説明

印刷装置、印刷方法、およびプログラム

【課題】 媒体の縁まで印刷する場合の印刷時間の短縮と印刷ムラの防止を図る。
【解決手段】 媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、前記インク吐出部による前記インクの吐出動作と、前記搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行して媒体の縁まで印刷を行うためのコントローラと、前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部であって、前記所定の方向の幅が、前記所定の搬送量よりも短い支持部とを備えたことを特徴とする印刷装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に向けてインクを吐出して印刷を行う印刷装置、印刷方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙や布、フィルムなどの各種媒体に対して印刷を施す印刷装置として、インクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタは、シアン(C)やマゼンダ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)といった複数の色のインクを媒体に向けて吐出して、媒体に印刷を施すようになっている。
【0003】
一方、最近、このようなインクジェットプリンタにあっては、「縁無し印刷」と呼ばれる印刷が行える機能を有したものが登場している(特許文献1参照)。ここで、「縁無し印刷」とは、媒体の縁までインクを打ち込んで印刷をする印刷方法のことで、媒体の縁にインクを打ち込むことにより、媒体の縁部に余白が生じないように印刷をすることができる。
【0004】
しかし、媒体の縁に向けて吐出されたインクは、媒体から外れる虞がある。このような場合に、媒体から外れたインクが周囲に飛散して装置内部を汚す場合がある。そこで、このような「縁無し印刷」を実行するインクジェットプリンタにあっては、媒体から外れたインクを回収するための溝部が設けられている。この溝部は、例えば、印刷される媒体を支持するプラテン上などに設けられている。媒体から外れたインクは、この溝部に回収されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−103584号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなインクジェットプリンタにあっては、次のような問題があった。すなわち、「縁無し印刷」を実行する場合に、媒体の縁の位置が溝部に差し掛かっていないと、媒体の縁に向けてインクを吐出することができなかった。一方、溝部が設けられる領域は非常に限られていることから、溝部が設けられた所定の位置でしか媒体の縁に向けてインクを吐出することができなかった。このため、媒体の縁まで印刷するときに、媒体の搬送量を途中切り替える、いわゆる「変則送り」と呼ばれる搬送方法を採用せざるを得ず、これによって、印刷時間が余計に必要となったり、印刷ムラが生じて高画質な画像が得られない等の不具合が発生する場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、媒体の縁まで印刷を行うときに、印刷時間の短縮が図れ、印刷ムラの発生を防止してすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための主たる発明は、
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記インク吐出部による前記インクの吐出動作と、前記搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行して媒体の縁まで印刷を行うためのコントローラと、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部であって、前記所定の方向の幅が、前記所定の搬送量よりも短い支持部とを備えたことを特徴とする印刷装置である。
【0008】
本発明の他の特徴は、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記インク吐出部による前記インクの吐出動作と、前記搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行して媒体の縁まで印刷を行うためのコントローラと、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部であって、前記所定の方向の幅が、前記所定の搬送量よりも短い支持部とを備えたことを特徴とする印刷装置。
【0011】
このような印刷装置にあっては、溝部の間に設けられた支持部が所定の搬送量よりも短いことで、所定の搬送量分の搬送動作を実行しても、媒体から外れたインクを溝部により回収することができる。これにより、印刷速度の向上を図れるとともに、印刷ムラが生じるのを抑制して、媒体の縁まで印刷することができる。
【0012】
かかる印刷装置にあっては、前記溝部が前記所定の方向と交差する方向に沿って形成されていても良い。このように溝部が所定の方向と交差する方向に沿って形成されれば、媒体から外れたインクを効率よく回収することができる。
【0013】
また、かかる印刷装置にあっては、前記溝部が相互に平行に設けられていても良い。このように溝部が相互に平行に設けられれば、媒体から外れたインクを効率よく回収することができる。
【0014】
また、かかる印刷装置にあっては、前記インク吐出部が、前記溝部に沿って移動可能に設けられていても良い。このようにインク吐出部が移動可能に設けられていれば、インク吐出部から吐出されたインクを溝部にて回収することができる。
【0015】
また、かかる印刷装置にあっては、前記溝部を3以上備えていても良い。このように溝部を3以上備えれば、媒体の縁までスムーズに印刷をすることができる。
【0016】
また、かかる印刷装置にあっては、媒体の縁まで印刷が行われるときの印刷方式がインターレース方式であっても良い。このようにインターレース方式により媒体の縁まで印刷を行えば、搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作にて印刷を行うことができる。
【0017】
また、かかる印刷装置にあっては、媒体の縁まで印刷が行われるときの印刷方式がオーバーラップ方式であっても良い。このようにオーバーラップ方式により媒体の縁まで印刷を行えば、搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作にて印刷を行うことができる。
【0018】
また、かかる印刷装置にあっては、媒体の縁まで印刷が行われるときに、前記媒体の縁が前記搬送動作毎に前記支持部上を通過して前記溝部上にて停止しても良い。このように搬送動作毎に媒体の縁が支持部上を通過して溝部上にて停止すれば、媒体の縁まで印刷を行うときに、印刷処理をスムーズに行うことができる。
【0019】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記インク吐出部による前記インクの吐出動作と、前記搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行して媒体の縁まで印刷を行うためのコントローラと、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部であって、前記所定の方向の幅が、前記所定の搬送量よりも短い支持部とを備え、
前記溝部が前記所定の方向と交差する方向に沿って形成され、
前記溝部が相互に平行に設けられ、
前記インク吐出部が、前記溝部に沿って移動可能に設けられ、
前記溝部を3以上有し、
媒体の縁まで印刷が行われるときの印刷方式がオーバーラップ方式およびインターレース方式のうちのいずれか一方であり、
媒体の縁まで印刷が行われるときに、前記媒体の縁が前記搬送動作毎に前記支持部上を通過して前記溝部上にて停止することを特徴とする印刷装置。
【0020】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部とを備えた印刷装置を用いて印刷する方法であって、
媒体の縁まで印刷を行うときに、
前記インク吐出部から前記媒体に向けてインクを吐出する工程と、
前記搬送機構により前記支持部の前記所定の方向の幅よりも長い所定の搬送量にて前記媒体を搬送する工程と、
を交互に行うことを特徴とする印刷方法。
【0021】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部とを備えた印刷装置において実行されるプログラムであって、
媒体の縁まで印刷を行うときに、
前記インク吐出部から前記媒体に向けてインクを吐出するステップと、
前記搬送機構により前記支持部の前記所定の方向の幅よりも長い所定の搬送量にて前記媒体を搬送するステップと、
を交互に実行することを特徴とするプログラム。
【0022】
コンピュータ装置と、このコンピュータ装置に接続可能な印刷装置とを備え、
