説明

印刷装置、及び、プログラム

【課題】複数のヘッドに画素データを割り付けること。
【解決手段】所定方向に並ぶ複数のヘッドを1つの仮想ヘッドと見立て、或る画像形成動作時に印刷に使用する仮想ヘッドにおけるノズルと、当該ノズルによって或る画像形成動作時に形成されるドットの媒体上における所定方向の位置とを対応させ、記憶部に記憶された各ヘッドのノズル数とヘッド間隔とに基づいて、実際のヘッドに属する各ノズルと仮想ヘッドにおけるノズルとを対応付け、或る画像形成動作時に実際のヘッドに属する各ノズルによって形成されるドットの媒体上における所定方向の位置を取得し、取得した位置に基づいて、或る画像形成動作時に印刷に使用する画素データを画像データの中から抽出し、或る画像形成動作を実施するための印刷データを作成する印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一つとして、インクを吐出するノズルが設けられたヘッドが移動方向に移動しながら媒体に対してノズルからインクを吐出して画像を形成する画像形成動作と、ヘッドと媒体の相対位置を移動方向と交差する方向に移動する動作と、を繰り返すインクジェットプリンター(以下、プリンター)が知られている。
【0003】
プリンターは、プリンタードライバーが作成した印刷データに基づいて印刷を実施する。プリンタードライバーは、印刷データの作成において、複数の画素データから構成されるマトリクス状の画像データの中から各ノズルに割り付ける画素データを抽出し、各ノズルに割り付ける順に画素データを並べ替える処理(ノズル割り付け処理)を実施する。そのために、画像形成動作ごとに、ノズルと、そのノズルが形成すべきラスターライン(移動方向に沿うドット列)の位置とを、対応付ける処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリンターの中には、移動方向と交差する方向に複数のヘッドが並んだプリンターがある。このようなプリンターでは、各ヘッドに画素データを割り付ける処理を実施しなければならない。しかし、特許文献1に記載の印刷データの作成方法は、1つのヘッドを有するプリンターに応じた方法であり、1つのヘッドに画素データを割り付ける方法である。そのため、複数のヘッドに対して画素データを割り付けることが出来ない。
【0006】
そこで、本発明は、複数のヘッドに画素データを割り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)媒体に対してインクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列をそれぞれ備える複数のヘッドであって、前記所定方向に並んで配置された複数のヘッドと、(B)画像データを構成する複数の画素データを並び替えて印刷データを作成し、前記印刷データに基づいて、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向と交差する方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる画像形成動作と、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向に相対移動させる動作と、を繰り返し実行させる制御部と、(C)各前記ヘッドが備える前記ノズル列に属する前記ノズルの数であるノズル数と、前記所定方向に並ぶ前記複数のヘッドの前記所定方向の間隔であるヘッド間隔とを、記憶する記憶部と、を有し、(D)前記制御部は、(D1)前記複数のヘッドを1つの仮想ヘッドと見立て、或る画像形成動作時に印刷に使用する前記仮想ヘッドにおけるノズルと、当該ノズルによって前記或る画像形成動作時に形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置とを対応させ、(D2)前記記憶部に記憶された前記ノズル数と前記ヘッド間隔とに基づいて、実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルと前記仮想ヘッドにおける前記ノズルとを対応付け、前記或る画像形成動作時に実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルによって形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置を取得し、(D3)取得した前記位置に基づいて、前記或る画像形成動作時に印刷に使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出し、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、ことを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターの概略断面図であり、図2Bはプリンターの概略上面図である。
【図3】ヘッドユニットにおける複数のヘッドの配置を示す図である。
【図4】図4Aは仮想1ヘッドを説明する図であり、図4B及び図4Cは部分オーバーラップ印刷の説明図である。
【図5】部分オーバーラップ印刷における上端印刷と下端印刷を説明する図である。
【図6】印刷に関するパラメーターテーブルを説明する図である。
【図7】図7Aから図7Eはパス1のスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。
【図8】上端印刷のスケジューリングテーブルの作成処理のフローである。
