説明

印刷装置、データ変換システム、印刷方法、および、データ変換方法

【課題】 端末から送信された画像データおよび色変換テーブル等の参照データを用いてデータ変換処理を行なう印刷装置において、画像データや参照データの展開によって生じるメモリへの負荷を軽減することを目的とする。
【解決手段】 印刷システムGH1では、データ変換処理に用いられる3種類の参照データS1〜S3および印刷対象画像を表わすRGBデータを保持するパーソナルコンピュータ10からプリンタ20に対して印刷対象画像についての印刷指示がなされると、プリンタ20は、パーソナルコンピュータ10側で指定された印刷条件の種類が第3の条件であるときに、パーソナルコンピュータ10からRGBデータおよび第3参照データS3を入力してデータ変換処理を実行し、CMYデータを生成する。この場合において、第3参照データS3は、RGBデータに先立って入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データを、所定の参照データを用いて、印刷装置で印刷可能な形式の印刷データに変換する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータで扱われるカラー画像のデータ(以下、画像データという)は、通常、通常、R(赤),G(緑),B(青)の各色の階調値によって表現されている。これに対し、プリンタでのカラー印刷に用いられるデータ(以下、印刷データという)は、基本的には、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)の各色のドット分布によって表現されている。このように、両者はカラー画像の表現方法が大きく異なっているため、パーソナルコンピュータなどの端末の画面に表示されるカラー画像を印刷するためには、まず、画像データを印刷データに変換する必要がある。こうした画像データの印刷データへの変換処理(以下、データ変換処理という)は、R,G,B各色の階調値とC,M,Y各色の階調値との対応関係を規定した色変換テーブル(LUT)等の参照データを参照することにより、行なわれていた。
【0003】
こうしたデータ変換処理は、通常は印刷装置に接続された端末側で行なわれるが、近年では、印刷装置側でデータ変換処理を行なう手法も提案されていた(例えば、特許文献1を参照)。具体的には、データ変換処理に必要となる多種類の色変換テーブルをネットワーク上のサーバに予め格納しておき、このサーバが、パーソナルコンピュータから受信した印刷対象となる画像データを、色変換テーブルと共に印刷装置に転送していた(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−46339
【0005】
しかしながら、上記の従来の手法では、印刷対象となる画像データおよびこの画像データに対するデータ変換処理に用いる色変換テーブルを一度に印刷装置に送信するため、これらを受信する印刷装置のメモリに急激な負荷がかかってしまうという課題があった。このようなメモリに対する急激な負荷は、以降の印刷装置における印刷処理の中断等の要因になり得るため、改善の余地があった。こうした難点は、精細な画質の印刷画像を得ようとする場合に、より顕著となる。印刷によって得ようとする画質が精細になるほど、画像データや色変換テーブルのデータ量が大きくなるため、メモリ容量を超える量のデータが一度にメモリに展開される可能性があるからである。一方、これらの課題を解決するために、大容量のデータの受信に備えて印刷装置に搭載されるメモリの容量を増やすことは、印刷装置のコストが高くなるという別の問題を招致してしまうため、解決手段として好ましいものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した問題点を踏まえ、端末から送信された画像データおよび色変換テーブル等の参照データを用いてデータ変換処理を行なう印刷装置において、画像データや参照データの展開によって生じるメモリへの負荷を軽減することを目的として、以下の構成を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷装置は、
所定の端末からの印刷指示を受けて、画像の印刷を行なう印刷装置であって、
印刷指示がなされた画像である印刷対象画像を表わす画像データを入力する画像データ入力手段と、
前記画像データを印刷可能な形式の印刷データに変換するための変換用参照データを、前記画像データの入力に先立って、前記端末から入力し、メモリに記憶する参照データ入力手段と、
前記端末からの印刷指示がなされた場合に、前記予め入力した変換用参照データを参照して、前記入力した画像データを、前記印刷データに変換する変換手段と
を備えたことを要旨としている。
【0008】
また、上記印刷装置と同様の技術を用いてなされた本発明の印刷方法は、
所定の端末からの印刷指示を受けて、画像の印刷を行なう方法であって、
印刷指示がなされた画像である印刷対象画像を表わす画像データを入力し、
前記画像データを印刷可能な形式の印刷データに変換するための変換用参照データを、前記画像データの入力に先立って前記端末から入力して、メモリに記憶し、
前記端末からの印刷指示がなされた場合に、前記予め入力した変換用参照データを参照して、前記入力した画像データを、前記印刷データに変換することを要旨としている。
【0009】
本発明の印刷装置ないし印刷方法では、所定の端末からの印刷指示がなされた場合に、印刷装置が、印刷対象画像を表わす画像データと、この画像データの印刷データへの変換処理(以下、データ変換処理という)に用いられる変換用参照データとを入力する。この変換用参照データの入力は、印刷対象画像を表わす画像データの入力に先立って行なわれる。従って、データ変換処理に用いられる画像データおよび変換用参照データが、データ変換処理を行なう印刷装置のメモリに一度に展開されてしまうことがなく、印刷装置のメモリへの負荷を軽減することができる。また、変換対象としての画像データの入力よりも先に、変換の基準となる変換用参照データの入力が行なわれることで、変換用参照データについてのメモリ領域が優先的に確保される。従って、データ変換処理を正確に実行することができる。
【0010】
上記の印刷装置および印刷方法には、様々な展開を考えることができる。以下、印刷装置を例にとって説明するが、印刷方法としても、ほぼ同様の展開が可能である。
【0011】
少なくとも前記変換用参照データの入力時におけるメモリの状態を検出する状態検出手段と、該検出されたメモリの状態に基づいて印刷対象画像を表わす画像データの入力を開始する入力開始手段を備えることも好ましい。こうすれば、変換用参照データのメモリへの展開がなされてから画像データの入力を開始する等の対応が可能となり、変換の基準となる変換用参照データを確実にメモリに保持することができる。
【0012】
上記の印刷装置に印刷指示を行なう端末が、該端末側で指定された所定の印刷条件についての設定内容に応じて、複数の変換用参照データの中から1つの変換用参照データを特定する特定手段を備える場合には、この特定手段により特定された変換用参照データを印刷装置が入力する構成としてもよい。この構成によれば、印刷装置は、端末側で指定された所定の印刷条件についての設定内容の実現に適した変換用参照データを受け取ることが可能となるので、限られたメモリ領域を有効に活用することができる。例えば、印刷条件についての設定内容とは無関係な変換用参照データまでが印刷装置に入力され、メモリ領域を消費してしまうといった事態を防止することができる。
【0013】
ここで、印刷条件とは、画像データの印刷データへの変換時に考慮される条件である。この印刷条件を構成する個々の要素としては、例えば、印刷解像度、用紙等の印刷対象物の種類、印刷指示がなされた端末の種類などを考えることができる。
【0014】
上記の特定手段を、少なくとも印刷解像度と印刷対象物の種類という前記印刷条件についての設定内容に応じて変換用参照データの特定を行なう手段としても差し支えない。こうすれば、印刷装置は、印刷データに要求されたドットの細かさが印刷対象物上で実現される程度を考慮して特定された変換用参照データを入力することができる。
【0015】
上記の端末が、該端末側で指定された所定の印刷条件についての設定内容に基づいて、画像データを印刷データに変換する処理の実行主体を端末または印刷装置のいずれかに決定する実行主体決定手段を備える場合には、この実行主体決定手段によって実行主体が印刷装置に決定された場合に、変換用参照データを印刷装置が入力する構成としてもよい。この構成によれば、データ変換処理の実行主体が印刷装置に決定された場合に、この後に印刷装置でデータ変換処理が行われることを考慮して、印刷装置に変換用参照データが入力される。従って、印刷装置でデータ変換処理が行われない場合にまで、印刷装置に変換用参照データが入力され、印刷装置のメモリ領域を占有してしまうということがない。
【0016】
上記の印刷装置が、所定の種類の変換用参照データを予め保持する保持手段を備えており、上記の端末が、前記特定手段により特定された変換用参照データが、前記予め保持された種類の変換用参照データであるか否かを判断する判断手段を備えている場合には、該判断手段によって変換用参照データが予め保持された種類の変換用参照データでないと判断された場合に、印刷装置が、特定手段により特定された変換用参照データを入力する構成とすることも好適である。こうすれば、印刷装置が予め保持している変換用参照データと同じ種類の変換用参照データが印刷装置に入力されてしまうことがなく、メモリ領域の無駄を防止することができる。
【0017】