前記印刷装置は、媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記インク吐出部による前記インクの吐出動作と、前記搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行して媒体の縁まで印刷を行うためのコントローラと、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部であって、前記所定の方向の幅が、前記所定の搬送量よりも短い支持部とを有することを特徴とする印刷システム。
【0023】
===印刷装置の概要===
本発明に係る印刷装置の実施の形態について、インクジェットプリンタを例にとり説明する。
【0024】
図1〜図4は、そのインクジェットプリンタ1を示したものである。図1は、そのインクジェットプリンタ1の外観を示す。図2は、そのインクジェットプリンタ1の内部構成を示す。図3は、そのインクジェットプリンタ1の搬送部を示す。図4は、そのインクジェットプリンタ1のシステム構成を示すブロック構成図である。
【0025】
このインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、背面から供給された印刷用紙等の媒体を前面から排出する構造を備えており、その前面部には操作パネル2および排紙部3が設けられ、その背面部には給紙部4が設けられている。操作パネル2には、各種操作ボタン5および表示ランプ6が設けられている。また、排紙部3には、不使用時に排紙口を塞ぐ排紙トレー7が設けられている。給紙部4には、カット紙(図示しない)を保持する給紙トレー8が設けられている。なお、インクジェットプリンタ1は、カット紙など単票状の印刷紙のみならず、ロール紙などの連続した媒体にも印刷できるような給紙構造を備えていても良い。
【0026】
このインクジェットプリンタ1の内部には、図2に示すように、キャリッジ41が設けられている。このキャリッジ41は、所定の方向(図中横方向)に沿って相対的に移動可能に設けられたものである。キャリッジ41の周辺には、キャリッジモータ(以下、CRモータともいう)42と、プーリ44と、タイミングベルト45と、ガイドレール46と、が設けられている。キャリッジモータ42は、DCモータなどにより構成され、キャリッジ41を前記所定の方向に沿って相対的に移動させるための駆動源として機能する。また、タイミングベルト45は、プーリ44を介してキャリッジモータ42に接続されるとともに、その一部がキャリッジ41に接続され、キャリッジモータ42の回転駆動によってキャリッジ41を前記所定の方向に沿って相対的に移動させる。ガイドレール46は、キャリッジ41を前記所定の方向に沿って案内する。
【0027】
この他に、キャリッジ41の周辺には、キャリッジ41の位置を検出するリニア式エンコーダ51と、媒体Sをキャリッジ41の移動方向と交差する方向(本発明の所定の方向に相当、以下搬送方向ともいう)に沿って搬送するための搬送ローラ17Aと、この搬送ローラ17Aを回転駆動させる紙搬送モータ15とが設けられている。
【0028】
一方、キャリッジ41には、各種インクを収容したインクカートリッジ48と、媒体Sに対して印刷を行うヘッド21とが設けられている。インクカートリッジ48は、例えば、イエロ(Y)やマゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)などの各色のインクを収容しており、キャリッジ41に設けられたカートリッジ装着部49に着脱可能に装着されている。また、ヘッド21は、本実施形態では、媒体Sに対してインクを吐出して印刷を施す。このためにヘッド21には、インクを吐出するための多数のノズルが設けられている。このヘッド21のインクの吐出機構については、後で詳しく説明する。
【0029】
この他に、このインクジェットプリンタ1の内部には、ヘッド21のノズルの目詰まりを解消するためのクリーニングユニット30が設けられている。このクリーニングユニット30は、ポンプ装置31と、キャッピング装置35とを有する。ポンプ装置31は、ヘッド21のノズルの目詰まりを解消するために、ノズルからインクを吸い出す装置であり、ポンプモータ(図示外)により作動する。一方、キャッピング装置35は、ヘッド21のノズルの目詰まりを防止するため、印刷を行わないとき(待機時など)に、ヘッド21のノズルを封止する。
【0030】
次にこのインクジェットプリンタ1の搬送部の構成について説明する。この搬送部は、図3に示すように、紙挿入口11A及びロール紙挿入口11Bと、給紙モータ(不図示)と、給紙ローラ13と、プラテン14と、紙搬送モータ(以下、PFモータともいう)15と、搬送ローラ17Aと排紙ローラ17Bと、フリーローラ18Aとフリーローラ18Bとを有する。これらのうち、紙搬送モータ15や搬送ローラ17A、排紙ローラ17Bなどは、本発明の搬送機構を構成している。
【0031】
紙挿入口11Aは、媒体である媒体Sを挿入するところである。給紙モータ(図示外)は、紙挿入口11Aに挿入された媒体Sをインクジェットプリンタ1内に搬送するモータであり、パルスモータ等で構成される。給紙ローラ13は、紙挿入口11Aに挿入された媒体Sを図中矢印A方向(ロール紙の場合は矢印B方向)にインクジェットプリンタ1の内部に自動的に搬送するローラであり、給紙モータによって駆動される。給紙ローラ13は、略D形の横断面形状を有している。給紙ローラ13の円周部分の周囲長さは、紙搬送モータ15までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて媒体Sを紙搬送モータ15まで搬送することができる。
【0032】
給紙ローラ13により搬送された媒体Sは、紙検知センサ53に当接する。この紙検知センサ53は、給紙ローラ13と、搬送ローラ17Aとの間に設置されたもので、給紙ローラ13により給紙された媒体Sを検知するようになっている。
【0033】
紙検知センサ53により検知された媒体Sは、プラテン14へと搬送される。プラテン14は、印刷中の媒体Sを支持する支持手段である。紙搬送モータ15は、媒体Sである例えば紙を搬送方向(本発明の所定の方向に相当)に送り出すモータであり、DCモータで構成される。搬送ローラ17Aは、給紙ローラ13によってインクジェットプリンタ1内に搬送された媒体Sを印刷可能な領域まで送り出すローラであり、紙搬送モータ15によって駆動される。フリーローラ18Aは、搬送ローラ17Aと対向する位置に設けられ、媒体Sを搬送ローラ17Aとの間に挟むことによって媒体Sを搬送ローラ17Aに向かって押さえる。
【0034】
排紙ローラ17Bは、印刷が終了した媒体Sをインクジェットプリンタ1の外部に排出するローラである。排紙ローラ17Bは、不図示の歯車により、紙搬送モータ15によって駆動される。フリーローラ18Bは、排紙ローラ17Bと対向する位置に設けられ、媒体Sを排紙ローラ17Bとの間に挟むことによって媒体Sを排紙ローラ17Bに向かって押さえる。
【0035】
<システム構成>
次にこのインクジェットプリンタ1のシステム構成について説明する。このインクジェットプリンタ1は、図4に示すように、バッファメモリ122と、イメージバッファ124と、システムコントローラ126と、メインメモリ127と、EEPROM129とを備えている。バッファメモリ122は、コンピュータ装置140から送信された印刷データ等の各種データを受信して一時的に記憶する。また、イメージバッファ124は、受信した印刷データをバッファメモリ122より取得して格納する。また、メインメモリ127は、ROMやRAMなどにより構成される。
【0036】
一方、システムコントローラ126は、メインメモリ127から制御用プログラムを読み出して、当該制御用プログラムに従ってインクジェットプリンタ1全体の制御を行う。本実施形態のシステムコントローラ126は、キャリッジモータ制御部128と、搬送制御部130と、ヘッド駆動部132と、ロータリ式エンコーダ134と、リニア式エンコーダ51とを備えている。キャリッジモータ制御部128は、キャリッジモータ42の回転方向や回転数、トルクなどを駆動制御する。また、ヘッド駆動部132は、ヘッド21の駆動制御を行う。搬送制御部130は、搬送ローラ17Aを回転駆動する紙搬送モータ15など、搬送系に配置された各種駆動モータを制御する。
【0037】
コンピュータ装置140から送られてきた印刷データは、一旦、バッファメモリ122に蓄えられる。ここで蓄えられた印刷データは、その中から必要な情報がシステムコントローラ126により読み出される。システムコントローラ126は、その読み出した情報に基づき、リニア式エンコーダ51やロータリ式エンコーダ134からの出力を参照しながら、制御用プログラムに従って、キャリッジモータ制御部128や搬送制御部130、ヘッド駆動部132を各々制御する。
【0038】
イメージバッファ124には、バッファメモリ122に受信された複数の色成分の印刷データが格納される。ヘッド駆動部132は、システムコントローラ126からの制御信号に従って、イメージバッファ124から各色成分の印刷データを取得し、この印刷データに基づきヘッド21に設けられた各色のノズルを駆動制御する。
【0039】
また、システムコントローラ126には、紙検知センサ53から出力された、媒体Sを検知しているか否かを示す信号が入力される。これにより、システムコントローラ126は、紙検知センサ53が媒体Sを検知しているか否かを知ることができる。
【0040】
