説明

印刷用紙および複製画

【課題】岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画を提供する。
【解決手段】基材1上に形成された下地凹凸層2と、下地凹凸層上に形成された受容層3を有する印刷用紙6であって、下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が70〜90μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙、特には岩絵の具調の日本画の複製画を描くのに適する印刷用紙及びその複製画に関する。
【背景技術】
【0002】
岩絵の具は粒状、粉状の原料鉱物を膠水等を用いて彩色するものであり、この岩絵の具を用いて描いた日本画は表面が粗面状の微小な多数の凹凸を有する。
【0003】
岩絵の具調の日本画には独特の色調があるほか、前記の粗面状の表面形状が特殊な風合を醸成し、これが絵画の美しさを創成する一要素となっているため、岩絵の具調の日本画の複製に当たっては、その絵画の色調の他に粗面状の表面状態も再現する必要がある。
【0004】
従来、岩絵の具調の日本画を複製する際には、基材にオフセット印刷で絵柄層を形成し透明凹凸加工フィルムを積層させることで岩絵の具独特の凹凸感を表現していたが、フィルムのてかりが原因で、本物の日本画の風合いが表現しづらいという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1には、和紙等の基底材上に、マテリアル層を形成し、該マテリアル層上に色材受理層を形成し、色材受理層上にオリジナル画像に対応した画像を再生する複製物の製造方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−14387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている複製物の製造方法では、前記マテリアル層は、バインダと白色顔料とから成る地塗材と、添加材とから成り、厚みのある立体的な肌合いを表現したり、凹凸やざらざら等の質感を出すために用いられている。また、色材受理層の形成には市販の色材受理材を用いている。
【0008】
特許文献1に開示された方法によれば、従来のような透明凹凸加工フィルムを積層させることなく凹凸形状を形成しているため、前述したようなてかりによる問題を解消することができる。
【0009】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1のように単に凹凸を有するマテリアル層上に市販の色材受理材を用いて色材受理層を形成しただけでは、岩絵の具独特の凹凸感を十分に表現することは困難であると共に、色材受理層自体の密着性にも問題があることが判明した。
【0010】
そこで本出願人は、より本物に近い岩絵の具独特のきめ細かい凹凸感を十分に表現できる複製画、更には受理層の密着性を向上せしめ表面剥離を防止した商品価値の高い複製画として特願2005−352853号を提案した。
【0011】
本発明は,平均粒度が小さい岩絵の具を用いて日本画等を描いた場合でも、より本物に近い岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画を再現できる印刷用紙およびその複製画を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0013】
即ち、本発明の第1の印刷用紙は、基材上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が70〜90μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第2の印刷用紙は、紙基材上に形成されたカール防止層と、該カール防止層上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が70〜90μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とし、また、前記カール防止層が、ジグリセリン60〜80重量部及び水40〜20重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキにより形成されることを特徴とする。
【0015】
また、前記下地凹凸層は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が370〜410個/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0016】
また、前記下地凹凸層は、寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする。
【0017】
また、前記寒水粉は粒径が300μm以下であり、その粒度分布において、粒径60〜70μmの範囲内に第一のピークを有し、粒径190〜200μmの範囲内に第二のピークを有しており、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が3〜5μmであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第3の印刷用紙は、基材上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が80〜95μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が190〜1100個/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第4の印刷用紙は、基材上に形成されたカール防止層と、該カール防止層上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が80〜95μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が190〜1100個/cm2の範囲内であることを特徴とし、また、前記カール防止層が、ジグリセリン60〜80重量部及び水40〜20重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキにより形成されることを特徴とする。
【0020】
また、前記下地凹凸層は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が450〜490個/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0021】
また、前記下地凹凸層は、寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする。
【0022】
