説明

印刷用溶剤組成物

【課題】バインダー樹脂等の樹脂添加物の溶解性が高く、吸湿性が低いプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物は、プラズマディスプレイを構成する素子パターンを印刷法により形成する際に使用する溶剤組成物であって、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルの2つの末端アルキル基の一方がメチル基であり、もう一方が炭素数3又は炭素数5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物を含むことを特徴とする。前記印刷法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ナノインプリント法からなる群より選択される少なくとも1種の方法が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿し難く樹脂溶解性に優れた印刷法によるパターン形成用溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板やディスプレイなどの電子部品のパターン形成は、フォトリソグラフィと呼ばれる方法で形成されることが多かった。フォトリソグラフィは、ペースト組成物を基板に塗布し、微細パターンを露光して焼き付け、エッチングにて不要な部分を除去してパターン形成を行う方法である。しかし、一般に、エッチング廃液処理設備を必要とすることから装置自体が巨大となり、巨額の設備投資が必要であり、材料の使用効率も悪く、製造工程が多いため生産性が悪いことが問題であった。また、装置の容量に制限されるため大面積基板へのパターン形成は困難であった。
【0003】
そのため、近年、パターン形成方法としては、巨大な装置が不要で、材料の使用効率がよく、大面積基板への対応も容易である、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ナノインプリント法等の印刷法が注目されている。印刷法に用いられるペースト組成物の溶剤としては、ジエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテルや、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテルなどのジプロピレングリコールジアルキルエーテルが使用される例が多い。しかし、ジエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテルは生態毒性を有するため使用しづらいという問題があった(非特許文献1)。
【0004】
一方、特許文献1には、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルを、プラズマディスプレイを構成する素子(以後、「プラズマディスプレイ素子」と称する場合がある)を形成するペースト組成物に溶剤として使用することが記載されており、特許文献2には、親油性が強いジプロピレングリコールジブチルエーテルを使用することが記載されている。また、特許文献3には、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルメチルエーテル、及びジプロピレングリコールブチルエチルエーテルを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−273446号公報
【特許文献2】特開2006−107947号公報
【特許文献3】特開2010−70724号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】国際化学物質簡潔評価文書 No.41 Diethylene Glycol Dimethyl Ether(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジプロピレングリコールジアルキルエーテルは揮発性に優れているが、特にジプロピレングリコールジメチルエーテルは親水性が高く吸湿し易いため、プラズマディスプレイ素子を形成するペースト組成物に溶剤として使用すると、プラズマディスプレイ素子を劣化させる恐れがあり、一方、ジプロピレングリコールジブチルエーテルは親油性が高く吸湿性は低いが、ペースト組成物に含有するエチルセルロースやアクリル樹脂などのバインダー樹脂の溶解性が低いため、印刷用溶剤組成物として使用することは困難であるとことが分かった。また、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルメチルエーテル、及びジプロピレングリコールブチルエチルエーテルもまた、樹脂添加物の溶解性と吸湿性のバランスの点で不十分であるということが分かった。
【0008】
従って、本発明の目的は、バインダー樹脂等の樹脂添加物の溶解性が高く、吸湿性が低いプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記プラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物を含有するプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記プラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物を使用してパターン形成を行うパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルの一方の末端アルキル基がメチル基であり、且つ、もう一方の末端アルキル基が炭素数3又は炭素数5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物は、樹脂添加物の溶解性、及び吸湿性のバランスに優れること、前記化合物をプラズマディスプレイを構成する素子パターンを形成する際に溶剤組成物として使用すると、印刷法により素子パターンの形成を行うのに十分なバインダー樹脂溶解性を発揮することができ、且つ、吸湿により劣化し難いプラズマディスプレイ素子を形成することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、プラズマディスプレイを構成する素子パターンを印刷法により形成する際に使用する溶剤組成物であって、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルの2つの末端アルキル基の一方がメチル基であり、もう一方が炭素数3又は炭素数5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物を提供する。
【0011】
