説明

印刷物作製方法、印刷物及び真偽判別方法

【課題】 本発明は、振幅変調を用いた情報の合成方法で得られた印刷物であっても、合成した情報を安定して検出可能であり、赤外画像のみで秘匿情報が発現せず、秘匿情報が漏洩し易い問題を解消することを目的とする。
【解決手段】 基材上のカラー画像C’(i,j)を赤外光領域で撮影した多値画像をKm(i,j)とし、C’(i,j)を可視光領域で撮像したカラー画像Cm(i,j)をシアン、マゼンタ及びイエローの画像の三つの多値画像又はレッド、グリーン及びブルーの画像の三つの多値画像に分解し、シアン、マゼンタ及びイエローの画像のうちの任意の一つ又はレッド、グリーン及びブルーの画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)として、Mm(i,j)とKm(i,j)とを基にして生成した判別用画像から秘匿された二値配列のパターンを抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像に二値配列データを秘匿情報として合成する秘匿情報合成技術に関するものであり、証券、証書、紙幣、印紙、証紙、切手、旅券、身分証明書、通行証、会員証又はクレジットカードを含む印刷物の識別や真偽判別に利用できる技術である。
【背景技術】
【0002】
秘匿情報合成技術は、通常、画像に表面的には知覚できない形で情報を合成しておき、合成された情報を検出することにより、画像の真偽判別や不正コピーの発見等に利用される。
【0003】
その一例として、モジュロ演算により振幅変調して情報を合成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色を用いた連続階調画像に情報を合成する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3593422号公報(第1−10頁、第1−12図)
【特許文献2】特許第3544536号公報(第1−8頁、第1−9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許第3593422号公報の振幅変調を用いた情報の合成方法は、印刷物に適用しようとすると、照明ムラ等の影響を受けやすいため、合成した情報を安定して検出することが困難である。
【0007】
また、特許第3544536号公報のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色を用いた連続階調画像に情報を合成する方法は、赤外画像に秘匿情報が発現するため、秘匿情報が漏洩し易いという問題点がある。
【0008】
本発明は、前述した問題点を解決することを目的としたもので、振幅変調を用いた情報の合成方法で得られた印刷物であっても、合成した情報を安定して検出が可能であり、赤外画像のみで秘匿情報が発現することはなく、秘匿情報が漏洩し易い問題を解消できるものであって、カラー画像に二値配列データが秘匿化された真偽判別対象画像を有する印刷物を作製し、この印刷物から読み取ったカラー画像と赤外画像に所定の処理を施して判別用画像を生成し、この判別用画像と基準画像とを比較、照合して、印刷物の真偽判別を行うものである。
【0009】
また、本発明は、印刷物の偽造及び変造を防止することを目的とした印刷物作製方法、印刷物及び真偽判別方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、多値画像F(i,j)と秘匿情報の二値配列g(u,v)とカラー画像C(i,j)を入力する入力工程と、F(i,j)をハートレー変換して実数配列f(u,v)を生成するハートレー変換工程と、f(u,v)とg(u,v)とを合成して実数配列e(u,v)を生成するデータ合成工程と、e(u,v)を逆ハートレー変換して多値画像H(i,j)を生成する逆ハートレー変換工程と、H(i,j)を二値化して二値画像Hb(i,j)を生成する二値化工程と、C(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像の三つの多値画像に分解し、三つの多値画像うち、任意の一つを多値画像M1(i,j)とし、残りの二つの多値画像のうち、いずれか一方を多値画像M2(i,j)とし、他方を多値画像M3(i,j)とするカラー分解工程と、M3(i,j)を疑似階調の二値画像M3b(i,j)に変換する疑似階調化工程と、Hb(i,j)をM3b(i,j)で変調して二値画像Lb(i,j)を生成するデータ変調工程と、Lb(i,j)のコントラストを小さくすると共に、明度を大きくすることによって、ブラック画像としての二値画像Kb(i,j)を生成する明度変換工程と、M1(i,j)、M2(i,j)、M3b(i,j)及びKb(i,j)から成るカラー画像において、可視光領域でKb(i,j)のパターンが視認されないように、M1(i,j)の明度を補正して多値画像M1’(i,j)を生成し、M2(i,j)の明度を補正して多値画像M2’(i,j)を生成し、M3b(i,j)の明度を補正して多値画像M3b’(i,j)を生成し、M1’(i,j)、M2’(i,j)、M3b’(i,j)及びKb(i,j)から成るカラー画像C’(i,j)を生成する明度補正工程とを少なくとも有し、C’(i,j)のうち、Kb(i,j)については、赤外線を吸収する色材で、M1’(i,j)、M2’(i,j)及びM3b’(i,j)については、赤外線を透過する色材で、基材に印刷することを特徴とする真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法である。
【0011】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法は、秘匿情報の二値配列g(u,v)に対し、所定の配列並べ換え処理を行って二値配列g’(u,v)を生成する配列並べ換え工程とを更に有し、g’(u,v)と実数配列f(u,v)とを合成して実数配列e(u,v)を生成し、e(u,v)を逆ハートレー変換して多値画像H(i,j)を生成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法は、多値画像F(i,j)が、各画素とその近傍画素との明度差が大きい砂目状のパターンを有する多値画像であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法は、秘匿情報の二値配列g(u,v)が、左右対称、かつ、上下対称であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法は、配列並べ換え工程が、秘匿情報の二値配列g(u,v)を垂直方向に二等分すると共に水平方向に二等分した四つの部分配列のうち、右上の部分配列を左下の部分配列の位置に移動し、左下の部分配列を右上の部分配列の位置に移動し、左上の部分配列を右下の部分配列の位置に移動し、右下の部分配列を左上の部分配列の位置に移動して、四つの部分配列の並べ換えを行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法は、データ合成工程が、αを実数(α≧0)として、f(u,v)≧0の場合は、e(u,v)=g(u,v)×(f(u,v)+α)と定義してe(u,v)の値を算出し、f(u,v)<0の場合は、e(u,v)=g(u,v)×(f(u,v)−α)と定義してe(u,v)の値を算出して、実数配列e(u,v)を生成することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法は、データ合成工程が、αを実数(α≧0)として、f(u,v)≧0の場合は、e(u,v)=g’(u,v)×(f(u,v)+α)と定義してe(u,v)の値を算出し、f(u,v)<0の場合は、e(u,v)=g’(u,v)×(f(u,v)−α)と定義してe(u,v)の値を算出して、実数配列e(u,v)を生成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法は、データ変調工程が、二値画像Hb(i,j)と疑似階調の二値画像M3b(i,j)の差の絶対値を反転して二値画像Lb(i,j)を生成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、印刷物の作製方法により作製された真偽判別対象画像を有する印刷物であって、基材上のカラー画像C’(i,j)を赤外光領域で撮像した多値画像をKm(i,j)とし、C’(i,j)を可視光領域で撮像したカラー画像Cm(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像の三つの多値画像に分解し、シアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像のうちの任意の一つ、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)として、Mm(i,j)とKm(i,j)とを基にして生成した判別用画像から秘匿された二値配列のパターンが抽出可能であることを特徴とする真偽判別対象画像を有する印刷物である。
【0019】