また、前記寒水粉は粒径が300μm以下であり、その粒度分布において、粒径70〜90μmの範囲内にピークを有しており、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が3〜5μmであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第5の印刷用紙は、基材上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が30〜50μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の第6の印刷用紙は、基材上に形成されたカール防止層と、該カール防止層上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が30〜50μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とし、また、前記カール防止層が、ジグリセリン60〜80重量部及び水40〜20重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキにより形成されることを特徴とする。
【0025】
また、前記下地凹凸層は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が370〜410個/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0026】
また、前記下地凹凸層は、寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする。
【0027】
また、前記寒水粉は粒径が300μm以下であり、その粒度分布において、粒径40〜50μmの範囲内にピークを有しており、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が3〜5μmであることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の第7の印刷用紙は、基材上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が25〜45μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が20〜500個/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の第8の印刷用紙は、基材上に形成されたカール防止層と、該カール防止層上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が25〜45μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が20〜500個/cm2の範囲内であることを特徴とし、また、前記カール防止層が、ジグリセリン60〜80重量部及び水40〜20重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキにより形成されることを特徴とする。
【0030】
また、前記下地凹凸層は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が150〜190個/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0031】
また、前記下地凹凸層は、寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする。
【0032】
また、前記寒水粉は粒径が300μm以下であり、その粒度分布において、粒径20〜30μmの範囲内にピークを有しており、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が3〜5μmであることを特徴とする。
【0033】
また、第1〜第8の印刷用紙において、前記受容層は、平均粒径が3〜5μm、白色度が98%以上の炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする。
【0034】
また、前記印刷用紙上に絵柄層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の印刷用紙によれば、下地凹凸層の凸部と凹部の平均高度差、及び凸部又は/及び凹部の形成密度を特定の範囲内としたことにより、この上に形成した受容層上に形成される絵柄層自体が岩絵の具調の凹凸を表現でき、より本物に近い岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画を得ることができる。
【0036】
更に、原画の質感に合わせた使い分けが可能となり、岩絵の具の複製画の幅が広がることとなる。
【0037】
そして、本発明の第2、第4、第6及び第8の印刷用紙によれば、更に、基材の上にカール防止層を設けたことにより、カール防止層が基材への水分の浸透を防ぐ役割を果たす為、用紙のカール(波打ち)を防止できる。従って、例えば、インクジェットプリンター等で複製画を印刷する場合に、ヘッドが用紙に当たる等の障害が軽減され、出力がより安定されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態例を図面を参照して説明する。
【0039】
図1は本発明の第1、第3、第5及び第7の印刷用紙を用いた複製画の一部を模式的に示した断面図であり、1は基材、2は下地凹凸層、3は受容層、4は絵柄層である。尚、基材1、下地凹凸層2、及び受容層3を合わせたものが本発明の印刷用紙6である。
【0040】
図2は本発明の第2、第4、第6及び第8の印刷用紙を用いた複製画の一部を模式的に示した断面図であり、1は基材、2は下地凹凸層、3は受容層、4は絵柄層、5はカール防止層である。尚、基材1、下地凹凸層2、受容層3及びカール防止層5を合わせたものが本発明の印刷用紙6である。
【0041】
図示のように、本発明の複製画には、基材1上に形成された下地凹凸層2と、下地凹凸層2上に形成された受容層3と、受容層3上に形成された絵柄層4を有する第1、第3、第5及び第7の複製画と、基材1上に形成されたカール防止層5と、カール防止層5上に形成された下地凹凸層2と、下地凹凸層2上に形成された受容層3と、受容層3上に形成された絵柄層4を有する第2、第4、第6及び第8の複製画がある。
【0042】
[基材]
基材1としては、用紙、フィルム、布、プラスチック板、木質基材等を用いることができる。
【0043】
本発明の複製画を製造する際、好ましくは水系のインキを使用するため、第1、第3、第5及び第7の複製画の基材1としては、吸水性が良くあまりカールしない用紙が好ましく、例えば画材紙(上質紙)や和紙が好適であり、特に坪量が250〜320g/m2であるものが最も好ましい。坪量が250g/m2未満であると、吸水によってカールが生じ易くなる。一方、坪量が320g/m2を超えると、紙厚が厚くなりその表面が印字ヘッドに触れやすくなるため、画像形成が困難となる。
【0044】
また、第2、第4、第6及び第8の複製画には、防水壁としての役割を果たすカール防止層5が基材上に形成されている為、第2、第4、第6及び第8の複製画の基材1は特に限定されないが、吸水性が良くあまりカールしない用紙が好ましい。
【0045】
[カール防止層]
カール防止層5の材料としては、基材1への水分の浸透を防ぐ役割を果たすものを用いればよく、例えば水性インキ、油性インキ等が挙げられる。具体的には、公知の油性インキに、色材としての顔料を含有した油性インキ等が挙げられ、特に、基材が白色であればホワイトインキを用いる等、基材1と同系色のインキを用いることが好ましい。
【0046】
