説明

印刷物および印刷物の製造方法

【課題】変形加工およびせん断加工を好適に行うことができる印刷物および印刷物の製造方法を提供すること。
【解決手段】印刷物1は、変形加工される第1の加工領域41、せん断加工される第2の加工領域42を有する基材30と、第1の加工領域41に設けられ、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物とのうちの少なくとも単官能重合性化合物を含有する第1の硬化型インクを用いて印刷してなる第1の印刷層31と、第2の加工領域42に設けられ、少なくとも多官能重合性化合物を含有する第2の硬化型インクを用いて印刷してなる第2の印刷層32とを備え、第1の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx1、多官能重合性化合物の質量をy1、第2の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx2、多官能重合性化合物の質量をy2としたとき、y1/x1は、0.5以下、y2/x2は、1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物および印刷物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内装部品や、電気製品の外装部品等の印刷物は、基材と、基材上にイ
ンクを用いて印刷してなる印刷層とを有している。この印刷物には、例えば、打ち抜きや
切り取り等のせん断加工により、開口が形成されていたり、また、絞り加工や曲げ加工等
のように一部を延伸する加工等の変形加工が施されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、インクとしては、例えば、紫外線硬化型インク等の放射線硬化型インクが用いられ
る。
しかしながら、せん断加工や、変形加工に十分に対応し得る印刷層を形成することがき
るインクがなく、また、せん断加工に適する印刷層を形成できても、変形加工を行うと、
ヒビ、割れ、破断等が生じてしまうことがある。また、変形加工に適する印刷層を形成で
きても、せん断加工を行うと、ヒビ、割れ、欠け等が生じてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−224302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、変形加工およびせん断加工を好適に行うことができる印刷物および印
刷物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の印刷物は、変形加工される第1の加工領域と、せん断加工される第2の加工領
域とを有する基材と、
前記基材上の前記第1の加工領域に設けられ、単官能重合性化合物と多官能重合性化合
物とのうちの少なくとも単官能重合性化合物を含有する第1の硬化型インクを用いて印刷
してなる第1の印刷層と、
前記基材上の前記第2の加工領域に設けられ、単官能重合性化合物と多官能重合性化合
物とのうちの少なくとも多官能重合性化合物を含有する第2の硬化型インクを用いて印刷
してなる第2の印刷層とを備え、
前記第1の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx1、多官能重合性化合物の
質量をy1としたとき、y1/x1は、0.5以下であり、
前記第2の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx2、多官能重合性化合物の
質量をy2としたとき、y2/x2は、1以上であることを特徴とする。
これにより、第1の加工領域には、変形加工を好適に行うことができ、第2の加工領域
には、せん断加工を好適に行うことができ、良好な印刷物を提供することができる。
【0006】
本発明の印刷物では、前記第1の印刷層の鉛筆硬度は、B以上であることが好ましい。
これにより、第1の加工領域に、変形加工を好適に行うことができる。
本発明の印刷物では、前記第2の印刷層の鉛筆硬度は、H以上であることが好ましい。
これにより、第2の加工領域に、せん断加工を好適に行うことができる。
本発明の印刷物では、前記第1の加工領域に対して前記変形加工がなされたものである
ことが好ましい。
これにより、変形加工がなされた印刷物を提供することができる。
本発明の印刷物では、前記第2の加工領域に対して前記せん断加工がなされたものであ
ることが好ましい。
これにより、せん断加工がなされた印刷物を提供することができる。
【0007】
本発明の印刷物では、前記第1の印刷層は、前記第1の硬化型インクをインクジェット
方式でノズルから液滴として吐出して供給し、形成したものであり、
前記第2の印刷層は、前記第2の硬化型インクをインクジェット方式でノズルから液滴
として吐出して供給し、形成したものであることが好ましい。
これにより、精度良く形成された第1の印刷層と第2の印刷層と第3の印刷層とを有す
る印刷物を提供することができる。
【0008】
本発明の印刷物では、前記第1の硬化型インクおよび前記第2の硬化型インクは、それ
ぞれ、放射線硬化型インクであり、
前記第1の印刷層は、前記第1の硬化型インクをインクジェット方式でノズルから液滴
として吐出して供給し、放射線を照射して硬化させたものであり、
前記第2の印刷層は、前記第2の硬化型インクをインクジェット方式でノズルから液滴
として吐出して供給し、放射線を照射して硬化させたものであることが好ましい。
これにより、精度良く形成された第1の印刷層と第2の印刷層と第3の印刷層とを有す
る印刷物を提供することができる。
【0009】
本発明の印刷物の製造方法は、変形加工される第1の加工領域と、せん断加工される第
2の加工領域とを有する基材上の前記第1の加工領域に、単官能重合性化合物と多官能重
合性化合物とのうちの少なくとも単官能重合性化合物を含有する第1の硬化型インクを用
いて第1の印刷層を印刷するとともに、前記第2の加工領域に、単官能重合性化合物と多
官能重合性化合物とのうちの少なくとも多官能重合性化合物を含有する第2の硬化型イン
クを用いて第2の印刷層を印刷する印刷物の製造方法であって、
前記第1の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx1、多官能重合性化合物の
質量をy1としたとき、y1/x1は、0.5以下であり、
前記第2の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx2、多官能重合性化合物の
質量をy2としたとき、y2/x2は、1以上であることを特徴とする。
これにより、第1の加工領域には、変形加工を好適に行うことができ、第2の加工領域
には、せん断加工を好適に行うことができ、良好な印刷物を提供することができる。
【0010】
本発明の印刷物の製造方法では、前記第1の加工領域に対して前記変形加工を行うこと
が好ましい。
これにより、第1の加工領域に、変形加工を好適に行うことができる。
本発明の印刷物の製造方法では、前記第2の加工領域に対して前記せん断加工を行うこ
とが好ましい。
これにより、第2の加工領域に、せん断加工を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の印刷物の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の印刷物の製造に用いる印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示す印刷装置のキャリッジの概略構成を示す側断面図である。
【図4】図2に示す印刷装置のキャリッジの概略構成を示す底面図である。
【図5】液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の印刷物および印刷物の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づ
いて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の印刷物の第1実施形態を示す断面図であり、図1(a)は、変形加工
およびせん断加工を行う前のものを示し、図1(b)は、変形加工およびせん断加工を行
った後のものを示す。図2は、本発明の印刷物の製造に用いる印刷装置の概略構成を示す
斜視図、図3は、図2に示す印刷装置のキャリッジの概略構成を示す側断面図、図4は、
図2に示す印刷装置のキャリッジの概略構成を示す底面図、図5は、液滴吐出ヘッドの概
略構成図である。
なお、以下では、図1中の左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」
として説明を行う。
【0013】
図1および図2に示すように、印刷物1は、基材(基板)30と、基材30上の互いに
異なる領域に設けられ、特性または機能が互いに異なり、かつ色差を有する、第1の紫外
線硬化型インク(第1の硬化型インク)を用いて印刷(形成)してなる第1の印刷層31
と、第2の紫外線硬化型インク(第2の硬化型インク)を用いて印刷してなる第2の印刷
層32と、第1の印刷層31と第2の印刷層32との境界を埋めるように設けられ、第1
の印刷層31および第2の印刷層32に対して色差を有する、第1の紫外線硬化型インク
(第1の硬化型インク)を用いて印刷してなる第3の印刷層33とを有している。第1の
印刷層31は、基材30上の変形させるための加工がなされる部位、すなわち変形加工さ
れる部位である第1の加工領域41に設けられ、第2の印刷層32は、せん断加工される
部位である第2の加工領域42に設けられている。
まずは、第1の硬化型インク、第2の硬化型インクおよび第3硬化型インク、すなわち
インクセットについて説明する。なお、第1の硬化型インク、第2の硬化型インクおよび
第3の硬化型インクとしては、それぞれ、硬化型インクであればよいが、以下では、代表
的に、放射線硬化型インクを用いる場合について説明する。
【0014】
[インクセット]
印刷物1の製造、すなわち印刷に用いるインクセットは、重合性化合物を含有する放射
線硬化型インクである第1のインク、第2のインクおよび第3のインクを備えている。第
1のインク、第2のインクおよび第3のインクは、それぞれ、重合開始剤を有している。
なお、以下では、第1のインクと第2のインクと第3のインクとを区別しない場合は、単
に、「インク」または「放射線硬化型インク」と言い、第1のインクと第2のインクと第
3のインクとを区別する場合は、「第1のインク」、「第2のインク」、「第3のインク
」、または「第1の放射線硬化型インク」、「第2の放射線硬化型インク」、「第3の放
射線硬化型インク」と言う。
また、前記インクセットは、インクジェット記録用インクセットとして好適に使用する
ことができる。
【0015】
放射線硬化型インクは、高画質の画像を形成するために高感度で硬化するものが求めら
れている。
インクの高感度化を達成することにより、活性放射線の照射により高い硬化性が付与さ
れるため、消費電力の低減や活性放射線発生装置への負荷軽減による高寿命化などの他、
未硬化の低分子物質の揮発、形成された画像強度の低下などを抑制することができるなど
、種々の利点をも有することになる。また、得られた画像(印刷物)がひび割れや剥離等
を起こしにくく、硬化膜の耐傷性、柔軟性に富むインクが求められている。硬化膜が高い
柔軟性、耐傷性を有することで、様々な環境下で長期間印刷物を高画質に保ったまま表示
、保管でき、また、印刷物の取り扱いが容易になるなどのメリットがある。
【0016】
第1のインクは、重合性化合物として、単官能重合性化合物(以下、「単官能モノマー
」、「単官能重合性モノマー」とも言う。)と多官能重合性化合物(以下、「多官能モノ
マー」、「多官能重合性モノマー」とも言う。)とのうちの少なくとも単官能重合性化合
物を含有する。インク中に単能重合性化合物が含まれていると、印刷層は、加熱下で延伸
し、また、インク中に多官能重合性化合物が含まれていると、印刷層に弾性、耐溶剤性が
