、NBR、EPDMもしくはSBR等にシリコンオイル等を混ぜ込んだもの等のゴム部材や、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルム等の有機系の樹脂材料、あるいは、金属、ゴム、樹脂、セラミック等の表面に離型剤で離型処理したものから選択することができる。接触させる際の加圧力としては、版の凹部深さ次第で適宜設定され、例えば図3に示すように凹部が深い印刷版を用いる場合は、より大きな加圧力を与えることがよい。この場合、加圧されることで、図3に示すとおり、図2と比較して版と第一の基体間ギャップが非常に小さくなり、インク層膜厚を、版の凹部の深さと同程度に管理することもできる。
【0039】
第三の工程では、図4のように基体1を離型することで、撥インク層の上面に配されるインク層を基体1に転写させる。
【0040】
図5から7は、本発明の1つの局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。インク授受のプロセスとしては、版と基体1とがある程度の距離までは図5のように版ならびに基体1の両者に吸着されたままであるが、さらに距離を大きくすることで、まず、図6のように版の撥液部のインクが版から離型され、続いて、図7のように版の親液部と対向する部分のインクのみが基体1から離型する。その後、版と基体1に吸着されたインクがせん断面15にて分離され、かつ、版の凹部側面から離型されることで、最終的には図8のように版の撥液部のインクのみが基体1に転写される。このとき、版の凹部側面、すなわち、親インク層の側面を撥インク性としておけば、いっそう離型性を高めることができる。
【0041】
以上の工程によって、本発明の1つの局面に従った印刷方法によって、パターン膜を形成できる。ここで、上述のとおり、本発明の1つの局面に従った印刷方法は、よりインク層を形成することが困難な撥インク層を版の凹部にしていることにより、版の撥インク層に対するインク接触角が大きいインクを使用しても、印刷版の全面にインク層を形成することができ、その結果特許文献1に記載の作用が理想的に行われ、良好な形状のパターン膜を形成できる。また、凹部深さと加圧力次第で、厚膜あるいは高アスペクト比のパターンにも対応可能である。さらに、形成されたパターン膜は、版の撥インク層と親インク層の界面近傍におけるせん断分離によって分断できるため、インクの糸引きを抑制したエッジ直進性のよいパターンをとなる。したがって、配線や絶縁膜パターン等のような、エッジ形状に起因する不良が出やすいパターンに適用しても、その不良を抑制することができる。また、本発明の1つの局面に従った印刷方法は撥インク層上面に配されるインク層が全量転写されるために、撥インク層の形状をそのまま反映したパターン膜を形成できる。
【0042】
また、基体1を転写版とし、第三の工程までで転写版にインクを転写したのち、さらに、転写版上のインク層を第二の基体に転写させる工程が含まれていても良い。この場合、図9に示すような版全面にインク層を形成する第一の工程、図10に示すような版と基体1(転写版)とを接触させる第二の工程、図11に示すような基体1(転写版)を版から離脱させインクを転写させる第三の工程、図12に示すような基体1(転写版)と第二の基体4とを接触させる第四の工程、図13に示すような基体1(転写版)を第二の基体4から離脱させインクを転写させる第五の工程をこの順に経てパターンを形成する。
【0043】
また、転写版の材料条件は、第一の基体と同様に、版の撥インク層よりもインク組成物との密着性が高く、かつ、版の親インク層よりもインク組成物との密着性が低いものであれば特に限定されず、版に合わせて選択することができる。
【0044】
また、第二の基体4としては、基体1(転写版)よりもインク組成物との密着性が高いものであれば特に限定されず、基体1(転写版)に合わせて、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルム等から選択することができる。
【0045】
以上の工程をこの順に行う方法として、撥凹版と、撥凹版の全面にインクを塗布する手段と、インク層を介して、撥凹版に第一の基体を接触させる手段と、第一の基体を撥凹版より離脱することで、撥凹版の撥インク層の上面に配されるインク層を基体に転写する手段とを備えた印刷装置を用いることができる。
【0046】
撥凹版の全面にインクを塗布する手段としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、キャスト法等が利用できる。スリットコーター等を用いた後に、ブレードを用いたドクタリングを実施してもよい。インク層の塗布する場所については、撥凹版、第一の基体のいずれであってもよい。
【0047】
さらに、第一の基体を転写版とし、上記手段に加え、さらに、第一の基体と第二の基体とを接触させる手段と、第二の基体を第一の基体より離脱することで、第一の基体のインク層を第二の基体に転写する手段とを備えた装置を用いれば、第二の基体にも印刷することができる。なお、この場合、第一の基体(転写版)の形状としては、上述のとおり、平版状、ローラー状に限定されない。図14に本発明の印刷装置の一例の模式図を示す。印刷装置41は、撥凹版42、図示しないインク供給部、第一の基体(ブランケット胴)43、第二の基体44、版及び基板搬送部45、図示しない駆動装置を含んで構成される。本発明の印刷方法は図14に示すとおり、例えば印刷装置41において、撥凹版42にインク層を形成した後、ブランケット胴43接触させながら回転させることで、撥凹版の撥インク層を第一の基体にインク層を転写したのち、搬送部45あるいは第一の基体43を移動させることで第二の基体44の上面に第一の基体を移動し、第一の基体を第二の基体44に接触させながら回転することで第二の基体に転写することで達成できる。