また、受容層3が、カール防止層5に接する場合には、ジグリセリン60〜80重量部、好ましくは65〜75重量部及び水40〜20重量部、好ましくは35〜25重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部、好ましくは25〜35重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキを用いることが好ましい。この様な水性インキを用いることにより、受容層3がカール防止層5に弾かれずに積層され、更に、カール防止層5の印刷適性(印刷し易さ、乾燥し易さ)、絵柄層4の発色性が向上する。特に、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して25〜35重量部の炭酸カルシウムを含有する場合には、絵柄層4の発色性が向上する。
そして、カール防止層5の形成には公知の方法、例えば、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、スクリーン印刷方式等を用いることができる。
【0047】
また、カール防止層5の厚さは、35〜48μmの範囲内であることが好ましい。この厚さにすることにより、カール防止層5が防水壁としての役割を果たし、基材1が各層から流入する水分を吸収しなくなる。
【0048】
更に、カール防止層5に光輝性顔料を含有させて、受容層3及び下地凹凸層2を部分的に形成することで、意匠性を高めることもできる。
【0049】
[下地凹凸層]
岩絵の具独特の凹凸感を持たせるためには、第1及び第2の複製画では、下地凹凸層2は、凸部と凹部の平均高度差が、70〜90μmの範囲内であることが必要である。この平均高度差が70μm未満であると、中程度の粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。一方、この平均高度差が90μmを超えると、凹凸が目立ち過ぎ、中程度の粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。
【0050】
また、第1及び第2の複製画では、下地凹凸層2は、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることが必要である。この形成密度が80/cm2より少ないと、中程度の粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。一方、この形成密度が800/cm2よりも多いと、凹凸が目立ち過ぎ、中程度の粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。
【0051】
更に、第1及び第2の複製画では、下地凹凸層2は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が370〜410個/cm2の範囲内であることが好ましい。これにより複製画全体として十分満足できる岩絵の具調を得ることができる。
【0052】
一方、第3及び第4の複製画では、下地凹凸層2は、凸部と凹部の平均高度差が、80〜95μmの範囲内であることが必要である。この平均高度差が80μm未満であると、細かい粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。一方、この平均高度差が95μmを超えると、凹凸が目立ち過ぎ、細かい粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。
【0053】
また、第3及び第4の複製画では、下地凹凸層2は、凸部又は/及び凹部の形成密度が190〜1100個/cm2の範囲内であることが必要である。この形成密度が190/cm2より少ないと、細かい粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。一方、この形成密度が1100/cm2よりも多いと、凹凸が目立ち過ぎ、細かい粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。
【0054】
更に、第3及び第4の複製画では、下地凹凸層2は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が450〜490個/cm2の範囲内であることが好ましい。これにより複製画全体として十分満足できる岩絵の具調を得ることができる。
【0055】
また、第5及び第6の複製画では、下地凹凸層2は、凸部と凹部の平均高度差が、30〜50μmの範囲内であることが必要である。この平均高度差が30μm未満であると、極めて細い粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。一方、この平均高度差が50μmを超えると、凹凸が目立ち過ぎ、極めて細い粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。
【0056】
更に、第5及び第6の複製画では、下地凹凸層2は、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることが必要である。この形成密度が80/cm2より少ないと、極めて細い粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。一方、この形成密度が800/cm2よりも多いと、凹凸が目立ち過ぎ、極めて細い粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。
【0057】
また、第5及び第6の複製画では、下地凹凸層2は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が370〜410個/cm2の範囲内であることが好ましい。これにより複製画全体として十分満足できる岩絵の具調を得ることができる。
【0058】
また、第7及び第8の複製画では、下地凹凸層2は、凸部と凹部の平均高度差が、25〜45μmの範囲内であることが必要である。この平均高度差が25μm未満であると、より極めて細い粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。一方、この平均高度差が45μmを超えると、凹凸が目立ち過ぎ、より極めて細い粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。
【0059】
更に、第7及び第8の複製画では、下地凹凸層2は、凸部又は/及び凹部の形成密度が20〜500個/cm2の範囲内であることが必要である。この形成密度が20/cm2より少ないと、より極めて細い粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。一方、この形成密度が500/cm2よりも多いと、凹凸が目立ち過ぎ、より極めて細い粗さを持つ岩絵の具独特の凹凸感を有する質感が得られない場合がある。
【0060】
また、第7及び第8の複製画では、下地凹凸層2は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が150〜190個/cm2の範囲内であることが好ましい。これにより複製画全体として十分満足できる岩絵の具調を得ることができる。
【0061】
下地凹凸層の凸部と凹部の高度差および形成密度は、例えばコンフォーカル顕微鏡(共焦点顕微鏡)やSEM(走査型電子顕微鏡)等を用いて観察・測定することができる。コンフォーカル顕微鏡の場合には表面形状を観察し、その結果から高度差測定を行うことができる。また、SEMの場合には、例えば垂直スライサーにて断面加工後、断面観察を行って高度差測定を行うことができる。