【図9】図9Aから図9Cは通常印刷のスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。
【図10】図10Aから図10Cはダミーのスケジューリングテーブルの作成処理を説明する図である。
【図11】図11Aから図11Dはパス10のスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。
【図12】図12A及び図12Bはパス11とパス12のスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。
【図13】下端印刷のスケジューリングテーブルの作成フローである。
【図14】画像データを示す図である。
【図15】図15Aはヘッド構成に関するパラメーターテーブルを示す図であり、図15Bは各ヘッドのスケジューリングテーブルに変換する様子を示す図であり、図15Cは各ヘッド用に並べ替えられたラスターデータを示す図である。
【図16】図16Aから図16Cは重複する2つのノズルを使用する場合のノズル割り付け処理を説明する図である。
【図17】図17A及び図17Bは重複する2つのノズルが下部POLノズルに設定された場合のノズル割付処理を説明する図である。
【図18】図18A及び図18Bは3つのヘッドを仮想1ヘッドと見立てた場合を説明する図である。
【図19】図19A及び図19Bはヘッドの端部が重複しない例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、(A)媒体に対してインクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列をそれぞれ備える複数のヘッドであって、前記所定方向に並んで配置された複数のヘッドと、(B)画像データを構成する複数の画素データを並び替えて印刷データを作成し、前記印刷データに基づいて、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向と交差する方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる画像形成動作と、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向に相対移動させる動作と、を繰り返し実行させる制御部と、(C)各前記ヘッドが備える前記ノズル列に属する前記ノズルの数であるノズル数と、前記所定方向に並ぶ前記複数のヘッドの前記所定方向の間隔であるヘッド間隔とを、記憶する記憶部と、を有し、(D)前記制御部は、(D1)前記複数のヘッドを1つの仮想ヘッドと見立て、或る画像形成動作時に印刷に使用する前記仮想ヘッドにおけるノズルと、当該ノズルによって前記或る画像形成動作時に形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置とを対応させ、(D2)前記記憶部に記憶された前記ノズル数と前記ヘッド間隔とに基づいて、実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルと前記仮想ヘッドにおける前記ノズルとを対応付け、前記或る画像形成動作時に実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルによって形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置を取得し、(D3)取得した前記位置に基づいて、前記或る画像形成動作時に印刷に使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出し、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、ことを特徴とする印刷装置である。
このような印刷装置によれば、複数のヘッドに画素データを割り付けることができる。印刷データの作成処理を容易にすることができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記仮想ヘッドにおける各前記ノズルが、画像を印刷するために使用する使用ノズルであるのか、又は、画像を印刷するために使用しない不使用ノズルであるのか、を決定し、実際の前記ヘッドに属する或るノズルが前記仮想ヘッドにおける前記不使用ノズルと対応する場合、インクを吐出しないデータを前記或るノズルに割り付け、実際の前記ヘッドに属する或るノズルが前記仮想ヘッドにおける前記使用ノズルと対応する場合、前記或るノズルによって形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置に対応する前記画素データを前記画像データの中から抽出し、抽出した前記画素データを前記或るノズルに割り付けること。
このような印刷装置によれば、実際のヘッドの使用ノズルと不使用ノズルを決定することができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、実際の前記ヘッドに属する前記ノズルに対して、前記所定方向の一端側に位置する前記ノズルから順に、正の整数の番号が付けられ、前記仮想ヘッドにおける前記ノズルに対して、前記所定方向の前記一端側に位置する前記ノズルから順に、正の整数の番号が付けられ、前記所定方向に並ぶ前記ヘッドがそれぞれ有する前記ノズル列の端部ノズルが重複し、前記記憶部は前記ヘッド間隔として重複する前記ノズルの数を記憶し、前記複数のヘッドにおいて前記所定方向の最も前記一端側の前記ヘッドからN−1番目の前記ヘッドまでに属する前記ノズルの合計数をXとし、前記所定方向の最も前記一端側の前記ヘッドからN番目の前記ヘッドまでに重複する前記ノズルの合計数をYとしたとき、前記N番目の前記ヘッドの1番ノズルに対応する前記仮想ヘッドにおける前記ノズルの番号Zを表す式が、Z=X−Y+1となること。