さらに、連続印刷時のパターン再現性を向上させることを考慮し、図示しない版洗浄装置、ブランケット洗浄装置を備えている。なお、上記構成に対し、インク塗布後に膜均一性を高めるために、ドクタリングする場合、ドクターブレードを備えていても良い。また、図15は、本発明の印刷装置の別の一例である。印刷装置46は、印刷装置41と同様に撥凹版42、第二の基体44、図示しないインク供給部、版及び基板搬送部45および図示しない駆動装置と、さらに、転写系として、第一の基体(平板状のブランケット)47ならびにその背面の加圧機構48から構成される。本発明の印刷方法はまた、図15に示すとおり、例えば印刷装置46において、撥凹版42にインク層を形成した後、加圧機構48を用いて第一の基体46接触させる。このとき、版の深さに応じて加圧機構の加圧力を調整する。続いて離脱させることで、撥凹版の撥インク層を第一の基体にインク層を転写したのち、搬送部45あるいは第一の基体46を移動させることで第二の基体44の上面に第一の基体を移動し、第一の基体を第二の基体44に接触させ、離脱させることで第二の基体に転写することで達成できる。
【0048】
上記いずれの構成においても本発明の印刷方法は達成できるが、撥凹版の深さに応じて加圧する機構を付与できる点で、平板上のブランケットを備えている印刷装置42の構成の方がより好ましい。
【0049】
より具体的に示すために、配線パターンならび絶縁膜パターンの形成例を示す。
例えば、配線材料として、銀パターンを形成する場合、親インク層(例えばアルミニウム)と撥インク層(例えば強撥液性のシリコーン樹脂)の高低差が100nmの撥凹版(版の形成方法は後述のとおり、例えばレーザ照射等で形成できる。)上に、配線材料インク(例えばアミン系界面活性剤にて分散された銀ナノ粒子インク:版の撥インク層に対するインク接触角50°)を一般的な塗布方法(例えばバーコーター)により、塗布し、数分乾燥させれば、版上に均一なインク層を形成できる。続いて、インク層を含む版に対して、転写体(例えば弱撥液性のシリコーンゴム)を押し当て、離脱することで、版の撥インク層の上面に配されたインク層を転写体に転写できる。その後、パターンを有する転写体を基板(例えばガラス基板)に押し当て、離脱することで基板上へ転写できる。基板上のパターンを所定条件(例えば250℃、30分)焼成すれば、基板上に配線パターンを形成できる。
【0050】
また、例えば3μm程度の厚膜の絶縁膜パターンを形成する場合、親インク層(例えばアルミニウム)と撥インク層(例えば強撥液性のシリコーン樹脂)の高低差が3μmの撥凹版(版の形成方法は後述のとおり、例えばレーザ照射等で形成できる。)上に、絶縁膜材料インク(例えばポリイミド系材料、アクリル系材料、フッ素含有材料等:版の撥インク層に対するインク接触角60°〜80°)を一般的な塗布方法(例えばバーコーター)により、塗布し、乾燥させれば、版上に均一なインク層を形成できる。続いて、インク層を含む版に対して、転写体(例えば弱撥液性のシリコーンゴム)を加圧しながら押し当て、離脱することで、版の撥インク層の上面に配されたインク層を転写体に転写できる。その後、パターンを有する転写体を基板(例えばガラス基板)に押し当て、離脱することで基板上へ転写できる。基板上のパターンを所定条件(例えば200℃〜300℃、30分〜2時間、窒素雰囲気下)焼成すれば、基板上に絶縁膜パターンを形成できる。
【0051】
本発明の1つの局面に従った印刷方法に用いる印刷版
本発明の印刷版は、印刷方法に用いる版であって、凸部3が親インク層13であり、かつ、凹部2が撥インク層12であることが特徴である。
【0052】
ここで、親インク層としては、第一の工程で版全面にインク層を形成できる程度に、その表面に対するインク濡れ性が高いこと、ならびに、印刷方法の第三の工程において転写版離型後にインク層を版に残すだけの付着力を持っていることが求められる。上記条件を満たす特性を有するためには、インクに対する親和性が高ければよい。さらに版全体に対する親インク層の割合が小さくても、ブリッジ効果によって版全面にインク層を形成させることを考慮すると、インクに対する親和性がさらに大きい方がより好ましく、例えばインクに対する親インク層の接触角が15°以下であれば好ましい。このような層の材料としては、たとえばアルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル等の金属や金属酸化物、金属窒化物や酸化シリコン等の無機系酸化物、ポリビニルアルコール等の親水性の有機材料等から選択できる。また、一般的な基材に親液処理剤等をコートしたものでもよい。
【0053】
撥インク層としては、印刷方法の第三の工程において、転写版離型後にインク層を版の撥部から転写版へ転写されることが必要であり、撥インク層のインク付着力が小さい、すなわち、撥インク層のインクに対する接触角が80°以下の範囲で大きい方が好ましい。この点で、撥インク層の材料としては、有機系の樹脂材料や、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂やオリゴマー等によりその表面に撥液処理を施した撥インク層材料が挙げられるが、繰り返し使用することを考慮すれば、耐溶剤性の高いシリコーン系樹脂が特に好ましい。
【0054】
また、親インク層と撥インク層の段差に関しては、第一の工程にてインク層を全面に形成することを考慮すると、印刷に使用するインクの撥インク層に対する撥液性に合わせて、版の深さを選択し、少なくとも撥インク層でのインクはじきを防止できるだけの高低差を持つようにする。
【0055】