【0062】
本発明で規定する下地凹凸層の凸部と凹部の形成密度は、コンフォーカル顕微鏡により観察される高度差が50μm以上のものだけをカウントした値である。なお、後述の実施例に記載の下地凹凸層の凸部と凹部の形成密度は、レーザーテック(株)製のオプテリクスC130を用いて2130μm×1710μmの領域を表面観察した結果から算出した値である。
【0063】
[下地凹凸層の形成]
本発明の複製画を製造する際、好ましくは上記のような表面凹凸形状を有する下地凹凸層を、少なくともエチレン酢酸ビニルエマルジョンと寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有する水系の下地凹凸層形成用スクリーンインキを用いて形成する。
【0064】
エチレン酢酸ビニルエマルジョンは接着剤としての機能を有し、基材又はカール防止層への下地凹凸層の密着性を高めるためのものである。このエチレン酢酸ビニルエマルジョンは、下地凹凸層形成用スクリーンインキに20〜25重量%含有せしめるのが好ましく、21〜23重量%が特に好ましい。20重量%未満であると、十分な密着性が得られずに、下地凹凸層が剥離し易くなったり、下地凹凸層に掠れが生じ易くなる。一方、25重量%を超えると、前述したような下地凹凸層の凸部と凹部の高度差および形成密度を実現するのが難しく、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感を得ることが難しい。
【0065】
寒水粉(方解石の粉)と炭酸カルシウム粉(胡粉:牡蠣や帆立貝の粉)は、岩絵の具独特の凹凸感を得るためのものである。岩絵の具(天然岩絵の具、新岩絵の具、合成岩絵の具)には、方解石や胡粉などの粒状、粉状の原料鉱物が含有されており、本発明ではこのような実際に使われている岩絵の具材を下地凹凸層に含有せしめることにより、岩絵の具調の絵肌を美しく再現することができる。
【0066】
寒水粉は、下地凹凸層形成用スクリーンインキに44〜46重量%含有せしめるのが好ましい。44重量%未満であると、岩絵の具調が弱く、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感を得ることが難しい。一方、46重量%を超えると、凹凸が目立ち過ぎ満足できる岩絵の具調を得ることが難しくなると共に、インクの印刷適性が悪化する。
【0067】
前記寒水粉の粒径は、300μm以下が好ましい。岩絵の具に実際に含有されている方解石の粒径は概ね200μm以下であり、前記寒水粉の粒径が300μmを超えると、十分満足できる岩絵の具調を得るのが難しくなる。
【0068】
また、第1及び第2の複製画の場合、前記寒水粉は、その粒度分布において、粒径60〜70μmの範囲内に第一のピークを有し、粒径190〜200μmの範囲内に第二のピークを有するものが好ましい。このような粒度分布を有していれば、本発明の凸部と凹部の平均高度差が70〜90μmの範囲内である下地凹凸層を再現性良く安定して形成することができる。
【0069】
更に、第3及び第4の複製画の場合、前記寒水粉は、その粒度分布において、粒径70〜90μmの範囲内にピークを有するものが好ましい。このような粒度分布を有していれば、本発明の凸部と凹部の平均高度差が80〜95μmの範囲内である下地凹凸層を再現性良く安定して形成することができる。
【0070】
また、第5及び第6の複製画の場合、前記寒水粉は、その粒度分布において、粒径40〜50μmの範囲内にピークを有するものが好ましい。このような粒度分布を有していれば、本発明の凸部と凹部の平均高度差が30〜50μmの範囲内である下地凹凸層を再現性良く安定して形成することができる。
【0071】
更に、第7及び第8の複製画の場合、前記寒水粉は、その粒度分布において、粒径20〜30μmの範囲内にピークを有するものが好ましい。このような粒度分布を有していれば、本発明の凸部と凹部の平均高度差が25〜45μmの範囲内である下地凹凸層を再現性良く安定して形成することができる。
【0072】
前記炭酸カルシウム粉の平均粒径は、3〜5μmが好ましい。岩絵の具に実際に含有されている胡粉(日本画の白色画材)の粒径は概ね5μm前後であり、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が5μmを超えると、十分満足できる岩絵の具調を得るのが難しくなる。また、前記炭酸カルシウム粉は、白色度が高い高純度のものが好ましい。
【0073】
岩絵の具画材の胡粉は、盛り上げたり、白色の下地を作る目的で使用されており、本発明の実施例で用いている炭酸カルシウム粉(商品名シェルライム/北海道共同石灰(株)製)は、帆立貝殻を原料とし、平均粒径が3〜5μm、白色度が98%の高純度であることから、胡粉の質感を表現するのに最適である。
【0074】
なお、下地凹凸層2は全面に形成される場合だけではなく、オリジナル画像の表面凹凸に応じて部分的に形成される場合があり、また、オリジナル画像に対応した凹凸形状を得るために部分的に重ね刷りをして盛り上げる場合もある。
【0075】
[受容層]
本発明では凹凸形状を有する面にオリジナル画像に対応した絵柄層を形成するため、この絵柄層形成には非接触型のインクジェット方式が好適である。このため、前記下地凹凸層2上に、インクジェットプリンターによる印刷適性を有する受容層3を設ける。
【0076】
従来よりインクジェットプリンターによる印刷適性を持つ受容層には、インク発色性、インク吸収性に優れ、高精細な画質・高い印字濃度を発現するために、シリカや炭酸カルシウム等の顔料を利用することは広く知られている。
【0077】
しかしながら、本発明では前述したような凹凸形状を有する下地凹凸層2上に受容層3を設けるため、従来の受容層の組成では十分な密着性が得られず、表面剥離し易くなるという問題がある。
【0078】
このため本発明の複製画を製造する際、好ましくは従来の受容層の組成に加え、更に硬化剤を含有する水系の受容層形成用スクリーンインキを用いて受容層3を形成する。
【0079】
前記硬化剤としては水酸基と架橋反応する例えばイソシアネート等が適宜用いられる。この硬化剤は、受容層形成用スクリーンインキに6.5〜11.5重量%の割合で含有せしめるのが好ましい。6.5重量%未満であると、硬化剤による十分な効果が得られず、密着性が不十分となり易い。一方、11.5重量%を超えると、十分な密着性が得られるものの、絵柄層を形成した際に色の鮮やかさが劣る結果となり易い。
【0080】
また、受容層形成用スクリーンインキには、岩絵の具画材の胡粉の質感を十分に表現するために、平均粒径が3〜5μmであり、白色度が高く、白色度98%以上の高純度の炭酸カルシウム粉を含有せしめるのが好ましい。
【0081】
受容層3の厚さは12〜25μm程度であり、その表面は前述のような岩絵の具調の凹凸を有する下地凹凸層2の凹凸形状を反映したものとなる。
【0082】
なお、受容層3は全面に形成される場合だけではなく、絵柄層に応じて部分的に形成される場合もある。
【0083】
[絵柄層]
絵柄層4は、受容層3上にインクジェットプリンターによって形成される。岩絵の具調の凹凸を有する下地凹凸層2の凹凸形状を反映した受容層3の表面に形成される絵柄層4は、それ自体が岩絵の具調の凹凸を表現でき、より本物に近い岩絵の具独特の凹凸感を有し、質感の高い複製画が得られる。
【実施例】
【0084】
以下に本発明の実施例を説明する。なお、以下に記載の部はすべて重量部である。
【0085】
<実施例1>