このような印刷装置によれば、仮想ヘッドのノズルと実際のヘッドのノズルを対応付けることができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記記憶部は、前記所定方向に並ぶ前記ヘッドがそれぞれ有する前記ノズル列の端部の重複する前記ノズルの中で画像を印刷するために使用する前記ノズルを決定するための情報を、記憶すること。
このような印刷装置によれば、印刷に使用するノズルに抽出した画素データを割り付けることができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、実際の前記ヘッドが備える前記ノズル列では前記ノズルが前記所定方向に所定の間隔で並び、前記仮想ヘッドでは前記ノズルが前記所定方向に前記所定の間隔で並び、実際の前記ヘッドに属する前記ノズルに対して、前記所定方向の一端側に位置する前記ノズルから順に、正の整数の番号が付けられ、前記仮想ヘッドにおける前記ノズルに対して、前記所定方向の前記一端側に位置する前記ノズルから順に、正の整数の番号が付けられ、前記所定方向に並ぶ前記ヘッドがそれぞれ有する前記ノズル列の端部ノズルが重複せず、前記複数のヘッドにおいて前記所定方向の最も前記一端側の前記ヘッドからN−1番目の前記ヘッドまでに属する前記ノズルの合計数をXとし、前記所定の間隔をTとし、前記ヘッド間隔をUとしたとき、前記所定方向の前記一端側からN番目の前記ヘッドの1番ノズルに対応する前記仮想ヘッドにおける前記ノズルの番号Zを表す式が、Z=X+(U/T)となること。
このような印刷装置によれば、仮想ヘッドのノズルと実際のヘッドのノズルを対応付けることができる。
【0015】
かかる印刷装置であって、前記N番目の前記ヘッドに属するノズル数をVとしたとき、前記N番目の前記ヘッドが備える前記ノズル列のうちの前記所定方向の最も他端側に位置する前記ノズルに対応する前記仮想ヘッドにおける前記ノズルの番号Wを表す式が、W=Z+V−1となること。
このような印刷装置によれば、仮想ヘッドのノズルと実際のヘッドのノズルを対応付けることができる。
【0016】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記仮想ヘッドにおける前記ノズルのうちの前記所定方向の一端側に位置する一端側ノズル群と前記所定方向の他端側に位置する他端側ノズル群を設定し、前記一端側ノズル群に属する前記ノズルと、前記他端側ノズル群に属する前記ノズルとで、前記交差する方向に沿うドット列を形成する前記印刷データを作成すること。
このような印刷装置によれば、印刷データの作成処理を容易にすることができ、画質劣化を緩和することができる。
【0017】
また、媒体に対してインクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列をそれぞれ備える複数のヘッドであって前記所定方向に並んで配置された複数のヘッドを有し、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向と交差する方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる画像形成動作と、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向に相対移動させる動作と、を繰り返し実行する印刷装置の印刷データを、コンピューターに作成させるためのプログラムであって、前記複数のヘッドを1つの仮想ヘッドと見立て、或る画像形成動作時に印刷に使用する前記仮想ヘッドにおけるノズルと、当該ノズルによって前記或る画像形成動作時に形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置とを対応させることと、各前記ヘッドが備える前記ノズル列に属する前記ノズルの数と、前記所定方向に並ぶ前記複数のヘッドの前記所定方向の間隔とに基づいて、実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルと前記仮想ヘッドにおける前記ノズルとを対応付け、前記或る画像形成動作時に実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルによって形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置を取得することと、取得した前記位置に基づいて、前記或る画像形成動作時に印刷に使用する画素データを画像データの中から抽出し、前記或る画像形成動作を実施するための印刷データを作成することと、を前記コンピューターに実行させるためのプログラムである。
このようなプログラムによれば、複数のヘッドに画素データを割り付けることができる。印刷データの作成処理を容易にすることができる。
【0018】
===印刷システムについて===
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図2Aは、プリンター1の概略断面図であり、図2Bは、プリンター1の概略上面図である。以下、インクジェットプリンター(プリンター1)とコンピューター60が接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