続いて本発明の印刷版の製造方法について図16の(A)から(D)に従って、説明する。本発明の印刷版は、凸部が親インク性であり、かつ、凹部が撥インク性であることが特徴である。このような形状は、図16の(A)から(D)に示すように、ある基板17上に、撥インク層12、親インク層13をこの順に形成し積層体としたのちに、最表面の親インク層に対し、部分的に除去する方法が適用できる。図16の(A)から(D)では、レーザ照射によって親インク層を除去する方法を記載している。例えば図16の(A)から(D)のように、マスク18を介してレーザ光L1を積層体に照射し、照射部分の親インク層を除去することで印刷版(撥凹版)を形成することができる。ここで、印刷版の基板としては、撥インク層の形成を阻害しないものであれば特に限定されない。撥インク層、親インク層の形成方法については、材料物性に合わせて溶液塗布、真空製膜等から適宜選択する。撥インク層としてシリコーン層を適用する場合、例えば、バーコーターを用いて、ガラス基板上にシリコーン樹脂(信越シリコーン社、モメンティブ社等から入手できる)を塗布し、所定条件(例えば150℃で1時間)乾燥させることで、撥インク層を形成できる。また、水無し版(東レ社から入手できる)の撥インク層も利用できる。
【0056】
一方、親インク層の膜厚(最終的に撥凹版の凹部深さに相当する)は、凹部深さ次第で例えば10nm〜10μmの範囲から選択される。なお、撥液層上部に親液層を形成する際に、撥液層と親液層との密着性を確保するために、間に接着層を形成してもよい。親液層は、真空プロセスあるいは溶液塗布等によりアルミニウム等の金属膜を製膜する方法や、撥インク層上面に親液剤等を塗布する方法、基材上に親液処理剤をコーティングする方法等により形成できる。
【0057】
印刷版は、積層体をパターニング(親インク層を部分的に除去する)することで形成される。ここで、パターニング方法としては、図16に示すように、例えばレーザを用いる方法があり、上層である親インク層だけを選択的に除去できるよう、波長、エネルギー、パルス幅、ショット数を適宜設定する。波長としては、例えば248nm〜1064nmから選択できるが、波長が長いほど熱的な影響が大きくなるため、より微細なパターンを形成することを考慮する場合、波長がより短いレーザを用いるほうが好ましい。また、照射時間(パルスレーザの場合はパルス幅)は熱影響が出ない範囲で例えば数ピコ秒〜100ナノ秒程度のものが好ましい。照射エネルギーならびに照射回数(ショット数)としては、除去する膜の材質ならびに膜厚に依存して決定される。このようなレーザを用い、撥凹部のパターンに応じた開口パターンを有するマスクを介して親インク層の上面に向けてレーザを照射することで撥凹部とすべき箇所の親インク層をパターニング除去できる。このとき、照射エネルギー、照射回数等を調整することで、親インク層のみを除去することも、あるいは、さらにシリコーン層の一部も除去することもできる。但し、レーザ照射により撥インク層が撥液性を損なう恐れがあるため、撥インク層の上部の親インク層が選択的に除去加工される照射条件を選択することが好ましい。
【0058】
ここで、上述のレーザ照射によってより上部の親インク層を選択的に除去加工する方法では、上部の親インク層の膜厚が最終的に形成する撥凹版の凹凸段差となるために、上部親インク層の膜厚制御によって凹凸段差を管理が可能であり、凹凸段差を容易に管理できる利点を有する。
【0059】
以下、一例として、エキシマレーザを用いた印刷版作製方法の具体例を示す。なお、加工した積層体としては、基体上に撥インク層を形成し、さらにその上面にアルミニウムを500nm真空蒸着したものを用いている。
【0060】
続いて、レーザ照射系の一例について説明する。図17はレーザ照射系を示す模式図であり、図17に示すように、レーザ照射装置25は、レーザ光L1を出力するレーザ出力手段22と、レーザ出力手段22の後段に配置され、レーザ光のサイズ、形状や均一性を所望のものとするための光学系24(レンズやホモジナイザを適宜に組み合わせた構成)と、マスク21と、マスク21の開口部を通過したレーザ光L1を、ステージ27上の被照射物26上に結像する結像光学系23とから構成されている。レーザ出力手段5より出力されるレーザ光L1はマスク群1の開口部(スリット)を通過し、この開口部を通過したレーザ光L1が結像光学系23によって結像され、その結果、被照射物26上にマスク21のスリットパターン29が投影され、これによりスリットパターン29に対応するパターンで、撥インク層上の親インク層が除去加工される(スリットパターン29に対応する撥凹版が形成される)。
【0061】
上記の積層体を用い、図17の照射系にて、開口部として幅5μmのラインパターンを有するプロジェクションマスクを介して、表1に示す照射エネルギーにてエキシマレーザの1回照射を行い、親インク層を加工することで印刷版を形成した。
【0062】
【表1】

【0063】
続いて、印刷版に対してAgインク(アルバックマテリアル社製)を用い、図9〜図13に示した本発明の印刷方法(基体1を転写版(弱撥液性のシリコーン樹脂)とし、第二の基体としてガラス基板を使用)に従って印刷を行った。図18は、(a)形成した印刷版の上面形状、(b)印刷後の印刷版ならびに(c)基板へのインク転写状態、を示す顕微鏡写真である。
【0064】