本発明の第1の複製画の実施例として、画材紙上に以下のようにして下地凹凸層および受容層を形成し、この受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0086】
[下地凹凸層の形成]
下地凹凸層形成用インキを下記のA液とB液を用いて調製し(A液/B液=100部/30部)、スクリーン版として80メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、画材紙(かきた:300g/m2)上にスクリーン印刷方式で塗工した。
A液:カルボキシメエチルセルロース(#1190/ダイセル化学工業(株)製)
1.6部
水 100部
寒水粉(粒径300μm以下) 220部
炭酸カルシウム(粒径3〜5μm)
(シェルライムHPC/北海道共同石灰(株)製) 50部
B液:エチレン酢酸ビニルエマルジョン(EH−004、新田ゼラチン(株)製)
100部
水 10部
【0087】
尚、本実験例で用いた寒水粉は、その粒度分布において、粒径60〜70μm付近に第一のピークを有し、粒径190〜200μm付近に第二のピークを有している。
【0088】
また、得られた下地凹凸層の、凸部と凹部の平均高度差は70〜90μm、凸部又は/及び凹部の形成密度は80〜800個/cm2、凸部又は/及び凹部の平均形成密度は370〜410個/cm2であった。
【0089】
[受容層の形成]
受容層形成用インキを下記のA液とB液と硬化剤(イソシアネート「アクアネート#120」日本ポリウレタン工業(株)製)を用いて調製し(A液/B液/硬化剤=70部/100部/10部)、スクリーン版として150メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、下地凹凸層上にスクリーン印刷方式で塗工した。スクリーン版として150メッシュを用いているのは、下地凹凸層形成時よりも目の細かな版を用いることにより、下地凹凸層の凹凸に追従させるためである。なお、本発明においては、150〜200メッシュが好適に用いられる。
A液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
シリカ(平均粒径:5.5μm)
(G−0166/東ソー・シリカ(株)製) 15部
B液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
炭酸カルシウム(粒径3〜5μm、白色度98%)
(シェルライムHPC/北海道共同石灰(株)製) 50部
【0090】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成し、目視によって質感再現性を評価したところ、絵柄層自体が岩絵の具調の凹凸を十分に表現できており、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画が得られた。
【0091】
<実施例2>
本発明の第2の複製画の実施例として、画材紙上に以下のようにしてカール防止層、下地凹凸層および受容層を形成し、この受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0092】
[カール防止層の形成]
カール防止層形成用インキを用いて、スクリーン版として200メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、画材紙(ファブリアーノ紙:220g/m2)上にスクリーン印刷方式で二度刷りした。なお、油性インキとしては、ホワイトインキ(JRP白/(株)セイコーアドバンス製)を用いた。
【0093】
[下地凹凸層の形成]
実施例1と同様である。
【0094】
得られた下地凹凸層の、凸部と凹部の平均高度差は70〜90μm、凸部又は/及び凹部の形成密度は80〜800個/cm2、凸部又は/及び凹部の平均形成密度は370〜410個/cm2であった。
【0095】
[受容層の形成]
下地凹凸層上にスクリーン印刷方式で二度刷りした以外は実施例1と同様である。
【0096】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成したところ、実施例1と同様に、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画が得られ、更に、基材が各層の水分を吸収しなくなり、用紙のカールを防ぎ、インクジェットプリンターの出力がより安定した。
【0097】
<実施例3>
本発明の第3の複製画の実施例として、画材紙上に以下のようにして下地凹凸層および受容層を形成し、この受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0098】
[下地凹凸層の形成]
下地凹凸層形成用インキを下記のA液とB液を用いて調製し(A液/B液=100部/30部)、スクリーン版として80メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、画材紙(かきた:300g/m2)上にスクリーン印刷方式で塗工した。
A液:カルボキシメエチルセルロース(#1190/ダイセル化学工業(株)製)
1.6部
水 100部
寒水粉(粒径300μm以下) 220部
炭酸カルシウム(粒径3〜5μm)
(シェルライムHPC/北海道共同石灰(株)製) 50部
B液:エチレン酢酸ビニルエマルジョン(EH−004、新田ゼラチン(株)製)
100部
水 10部
【0099】
尚、本実験例で用いた寒水粉は、その粒度分布において、粒径70〜90μm付近にピークを有している。
【0100】
また、得られた下地凹凸層の、凸部と凹部の平均高度差は80〜95μm、凸部又は/及び凹部の形成密度は190〜1100個/cm2、凸部又は/及び凹部の平均形成密度は450〜490個/cm2であった。
【0101】
[受容層の形成]
受容層形成用インキを下記のA液とB液と硬化剤(イソシアネート「アクアネート#120」日本ポリウレタン工業(株)製)を用いて調製し(A液/B液/硬化剤=70部/100部/10部)、スクリーン版として150メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、下地凹凸層上にスクリーン印刷方式で塗工した。スクリーン版として150メッシュを用いているのは、下地凹凸層形成時よりも目の細かな版を用いることにより、下地凹凸層の凹凸に追従させるためである。なお、本発明においては、150〜200メッシュが好適に用いられる。
A液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
シリカ(平均粒径:5.5μm)
(G−0166/東ソー・シリカ(株)製) 15部
B液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
炭酸カルシウム(粒径3〜5μm、白色度98%)
(シェルライムHPC/北海道共同石灰(株)製) 50部
【0102】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成し、目視によって質感再現性を評価したところ、絵柄層自体が岩絵の具調の凹凸を十分に表現できており、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画が得られた。
【0103】
<実施例4>