得られる。
したがって、第1のインクは、単官能重合性化合物を含有するので、第1の加工領域4
1に対して変形加工を行ったとき、第1の印刷層31に、ヒビ、割れ、破断等が生じるこ
とを防止することができる。なお、第1のインクは、単官能重合性化合物および多官能重
合性化合物を含有することが好ましい。
【0017】
また、第2のインクは、重合性化合物として、単官能重合性化合物と多官能重合性化合
物とのうちの少なくとも多官能重合性化合物を含有する。これにより、第2の加工領域4
2に対してせん断形加工を行ったとき、第2の印刷層32に、ヒビ、割れ、欠け等が生じ
ることを防止することができる。なお、第2のインクは、単官能重合性化合物および多官
能重合性化合物を含有することが好ましい。
【0018】
また、第1のインク中の単官能重合性化合物の質量をx1、多官能重合性化合物の質量
をy1としたとき、y1/x1は、0.5以下(y1が0、すなわちy1/x1が0の場
合を含む)であり、0.05以上0.5以下であることが好ましく、0.13以上0.5
以下であることがより好ましく、0.3以上0.5以下であることがさらに好ましい。
y1/x1が前記上限値よりも大きいと、第1の印刷層31の延伸性が低下し、第1の
加工領域41に対して変形加工を行ったとき、第1の印刷層31に、ヒビ、割れ、破断等
が生じることがある。
【0019】
また、第1のインクに、単官能重合性化合物の他に、多官能重合性化合物が含まれるこ
と、特に、y1/x1が前記下限値以上であることにより、第1の印刷層31は、耐溶剤
性に優れたものとなる。これにより、第1の印刷層31に溶剤がかかった場合でもその第
1の印刷層31の破損を防止することができる。
また、第2のインク中の単官能重合性化合物の質量をx2、多官能重合性化合物の質量
をy2としたとき、y2/x2は、1以上(x2が0、すなわちy2/x2が∞の場合を
含む)であり、1以上19.8以下であることが好ましく、1.9以上19.8以下であ
ることがより好ましく、5.2以上10.5以下であることがさらに好ましい。
【0020】
y2/x2が前記下限値よりも小さいと、第1の印刷層31の弾性が低下し、第2の加
工領域42に対してせん断形加工を行ったとき、第2の印刷層32に、ヒビ、割れ、欠け
等が生じることがある。
また、y2/x2が大き過ぎても、第1の印刷層31の弾性が低下し、第2の加工領域
42に対してせん断形加工を行ったとき、他の条件によっては、第2の印刷層32に、ヒ
ビ、割れ、欠け等が生じることがある。このため、第2のインクに、多官能重合性化合物
の他に、単官能重合性化合物が含まれること、特に、y2/x2が前記上限値以下である
ことにより、第2の印刷層32は、適度な弾性を有することとなる。これにより、第2の
加工領域42に対してせん断形加工を行ったとき、第2の印刷層32に、ヒビ、割れ、欠
け等が生じることをより確実に防止することができる。
【0021】
また、第1のインク、第2のインクおよび第3のインクにおいて、それぞれ、インク中
の重合性化合物の総質量、すなわち、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物との合計
の質量は、インクの総質量に対し、55〜95質量%であることが好ましく、60〜90
質量%であることがより好ましい。上記範囲内であると、硬化性に優れ、また、粘度が適
度である。
また、第1のインク、第2のインクおよび第3のインクにおいて、それぞれ、25℃に
おける粘度は、3〜20mPa・sであることが好ましく、5〜12mPa・sであるこ
とがより好ましい。これにより、後述するインクジェット方式でインクを吐出することが
できる。
なお、第1のインクと、第2のインクと、第3のインクとの顔料濃度(着色剤濃度)は
、同一であることが好ましい。また、第1のインクと、第2のインクと、第3のインクと
の粘度は、同程度であることが好ましい。また、第1のインクと、第2のインクと、第3
のインクとの表面張力は、同程度であることが好ましい。
【0022】
前述したように、インクは、活性放射線の照射により硬化可能な放射線硬化型インクで
ある。
また、前記「活性放射線(放射線)」は、電離性を有する放射線と、非電離性の放射線
とを含む広義の意味でのものである。すなわち、前記「活性放射線(放射線)」とは、そ
の照射によりインク中において開始種を発生させ得るエネルギーを付与することができる
活性放射線であれば、特に制限はなく、広く、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線
(UV)、可視光線、赤外線などを包含するものであるが、中でも、硬化感度及び装置の
入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。したがって
、インクは、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能なインクであることが
好ましい。
【0023】
なお、本実施形態では、第1のインクで形成された第1の印刷層31と、第2のインク
で形成された第2の印刷層32とを比較したとき、第1の印刷層31は、第2の印刷層3
2よりも加熱下で延伸するものであり、また、第2の印刷層32は、第1の印刷層31よ
りも弾性率が高いものである。したがって、前述したように、第1のインクは、変形加工
される第1の加工領域41に設けられ、また、第2のインクは、せん断加工される第2の
加工領域42に設けられる。
また、第3のインク、すなわち第3のインクにより形成された第3の印刷層33は、後
述するように、色が規定されているが、前記第1の印刷層31や第2の印刷層32のよう
な特性、機能を有していなくてもよく、また、有していてもよい。したがって、このイン
クセットでの説明では、第1のインクと第2のインクとを中心に説明する。
【0024】
以下、インクの各成分について説明する。
(a)重合開始剤
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤や公知のカチオン重合開始剤を使用す
ることができる。重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい
。また、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤とを併用してもよい。
【0025】
また、重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。
重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性放射線に大別され、それ
ぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性放射線としては、α線、β線、
γ線、X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
また、インクは、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を使用する場合には、ラジ
カル重合開始剤を含有することが好ましく、重合性化合物としてカチオン重合性化合物を
使用する場合には、カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。
【0026】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤としては、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニ
ウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケト
オキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性
エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び、アルキルアミン化合物等が挙
げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記の化合物を単独若しくは組み合わせて使
用してもよい。ラジカル重合開始剤は、単独もしくは2種以上の併用によって好適に用い
られる。
【0027】
<カチオン重合開始剤>
カチオン重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光
カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「
イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)

【0028】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムな
どの芳香族オニウム化合物のB(C、PF6、AsF、SbF
CFSO塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を
挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることが
できる。第4に、鉄アレーン錯体を挙げることができる。
【0029】
また、インクにおいて、重合開始剤の総使用量は、それぞれ、重合性化合物の総使用量
に対して、0.01〜35質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であること
がより好ましく、1.0〜20質量%であることがさらに好ましい。0.01質量%以上
であると、インクを十分硬化させることができ、35質量%以下であると、硬化度が均一
な硬化膜を得ることができる。
また、インクに後述する増感剤を用いる場合、重合開始剤の総使用量は、重合開始剤:
増感剤の質量比で、重合開始剤:増感剤=200:1〜1:200であることが好ましく
、50:1〜1:50であることがより好ましく、20:1〜1:5であることがさらに
好ましい。
【0030】
(b)重合性化合物
インクは、前述したように、重合性化合物を含有する。
重合性化合物は、分子量が1,000以下であることが好ましく、50〜800である
ことがより好ましく、60〜500であることがさらに好ましい。
また、重合性化合物は、何らかのエネルギー付与により、ラジカル重合反応やカチオン
重合反応、アニオン重合反応等の重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限は
なく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、前
記重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、光重合性化合物として知ら
れる各種公知の重合性化合物を使用することができる。
【0031】
また、重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物を好ま
しく例示できる。具体的には、単官能重合性化合物および多官能重合性化合物として、そ
れぞれ、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、すなわち、単官能ラジカル重合
性化合物、多官能ラジカル重合性化合物、単官能カチオン重合性化合物、多単官能カチオ
ン重合性化合物を用いることが好ましい。
【0032】
<ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物は、特に制限はなく、公知のラジカル重合性化合物を用いること
ができるが、エチレン性不飽和化合物(エチレン性不飽和化合を有する基を有する化合物
)であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物
、N−ビニル化合物、及び/又は、ビニルエーテル化合物であることがより好ましく、(