印刷装置への入力の対象となる変換用参照データには、少なくとも、画像データによって表わされる色情報を印刷装置で表現可能な色情報に変換する色変換用データが含まれていることとしてもよい。これにより、データ変換処理に用いられる色変換用データを外部から印刷装置に入力することが可能となる。従って、多種類の色変換用データを印刷装置側に予め格納しておく必要がなくなり、印刷装置のコストを低減することができる。
【0018】
印刷装置への入力の対象となる変換用参照データが、通信回線を介して前記端末または前記印刷装置に供給される構成を採っても差し支えない。こうすれば、将来的な印刷画質の良好化に伴う変換用参照データの追加や変更に柔軟に対応することができる。
【0019】
本発明のデータ変換システムは、
印刷装置に接続された所定の端末において、コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データによって表わされる画像についての印刷指示がなされた場合に、該端末が、前記印刷指示がなされた画像である印刷対象画像を表わす画像データを前記印刷装置に出力し、該画像データを入力した印刷装置が、該画像データを所定の変換用参照データを用いて印刷可能な形式の印刷データに変換するデータ変換処理を行なうデータ変換システムであって、
前記端末は、
前記印刷指示がなされたとき、前記印刷対象画像について指定された所定の印刷条件についての設定内容を特定する設定内容特定手段と、
該特定された設定内容に応じて、複数の前記変換用参照データの中から1つの変換用参照データを特定する参照データ特定手段と、
該特定された前記変換用参照データを、前記印刷対象画像を表わす画像データの出力に先立って前記印刷装置に出力する出力手段と
を備え、
前記印刷装置は、前記出力手段により出力された変換用参照データ,画像データを、この順に入力してメモリに展開し、前記データ変換処理を行なうことを要旨とする。
【0020】
また、上記データ変換装置と同様の技術を用いてなされた本発明のデータ変換方法は、
印刷装置に接続された所定の端末において、コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データによって表わされる画像についての印刷指示がなされた場合に、該端末が、前記印刷指示がなされた画像である印刷対象画像を表わす画像データを前記印刷装置に出力し、該画像データを入力した印刷装置が、該画像データを所定の変換用参照データを用いて印刷可能な形式の印刷データに変換するデータ変換処理を行なう方法であって、
前記端末が、
前記印刷指示がなされたとき、前記印刷対象画像について指定された所定の印刷条件についての設定内容を特定し、
該特定された設定内容に応じて、複数の前記変換用参照データの中から1つの変換用参照データを特定し、
該特定された前記変換用参照データを、前記印刷対象画像を表わす画像データの出力に先立って前記印刷装置に出力し、
前記印刷装置が、前記出力された変換用参照データ,画像データを、この順に入力してメモリに展開し、前記データ変換処理を行なうことを要旨とする。
【0021】
本発明のデータ変換システムないしデータ変換方法では、印刷指示がなされた端末は、印刷対象画像について指定された所定の印刷条件についての設定内容を特定し、該特定された設定内容に応じて、複数の変換用参照データの中から、印刷対象画像を表わす画像データの印刷データへの変換に用いられる変換用参照データを特定し、該特定された変換用参照データを、印刷対象画像を表わす画像データの出力に先立って印刷装置に出力する。他方、印刷装置は、出力された変換用参照データ,画像データを、この順に入力してメモリに展開し、データ変換処理を行なう。従って、データ変換処理に用いられる画像データおよび変換用参照データが、データ変換処理を行なう印刷装置のメモリに一度に展開されてしまうことがなく、印刷装置のメモリへの負荷を軽減することができる。また、変換対象としての画像データの入力よりも先に、変換の基準となる変換用参照データの入力が行なわれることで、変換用参照データについてのメモリ領域が優先的に確保される。従って、データ変換処理を正確に実行することができる。
【0022】
こうしたデータ変換システムおよびデータ変換方法についても、上記した印刷装置および印刷方法とほぼ同様の様々な展開が可能である。例えば、上記のデータ変換システムにおいて、変換用参照データを構成するデータの少なくとも一部を、通信回線を介して端末または印刷装置に供給するデータ供給手段を備えることも、将来的な印刷画質の良好化に伴う変換用参照データの追加や変更に柔軟に対応することができる点で望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下、本発明の実施の形態を、以下の順序で説明する。
A.実施例
A−1.印刷システムGH1の構成
A−2.データ変換処理の内容
A−3.印刷指示端末1からの指示に基づく分担印刷処理の内容
A−4.作用効果
B.変形例
【0024】
A.実施例:
A−1.印刷システムGH1の構成:
図1は本発明の実施例である印刷システムGH1の概略構成を示す説明図である。図1に示すように、印刷システムGH1は、印刷装置としてのプリンタ20と、プリンタ20の入力側に有線または無線で接続され、プリンタ20に対して画像の印刷指示を行なう印刷指示端末1とから構成されている。
【0025】
プリンタ20は、カラー画像を各種用紙等の印刷対象物Pに印刷するカラープリンタである。本実施例では、プリンタ20として、印刷対象物P上にC(シアン)・LC(ライトシアン)・M(マゼンタ)・LM(ライトマゼンタ)・Y(イエロ)・K(ブラック)の6色のドットを形成することによってカラー画像を印刷するインクジェットプリンタを使用している。
【0026】
印刷指示端末1では、画像の印刷をプリンタ20に指示するに当たり、種々の印刷条件が設定される。こうして設定される印刷条件には、印刷指示端末1の使用者の選択によって設定されるもの(例えば、印刷解像度や印刷対象物Pの種類等)と、印刷指示に伴って自動的に設定されるもの(例えば、印刷指示がなされた印刷指示端末1の種類等)とがある。プリンタ20は、印刷指示端末1側での印刷条件の設定に応じて、印刷対象となる画像(以下、印刷対象画像という)を、多種類の画質で印刷可能に構成されている。
【0027】
印刷指示端末1は、カラー画像を、画素毎のR(赤),G(緑),B(青)各色の階調値で表現した画像データ(以下、RGBデータという)として取り扱っている。このため、印刷指示端末1においてRGBデータとして扱われる画像をプリンタ20で印刷するためには、印刷対象画像を表わすRGBデータを、所定の参照データを用いて、プリンタ20で印刷可能な形式の印刷データ(C・LC・M・LM・Y各色のドット分布を表わすデータ 以下、CMYデータという)に変換する必要がある。この参照データには、解像度変換における指示内容を表わすデータ(以下、解像度指示データという)や色変換用のルックアップテーブル(以下、LUTという)、ハーフトーニングにおける指示内容を表わすデータ(以下、階調変換指示データという)が含まれている。こうしたRGBデータのCMYデータへの変換処理(以下、データ変換処理という)に用いられる参照データは、プリンタ20に要求される画質が高くなるほど精細なデータである必要がある。このため、本実施例の印刷システムGH1では、様々な画質に対応する参照データを多数準備している。こうした多数の参照データを、本実施例では、実現される画質や使用される頻度を考慮して、3つの種類(第1参照データS1、第2参照データS2、第3参照データS3)に区分けしている。
【0028】
上記の参照データは、一般に、データ変換処理の手順および内容を表わすプログラムと共に、プリンタドライバに組み込まれる。このプリンタドライバは、通常、プリンタ20やパーソナルコンピュータ10においてデータ変換処理を実行することができるように、プリンタ20の制御回路40やパーソナルコンピュータ10のPC制御装置11に格納される。本実施例の印刷システムGH1では、上記3種類の参照データを、プリンタドライバの一部として、印刷指示端末1のうちのパーソナルコンピュータ10とプリンタ20とに分担して格納している。具体的には、プリンタ20には、第2参照データS2を、パーソナルコンピュータ10には第1参照データS1および第3参照データS3を格納している。一方、プリンタ20に接続される印刷指示端末1の中には、パーソナルコンピュータ10とは異なり、プリンタドライバを実行する処理能力を備えていないため、データ変換処理を行なえない簡易端末90(例えば、図1に示す携帯電話91,携帯情報端末92,ゲーム装置93,デジタルスチルカメラ94)もあり、本実施例では、このような簡易端末90には参照データを格納していない。
【0029】
こうした印刷システムGH1には、次のようなデータ変換システムが含まれている。即ち、印刷指示端末1からプリンタ20への印刷指示がなされた場合に、パーソナルコンピュータ10ないしプリンタ20が、印刷指示の内容を解析して、印刷条件の種類を第1の条件,第2の条件,第3の条件のいずれかに判断し、この判断結果に基づいて、データ変換処理に用いるべき参照データ(以下、変換用参照データという)を第1参照データS1,第2参照データS2,第3参照データS3のいずれかに決定すると共に、データ変換処理の実行主体をパーソナルコンピュータ10,プリンタ20のいずれかに決定し、これらの決定の内容にしたがって、データ変換処理を行なうのである。
【0030】
後述するように、変換用参照データが第3参照データS3に決定された場合には、データ変換処理の実行主体がプリンタ20に決定されるため、プリンタ20でのデータ変換処理を可能とすべく、パーソナルコンピュータ10からプリンタ20に、変換の対象となるRGBデータに加えて、変換の基準となる第3参照データS3が出力される。この場合において、本実施例では、RGBデータよりも先に第3参照データS3を出力し、プリンタ20ガ、第3参照データS3の入力後にRGBデータを入力する構成を採用している。