本発明の第4の複製画の実施例として、画材紙上に以下のようにしてカール防止層、下地凹凸層および受容層を形成し、この受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0104】
[カール防止層の形成]
カール防止層形成用インキを用いて、スクリーン版として200メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、画材紙(ファブリアーノ紙:220g/m2)上にスクリーン印刷方式で二度刷りした。なお、油性インキとしては、ホワイトインキ(JRP白/(株)セイコーアドバンス製)を用いた。
【0105】
[下地凹凸層の形成]
実施例3と同様である。
【0106】
得られた下地凹凸層の、凸部と凹部の平均高度差は80〜95μm、凸部又は/及び凹部の形成密度は190〜1100個/cm2、凸部又は/及び凹部の平均形成密度は450〜490個/cm2であった。
【0107】
[受容層の形成]
下地凹凸層上にスクリーン印刷方式で二度刷りした以外は実施例3と同様である。
【0108】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成したところ、実施例3と同様に、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画が得られ、更に、紙基材が各層の水分を吸収しなくなり、用紙のカールを防ぎ、インクジェットプリンターの出力がより安定した。
【0109】
<実施例5>
本発明の第5の複製画の実施例として、画材紙上に以下のようにして下地凹凸層および受容層を形成し、この受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0110】
[下地凹凸層の形成]
下地凹凸層形成用インキを下記のA液とB液を用いて調製し(A液/B液=100部/30部)、スクリーン版として80メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、画材紙(かきた:300g/m2)上にスクリーン印刷方式で塗工した。
A液:カルボキシメエチルセルロース(#1190/ダイセル化学工業(株)製)
1.6部
水 100部
寒水粉(粒径300μm以下) 220部
炭酸カルシウム(粒径3〜5μm)
(シェルライムHPC/北海道共同石灰(株)製) 50部
B液:エチレン酢酸ビニルエマルジョン(EH−004、新田ゼラチン(株)製)
100部
水 10部
【0111】
尚、本実験例で用いた寒水粉は、その粒度分布において、粒径40〜50μm付近にピークを有している。
【0112】
また、得られた下地凹凸層の、凸部と凹部の平均高度差は30〜50μm、凸部又は/及び凹部の形成密度は80〜800個/cm2、凸部又は/及び凹部の平均形成密度は370〜410個/cm2であった。
【0113】
[受容層の形成]
受容層形成用インキを下記のA液とB液と硬化剤(イソシアネート「アクアネート#120」日本ポリウレタン工業(株)製)を用いて調製し(A液/B液/硬化剤=70部/100部/10部)、スクリーン版として150メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、下地凹凸層上にスクリーン印刷方式で塗工した。スクリーン版として150メッシュを用いているのは、下地凹凸層形成時よりも目の細かな版を用いることにより、下地凹凸層の凹凸に追従させるためである。なお、本発明においては、150〜200メッシュが好適に用いられる。
A液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
シリカ(平均粒径:5.5μm)
(G−0166/東ソー・シリカ(株)製) 15部
B液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
炭酸カルシウム(粒径3〜5μm、白色度98%)
(シェルライムHPC/北海道共同石灰(株)製) 50部
【0114】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成し、目視によって質感再現性を評価したところ、絵柄層自体が岩絵の具調の凹凸を十分に表現できており、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画が得られた。
【0115】
<実施例6>
本発明の第6の複製画の実施例として、画材紙上に以下のようにしてカール防止層、下地凹凸層および受容層を形成し、この受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0116】
[カール防止層の形成]
カール防止層形成用インキを用いて、スクリーン版として200メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、画材紙(ファブリアーノ紙:220g/m2)上にスクリーン印刷方式で二度刷りした。なお、油性インキとしては、ホワイトインキ(JRP白/(株)セイコーアドバンス製)を用いた。
【0117】
[下地凹凸層の形成]
実施例5と同様である。
【0118】
得られた下地凹凸層の、凸部と凹部の平均高度差は30〜50μm、凸部又は/及び凹部の形成密度は80〜800個/cm2、凸部又は/及び凹部の平均形成密度は370〜410個/cm2であった。
【0119】
[受容層の形成]
下地凹凸層上にスクリーン印刷方式で二度刷りした以外は実施例5と同様である。
【0120】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成したところ、実施例5と同様に、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画が得られ、更に、基材が各層の水分を吸収しなくなり、用紙のカールを防ぎ、インクジェットプリンターの出力がより安定した。
【0121】
<実施例7>
本発明の第7の複製画の実施例として、画材紙上に以下のようにして下地凹凸層および受容層を形成し、この受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0122】
[下地凹凸層の形成]
下地凹凸層形成用インキを下記のA液とB液を用いて調製し(A液/B液=100部/30部)、スクリーン版として100メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、画材紙(かきた:300g/m2)上にスクリーン印刷方式で塗工した。
A液:カルボキシメエチルセルロース(#1190/ダイセル化学工業(株)製)
1.6部
水 100部
寒水粉(粒径300μm以下) 220部
炭酸カルシウム(粒径3〜5μm)
(シェルライムHPC/北海道共同石灰(株)製) 50部
B液:エチレン酢酸ビニルエマルジョン(EH−004、新田ゼラチン(株)製)
100部
水 10部
【0123】
尚、本実験例で用いた寒水粉は、その粒度分布において、粒径20〜30μm付近にピークを有している。
【0124】
また、得られた下地凹凸層の、凸部と凹部の平均高度差は25〜45μm、凸部又は/及び凹部の形成密度は20〜500個/cm2、凸部又は/及び凹部の平均形成密度は150〜190個/cm2であった。
【0125】
[受容層の形成]