【0019】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0020】
搬送ユニット20は、媒体Sが連続する方向(搬送方向)に、媒体Sを上流側から下流側に搬送するものである。モーターによって駆動する搬送ローラー21によって印刷前のロール状の媒体Sを印刷領域に供給し、その後、印刷済みの媒体Sを巻取機構によりロール状に巻き取る。なお、印刷中に印刷領域に位置する媒体を下からバキューム吸着することで、媒体Sを所定の位置に保持することができる。
【0021】
駆動ユニット30は、ヘッドユニット40を、媒体Sの搬送方向に対応するX方向(所定方向に相当)と媒体Sの紙幅方向に対応するY方向(所定方向と交差する方向に相当)とに自在に移動させるものである。駆動ユニット30は、ヘッドユニット40をX方向に移動させるX軸ステージ31と、ヘッドユニット40をY方向に移動させるY軸ステージ32と、これらを移動させるモーター(不図示)とで、構成されている。
【0022】
ヘッドユニット40は、画像を形成するためのものであり、複数のヘッド41を有する。ヘッド41の下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられ、各ノズルにはインクが充填された圧力室が設けられている。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、圧力室を膨張・収縮させることによりインクを吐出するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出するサーマル方式でもよい。
【0023】
図3は、ヘッドユニット40における複数のヘッド41の配置を示す図である。なお、ヘッド41およびノズルの配置をヘッドユニット40の上面から仮想的に見た図である。ここでは、ヘッドユニット40が15個のヘッド41(1)〜41(15)を有するとする。各ヘッド41のノズル面には、イエローインクを吐出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックノズル列Kが形成されている。各ノズル列はノズルを360個ずつ備え、360個のノズルは紙幅方向に一定の間隔(360dpi)で整列している。図示するように紙幅方向の奥側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#360)。
【0024】
製造上の問題等により、ヘッドユニット40内において複数のヘッド41は千鳥状に配置されている。即ち、紙幅方向に隣り合うヘッド(例:41(1),41(2))は搬送方向にずれて配置されている。また、説明のため、紙幅方向の奥側のヘッド41から順に、第1ヘッド41(1)、第2ヘッド41(2)…と呼ぶ。
【0025】
そして、紙幅方向に隣り合う2つのヘッド(例:41(1)・41(2))の端部の10個のノズルが重複している。具体的には、紙幅方向に隣り合う2つのヘッド(41(1),41(2))のうち、奥側のヘッド(41(1))の手前側端部の10個のノズル#351〜#360の紙幅方向の位置と、手前側のヘッド(41(2))の奥側端部の10個のノズル#1〜#10の紙幅方向の位置が等しい。ゆえに、ヘッドユニット40内において、複数のノズルがヘッドユニット40の幅長さに亘って紙幅方向に一定の間隔(360dpi)で並ぶことになる。
【0026】
次に、印刷手順について説明する。まず、搬送ユニット20により印刷領域に媒体Sを供給する。そして、X軸ステージ31にてヘッドユニット40をX方向(媒体の搬送方向)に移動させながらノズルからインクを吐出する画像形成動作と、Y軸ステージ32によりX軸ステージ31を介して、ヘッドユニット40をY方向(紙幅方向)に移動する動作と、を繰り返す。その結果、先の画像形成動作により形成されたドット位置とは異なる位置に、後の画像形成動作によりドットを形成することができ、印刷領域に位置する媒体Sに対して2次元の画像を印刷することができる。こうして印刷領域に位置する媒体Sへの印刷が終了すると、搬送ユニット20により印刷が未だなされていない媒体部分が印刷領域に供給され、印刷領域の媒体に画像が印刷される。以下の説明では、1回の画像形成動作(ヘッドユニット40をX方向に移動させながら画像を形成する動作)を「パス」と呼ぶ。
【0027】
<プリンタードライバーについて>
コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンター1に出力するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。プリンタードライバーは、メモリーに記憶されたプログラムに従って、コンピューター60のハードウェア資源を利用して、以下の処理を実行する。
【0028】
以下、印刷データの作成フローを説明する。プリンタードライバーは、まず、解像度変換処理を実施する。解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データを、媒体に印刷する際の解像度に変換する処理である。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。画像データは、印刷画像を構成する画素に関する画素データから構成される。
【0029】