メタ)アクリレート化合物、及び/又は、N−ビニル化合物であることがさらに好ましい
。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を意味する。
【0033】
単官能ラジカル重合性化合物としては、後述するN−ビニル化合物であることが好まし
く、N−ビニルラクタム類であることがより好ましい。
また、前記第1のインクにおける(b−1)重合性化合物としてラジカル重合性化合物
を使用する場合、前記第1のインクは、後述するN−ビニル化合物を含むことがさらに好
ましく、N−ビニルラクタム類を含むことが特に好ましい。
【0034】
多官能ラジカル重合性化合物としては、後述する多官能(メタ)アクリレート化合物で
あることが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリ
レートの両方を意味する。
また、多官能ラジカル重合性化合物としては、3官能ラジカル重合性化合物と、3官能
以上のラジカル重合性化合物とを組み合わせて使用することが好ましく、3官能ラジカル
重合性化合物と、3官能ラジカル重合性化合物とを組み合わせて使用することがより好ま
しい。
【0035】
以下に、単官能ラジカル重合性化合物、及び、多官能ラジカル重合性化合物について説
明する。
〔単官能ラジカル重合性モノマー〕
ラジカル重合性化合物としては、単官能ラジカル重合性モノマーを使用することができ
る。
単官能ラジカル重合性モノマーとしては、単官能アクリレート化合物、単官能メタクリ
レート類、単官能N−ビニル化合物、単官能アクリルアミド化合物、及び、単官能メタク
リルアミド化合物が好ましく例示でき、単官能アクリレート化合物、単官能メタクリレー
ト化合物、及び、単官能N−ビニル化合物がより好ましく例示できる。
【0036】
第1のインクが単官能ラジカル重合性モノマーを含有する場合、単官能ラジカル重合性
モノマーは、単官能アクリレート化合物と単官能N−ビニル化合物とを、又は、単官能メ
タクリレート化合物と単官能N−ビニル化合物とを併用することが好ましく、単官能アク
リレート化合物と単官能N−ビニル化合物とを併用することが特に好ましい。
単官能ラジカル重合性モノマーとしては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキ
シ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基及びN−ビニル基よりなる群から選択され
るエチレン性不飽和二重結合基を1つのみ有し、かつ環状構造を有するモノマーを使用す
ることがより好ましい。
また、好適に用いることができるラジカル重合性モノマーとしてエチレン性不飽和化合
物が挙げられる。
【0037】
単官能アクリレート類、単官能メタクリレート類、単官能ビニルオキシ化合物、単官能
アクリルアミド類及び単官能メタクリルアミド類としては、フェニル基、ナフチル基、ア
ントラセニル基、ピリジニル基、テトラヒドロフルフリル基、ピペリジニル基、シクロヘ
キシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、イソボロニル基、トリシクロデカニル
基等の環状構造を有する基を有する単官能ラジカル重合性モノマーが好ましく挙げられる

【0038】
単官能ラジカル重合性モノマーとして、好ましくは、ノルボルニル(メタ)アクリレー
ト、イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロ
ペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル
(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロデシル(メタ)ア
クリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘ
キシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ベンジル(メタ)アクリ
レート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変成
クレゾール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプ
ロラクトン変成テトラヒドロフルフリルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレング
リコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレ
ート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−フタルイミ
ドエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラ
メチルピペリジル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−(1
,1−ジメチル−2−フェニル)エチルアクリルアミド、N−ジフェニルメチルアクリル
アミド、N−フタルイミドメチルアクリルアミド、N−(1,1’−ジメチル−3−(1
,2,4−トリアゾール−1−イル))プロピルアクリルアミド、5−(メタ)アクリロ
イルオキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン等を例示できる。
また、単官能ラジカル重合性モノマーとして、N−ビニル基を有し、環状構造を有する
基を有するラジカル重合性モノマーを使用することが好ましい。中でもN−ビニルカルバ
ゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム類
を使用することが好ましく、N−ビニルラクタム類を使用することがさらに好ましい。
【0039】
また、単官能ラジカル重合性モノマーとして、下記非環状単官能モノマーを使用するこ
ともできる。非環状単官能モノマーは比較的低粘度であり、例えば、インクを低粘度化す
る目的においても好ましく使用できる。
具体的には、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレー
ト、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)
アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート
、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、
カルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレ
ート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、ポリプロピレ
ングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、ポリテトラエチレングリコール
(メタ)アクリレートモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0040】
また、これらの他にも、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポ
リ)エチレングリコール(メタ)アクリレートメチルエステル、(ポリ)エチレングリコ
ール(メタ)アクリレートエチルエステル、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリ
レートフェニルエステル、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(
ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートフェニルエステル、(ポリ)プロ
ピレングリコール(メタ)アクリレートメチルエステル、(ポリ)プロピレングリコール
(メタ)アクリレートエチルエステル、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチル
アクリレート、n−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソオクチルアクリ
レート、n−ラウリルアクリレート、n−トリデシルアクリレート、n−セチルアクリレ
ート、n−ステアリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチ
ルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、オリゴ
エステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エ
ポキシアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘ
キシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、n−
デシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n
−トリデシルメタクリレート、n−セチルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレー
ト、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメ
チルアミノメチルメタクリレート、及び、アリルグリシジルエーテル等が例示できる。
【0041】
さらに、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェ
ノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキ
シエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、エト
キシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロ
キシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルア
クリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアク
リレート等が例示できる。
【0042】
〔多官能ラジカル重合性モノマー〕
ラジカル重合性化合物として、多官能ラジカル重合性モノマーを使用することができる

多官能ラジカル重合性モノマーとしては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキ
シ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルオキシ基、及び、N−ビニル基よ
りなる群から選択されるエチレン性不飽和二重結合を有する基を2つ以上有する多官能重
合性モノマーを好ましく例示できる。多官能重合性モノマーを含有することで、高い硬化
膜強度を有するインクが得られる。
【0043】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する基を有する多官能ラジカル重合性モ
ノマーの例としては、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和
カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、ス
チレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不
飽和ウレタン(メタ)アクリル系モノマーあるいはプレポリマー、エポキシ系モノマーあ
るいはプレポリマー、ウレタン系モノマーあるいはプレポリマー等の(メタ)アクリル酸
エステルであって、エチレン性不飽和二重結合基を2つ以上有する化合物が好ましく用い