図18より、条件2〜条件3の範囲内の照射エネルギーであれば、親インク層であるアルミニウム層のみを除去できており、結果として、ライン幅5μmのパターンを第二の基体であるガラス基板に印刷できていることが確認できる。一方、条件1のように、0.84J/cm2以下の照射エネルギーでは、矢印31のような親インク層が除去しきれていない部分が混在する。このような場合、印刷後の印刷版における矢印32で示す領域のような、本来撥インク性を示すべき領域が親インク性を示してしまい、結果的には基体2のガラス基板上に矢印33のような、ライン抜けが発生してしまう。また、条件5のように照射エネルギーが2.07J/cm2以上の場合、親インク層は除去できているが、実際に印刷すると、矢印34で示す領域のような、本来撥インク性を示すべき領域が親インク性を示してしまい、結果的には基体2上に、矢印35で示すライン抜けが発生してしまう。これは、撥インク層であるシリコーン樹脂に対し、エキシマレーザがダメージを与えた結果である。このような結果から、シリコーン層を撥インク層として、アルミニウムを上部の親インク層として適用する場合、撥インク層であるシリコーン樹脂にダメージを与えないよう、すなわち、撥インク層の撥インク性を失わせないよう、アルミニウムのジャストエッチ付近が好ましく、具体的には、アルミニウムの膜厚が500nmの場合、エキシマレーザ(248nm)の照射エネルギー範囲は0.9J/cm2〜1.81J/cm2である。
【0065】
また、レーザの照射方法としては、上述の1回照射のエネルギーコントロール法でも構わないが、アルミニウムのジャストエッチをより厳密に行うことを考慮すると、低エネルギーのレーザを複数回照射するマルチショット法を適用しても良い。この場合、アルミニウム加工しきい値をやや超えるレベルのエネルギーにて複数回照射する低エネルギーマルチショット法や、段階的に照射エネルギー強度を減少させたエネルギー変調型マルチショット法を適用することができる。1回照射のエネルギーコントロール法、低エネルギーマルチショット法、エネルギー変調型マルチショット法それぞれにおける照射エネルギーとアルミニウム加工深さとの関連を示した模式図を図19〜図22に示す。1回照射のエネルギーコントロール法とは、図19で示すとおり、照射エネルギー強度を、1回の照射で親インク層全膜厚分を加工完了するしきい値以上であり、かつ、1回の照射で親インク層下部に配される撥インク層にダメージを与えるしきい値以下である範囲内とし、1回だけ照射し、親インク層を加工する方法である。マルチショット法とは、図20の(A)および(B)のように、照射エネルギー強度を、親インク層表面を加工できるしきい値以上であり、かつ、親インク層全膜厚分を加工できるしきい値以下(1回の照射で親インク層下部に配される撥インク層にダメージを与えるしきい値以下)である範囲内とし、複数回照射することで親インク層を加工する方法である。このとき、図20の(A)および(B)に示すように、照射エネルギー強度を、親インク層表面を加工できるしきい値を少し超える程度として、複数回照射し、親インク層を加工することにより、その下層の撥インク層へのダメージを極力小さくすることができる。また、撥インク層のダメージを抑えることから、少ないショット数で加工する方法としては、図21の(A)および(B)に示すようなエネルギー変調型がある。このエネルギー変調型マルチショット法では、図21の(A)および(B)に示すように、照射エネルギー強度を、最初のショットを最も大きくし、その後段階的にエネルギー強度を小さくしながら、複数回照射し、最初は深く、最後は浅くなるよう、段階的に深さを変えて親インク層を加工する方法である。
【0066】
シリコーン層とアルミニウム層の組み合わせの場合、アルミニウムのジャストエッチが求められるため、図20〜図21のように、一回あたりの照射エネルギーを小さくして複数回照射したり、さらに段階的に照射エネルギーを減少させることで、最終的な加工深さを調整することは非常に有用な手法である。なお、加工法はこれらに限定されず、撥インク層へのダメージが小さくなるようになっていればよく、例えば、図22の(A)および(B)に示すような最終ショット(図22(A)の矢印36で示すショット)をそれまでよりも小さなエネルギーとし、加工しきい値をやや超えるレベルの強度とするマルチショット法であっても良い。
【0067】
ここまで、マスクプロジェクションを用いたエキシマレーザ照射方法について説明したが、レーザの種類や、手法ともにこれに限定されず、レーザ波長としても版の親インク層ならびに撥インク層の組み合わせに合わせて適宜選択すればよく、また手法としても、例えば公知のビームスキャン法等を適用してもよい。さらに、上述のレーザ照射による形成方法の他に、積層体上部に更にレジスト層を形成し、通常のフォトプロセスと、ドライエッチングあるいはウェットエッチング処理によって最表面の親液層を部分的に除去する方法も可能である。また、インク塗布を印刷版にではなく、基体側に行うことも可能である。
【0068】
続いて、本発明の別の局面に従った印刷方法を以下に説明する。
本発明の別の局面に従った印刷方法
上述のとおり、特許文献1に記載の印刷方法では、撥インク層に対するインク接触角が小さく、かつ、版の撥部のパターンサイズが小さい場合でしか印刷ができなかった。これに対し、本発明の別の局面に従った印刷方法は、上述の本発明の1つの局面に従った印刷方法と同様、従来の撥凸版を用いる場合と比較して、撥インク層に対する接触角の大きなインクであっても適用できる。また、撥部のパターンサイズが大きい場合にも適用できる。しかしながら、あまりにも接触角が大きなインクに対しては、本発明の印刷方法を適用してもパターン形成は困難であり、溶液を増粘させる等の他の手法をあわせる必要があるが、少なくとも、撥インク層に対するインクの接触角が80°以下であれば、本発明の別の局面に従った印刷方法を適用できる。上記の範囲のインクとしては、例えばAg、Cu、Auなどの配線材料,In, SnO2, ITOなどの透明導電材料やポリイミド系、アクリル系樹脂、フッソ系材料等の絶縁材料を含むものが該当し、これらのインクを用いたとしても、本発明の印刷方法を適用することで配線膜、透明導電膜、絶縁膜等、各種パターン膜を形成できる。また、本発明の印刷方法では、親インク層表面と撥インク層表面とが略平坦であるために、版の撥部のパターンサイズとしても、従来の撥凸版と比較して大きくすることが可能である。
【0069】
本発明の印刷方法について、図面に従って説明する。