また、本発明は、真偽判別対象画像を有する印刷物において、秘匿された二値配列のパターンとあらかじめ定められた基準画像とを比較及び照合して真偽判別を行う真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法であって、印刷物から可視光領域のカラー画像Cm(i,j)及び赤外光領域の多値画像Km(i,j)を取得する画像取得工程と、Cm(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像の三つの多値画像に分解し、シアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像のうちの任意の一つ、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)とするカラー分解工程と、Mm(i,j)のコントラストを大きくして多値画像Mmc(i,j)を生成すると共に、Km(i,j)のコントラストを大きくして多値画像Kmc(i,j)を生成するコントラスト変換工程と、Kmc(i,j)をMmc(i,j)で復調して多値画像Hm(i,j)を生成するデータ復調工程と、Hm(i,j)をハートレー変換して実数配列hm(u,v)を生成するハートレー変換工程と、hm(u,v)における各配列要素の実数の絶対値の小数を切り捨て、切り上げ又は四捨五入して整数配列n(u,v)を生成する数値変換工程と、n(u,v)に所定の階調変換を行って判別用画像を生成する判別用画像生成工程と、判別用画像と基準画像とを比較及び照合して真偽判別を行う真偽判別工程とを少なくとも有することを特徴とする真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法である。
【0020】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法は、実数配列hm(u,v)に対し、所定の配列並べ換え処理を行って実数配列hm’(u,v)を生成する配列並べ換え工程とを更に有し、hm’(u,v)における各配列要素の実数の絶対値の小数を切り捨て、切り上げ又は四捨五入して前記整数配列n(u,v)を生成することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法は、配列並べ換え工程が、実数配列hm(u,v)を垂直方向に二等分すると共に水平方向に二等分した四つの部分配列のうち、右上の部分配列を左下の部分配列の位置に移動し、左下の部分配列を右上の部分配列の位置に移動し、左上の部分配列を右下の部分配列の位置に移動し、右下の部分配列を左上の部分配列の位置に移動して、四つの部分配列の並べ換えを行い、実数配列hm’(u,v)を生成することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法は、データ復調工程が、Kmc(i,j)とMmc(i,j)の差の絶対値を反転した値が多値画像Hm(i,j)となるように計算を行って、Hm(i,j)を生成することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法は、判別用画像と基準画像とを表示する表示工程を更に有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法は、真偽判別工程において、判別用画像と基準画像とを比較及び照合した真偽判別結果を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、真偽判別対象画像を有する印刷物において、基材上のカラー画像C’(i,j)を赤外光領域で撮像した多値画像をKm(i,j)とし、C’(i,j)を可視光領域で撮像したカラー画像Cm(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像の三つの多値画像に分解し、シアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像のうちの任意の一つ、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)として、Mm(i,j)とKm(i,j)とを基にして生成した判別用画像から秘匿された二値配列のパターンを抽出する。この際、従来の方法に比べ照明ムラ等の影響を受けにくくなり、印刷物の真偽判別を正確に行うことが可能である。
【0026】
また、本発明では、潜像情報が可視画像にも赤外画像にも現れないため、従来の方法に比べ潜像情報の漏洩を防ぐ効果が高い。
【0027】
また、本発明では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色の内、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)に関しては赤外線を透過する色材を用い、ブラック(K)に関しては、赤外線を吸収する色材を用いている。したがって、真偽判別対象画像を有する印刷物を複写した複製品からは秘匿情報が検出されないため、複写に対する耐性に優れている。
【0028】
また、本発明では、真偽判別対象画像を有する印刷物から読み取ったカラー画像Cm(i,j)及び多値画像Km(i,j)に所定の処理を施して判別用画像を生成し、この判別用画像と基準画像とをディスプレイ等に表示するため、目視による印刷物の真偽判別を容易に行うことが可能である。
【0029】
また、本発明では、真偽判別対象画像を有する印刷物から読み取ったカラー画像Cm(i,j)及び多値画像Km(i,j)に所定の処理を施して判別用画像を生成し、この判別用画像と基準画像とを機械処理によって比較、照合し、印刷物の真偽判別を行うことが可能である。
【0030】
また、本発明により作製された真偽判別対象画像を有する印刷物は、プリンタ、印刷機等、様々な出力装置を用いて、紙、プラスチック、金属、布等、様々な基材に簡便に印刷した印刷物であるので、本発明は、証券、紙幣、印紙、証紙、切手、旅券、身分証明書、通行証、会員証又はクレジットカードを含む印刷物の識別や真偽判別を要する多方面の分野に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る印刷物作製方法1の手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る印刷物作製方法2の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る真偽判別方法1の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る真偽判別方法2の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1又は図2の画像の入力工程で入力した、多値画像F(i,j)、二値配列g(u,v)及びカラー画像C(i,j)の一例を示す図である。
【図6】図1又は図2のカラー分解工程で、シアン画像を多値画像M1(i,j)、マゼンタ画像を多値画像M2(i,j)及びイエロー画像を多値画像M3(i,j)とした一例を示す図である。
【図7】図5(b)の二値配列g(u,v)に対して所定の配列並べ換えを行って生成した、二値配列g’(u,v)の一例を示す図である。
【図8】図5(a)の多値画像F(i,j)をハートレー変換して生成した、実数配列f(u,v)の一例を示す図である。
【図9】図8の実数配列f(u,v)と図7の二値配列g’(u,v)とをデータ合成して生成した、実数配列e(u,v)の一例を示す図である。
【図10】図9の実数配列e(u,v)を逆ハートレー変換して生成した、多値画像H(i,j)の一例を示す図である。
【図11】(a)は、図10の多値画像H(i,j)を二値化して生成した、二値画像Hb(i,j)の一例、(b)は、図6(c)の多値画像M3(i,j)を疑似階調化して生成した、二値画像M3b(i,j)の一例、さらに(c)は、図11(a)の二値画像Hb(i,j)を図11(b)の二値画像M3b(i,j)でデータ変調して生成した、二値画像Lb(i,j)の一例を示す図である。
【図12】(a)は、図11(a)の二値画像Hb(i,j)をハートレー変換した後、所定の配列並べ換えを行って生成した、実数配列hb’(u,v)の一例を示し、 (b)は、図11(b)の二値画像M3b(i,j)をハートレー変換した後、所定の配列並べ換えを行って生成した、実数配列m3b’(u,v)の一例を示し、さらに(c)は、図11(c)の二値画像Lb(i,j)をハートレー変換した後、所定の配列並べ換えを行って生成した、実数配列1b’(u,v)の一例を示す図である。
【図13】図11(c)の二値画像Lb(i,j)の白画素の明度を255のまま不変とし、黒画素の明度を0から223に変化させて生成した、二値画像Kb(i,j)の一例を示す図である。
【図14】図6(a)の多値画像M1(i,j)、図6(b)の多値画像M2(i,j)、図11(b)の二値画像M3b(i,j)及び図13の二値画像Kb(i,j)から成る、カラー画像の一例を示す図である。
【図15】(a)は、図6(a)の多値画像M1(i,j)の明度を補正して生成した、多値画像M1’(i,j)の一例を示し、(b)は、図6(b)の多値画像M2(i,j)の明度を補正して生成した、多値画像M2’(i,j)の一例を示し、さらに(c)は、図11(b)の二値画像M3b(i,j)の明度を補正して生成した、多値画像M3b’(i,j)の一例を示す図である。
【図16】図15(a)の多値画像M1’(i,j)、図15(b)の多値画像M2’(i,j)、図15(c)の多値画像M3b’(i,j)及び図13の二値画像Kb(i,j)から成る、カラー画像C’(i,j)の一例を示す図である。
【図17】イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、印刷物23100に含まれる真偽判別対象画像を可視光領域で読み取った、カラー画像Cm(i,j)の一例及び赤外光領域で読み取った、多値画像Km(i,j)の一例を示す図である。