【0031】
図2は、パーソナルコンピュータ10が備えるPC制御装置11の構成を示す説明図である。このPC制御装置11はパーソナルコンピュータ10に内蔵されている。図5に示すように、PC制御装置11は、CPU11aと、このCPU11aとバスにより相互に接続されたROM11b,RAM11c,ディスクドライブコントローラ11d,入力コントローラ11f,ディスプレイコントローラ11g,パラレル入出力インタフェース11h,シリアル入出力インタフェース11i等の各部を備える。ROM11bは、CPU11aで各種演算処理を実行するのに必要なプログラムやデータを予め格納している。RAM11cは、CPU11aで各種演算処理を実行するのに必要な各種プログラムやデータを一時的に格納するためのメモリである。
【0032】
ディスクドライブコントローラ11dには外部記憶装置としてのハードディスク11eが接続されている。ハードディスク11eには、RAM11cにロードされて実行される各種プログラムやプリンタ20用のデバイスドライバであるプリンタドライバなどが記憶されている。プリンタドライバには、後述する分担処理A1(図8)やデータ変換処理(図5)等の画像印刷に関する処理の内容および手順を表わすプログラムと、このプログラムの実行に際して用いられるデータが記述されている。このデータには、分担処理A1(図8)において参照される対応マップTM(図6)や、データ変換処理(図5、図8)において用いられる第1参照データS1および第3参照データS3が含まれている。第1参照データS1は、様々な画質に対応する多数の参照データ(解像度指示データとLUTと階調変換指示データの組み合わせ)のうち、高解像度での印刷に適した参照データの総称であり、実際には、高い解像度を表わす各設定値に対応した参照データを複数含んでいる。第3参照データS3は、第1参照データS1および後述する第2参照データS2以外の種類に属する参照データの総称である。本実施例では、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせのうち、組み合わせの適合性および使用頻度が低いものについて、該組み合わせでの印刷に用いられる種類の参照データを、第3参照データS3に属するものとしている。
【0033】
ディスプレイコントローラ11gには、カラー画像を表示可能なディスプレイ14が接続されており、入力コントローラ11fには、マウスやキーボード等の入力装置15が接続されている。パラレル入出力インタフェース11hは、コネクタ56を介して、プリンタ20のI/F専用回路50に接続されている。シリアル入出力インタフェース11iは、モデム87,公衆電話回線PNTを介して、外部のネットワークであるインターネットINに接続されている。
【0034】
図3はプリンタ20の概略構成を示す説明図である。プリンタ20は、図示するように、紙送りモータ22によって印刷対象物Pを搬送する機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット28を駆動してインクの吐出およびドット形成を行なう機構と、これらの各機構が接続される制御回路40とを備える。
【0035】
印刷対象物Pを搬送する機構は、プラテン26と、プラテン26を回転させる紙送りモータ22と、図示しない給紙補助ローラと、紙送りモータ22の回転をプラテン26および給紙補助ローラに伝えるギヤトレイン(図示省略)とから構成されている。プリンタ20に供給された印刷対象物Pは、プラテン26と給紙補助ローラの間に挟み込まれるようにセットされ、プラテン26の回転角度に応じて所定量だけ送られる。キャリッジ30を往復動させる機構は、プラテン26の軸と並行に架設されたキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置検出センサ39等から構成されている。
【0036】
キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット28は、ブラック・シアン・ライトシアン・マゼンタ・ライトマゼンタ・イエロの各色ごとに計6個のインク吐出用ヘッド61〜66を備える。また、キャリッジ30の底部には、各インク吐出用ヘッド61〜66に連通された6本の導入管が立設されている。キャリッジ30に黒インク用カートリッジ70a,カラーインク用カートリッジ70bが上方から装着されると、各カートリッジに設けられた接続孔に各導入管が挿入される。これにより、インク用カートリッジ内のインクが、毛細管現象を利用して導入管を介して吸い出され、各インク吐出用ヘッド61〜66に導かれる。各インク吐出用ヘッド61〜66には、各色について32個のノズルNzが設けられていて、各ノズルには、インク通路と、その通路上にピエゾ素子PEとが設けられている。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行う素子である。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印可することにより、ピエゾ素子PEが電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路の一側壁を変形させる。この結果、インク通路の体積はピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが粒子IpとなってノズルNzから高速で吐出される。このインクの粒子Ipがプラテン26に装着された印刷対象物Pに染み込むことによって、印刷対象物P上にドットが形成され、印刷が行なわれることになる。
【0037】
制御回路40は、プリンタ20の操作パネル32と信号をやり取りしつつ、紙送りモータ22やキャリッジモータ24,印刷ヘッドユニット28による印刷動作を制御する。図4は制御回路40の構成を示す説明図である。図示するように、この制御回路40は、CPU41,CPU41で各種演算処理を実行するのに必要なプログラムやデータを予め格納したP−ROM43,CPU41で各種演算処理を実行するのに必要な各種プログラムやデータを一時的に格納するためのメモリであるRAM44,文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ45,メモリカードコントローラ(MCC)47,無線I/F回路48,外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なう回路であるI/F専用回路50などをバスで接続した算術論理演算回路として構成されている。このI/F専用回路50には、印刷ヘッドユニット28の駆動を制御するヘッド駆動回路52や同じく紙送りモータ22およびキャリッジモータ24の駆動を制御するモータ駆動回路54が接続されている。
【0038】
P−ROM43には、RAM44にロードされて実行される各種プログラムやプリンタドライバなどが記憶されている。プリンタドライバには、後述する分担処理B1(図10)やデータ変換処理(図5)等の画像印刷に関する処理の内容および手順を表わすプログラムと、このプログラムの実行に際して用いられるデータが記述されている。このデータには、分担処理B1(図10)において参照される対応マップTM(図6)や、データ変換処理(図5、図10)において用いられる第2参照データS2が含まれている。第2参照データS2は、様々な画質に対応する多数の参照データのうち、使用頻度の高い印刷条件下で用いられる参照データの総称である。この第2参照データS2には、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせが「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」である場合の印刷に適した普通紙用参照データS2aと、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせが「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」である場合の印刷に適した写真用参照データS2bとが含まれている。
【0039】
無線I/F回路48は、プリンタ20の筐体表面に設けられたBluetooth(商標)アダプタ57に接続されている。このBluetoothアダプタ57が、簡易端末90としての携帯電話91や携帯情報端末92からのBluetooth信号(2.4GHz帯の電波)を受信することにより、携帯電話91や携帯情報端末92に保持されたRGBデータを入力することができる。また、I/F専用回路50には、ユニバーサルシリアルバスインタフェース回路が内蔵されており、このユニバーサルシリアルバスインタフェース回路は、プリンタ20の筐体表面に設けられたUSBポート56に接続されている。このUSBポート56に、簡易端末90としてのゲーム装置93やデジタルスチルカメラ94がUSBケーブル59を介して接続されることにより、ゲーム装置93やデジタルスチルカメラ94に保持されたRGBデータを入力することができる。この他、上記のUSBポート56にUSBメモリスティックを接続することや、メモリカードコントローラ47に接続されたメモリカードスロット58にメモリカード81を差し込むことによっても、USBメモリスティックやメモリカード81に保持されたRGBデータを入力することができる。なお、上記したインタフェースの形態は、周辺機器との接続の容易性を考慮して、適宜変更することができる。
【0040】