図23から図25は本発明の印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図であり、図23に示すような版全面にインク層を形成する第一の工程、図24に示すような版と基体1とを接触させる第二の工程、図25に示すような基体1を版から離脱させインクを転写させる第三の工程の3段階の工程をこの順に経てパターンを形成する。
【0070】
第一の工程では、版11にインクを塗布し、図23のように版全面にインク層14を形成する。塗布方法としては、本発明の1つの局面に従った印刷方法の場合と同様に、一般的な手法が適用可能である。ここで、本発明の別の局面に従った印刷方法では、版として、親インク層13と撥インク層12からなるその表面が平坦である版を用いていることが特徴であり、このような版を用い、図23のように、隣接する親インク層間のブリッジを利用することで、撥インク層上でのインクはじきを防止し、版全面にインク層を形成する。上記手法を利用することで、別の基体に転写するまでの一定時間であれば、版の撥液部であってもインクがはじくことなく、版上に均一な塗布形状を維持することができる。
【0071】
第二の工程では、図24のように、インクを介して版11と基体1とを接触させる。このとき、撥インク層上において、インクがインク層を形成できるだけ十分に残しきれていなかったとしても、インクが押圧されることで親インク層上のインクが押し広げられ、撥インク層にインクを十分接触できる。ここで、基体1としては、本発明の1つの局面に従った印刷方法の場合と同様のものから選択できる。
【0072】
第三の工程では、図25のように基体1を離型することで、撥インク層の上面に配されるインク層を基体1に転写させる。
【0073】
図26から図29は、本発明の印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。インク授受のプロセスとしては、版と基体1とがある程度の距離まで離された段階では図26のように版ならびに基体1の両者にインクが吸着されたままであるが、さらに距離を大きくすることで、まず、図27のように版の撥液部のインクが版の撥液部から離型され、続いて、図28のように版の親液部と対向する部分のインクが基体1から離型する。その後、版と基体1に吸着された各々のインクがせん断面15にてせん断分離されることで、最終的には図29のように版の撥液部のインクのみが基体1に転写される。
【0074】
以上の工程によって、本発明の別の局面に従った印刷方法によって、パターン膜を形成できる。ここで、上述のとおり、本発明の別の局面に従った印刷方法は、平版を用いているので、インク塗布性が向上し、接触角が大きなインクであっても印刷版全面にインク層を形成できる。このため、特許文献1に記載の作用が理想的に行われる。また、発明の別の局面に従った印刷方法によって、塗布インク層が、版の撥インク層と親インク層の界面近傍におけるせん断分離によって分断することができる。また、転写するインク層は撥インク層の上面に配されるインク層であり、インクを全量転写することができる。なお、この別の局面に従った印刷方法は上記の1つの局面に従った印刷方法と比較して、第三の工程でインクを凹部から離型する必要がないため(平版であるため)、いっそう微細なパターンを形成できる。但し、1つの局面に従った印刷方法のように、凹部を利用したインク充填ができないため、全面インク層を形成する点については若干劣る。すなわち、この別の局面に従った印刷方法は、非常に良好な形状精度をもって、微細パターンを形成できることが大きな特徴であり、配線膜、絶縁膜等、各種電子デバイスにおける種々のパターン形成へ広く適用できるものである。より具体的には、本発明の印刷方法によって、不必要なテーパーをパターン幅の5%以下まで抑制できるため、特に配線や絶縁膜パターン等のような、エッジ形状に起因する不良が出やすいパターンに適用しても、その不良を抑制することができる。
【0075】
また、基体1を転写版とし、第三の工程までで転写版にインクを転写したのち、さらに、転写版上のインク層を別の基体に転写させる第五の工程が含まれていても良い。このときの転写版については、本発明の1つの局面に従った印刷方法の場合と同様である。
【0076】
以上の工程をこの順に行う方法として、平版と、平版の全面にインクを塗布する手段と、インク層を介して、平版に第一の基体を接触させる手段と、第一の基体を平版より離脱することで、平版の撥インク層の上面に配されるインク層を基体に転写する手段とを備えた印刷装置を用いることができる。
【0077】
平版の全面にインクを塗布する手段としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、キャスト法等が利用できる。スリットコーター等を用いた後に、ブレードを用いたドクタリングを実施してもよい。インク層の塗布する場所については、平版、第一の基体のいずれであってもよい。
【0078】
さらに、第一の基体を転写版とし、上記手段に加え、さらに、第一の基体と第二の基体とを接触させる手段と、第二の基体を第一の基体より離脱することで、第一の基体のインク層を第二の基体に転写する手段とを備えた装置を用いれば、第二の基体にも印刷することができる。なお、この場合、第一の基体(転写版)の形状としては、上述のとおり、平版状、ローラー状に限定されない。なお、動作については、上記撥凹版を用いた場合と同様である。
【0079】