【図18】図17(a)のカラー画像Cm(i,j)をカラー分解し、イエロー画像を多値画像Mm(i,j)とした一例を示す図である。
【図19】(a)は、図18の多値画像Mm(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Mm(i,j)のコントラストを強調して生成した、多値画像Mmc(i,j)の一例を示し、(b)は、図17(b)の多値画像Km(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Km(i,j)のコントラストを強調して生成した、多値画像Kmc(i,j)の一例を示す図である。
【図20】図19(b)の多値画像Kmc(i,j)を図19(a)の多値画像Mmc(i,j)でデータ復調して生成した、多値画像Hm(i,j)の一例を示す図である。
【図21】図20の多値画像Hm(i,j)をハートレー変換して生成した、実数配列hm(u,v)の一例を示す図である。
【図22】図21の実数配列hm(u,v)に対して所定の配列並べ換えを行って生成した、実数配列hm’(u,v)の一例を示す図である。
【図23】図22の実数配列hm’(u,v)における各配列要素の実数の絶対値の小数を、切り捨て、切り上げ又は四捨五入して生成した、整数配列n(u,v)の一例を示す図である。
【図24】図23の整数配列n(u,v)にルックアップテーブル変換を行って、画像のコントラストを変化させた、判別用画像の一例を示す図である。
【図25】図24の判別用画像との比較、照合を行う、基準画像の一例を示す図である。
【図26】イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、真正な印刷物を複写した複製品の真偽判別対象画像を可視光領域で読み取ったカラー画像Cm(i,j)及び赤外光領域で読み取った多値画像Km(i,j)の一例を示す図である。
【図27】図26(a)のカラー画像Cm(i,j)をカラー分解し、イエロー画像を多値画像Mm(i,j)とした一例を示す図である。
【図28】(a)は、図27の多値画像Mm(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Mm(i,j)のコントラストを強調して生成した、多値画像Mmc(i,j)の一例を示し、(b)は、図26(b)の多値画像Km(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Km(i,j)のコントラストを強調して生成した、多値画像Kmc(i,j)の一例を示す図である。
【図29】図28(b)の多値画像Kmc(i,j)を図28(a)の多値画像Mmc(i,j)でデータ復調して生成した、多値画像Hm(i,j)の一例を示す図である。
【図30】図29の多値画像Hm(i,j)をハートレー変換した後、所定の配列並べ換えを行って生成した、実数配列hm’(u,v)の一例を示す図である。
【図31】イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、変造品の真偽判別対象画像を可視光領域で読み取ったカラー画像Cm(i,j)及び赤外光領域で読み取った多値画像Km(i,j)の一例を示す図である。
【図32】図31(a)のカラー画像Cm(i,j)をカラー分解し、イエロー画像を多値画像Mm(i,j)とした一例を示す図である。
【図33】(a)は、図32の多値画像Mm(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Mm(i,j)のコントラストを強調して生成した、多値画像Mmc(i,j)の一例を示し、(b)は、図31(b)の多値画像Km(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Km(i,j)のコントラストを強調して生成した、多値画像Kmc(i,j)の一例を示す図である。
【図34】図33(b)の多値画像Kmc(i,j)を図33(a)の多値画像Mmc(i,j)でデータ復調して生成した、多値画像Hm(i,j)の一例を示す図である。
【図35】図34の多値画像Hm(i,j)をハートレー変換した後、所定の配列並べ換えを行って生成した、実数配列hm’(u,v)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る印刷物作製方法、印刷物及び真偽判別方法の実施形態を図面を参照して説明する。また、本発明に係る印刷物作製方法、印刷物及び真偽判別方法の実施の態様は、以下に示す実施の形態に限定されるものではなく、本発明に係る特許請求の範囲に記載した技術事項の範囲内であれば、各種の態様を採用することができる。
【0033】
(印刷物作製方法1)
本発明に係る印刷物作製方法1について、図1に示すフローチャートにより説明する。
【0034】
図1のステップST11110では、多値画像F(i,j)12110、二値配列g(u,v)12120、カラー画像C(i,j)12130の入力を行う。ここで、多値画像F(i,j)12110は、各画素とその近傍画素との明度差が大きい砂目状のパターンを有する多値画像である。また、二値配列g(u,v)12120は、左右対称、かつ、上下対称である。砂目状のパターンは、一例として乱数を基に作成される。なお、本発明における(i,j)は空間領域の座標を示し、(u,v)は、周波数領域における座標を示すものである。
【0035】
図1のステップST11120では、カラー画像C(i,j)12130を、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像の三つの多値画像にカラー分解し、この三つの多値画像うち、任意の一つを多値画像M1(i,j)12200とし、残りの二つの多値画像のうち、いずれか一方を多値画像M2(i,j)12210とし、他方を多値画像M3(i,j)12220とする。
【0036】
図1のステップST11140では、多値画像F(i,j)12110をハートレー変換して、実数配列f(u,v)12140を生成する。ここで、ハートレー変換の方法に関しては、数1で定義される。
【0037】
【数2】

【0038】
図1のステップST11150では、実数配列f(u,v)12140と二値配列g(u,v)12120とをデータ合成して、実数配列e(u,v)12160を生成する。ここで、データの合成方法に関しては、数2に示すように、αを実数(α≧0)として、f(u,v)≧0の場合は、e(u,v)=g(u,v)×(f(u,v)+α)と定義してe(u,v)の値を算出し、f(u,v)<0の場合は、e(u,v)=g(u,v)×(f(u,v)−α)と定義してe(u,v)の値を算出して、実数配列e(u,v)12160を生成する。上記の式によって、f(u,v)≧0の場合とf(u,v)<0の場合とで、算出手段を変えることによって、シャープネスやノイズが改善された、実数配列e(u,v)12160が得られる。
【0039】
【数3】

【0040】
図1のステップST11160では、実数配列e(u,v)12160を逆ハートレー変換して多値画像H(i,j)12180を生成する。ここで、逆ハートレー変換の方法に関しては、数3で定義される。
【0041】
【数4】

【0042】
図1のステップST11170では、多値画像H(i,j)12180を二値化して、二値画像Hb(i,j)12190を生成する。ここで、二値化の方法に関しては、誤差拡散法などの二値化手法を用いる。
【0043】
図1のステップST11180では、多値画像M3(i,j)12220を疑似階調化して、二値画像M3b(i,j)12230を生成する。ここで、疑似階調化の方法に関しては、誤差拡散法などの二値化手法を用いる。
【0044】
図1のステップST11190では、二値画像Hb(i,j)12190を疑似階調の二値画像M3b(i,j)12230でデータ変調して、二値画像Lb(i,j)12240を生成する。ここで、データの変調方法に関しては、数4に示すように、二値画像Hb(i,j)12190と疑似階調の二値画像M3b(i,j)12230の差の絶対値を反転して、二値画像Lb(i,j)12240を生成する。
【0045】
【数5】

【0046】
図1のステップST11200では、二値画像Lb(i,j)12240のコントラストを小さくすると共に、明度を大きくする明度変換によって、ブラック画像としての二値画像Kb(i,j)12250を生成する。
【0047】
図1のステップST11210では、多値画像M1(i,j)12200、多値画像M2(i,j)12210、二値画像M3b(i,j)12230及び二値画像Kb(i,j)12250から成るカラー画像において、可視光領域で二値画像Kb(i,j)12250のパターンが視認されないように、多値画像M1(i,j)12200の明度を補正して多値画像M1’(i,j)を生成し、多値画像M2(i,j)12210の明度を補正して多値画像M2’(i,j)を生成し、二値画像M3b(i,j)12230の明度を補正して多値画像M3b’(i,j)を生成し、多値画像M1’(i,j)、多値画像M2’(i,j)、多値画像M3b’(i,j)及び二値画像Kb(i,j)から成るカラー画像C’(i,j)12260を生成する。
【0048】
図1のステップST11220では、カラー画像C’(i,j)12260をデータ記憶装置に書き込んで保存する。
【0049】