られる。特に、多官能(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0044】
具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチ
レングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(P
O)付加物ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アク
リレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノー
ルAのエチレンオキサイド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリ
スリトールトリ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アク
リレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタ
エリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールテトラ(
メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、E
O変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロ
パントリ(メタ)アクリレート、EO変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリ
レート、PO変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリ
トールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロー
ルエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート
、ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレー
ト、トリアリルトリメリテート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1
,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)ア
クリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テ
トラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メ
タ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリ
シジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレー
ト、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタ
エリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリ
レートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メ
タ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジトリメチロ
ールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ
ート、ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーが挙げられる。さらに具体
的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV
・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会
編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、シーエムシー社);滝山栄
一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、(株)日刊工業新聞社)等に記
載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー及び
ポリマーを用いることができる。
【0045】
これらの中でも、多官能ラジカル重合性モノマーとしては、以下のものを好ましく例示
できる。
2官能ラジカル重合性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート
、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ
(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ
化ネオペンチルグリコールジアクリレート、が好ましく例示できる。
【0046】
3官能ラジカル重合性モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ
ート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましく例示できる。
さらに、ラジカル重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を用いることも好ましい

上述したラジカル重合性化合物として列挙されているモノマーは、反応性が高く、粘度
が低く、また、支持体への密着性に優れる。
【0047】
<カチオン重合性化合物>
カチオン重合性化合物としては、硬化性及び耐擦過性の観点から、オキセタン環含有化
合物及びオキシラン環含有化合物が好適であり、オキセタン環含有化合物及びオキシラン
環含有化合物の両方を含有する態様がより好ましい。
ここで、オキシラン環含有化合物(以下、「オキシラン化合物」ともいう。)とは、分
子内に、少なくとも1つのオキシラン環(オキシラニル基、エポキシ基)を含む化合物で
あり、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択すること
ができ、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ
樹脂が挙げられる。モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよい。
【0048】
また、オキセタン環含有化合物(以下、「オキセタン化合物」ともいう。)とは、分子
内に少なくとも1つのオキセタン環(オキセタニル基)を含む化合物である。
単官能カチオン重合性化合物としては、単官能オキシラン化合物、及び/又は、単官能
オキセタン化合物であることが好ましい。
多官能カチオン重合性化合物としては、2官能カチオン重合性化合物であることが好ま
しい。また、多官能ラジカル重合性化合物としては、多官能オキシラン化合物、及び/又
は、多官能オキセタン化合物であることが好ましく、多官能オキシラン化合物と多官能オ
キセタン化合物とを併用することがより好ましい。
【0049】
以下、単官能カチオン重合性化合物、及び、多官能カチオン重合性化合物について詳細
に説明する。
カチオン重合性化合物としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31
892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310
938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記
載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられ
る。
【0050】
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−te
rt−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキ
シルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1
,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1
,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリ
ロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘ
キセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエ
ーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテ
ル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジ
ルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、
水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテ
ル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチ
ル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシ
クロヘキシル)−7,8−エポキシ−1,3−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビ
ス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサ
イド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロ
ヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4
’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−
エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコール
のジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポ
キシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エ
ポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシ
ジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシ
ジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコー
ルジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,13
−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシ
オクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0052】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化
速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、支持体
との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル
化合物が好ましい。
【0053】
オキセタン化合物としては、特開2001−220526号、同2001−31093