前記印刷法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ナノインプリント法からなる群より選択される少なくとも1種の方法が好ましい。
【0012】
本発明は、また、前記プラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物とバインダー樹脂とを少なくとも含有するプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物を提供する。
【0013】
前記バインダー樹脂としては、セルロース系樹脂及び/又はアクリル系樹脂が好ましい。
【0014】
本発明は、更にまた、プラズマディスプレイを構成する素子のパターン形成方法であって、基板上に、上記プラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物を印刷法を用いて塗布することによりパターン層を形成する工程と、前記パターン層を硬化又は焼成する工程とを有することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物は、上記ジプロピレングリコールジアルキルエーテルの2つの末端アルキル基の一方がメチル基であり、もう一方が炭素数3又は炭素数5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物を含有するため、バインダー樹脂等の樹脂添加物の溶解性に優れ、また極めて吸湿性が低い。
【0016】
そのため、本発明のプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物を含有するプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物は、大面積及び/又はフレキシブルな基材に対しても、印刷法により効率よく、均一に塗布することができ、プラズマディスプレイ素子の製造において、微細な素子パターンを高精度に形成することができる。また、吸湿し難いため、湿気によるプラズマディスプレイ素子の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[プラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物]
本発明に係るプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物は、プラズマディスプレイを構成する素子パターンを印刷法により形成する際に使用する溶剤組成物であって、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルの2つの末端アルキル基の一方がメチル基であり、もう一方が炭素数3又は炭素数5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物を含むことを特徴とする。
【0018】
前記印刷法としては、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ナノインプリント法等を挙げることができる。
【0019】
ジプロピレングリコールジアルキルエーテルの末端アルキル基における炭素数3又は炭素数5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基としては、例えば、n−プロピル、n−ペンチル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル、イソペンチル、s−ペンチル、t−ペンチル基などの分岐鎖状アルキル基を挙げることができる。本発明においては、なかでも炭素数3又は炭素数5の直鎖状アルキル基が好ましく、特に原料の調達が容易な点で、n−プロピル、n−ペンチル基が好ましい。
【0020】
本発明におけるジプロピレングリコールジアルキルエーテルの2つの末端アルキル基の一方がメチル基であり、もう一方が炭素数3又は炭素数5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物としては、例えば、ジプロピレングリコールメチル‐n‐プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル‐n‐ペンチルエーテル等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
また、本発明に係るプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物は、親水性と親油性のバランスのとれたものであることが好ましく、例えば、含水率が3%以下(なかでも、1.5%以下)であることが好ましい。含水率が上記範囲を上回ると、本発明に係るプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物を使用して形成したプラズマディスプレイ素子が劣化し易くなる傾向がある。
【0022】
また、本発明に係るプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物はエチルセルロース等の樹脂添加物の溶解性に優れることが好ましく、例えば、エチルセルロースを5重量%以上溶解するものが好ましい。エチルセルロース等の樹脂添加物の溶解量が上記範囲を下回ると、粘度が低くなりすぎ、チクソ性及び印刷物の形状安定性が不足する傾向がある。
【0023】
本発明のプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物は上記ジプロピレングリコールジアルキルエーテル以外にも、親水性と親油性のバランスを損なわない範囲で、必要に応じて他の溶剤を混合して用いてもよい。他の溶剤の配合割合は、適宜調整することができる。
【0024】
他の溶剤としては、印刷用途に一般的に使われている溶剤を使用することができ、例えば、カプロン酸、カプリル酸等のカルボン酸類;イソプロピルアルコール、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル等のトリプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、プロピレングリコールメチルペンチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等の上記以外のジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のトリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート等のジアセテート類;シクロヘキサノールアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルアセテート、トリアセチン、ジヒドロターピニルアセテート等のその他のアセテート類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノン、イソホロン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、酢酸ベンジル、エチルアセチルラクテート、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸アミル、酢酸アミル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、メントール等のテルペン類;ミネラルスピリット、石油ナフサS−100、石油ナフサS−150、テトラリン、テレピン油等の高沸点溶剤等を挙げることができる。