なお、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1にあっては、これらの他に、反射型光学センサ502と、反射型光学センサ制御部508とを備えている。これら反射型光学センサ502および反射型光学センサ制御部508については、後で詳しく説明する。
【0041】
<ヘッド>
図5は、ヘッド21の下面部に設けられたインクのノズルの配列を示した図である。ヘッド21の下面部には、同図に示すように、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色ごとにそれぞれ複数のノズル♯1〜♯180からなるノズル群211Y、211M、211C、211Kが設けられている。なお、これらイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯180は、本発明のインク吐出部に相当する。
【0042】
各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯180は、媒体Sの搬送方向に沿って直線状に配列されている。各ノズル群211Y、211M、211C、211Kは、ヘッド21の移動方向(キャリッジ移動方向)に沿って相互に間隔をあけて平行に配置されている。各ノズル♯1〜♯180には、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(図示外)が設けられている。
【0043】
ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯180から吐出される。
【0044】
===印刷動作===
次に前述したインクジェットプリンタ1の印刷動作について説明する。ここでは、「双方向印刷」を例にして説明する。図6は、インクジェットプリンタ1の印刷動作の処理手順の一例を示したフローチャートである。以下で説明される各処理は、システムコントローラ126が、メインメモリ127又はEEPROM129に格納されたプログラムを読み出して、当該プログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。
【0045】
システムコントローラ126は、コンピュータ装置140から印刷データを受信すると、その印刷データに基づき印刷を実行すべく、まず、給紙処理を行う(S102)。給紙処理は、印刷しようとする媒体Sをインクジェットプリンタ1内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)まで搬送する処理である。システムコントローラ126は、給紙ローラ13を回転させて、印刷しようとする媒体Sを搬送ローラ17Aまで送る。システムコントローラ126は、搬送ローラ17Aを回転させて、給紙ローラ13から送られてきた媒体Sを印刷開始位置に位置決めする。
【0046】
次に、システムコントローラ126は、キャリッジ41を媒体Sに対して相対的に移動させて媒体Sに対して印刷を施す印刷処理を実行する。ここでは、まず、キャリッジ41をガイドレール46に沿って一の方向に向かって移動させながら、ヘッドからインクを吐出する往路印刷を実行する(S104)。システムコントローラ126は、キャリッジモータ42を駆動してキャリッジ41を移動させるとともに、印刷データに基づきヘッドを駆動してインクを吐出する。ヘッド21から吐出されたインクは、媒体Sに到達してドットとして形成される。
【0047】
このようにして印刷を行った後、次に、媒体Sを所定量だけ搬送する搬送処理を実行する(S106)。この搬送処理では、システムコントローラ126は、紙搬送モータ15を駆動して搬送ローラ17Aを回転させて、媒体Sをヘッド21に対して相対的に搬送方向に所定量だけ搬送する。この搬送処理により、ヘッド21は、先ほどの印刷した領域とは異なる領域に印刷をすることが可能になる。
【0048】
このようにして搬送処理を行った後、排紙すべきか否か排紙判断を実行する(S108)。ここで、印刷中の媒体Sに印刷すべき他のデータがなければ、排紙処理を実行する(S116)。一方、印刷中の媒体Sに印刷すべき他のデータがあれば、排紙処理は行わずに、復路印刷を実行する(S110)。この復路印刷は、キャリッジ41をガイドレール46に沿って先ほどの往路印刷とは反対の方向に移動させて印刷を行う。ここでも、システムコントローラ126は、キャリッジモータ42を先ほどとは逆に回転駆動させてキャリッジ41を移動させるとともに、印刷データに基づきヘッド21を駆動してインクを吐出し、印刷を施す。
【0049】
復路印刷を実行した後、搬送処理を実行し(S112)、その後、排紙判断を行う(S114)。ここで、印刷中の媒体Sに印刷すべき他のデータがあれば、排紙処理は行わずに、ステップS104に戻って、再度往路印刷を実行する(S104)。一方、印刷中の媒体Sに印刷すべき他のデータがなければ、排紙処理を実行する(S116)。
【0050】
排紙処理を行った後、次に、印刷終了か否かを判断する印刷終了判断を実行する(S118)。ここでは、次にコンピュータ装置140から印刷データに基づき、次に印刷すべき媒体Sがないかどうかチェックする。ここで、次に印刷すべき媒体Sがある場合には、ステップS102に戻り、再び給紙処理を実行して、印刷を開始する。一方、次に印刷すべき媒体Sがない場合には、印刷処理を終了する。
【0051】
===印刷方式===
<インターレース方式>
図7は、インターレース方式により媒体Sにドットを形成して画像Gを印刷する方法について概略的に説明するものである。なお、ここでは、説明の便宜上、インクを吐出するノズル群211が媒体Sに対して移動しているように描かれているが、同図はノズル群211と媒体Sとの相対的な位置関係を示すものであって、実際には、媒体Sが搬送方向に沿って移動している。また、同図において、黒丸で示されたノズルは、インクを吐出するノズルであり、白丸で示されたノズルは、インクを吐出しないノズルである。図7Aは、パス1〜パス4におけるノズル群211(ヘッド21)の位置と、ドットの形成の様子を示し、図7Bは、パス1〜パス6におけるノズル群211(ヘッド21)の位置とドットの形成の様子を示している。
【0052】
ここで、『パス』とは、ノズル群211を有するヘッド21がキャリッジ41の移動によりその移動方向に沿って1回移動する動作のことをいう。『インターレース方式』では、このような『パス』を繰り返し実行することによって、各パス毎にキャリッジ41の移動方向に沿ってドットを並べて形成して、印刷する画像Gを構成するラスタラインを順次形成して、画像Gを印刷する。なお、『ラスタライン』とは、キャリッジ41の移動方向に並ぶ画素の列であり、走査ラインともいう。また、『画素』とは、インク滴を着弾させてドットを記録する位置を規定するために、媒体S上に仮想的に定められた方眼状の桝目である。
【0053】
インターレース方式では、媒体Sが搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあり、搬送量FはN・Dに設定される。
【0054】
ここでは、ノズル群211のノズル♯1〜♯180のうちの♯1〜♯4を使って画像Gが形成される様子を示す。なお、ノズル群211のノズルピッチは4Dなので、インターレース方式で行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、ここでは、簡略的に3つのノズル♯1〜♯3を用いてインターレース方式で画像Gの形成を行う場合について説明する。また、3つのノズルが用いられるため、媒体Sは搬送量3・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル群211を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて紙にドットが形成される。
【0055】
同図は、最初のラスタラインはパス3のノズル♯1が形成し、2番目のラスタラインはパス2のノズル♯2が形成し、3番目のラスタラインはパス1のノズル♯3が形成し、4番目のラスタラインはパス4のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、パス1では、ノズル♯3のみがインクを吐出し、パス2では、ノズル♯2とノズル♯3のみがインクを吐出している。これは、パス1及びパス2において全てのノズルからインクを吐出すると、連続したラスタラインを媒体Sに形成できないためである。なお、パス3以降では、3つのノズル(♯1〜♯3)がインクを吐出し、紙が一定の搬送量F(=3・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。これにより、各パスごとにラスタラインが順次形成されて画像Gが印刷される。
【0056】
図8は、インターレース方式の他の方法を説明するものである。ここでは、使用するノズル数が異なっている。ノズルピッチ等は、前述の説明図の場合と同様であるので、説明を省略する。図8Aは、パス1〜パス4におけるノズル群211の位置とドットの形成の様子を示し、図8Bは、パス1〜パス9におけるノズル群211の位置とドットの形成の様子を示している。
【0057】
同図では、ノズル群211のノズル♯1〜♯180のうちの♯1〜♯8を使って媒体Sに画像Gを印刷する例を説明する。ここで、ノズル群211のノズルピッチは4Dなので、インターレース方式で行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、ここでは、簡略的に7つのノズル♯1〜♯7を用いてインターレース方式で行う場合について説明する。媒体Sの搬送量は、7つのノズル♯1〜♯7が用いられることから「7・D」に設定される。