7号、同2003−341217号の各公報に記載されているような、公知のオキセタン
化合物を任意に選択して使用できる。
オキセタン化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ま
しい。このような化合物を使用することで、インクジェット記録用液体の粘度をハンドリ
ング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの支持体との高
い密着性を得ることができる。
【0054】
単官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオ
キセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3
−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オ
キセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキ
セタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ
)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチ
ル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エー
テル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキ
シル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(
3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−
3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3
−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニル
メチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エ
ーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−
テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリ
ブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェ
ノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル
(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチ
ル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニ
ルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エ
ーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボル
ニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0055】
多官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−
5−オキサノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキ
シメチレン))ビス(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキ
セタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル
メトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)
メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エ
ーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ト
リエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエ
チレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデ
カンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロー
ルプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3
−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセ
タニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニ
ルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニル
メチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル
)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル
)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル
)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル
)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−
オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス
(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキ
ス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(
3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−
エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−
エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−
エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−
3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
なお、これらのカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用しても
よい。
また、重合性化合物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により合成する
ことができる。また、入手可能な場合は、市販品を使用してもよい。
【0056】
(c)着色剤
インクには、形成された画像部の視認性を向上させるため着色剤を含有させることがで
きる。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性
染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用することができる
。インクに好適に使用し得る着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させない
という観点からは、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しない化合物
を選択することが好ましい。
【0057】
顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載され
る下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,3
8,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53
:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3
,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149
,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208
,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30
,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、
青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2
,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,6
0、
緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、
黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,3
4,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,
110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,
167,168,180,185,193、
黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、
白色顔料としては、Pigment White 6,18,21
などが目的に応じて使用できる。
【0058】
また、着色剤は、インク又はインクジェット記録用インクに添加された後、適度に当該
インク内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミ
ル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波
ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を
用いることができる。
着色剤は、インクの調製に際して、各成分とともに直接添加により配合してもよいが、
分散性向上のため、あらかじめ溶剤又はラジカル重合性化合物のような分散媒体に添加し
、均一分散或いは溶解させた後、配合することもできる。
【0059】
(d)分散剤
インクは、顔料をインク中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい

分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、「高分子分散剤」とは、質量平均分
子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0060】
高分子分散剤としては、DisperBYK−101、DisperBYK−102、
DisperBYK−103、DisperBYK−106、DisperBYK−11
1、DisperBYK−161、DisperBYK−162、DisperBYK−
163、DisperBYK−164、DisperBYK−166、DisperBY
K−167、DisperBYK−168、DisperBYK−170、Disper
BYK−171、DisperBYK−174、DisperBYK−182(以上BY
K Chemie社製)、EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、E
FKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6
750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、E
FKA7570、EFKA7575、EFKA7580(以上エフカアディティブ社製)
、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパー
スエイド9100(サンノプコ(株)製)等の高分子分散剤;ソルスパース(Solsp
erse)3000,5000,9000,12000,13240,13940,17
000,22000,24000,26000,28000,32000,36000,
39000,41000,71000などの各種ソルスパース分散剤(アビシア社製);
アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72
,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108,L121
,P−123((株)ADEKA製)及びイソネットS−20(三洋化成工業(株)製)
、楠本化成(株)製「ディスパロン KS−860,873SN,874(高分子分散剤
)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が
挙げられる。
インク中における分散剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、インク全体の質
量に対し、それぞれ0.05〜15質量%であることが好ましい。
【0061】
(e)その他の成分
インクには、必要に応じて、前記成分以外の他の成分を添加することができる。
その他の成分としては、例えば、増感剤、共増感剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化
防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物、重合禁止剤、ス
リップ剤等が挙げられる。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整する
ためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の支持体への密着性を改善するために、重
合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0062】
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6p
に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜
20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜1
4の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アル
コールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与
性樹脂などが例示できる。
【0063】
次に、印刷物1の製造に用いる印刷装置について説明する。
[印刷装置]
図2に示すように、印刷装置(印刷物製造装置)1aは、基材30上に放射線硬化型イ
ンクを吐出した上で、吐出した放射線硬化型インクに放射線照射を行って該放射線硬化型
インクを硬化させ、基材30上に文字・数字や各種の絵柄などを描画するものである。
【0064】
この印刷装置1aは、基材30を載置する基台2と、基台2上の基材30を図2中のX
方向に搬送する搬送装置3と、放射線硬化型インクを吐出する液滴吐出ヘッド(図示せず
)と、該液滴吐出ヘッドを複数備えてなるキャリッジ4と、このキャリッジ4を、X方向
と直交するY方向に移動させる送り装置5と、を具備して構成されている。なお、本実施
形態では、搬送装置3及び送り装置5により、基材30とキャリッジ4とを、X方向及び
Y方向にそれぞれ相対移動させる移動装置が構成されている。
【0065】
搬送装置3は、基台2上に設けられたワークステージ6及びステージ移動装置7を備え
て構成されたものである。ワークステージ6は、ステージ移動装置7によって基台2上を
X方向に移動可能に設けられたもので、製造工程において印刷装置1aの上流側に配置さ
れた搬送装置(図示せず)から搬送される基材30を、例えば真空吸着機構によってXY
平面上に保持するものである。ステージ移動装置7は、ボールネジまたはリニアガイド等
の軸受け機構を備えたもので、制御装置8から入力される、ワークステージ6のX座標を
示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ6をX方向に移動させるよう構成
されたものである。
【0066】
図3及び図4に示すように、キャリッジ4は、送り装置5に移動可能に取り付けられた
矩形板状のもので、底面4a側に複数(本実施形態では10個)の液滴吐出ヘッド(成膜
装置)9を、Y方向に沿って配列させた状態で保持したものである。
これら複数の液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、後述するように
多数(複数)のノズルを備えたもので、制御装置8から入力される描画データや駆動制御
信号に基づいて、放射線硬化型インクの液滴を吐出するものである。また、これら液滴吐
出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、Y(イエロー)、C(シアン)、M(
マゼンタ)、K(黒)に対応した放射線硬化型インク、および透明色または白色(W)の
放射線硬化型インクをそれぞれ吐出するものであり、それぞれの液滴吐出ヘッド9には、
図2に示すようにキャリッジ4を介してチューブ(配管)10が連結されている。なお、
10個の液滴吐出ヘッド9のうち、図3中左側の5個の液滴吐出ヘッド9を第1のインク
の液滴の吐出用とし、図3中右側の5個の液滴吐出ヘッド9を第2のインクの液滴の吐出
用とする。そして、第3のインクの吐出には、本実施形態では、10個の液滴吐出ヘッド
9のうち、第1のインクおよび第2のインクと異なる色相のインクを吐出する液滴吐出ヘ
ッド9を用いる。なお、第3のインクの液滴の吐出用として、さらに5個の液滴吐出ヘッ
ド9を設けてもよいことは言うまでもない。
【0067】
Y(イエロー)に対応する液滴吐出ヘッド9Yには、チューブ10を介してY(イエロ
ー)用の放射線硬化型インクを充填・貯蔵した第1タンク11Yが接続されており、これ
によって液滴吐出ヘッド9Yには、この第1タンク11YからY(イエロー)用の放射線
硬化型インクが供給されるようになっている。
同様に、C(シアン)に対応する液滴吐出ヘッド9CにはC(シアン)用の放射線硬化
型インクを充填した第2タンク11C、M(マゼンタ)に対応する液滴吐出ヘッド9Mに
はM(マゼンタ)用の放射線硬化型インクを充填した第3タンク11M、K(黒)に対応
する液滴吐出ヘッド9KにはK(黒)用の放射線硬化型インクを充填した第4タンク11
K、W(透明または白、ここでは透明とする)に対応する液滴吐出ヘッド9WにはW(透
明)用の放射線硬化型インクを充填した第5タンク11W、がそれぞれ接続されている。
このような構成によって各液滴吐出ヘッド9には、対応する放射線硬化型インクが供給さ
れるようになっている。
【0068】
これら液滴吐出ヘッド9Y、9C、9M、9K、9W、チューブ(配管)10、タンク
11Y、11C、11M、11K、11Wには、各色(Y、C、M、K、W)の系それぞ
れに、ヒーター等の加熱手段(図示せず)が設けられている。すなわち、それぞれの色の
系では、液滴吐出ヘッド9、チューブ10、タンク11のうちの少なくとも一つに、放射
線硬化型インクの粘度を低下させてその流動性を高める加熱手段が設けられており、これ
によって放射線硬化型インクは、液滴吐出ヘッド9からの吐出性が良好になるように調整
されている。
ここで、放射線硬化型インクは、前述したように、例えば紫外線硬化型インクなど、所
定波長の放射線を受けて硬化するタイプのものである。なお、放射線硬化型インクは、通
常はその成分(配合)等によって吸収する放射線(紫外線)の波長域等が異なることから
、硬化する波長の最適値、すなわち最適硬化波長も、インク毎に異なっている。
【0069】
図5は、液滴吐出ヘッド9の概略構成図である。図5(a)は液滴吐出ヘッド9をワー
クステージ6側から見た平面図、図5(b)は液滴吐出ヘッド9の部分斜視図、図5(c
)は液滴吐出ヘッド9の1ノズル分の部分断面図である。
図5(a)に示すように、液滴吐出ヘッド9は、複数(例えば180個)のノズルNを
Y方向と交差する方向、本実施形態ではX方向に配列しており、これら複数のノズルNに
よってノズル列NAを形成している。なお、図では1列分のノズルを示したが、液滴吐出
ヘッド9に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、例えばX方向に配列
したノズル列NAをY方向に複数列設けてもよい。
【0070】
また、図5(b)に示すように、チューブ10と連結される材料供給孔20aが設けら
れた振動板20と、ノズルNが設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプ
レート21との間に設けられたリザーバー(液溜まり)22と、複数の隔壁23と、複数
のキャビティー(液室)24とを備えて構成されている。ノズルプレート21の表面(底
面)は、複数のノズルNを形成したノズル面21aとなっている。振動板20上には、各
ノズルNに対応して圧電素子(駆動素子)PZが配置されている。圧電素子PZは、例え
ばピエゾ素子からなっている。
【0071】
リザーバー22には、材料供給孔20aを介して供給される放射線硬化型インクが充填
されるようになっている。キャビティー24は、振動板20と、ノズルプレート21と、
1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されおり、各ノズルNに対して1対1
に対応して設けられている。また、各キャビティー24には、一対の隔壁23の間に設け
られた供給口24aを介して、リザーバー22から放射線硬化型インクが導入されるよう
になっている。
【0072】
また、図5(c)に示すように、圧電素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟
持したもので、一対の電極26に駆動信号が印加されることにより、圧電材料25が収縮
するように構成されたものである。したがって、このような圧電素子PZが配置されてい
る振動板20は、圧電素子PZと一体になって同時に外側(キャビティー24の反対側)
へ撓曲するようになっており、これによってキャビティー24の容積が増大するようにな
っている。
【0073】
よって、キャビティー24内に増大した容積分に相当する放射線硬化型インクが、液溜
まり22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から圧電素子PZへ
の駆動信号の印加が停止すると、圧電素子PZと振動板20とは共に元の形状に戻り、キ
ャビティー24も元の容積に戻る。これにより、キャビティー24内の放射線硬化型イン
クの圧力が上昇し、ノズルNから基材30に向けて放射線硬化型インクの液滴Lが吐出さ
れるようになっている。
なお、このような構成からなる液滴吐出ヘッド9は、そのノズルプレート21の底面、
すなわちノズルNの形成面(ノズル面)NSが、図3に示すようにキャリッジ4の底面4
aより下側となるように、該底面4aから突出して配置されている。
【0074】
また、キャリッジ4には、図3及び図4に示すように、配列する複数(図では10個)
の液滴吐出ヘッド9を挟んで両側に放射線照射手段12が隣り合って配置されている。す