【0025】
[プラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物]
本発明に係るプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物は、少なくとも上記プラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物とバインダー樹脂とを含有することを特徴とする。
【0026】
バインダー樹脂としては、特に限定されることがなく、プラズマディスプレイ素子の形成に使用される周知慣用の樹脂を使用することができ、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、メチルヒドロキシセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール等のビニル樹脂等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本発明においては、なかでも、塗布時の版離れがよく、チクソ性及び印刷物の形状安定性に優れる点で、セルロース系樹脂を使用することが好ましい。
【0027】
プラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物における上記プラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物の含有量としては、例えば、1〜99重量%程度、好ましくは3〜75重量%程度である。プラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物の含有量が上記範囲を下回ると、プラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物の粘度が高くなりすぎ、印刷用途に使用することが困難となる傾向がある。一方、プラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物の含有量が上記範囲を上回ると、乾燥に時間がかかり作業効率が低下する傾向がある。
【0028】
プラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物におけるバインダー樹脂の含有量としては、例えば、0.1〜15重量%程度、好ましくは1〜10重量%程度である。バインダー樹脂の含有量が上記範囲を下回ると、チクソ性及び印刷物の形状安定性が不足する傾向があり、一方、バインダー樹脂の含有量が上記範囲を上回ると、粘度が高くなりすぎ、印刷用として使用することが困難となる傾向がある。
【0029】
本発明に係るプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物は、導体機能、絶縁機能、半導体機能の何れを発現するものであってもよく、上記以外に他の添加物を配合してもよい。他の添加物としては、例えば、金属酸化物、誘電体材料等の金属材料、色発光材料、導電性高分子材料、イオン伝導体材料、有機−無機ハイブリッドイオン伝導材料、有機又は無機顔料、分散剤、消泡剤、安定剤、酸化防止剤、硬化促進剤、増感剤、充填剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、ガラス又はセラミック粉末等を挙げることができる。他の添加物の配合量としては、本発明の効果を損なわない範囲内であればよく、例えば、プラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物全体の0.1〜99重量%程度である。
【0030】
本発明に係るプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物は、例えば、上記プラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物、バインダー樹脂、及び必要に応じて他の添加物を配合して、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分混練し、均一に分散することにより調製することができる。
【0031】
本発明に係るプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物は、印刷法により基材等に塗布することによりパターン形成が可能であるため、大面積且つフレキシブルな基板表面にも容易に、効率よく、且つ安価にプラズマディスプレイ素子を形成することができる。
【0032】
[パターン形成方法]
本発明に係るパターン形成方法は、プラズマディスプレイを構成する素子のパターン形成方法であって、基板上に、上記プラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物を印刷法を用いて塗布することによりパターン層を形成する工程(パターン印刷工程)と、前記パターン層を硬化又は焼成する工程(パターン硬化又は焼成工程)とを有することを特徴とする。
【0033】
また、パターン印刷工程における印刷法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ナノインプリント法からなる群より選択される少なくとも1種の方法を挙げることができる。
【0034】
上記印刷法により形成されたパターン層は、乾燥し、その後、加熱処理及び/又は光照射することにより硬化させることができる。また、乾燥後、硬化させることなく焼成してもよい。乾燥方法としては、例えば、80〜200℃程度の温度で、例えば0.1〜3時間程度加熱する方法などを挙げることができる。加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調整することができ、例えば50〜200℃程度である。また、加熱時間としては、例えば0.5〜3時間程度である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。光照射時間としては、例えば0.5〜30分程度である。焼成を行う場合、焼成温度としては、例えば200〜1500℃程度である。また、焼成時間としては、例えば、0.1〜5時間程度である。