【0058】
同図は、最初のラスタラインはパス3のノズル♯2が形成し、2番目のラスタラインはパス2のノズル♯4が形成し、3番目のラスタラインはパス1のノズル♯6が形成し、4番目のラスタラインはパス4のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、パス3以降では、7つのノズル(♯1〜♯7)がインクを吐出し、媒体Sが一定の搬送量F(=7・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。
【0059】
前述のインターレース方式と比較すると、インクの吐出に用いられるノズルの数が多くなっている。このため、インクを吐出するノズル数Nが多くなるので、1回の搬送量Fが大きくなり、印刷速度が速くなる。このように、インターレース方式で行う際に、インクを吐出可能なノズル数が増えると、印刷速度が速くなるので、有利になる。
【0060】
<オーバーラップ方式>
図9は、オーバーラップ方式により媒体Sに画像Gを印刷する方法を概略的に説明するものである。図9Aは、パス1〜パス8におけるノズル群211の位置とドットの形成の様子を示し、図9Bは、パス1〜パス12におけるノズル群211の位置とドットの形成の様子を示している。前述のインターレース方式では、一つのラスタラインは一つのノズルにより形成されていた。一方、オーバーラップ方式では、例えば、一つのラスタラインが、二つ以上のノズルにより形成されている。
【0061】
オーバーラップ方式では、媒体Sが搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、数ドットおきに間欠的にドットを形成する。そして、他のパスにおいて、他のノズルが既に形成されている間欠的なドットを補完するようにドットを形成することにより、1つラスタラインが複数のノズルにより完成する。このようにM回のパスにて1つのラスタラインが完成する場合、オーバーラップ数Mと定義する。同図では、各ノズルは、1ドットおきに間欠的にドットを形成するので、パス毎に奇数番目の画素又は偶数番目の画素にドットが形成される。そして、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、オーバーラップ数M=2になる。なお、前述のインターレース方式の場合、オーバーラップ数M=1になる。
【0062】
オーバーラップ方式において、搬送量を一定にして記録を行うためには、次の(1)〜(3)の条件が必要となる。
(1)N/Mが整数である。
(2)N/Mはkと互いに素の関係にある。
(3)搬送量Fが(N/M)・Dに設定される。
【0063】
同図では、ノズル群211のノズル数は180である。しかし、ノズル群211のノズルピッチは4D(k=4)なので、オーバーラップ方式により印刷を実施するための条件である「N/Mとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、ここでは、簡略的に、ノズル群211のノズル♯1〜♯180のうちの♯1〜♯6を使って画像Gが印刷される例について説明する。6つのノズルが用いられることから、媒体Sは搬送量3・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル群を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて媒体Sにドットが形成される。また、1つのパスにおいて、各ノズルは走査方向に1ドットおきに間欠的にドットを形成する。図中において、キャリッジ移動方向に2つのドットが描かれているラスタラインは既に完成されている。例えば、図9Aにおいて、最初のラスタラインから6番目のラスタラインまでは、既に完成されている。1つのドットが描かれているラスタラインは、1ドットおきに間欠的にドットが形成されているラスタラインである。例えば、7番目や10番目のラスタラインは、1ドットおきに間欠的にドットが形成されている。なお、1ドットおきに間欠的にドットが形成された7番目のラスタラインは、パス9のノズル♯1が補完するようにドットを形成することによって、完成される。
【0064】
同図は、最初のラスタラインはパス3のノズル♯4及びパス7のノズル♯1が形成し、2番目のラスタラインはパス2のノズル♯5及びパス6のノズル♯2が形成し、3番目のラスタラインはパス1のノズル♯6及びパス5のノズル♯3が形成し、4番目のラスタラインはパス4のノズル♯4及びパス8のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、パス1〜パス6において、ノズル♯1〜ノズル♯6のなかにインクを吐出しないノズルが存在する。これは、パス1〜パス6において全てのノズルからインクを吐出すると、連続したラスタラインを媒体Sに形成できないためである。なお、パス7以降では、6つのノズル(♯1〜♯6)がインクを吐出し、媒体Sが一定の搬送量F(=3・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。
【0065】
以下に、それぞれのパスにおいて形成されるドットの走査方向の形成位置をまとめて示す。
【0066】

ここで、「奇数」とは、キャリッジ移動方向に並ぶ画素(ラスタラインの画素)のうちの奇数番目の画素にドットを形成することを意味する。また、表中の「偶数」とは、走査方向に並ぶ画素のうちの偶数番目の画素にドットを形成することを意味する。例えば、パス3では、各ノズルは、奇数番目の画素にドットを形成する。1つのラスタラインがM個のノズルにより形成される場合、ノズルピッチ分のラスタラインが完成するためには、k×M回のパスが必要となる。例えば、本実施形態では、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、4つのラスタラインが完成するためには、8回(4×2)のパスが必要となる。表1から分かるとおり、前半の4回のパスは、奇数−偶数−奇数−偶数の順にドットが形成される。この結果、前半の4回のパスが終了すると、奇数番目の画素にドットが形成されたラスタラインの隣のラスタラインには、偶数番目の画素にドットが形成されている。後半の4回のパスは、偶数−奇数−偶数−奇数の順にドットが形成される。つまり、後半の4回のパスは、前半の4回のパスと逆の順にドットが形成される。この結果、前半のパスにより形成されたドットの隙間を補完するように、ドットが形成される。
【0067】
オーバーラップ方式も前述のインターレース方式と同様に、インクを吐出可能なノズル数Nが多くなると、1回の搬送量Fが大きくなり、印刷速度が速くなる。そのため、オーバーラップ方式で行う際に、インクを吐出可能なノズル数が増えると、印刷速度が速くなるので、有利になる。
【0068】
===縁無し印刷===
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1にあっては、「縁無し印刷」を実行することができる。
【0069】
<縁無し印刷の概要>
図10および図11は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1で実行される「縁無し印刷」の概要を説明するものである。図10は、「縁無し印刷」ではなく、通常印刷を行ったときの用紙(媒体)Sと、印刷領域Pとの関係を説明したものである。図11は、「縁無し印刷」を行ったときの媒体Sと、印刷領域Pとの関係を説明したものである。
【0070】
通常印刷の場合には、図10に示すように、印刷領域Pは用紙Sに収まるように、用紙Sよりも小さなサイズに設定される。用紙Sの周縁部には、その左右両側部および上下両側部に沿って余白部が形成される。このように印刷領域Pが用紙Sに収める処理は、コンピュータ装置140に搭載されたプリンタドライバにより行われる。プリンタドライバは、コンピュータ装置140で実行されるアプリケーションプログラムから与えられた画像データに基づき、印刷領域Pが用紙Sに収まるように印刷データを生成する。ここで、プリンタドライバは、印刷領域Pを用紙S内に納めることができないような画像データを処理する場合には、画像データにより表される画像の一部を印刷対象から除外したり、またその画像を縮小処理するなどして用紙Sに収まるようにすることもある。こうしてプリンタドライバにより作成された印刷データは、コンピュータ装置140から当該インクジェットプリンタ1に向けて送信される。インクジェットプリンタ1は、コンピュータ装置140から送られてきた印刷データに基づき印刷処理を実行することで、通常印刷が実施される。
【0071】
一方、「縁無し印刷」の場合には、図11に示すように、印刷領域Pは、媒体Sからはみ出すように、媒体Sよりも大きなサイズになるように設定される。媒体Sの周縁部には、図10で説明した通常印刷の場合と異なり、余白部は形成されない。なお、ここでは、媒体S全体が印刷領域Pに覆われてしまって、媒体Sの周縁部には、余白部が一切形成されていないが、「縁無し印刷」にあっては、必ずしも図11に示すように、媒体Sの周縁部に一切余白部が形成されない場合に限らず、媒体Sの左側縁部や右側縁部、上側縁部、下側縁部など、媒体Sの周縁部の一部に余白部が形成される場合も含む。つまり、印刷領域Pが少しでも媒体Sからはみ出すように設定がされる場合には、「縁無し印刷」に該当する。
【0072】