以上説明したハードウェア構成を有するプリンタ20では、パーソナルコンピュータ10またはプリンタ20でのデータ変換処理の実行によって生成されたCMYデータに基づいて、紙送りモータ22によりプラテン26その他のローラを回転して印刷対象物Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印刷ヘッドユニット28の各インク吐出用ヘッド61〜66のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行ない、印刷対象物P上に多色の画像を形成する。
【0041】
なお、本実施例では、上述のようにピエゾ素子PEを用いてインクを吐出する方式のプリンタ20を用いているが、他の方式によってインクを吐出するプリンタを用いるものとしてもよい。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によってインクを吐出する方式のプリンタや、熱転写方式のプリンタ、レーザプリンタ、白黒印刷のみを行なうプリンタ等、印刷するために画像データの変換を要するあらゆるプリンタに適用することができる。
【0042】
なお、本実施例では、印刷指示端末1のうち、プリンタドライバを備えたパーソナルコンピュータ10では、画像を印刷しようとする際に、使用者が、印刷対象物Pの種類や印刷解像度についての設定内容を選択することが可能である。印刷指示を入力したパーソナルコンピュータ10は、印刷対象物Pの種類や印刷解像度について、上記選択されている設定内容を指定する。仮に、使用者による選択が全くなされなかった場合には、印刷指示に伴って、デフォルトの設定内容である「印刷対象物Pの種類:普通紙/印刷解像度:低」が自動的に指定される。一方、プリンタドライバを格納していない簡易端末90では、画像を印刷しようとする際に印刷対象物Pの種類や印刷解像度を指定することができないので、印刷指示に伴って、「印刷対象物Pの種類:指定なし/印刷解像度:指定なし」という設定内容が自動的に指定される。
【0043】
A−2.データ変換処理の内容
次に、パーソナルコンピュータ10またはプリンタ20によって実行されるデータ変換処理の内容について図5を参照しつつ説明する。図5はデータ変換処理の概要を示すフローチャートである。この処理は、パーソナルコンピュータ10側では、PC制御装置11のCPU11aがハードディスク11eに格納されたプリンタドライバを用いて実行する処理であり、プリンタ20側では、制御回路40のCPU41がP−ROM43に格納されたプリンタドライバを用いて実行する処理である。
【0044】
RGBデータをプリンタ20で印刷する場合には、まず、解像度変換処理(ラスタライザ)を行なう(ステップS100)。解像度変換処理は、RGBデータによって表わされる原画像を印刷対象物Pに印刷するサイズに応じて、原画像の解像度(単位長さ当たりにおける画素の数)を、プリンタの解像度(プリンタが単位長さ当たりに形成するドットの数)に合わせる処理である。こうした原画像の解像度の変更は、プリンタドライバが備える参照データの1つである解像度指示データを参照し、画素を間引いて原画像の画素の数を減らしたり、補間により原画像の画素の数を増やすことによって行なわれる。
【0045】
解像度変換処理が終わると、続いて、色変換処理を行なう(ステップS102)。色変換処理は、R,G,Bの各色の階調値による色の表現方法を、C,M,Yの各色の階調値による色の表現方法に置き換える処理である。こうした置き換えは、プリンタドライバが備える参照データの1つであるLUTを利用して行なわれる。LUTは、R,G,Bの各階調値の組み合わせとC,M,Yの階調値の組み合わせとの対応関係をマップや変換式の形式で規定したものである。この色変換処理では、下色除去も併せて行われる。下色除去とは、C,M,Yの階調値の組み合わせからK(黒色)成分を抽出し、C,M,Yの階調値によって表わされたデータを、C・M・Y・Kの階調値によって表わされるデータに変換する処理である。
【0046】
色変換処理を終了すると、続いて、ハーフトーニング処理を行なう(ステップS104)。ハーフトーニング処理は、C・M・Y・K各色について256通りの階調値で表わされたデータを、より少ない階調値で表現されたデータに変換する処理である。プリンタでは、C・M・Y・K各色の階調は、基本的には、印刷用紙上にドットを形成する/しないという二通りで表現されるため、表現し得る階調値が少ないからである。こうした階調変換は、プリンタドライバが備える参照データの1つである階調変換指示データを参照して行なわれる。
【0047】
ハーフトーニング処理が終了すると、続いて、画素の再配置処理を行なう(ステップS106)。この処理は、ハーフトーニング処理によってドット形成の有無を表す形式に変換された画像データを、プリンタ20に転送すべき順序に並べ替える処理である。すなわち、前述のようにプリンタ20は、キャリッジ30の主走査と副走査を繰り返しながら、印刷ヘッドユニット28を駆動して、印刷対象物Pの上にドットを形成していく。画素再配置処理では、キャリッジ30の動きを考慮して、印刷ヘッドユニット28でドットを形成する順序になるように、ドットの有無を表すデータを並べ替えるのである。こうした並べ替えにより、プリンタ20が印刷可能な形式のCMYデータが生成される。
【0048】
A−3.印刷指示端末1からの指示に基づく分担印刷処理の内容:
次に、上記の印刷システムGH1において、印刷指示端末1からの印刷指示に基づいてパーソナルコンピュータ10およびプリンタ20が実行する特徴的な処理である分担印刷処理の内容について図6ないし図11を参照しつつ説明する。
【0049】
図6は分担印刷処理において参照される対応マップTMの一例を示す説明図である。この対応マップTMは、印刷指示端末1側で指定され得る種々の印刷条件のうちの印刷対象物Pの種類、印刷解像度の設定および印刷指示装置の種類という3つの条件に着目し、この3つの条件の内容に応じて印刷条件の種類を規定すると共に、この印刷条件の種類に応じてデータ変換処理を実行する主体とデータ変換処理に用いる参照データを規定したものである。
【0050】
図示するように、対応マップTMでは、印刷解像度の設定が「高」とされ、高画質での印刷が要求されている場合には、印刷対象物Pの種類に拘らず、印刷条件の種類を「第1の条件」と規定すると共に、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせが「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」や「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」という使用頻度の高いものである場合に、印刷条件の種類を「第2の条件」と規定し、これら以外の印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせである場合には、印刷条件の種類を「第3の条件」と規定している。なお、印刷解像度の設定が「高」,「中」,「低」の区別は、パーソナルコンピュータ10やプリンタ20が、印刷解像度の具体的な設定値に基づいて判断する。例えば、設定値が300dpi未満の場合には「低」、設定値が300〜600dpiの場合には「中」、設定値が600dpiを超える場合には「高」、のように判断される。
【0051】
また、対応マップTMでは、印刷条件の種類が、高画質での印刷が要求されている「第1の条件」である場合には、データ変換処理の内容が精細となることを考慮して、データ変換処理の実行主体を、プリンタ20よりも処理能力の高い「パーソナルコンピュータ10」と規定し、データ変換処理に用いる参照データを、パーソナルコンピュータ10自身のハードディスク11eに格納された「第1参照データS1」と規定している。一方、印刷条件の種類が「第2の条件」または「第3の条件」である場合には、いずれもデータ変換処理の実行主体を「プリンタ20」と規定しているが、「第2の条件」である場合には、使用頻度の高い設定であることを考慮し、データ変換処理に用いる参照データを、プリンタ20自身のP−ROM43に格納された「第2参照データS2(詳しくは、「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」という組み合わせに適した普通紙用参照データS2a、または、「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」という組み合わせに適した写真用参照データS2b)」と規定している。一方、印刷条件の種類が「第3の条件」である場合には、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせの適合性が低く、かつ、使用頻度が低い設定であることを考慮し、データ変換処理に用いる参照データを、パーソナルコンピュータ10のハードディスク11eに格納された「第3参照データS3」と規定している。
【0052】
更に、対応マップTMでは、印刷対象物Pの種類や印刷解像度の設定が「指定なし」である場合には、印刷指示がなされた印刷指示端末1がプリンタドライバを備えていない簡易端末90であるとみなして、印刷条件の種類を「第2の条件」と規定し、プリンタ20が、処理能力の低い簡易端末90に代わって、自身のP−ROM43に格納された第2参照データS2(詳しくは、上述した普通紙用参照データS2a)を用いてデータ変換処理を行なう旨を規定している。
【0053】