図1のステップST11230では、プリンタや印刷機等の画像出力機器を用いて、カラー画像C’(i,j)12260のうち、二値画像Kb(i,j)については、赤外線を吸収する色材で、多値画像M1’(i,j)、多値画像M2’(i,j)及び多値画像M3b’(i,j)については、赤外線を透過する色材で、紙、プラスチック、金属又は布を含む所定の基材の表面の所定の位置に、所定の解像度で印刷することによって、証券、紙幣、印紙、証紙、切手、旅券、身分証明書、通行証、会員証又はクレジットカードを含む真偽判別対象画像を有する印刷物13100を作製する。
【0050】
(印刷物作製方法2)
本発明に係る印刷物作製方法2について、図2に示すフローチャートにより説明する。
【0051】
図2のステップST11110では、多値画像F(i,j)12110、二値配列g(u,v)12120、カラー画像C(i,j)12130の入力を行う。ここで、多値画像F(i,j)12110は、各画素とその近傍画素との明度差が大きい砂目状のパターンを有する多値画像である。また、二値配列g(u,v)12120は、左右対称、かつ、上下対称である。
【0052】
図5(a)に多値画像F(i,j)の一例、図5(b)に二値配列g(u,v)の一例、図5(c)にカラー画像C(i,j)の一例を示す。ここで、図5(b)の二値配列g(u,v)の配列要素値については、1及び50の二値を採用した。
【0053】
図2のステップST11120では、カラー画像C(i,j)12130を、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像の三つの多値画像にカラー分解し、この三つの多値画像うち、任意の一つを多値画像M1(i,j)12200とし、残りの二つの多値画像のうち、いずれか一方を多値画像M2(i,j)12210とし、他方を多値画像M3(i,j)12220とする。
【0054】
図6(a)では、一例としてシアン画像を多値画像M1(i,j)とし、図6(b)では、一例としてマゼンタ画像を多値画像M2(i,j)とし、図6(c)では、一例としてイエロー画像を多値画像M3(i,j)とした。
【0055】
図2のステップST11130では、二値配列g(u,v)12120を垂直方向に二等分すると共に、水平方向に二等分した四つの部分配列のうち、右上の部分配列を左下の部分配列の位置に移動し、左下の部分配列を右上の部分配列の位置に移動し、左上の部分配列を右下の部分配列の位置に移動し、右下の部分配列を左上の部分配列の位置に移動して、四つの部分配列の並べ換えを行い、二値配列g’(u,v)12150を生成する。図2のステップST11130によって、実数配列f(u,v)12140において成分の多い低周波から中周波にかけての領域と、二値配列g’(u,v)12150において画素値が1の領域とを合成して実数配列e(u,v)を生成することによって、シャープネスやノイズが改善された、実数配列e(u,v)12160が得られる。
【0056】
図7に、図5(b)の二値配列g(u,v)に対して、上述の配列並べ換えを行った二値配列g’(u,v)を示す。
【0057】
図2のステップST11140では、多値画像F(i,j)12110をハートレー変換して、実数配列f(u,v)12140を生成する。ここで、ハートレー変換の方法に関しては、数1で定義される。
【0058】
【数6】

【0059】
図8に、図5(a)の多値画像F(i,j)をハートレー変換して生成した実数配列f(u,v)を示す。ここで、図8は、f(u,v)≧0の場合の実数配列の分布を示しており、実数配列f(u,v)の低周波成分は周辺部に分布し、高周波成分は中心部に分布している。
【0060】
図2のステップST11150では、実数配列f(u,v)12140と二値配列g’(u,v)12150とをデータ合成して、実数配列e(u,v)12160を生成する。ここで、データの合成方法に関しては、αを実数(α≧0)として、f(u,v)≧0の場合は、e(u,v)=g’(u,v)×(f(u,v)+α)と定義してe(u,v)の値を算出し、f(u,v)<0の場合は、e(u,v)=g’(u,v)×(f(u,v)−α)と定義してe(u,v)の値を算出して、実数配列e(u,v)12160を生成する。上記の式によって、f(u,v)≧0の場合とf(u,v)<0の場合とで、算出手段を変えることによって、シャープネスやノイズが改善された、実数配列e(u,v)12160が得られる。
【0061】
図9に、図8の実数配列f(u,v)と図7の二値配列g’(u,v)とを、上述の方法でデータ合成して生成した実数配列e(u,v)を示す。図9は、f(u,v)≧0の場合に、e(u,v)=g’(u,v)×(f(u,v)+α)と定義して算出した実数配列e(u,v)の分布を示している。また、αの値については、α=1024とした。
【0062】
図2のステップST11160では、実数配列e(u,v)12160を逆ハートレー変換して多値画像H(i,j)12180を生成する。ここで、逆ハートレー変換の方法に関しては、数3で定義される。
【0063】
【数7】

【0064】
図10に、図9の実数配列e(u,v)を逆ハートレー変換して生成した多値画像H(i,j)を示す。図10の多値画像H(i,j)は、図5(a)の多値画像F(i,j)のように、各画素とその近傍画素との明度差が大きい砂目状のパターンを有する多値画像になる。
【0065】
図2のステップST11170では、多値画像H(i,j)12180を二値化して、二値画像Hb(i,j)12190を生成する。ここで、二値化の方法に関しては、誤差拡散法等の二値化手法を用いる。
【0066】
図11(a)に、図10の多値画像H(i,j)を二値化して生成した二値画像Hb(i,j)を示す。ここで、二値化の方法に関しては、誤差拡散法を用いた。
【0067】
図2のステップST11180では、多値画像M3(i,j)12220を疑似階調化して、二値画像M3b(i,j)12230を生成する。ここで、疑似階調化の方法に関しては、誤差拡散法などの二値化手法を用いる。
【0068】
図11(b)に、図6(c)の多値画像M3(i,j)を疑似階調化して生成した二値画像M3b(i,j)を示す。ここで、疑似階調化の方法に関しては、誤差拡散法を用いた。
【0069】
図2のステップST11190では、二値画像Hb(i,j)12190を疑似階調の二値画像M3b(i,j)12230でデータ変調して、二値画像Lb(i,j)12240を生成する。ここで、データの変調方法に関しては、数4に示すように、二値画像Hb(i,j)12190と疑似階調の二値画像M3b(i,j)12230の差の絶対値を反転して、二値画像Lb(i,j)12240を生成する。
【0070】
【数8】

【0071】
図11(c)に、図11(a)の二値画像Hb(i,j)を、図11(b)の二値画像M3b(i,j)でデータ変調して生成した二値画像Lb(i,j)を示す。
【0072】
図12(a)、図12(b)及び図12(c)は、それぞれ、図11(a)、図11(b)及び図11(c)の画像をハートレー変換した後、前述の配列並べ換え処理を行って生成した実数配列である。ここで、図12(a)の実数配列hb’(u,v)には、秘匿情報である破線状の円形パターンが発現する。一方、図12(b)の実数配列m3b’(u,v)及び図12(c)の実数配列lb’(u,v)には、秘匿情報のパターンは発現しない。
【0073】
これは、図12(b)の実数配列m3b’(u,v)に関しては、図6(c)の多値画像M3(i,j)(イエロー画像)を誤差拡散法を用いて疑似階調化した二値画像M3b(i,j)に対してハートレー変換を行った後、前述の配列並べ換えを行った実数配列であるため、秘匿情報である破線上の円形パターンは、もともと存在しないことによる。また、図12(c)の実数配列lb’(u,v)に関しては、数4に示すように、二値画像Hb(i,j)を疑似階調の二値画像M3b(i,j)でデータ変調して、二値画像Lb(i,j)を生成したため、秘匿情報である破線状の円形パターンは発現しない。
【0074】
【数9】

【0075】
ここで、二値画像Lb(i,j)と疑似階調の二値画像M3b(i,j)の差の絶対値を反転して、二値画像Hb(i,j)を生成することが可能であるため、二値画像Hb(i,j)の代わりに、二値画像Lb(i,j)と疑似階調の二値画像M3b(i,j)の二つの画像を用いることにより、秘匿情報である破線上の円形パターンを抽出することが可能である。つまり、疑似階調の二値画像M3b(i,j)を鍵として用いることにより、データ変調によって二値画像Lb(i,j)に隠蔽された秘匿情報のパターンを抽出できることを意味する。
【0076】
例えば、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像、ブラック画像の四色の画像から成るカラー画像において、シアン画像には図6(a)の多値画像M1(i,j)を割り当て、マゼンタ画像には図6(b)の多値画像M2(i,j)を割り当て、イエロー画像には図11(b)の疑似階調の二値画像M3b(i,j)を割り当て、ブラック画像には図11(c)の二値画像Lb(i,j)の明度を後述の方法で変換した二値画像Kb(i,j)を割り当て、後述の明度補正を行うことにより、カラー画像に秘匿情報のパターンを隠蔽することが可能になる。
【0077】
図2のステップST11200では、二値画像Lb(i,j)12240のコントラストを小さくすると共に明度を大きくする明度変換によって、ブラック画像としての二値画像Kb(i,j)12250を生成する。
【0078】