なわち、放射線照射手段12は、Y方向に配列された液滴吐出ヘッド9の配列方向に沿っ
て、その両側にそれぞれ配置されている。
これら放射線照射手段12は、放射線硬化型インクを硬化させるためのもので、本実施
形態では多数のLED(発光ダイオード)からなっている。ただし、本発明では、放射線
照射手段12は、放射線硬化型インクの重合を促進する波長の放射線を射出可能であれば
LEDに限定されることなく、これ以外にも例えばレーザーダイオード(LD)や、さら
には水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を放射線
照射手段12として用いることができる。例えば、放射線硬化型インクとして紫外線硬化
型のインクを用いる場合には、紫外線を射出する各種光源を用いることができる。
【0075】
本実施形態のLEDからなる放射線照射手段12は、照射する放射線が、液滴吐出ヘッ
ド9が吐出する放射線硬化型インクの、最適硬化波長を含む波長帯域を有する放射線とな
っている。つまり、前述したように各放射線硬化型インクは、その成分(配合)等によっ
て最適硬化波長が異なることが想定されるが、上述のような放射線を照射することにより
、各放射線硬化型インクの最適硬化波長を有した光を照射するようになっている。
【0076】
図2に示すように、キャリッジ4を移動させる送り装置5は、例えば基台2を跨ぐ橋梁
構造をしたもので、Y方向及びXY平面に直交するZ方向に対して、ボールネジまたはリ
ニアガイド等の軸受け機構を備えたものである。このような構成のもとに送り装置5は、
制御装置8から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御
信号に基づいて、キャリッジ4をY方向に移動させるとともに、Z方向にも移動させるよ
うになっている。
【0077】
制御装置8は、ステージ移動装置7にステージ位置制御信号を出力し、送り装置5にキ
ャリッジ位置制御信号を出力し、さらには液滴吐出ヘッド9の駆動回路基板(図示せず)
に描画データ及び駆動制御信号を出力するものである。これによって制御装置8は、基材
30とキャリッジ4とを相対移動させるべく、ワークステージ6の移動による基材30の
位置決め動作、及びキャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド9の位置決め動作の同期制
御を行い、さらに液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせることにより、基材30上の
所定の位置に放射線硬化型インクの液滴を配するようになっている。また、この制御装置
8は、液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせるのとは別に、放射線照射手段12に放
射線照射動作を行わせるようにもなっている。
印刷装置1aは、以上のような構成となっている。
【0078】
次に、印刷物1について説明する。
図1に示すように、印刷物1は、基材30上に直接または間接的に設けられた第1の印
刷層31、第2の印刷層32および第3の印刷層33とを有している。本実施形態では、
印刷物1は、基材30と、基材30上の互いに異なる領域に設けられ、特性または機能が
互いに異なり、かつ色差を有する、第1のインクを用いて印刷してなる第1の印刷層31
と、第2のインクを用いて印刷してなる第2の印刷層32と、第1の印刷層31と第2の
印刷層32との境界を覆うかまたは埋めるように設けられ、第1の印刷層31および第2
の印刷層32に対して色差を有する、第3のインクを用いて印刷してなる第3の印刷層3
3とを有している。第1の印刷層31は、基材30上の変形させるための加工がなされる
部位、すなわち変形加工される部位である第1の加工領域41に設けられ、第2の印刷層
32は、せん断加工される部位である第2の加工領域42に設けられている。第3の印刷
層33を設けることにより、第1の印刷層31と第2の印刷層32とを離すことができ、
これにより、後述するように第1の印刷層31と第2の印刷層32との色差が小さい場合
は、その第1の印刷層31と第2の印刷層32とを同じ色に見せることができる。なお、
第1の印刷層31と第2の印刷層32とが色差を有していなくてもよいことは、言うまで
もない。
基材30の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂、各種ガラス、各種
金属等を用いることができるが、変形させることができるという観点から樹脂材料が好ま
しい。
【0079】
また、樹脂材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、
エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレ
フィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデ
ン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポ
リ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリ
レート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニ
トリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメ
チレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EV
OH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT
)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポ
リエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテル
イミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキ
シド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリア
リレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等、またはこれらを主とする共重合体、
ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合
わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
また、印刷物1を基材30側から視認するよう構成する場合は、基材30を透明にする
。なお、印刷物1を基材30と反対側、すなわち第1の印刷層31、第2の印刷層32、
第3の印刷層33側から視認するよう構成する場合は、基材30は、不透明でもよく、ま
た透明でもよい。
【0080】
図1(a)に示す加工前の印刷物1は、変形加工される第1の加工領域41と、せん断
加工される第2の加工領域42とを有している。すなわち、図1(b)に示す加工後の印
刷物1は、第1の加工領域41に対して変形加工がなされ、第2の加工領域42に対して
せん断加工がなされたものである。なお、図1(a)に示す加工前の印刷物1と、図1(
b)に示す加工後の印刷物1とのいずれも、本発明の印刷物に含まれる。
【0081】
前記変形加工としては、例えば、絞り加工、曲げ加工等のように一部を延伸する加工等
が挙げられる。図示の構成では、印刷物1の第1の加工領域41に、絞り加工により、有
底筒状の部位が形成されている。
また、前記せん断加工としては、例えば、打ち抜き、切り取り等が挙げられる。図示の
構成では、印刷物1の第2の加工領域42に、打ち抜き加工により、開口が形成されてい
る。
【0082】
ここで、第1の印刷層31の鉛筆硬度は、B以上であることが好ましく、B以上4H以
下であることがより好ましい。これにより、第1の加工領域41に、変形加工を好適に行
うことができる。
また、第2の印刷層32の鉛筆硬度は、H以上であることが好ましく、H以上5H以下
であることがより好ましい。これにより、第2の加工領域42に、せん断加工を好適に行
うことができる。
【0083】
また、第1の印刷層31と第2の印刷層32との色度計(色差計)で測定したときの色
差は、2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.1以上1以
下であることがさらに好ましい。これにより、第1の印刷層31と第2の印刷層32とが
若干離れた場合に、第1の印刷層31と第2の印刷層32とを同じ色として認識すること
ができる。
【0084】
また、第1の印刷層31と第2の印刷層32には、同一の色相の着色剤が含まれている
ことが好ましく、共通の着色剤が含まれていることが好ましい。これにより、第1の印刷
層31と第2の印刷層32との色度計で測定したときの色差を前記のようにすることがで
きる。
なお、第1の印刷層31と第2の印刷層32とは、その特性の相違のため、重合性化合
物の組成が異なっているので、同一の色相の着色剤や、共通の着色剤を用いても、第1の
印刷層31と第2の印刷層32との色差は、異なってしまう。
【0085】
また、第1の印刷層31と第2の印刷層32とは、接触していてもよく、また、離間し
て配置されていれもよいが、本実施形態では、第1の印刷層31と第2の印刷層32とは
、接触している。そして、第3の印刷層33は、当該印刷物1を視認する方向から見て、
第1の印刷層31と第2の印刷層32との境界を覆うように設けられている。すなわち、
当該印刷物1を視認する方向は、基材30と反対側であり、第3の印刷層33は、基材3
0と反対側から見て、第1の印刷層31と第2の印刷層32との境界を覆うように第1の
印刷層31および第2の印刷層32上に設けられている。なお、第1の印刷層31と第2
の印刷層32との境界とは、第1の印刷層31と第2の印刷層32とが離間して配置され
ている場合は、第1の印刷層31と第2の印刷層32との間の間隙を言う。
【0086】
第3の印刷層33は、その第3の印刷層33と第1の印刷層31との色度計で測定した
ときの色差が3以上で、かつ第3の印刷層33と第2の印刷層32との色度計で測定した
ときの色差が3以上のものである。これにより、第3の印刷層33を第1の印刷層31お
よび第2の印刷層32と別のものであると認識することができ、これによって、第1の印
刷層31と第2の印刷層32とを離すことができ、その第1の印刷層31と第2の印刷層
32とを同じ色に見せることができる。
【0087】
また、第3の印刷層33は、第1の印刷層31や第2の印刷層32と色相が同じでもよ
く、また異なっていてもよいが、第1の印刷層31および第2の印刷層32と色相が異な
っていることが好ましい。これにより、第3の印刷層33が第1の印刷層31および第2
の印刷層32と別のものであることをより確実に認識することができ、これによって、第
1の印刷層31と第2の印刷層32とを離すことができ、その第1の印刷層31と第2の
印刷層32とを同じ色に見せることができる。
【0088】
また、第3の印刷層33は、第1の印刷層31や第2の印刷層32と明度が同じでもよ
く、また異なっていてもよいが、第1の印刷層31および第2の印刷層32よりも明度が
高いことが好ましい。これにより、第3の印刷層33が目立ち、その第3の印刷層33が
第1の印刷層31および第2の印刷層32と別のものであることをより確実に認識するこ
とができ、これによって、第1の印刷層31と第2の印刷層32とを離すことができ、そ
の第1の印刷層31と第2の印刷層32とを同じ色に見せることができる。
また、第3の印刷層33の幅wは、0.35mm以上であることが好ましく、10mm
以上であることがより好ましい。これにより、第1の印刷層31と第2の印刷層32とを
同じ色として認識することができる程度に、その第1の印刷層31と第2の印刷層32と
を離すことができる。
【0089】