より具体的に示すために、配線パターンならび絶縁膜パターンの形成例を示す。例えば、配線材料として、銀パターンを形成する場合、親インク層と撥インク層の高低差が0.5μm以下の平版(版の形成方法は後述のとおり、例えば注型法で形成できる。)上に、配線材料インク(例えば銀インク:版の撥インク層に対するインク接触角50°)を一般的な塗布方法(例えばバーコーター)により、塗布し、数分乾燥させれば、版上にインク層を形成できる。続いて、インク層を含む版に対して、転写体(例えば弱撥液性のシリコーンゴム)を押し当て、離脱することで、版の撥インク層の上面に配されたインク層を転写体に転写できる。その後、パターンを有する転写体を基板(例えばガラス基板)に押し当て、離脱することで基板上へ転写できる。基板上のパターンを所定条件(例えば200℃〜300℃、30分〜2時間)焼成すれば、配線パターンを形成できる。また、絶縁膜パターンの場合には、上述の配線材料のかわりに絶縁材料インク(例えばポリイミド系材料、フッ素含有材料:版の撥インク層に対するインク接触角60°〜80°)を用い、上記と同様の手法で印刷後、焼成条件を例えば200℃、1時間として焼成すれば絶縁膜パターンを形成できる。
【0080】
本発明の別の局面に従った印刷方法に用いる印刷版
本発明の印刷版は、印刷方法に用いる版であって、親インク層と撥インク層から構成されたその表面が平坦であることが特徴である。
【0081】
ここで、親インク層としては、第一の工程で版全面にインク層を形成できる程度に、その表面に対するインク濡れ性が高いこと、ならびに、印刷方法の第三の工程において転写版離型後にインク層を版に残すだけの付着力を持っていることが求められる。上記条件を満たす特性を有するためには、インクに対する親和性が高ければよい。このような層の材料としては、たとえばアルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル等の金属や金属酸化物、金属窒化物や酸化シリコン等の無機系酸化物、ポリビニルアルコール等の親水性の有機材料等から選択できる。また、一般的な基材に親液処理剤等をコートしたものでもよい。さらに、撥インク層に対するインク接触角が大きいインクを用いた場合でも、親インク層間のブリッジにより、版全面にインク層を形成させることを考慮すると、インクに対する親和性がさらに大きい方がより好ましく、例えばインクに対する親インク層の接触角が15°以下であれば好ましい。
【0082】
撥インク層としては、塗布性とのトレードオフを考慮して適切なものを選択されるが、印刷方法の第三の工程において、転写版離型後にインク層を版から転写版へ転写されることが必要であることから、撥インク層のインク付着力が小さい、すなわち、撥インク層のインクに対する接触角が80°以下の範囲で大きい方が好ましい。この点で、撥インク層の材料としては、有機系の樹脂材料や、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂やオリゴマー等によりその表面に撥液処理を施した撥インク層材料が挙げられるが、繰り返し使用することを考慮すれば、耐溶剤性の高いシリコーン系樹脂が特に好ましい。
【0083】
また、本発明の印刷版は、親インク層と撥インク層から構成されたその表面が平坦である構造とすることが良く、親インク層と撥インク層との高低差はできる限り小さいほうが好ましく、例えば0.5μm以下が好ましい。
【0084】
続いて本発明の印刷版の製造方法について図30の(A)から(C)を用いて説明する。
【0085】
本発明の印刷版は、親インク層と撥インク層から構成されたその表面が平坦であることが特徴である。このような形状は例えば以下に示す注型法により形成できる。具体的にはまず、図30の(A)から(C)に示すように、基板17上に離型剤19を介して特定の開口部を有する親液性のマスク18(例えばメタルマスク)を密着させた後、撥インク層材料を塗布し、さらに上部に別の基体20を挟み込んだ形で撥インク層12を形成する。続いて、離型剤を含む層で剥離し、反転させることで形成できる。ここで、印刷版の基板は表面に離型剤を含む層を形成できるのであれば特に限定されない。離型剤としては、フッソ系シランカップリング剤等、一般的なものを使用できる。マスクの材質は、アルミニウム、SUS等が選択できる。また、離型剤を含む層にてマスクを剥離する際にメタルマスクの変形を防止するため、さらに上部に別の基板を貼り合わせてもよい。
【0086】
より具体的には、離型層については、例えば、ガラス基板上にオプツール(ダイキン工業)をディップコートし、常温で24時間乾燥させれば形成できる。つづいて、離型層を介してメタルマスク(例えばアルミニウム)を接触させ、シリコーン樹脂を注型し、所定温度(例えば150℃で1時間)焼成したのちメタルマスクをガラス基板から剥離すれば印刷版を形成できる。
【0087】
なお、インク塗布については、印刷版側ではなく、基体側であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の1つの局面に従った印刷方法の第一の形態によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図2】本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図3】本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図4】本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図5】本発明の1つの局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。
【図6】本発明の1つの局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。
【図7】本発明の1つの局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。
【図8】本発明の1つの局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。
