説明

印刷版作成用データ生成方法及び装置

【課題】立体的視覚効果のある印刷物の印刷版作成用データを短時間でかつ容易に得ることができる方法及び装置を提供することをその課題とする。
【解決手段】DTP処理用パソコン1で作成された印刷用データ3は2値化処理用パソコン2の振り分け手段2aにて、画像部3aと背景部3bとに区別される。次に2値化処理手段2b、2cにより、それぞれ2値データとしての画像部4a、背景部4bに処理される。このとき、2値化処理手段2b、2cは各々異なる線数にて画像部、背景部を2値化処理する。2値データとなった画像部4a、背景部4bは、合成手段2dにて合成が行われ、印刷版作成用データ4が完成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版作成用データ生成方法及び装置に関するものであり、特に立体的視覚効果のある印刷物の印刷版作成用データに関するものである。
【背景技術】
【0002】
立体感や揺らぎ感を呈するモアレ現象を利用した印刷物を得る手段として、特許文献1のようにレンズの役割をする凸状集光素を透明基板上に設置し、この凸状集光素を通して画像を立体的に見せる技術が知られている。この画像用の版を作成する際、立体効果を際立たせるために、画像部や背景部を構成する繰り返しパターンの線数(印刷の精度を表す尺度。1インチにどれだけの線が引けるかを表しており、線数が多い程きめ細かい表現が可能となる)や角度、形状を画像部と背景部とで変える場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−35083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線数や角度の異なる画像部と背景部とを作成する方法として、従来は、DTPソフトでそれぞれ線数や角度の異なる画像用・背景部用繰り返しパターンをつくり、この繰り返しパターンをコピー・貼付けしたり、塗りつぶし機能を使用したりしていた。しかしながら、これらの作業には時間かかり、作業が煩雑であるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、立体的視覚効果のある印刷物の印刷版作成用データを短時間でかつ容易に得ることができる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被印刷体Pに印刷される印刷画像が形成された印刷版を作成するための印刷版作成用データ生成方法であって、前記印刷画像に対応する印刷用データ3のうち、画像部3aと背景部3bとを区別する振り分けステップと、前記画像部3aと前記背景部3bを構成する繰り返しパターンの表現形式をそれぞれ異ならせて個別に2値化する2値化処理ステップと、前記個別に2値化された前記画像部4aと前記背景部4bの2値データを合成する合成ステップとを含むことを特徴とする。
また、本発明は、被印刷体Pに印刷される印刷画像が形成された印刷版を作成するための印刷版作成用データ生成装置であって、前記印刷画像に対応する印刷用データ3のうち、画像部3aと背景部3bとを区別する振り分け手段2aと、前記画像部3aと前記背景部3bを構成する繰り返しパターンの表現形式をそれぞれ異ならせて個別に2値化する2値化処理手段2b、2cと、前記個別に2値化された前記画像部4aと前記背景部4bの2値データを合成する合成手段2dとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の印刷版作成用データ生成方法及び装置によれば、立体的視覚効果のある印刷物の印刷版作成用データを短時間でかつ容易に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る印刷版作成用データ生成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る印刷版作成用データ生成装置による印刷版で立体視覚効果のある印刷物を得る印刷機を示す概略側面図である。
【図3】転写フィルム24の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明に係る印刷版作成用データ生成装置の一例を示す概略構成図である。まず、DTP処理用パソコン1にて印刷用データ3が作成される。作成された印刷用データ3は、2値化処理用パソコン2で処理されることとなるが、本実施例においては、本発明の主要構成要素は全て2値化処理用パソコン2に内蔵されている。
【0011】
DTP処理用パソコン1で作成された印刷用データ3は2値化処理用パソコン2の振り分け手段2aにて、画像部3aと背景部3bとに区別される。具体的には、作業者による画像部3aと背景部3bとの色分け指定に基づいて、振り分けがされることとなる。
【0012】
次に2値化処理用パソコン2の2値化処理手段2b、2cにより、多値データである画像部3aと背景部3bは、それぞれ繰り返しパターンによる2値データとしての画像部4a、背景部4bに処理される。繰り返しパターンとは例えば丸形状の網点であるが、四角形状等、任意のものが用いられる。このとき、2値化処理手段2b、2cは各々異なる線数にて画像部、背景部を2値化処理する。本実施例においては、画像部3aは190線で2値化処理が行われ、2値データの画像部4aとなり、背景部3bは210線で2値化処理が行われ、2値データの背景部4bとなる。繰り返しパターンの形状は、画像部4a、背景部4b共に丸形状が用いられるが、繰り返しパターンの形状を画像部と背景部とで異ならせてもよい。
【0013】
2値データとなった画像部4a、背景部4bは、合成手段2dにて合成が行われ、印刷版作成用データ4が完成される。前述の通り、印刷版作成用データ4の画像部4aと背景部4bとは線数が異なっている。このようにして印刷版作成用データ4が生成される。
【0014】
次に、生成された印刷版作成用データ4で作成された印刷版を用いて立体的視覚効果のある印刷物を得る方法について説明する。
【0015】