【0035】
上記方法により得られるパターン層厚みは用途に応じて適宜調整することができ、例えば数nm〜200μm程度である。
【0036】
パターン層を形成する基板としては、耐熱性及び耐溶剤性を有することが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、シクロオレフィンコポリマー、導電性ポリマー、ナイロン、セルロース、ガラス、ITO等を挙げることができる。基板厚みとしては、例えば0.1〜50mm程度である。
【0037】
一般に、プラズマディスプレイは、電極を表面に形成した前面ガラス基板と、電極及び蛍光体層を形成した背面ガラス基板とを狭い間隔で対向させて希ガスを封入した構造を有する。
【0038】
プラズマディスプレイは、例えば下記方法により製造することができる。
1:前面ガラス基板上に表示電極、バス電極を形成する。
2:さらに誘電体層、MgO層を形成する。
3:背面ガラス基板上にデータ電極を形成し、誘電体層を形成し、さらにバリアリブ、蛍光体層を形成する。
5:前面ガラス基板と背面ガラス基板を張り合わせ、排気し、放電ガスを封入した後、プリント基板を実装する。
【0039】
本発明に係るパターン形成方法は印刷法を用いるため、基板に対して非接触の状態でパターンを形成することができ、大面積及び/又はフレキシブルな基板にも容易にパターン形成を行うことができる。そのため、特に、プラズマディスプレイ素子の製造において、微細な素子パターンを高精度に形成することができる。また、マスクの作成等の複雑な工程を経ることなく直接描写することが可能であり、微細加工技術を用いる必要がない。更に、常温常圧環境下で製造することができる。そのため、製造プロセスの大幅な簡素化、設備の簡素化、製造コストの低減化が可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0041】
実施例1
ジプロピレングリコールメチルエーテル(商品名「DPM」、ダイセル化学工業(株)製)300g、粉状の水酸化ナトリウム 32.4gを、500mlフラスコに入れ、100℃に昇温した後、系内の温度を100℃に保ちながらn‐ペンチルクロライド 86.3gを滴下した。その後、100℃を保ったまま4時間撹拌し、ヘキサン 130gと水 200gを加えて抽出した。抽出した有機相を20Torr、100℃で単蒸留し、ジプロピレングリコールメチル‐n‐ペンチルエーテル(以後、「DPMNPen」と称する場合がある)を88.7g得た。得られたDPMNPen 80.0gを200mlフラスコに入れ、常圧で昇温し、還流した時の液温を沸点として測定したところ、沸点は228℃であった。
【0042】
得られたDPMNPen 20g、蒸留水 20gを、50mlフラスコに入れ、約10分間撹拌した後、10分間静置し、有機相の水分測定を行ったところ、25℃環境下における水分濃度は0.6%であった。
【0043】
前記DPMNPenを3つの50mlフラスコにそれぞれ20.00gずつ入れ、商品名「エトセル」(登録商標)(エチルセルロース、DOW(株)製)をそれぞれ1.05g(5%溶液)、1.28g(6%溶液)、1.51g(7%溶液)追加した。その後、65℃で撹拌して静置し、25℃まで自然冷却した後、エチルセルロースの溶解性を目視で確認し、下記基準で評価した。
評価基準
エチルセルロースが完全に溶解した:○
エチルセルロースが一部不溶、或いは全く不溶であった:×
【0044】
比較例1
ジプロピレングリコールジメチルエーテル(商品名「DMM」、ダイセル化学工業(株)製、以後、「DMM」と称する場合がある)20g、蒸留水 20gを、50mlフラスコに入れ、約10分間撹拌した後、10分間静置し、有機相の水分測定を行ったところ、25℃環境下における水分濃度は4.7%であった。
【0045】
DPMNPenに代えて前記DMMを使用した以外は実施例1と同様にしてエチルセルロースの溶解性を評価した。
【0046】
比較例2
「第5版 実験科学講座14」(丸善株式会社出版、p239-241)に記載の方法により合成したジプロピレングリコールジブチルエーテル(以後、「DPDB」と称する場合がある)20g、蒸留水 20gを、50mlフラスコに入れ、約10分間撹拌した後、10分間静置し、有機相の水分測定を行ったところ、25℃環境下における水分濃度は0.1%であった。
【0047】
DPMNPenに代えて前記DPDBを使用した以外は実施例1と同様にしてエチルセルロースの溶解性を評価した。
【0048】
上記結果を下記表にまとめて示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイを構成する素子パターンを印刷法により形成する際に使用する溶剤組成物であって、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルの2つの末端アルキル基の一方がメチル基であり、もう一方が炭素数3又は炭素数5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である化合物を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物。
【請求項2】
印刷法がインクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ナノインプリント法からなる群より選択される少なくとも1種の方法である請求項1に記載のプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパターン印刷用溶剤組成物とバインダー樹脂とを少なくとも含有するプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物。
【請求項4】
バインダー樹脂がセルロース系樹脂及び/又はアクリル系樹脂である請求項3に記載のプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物。
【請求項5】
プラズマディスプレイを構成する素子のパターン形成方法であって、基板上に、請求項3又は4に記載のプラズマディスプレイパターン形成用ペースト組成物を印刷法を用いて塗布することによりパターン層を形成する工程と、前記パターン層を硬化又は焼成する工程とを有することを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2012−92190(P2012−92190A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239366(P2010−239366)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】