【図9】本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図10】本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図11】本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図12】本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図13】本発明の1つの局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図14】本発明の印刷装置の一例を模式的に示す図である。
【図15】本発明の印刷装置の一例を模式的に示す図である。
【図16】本発明の1つの局面に従った印刷方法に用いる印刷版の製造フローを示す模式図である。
【図17】本発明の1つの局面に従った印刷方法に用いる印刷版を形成する際に用いるレーザ照射系を示す模式図である。
【図18】加工条件の異なる本発明の印刷版、ならびに印刷版を用いて、本発明の第一の形態にて形成した際の第三の工程後の印刷版、ならびに印刷後の基板の表面形状像である。
【図19】1回照射のエネルギーコントロール法における照射エネルギーを示した模式図である。
【図20】低エネルギーマルチショット法の照射エネルギーと親インク層の掘り込み深さとの関連性を示した模式図である。
【図21】エネルギー変調型マルチショット法の照射エネルギーと親インク層の掘り込み深さとの関連性を示した模式図である。
【図22】最終ショットを最も小さなエネルギーとしたマルチショット法の照射エネルギーと親インク層の掘り込み深さとの関連性を示した模式図である。
【図23】本発明の別の局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図24】本発明の別の局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図25】本発明の別の局面に従った印刷方法によってパターンを形成するときの各々の工程におけるインク授受を模式的に示した図である。
【図26】本発明の別の局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。
【図27】本発明の別の局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。
【図28】本発明の別の局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。
【図29】本発明の別の局面に従った印刷方法の第三の工程におけるインク授受のプロセスをより詳細に示した模式図である。
【図30】本発明の別の局面に従った印刷方法に用いる印刷版の製造フローを示す模式図である。
【図31】従来の印刷版の一例である撥凸版にインクを塗布した様子を示した模式図である。
【図32】従来の印刷版の一例である凸版の模式図である。
【図33】従来の印刷版の一例である凸版にインクを塗布した様子を示した模式図である。
【図34】従来の印刷版の一例である凹版の模式図である。
【図35】従来の印刷版の一例である凹版にインクを充填した様子を示した模式図である。
【符号の説明】
【0089】
1 基体、2 撥インク層表面、3 親インク層表面、4 第二の基体、11 版、12 撥インク層、13 親インク層、14 インク層、15 せん断面、16 垂直分断面、17 ある基体、18 マスク、19 離型剤、20 別の基体、21 マスク群、22 レーザ出力手段、23 結像光学系、24 形状や均一性を所望のものとするための光学系、25 レーザ照射装置、26 被照射物、27 ステージ、29 パターン、L1 レーザ光、31 アルミニウム層の加工残り、32 アルミニウム加工残り由来のインク残り、33 ライン抜け、34 シリコーンダメージ由来のインク残り、35 ライン抜け、36 マルチショット法の最終ショット、41 印刷装置、42 撥凹版、43 第一の基体(ブランケット胴)、44 第二の基体、45 版及び基板搬送部、46 印刷装置、47 第一の基体、48 加圧機構、101 版、102 従来の版の撥インク部、103 従来の版の親インク部、104 インク、111 親インク層、112 撥インク層、113 撥液コート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部が親インク層であり、凹部が撥インク層である撥凹版を用い、前記撥凹版の全面にインクを塗布する工程と、
前記インク層を介して、前記撥凹版に第一の基体を接触させる工程と、
前記第一の基体を前記撥凹版より離脱することで、前記撥凹版の撥インク層の上面に配されるインク層を前記基体に転写する工程とを備えた印刷方法。
【請求項2】
第一の基体の全面にインクを塗布する工程と、
前記インク層を介して、前記第一の基体に、凸部が親インク層であり、凹部が撥インク層である撥凹版を接触させる工程と、
前記撥凹版を前記第一の基体より離脱することで、前記撥凹版の親インク層と接触するインク層を前記第一の基体から除去する工程とを備えた印刷方法。
【請求項3】