次に、プリンタードライバーは色変換処理を実施する。色変換処理は、プリンター1にて印刷可能なように、プリンター1が有するインクの色に応じて、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。その後、プリンタードライバーはハーフトーン処理を実施する。ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンター1が形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画素データは、画素に対応する媒体上の領域に形成するドットに関するデータである。例えば、4階調の画素データであれば、「大ドット形成」「中ドット形成」「小ドット形成」「ドット無し」の何れかが示される。
【0030】
最後にプリンタードライバーは、「ノズル割り付け処理」を実施する。ノズル割り付け処理は、マトリクス状に配置された画素データから構成される画像データを、プリンター1に転送すべきデータ順に並び替える処理である。即ち、ノズル割り付け処理では、パスごとに、各ノズルに割り付ける画素データが決定される(詳細は後述)。そして、プリンタードライバーは、これらの処理を経て作成された印刷データをプリンター1に送信する。プリンター1は受信した印刷データに基づき、印刷を実施する。
【0031】
===印刷方法について===
図4Aは、仮想1ヘッドを説明する図である。図3に示すように、プリンター1は15個のヘッド41を備えるとしているが、以下、説明の簡略のため、2個のヘッド41を用いて説明する。また、各ヘッド41が有するノズル列数を1つとし、ノズル列に属するノズル数を4個(#1〜#4)とし、ノズルピッチを「3D(図3の360dpi)」とする。そして、第1ヘッド41(1)のY方向手前側の2個のノズル#3,#4と、第2ヘッド41(2)のY方向奥側の2個のノズル#1,#2が重複しているとする。ここで、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)を組み合わせたヘッドを「仮想1ヘッド(仮想ヘッドに相当)」と呼ぶ。各ヘッド41のノズル数が4個であり、重複するノズル数が2個であるため、仮想1ヘッドではノズル数が6個(##1〜##6)となる。例えば、仮想1ヘッドのノズル##1が、第1ヘッド41(1)のノズル#1に対応し、仮想ヘッドのノズル##3が、第1ヘッド41(1)のノズル#3、及び、第2ヘッド41(2)のノズル#1と対応する。
【0032】
図4B及び図4Cは、部分オーバーラップ印刷の説明図である。図4Bは、パス1〜パス5における仮想1ヘッドの位置を示し、図4Cは、パス1〜パス6における仮想1ヘッドの位置を示す。なお、仮想1ヘッド内のノズルにおいてインクを吐出するノズルを黒塗りし、各図の最後のパス(図4Bではパス5、図4Cではパス6)で形成されるドットを黒塗りしている。「部分オーバーラップ印刷」では、ノズル列のY方向奥側端部に位置するノズル(▲、以下「上部POLノズル」と呼ぶ)と、ノズル列のY方向手前側端部に位置するノズル(■、以下「下部POLノズル」と呼ぶ)とが、他の1つのノズル(●)と同じ機能を果たす。本実施形態では、仮想1ヘッドのノズル##1(即ち、第1ヘッド41(1)のノズル#1)が上部POLノズルに相当し、仮想1ヘッドのノズル##6(即ち、第2ヘッド41(2)のノズル#4)が下部POLノズルに相当する。
【0033】
図示する印刷方法では、1つのノズル(●)が1つのラスターライン(X方向に沿うドット列)を形成するのに対して、上部POLノズル(▲)と下部POLノズル(■)が1つのラスターラインを形成する。X方向に並ぶ媒体上の画素に対してX方向の左側から順に番号が付されているとすると、上部POLによって偶数画素にドット(△)が形成され、下部POLによって奇数画素にドット(□)が形成される。即ち、上部POLノズルと下部POLノズルによってX方向に交互にドットが形成される。
【0034】
このように部分オーバーラップ印刷では、一部のラスターラインが複数のノズルによって形成されるため、そのラスターラインについては、不良ノズルやインク吐出のばらつきによる画質劣化を抑制することができる。特に、ノズル列の端部ノズルは中央部のノズルに比してインク吐出のばらつきが大きい。そのため、ノズル列の端部ノズルにより形成されるラスターラインを複数のノズルにより形成することで、画質劣化を抑制する効果がより得られる。
【0035】
なお、本実施形態では仮想1ヘッドの端部ノズルを上部POLノズルと下部POLノズルとしている。そのため、第1ヘッド41(1)の一方の端部ノズル#1と第2ヘッド41(2)の一方の端部ノズル#4により1つのラスターラインが形成される。その結果、各ノズル列の一方の端部ノズルの吐出ばらつきによる画質劣化を抑制することができる。しかし、第1ヘッド41(1)の他方の端部ノズル#4と第2ヘッド41(2)の他方の端部ノズル#1は、上部POLノズルや下部POLノズルに設定されない。ただし、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)の端部は重複しているため、重複する2つのノズルを用いて1つのラスターラインを形成する場合には、ノズル列の両端部のノズルの吐出ばらつきによる画質劣化を抑制することができる。例えば、第1ヘッド41(1)のノズル#3と第2ヘッド41(2)の端部ノズル#1により1つのラスターラインを形成することで、端部ノズルの吐出ばらつきによる画質劣化を抑制することができる。
【0036】