こうした対応マップTMを参照して実行される分担印刷処理の概要を、図7にブロック図として示した。図示するように、印刷条件の種類が「第1の条件」である場合には、印刷指示を行なったパーソナルコンピュータ10が、RAM11cに展開された印刷対象画像を表わすRGBデータに対して、ハードディスク11e内の第1参照データS1を用いたデータ変換処理を行ない、データ変換処理によって生成されたCMYデータをプリンタ20に転送する。一方、印刷条件の種類が「第2の条件」である場合には、印刷指示を行なったパーソナルコンピュータ10または90簡易端末90は、印刷対象画像を表わすRGBデータをプリンタ20に転送し、このRGBデータを受け取ったプリンタ20は、RAM44に展開されたRGBデータに対して、P−ROM43内の第2参照データS2を用いたデータ変換処理を行ない、CMYデータを生成する。更に、印刷条件の種類が「第3の条件」である場合には、印刷指示を行なったパーソナルコンピュータ10は、この場合のデータ変換処理に用いられる第3参照データS3をハードディスク11eから読み出し、読み出した第3参照データS3を、印刷対象画像を表わすRGBデータと共にプリンタ20に転送する。第3参照データS3およびRGBデータを受け取ったプリンタ20は、この2つのデータをRAM44に展開し、RGBデータに対して第3参照データS3を用いたデータ変換処理を行ない、CMYデータを生成する。こうしてパーソナルコンピュータ10から転送されたCMYデータやプリンタ20によって生成されたCMYデータはRAM44に展開され、展開されたCMYデータに基づいて印刷対象物P上に多色の画像が形成される。
【0054】
こうした分担印刷処理の内容および手順を分担印刷処理ルーチンとして図8ないし図11に示した。図8では、分担印刷処理のうち、パーソナルコンピュータ10側でPC制御装置11のCPU11aが実行する処理の内容をルーチンA1として表わし、図10では、プリンタ20側でPC制御回路40のCPU41が実行する処理の内容をルーチンB1として表わしている。
【0055】
図8に示すパーソナルコンピュータ10側のルーチンA1は、使用者による入力装置15の操作に基づいて、印刷指示端末1としてのパーソナルコンピュータ10が、ある画像についての印刷指示を表わすデータ(以下、印刷指示データLという)を入力したときに起動する。この印刷指示データLには、プリンタ20に対する印刷処理の実行開始命令を表わすデータ(以下、開始命令データL1という)のほか、印刷対象画像について設定された種々の印刷条件を表わすデータ(以下、印刷条件データL2という)と、印刷対象画像を表わす画像ファイルのパスを表わすデータ(以下、パスデータL3という)とが含まれている。
【0056】
ルーチンA1が起動されると、まず、CPU11aは、プリンタドライバを起動し(ステップS300)、入力した印刷指示データLに含まれているパスデータL3に基づいて、印刷対象画像を表わすRGBデータをRAM11cに展開する処理を行なう(ステップS310)。次に、CPU11aは、入力した印刷指示データLに含まれている印刷条件データL2に基づいて、印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定という2つの印刷条件について、その内容を特定し(ステップS320)、特定した2つの印刷条件の内容について、対応マップTMを参照し、印刷条件の種類を、第1の条件,第2の条件,第3の条件のいずれかに決定する処理を行なう(ステップS330)。
【0057】
こうして印刷条件の種類が決定された後、CPU11aは、印刷条件の種類ごとに規定された対応マップTMの内容に従い、データ変換処理を実行する(ステップS340〜S375)。具体的には、ステップS340の処理において、印刷条件の種類が第1の条件であると判断した場合には、CPU11aは、ステップS310の処理において展開されたRGBデータを、ハードディスク11eに格納された第1参照データS1を参照して、CMYデータに変換する処理を行ない(ステップS350)、この変換処理によって生成されたCMYデータ(以下、第1CMYデータという)をRAM11cに展開する。続いて、CPU11aは、開始命令データL1,印刷条件データL2および第1CMYデータの組を、プリンタ20への印刷要求を表わすデータ(以下、印刷要求データLPという)として、プリンタ20に出力する処理を行なう(ステップS355)。
【0058】
一方、ステップS340の処理において、印刷条件の種類が第2の条件であると判断した場合には、CPU11aは、開始命令データL1,印刷条件データL2およびステップS310の処理において展開されたRGBデータの組を、印刷要求データLPとして、プリンタ20に出力する処理を行なう(ステップS360)。また、ステップS340の処理において、印刷条件の種類が第3の条件であると判断した場合には、CPU11aは、まず、対応マップTMにデータ変換処理に用いる参照データとして規定された第3参照データS3を、ハードディスク11eからRAM11cに展開する処理を行なう(ステップS370)。次に、CPU11aは、開始命令データL1,印刷条件データL2、ステップS370の処理において展開された第3参照データS3およびステップS310の処理において展開されたRGBデータの組を、印刷要求データLPとして、プリンタ20に出力する処理を行なう(ステップS355)。
【0059】
図9は印刷要求データLPのデータ構造を、第3参照データS3が含まれている場合を例として示す説明図である。図示するように、印刷要求データLPは、ヘッダ部を先頭として、開始命令データL1,第3参照データS3,印刷条件データL2,RGBデータ,フッダ部の順に配列されている。異なる各データ間には、各データの始まりと終わりを表わす区切り情報が、プリンタ20側のCPU41が認識可能な形式で付与されている。こうしたデータ構造により、第3参照データS3は、RGBデータよりも先に出力される。
【0060】
こうしてステップS355、ステップS360、ステップS375の出力処理が行なわれた後、CPU11aは、プリンタドライバを停止し(ステップS390)、本ルーチンを終了する。
【0061】
続いて、プリンタ20側の処理について説明する。図10に示すプリンタ20側のルーチンB1は、印刷指示端末1としてのパーソナルコンピュータ10から出力された印刷要求データLPを入力したとき、または、印刷指示端末1としての簡易端末90から出力された、画像についての印刷要求を表わすデータ(以下、印刷要求データMPという)を入力したときに起動する。印刷要求データMPは、使用者の操作により簡易端末90にある画像についての印刷指示がなされたとき、この印刷指示に基づいて簡易端末90が生成したデータである。この印刷要求データMPには、プリンタ20に対する印刷処理の実行開始命令を表わすデータ(以下、開始命令データM1という)のほか、印刷対象画像を表わすRGBデータが含まれている。
【0062】
ルーチンB1が起動されると、まず、CPU41は、プリンタドライバを起動し(ステップS500)、印刷指示端末1から出力された印刷要求データLP,MPを順次に入力する処理を行なう(ステップS510)。
【0063】
続いて、入力した印刷要求データLP,MPに基づいて、印刷条件の種類を判断する処理を行なう(ステップS520)。この処理の内容および手順を、印刷条件種類判断処理ルーチンとして図11に示した。本実施例では、プリンタ20側での印刷条件の種類の判断手法として、上記したパーソナルコンピュータ10による判断手法(図8のステップS320〜S330:印刷条件データL2に基づいて特定された印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定の内容について対応マップTMを参照する手法)とは異なる手法を採用している。具体的には、図11に示す印刷条件種類判断処理では、入力した印刷要求データLP,MPに含まれているデータの種類を判別することによって印刷条件の種類を決定している。即ち、CPU41は、まず、入力した印刷要求データLP,MPに参照データ(本実施例の場合には、第3参照データS3)が含まれている場合には、印刷条件の種類が第3の条件であると判断し(ステップS600、S610)、入力した印刷要求データLP,MPにCMYデータ(本実施例の場合には、第1CMYデータ)が含まれている場合には、印刷条件の種類が第1の条件であると判断する(ステップS620、S630)。入力した印刷要求データLP,MPに、参照データ,CMYデータのいずれも含まれていない場合には、CPU41は、印刷条件の種類が第2の条件であると判断する(ステップS640)。よって、簡易端末90から印刷要求データMPを入力した場合には、印刷要求データMPには参照データおよびCMYデータが含まれていないので、印刷条件の種類が第2の条件であると判断される。
【0064】
続いて、CPU41は、判断した印刷条件の種類について対応マップを参照し、対応マップTMの内容に従ってデータ変換処理を実行する(ステップS530〜S570)。具体的には、ステップS520の処理において、印刷条件の種類が第3の条件であると判断した場合には、CPU41は、まず、先に入力した第3参照データS3をRAM44に展開する処理を行なう(ステップS530)。この後、第3参照データS3に続いてRGBデータが入力された場合に、CPU41は、RGBデータをRAM44に展開し(ステップS535、S540)、このRGBデータを、RAM44に展開された第3参照データS3を参照してCMYデータに変換し(ステップS545)、このデータ変換処理によって生成されたCMYデータ(以下、第3CMYデータという)を、RAM44に展開する処理を行なう(ステップS580)。
【0065】
一方、ステップS520の処理において、印刷条件の種類が第2の条件であると判断した場合には、CPU41は、まず、入力したRGBデータをRAM44に展開する処理を行なう(ステップS550)。次に、CPU41は、入力した印刷条件データL2に基づいて印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定の内容を特定した後(ステップS560)、特定した2つの印刷条件の内容について対応マップTMを参照し、第2参照データS2として用いるデータを、普通紙用参照データS2aまたは写真用参照データS2bのいずれかに決定する処理を行なう(ステップS565)。この場合、簡易端末90から入力された印刷要求データMPのように、印刷要求データMPに印刷条件データが含まれていない場合には、CPU41は、対応マップTMを参照して、印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定の内容を「指定なし」と判断する。よって、簡易端末90から印刷要求データMPを入力した場合には、第2参照データS2として用いるデータが普通紙用参照データS2aに決定される。