このように印刷領域Pが媒体Sからはみ出させる処理は、通常印刷の場合と同様、プリンタドライバなどにより行う。プリンタドライバは、アプリケーションプログラムから与えられた画像データに基づき、印刷領域Pが媒体Sからはみ出すような印刷データを生成する。ここで、プリンタドライバは、印刷領域Pが媒体Sよりも小さくなるような画像データを処理する場合には、印刷領域Pが媒体S全体をカバーするように印刷領域Pを拡大したりする。こうして作成された印刷データは、コンピュータ装置140から当該インクジェットプリンタ1に向けて送信される。インクジェットプリンタ1は、コンピュータ装置140から送られてきた印刷データに基づき印刷処理を実行することで、「縁無し印刷」が実行される。これによって、縁の無い見栄えに優れた印刷が実現できる。
【0073】
この他に、「縁無し印刷」にあっては、必ずしも、このように印刷領域Pが媒体Sからはみ出る設定する必要はない。図12は、印刷領域Pが媒体Sからはみ出るように設定するのではなく、媒体Sにちょうどぴったり収まるように設定した場合の「縁無し印刷」の例を説明したものである。同図に示すように、印刷領域Pが媒体Sからはみ出さなくても、印刷領域Pを媒体Sのサイズにぴったりはまるように設定することによって、余白部のない「縁無し印刷」を実行することができる。
【0074】
<インク回収部>
このような「縁無し印刷」が実行される場合には、各ノズル群211の各ノズル♯1〜♯180から吐出されたインクは、媒体Sから外れる場合がある。このようにインクが媒体Sから外れた場合に、プラテンなどを汚すなどの悪影響を及ぼす虞がある。そこで、このような「縁無し印刷」を実行する印刷装置にあっては、媒体Sから外れたインクを回収するインク回収部として、プラテン14に溝部が設けられている。
【0075】
===従来の問題点===
<実際の縁無し印刷>
図13は、従来のインクジェットプリンタの溝部の一例を示したものである。ここでは、インク回収用の溝部として、プラテン14上に2つの溝部354a、354bが設けられている。これら2つの溝部354a、354bは、それぞれヘッド21に対向して設けられている。一方の溝部354aは、媒体Sの搬送方向の上流側に設けられたものであり、ヘッド21のノズル群211のノズル♯1〜♯180のうち、ノズル♯178〜♯180と対向するように形成されている。他方の溝部354bは、媒体Sの搬送方向の下流側に設けられたものであり、ヘッド21のノズル群211Y、211M、211C、211Kのノズル♯1〜♯180のうち、ノズル♯1〜♯3と対向するように形成されている。これによって、ヘッド21のノズル♯1〜♯3、♯178〜♯180から吐出されたインクは、溝部354a、354b内に直接打ち込まれて、溝部354a、354b内の吸収材356にそれぞれ回収されるようになっている。
【0076】
媒体Sに対して印刷を行う場合には、ヘッド21による媒体Sに対する印刷動作の合間に、媒体Sを所定の搬送量ずつ搬送する。そして、媒体Sの搬送方向の先端部に対して印刷を行う場合には、媒体Sの搬送方向の先端部が下流側の溝部354bに差し掛かったときに、印刷動作の合間の搬送量を減らして、媒体Sをゆっくり搬送する。そして、搬送方向の下流側に設けられたノズル♯1〜♯3を用いて、これらノズル♯1〜♯3からインクを吐出して、媒体Sの先端部に対して印刷を施す。このとき、ノズル♯1〜♯3から吐出されて媒体Sから外れたインクは、搬送方向の下流側の溝部354bに回収される。
【0077】
一方、媒体Sの搬送方向の後端部に対して印刷を行う場合には、媒体Sの後端部が下流側の溝部354bに差し掛かったときに、媒体Sの先端部と同様に、印刷動作の合間の搬送量を減らして、媒体Sをゆっくり搬送する。そして、搬送方向の上流側に設けられたノズル♯178〜♯180を用いて、これらノズル♯178〜♯180からインクを吐出して、媒体Sの後端部に対して印刷を施す。このとき、ノズル♯178〜♯180から吐出されて媒体Sから外れたインクは、搬送方向の上流側の溝部354aに回収される。
【0078】
<問題点>
従来のインクジェットプリンタにあっては、媒体から外れたインクを回収するための溝部が設けられる領域が限られることから、溝部が設けられた所定の位置でしか媒体の縁に向けてインクを吐出することができず、このため、媒体の縁まで印刷するときには、媒体の搬送量を途中切り替える、いわゆる「変則送り」と呼ばれる搬送方法を採用する他なかった。これによって、印刷時間が余計に必要となったり、印刷ムラが生じて高画質な画像が得られない等の不具合が発生する場合があった。
【0079】
===本実施形態の構成===
そこで、本実施形態では、媒体を搬送する速度が途中で切り替わる、いわゆる「変則送り」を実行せずに、「縁無し印刷」を実行するために、つぎのような溝部を備えている。
【0080】
<溝部>
図14および図15は、本実施形態に係るインクジェットプリンタに設けられたインク回収部を示したものである。図14は、そのインク回収部を示した断面図である。図15は、そのインク回収部を示した平面図である。このインク回収部は、図14に示すように、媒体Sの搬送方向に沿って相互に間隔をあけて設けられた複数の溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gを備えている。ここでは、7つの溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gが設けられている。これら7つの溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gは、搬送方向の上流側から順に、第1溝部360a、第2溝部360b、第3溝部360c、第4溝部360d、第5溝部360e、第6溝部360fおよび第7溝部360gとなっている。
【0081】
これら7つの溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gのうち、搬送方向の中央部の5つの溝部360b、360c、360d、360e、360fは幅広に形成され、搬送方向の端に位置している2つの溝部360a、360gは幅狭に形成されている。搬送方向中央部の5つの溝部360b、360c、360d、360e、360fは、ほぼ同じ幅寸法に形成され、搬送方向に沿って所定の間隔Mにて配置されている。これら7つの溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gは、ヘッド21に設けられたノズル群211Y、211M、211C、211Kのノズル♯1〜♯180と対向し得るように配置されている。
【0082】
また、7つの溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gの各間には、それぞれ印刷される媒体Sを支持するために、本発明の支持部として、6つの突起部362a、362b、362c、362d、362e、362fが設けられている。これら6つの突起部362a、362b、362c、362d、362e、362fは、搬送方向の上流側から順に、第1突起部362a、第2突起部362b、第3突起部362c、第4突起部362d、第5突起部362eおよび第6突起部362fという。各突起部362a、362b、362c、362d、362e、362fは、それぞれ搬送方向の幅が所定の幅寸法Nになるように形成されている。
【0083】
これら7つの溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gは、図15に示すように、プラテン14上に設けられたインクを回収するための凹部364内に設けられている。ここで、凹部364は、ヘッド21に対向すべくヘッド21の移動方向に沿って横長に形成されている。この凹部364の横幅寸法L(ヘッド移動方向の寸法)は、インクジェットプリンタ1が印刷可能な媒体Sの最大サイズに対応して設定されている。各溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gは、この凹部364の内側に、ヘッド21の移動方向(キャリッジ41の移動方向)に沿ってそれぞれ直線状にかつ相互に間隔をあけて平行に形成されている。また、これら溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gの各間には、それぞれ突起部362a、362b、362c、362d、362e、362fが設けられている。
【0084】
<所定の間隔Mについて>
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1にあっては、媒体Sが搬送される毎に、その媒体Sの縁が突起部362a、362b、362c、362d、362e、362fを1つずつ通過して各溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gに到達して停止するようにするために、搬送方向中央部の5つの溝部360b、360c、360d、360e、360fの間隔Mが、媒体Sの搬送量とほぼ等しくなるように設定されている。これは、媒体Sの搬送量を途中切り替える、いわゆる「変則送り」を実行せずに印刷処理を行うためであり、インターレース印刷やオーバーラップ印刷などといった各種印刷方式により、媒体Sを所定の搬送量ずつ搬送することにより、縁無し印刷を実現するためである。これにより、媒体Sの搬送動作毎に、媒体Sの縁が1つずつ突起部を通過して溝部360b、360c、360d、360e、360fに差し掛かって停止することで、媒体Sの縁から外れたインクを各溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gにて回収することができる。