図13に、図11(c)の二値画像Lb(i,j)の白画素の明度を255のまま不変とし、黒画素の明度を0から223に変化させて生成した二値画像Kb(i,j)を示す。この明度変換によって、二値画像Lb(i,j)のコントラストを小さくすると共に明度を大きくすることが可能となる。
【0079】
図2のステップST11210では、多値画像M1(i,j)12200、多値画像M2(i,j)12210、二値画像M3b(i,j)12230及び二値画像Kb(i,j)12250から成るカラー画像において、可視光領域で二値画像Kb(i,j)12250のパターンが視認されないように、多値画像M1(i,j)12200の明度を補正して多値画像M1’(i,j)を生成し、多値画像M2(i,j)12210の明度を補正して多値画像M2’(i,j)を生成し、二値画像M3b(i,j)12230の明度を補正して多値画像M3b’(i,j)を生成し、多値画像M1’(i,j)、多値画像M2’(i,j)、多値画像M3b’(i,j)及び二値画像Kb(i,j)から成るカラー画像C’(i,j)12260を生成する。
【0080】
図14に、図6(a)の多値画像M1(i,j)、図6(b)の多値画像M2(i,j)、図11(b)の二値画像M3b(i,j)及び図13の二値画像Kb(i,j)から成るカラー画像を示す。該カラー画像には、ブラック画像としての二値画像Kb(i,j)の砂目状パターンが発現しており、該カラー画像のノイズとなっている。したがって、このノイズを除去するために、シアン画像としての多値画像M1(i,j)、マゼンタ画像としての多値画像M2(i,j)及びイエロー画像としての二値画像M3b(i,j)の各明度を補正する必要がある。
【0081】
例えば、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像及びブラック画像を8ビットの画像とした場合、ブラック画像としての二値画像Kb(i,j)の明度が223及び255のとき、白画素の明度は255であるため、白画素は前述のノイズの原因にならない。一方、黒画素の明度は223であるため、黒画素は前述のノイズの原因となる。そこで、二値画像Kb(i,j)の明度が223となる黒画素の位置において、多値画像M1(i,j)、多値画像M2(i,j)及び二値画像M3b(i,j)の各明度を補正する。
【0082】
ここで、二値画像Kb(i,j)の明度が223及び255の二値のとき、明度補正前のM1(i,j)、M2(i,j)及びM3b(i,j)の各明度範囲に関しては、例えば、0から222までの223階調に設定しておく。これは、二値画像Kb(i,j)の黒画素の明度が223であり、白画素より明度が32小さいため、前述のノイズを除去するためには、二値画像Kb(i,j)の黒画素の位置において、M1(i,j)、M2(i,j)及びM3b(i,j)の各明度を約32程度大きくすることが必要になる場合があるからである。この場合、明度補正前のM1(i,j)、M2(i,j)及びM3b(i,j)の各明度範囲が0から222までの223階調であれば、明度補正後の多値画像M1’(i,j)、多値画像M2’(i,j)及び多値画像M3b’(i,j)の各明度範囲は、0から255までの256階調の帯域をオーバーフローすることはない。
【0083】
ただし、上記のように、明度補正前のM1(i,j)、M2(i,j)及びM3b(i,j)の各明度範囲を、0から222までの223階調に設定するというのは、一例であって、必ずしも0から222までの223階調に設定しなければならないわけではない。M1(i,j)、M2(i,j)及びM3b(i,j)の各明度の補正量が32よりも小さい場合は、明度補正前のM1(i,j)、M2(i,j)及びM3b(i,j)の各明度範囲を、0から222までの223階調より大きく設定することも可能である。
【0084】
図15(a)に、図6(a)の多値画像M1(i,j)の明度を補正して生成した、多値画像M1’(i,j)を示す。明度の補正方法に関しては、二値画像Kb(i,j)の黒画素の位置において、多値画像M1(i,j)の明度に28を加算する。これは、図6(a)では、一例としてシアン画像を多値画像M1(i,j)にしたため、本実施例でカラー分解に用いたグレー曲線において、グレーレベルが32のときのシアンの値が28になることから、二値画像Kb(i,j)の黒画素の明度が白画素より32小さいことによる前述のノイズを除去するためには、多値画像M1(i,j)の明度に28を加算する必要があるからである。
【0085】
図15(b)に、図6(b)の多値画像M2(i,j)の明度を補正して生成した、多値画像M2’(i,j)を示す。明度の補正方法に関しては、二値画像Kb(i,j)の黒画素の位置において、多値画像M2(i,j)の明度に19を加算する。これは、図6(b)では、一例としてマゼンタ画像を多値画像M2(i,j)にしたため、本実施例でカラー分解に用いたグレー曲線において、グレーレベルが32のときのマゼンタの値が19になることから、二値画像Kb(i,j)の黒画素の明度が白画素より32小さいことによる前述のノイズを除去するためには、多値画像M2(i,j)の明度に19を加算する必要があるからである。
【0086】
図15(c)に、図11(b)の二値画像M3b(i,j)の明度を補正して生成した、多値画像M3b’(i,j)を示す。明度の補正方法に関しては、二値画像Kb(i,j)の黒画素の位置において、二値画像M3b(i,j)の明度に19を加算する。これは、図6(c)では、一例としてイエロー画像を多値画像M3(i,j)にしたため、本実施例でカラー分解に用いたグレー曲線において、グレーレベルが32のときのイエローの値が19になることから、二値画像Kb(i,j)の黒画素の明度が白画素より32小さいことによる前述のノイズを除去するためには、二値画像M3b(i,j)の明度に19を加算する必要があるからである。
【0087】
図16に、図15(a)の多値画像M1’(i,j)、図15(b)の多値画像M2’(i,j)、図15(c)の多値画像M3b’(i,j)及び図13の二値画像Kb(i,j)から成るカラー画像C’(i,j)を示す。図14に示した、多値画像M1(i,j)、多値画像M2(i,j)、二値画像M3b(i,j)及び二値画像Kb(i,j)から成るカラー画像では、ブラック画像としての二値画像Kb(i,j)の砂目状パターンがカラー画像のノイズとなっていたが、図2のステップST11210の明度補正を行うことによって、図16の明度補正後のカラー画像C’(i,j)では、該ノイズが除去されたカラー画像になっていることが分かる。
【0088】
図2のステップST11220では、カラー画像C’(i,j)12260をデータ記憶装置に書き込んで保存する。
【0089】
図2のステップST11230では、プリンタや印刷機などの画像出力機器を用いて、カラー画像C’(i,j)12260のうち、二値画像Kb(i,j)については赤外線を吸収する色材で、多値画像M1’(i,j)、多値画像M2’(i,j)及び多値画像M3b’(i,j)については赤外線を透過する色材で、紙、プラスチック、金属又は布を含む所定の基材の表面の所定の位置に、所定の解像度で印刷することによって、証券、紙幣、印紙、証紙、切手、旅券、身分証明書、通行証、会員証又はクレジットカードを含む真偽判別対象画像を有する印刷物13100を作製する。
【0090】
ここで、本実施例では、図16のカラー画像C’(i,j)を印刷する際、一例として、画素数を256画素×256画素とし、解像度を150dpiとし、印刷サイズを4.3cm×4.3cmとし、ファイル形式をポストスクリプトとし、LIP(FUJI XEROX製 Print Server LP)を介して、レーザプリンタ(FUJI XEROX製 DocuColor 4055P)で印刷した。
【0091】
(印刷物)
本発明に係る真偽判別対象画像を有する印刷物13100は、基材上のカラー画像C’(i,j)12260を赤外光領域で撮像した多値画像をKm(i,j)22120とし、カラー画像C’(i,j)12260を可視光領域で撮像したカラー画像Cm(i,j)22110をシアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像の三つの多値画像にカラー分解し、シアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像のうちの任意の一つ、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)22130として、多値画像Mm(i,j)22130と多値画像Km(i,j)22120とを基にして生成した判別用画像22200から、秘匿された二値配列のパターンが抽出可能であることを特徴とする印刷物である。ただし、本発明の最良の実施の形態としては、イエローの多値画像M3(i,j)から二値画像Kb(i,j)を生成することによって、鮮明な印刷物13100が得られる。シアン又はマゼンタの多値画像M3(i,j)を用いた場合は、全体的に濃度が濃い印刷物となるが、イエローの多値画像M3(i,j)を用いた場合は、全体的に濃度が濃い印刷物にならず、鮮明な印刷物13100が得られる。
【0092】
本発明に係る真偽判別対象画像を有する印刷物は、例えば、図16のカラー画像C’(i,j)を所定の印刷方式で、所定の基材上に印刷することによって作製する。
【0093】
図17(a)に、図16のカラー画像C’(i,j)を印刷した印刷物の真偽判別対象画像を可視光領域で撮像したカラー画像Cm(i,j)を示す。
【0094】
図17(b)に、図16のカラー画像C’(i,j)を印刷した印刷物の真偽判別対象画像を赤外光領域で撮像した多値画像Km(i,j)を示す。