【0066】
次に、CPU41は、決定された参照データをP−ROM43から読み出し、読み出した参照データを参照しながら、ステップS550の処理において展開されたRGBデータをCMYデータに変換し(ステップS570)、このデータ変換処理によって生成されたCMYデータ(以下、第2CMYデータという)を、RAM44に展開する処理を行なう(ステップS580)。また、ステップS520の処理において、印刷条件の種類が第1の条件であると判断した場合には、CPU41は、データ変換処理を行なうことなく、入力した第1CMYデータをそのままRAM44に展開する処理を行なう(ステップS580)。
【0067】
続いて、CPU41は、RAM44に展開されたCMYデータと印刷条件データL2の組を印刷ジョブとして登録し、この印刷ジョブを実行する処理を行なう(ステップS585)。これにより、印刷指示端末1において印刷指示がなされた印刷対象画像が、印刷設定に従って印刷対象物Pに印刷される。こうした印刷ジョブの実行が終了した後、CPU41は、プリンタドライバを停止し(ステップS590)、本ルーチンを終了する。
【0068】
なお、上記実施例における分担印刷処理ルーチンB1では、印刷要求データLP,MPに含まれている第3参照データS3や第1CMYデータを入力した後に、印刷条件の種類を判断したが(ステップS510〜S520)、参照データやCMYデータ,RGBデータの入力に先立って、印刷条件の種類を判断することも可能である。具体的には、印刷指示端末1が、印刷要求データLP,MPのヘッダ部に、第3参照データS3や第1CMYデータが付属しているか否かを表わす情報を記述しておき、この印刷要求データLP,MPを入力したプリンタ20が、ヘッダ部に記述された情報を読み取る構成とすればよい。こうすれば、プリンタ20は、参照データやCMYデータ,RGBデータの入力を待たずに、直ちに印刷条件の種類を判断することが可能となる。
【0069】
A−4.作用効果:
以上説明した本実施例の印刷システムGH1では、印刷指示がなされたパーソナルコンピュータ10において、指定された印刷条件が第3の条件であると判断した場合に、プリンタ20は、印刷対象画像を表わすRGBデータと、このRGBデータのCMYデータへの変換に用いられる第3参照データS3を変換用参照データとして入力する。この第3参照データS3の入力は、RGBデータの入力に先立って行なわれる。従って、データ変換処理に用いられるRGBデータおよび第3参照データS3が、データ変換処理を行なうプリンタ20のRAM44に一度に展開されてしまうことがなく、RAM44への負荷を軽減することができる。また、変換対象としてのRGBデータの入力よりも先に、変換の基準となる第3参照データS3の入力が行なわれることで、RAM44上で、第3参照データS3についての展開領域が優先的に確保される。従って、欠落なき第3参照データS3を用いてデータ変換処理を正確に実行することができる。また、プリンタ20は、まず第3参照データS3をRAM44に展開して、RGBデータを変換する準備をすることが可能となり、プリンタ20側でのデータ変換処理をより円滑に行なうことができる。
【0070】
本実施例の印刷システムGH1では、プリンタ20に印刷指示を行なうパーソナルコンピュータ10が、パーソナルコンピュータ10側で指定された所定の印刷条件についての設定内容に応じて、3種類の参照データS1〜S3の中から1種類の参照データを変換用参照データとして特定し、こうして特定された変換用参照データをプリンタ20が入力する。従って、プリンタ20は、パーソナルコンピュータ10側で指定された所定の印刷条件についての設定内容の実現に適した種類の参照データを、変換用参照データとして受け取ることが可能となり、この結果、限られたメモリ領域を有効に活用することができる。例えば、印刷条件についての設定内容とは無関係な参照データまでがプリンタ20に入力され、RAM44上の記憶領域を消費してしまうといった事態を防止することができる。しかも、本実施例の印刷システムGH1では、印刷解像度と印刷対象物Pの種類という印刷条件についての設定内容に応じて変換用参照データの特定を行なうので、プリンタ20は、CMYデータに要求されたドットの細かさが印刷対象物P上で実現される程度を考慮して特定された参照データを、変換用参照データとして入力することができる。
【0071】
本実施例の印刷システムGH1では、パーソナルコンピュータ10が、所定の印刷条件についての設定内容に基づいて、データ変換処理の実行主体をパーソナルコンピュータ10またはプリンタ20のいずれかに決定し、実行主体がプリンタ20に決定された場合に、この後にプリンタ20でデータ変換処理が行われることを考慮して、変換用参照データとしての第3参照データS3がプリンタ20に入力される。従って、プリンタ20側でデータ変換処理が行われない場合にまで、プリンタ20に変換用参照データが入力され、プリンタ20のRAM44を占有してしまうということがない。
【0072】
本実施例の印刷システムGH1では、プリンタ20が、3種類の参照データS1〜S3のうちの第2参照データS2を予めP−ROM43に保持しており、パーソナルコンピュータ10は、所定の印刷条件についての設定内容に応じて特定された変換用参照データが、プリンタ20に予め保持された第2参照データS2であるか否かを判断し、上記特定された変換用参照データがプリンタ20に予め保持されたものでないと判断した場合に、変換用参照データをプリンタ20に出力する。こうすれば、プリンタ20が予め保持している参照データと同じ種類の参照データが、変換用参照データとして印刷装置に入力されてしまうことがなく、RAM44上の記憶領域の無駄を防止することができる。
【0073】
本実施例では、データ変換処理に用いられる3種類の参照データS1〜S3には、少なくとも、R,G,Bによって表わされる色情報をプリンタ20で表現可能なC,M,Yの色情報に変換する色変換用データであるLUTが含まれている。これにより、データ変換処理に用いられるLUTを外部からプリンタ20に入力することが可能となる。従って、多様な画質を実現するために多種類のLUTが必要となる場合に、多種類のLUTをプリンタ20側に予め格納しておく必要がなくなり、プリンタ20のコストを低減することができる。
【0074】
B.変形例:
以上本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。
【0075】
例えば、上記実施例におけるプリンタ20側の分担印刷処理(図10)における印刷要求データLPの入力処理(図10のステップS510)において、CPU41が、第3参照データS3の入力を完了を確認した後に、RGBデータの入力を許可することとしてもよい。こうした処理の手順および内容を図12に示した。この図12では、処理フローに加えて、各処理ステップに対応するRAM44の状態を表わす模式図を示している。この模式図では、RAM44上における第3参照データS3の展開領域,RGBデータの展開領域を、それぞれ、斜線ハッチング,点模様のハッチングを用いて示している。
【0076】
図示するように、印刷要求データLPの入力が開始されると、CPU41は、入力後におけるRAM44の状態の検出を開始する処理を行なう(ステップS700)。こうした処理は、CPU41が、P−ROM43に予め格納されたRAM44の状態を検出するプログラムを実行することによって行なわれる。こうした処理により、RAM44上の使用されている(または、使用されていない)領域や容量についての情報が得られる。
【0077】
この後、CPU41は、第3参照データS3の入力が開始されたか否かを判断する処理を行なう(ステップS730)。この判断は、例えば、印刷要求データLPに第3参照データS3の始まりを表わす区切り情報(以下、始端情報という)を含ませておき、この始端情報をCPU41が認識すること等によって、実現することができる。第3参照データS3の入力が開始されたと判断した場合には、続いて、第3参照データS3の入力が終了したか否かを判断する処理を行なう(ステップS740)。この判断は、例えば、印刷要求データLPに第3参照データS3の終わりを表わす区切り情報(以下、終端情報という)を含ませておき、この終端情報をCPU41が認識すること等によって、実現することができる。また、印刷要求データLPに、上記の終端情報に加えて、第3参照データS3の総容量を表わす総量データを含ませておき、入力した第3参照データS3の容量と総量データによって表わされる容量とを照合して両者が一致した場合に、第3参照データS3の入力が終了したと判断する構成を採ってもよい。
【0078】
第3参照データS3の入力が終了したと判断した場合には、CPU41は、RAM44の非使用領域をRGBデータの展開領域として確保する処理を行なった後(ステップS750)、RGBデータの入力を許可する処理を行なう(ステップS760)。この後、CPU41は、RGBデータを含む印刷要求データLPの入力が終了したと判断した場合に、RAM44の状態の検出処理を終了し(ステップS790)、次の処理(図10のステップS520)に移る。こうした処理が行なわれることにより、第3参照データS3のRAM44への展開がなされてから、RGBデータの入力が開始される。従って、CMYデータに変換するための基準となる第3参照データS3を確実にRAM44に保持することができる。