このような第1の印刷層31、第2の印刷層32および第3の印刷層33は、それぞれ
、印刷により形成されたものである。本実施形態では、第1の印刷層31、第2の印刷層
32および第3の印刷層33は、それぞれ、印刷装置1aを用いて、インクジェット法に
よりインクを付与(塗布)して形成されたものである。すなわち、第1の印刷層31は、
第1のインクをインクジェット方式でノズルNから液滴として吐出して供給し、放射線を
照射して硬化させたものである。また、第2の印刷層32は、第2のインクをインクジェ
ット方式でノズルNから液滴として吐出して供給し、放射線を照射して硬化させたもので
ある。また、第3の印刷層33は、第3のインクをインクジェット方式でノズルNから液
滴として吐出して付与し、放射線を照射して硬化させたものである。
なお、印刷物1としては、特に限定されず、例えば、スピードメーター等の自動車の内
装部品、電気製品の外装部品、お面、看板等が挙げられる。
【0090】
次に、印刷物1の製造方法について説明する。
印刷物1の製造には、前記印刷装置1aを用いる。
まず、図2に示すように、基材30をワークステージ6上に載置する。
次いで、印刷装置1aを作動させ、基材30上の第1の印刷層31の形成領域に第1の
インクを吐出して付与し、第2の印刷層32の形成領域に第2のインクを吐出して付与す
る。また、放射線照射手段12により、付与された第1のインク、第2のインクに対し、
放射線を照射し、硬化させ、第1の印刷層31、第2の印刷層32を形成する。
【0091】
次いで、第1の印刷層31および第2の印刷層32上の第3の印刷層33の形成領域に
第3のインクを吐出して付与する。また、放射線照射手段12により、付与された第3の
インクに対し、放射線を照射し、硬化させ、第3の印刷層33を形成する。
次いで、第1の印刷層31が設けられた第1の加工領域41に対し、変形加工、すなわ
ち、絞り加工を行ない、有底筒状の部位を形成する。なお、この絞り加工は、第1の加工
領域41を加熱しつつ行う。
また、第2の印刷層32が設けられた第2の加工領域42に対し、せん断加工、すなわ
ち、打ち抜き加工により、開口を形成する。
なお、第1の加工領域41への絞り加工と、第2の加工領域42への打ち抜き加工とは
、いずれを先に行ってもよい。
【0092】
以上説明したように、この印刷物1によれば、第1の加工領域41では、ヒビ、割れ、
破断等が防止され、変形加工を好適に行うことができ、第2の加工領域42では、ヒビ、
割れ、欠け等が防止され、せん断加工を好適に行うことができる。
また、第3の印刷層33を設けることにより、第1の印刷層31と第2の印刷層32と
を離すことができ、これにより、その第1の印刷層31と第2の印刷層32とを同じ色に
見せることができる。
【0093】
以上、本発明の印刷物および印刷物の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明した
が、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の
構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や、工程が付加
されていてもよい。
また、本発明では、第1の印刷層と第2の印刷層とが離間して配置されており、第3の
印刷層は、第1の印刷層と第2の印刷層との間の間隙を埋めるように設けられていてもよ
い。
【0094】
また、前記実施形態では、印刷物は、第1のインクにより形成された第1の印刷層と、
第2のインクにより形成された第2の印刷層と、第3のインクにより形成された第3の印
刷層とを有しているが、本発明では、さらに、第4のインクにより形成された第4の印刷
層等を有していてもよい。すなわち、印刷層は、3種に限らず、4種以上設けられていて
もよい。
また、本発明では、第3の印刷層が省略されていてもよい。
【実施例】
【0095】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
<インク、印刷層>
下記表1に示す組成1〜12のインクをそれぞれ用意した。
そして、各組成1〜12のインクをそれぞれ用い、そのインクをポリカーボネート製の
基材上に、インクジェット方式でノズルから液滴として吐出して供給し、紫外線を照射し
て硬化させ、印刷層を形成した。
また、各印刷層について、それぞれ、打ち抜き加工性および延伸率を下記のようにして
評価した。その結果は、下記表1に示す通りである。
【0096】
[打ち抜き加工性]
円形に打ち抜くための型を用いて、印刷層および基材を打ち抜いた。そして、下記のよ
うにして、評価を行った。
◎:打ち抜き部について、外観変化無し
○:打ち抜き部について、薄いヒビが生じたが、割れや欠けは無し
△:打ち抜き部について、大きくヒビが生じた
×:打ち抜き部について、割れや欠けが生じた
【0097】
[延伸率]
まず、印刷層の長さL1を求めた。
次に、印刷層を150℃に加熱し、印刷層を基材ごと引っ張り、印刷層にヒビが入るか
、または印刷層が破断する直前のときの印刷層の長さL2を求めた。
そして、下記式から印刷層の延伸率を求めた。
延伸率(%)=(L2−L1)/L1
【0098】
【表1】

【0099】
なお、組成1のインクおよび組成2のインクを用いて形成した印刷層は、それぞれ、多
官能モノマーが少ないか、または多官能モノマーを含有していないため、耐溶剤性が劣る

【0100】
(実施例1)
組成1のインクを用い、そのインクをポリカーボネート製の基材上の第1の加工領域に
、インクジェット方式でノズルから液滴として吐出して供給し、紫外線を照射して硬化さ
せ、第1の印刷層を形成した。また、組成7のインクを用い、前記基材上の第2の加工領
域に、インクジェット方式でノズルから液滴として吐出して供給し、紫外線を照射して硬
化させ、第2の印刷層を形成し、印刷物を得た。
(実施例2〜24)
下記表2および表3に示すようにインクを変更した以外は、前記実施例1と同様にして
、印刷物を得た。
【0101】
(比較例1〜12)
下記表3に示すようにインクを変更した以外は、前記実施例1と同様にして、印刷物を
得た。
前記各実施例および各比較例について、それぞれ、第2の加工領域における第2の印刷
層に対する打ち抜き加工性および第1の加工領域における第1の印刷層に対する延伸率を
前記のようにして評価した。その結果は、下記表2および表3に示す通りである。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

上記表2および表3から明らかなように、各実施例では、打ち抜き加工性および延伸率
のそれぞれにおいて良好な結果が得られた。
これに対し、比較例1〜3では、打ち抜き加工性が非常に悪く、比較例4〜6では、打
ち抜き加工性が悪く、比較例7では、延伸率が低く、比較例8〜12では、延伸率が非常
に低かった。
【符号の説明】
【0104】
1…印刷物 1a…印刷装置(印刷物製造装置) 2…基台 3…搬送装置 4…キャ
リッジ 4a…底面 5…送り装置 6…ワークステージ 7…ステージ移動装置 8…
制御装置 9、9Y、9C、9M、9K、9W…液滴吐出ヘッド(成膜装置) 10…チ
ューブ 11Y…第1タンク 11C…第2タンク 11M…第3タンク 11K…第4
タンク 11W…第5タンク 12…放射線照射手段 20…振動板 20a…材料供給
孔 21…ノズルプレート 21a…ノズル面 22…リザーバー 23…隔壁 24…
キャビティー 24a…供給口 25…圧電材料 26…電極 30…基材 31…第1
の印刷層 32…第2の印刷層 33…第3の印刷層 41…第1の加工領域 42…第
2の加工領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形加工される第1の加工領域と、せん断加工される第2の加工領域とを有する基材と

前記基材上の前記第1の加工領域に設けられ、単官能重合性化合物と多官能重合性化合
物とのうちの少なくとも単官能重合性化合物を含有する第1の硬化型インクを用いて印刷
してなる第1の印刷層と、
前記基材上の前記第2の加工領域に設けられ、単官能重合性化合物と多官能重合性化合
物とのうちの少なくとも多官能重合性化合物を含有する第2の硬化型インクを用いて印刷
してなる第2の印刷層とを備え、
前記第1の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx1、多官能重合性化合物の
質量をy1としたとき、y1/x1は、0.5以下であり、
前記第2の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx2、多官能重合性化合物の
質量をy2としたとき、y2/x2は、1以上であることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記第1の印刷層の鉛筆硬度は、B以上である請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記第2の印刷層の鉛筆硬度は、H以上である請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記第1の加工領域に対して前記変形加工がなされたものである請求項1ないし3のい
ずれかに記載の印刷物。
【請求項5】
前記第2の加工領域に対して前記せん断加工がなされたものである請求項1ないし4の
いずれかに記載の印刷物。
【請求項6】
前記第1の印刷層は、前記第1の硬化型インクをインクジェット方式でノズルから液滴
として吐出して供給し、形成したものであり、
前記第2の印刷層は、前記第2の硬化型インクをインクジェット方式でノズルから液滴
として吐出して供給し、形成したものである請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷物

【請求項7】
前記第1の硬化型インクおよび前記第2の硬化型インクは、それぞれ、放射線硬化型イ
ンクであり、
前記第1の印刷層は、前記第1の硬化型インクをインクジェット方式でノズルから液滴
として吐出して供給し、放射線を照射して硬化させたものであり、
前記第2の印刷層は、前記第2の硬化型インクをインクジェット方式でノズルから液滴
として吐出して供給し、放射線を照射して硬化させたものである請求項1ないし5のいず
れかに記載の印刷物。
【請求項8】
変形加工される第1の加工領域と、せん断加工される第2の加工領域とを有する基材上
の前記第1の加工領域に、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物とのうちの少なくと
も単官能重合性化合物を含有する第1の硬化型インクを用いて第1の印刷層を印刷すると
ともに、前記第2の加工領域に、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物とのうちの少
なくとも多官能重合性化合物を含有する第2の硬化型インクを用いて第2の印刷層を印刷
する印刷物の製造方法であって、
前記第1の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx1、多官能重合性化合物の
質量をy1としたとき、y1/x1は、0.5以下であり、
前記第2の硬化型インク中の単官能重合性化合物の質量をx2、多官能重合性化合物の
質量をy2としたとき、y2/x2は、1以上であることを特徴とする印刷物の製造方法

【請求項9】
前記第1の加工領域に対して前記変形加工を行う請求項8に記載の印刷物の製造方法。
【請求項10】
前記第2の加工領域に対して前記せん断加工を行う請求項8または9に記載の印刷物の
製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219212(P2012−219212A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87987(P2011−87987)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】