【0095】
図18は、図17(a)のカラー画像Cm(i,j)をカラー分解し、一例として、イエロー画像を多値画像Mm(i,j)としたものである。
【0096】
図24は、図18の多値画像Mm(i,j)と図17(b)の多値画像Km(i,j)とを基にして生成した判別用画像である。
【0097】
真偽判別対象画像を有する印刷物の基材は、紙、プラスチック等、特に限定されるものではない。
【0098】
真偽判別対象画像を有する印刷物の印刷方式は、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、オフセット印刷方式等で印刷可能である。
【0099】
(真偽判別方法1)
本発明に係る真偽判別方法1について、図3に示すフローチャートにより説明する。
【0100】
図3のステップST21110では、画像入力機器を用いて、印刷物23100に含まれる真偽判別対象画像を可視光領域で読み取ってカラー画像Cm(i,j)22110を取得すると共に、赤外光領域で読み取って多値画像Km(i,j)22120を取得する。
【0101】
図3のステップST21120では、カラー画像Cm(i,j)22110を、シアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像の三つの多値画像にカラー分解し、シアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像のうちの任意の一つ、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)22130とする。
【0102】
図3のステップST21130では、多値画像Mm(i,j)22130のコントラストを大きくして多値画像Mmc(i,j)22140を生成すると共に、多値画像Km(i,j)22120のコントラストを大きくして多値画像Kmc(i,j)22150を生成する。
【0103】
図3のステップST21140では、多値画像Kmc(i,j)22150を多値画像Mmc(i,j)22140でデータ復調して、多値画像Hm(i,j)22160を生成する。ここで、データの復調方法に関しては、数5に示すように、多値画像Kmc(i,j)22150と多値画像Mmc(i,j)22140の差の絶対値を反転して、多値画像Hm(i,j)22160を生成する。
【0104】
【数10】

【0105】
図3のステップST21150では、多値画像Hm(i,j)22160をハートレー変換して実数配列hm(u,v)22170を生成する。
【0106】
図3のステップST21170では、実数配列hm(u,v)22170における各配列要素の実数の絶対値の小数を切り捨て、切り上げ又は四捨五入して整数配列n(u,v)22190を生成する。
【0107】
図3のステップST21180では、整数配列n(u,v)22190に所定の階調変換を行って、判別用画像22200を生成する。
【0108】
図3のステップST21190では、判別用画像22200との比較及び照合を行うため、データ記憶装置から基準画像22210の読み出しを行う。
【0109】
図3のステップST21200では、人間が目視できるように、判別用画像22200及び基準画像22210の両方を画像表示し、両者を目視によって比較、照合して真偽判別を行う。
【0110】
図3のステップST21210では、印刷物23100が真正な印刷物かどうかを判別するために、判別用画像22200と基準画像22210とを比較、照合して真偽判別を行う。ここで、判別用画像22200と基準画像22210との類似度が、あらかじめ定めた類似度以上となるときに、印刷物23100を真正な印刷物として判別し、真偽判別結果23200を出力する。
【0111】
機械による真偽判別方法としては、例えば、正規化相関などのパターンマッチング手法を用いて、判別用画像22200と基準画像22210との類似度を数値化し、この類似度があらかじめ定めた類似度以上となるときに、印刷物23100を真正な印刷物として判別する。
【0112】
(真偽判別方法2)
本発明に係る真偽判別方法2について、図4に示すフローチャートにより説明する。
【0113】
図4のステップST21110では、画像入力機器を用いて、印刷物23100に含まれる真偽判別対象画像を可視光領域で読み取ってカラー画像Cm(i,j)22110を取得すると共に、赤外光領域で読み取って多値画像Km(i,j)22120を取得する。
【0114】
図17(a)に、一例として、イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、解像度を300dpiとして、画素数を512画素×512画素として、印刷物23100に含まれる真偽判別対象画像を可視光領域で読み取ったカラー画像Cmi,j)を示す。
【0115】
図17(b)に、一例として、イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、解像度を300dpiとして、画素数を512画素×512画素として、印刷物23100に含まれる真偽判別対象画像を赤外光領域で読み取った多値画像Km(i,j)を示す。
【0116】
図4のステップST21120では、カラー画像Cm(i,j)22110を、シアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像の三つの多値画像にカラー分解し、シアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像のうちの任意の一つ、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)22130とする。
【0117】
図18は、図17(a)のカラー画像Cm(i,j)をカラー分解し、一例として、イエロー画像を多値画像Mm(i,j)としたものである。
【0118】
図4のステップST21130では、多値画像Mm(i,j)22130のコントラストを大きくして多値画像Mmc(i,j)22140を生成すると共に、多値画像Km(i,j)22120のコントラストを大きくして多値画像Kmc(i,j)22150を生成する。
【0119】
図19(a)は、図18の多値画像Mm(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Mm(i,j)のコントラストを強調して生成した多値画像Mmc(i,j)である。
【0120】
図19(b)は、図17(b)の多値画像Km(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Km(i,j)のコントラストを強調して生成した多値画像Kmc(i,j)である。
【0121】
図4のステップST21140では、多値画像Kmc(i,j)22150を多値画像Mmc(i,j)22140でデータ復調して、多値画像Hm(i,j)22160を生成する。ここで、データの復調方法に関しては、数5に示すように、多値画像Kmc(i,j)22150と多値画像Mmc(i,j)22140の差の絶対値を反転して、多値画像Hm(i,j)22160を生成する。
【0122】
【数11】

【0123】
図20に、図19(b)の多値画像Kmc(i,j)を、図19(a)の多値画像Mmc(i,j)でデータ復調して生成した多値画像Hm(i,j)を示す。
【0124】
図4のステップST21150では、多値画像Hm(i,j)22160をハートレー変換して実数配列hm(u,v)22170を生成する。
【0125】
図21に、図20の多値画像Hm(i,j)をハートレー変換して生成した実数配列hm(u,v)を示す。ここで、図21は、hm(u,v)≧0の場合の実数配列の分布を示しており、実数配列hm(u,v)の低周波成分は周辺部に分布し、高周波成分は中心部に分布している。
【0126】
図4のステップST21160では、実数配列hm(u,v)22170を垂直方向に二等分すると共に水平方向に二等分した四つの部分配列のうち、右上の部分配列を左下の部分配列の位置に移動し、左下の部分配列を右上の部分配列の位置に移動し、左上の部分配列を右下の部分配列の位置に移動し、右下の部分配列を左上の部分配列の位置に移動して、四つの部分配列の並べ換えを行い、実数配列hm’(u,v)22180を生成する。
【0127】
図22に、図21の実数配列hm(u,v)に対して、上記の配列並べ換えを行った実数配列hm’(u,v)を示す。
【0128】
図4のステップST21170では、実数配列hm’(u,v)22180における各配列要素の実数の絶対値の小数を切り捨て、切り上げ又は四捨五入して、整数配列n(u,v)22190を生成する。
【0129】
図23に、図22の実数配列hm’(u,v)における各配列要素の実数の絶対値の小数を、切り捨て、切り上げ又は四捨五入して生成した整数配列n(u,v)を示す。
【0130】
図4のステップST21180では、整数配列n(u,v)22190に所定の階調変換を行って、判別用画像22200を生成する。
【0131】
図24に、階調変換の一例として、図23の整数配列n(u,v)にルックアップテーブル変換を行って、画像のコントラストを変化させた判別用画像を示す。
【0132】
図4のステップST21190では、判別用画像22200との比較及び照合を行うため、データ記憶装置から基準画像22210の読み出しを行う。
【0133】
図25に、図24の判別用画像との比較及び照合を行うため、データ記憶装置から読み出した基準画像の一例を示す。