【0079】
上記実施例における印刷条件種類判断処理(図11)では、入力した印刷要求データLP,MPに参照データやCMYデータが含まれているか否かによって印刷条件の種類を判断したが、こうした印刷条件の種類の判断を、印刷要求データLP,MPに参照データやRGBデータが含まれているか否かによって行なうこととしてもよい。
【0080】
上記実施例における印刷条件種類判断処理では、入力した印刷要求データLP,MPに含まれているデータの種類を判別することによって印刷条件の種類を決定したが、このようなデータの種類の判別以外の他の手法によって印刷条件の種類を決定してもよく、また、印刷要求データLP,MPに含まれているデータの種類の判別による手法と他の手法とを併用して、印刷条件の種類を判断することとしても差し支えない。このような他の手法としては、例えば、プリンタ20が、図11に示した印刷条件種類判断処理に替えて、図8に示したステップS320〜S330と同様の処理を行ない、入力した印刷条件データL2に基づいて印刷対象物Pの種類および印刷解像度の設定の内容を特定し、この内容について対応マップTMを参照することにより、印刷条件の種類を、第1の条件,第2の条件,第3の条件のいずれかに決定する手法を考えることができる。こうすれば、CMYデータに要求されるドット数に適した参照データを、ドットの細かさが印刷対象物上で実現される程度を考慮して、プリンタ20側で決定することができる。
【0081】
また、プリンタ20が参照する対応マップTMには、印刷解像度の設定が「高」である場合には、印刷条件の種類が「第1の条件」、データ変換処理の実行主体が「パーソナルコンピュータ10」と規定されており、プリンタ20がデータ変換処理を実行することになる他の種類の印刷条件については、印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせが「印刷対象物P:普通紙/印刷解像度:低」や「印刷対象物P:写真用紙/印刷解像度:中」という使用頻度の高いものである場合に、印刷条件の種類が「第2の条件」と規定され、これら以外の印刷対象物Pの種類と印刷解像度の設定の組み合わせである場合に、印刷条件の種類が「第3の条件」と規定されている。従って、情報量の多いCMYデータへの変換処理がプリンタ20側で行われることを回避することができると共に、プリンタ20側において、情報量の多くないCMYデータへの変換処理のうち、印刷解像度と印刷対象物の種類とが適合している場合の変換処理を、予め保持された参照データ(第2参照データS2)を用いて迅速に行うことができる。
【0082】
上記実施例の印刷システムGH1では、印刷指示端末1側で設定された印刷条件のうち、印刷解像度、印刷対象物Pの種類、印刷指示がなされた印刷指示端末1の種類という3つの条件に基づいて印刷条件の種類を判断したが、上記の3つの条件以外の印刷条件に基づいて、印刷条件の種類を判断することとしても差し支えない。こうした他の印刷条件としては、以下のものを考えることができる。例えば、プリンタ20に関する印刷条件としては、上記の印刷解像度、印刷対象物Pの種類のほかにも、プリンタ20の機種、印刷に使用するインクの種類などを考えることができる。また、印刷指示端末1に関する印刷条件としては、上記の印刷指示端末1の種類のほか、画像データの形式(例えば、RGB、YCbCr等)などを考えることができる。
【0083】
上記実施例における分担印刷処理では、プリンタ20は、印刷要求データMPに、参照データ、CMYデータおよび印刷条件データのいずれもが含まれていない場合に、印刷指示がなされた印刷指示端末1が簡易端末90であると判断したが、これ以外の手法で簡易端末90か否かを判断することも可能である。例えば、印刷指示端末1からの印刷指示を表わすデータに端末固有のIDを含ませておき、このIDをプリンタ20が解読して、簡易端末90であるか否かを識別する構成などを考えることができる。
【0084】
また、このような簡易端末90からの印刷指示であることをプリンタ20が認識する手段を設けることなく、上記の印刷システムGH1を、上記実施例におけるパーソナルコンピュータ10やプリンタ20のような、データ変換処理能力を備えた機器の間で行なわれる処理に限定することも可能である。このような限定をした場合には、パーソナルコンピュータ10のPC制御装置11やプリンタ20の制御回路40は、共に、RGBデータからCMYデータへの変換処理を行なうデータ変換装置として把握することができる。
【0085】
上記実施例では、データ変換処理に用いる参照データを3種類に区分し、このうちの2種類の参照データ(第1参照データS1、第3参照データS3)をパーソナルコンピュータ10側に、1種類の参照データ(第2参照データS2)をプリンタ20側に、それぞれ予め格納した。こうした参照データの区分数は、プリンタ20において実現可能な画質の種類を考慮して、適宜、変更することが可能であり、例えば、4種類以上に区分された参照データを、パーソナルコンピュータ10とプリンタ20とに分担して格納しても良いし、2種類に区分された参照データを、パーソナルコンピュータ10とプリンタ20とに分担して格納しても良い。
【0086】
上記実施例では、データ変換処理に用いる参照データ(第1参照データS1、第2参照データS2、第3参照データS3)を予めパーソナルコンピュータ10やプリンタ20に格納したが、こうした各参照データを、CD−ROMやメモリカード等の記録媒体からのロードすることにより、パーソナルコンピュータ10やプリンタ20に提供することも可能であり、また、ネットワーク上に置かれたサーバからダウンロードすることにより、パーソナルコンピュータ10やプリンタ20に提供することも可能である。こうした構成例を、第1変形例,第2変形例として、それぞれ、図13,図14に示した。
【0087】
図13は、パーソナルコンピュータ10がネットワークに接続されている場合における印刷システムGH2の構成例である。図示するように、第1参照データS1、第2参照データS2、第3参照データS3は、インターネットIN上のサーバSVに予め格納されている。パーソナルコンピュータ10は、第1参照データS1、第2参照データS2、第3参照データS3の少なくとも1つを、データ変換処理の必要に応じてモデム87を介してダウンロードし、RAM11cやハードディスク11eに記憶すると共に、第2参照データS2、第3参照データS3をプリンタ20に転送するのである。こうした構成において、プリンタ20がネットワークに接続されている場合には、第2参照データS2、第3参照データS3をプリンタ20がダウンロードすることも可能である。こうした第1変形例によれば、データ変換処理に用いられる参照データの種類が追加または変更された場合であっても、この追加や変更に対応する参照データをサーバSVに記憶させておくことで、追加や変更に対応する参照データを、ネットワークを介してパーソナルコンピュータ10またはプリンタ20に供給することが可能となる。従って、将来的に、プリンタ20について印刷画質を更に良好化する改良がなされた場合に、この改良に伴う参照データの追加や変更に柔軟に対応することができる。
【0088】
図14は、簡易端末90およびプリンタ20がネットワークに接続されている場合における印刷システムGH3の構成例である。図示するように、第2参照データS2は、インターネットIN上のサーバSVに予め格納されている。プリンタ20は、第2参照データS2を、データ変換処理の必要に応じてダウンロードし、RAM44等の記憶装置に記憶するのである。こうした第2変形例によっても、将来的な印刷画質の良好化に伴う参照データの追加や変更に柔軟に対応することができる。なお、上記第2変形例の場合において、第2参照データS2をプリンタ20にダウンロードするタイミングについては、種々のタイミングを考えることができる。例えば、プリンタ20が、簡易端末90からの印刷要求データMPを入力したときに、ダウンロードを開始してもよい。また、簡易端末90からの印刷要求をインターネットINを通じて受けたサーバSVが、この印刷要求をプリンタ20からの要求であると解釈し、第2参照データS2を、インターネットINを介してプリンタ20に送信することとしてもよい。
【0089】
また、図14に示したように簡易端末90およびプリンタ20がインターネットINに接続されている場合には、インターネットIN上のサーバSVに、印刷対象画像を表わすRGBデータと各参照データS1〜S3を予め格納しておいても差し支えない。こうした構成例を第3変形例として図15に示した。この第3変形例の印刷システムGH4では、簡易端末90からの印刷要求をインターネットINを通じて受けたサーバSVが、この印刷要求をプリンタ20からの要求であると解釈した上で、この印刷要求に含まれている印刷条件に基づいて各参照データS1〜S3の中から変換用参照データを特定し、この変換用参照データを、印刷対象画像を表わすRGBデータと共に、インターネットINを介してプリンタ20に送信する。この場合において、変換用参照データは、上記実施例の場合と同様に、印刷対象画像を表わすRGBデータに先立って、プリンタ20に送信されるので、プリンタ20は、第3参照データS3を入力した後に、RGBデータを入力することになる。従って、第3変形例の印刷システムGH4によれば、上記実施例の場合と同様に、RAM44への負荷を軽減することが可能となると共に、欠落なき変換用参照データを用いた正確なデータ変換処理を円滑に実行することができる。加えて、プリンタ20での印刷に際して、簡易端末90が印刷対象画像を表わすRGBデータを保持したり、このRGBデータの受信を可能とすべく、プリンタ20側に簡易端末90専用のインタフェースを設けたりする必要がなくなるので、簡易端末90を用いた印刷についての自由度や汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例である印刷システムGH1の概略構成を示す説明図である。