図5は、部分オーバーラップ印刷における上端印刷と下端印刷を説明する図である。前述の図4B及び図4Cに示す印刷では、ヘッドユニット40の搬送量Fを一定の5Dとし、ラスターラインのY方向の間隔をDとする。そのため、Y方向の奥側(媒体の上端部)とY方向の手前側(媒体の下端部)では、Y方向に連続してラスターラインを形成することが出来ていない。そのため、印刷の開始時および終了時には、図4B及び図4Cに示す通常印刷とは異なる印刷を実施する。
【0037】
印刷の開始時(Y方向の奥側端部の印刷時)を「上端印刷」と呼び、図5ではパス1〜パス3が上端印刷に相当する。印刷の終了時(Y方向の手前側端部の印刷時)を「下端印刷」と呼び、図5ではパス10〜パス12が下端印刷に相当する。上端印刷および下端印刷では通常印刷に比してヘッドユニット40の搬送量F(=1D)が短い。
【0038】
図中ではインクを吐出するノズルを黒塗りにし、インクを吐出しないノズルを白塗りにしている。通常印刷では(パス4〜パス9)、一定して、仮想1ヘッドに属する6個のノズル##1〜##6を使用する。これに対して、上端印刷および下端印刷では、パスによってインクを吐出するノズル数やノズルの位置が異なる。仮に、例えば、上端印刷のパス1のノズル##6を吐出ノズルとしてしまうと、通常印刷のパス5のノズル##2でも同じ位置にドットが形成され、2重にドットが形成されてしまう。そのため、上端・下端印刷では、パスごとに、インクを吐出すべきノズルの数や位置を調整する。
【0039】
このように通常印刷とは異なる上端・下端印刷を実施することで、ラスターラインをY方向に連続して形成することができる。ここで、ラスターラインが形成されるY方向の位置を「ラスター位置(位置に相当)」と呼び、Y方向奥側に形成されるラスターラインから順に小さい番号(L1、L2、L3…)を付す。図5では、1番目のラスターライン(L1)から55番目のラスターライン(L55)が連続して形成される。
【0040】
===ノズル割り付け処理===
プリンタードライバーは、印刷データの作成時に、マトリクス状に画素データが並んだ画像データの中から各パスの各ノズルに割り付ける画素データを抽出し、プリンター1に転送すべき順に画素データを並び替える「ノズル割り付け処理」を実施する。プリンタードライバーは、ノズル割り付け処理に際し、「スケジューリングテーブル」を作成する。スケジューリングテーブルは、パスごとに、ノズルと、そのノズルの種別と、そのノズルが形成すべきラスターラインの位置(ラスター位置)とが、対応付けられたテーブルである。ここで、インクを吐出するノズルを「使用ノズル」と呼び、インクを吐出しないノズルを「不使用ノズル」と呼ぶ。ノズル種別として、使用ノズルや不使用ノズル、また、図5のような部分オーバーラップ印刷を実施する場合には、使用ノズルの一部が上部POLノズルや下部POLノズルとして、スケジューリングテーブルに登録される。
【0041】
プリンタードライバーは、スケジューリングテーブルを作成することによって、例えば、どのノズルを使用ノズルとし、また、どのノズルを不使用ノズルにするのかを決定する。また、プリンタードライバーは、スケジューリングテーブルを作成することによって、マトリクス状に画素データが並ぶ画像データの中から、該当パスの或るノズルに割り当てるべき画素データを抽出することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、全てのパスのノズル割り付け処理を終える前に、ノズル割り付け処理を終えたパスの印刷データごとに、プリンター1に送信する。そのため、スケジューリングテーブルの作成も、上端印刷・通常印刷・下端印刷の順に、パスごとに実施する。そうすることで、該当パスのスケジューリングテーブルを作成し、そのパスで印刷する画素データを並べ替えた後、そのパスのスケジューリングテーブルの情報を初期化し、次のパスのスケジューリングテーブルを作成することができる(情報を上書きできる)。そのため、スケジューリングテーブルを記憶するコンピューター60のメモリー容量を小さくすることができる。また、印刷を早く開始することができ、全てのパスの印刷データを記憶する必要がないのでコンピューター60のメモリー容量を小さくすることができる。ただし、これに限らず、全てのパスのノズル割り付け処理を終了した後に、印刷データをまとめてプリンター1に送信してもよい。
【0043】
図6は、図5の印刷方法に関するスケジューリングテーブルを作成するためのパラメーターテーブルを説明する図である。図5の印刷方法に関するスケジューリングテーブルを作成するために、上端印刷のテーブルと、通常印刷のテーブルと、下端印刷のテーブルと、上端POLノズルのテーブルと、下端POLノズルのテーブルとが用いられる。ノズル間ピッチとは、ラスターラインが形成される搬送方向の間隔である。図5の印刷方法ではノズル間ピッチが「1D」である。また、通常印刷時のヘッドユニット40の搬送量Fが「5D」であり、上端・下端印刷時の搬送量Fが「1D」である。開始ノズル及び終了ノズルは、印刷に使用可能なノズルの範囲を示す。なお、これらの値は、印刷モードや用紙サイズによって変動する。また、これらのパラメーターテーブルは、プリンター1側のメモリー13に記憶されていても良いし、コンピューター60にプリンタードライバーをインストールする際にコンピューター60側のメモリーに記憶されるようにしても良い。
【0044】
<上端印刷のスケジューリングテーブルの作成について>