受容層形成用インキを下記のA液とB液と硬化剤(イソシアネート「アクアネート#120」日本ポリウレタン工業(株)製)を用いて調製し(A液/B液/硬化剤=70部/100部/10部)、スクリーン版として150メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、下地凹凸層上にスクリーン印刷方式で塗工した。スクリーン版として150メッシュを用いているのは、下地凹凸層形成時よりも目の細かな版を用いることにより、下地凹凸層の凹凸に追従させるためである。なお、本発明においては、150〜200メッシュが好適に用いられる。
A液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
シリカ(平均粒径:5.5μm)
(G−0166/東ソー・シリカ(株)製) 15部
B液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
炭酸カルシウム(粒径3〜5μm、白色度98%)
(シェルライムHPC/北海道共同石灰(株)製) 50部
【0126】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成し、目視によって質感再現性を評価したところ、絵柄層自体が岩絵の具調の凹凸を十分に表現できており、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画が得られた。
【0127】
<実施例8>
本発明の第8の複製画の実施例として、画材紙上に以下のようにしてカール防止層、下地凹凸層および受容層を形成し、この受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0128】
[カール防止層の形成]
カール防止層形成用インキを用いて、スクリーン版として200メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、画材紙(ファブリアーノ紙:220g/m2)上にスクリーン印刷方式で二度刷りした。なお、油性インキとしては、ホワイトインキ(JRP白/(株)セイコーアドバンス製)を用いた。
【0129】
[下地凹凸層の形成]
実施例7と同様である。
【0130】
得られた下地凹凸層の、凸部と凹部の平均高度差は25〜45μm、凸部又は/及び凹部の形成密度は20〜500個/cm2、凸部又は/及び凹部の平均形成密度は150〜190個/cm2であった。
【0131】
[受容層の形成]
下地凹凸層上にスクリーン印刷方式で二度刷りした以外は実施例7と同様である。
【0132】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成したところ、実施例7と同様に、岩絵の具独特の凹凸感を有する質感の高い複製画が得られ、更に、基材が各層の水分を吸収しなくなり、用紙のカールを防ぎ、インクジェットプリンターの出力がより安定した。
【0133】
<実施例9>
受容層がカール防止層に接する実施例として、以下のようにして和紙上に透明のカール防止層を形成し、カール防止層上に透明の受容層を形成し、この透明の受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成した例を説明する。
【0134】
[カール防止層の形成]
カール防止層形成用インキに、55〜85%ジグリセリン(ジグリセリン801(阪本薬品工業製))水溶液100重量部に、炭酸カルシウム(北海道共同石灰IIPC)を表1〜3に示す割合で配合した水性インキを用いて、スクリーン版として350メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、和紙(特漉き二号紙:110g/m2)上にシルクスクリーン印刷方式で印刷した。
【0135】
[受容層の形成]
受容層形成用インキを下記のA液とB液と硬化剤(イソシアネート「アクアネート#120」日本ポリウレタン工業(株)製)を用いて調製し(A液/B液/硬化剤=50部/50部/10部)、スクリーン版として150メッシュ(膜厚:8μm)、ベタ版(100%網版)を用い、カール防止層上にシルクスクリーン印刷方式で塗工した。
A液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
含水シリカ(平均粒径:5.5μm)
(G−0166/東ソー・シリカ(株)製) 15部
B液:6%PVA水溶液(#224/クラレ(株)製) 100部
無水シリカ(平均粒径:5.5μm)
(アエロジル380S/日本アエロジル(株)製) 8部
【0136】
次に、受容層上にインクジェットプリンターによって絵柄層を形成し、以下の方法で評価した。その評価を表1〜3に示す。尚、カール防止効果の評価が△または×である場合には、その他の評価は行わなかった。
【0137】
(1)カール防止効果
プリンターの印字ヘッドが印刷用紙のエッジに接触するかどうかについて、以下の基準で評価した。
○:印刷用紙に接触せず印字。
△:印刷用紙のエッジにやや接触するが、印刷品質に影響を及ぼさない。
×:印刷用紙のエッジに接触し、印刷品質に影響を及ぼす。
【0138】
(2)密着性
受容層の密着について、以下の基準で評価した。
○:指で擦っても、受容層形成インキが指に付着しない。
△:指で擦ると、受容層形成インキが指にやや付着する。
×:指で擦ると、受容層形成インキが指に付着し、一部は印刷用紙から剥落する。
【0139】
(3)印刷適性
カール防止層の印刷し易さ(インキ粘度)、乾燥し易さ(インキ乾燥性)について、以下の基準で評価した。
○:印刷し易さ(インキ粘度)、乾燥し易さ(インキ乾燥性)とも問題なし。
△:印刷し易さ(インキ粘度)、あるいは乾燥し易さ(インキ乾燥性)がやや悪い。
×:印刷し易さ(インキ粘度)、あるいは乾燥し易さ(インキ乾燥性)が悪い。
【0140】
(4)印刷品質
インクジェットプリンターで出力した絵柄について、目視で発色性やインキの滲みを、以下の基準で評価した。
○:発色性は良好、インキの滲みは無し。
△:発色性がやや劣る、あるいはインキの滲みがややある。
×:発色性が劣る、あるいはインキの滲みがある。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の第1、第3、第5及び第7の複製画の一部を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の第2、第4、第6及び第8の複製画の一部を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0145】
1 基材
2 下地凹凸層
3 受容層
4 絵柄層
5 カール防止層
6 印刷用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が70〜90μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項2】
基材上に形成されたカール防止層と、該カール防止層上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が70〜90μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項3】
前記カール防止層が、ジグリセリン60〜80重量部及び水40〜20重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキにより形成されることを特徴とする請求項2に記載の印刷用紙。
【請求項4】