図2は表面処理装置を備えた印刷機の一例である。図1の概略側面図に示す通り、本実施例に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙Pを送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙Pに印刷を行うための印刷部Bと、印刷された枚葉紙Pにニスコーティングをするニス塗布部Cと、枚葉紙P上のニス塗布面にレンズ状凹部を有する転写フィルムを押付けて紫外線照射し、ニス塗布面をレンズ状に形成する表面処理部Dと、枚葉紙Pを排紙するための排紙部Eとを備えている。ここで印刷部Bは、1色の印刷が行えるように1台の印刷ユニットを備えた印刷部Bとしているが、1色以外の色、つまり複数の印刷が行える印刷部であってもよい。又、前記排紙部Eは、グリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成しているが、チェーン搬送装置に限らなくてもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。
【0016】
前記印刷ユニットは、前述の版作成用データ4で作成された印刷版が巻回される版胴11とゴム胴12とインキローラ群13、そして圧胴14と渡し胴15とを備えている。図示していないが、前記胴14、15のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙Pを爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号16は給紙胴であり、フィーダーボード17上を搬送される枚葉紙Pを図示しないスイングアームから受け取り、圧胴14に渡す役割を果たす。給紙胴16、スイングアームにも前記の爪台と爪が設けられている。
【0017】
ニス塗布部Cはニス版胴18とニスゴム胴19、ニス圧胴20とを有し、搬送される枚葉紙Pに有色あるいは無色の透明なニスを塗布する。
【0018】
表面処理部Dは、転写フィルム24が巻き付けられるとともに送り出し可能な供給ロール21と、この供給ロール21から送り出された転写フィルム24を圧胴26上の枚葉紙Pに押付ける押圧ローラ27、28と、押付けられた転写フィルム24を巻き取る巻き取りロール22と、供給ロール21と巻き取りロール22との間に配置されたフィルム案内用ローラ群23と、押圧ローラ27、28間の転写フィルム24を照射して、転写フィルム24越しに枚葉紙P上のニスを乾燥する紫外線照射部25とを備えている。転写フィルム24は図3のように、レンズ状の凹部24aを有している。
【0019】
給紙部Aから搬送される枚葉紙Pは印刷部Bで印刷され、ニス塗布部Cでニスが塗布される。表面処理部Dにて転写フィルム24が枚葉紙Pに押付けられ、枚葉紙P上のニス塗布面が凹部24aに入り込み、紫外線照射部25によりニス塗布面は硬化されて転写フィルム24と同一形状となり、印刷面の上に透明なレンズ部として形成されることとなる。その後枚葉紙Pは転写フィルム24から剥離されて完成された印刷物として排紙部Eに排紙される。
【0020】
このように作成された印刷物は、画像部と背景部との線数が異なっており、これらを前述したレンズ部を通して見ることで、線数によるモアレの出方が変わった、大きな立体的視覚効果を有する印刷物となる。
【0021】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば前述の実施例では、振り分け手段による画像部と背景部との区別は色分け指定によって行っていたが、これに限られるものではない。
また、2値化処理の際、画像部と背景部とを異なる線数にて処理していたが、角度や形状を異ならせてもよい。本発明における表現形式とは、繰り返しパターンの線数や角度、形状、サイズのことである。
また、前述の実施形態では、枚葉オフセット印刷機であったが、これに限定されず、インクジェット式印刷機やフレキソ印刷機のようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係る印刷版作成用データ生成方法及び装置は、立体的視覚効果のある印刷物の印刷版作成用データの生成において極めて有用である。
【符号の説明】
【0023】
1 DTP処理用パソコン 2 2値化処理用パソコン
3 印刷用データ 4 印刷版作成用データ
24 転写フィルム 24a 凹部
25 紫外線照射部 C ニス塗布部
D 表面処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体に印刷される印刷画像が形成された印刷版を作成するための印刷版作成用データ生成方法であって、
前記印刷画像に対応する印刷用データのうち、画像部と背景部とを区別する振り分けステップと、
前記画像部と前記背景部を構成する繰り返しパターンの表現形式をそれぞれ異ならせて個別に2値化する2値化処理ステップと、
前記個別に2値化された前記画像部と前記背景部の2値データを合成する合成ステップと
を含むことを特徴とする印刷版作成用データ生成方法。
【請求項2】
被印刷体に印刷される印刷画像が形成された印刷版を作成するための印刷版作成用データ生成装置であって、
前記印刷画像に対応する印刷用データのうち、画像部と背景部とを区別する振り分け手段と、
前記画像部と前記背景部を構成する繰り返しパターンの表現形式をそれぞれ異ならせて個別に2値化する2値化処理手段と、
前記個別に2値化された前記画像部と前記背景部の2値データを合成する合成手段と
を含むことを特徴とする印刷版作成用データ生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−155472(P2011−155472A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15488(P2010−15488)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】