図7Aから図7Eは、パス1に対するスケジューリングテーブルの作成処理の各段階の説明図である。図8は、上端印刷におけるスケジューリングテーブルの作成処理のフローである。本実施形態の印刷方法(図5)では、上端印刷の或るパスで形成されるドットよりも、そのパスよりも後続のパスで形成されるドットを優先させる。即ち、上端印刷の或るパスのノズルがドットを形成するラスター位置と、そのパスよりも後続のパスのノズルがドットを形成するラスター位置とが一致する場合、上端印刷の或るパスのノズルを不使用ノズルに決定する。そのため、上端印刷の或るパスのノズルがドットを形成するラスター位置と、そのパスよりも後続のパスのノズルがドットを形成するラスター位置との比較処理を行う。
【0045】
以下、上端印刷のパス1のスケジューリングテーブルの作成を例に挙げて説明する。まず、プリンタードライバーは、図6の上端印刷に関するパラメーターテーブルを参照し、上端印刷のパス1における使用ノズルの範囲を決定する(図8のS001)。図6のパラメーターテーブルによれば、開始ノズルがノズル##1であり、終了ノズルがノズル##6である。なお、これは仮想1ヘッドにおける使用ノズルの範囲である。よって、プリンタードライバーは、図7Aのスケジューリングテーブルにおいて、仮想1ヘッドのノズル##1からノズル##6までを使用ノズル(●)に決定する。
【0046】
そして、プリンタードライバーは、開始ラスター位置(1)とノズル間ピッチ(1・D)とノズルピッチ(3・D)により、パス1における各使用ノズルのラスター位置を算出する。なお、開始ラスター位置は、上端印刷の最初のパス1のノズル##1が対応するラスター位置である。よって、プリンタードライバーは、パス1のノズル##1のラスター位置を1番としてスケジューリングテーブルに登録する。それ以外のノズル##iのラスター位置は「開始ラスター位置+(ノズルピッチ/ノズル間ピッチ)」によって算出される。例えば、パス1の使用ノズル##2のラスター位置は4(=1+(3D/1D))と算出される。こうして、プリンタードライバーは、図7Aに示すように、パス1の使用ノズル(##1〜##6)の各ラスター位置を、スケジューリングテーブルに登録する。
【0047】
次に、プリンタードライバーは、パス1の使用ノズルの各ラスター位置と、パス1よりも後続の上端印刷のパスにおける使用ノズルの各ラスター位置との比較を行う(S002)。なお、プリンタードライバーは、上端印刷の範囲を、図6のパラメーターテーブルの「終了ラスター位置」によって判断する。終了ラスター位置は、上端印刷の最後のパスのノズル##1が対応するラスター位置である。例えば、パス1の次のパス2におけるノズル##1のラスター位置は「2(=開始ラスター位置(1)+(ヘッドユニット搬送量(1D)/ノズル間ピッチ(1D))」と算出される。パス2のノズル##1のラスター位置(2)は終了ラスター位置(3)よりも搬送方向下流側であるため、プリンタードライバーはパス2が上端印刷であると判断できる。また、プリンタードライバーは、パス2のノズル##1のラスター位置(2)とノズル間ピッチ(1・D)とノズルピッチ(3・D)により、パス2の使用ノズル##1〜##6の各ラスター位置を算出する。そうして、プリンタードライバーは、パス1の使用ノズルの各ラスター位置とパス2の使用ノズルの各ラスター位置とを比較する。比較の結果、図7Bに示すようにラスター位置が一致するものがないので(S002→NO)、スケジューリングテーブルは図7Aから変化しない。
【0048】
同様に、プリンタードライバーは、図7Cに示すように、パス1の使用ノズルの各ラスター位置と上端印刷であるパス3の使用ノズルの各ラスター位置とを比較する。比較の結果、ラスター位置が一致するものがないので、スケジューリングテーブルは図7Aから変化しない。なお、比較の結果、ラスター位置が一致するものがあれば(S002→YES)、パス1のその使用ノズルを「不使用ノズル」に変更する(S003)。こうすることで、二重にラスターラインが形成されてしまうことを防止できる。
【0049】
図5に示す印刷方法ではパス4から通常印刷となる。そのため、次に、プリンタードライバーは、図6に示す通常印刷に関するパラメーターテーブルと、上部POLノズルに関するパラメーターテーブルと、下部POLノズルに関するパラメーターテーブルとを参照し、通常印刷の使用ノズルの範囲を判断する。プリンタードライバーは、通常印刷では、ノズル##2〜ノズル##5が使用ノズル(○)となり、ノズル##1が上部POLノズル(△)となり、ノズル##6が下部POLノズル(□)となると判断する。そして、プリンタードライバーは、開始ラスター位置(8)とノズル間ピッチ(1・D)とヘッドユニット搬送量(5・D)とに基づいて、通常印刷の各パスのノズル##1に対応するラスター位置を算出する。また、プリンタードライバーは、ノズル##1に対応するラスター位置とノズル間ピッチ(1・D)とノズルピッチ(3・D)とに基づいて、各パスの使用ノズルのラスター位置を算出する。そうして、パス1の使用ノズルの各ラスター位置と、通常印刷のパスの使用ノズル(上部POLノズルと下部POLノズルも含む)の各ラスター位置とを、比較する(S004)。図7Dに示すように、パス1の使用ノズルの各ラスター位置とパス4の使用ノズルの各ラスター位置は一致しないので(S004→NO)、スケジューリングテーブルは図7Aから変化しない。
【0050】