【0085】
このように溝部360b、360c、360d、360e、360fの間隔Mが、各搬送動作毎の媒体Sの搬送量とほぼ等しく設定されていることにより、突起部362a、362b、362c、362d、362e、362fの搬送方向の幅寸法Nが媒体Sの搬送量よりも短くなっている。
【0086】
===実際の印刷動作===
図16A〜図16Fおよび図17A〜図17Fは、このような溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gを備えた本実施形態に係るインクジェットプリンタ1における「縁無し印刷」の実施手順について説明したものである。図16A〜図16Fは、媒体Sの搬送方向の先端部に対して印刷を行うときの手順を説明したものである。図17A〜図17Fは、媒体Sの搬送方向の後端部に対して印刷を行うときの手順を説明したものである。ここでは、インターレース方式やオーバーラップ方式等の印刷方式により印刷を実行する。ヘッド21による印刷動作の合間に行われる媒体Sの搬送動作は、所定の搬送量にて実行される。
【0087】
まず、媒体Sの先端が第2溝部360bに到達するまで、搬送ローラ17Aにより媒体Sを搬送する。媒体Sの先端が第2溝部360bの上方に到達した後、搬送動作を一旦停止する。そして、図16Aに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0088】
次に、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。ここでいう所定の搬送量とは、インターレース方式またはオーバーラップ方式等の印刷方式により規定される前述した一定の搬送量Fのことである。この搬送により、媒体Sの先端が第2突起部362bを通過して第3溝部360cの上方に到達する。このようにして媒体Sの先端が第3溝部360cの上方に到達した後、図16Bに示すように、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0089】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの先端が第3突起部362cを通過して第4溝部360dの上方に到達する。このようにして媒体Sの先端が第4溝部360dの上方に到達した後、図16Cに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0090】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの先端が第4突起部362dを通過して第5溝部360eの上方に到達する。このようにして媒体Sの先端が第5溝部360eの上方に到達した後、図16Dに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0091】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの先端が第5突起部362eを通過して第6溝部360fの上方に到達する。このようにして媒体Sの先端が第6溝部360fの上方に到達した後、図16Eに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0092】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの先端が第6突起部362fを通過して第7溝部360gに到達する。このようにして媒体Sの先端が第7溝部360gの上方に到達した後、図16Fに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0093】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。これにより、媒体Sの先端は第7溝部360gを通過して排紙側へと移動する。このように媒体Sの先端が排紙側へと移動した後も、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する搬送動作と、ヘッド21のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す印刷動作とを交互に繰り返す。
【0094】
すると、媒体Sの後端部が、図17Aに示すように、第1溝部360aに到達する。ここで、同図に示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0095】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの後端が第2突起部362bを通過して第3溝部360cの上方に到達する。このようにして媒体Sの後端が第3溝部360cの上方に到達した後、図17Bに示すように、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0096】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの後端が第3突起部362cを通過して第4溝部360dの上方に到達する。このようにして媒体Sの後端が第4溝部360dの上方に到達した後、図17Cに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0097】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの後端が第4突起部362dを通過して第5溝部360eの上方に到達する。このようにして媒体Sの後端が第5溝部360eの上方に到達した後、図17Dに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0098】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの後端が第5突起部362eを通過して第6溝部360fの上方に到達する。このようにして媒体Sの後端が第6溝部360fの上方に到達した後、図17Eに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0099】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。この搬送により、媒体Sの後端が第6突起部362fを通過して第7溝部360gに到達する。このようにして媒体Sの後端が第7溝部360gの上方に到達した後、図17Fに示すように、ヘッド21を媒体Sに対して相対的に移動させて、ヘッド21の所定のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出して媒体Sに印刷を施す。
【0100】
さらに、媒体Sを所定の搬送量分だけ搬送する。これにより、媒体Sの先端は第7溝部360gを通過して排紙側へと移動する。その後、媒体Sを排紙して印刷処理を終了する。
【0101】
以上のことから、ヘッド21のノズルから媒体Sに向けてインクを吐出する印刷動作の合間に、媒体Sを所定の搬送量分ずつ搬送しても、媒体Sの先端および後端が第1〜第7溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gのうちのいずれかの溝部にて必ず停止するから、媒体Sから外れたインクをこれら溝部360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gにて回収することができる。これにより、媒体Sを所定の搬送量分ずつ搬送しながら、プラテン14等を汚さずに「縁無し印刷」を実行することができる。
【0102】
<縁無し印刷の実行手順>
図18は、縁無し印刷の実行手順を説明したものである。まず、媒体Sを所定の印刷開始位置まで搬送する初期搬送動作を実行する(S201)。次に、印刷動作を実行して、所定の印刷開始位置まで搬送された媒体Sに対して印刷を施す(S202)。次に、媒体Sについて所定の搬送量分の搬送動作を実行する(S203)。その後、印刷動作と、所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行する(S204〜S213)。このようにして媒体Sに対して印刷処理が終了した後、媒体Sに対して排紙処理を行う(S214)。
【0103】
===まとめ===
以上本実施形態にあっては、インターレース方式またはオーバーラップ方式等により媒体Sを所定の搬送量分ずつ一定の搬送量にて搬送して、「縁無し印刷」を実行することができることから、従来に比べて、印刷時間が余計に必要となったり、印刷ムラが生じるなどの不具合の発生を可及的に防止することができる。
【0104】
===溝部の他の実施形態===
図19および図20は、溝部の他の実施形態をそれぞれ示したものである。図19は、前述した実施の形態よりも溝部360の数が多い場合を示しており、図20は、前述した実施の形態よりも溝部360の数が少ない場合を示している。
【0105】