【0134】
図4のステップST21200では、人間が目視できるように、判別用画像22200及び基準画像22210の両方を画像表示し、両者を目視によって比較及び照合して真偽判別を行う。
【0135】
図4のステップST21210では、印刷物23100が真正な印刷物かどうかを判別するために、判別用画像22200と基準画像22210とを比較及び照合して真偽判別を行う。ここで、判別用画像22200と基準画像22210との類似度が、あらかじめ定めた類似度以上となるときに、印刷物23100を真正な印刷物として判別し、真偽判別結果23200を出力する。
【0136】
機械による真偽判別方法としては、例えば、正規化相関等のパターンマッチング手法を用いて、判別用画像22200と基準画像22210との類似度を数値化し、この類似度があらかじめ定めた類似度以上となるときに、印刷物23100を真正な印刷物として判別する。
【0137】
図26(a)に、イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、解像度を300dpiとして、画素数を512画素×512画素として、真正な印刷物を複写した複製品の真偽判別対象画像を可視光領域で読み取ったカラー画像Cm(i,j)を示す。
【0138】
図26(b)に、イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、解像度を300dpiとして、画素数を512画素×512画素として、真正な印刷物を複写した複製品の真偽判別対象画像を赤外光領域で読み取った多値画像Km(i,j)を示す。
【0139】
図27は、図26(a)のカラー画像Cm(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像にカラー分解し、イエロー画像を多値画像Mm(i,j)としたものである。
【0140】
図28(a)は、図27の多値画像Mm(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Mm(i,j)のコントラストを強調して生成した多値画像Mmc(i,j)である。
【0141】
図28(b)は、図26(b)の多値画像Km(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Km(i,j)のコントラストを強調して生成した多値画像Kmc(i,j)である。
【0142】
図29に、図28(b)の多値画像Kmc(i,j)を、図28(a)の多値画像Mmc(i,j)でデータ復調して生成した多値画像Hm(i,j)を示す。データの復調方法は、前述の通りである。
【0143】
図30に、図29の多値画像Hm(i,j)をハートレー変換した実数配列hm(u,v)に対して、前述の配列並べ換えを行った実数配列hm’(u,v)を示す。図30は、複製品の実数配列hm’(u,v)であるが、図22の真正品の実数配列hm’(u,v)に現れる秘匿情報のパターンは、図30の複製品の実数配列hm’(u,v)には発現しないことが分かる。つまり、本発明の技術は、カラーコピー等の複写に対する耐性を有しており、真正品と複製品との真偽判別を容易に行える効果があることが分かる。
【0144】
図31(a)に、偽造者が真正品を入手して変造品を作製した場合、イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、解像度を300dpiとして、画素数を512画素×512画素として、変造品の真偽判別対象画像を可視光領域で読み取ったカラー画像Cm(i,j)を示す。
【0145】
図31(b)に、偽造者が真正品を入手して変造品を作製した場合、イメージスキャナ(iMeasure製 IR-4000)を用いて、解像度を300dpiとして、画素数を512画素×512画素として、変造品の真偽判別対象画像を赤外光領域で読み取った多値画像Km(i,j)を示す。
【0146】
ここで、偽造者が真正品を入手して変造品を作製する場合、図16の明度補正後のカラー画像C’(i,j)をを真正品と仮定する。偽造者は、図16のカラー画像C’(i,j)の構成要素である図13の二値画像Kb(i,j)については、そのまま流用すると仮定し、図16のカラー画像C’(i,j)の構成要素である図15(a)の多値画像M1’(i,j)、図15(b)の多値画像M2’(i,j)及び図15(c)の多値画像M3b’(i,j)に関しては、例えば、女性の写真等の画像を別の画像(男性の写真等)に差し替えて、変造品を作製すると仮定する。
【0147】
図32は、図31(a)のカラー画像Cm(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像にカラー分解し、イエロー画像を多値画像Mm(i,j)としたものである。
【0148】
図33(a)は、図32の多値画像Mm(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Mm(i,j)のコントラストを強調して生成した多値画像Mmc(i,j)である。
【0149】
図33(b)は、図31(b)の多値画像Km(i,j)の明度範囲が0から255まで有効に使われるように、多値画像Km(i,j)のコントラストを強調して生成した多値画像Kmc(i,j)である。
【0150】
図34に、図33(b)の多値画像Kmc(i,j)を、図33(a)の多値画像Mmc(i,j)でデータ復調して生成した多値画像Hm(i,j)を示す。データの復調方法は、前述の通りである。
【0151】
図35に、図34の多値画像Hm(i,j)をハートレー変換した実数配列hm(u,v)に対して、前述の配列並べ換えを行った実数配列hm’(u,v)を示す。図35は、変造品の実数配列hm’(u,v)であるが、図22の真正品の実数配列hm’(u,v)に現れる秘匿情報のパターンは、図35の変造品の実数配列hm’(u,v)には発現しないことが分かる。つまり、本発明の技術は、画像差し替え等の変造に対する耐性を有しており、真正品と変造品との真偽判別を容易に行える効果があることが分かる。
【0152】
以上、本発明に係る印刷物作製方法、印刷物及び真偽判別方法の実施の形態を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明に係る印刷物作製方法、印刷物及び真偽判別方法の実施の態様は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明に係る特許請求の範囲に記載した技術事項の範囲内であれば、各種の態様を採用することができる。
【符号の説明】
【0153】
12110 多値画像F(i,j)
12120 二値配列g(u,v)
12130 カラー画像C(i,j)
12140 実数配列f(u,v)
12150 二値配列g’(u,v)
12160 実数配列e(u,v)
12180 多値画像H(i,j)
12190 二値画像Hb(i,j)
12200 多値画像M1(i,j)
12210 多値画像M2(i,j)
12220 多値画像M3(i,j)
12230 二値画像M3b(i,j)
12240 二値画像Lb(i,j)
12250 二値画像Kb(i,j)
12260 カラー画像C’(i,j)
13100 真偽判別対象画像を有する印刷物
22110 カラー画像Cm(i,j)
22120 多値画像Km(i,j)
22130 多値画像Mm(i,j)
22140 多値画像Mmc(i,j)
22150 多値画像Kmc(i,j)
22160 多値画像Hm(i,j)
22170 実数配列hm(u,v)
22180 実数配列hm’(u,v)
22190 整数配列n(u,v)
22200 判別用画像
22210 基準画像
23100 印刷物
23200 真偽判別結果
ST11110 画像の入力
ST11120 カラー分解
ST11130 配列の並べ換え
ST11140 ハートレー変換
ST11150 データの合成
ST11160 逆ハートレー変換
ST11170 二値化
ST11180 疑似階調化
ST11190 データの変調
ST11200 明度の変換
ST11210 明度の補正
ST11220 画像の保存
ST11230 画像の印刷
ST21110 画像の取得
ST21120 カラー分解
ST21130 コントラストの変換
ST21140 データの復調
ST21150 ハートレー変換
ST21160 配列の並べ換え
ST21170 数値変換
ST21180 判別用画像の生成
ST21190 基準画像の読み出し
ST21200 画像の表示
ST21210 真偽判別
hb’(u,v)、m3b’(u,v)、1b’(u,v) 実数配列
M1’(i,j)、M2’(i,j)、M3b’(i,j) 明度補正後の多値画像
α 実数(α≧0)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値画像F(i,j)と秘匿情報の二値配列g(u,v)とカラー画像C(i,j)を入力する入力工程と、
前記F(i,j)をハートレー変換して実数配列f(u,v)を生成するハートレー変換工程と、
前記f(u,v)と前記g(u,v)とを合成して実数配列e(u,v)を生成するデータ合成工程と、
前記e(u,v)を逆ハートレー変換して多値画像H(i,j)を生成する逆ハートレー変換工程と、
前記H(i,j)を二値化して二値画像Hb(i,j)を生成する二値化工程と、