前記撥凹版に第一の基体を接触させる工程と前記転写する工程との間に、さらに、前記第一の基体を加圧することで、凹部にインクを充填する工程を備えた、請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記第一の基体は転写版であり、さらに、転写版上のインク層を第二の基体に転写させる工程を備えた、請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記親インク層の側面が撥インク性である、請求項1から4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記撥インク層がシリコーン樹脂である、請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記親インク層が金属材料又はその酸化物からなる請求項1から6のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の印刷方法に用いる印刷版であって、基体上に撥インク層と親インク層をこの順に形成する工程と、部分的に親インク層を除去する工程とによって形成される印刷版。
【請求項9】
請求項7または8に記載の印刷版であって、前記部分的に親インク層を除去する工程において、その下層の撥インク層の撥液性が損なわれないように、撥インク層の上部の親インク層が選択的に除去加工されることで形成される印刷版。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の印刷版であって、レーザ照射によって親インク層を部分的に除去することを特徴とする印刷版。
【請求項11】
請求項10に記載の印刷版であって、マスクの開口部を介したレーザ照射により、その開口部に対応する領域の親インク層が除去されてなる印刷版。
【請求項12】
マルチショットのレーザ照射により形成されてなる請求項11に記載の印刷版。
【請求項13】
請求項12に記載の印刷版であって、前記マルチショットにおける最終ショットの照射エネルギー強度を最終ショット以外の最大強度と比較して小さくすることによって形成されてなる印刷版。
【請求項14】
請求項13に記載の印刷版であって、前記マルチショットにおける照射エネルギー強度を照射ごとに段階的に小さくするエネルギー変調型マルチショット法によって形成される印刷版。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか1項に記載の印刷方法によって形成されたパターン膜。
【請求項16】
凸部が親インク層であり、凹部が撥インク層である撥凹版と、
前記撥凹版の全面にインクを塗布する手段と、
前記インク層を介して、前記撥凹版に第一の基体を接触させる手段と、
前記第一の基体を前記撥凹版より離脱することで、前記撥凹版の撥インク層の上面に配されるインク層を前記基体に転写する手段とを備えた印刷装置。
【請求項17】
凸部が親インク層であり、凹部が撥インク層である撥凹版と、
第一の基体の全面にインクを塗布する手段と、
前記インク層を介して、前記第一の基体に、前記撥凹版を接触させる手段と、
前記撥凹版を前記第一の基体より離脱することで、前記撥凹版の親インク層と接触するインク層を前記第一の基体から除去する手段とを備えた印刷装置。
【請求項18】
親インク層と撥インク層から構成されたその表面が略平坦である平版を用い、前記平版の全面にインクを塗布する工程と、
前記インク層を介して、前記平版に第一の基体を接触させる工程と、
前記第一の基体を前記平版より離脱することで、前記平版の撥インク層の上面に配されるインク層を前記基体に転写する工程とを含む印刷方法。
【請求項19】
第一の基体の全面にインクを塗布する工程と、
前記インク層を介して、前記第一の基体に親インク層と撥インク層から構成されたその表面が略平坦である平版を接触させる工程と、
前記平版を前記第一の基体より離脱することで、前記平版の親インク層と接触するインク層を前記第一の基体から除去する工程とを備えた印刷方法。
【請求項20】
前記第一の基体として転写版を用い、さらに、転写版上のインク層を第二の基体に転写させる工程を備えた、請求項18または19に記載の印刷方法。
【請求項21】
前記撥インク層がシリコーン樹脂である請求項18から20のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項22】
前記親インク層が金属材料又はその酸化物からなる請求項18から21のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項23】
請求項18から22のいずれか1項に記載の印刷方法に用いる印刷版であって、開口部を有する親液版の開口部に撥インク層材料を注入、焼成させることによって形成される印刷版。
【請求項24】
基板上に離型剤を介して特定の開口部を有する親液版を密着させる工程と、前記親液版の開口部に撥インク層材料を注入、焼成させる工程と、離型剤を含む層で前記親液版と基板とを剥離する工程とによって形成される請求項23に記載の印刷版。
【請求項25】
請求項18から22のいずれか1項に記載の印刷方法によって形成されたパターン膜。
【請求項26】
親インク層と撥インク層から構成されたその表面が略平坦である平版と、
前記平版の全面にインクを塗布する手段と、
前記インク層を介して、前記平版に第一の基体を接触させる手段と、
前記第一の基体を前記平版より離脱することで、前記平版の撥インク層の上面に配されるインク層を前記基体に転写する手段とを含む印刷装置。
【請求項27】
親インク層と撥インク層から構成されたその表面が略平坦である平版と、
第一の基体の全面にインクを塗布する手段と、
前記インク層を介して、前記第一の基体に前記平版を接触させる手段と、
前記平版を前記第一の基体より離脱することで、前記平版の親インク層と接触するインク層を前記第一の基体から除去する手段とを備えた印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−274365(P2009−274365A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128768(P2008−128768)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】