溝部360の数が多い場合には、図19に示すように、突起部362の数も多くなる。このように溝部360の数が多い場合とは、印刷動作の合間に実行される搬送動作の搬送量Mが非常に小さい場合である。ここで、突起部362の搬送方向の幅Nは、搬送動作の搬送量Mよりも短くなっている。このように搬送動作の搬送量Mが小さい場合であっても、それに応じて溝部360の数を増やすことによって、所定の搬送量にて媒体Sを搬送しつつ縁無し印刷を実行することができる。
【0106】
また、溝部360の数が少ない場合には、図20に示すように、突起部362の数も少なくなる。このように溝部360の数が少ない場合とは、印刷動作の合間に実行される搬送動作の搬送量Mが非常に大きい場合である。ここで、突起部362の搬送方向の幅Nは、搬送動作の搬送量Mよりも短くなっている。このように搬送動作の搬送量Mが大きい場合であっても、それに応じて溝部360の数を減らすことによって、所定の搬送量にて媒体Sを搬送しつつ縁無し印刷を実行することができる。
【0107】
===印刷システム等の構成===
次に、本発明に係る印刷システムの一例として、印刷装置としてインクジェットプリンタを備えた印刷システムを例にして説明する。
【0108】
図21は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。印刷システム1000は、コンピュータ本体1102と、表示装置1104と、インクジェットプリンタ1などの印刷装置1106と、入力装置1108と、読取装置1110とを備えている。コンピュータ本体1102は、本実施形態ではミニタワー型の筐体に収納されているが、これに限られるものではない。表示装置1104は、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)やプラズマディスプレイや液晶表示装置等が用いられるのが一般的であるが、これに限られるものではない。印刷装置1106は、上記に説明されたプリンタが用いられている。入力装置1108は、本実施形態ではキーボード1108Aとマウス1108Bが用いられているが、これに限られるものではない。読取装置1110は、本実施形態ではフレキシブルディスクドライブ装置1110AとCD−ROMドライブ装置1110Bが用いられているが、これに限られるものではなく、例えばMO(Magnet Optical)ディスクドライブ装置やDVD(Digital Versatile Disk)等の他のものであっても良い。
【0109】
図22は、図21に示した印刷システムの構成を示すブロック図である。コンピュータ本体1102が収納された筐体内にRAM等の内部メモリ1202と、ハードディスクドライブユニット1204等の外部メモリがさらに設けられている。
【0110】
上述したインクジェットプリンタ1の動作を制御するコンピュータプログラムは、例えばインターネット等の通信回線を経由して、印刷装置1106に接続されたコンピュータ1000等にダウンロードさせることができるほか、コンピュータによる読み取り可能な記録媒体Sに記録して配布等することもできる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクFD、CD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスクMO、ハードディスク、メモリ等の各種記録媒体を用いることができる。なお、このような記憶媒体に記憶された情報は、各種の読取装置1110によって、読み取り可能である。
【0111】
なお、以上の説明においては、印刷装置1106が、コンピュータ本体1102、表示装置1104、入力装置1108、及び、読取装置1110と接続されて印刷システムを構成した例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、印刷システムが、コンピュータ本体1102と印刷装置1106から構成されても良く、印刷システムが表示装置1104、入力装置1108及び読取装置1110のいずれかを備えていなくても良い。また、例えば、印刷装置1106が、コンピュータ本体1102、表示装置1104、入力装置1108、及び、読取装置1110のそれぞれの機能又は機構の一部を持っていても良い。一例として、印刷装置1106が、画像処理を行う画像処理部、各種の表示を行う表示部、及び、デジタルカメラ等により撮影された画像データを記録した記録メディアを着脱するための記録メディア着脱部等を有する構成としても良い。
【0112】
このようにして実現された印刷システムは、システム全体として従来システムよりも優れたシステムとなる。
【0113】
===その他の実施の形態===
以上、一実施形態に基づき、本発明に係るプリンタ等の印刷装置について説明したが、上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更または改良され得るとともに、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に係る印刷装置に含まれるものである。
【0114】
また、本実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部又は全部をソフトウェアによって置き換えてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアによって置き換えてもよい。
【0115】
また、印刷装置側にて行っていた処理の一部をホスト側にて行ってよく、また印刷装置とホストの間に専用の処理装置を介設して、この処理装置にて処理の一部を行わせるようにしてもよい。
【0116】
<インク吐出部について>
前述した実施形態では、本発明のインク吐出部について、図5に示すような多数のノズル♯1〜♯180を備えたノズル群211C、211M、211Y、211Kを例にして説明していたが、本発明のインク吐出部にあっては、このような多数のノズル♯1〜♯180を有するノズル群211C、211M、211Y、211Kに限らず、インクを吐出するのであれば、どのようなタイプのインク吐出部であっても構わない。
【0117】
また、前述した実施形態では、本発明のインク吐出部が、所定の方向(搬送方向)に沿って相互に間隔をあけて直線状に配列されたノズル♯1〜♯180を備えたノズル群211C、211M、211Y、211Kを例にして説明していたが、本発明のインク吐出部にあっては、このようなノズル配列を有するノズル群に限らず、インクを吐出するのであれば、どのようなタイプのインク吐出部であっても構わない。
【0118】
<インクの吐出機構について>
前述の実施形態では、圧電素子としてピエゾ素子を用いてインクを吐出する機構が紹介されていたが、本発明のインクを吐出する機構にあっては、このような方式によりインクを吐出する機構に限られず、インクを吐出する機構であれば、例えば、熱等によりノズル内に泡を発生させることによってインクを吐出する方式や、その他各種方式、インクを吐出する機構であれば、どのような方式を採用していても構わない。
【0119】
<溝部について>
前述した実施の形態では、本発明の溝部として、プラテン14に設けられた断面凹形の直線状の溝部360、360a、360b、360c、360d、360e、360f、360gが開示されていたが、本発明の溝部にあっては、このような溝部に限らず、吐出されたインクを回収し得るのであれば、いかなる溝部も本発明の溝部に含まれる。
【0120】
<支持部について>
前述した実施の形態では、本発明の支持部として、図14や図15、図16A〜図16F、図17A〜図17Fに示すような突起部(第1〜第6突起部)362a、362b、362c、362d、362e、362fが設けられていたが、本発明にあっては、このような支持部に限らず、印刷される媒体Sを支持する支持部であれば、どのような形態の支持部であっても構わない。
【0121】
<印刷装置について>
本発明に係る印刷装置としては、前述したインクジェットプリンタ1の他に、例えば、バブルジェット方式のプリンタなど、インクを吐出して印刷をする印刷装置であれば、どのようなタイプの印刷装置であっても構わない。
【0122】
<媒体について>
媒体Sについては、普通紙やマット紙、カット紙、光沢紙、ロール紙、用紙、写真用紙、ロールタイプ写真用紙等をはじめ、これらの他に、OHPフィルムや光沢フィルム等のフィルム材や布材、金属板材などであっても構わない。すなわち、インクの吐出対象となり得るものであれば、どのような媒体であっても構わない。
【0123】
<インクについて>
使用するインクについては、顔料インクであっても良く、また染料インクであっても良い。
インクの色については、前述したイエロ(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の他に、ライトシアン(LC)やライトマゼンダ(LM)、ダークイエロ(DY)をはじめ、例えば、レッドやバイオレット、ブルー、グリーンなど、その他の色のインクを使用しても良い。
【0124】
<搬送機構について>
前述した実施の形態では、本発明の搬送機構として、本発明の搬送機構として、紙搬送モータ15や搬送ローラ17A、排紙ローラ17Bなどを備えた構成が開示されていたが、本発明の搬送機構にあってはこのような機構に限らず、媒体Sを搬送可能な機構であれば、どのような機構であっても構わない。
【0125】
<所定の方向について>
前述した実施の形態では、本発明の「所定の方向」として、図2〜図3、図10〜図17、図19、図20に示すような矢印の搬送方向が例示されていたが、本発明の「所定の方向」にあっては、このような方向に限らず、搬送機構により媒体Sが搬送される方向であれば、どのような方向であっても構わない。