前記C(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像の三つの多値画像に分解し、前記三つの多値画像うち任意の一つを多値画像M1(i,j)とし、残りの二つの多値画像のうちいずれか一方を多値画像M2(i,j)とし、他方を多値画像M3(i,j)とするカラー分解工程と、
前記M3(i,j)を疑似階調の二値画像M3b(i,j)に変換する疑似階調化工程と、
前記Hb(i,j)を前記M3b(i,j)で変調して二値画像Lb(i,j)を生成するデータ変調工程と、
前記Lb(i,j)のコントラストを小さくすると共に明度を大きくすることによって、ブラック画像としての二値画像Kb(i,j)を生成する明度変換工程と、
前記M1(i,j)、前記M2(i,j)、前記M3b(i,j)及び前記Kb(i,j)から成るカラー画像において、可視光領域で前記Kb(i,j)のパターンが視認されないように、前記M1(i,j)の明度を補正して多値画像M1’(i,j)を生成し、前記M2(i,j)の明度を補正して多値画像M2’(i,j)を生成し、前記M3b(i,j)の明度を補正して多値画像M3b’(i,j)を生成し、前記M1’(i,j)、前記M2’(i,j)、前記M3b’(i,j)及び前記Kb(i,j)から成るカラー画像C’(i,j)を生成する明度補正工程とを少なくとも有し、
前記C’(i,j)のうち、前記Kb(i,j)については赤外線を吸収する色材で、前記M1’(i,j)、前記M2’(i,j)及び前記M3b’(i,j)については赤外線を透過する色材で、基材に印刷することを特徴とする真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法。
【請求項2】
前記秘匿情報の二値配列g(u,v)に対し、所定の配列並べ換え処理を行って二値配列g’(u,v)を生成する配列並べ換え工程とを更に有し、
前記g’(u,v)と前記実数配列f(u,v)とを合成して前記実数配列e(u,v)を生成し、前記e(u,v)を逆ハートレー変換して前記多値画像H(i,j)を生成することを特徴とする請求項1記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法。
【請求項3】
前記多値画像F(i,j)は、各画素とその近傍画素との明度差が大きい砂目状のパターンを有する多値画像であることを特徴とする請求項1又は2記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法。
【請求項4】
前記秘匿情報の二値配列g(u,v)は、左右対称、かつ、上下対称であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法。
【請求項5】
前記配列並べ換え工程は、前記秘匿情報の二値配列g(u,v)を垂直方向に二等分すると共に水平方向に二等分した四つの部分配列のうち、右上の部分配列を左下の部分配列の位置に移動し、左下の部分配列を右上の部分配列の位置に移動し、左上の部分配列を右下の部分配列の位置に移動し、右下の部分配列を左上の部分配列の位置に移動して、前記四つの部分配列の並べ換えを行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法。
【請求項6】
前記データ合成工程は、αを実数(α≧0)として、f(u,v)≧0の場合は、e(u,v)=g(u,v)×(f(u,v)+α)と定義して前記e(u,v)の値を算出し、f(u,v)<0の場合は、e(u,v)=g(u,v)×(f(u,v)−α)と定義して前記e(u,v)の値を算出して、前記実数配列e(u,v)を生成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法。
【請求項7】
前記データ合成工程は、αを実数(α≧0)として、f(u,v)≧0の場合は、e(u,v)=g’(u,v)×(f(u,v)+α)と定義して前記e(u,v)の値を算出し、f(u,v)<0の場合は、e(u,v)=g’(u,v)×(f(u,v)−α)と定義して前記e(u,v)の値を算出して、前記実数配列e(u,v)を生成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法。
【請求項8】
前記データ変調工程は、前記二値画像Hb(i,j)と前記疑似階調の二値画像M3b(i,j)の差の絶対値を反転して二値画像Lb(i,j)を生成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の作製方法。
【請求項9】
前記請求項1乃至8のいずれか1項記載の作製方法により作製された真偽判別対象画像を有する印刷物であって、
基材上のカラー画像C’(i,j)を赤外光領域で撮像した多値画像をKm(i,j)とし、前記C’(i,j)を可視光領域で撮像したカラー画像Cm(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像の三つの多値画像に分解し、前記シアン画像、前記マゼンタ画像及び前記イエロー画像のうちの任意の一つ、又は前記レッド画像、前記グリーン画像及び前記ブルー画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)として、
前記Mm(i,j)と前記Km(i,j)とを基にして生成した判別用画像から秘匿された二値配列のパターンが抽出可能であることを特徴とする真偽判別対象画像を有する印刷物。
【請求項10】
請求項9記載の真偽判別対象画像を有する印刷物において、秘匿された二値配列のパターンとあらかじめ定められた基準画像とを比較及び照合して真偽判別を行う真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法であって、
前記印刷物から可視光領域のカラー画像Cm(i,j)及び赤外光領域の多値画像Km(i,j)を取得する画像取得工程と、
前記Cm(i,j)をシアン画像、マゼンタ画像及びイエロー画像の三つの多値画像、又はレッド画像、グリーン画像及びブルー画像の三つの多値画像に分解し、前記シアン画像、前記マゼンタ画像及び前記イエロー画像のうちの任意の一つ、又は前記レッド画像、前記グリーン画像及び前記ブルー画像のうちの任意の一つを多値画像Mm(i,j)とするカラー分解工程と、
前記Mm(i,j)のコントラストを大きくして多値画像Mmc(i,j)を生成すると共に、前記Km(i,j)のコントラストを大きくして多値画像Kmc(i,j)を生成するコントラスト変換工程と、
前記Kmc(i,j)を前記Mmc(i,j)で復調して多値画像Hm(i,j)を生成するデータ復調工程と、
前記Hm(i,j)をハートレー変換して実数配列hm(u,v)を生成するハートレー変換工程と、
前記hm(u,v)における各配列要素の実数の絶対値の小数を切り捨て、切り上げ又は四捨五入して整数配列n(u,v)を生成する数値変換工程と、
前記n(u,v)に所定の階調変換を行って判別用画像を生成する判別用画像生成工程と、
前記判別用画像と前記基準画像とを比較及び照合して真偽判別を行う真偽判別工程とを少なくとも有することを特徴とする真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法。
【請求項11】
前記実数配列hm(u,v)に対し、所定の配列並べ換え処理を行って実数配列hm’(u,v)を生成する配列並べ換え工程とを更に有し、
前記hm’(u,v)における各配列要素の実数の絶対値の小数を切り捨て、切り上げ又は四捨五入して前記整数配列n(u,v)を生成することを特徴とする請求項10記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法。
【請求項12】
前記配列並べ換え工程は、前記実数配列hm(u,v)を垂直方向に二等分すると共に水平方向に二等分した四つの部分配列のうち、右上の部分配列を左下の部分配列の位置に移動し、左下の部分配列を右上の部分配列の位置に移動し、左上の部分配列を右下の部分配列の位置に移動し、右下の部分配列を左上の部分配列の位置に移動して、前記四つの部分配列の並べ換えを行い、前記実数配列hm’(u,v)を生成することを特徴とする請求項11記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法。
【請求項13】
前記データ復調工程は、前記Kmc(i,j)と前記Mmc(i,j)の差の絶対値を反転した値が前記多値画像Hm(i,j)となるように計算を行って、前記Hm(i,j)を生成することを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法。
【請求項14】
前記判別用画像と前記基準画像とを表示する表示工程を更に有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法。
【請求項15】
前記真偽判別工程において、前記判別用画像と前記基準画像とを比較及び照合した真偽判別結果を出力することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項記載の真偽判別対象画像を有する印刷物の真偽判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2010−263573(P2010−263573A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114760(P2009−114760)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】