前記下地凹凸層は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が370〜410個/cm2の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項5】
前記下地凹凸層は、寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項6】
前記寒水粉は粒径が300μm以下であり、その粒度分布において、粒径60〜70μmの範囲内に第一のピークを有し、粒径190〜200μmの範囲内に第二のピークを有しており、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が3〜5μmであることを特徴とする請求項5に記載の印刷用紙。
【請求項7】
基材上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が80〜95μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が190〜1100個/cm2の範囲内であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項8】
基材上に形成されたカール防止層と、該カール防止層上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が80〜95μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が190〜1100個/cm2の範囲内であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項9】
前記カール防止層が、ジグリセリン60〜80重量部及び水40〜20重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキにより形成されることを特徴とする請求項8に記載の印刷用紙。
【請求項10】
前記下地凹凸層は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が450〜490個/cm2の範囲内であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項11】
前記下地凹凸層は、寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項12】
前記寒水粉は粒径が300μm以下であり、その粒度分布において、粒径70〜90μmの範囲内にピークを有しており、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が3〜5μmであることを特徴とする請求項11に記載の印刷用紙。
【請求項13】
基材上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が30〜50μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項14】
基材上に形成されたカール防止層と、該カール防止層上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が30〜50μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が80〜800個/cm2の範囲内であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項15】
前記カール防止層が、ジグリセリン60〜80重量部及び水40〜20重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキにより形成されることを特徴とする請求項14に記載の印刷用紙。
【請求項16】
前記下地凹凸層は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が370〜410個/cm2の範囲内であることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項17】
前記下地凹凸層は、寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする請求項13乃至16のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項18】
前記寒水粉は粒径が300μm以下であり、その粒度分布において、粒径40〜50μmの範囲内にピークを有しており、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が3〜5μmであることを特徴とする請求項17に記載の印刷用紙。
【請求項19】
基材上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が25〜45μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が20〜500個/cm2の範囲内であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項20】
基材上に形成されたカール防止層と、該カール防止層上に形成された下地凹凸層と、該下地凹凸層上に形成された受容層を有する印刷用紙であって、前記下地凹凸層は、凸部と凹部の平均高度差が25〜45μmの範囲内であり、凸部又は/及び凹部の形成密度が20〜500個/cm2の範囲内であることを特徴とする印刷用紙。
【請求項21】
前記カール防止層が、ジグリセリン60〜80重量部及び水40〜20重量部(両者の合計は100重量部)と、ジグリセリンと水の合計100重量部に対して3〜39重量部の炭酸カルシウムと、を含有する水性インキにより形成されることを特徴とする請求項20に記載の印刷用紙。
【請求項22】
前記下地凹凸層は、凸部又は/及び凹部の平均形成密度が150〜190個/cm2の範囲内であることを特徴とする請求項19乃至21のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項23】
前記下地凹凸層は、寒水粉と炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする請求項19乃至22のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項24】
前記寒水粉は粒径が300μm以下であり、その粒度分布において、粒径20〜30μmの範囲内にピークを有しており、前記炭酸カルシウム粉の平均粒径が3〜5μmであることを特徴とする請求項23に記載の印刷用紙。
【請求項25】
前記受容層は、平均粒径が3〜5μm、白色度が98%以上の炭酸カルシウム粉を含有することを特徴とする請求項1乃至24のいずれか一項に記載の印刷用紙。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれか一項に記載の印刷用紙上に絵柄層を有することを特徴とする複製画。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−105389(P2008−105389A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198500(P2007−198500)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】