【図2】パーソナルコンピュータ10が備えるPC制御装置11の構成を示す説明図である。
【図3】プリンタ20の概略構成を示す説明図である。
【図4】制御回路40の構成を示す説明図である。
【図5】データ変換処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】対応マップTMの一例を示す説明図である。
【図7】分担印刷処理の概要を示すブロック図である。
【図8】パーソナルコンピュータ10側で実行される分担処理ルーチンA1を示すフローチャートである。
【図9】印刷要求データLPのデータ構造を例示した説明図である。
【図10】プリンタ20側で実行される分担処理ルーチンB1を示すフローチャートである。
【図11】印刷条件種類判断処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】印刷要求データLPの入力処理の変形例を示すフローチャートである。
【図13】第1変形例を示す説明図である。
【図14】第2変形例を示す説明図である。
【図15】第3変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1...印刷指示端末
10...パーソナルコンピュータ
11...PC制御装置
11a...CPU
11b...ROM
11c...RAM
11d...ディスクドライブコントローラ
11e...ハードディスク
11f...入力コントローラ
11g...ディスプレイコントローラ
11h...パラレル入出力インタフェース
11i...シリアル入出力インタフェース
14...ディスプレイ
15...入力装置
20...プリンタ
22...モータ
24...キャリッジモータ
26...プラテン
28...印刷ヘッドユニット
30...キャリッジ
32...操作パネル
34...摺動軸
36...駆動ベルト
38...プーリ
39...位置検出センサ
40...制御回路
41...CPU
43...P−ROM
44...RAM
45...キャラクタジェネレータ
47...メモリカードコントローラ
50...I/F専用回路
52...ヘッド駆動回路
54...モータ駆動回路
56...コネクタ
58...メモリカードスロット
61〜66...インク吐出用ヘッド
70a...黒インク用カートリッジ
70b...カラーインク用カートリッジ
81...メモリカード
87...モデム
90...簡易端末
91...携帯電話
92...携帯情報端末
93...ゲーム装置
94...デジタルスチルカメラ
GH1〜4...印刷システム
IN...インターネット
Ip...粒子
LP,MP...印刷要求データ
Nz...ノズル
P...印刷対象物
PE...ピエゾ素子
S1...第1参照データ
S2...第2参照データ
S2a...普通紙用参照データ
S2b...写真用参照データ
S3...第3参照データ
SV...サーバ
TM...対応マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の端末からの印刷指示を受けて、画像の印刷を行なう印刷装置であって、
印刷指示がなされた画像である印刷対象画像を表わす画像データを入力する画像データ入力手段と、
前記画像データを印刷可能な形式の印刷データに変換するための変換用参照データを、前記画像データの入力に先立って、前記端末から入力し、メモリに記憶する参照データ入力手段と、
前記端末からの印刷指示がなされた場合に、前記予め入力した変換用参照データを参照して、前記入力した画像データを、前記印刷データに変換する変換手段と
を備えた印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
少なくとも前記変換用参照データの入力時におけるメモリの状態を検出する状態検出手段と、
該検出されたメモリの状態に基づいて、前記印刷対象画像を表わす画像データの入力を開始する入力開始手段を備えた
印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記端末は、該端末側で指定された所定の印刷条件についての設定内容に応じて、複数の変換用参照データの中から1つの変換用参照データを特定する特定手段を備えており、
前記参照データ入力手段は、前記特定手段により特定された変換用参照データを入力する手段である
印刷装置。
【請求項4】
前記特定手段は、少なくとも印刷解像度と印刷対象物の種類という前記印刷条件についての設定内容に応じて前記変換用参照データの特定を行なう手段である請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の印刷装置であって、
前記端末は、該端末側で指定された所定の印刷条件についての設定内容に基づいて、前記画像データを印刷データに変換する処理の実行主体を前記端末または前記印刷装置のいずれかに決定する実行主体決定手段を備え、
前記参照データ入力手段は、前記実行主体決定手段によって前記実行主体が前記印刷装置に決定された場合に、前記変換用参照データを入力する手段である
印刷装置。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれかに記載の印刷装置であって、
所定の種類の前記変換用参照データを予め保持する保持手段を備え、
前記端末は、前記特定手段により特定された変換用参照データが、前記予め保持された種類の変換用参照データであるか否かを判断する判断手段を備えており、
前記参照データ入力手段は、前記判断手段によって前記変換用参照データが前記予め保持された種類の変換用参照データでないと判断された場合に、前記特定手段により特定された変換用参照データを入力する手段である
印刷装置。
【請求項7】
前記印刷装置への入力の対象となる変換用参照データには、少なくとも、前記画像データによって表わされる色情報を前記印刷装置で表現可能な色情報に変換する色変換用データが含まれている請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記印刷装置への入力の対象となる変換用参照データが、通信回線を介して前記端末または前記印刷装置に供給される請求項1ないし7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
印刷装置に接続された所定の端末において、コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データによって表わされる画像についての印刷指示がなされた場合に、該端末が、前記印刷指示がなされた画像である印刷対象画像を表わす画像データを前記印刷装置に出力し、該画像データを入力した印刷装置が、該画像データを所定の変換用参照データを用いて印刷可能な形式の印刷データに変換するデータ変換処理を行なうデータ変換システムであって、
前記端末は、
前記印刷指示がなされたとき、前記印刷対象画像について指定された所定の印刷条件についての設定内容を特定する設定内容特定手段と、
該特定された設定内容に応じて、複数の前記変換用参照データの中から1つの変換用参照データを特定する参照データ特定手段と、
該特定された前記変換用参照データを、前記印刷対象画像を表わす画像データの出力に先立って前記印刷装置に出力する出力手段と
を備え、
前記印刷装置は、前記出力手段により出力された変換用参照データ,画像データを、この順に入力してメモリに展開し、前記データ変換処理を行なう
データ変換システム。
【請求項10】
前記変換用参照データを構成するデータの少なくとも一部を、通信回線を介して前記端末または前記印刷装置に供給するデータ供給手段を備えた請求項9に記載のデータ変換システム。
【請求項11】
所定の端末からの印刷指示を受けて、画像の印刷を行なう方法であって、
印刷指示がなされた画像である印刷対象画像を表わす画像データを入力し、
前記画像データを印刷可能な形式の印刷データに変換するための変換用参照データを、前記画像データの入力に先立って前記端末から入力して、メモリに記憶し、
前記端末からの印刷指示がなされた場合に、前記予め入力した変換用参照データを参照して、前記入力した画像データを、前記印刷データに変換する
印刷方法。
【請求項12】
印刷装置に接続された所定の端末において、コンピュータによる取り扱いが可能な形式の画像データによって表わされる画像についての印刷指示がなされた場合に、該端末が、前記印刷指示がなされた画像である印刷対象画像を表わす画像データを前記印刷装置に出力し、該画像データを入力した印刷装置が、該画像データを所定の変換用参照データを用いて印刷可能な形式の印刷データに変換するデータ変換処理を行なう方法であって、
前記端末が、
前記印刷指示がなされたとき、前記印刷対象画像について指定された所定の印刷条件についての設定内容を特定し、
該特定された設定内容に応じて、複数の前記変換用参照データの中から1つの変換用参照データを特定し、
該特定された前記変換用参照データを、前記印刷対象画像を表わす画像データの出力に先立って前記印刷装置に出力し、
前記印刷装置が、前記出力された変換用参照データ,画像データを、この順に入力してメモリに展開し、前記データ変換処理を行なう
データ変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−137077(P2006−137077A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328392(P2004−328392)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】