【0126】
<所定の方向と交差する方向について>
前述した実施の形態では、本発明の「所定の方向と交差する方向」について、図2〜図3、図10〜図17、図19、図20に示すような、所定の方向(搬送方向)と直交する、キャリッジ41の移動方向を例にして説明したが、本発明の「所定の方向と交差する方向」にあっては、このような方向に限らず、「所定の方向と交差する方向」であれば、必ずしもこのように所定の方向(搬送方向)に対して直交している必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明に係る印刷装置の一実施形態の斜視図。
【図2】印刷装置の内部構成を説明した斜視図。
【図3】印刷装置の搬送部を示す断面図。
【図4】印刷装置のシステム構成を示すブロック構成図。
【図5】印刷装置のヘッドの一例を示す平面図。
【図6】印刷処理の一例を説明するフローチャート。
【図7】図7A及び図7Bは、インターレース方式による画像印刷手順の一例を説明する説明図。
【図8】図8A及び図8Bは、他のインターレース方式による画像印刷手順を説明する説明図。
【図9】図9A及び図9Bは、オーバーラップ方式による画像印刷手順の一例を説明する説明図。
【図10】通常印刷時の印刷領域Pと媒体Sとの関係を説明した説明図。
【図11】縁無し印刷時の印刷領域Pと媒体Sとの関係を説明した説明図。
【図12】縁無し印刷の他例を説明した説明図。
【図13】従来の問題点を説明する図。
【図14】本発明の溝部の一例を説明する断面図。
【図15】本発明の溝部の一例を説明する平面図。
【図16A】媒体の先端部の印刷手順を説明する図。
【図16B】媒体の先端部の印刷手順を説明する図。
【図16C】媒体の先端部の印刷手順を説明する図。
【図16D】媒体の先端部の印刷手順を説明する図。
【図16E】媒体の先端部の印刷手順を説明する図。
【図16F】媒体の先端部の印刷手順を説明する図。
【図17A】媒体の後端部の印刷手順を説明する図。
【図17B】媒体の後端部の印刷手順を説明する図。
【図17C】媒体の後端部の印刷手順を説明する図。
【図17D】媒体の後端部の印刷手順を説明する図。
【図17E】媒体の後端部の印刷手順を説明する図。
【図17F】媒体の後端部の印刷手順を説明する図。
【図18】縁無し印刷の実行手順を説明する図。
【図19】溝部の数が多い場合の一例を説明する図。
【図20】溝部の数が少ない場合の一例を説明する図。
【図21】本発明に係る印刷システムの一実施形態を説明する斜視図。
【図22】図21の印刷システムの構成を示すブロック構成図。
【符号の説明】
【0128】
1 インクジェットプリンタ、2 操作パネル、3 排紙部、4 給紙部、
5 操作ボタン、6 表示ランプ、7 排紙トレー、8 給紙トレー、
11A 紙挿入口、11B ロール紙挿入口、13 給紙ローラ、14 プラテン、
15 紙搬送モータ、17A 搬送ローラ、17B 排紙ローラ、
18A フリーローラ、18B フリーローラ、21 ヘッド、
30 クリーニングユニット、31 ポンプ装置、35 キャッピング装置、
41 キャリッジ、42 キャリッジモータ、44 プーリ、45 タイミングベルト、
46 ガイドレール、48 インクカートリッジ、49 カートリッジ装着部、
51 リニア式エンコーダ、122 バッファメモリ、124 イメージバッファ、
126 システムコントローラ、127 メインメモリ、
128 キャリッジモータ制御部、129 EEPROM、130 搬送制御部、
132 ヘッド駆動部、134 ロータリ式エンコーダ、
140 コンピュータ装置、211 ノズル群、211Y ノズル群(Y)、
211M ノズル群(M)、211C ノズル群(C)、211K ノズル群(K)、
354a 溝部、354b 溝部、356 吸収材、
360a 第1溝部、360b 第2溝部、360c 第3溝部、360d 第4溝部、360e 第5溝部、360f 第6溝部、360g 第7溝部、
362a 第1突起部、362b 第2突起部、362c 第3突起部、
362d 第4突起部、362e 第5突起部、362f 第6突起部、
364 凹部、
1102 コンピュータ本体、1104 表示装置、1106 印刷装置、
1108 入力装置、1108A キーボード、1108B マウス、
1110 読取装置、1110A フレキシブルディスクドライブ装置、
1110B CD−ROMドライブ装置、1204 ハードディスクドライブユニット、
S 媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記インク吐出部による前記インクの吐出動作と、前記搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行して媒体の縁まで印刷を行うためのコントローラと、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部であって、前記所定の方向の幅が、前記所定の搬送量よりも短い支持部とを備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記溝部が前記所定の方向と交差する方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記溝部が相互に平行に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インク吐出部が、前記溝部に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記溝部を3以上備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
媒体の縁まで印刷が行われるときの印刷方式がインターレース方式であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
媒体の縁まで印刷が行われるときの印刷方式がオーバーラップ方式であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
媒体の縁まで印刷が行われるときに、前記媒体の縁が前記搬送動作毎に前記支持部上を通過して前記溝部上にて停止することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記インク吐出部による前記インクの吐出動作と、前記搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行して媒体の縁まで印刷を行うためのコントローラと、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部であって、前記所定の方向の幅が、前記所定の搬送量よりも短い支持部とを備え、
前記溝部が前記所定の方向と交差する方向に沿って形成され、
前記溝部が相互に平行に設けられ、
前記インク吐出部が、前記溝部に沿って移動可能に設けられ、
前記溝部を3以上備え、
媒体の縁まで印刷が行われるときの印刷方式がオーバーラップ方式およびインターレース方式のうちのいずれか一方であり、
媒体の縁まで印刷が行われるときに、前記媒体の縁が前記搬送動作毎に前記支持部上を通過して前記溝部上にて停止することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部とを備えた印刷装置を用いて印刷する方法であって、
媒体の縁まで印刷を行うときに、
前記インク吐出部から前記媒体に向けてインクを吐出する工程と、
前記搬送機構により前記支持部の前記所定の方向の幅よりも長い所定の搬送量にて前記媒体を搬送する工程と、
を交互に行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部とを備えた印刷装置において実行されるプログラムであって、
媒体の縁まで印刷を行うときに、
前記インク吐出部から前記媒体に向けてインクを吐出するステップと、
前記搬送機構により前記支持部の前記所定の方向の幅よりも長い所定の搬送量にて前記媒体を搬送するステップと、
を交互に実行することを特徴とするプログラム。
【請求項12】
コンピュータ装置と、このコンピュータ装置に接続可能な印刷装置とを備え、
前記印刷装置は、媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部から吐出されたインクを回収するための複数の溝部と、
前記媒体を所定の方向に沿って搬送する搬送機構と、
前記インク吐出部による前記インクの吐出動作と、前記搬送機構による所定の搬送量分の搬送動作とを交互に実行して媒体の縁まで印刷を行うためのコントローラと、
前記溝部の間に設けられ、前記媒体を支持するための支持部であって、前記所定の方向の幅が、前記所定の搬送量よりも短い支持部とを有することを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図16F】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−1140(P2006−1140A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179985(P2004−179985)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】