こうして、プリンタードライバーは、パス1の使用ノズルのラスター位置の範囲と、後続パスの使用ノズルのラスター位置の範囲とが重複しなくなるまで、ラスター位置の比較処理を実施する。図7Eに示すように、パス1の使用ノズル##5,##6の各ラスター位置と、パス5の使用ノズル##1,##2の各ラスター位置とが、一致する(S004→YES)。この場合、プリンタードライバーは、ラスター位置が一致する通常印刷のパスの使用ノズルが上部POLノズルであるか否かを判断する(S005)。パス1の使用ノズル##5のラスター位置と一致するパス5の使用ノズル##1は上部POLノズル(△)である(S005→YES)。この場合、プリンタードライバーは、図7Eに示すように、パス1の使用ノズル##1のノズル種別を使用ノズルから「下部POLノズル」に変更する(S007)。こうすることで、パス1の下部POLノズル##5とパス5の上部POLノズル##1とで1つのラスターラインを形成することができる。
【0051】
一方、パス1の使用ノズル##6のラスター位置と一致するパス5の使用ノズル##2は上部POLノズルではない(S005→NO)。この場合、プリンタードライバーは、図7Eに示すように、パス1の使用ノズル##6のノズル種別を使用ノズルから「不使用ノズル」に変更し(S006)、ラスター位置の登録も削除する。こうすることで、パス1のノズル##6とパス5のノズル##2とで二重にラスターラインが形成されてしまうことを防止できる。そして、プリンタードライバーは、パス1の使用ノズルのラスター位置の範囲とパス6以降の使用ノズルのラスター位置の範囲とが重複しないと判断し、パス1のスケジューリングテーブルの作成を終了する。このように、プリンタードライバーは上端印刷の他のパス2及びパス3のスケジューリングテーブルを作成する。
【0052】
<通常印刷のスケジューリングテーブルの作成について>
図9Aから図9Cは、通常印刷のパス4のスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。プリンタードライバーは、まず、通常印刷のパラメーターテーブルを参照し、図9Aに示すように、仮想1ヘッドのノズル##2〜ノズル##5を使用ノズル(●、上部POLノズル・下部POLノズルは含まない)としてスケジューリングテーブルに登録する。そして、プリンタードライバーは、上端印刷時と同様に、開始ラスター位置、ノズル間ピッチ、ノズルピッチに基づき、使用ノズルのラスター位置を算出する。
【0053】
次にプリンタードライバーは、上部POLノズルのパラメーターテーブルを参照し、図9Bに示すように、仮想1ヘッドのノズル##1を上部POLノズル(▲)とし、ラスター位置と共に、スケジューリングテーブルに登録する。そして、プリンタードライバーは、下部POLノズルのパラメーターテーブルを参照し、図9Cに示すように、仮想1ヘッドのノズル##6を下部POLノズル(■)とし、ラスター位置と共に、スケジューリングテーブルに登録する。こうして、パス4のスケジューリングテーブルの作成を終了する。
【0054】
図5の印刷方法では通常印刷では形成できないドットを上端・下端印刷で形成するとし、通常印刷で形成されるドットを上端・下端印刷で形成可能なドットよりも優先させる。そのため、通常印刷のスケジューリングテーブルの作成処理では、上端印刷のスケジューリングテーブルの作成処理とは異なり、該当パスの使用ノズルのラスター位置と後続パスの使用ノズルのラスター位置との比較処理を行わない。こうして、プリンタードライバーは他の通常印刷のパスのスケジューリングテーブルも作成する。なお、プリンタードライバーは、開始ラスター位置及び終了ラスター位置に基づき、図5の印刷方法ではパス4からパス9までが通常印刷であると判断する。
【0055】
<下端印刷のスケジューリングテーブルの作成について>
図10Aから図10Cは、ダミーのスケジューリングテーブルの作成処理を説明する図である。図11Aから図11Dは、パス10のスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。図12A及び図12Bは、パス11とパス12のスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。図13は、下端印刷のスケジューリングテーブルの作成フローである。まず、プリンタードライバーは、ダミーのスケジューリングテーブルを作成する(図13のS101)。ダミーのスケジューリングテーブルは、下端印刷が開始するパス10以降も通常印刷が行われると仮定し、パス10以降のパスで形成されるラスターラインの位置を示すものである。このため、ダミーのスケジューリングテーブルの作成処理には、通常印刷に関するパラメーターが用いられる。
【0056】
まず、プリンタードライバーは、通常印刷の最後のパス9から通常印刷時の搬送量F(5・D)でヘッドユニット40が搬送されたとし、仮想的なパス10’のノズル##1に対応するラスター位置L38(=通常印刷の終了ラスター位置33+(搬送量5・D/ノズル間ピッチ1・D))を算出する。そして、プリンタードライバーは、上部POLノズル(##1)と使用ノズル(##2〜##5)と下部POLノズル(##6)の各ラスター位置を算出し、ダミーのスケジューリングテーブルに登録する(図10A)。ダミーのスケジューリングテーブルでは、下端印刷領域においても通常印刷を行った場合に形成されるラスターラインの位置、即ち、下端印刷で形成すべきラスターラインの位置が分かればよい。そのため、ノズル番号とラスター位置とを対応付ける必要がなく、ラスター位置だけダミーのスケジューリングテーブルに登録すればよい。
【0057】
図5の印刷方法では、最後のラスター位置が55番(L55)である。即ち、56番以降のラスター位置は印刷領域外のラスター位置となる。そのため、プリンタードライバーは、下端印刷領域においても通常印刷を行った場合に形成されるラスターラインの位置のうち、56番よりも小さい番号のラスター位置だけ、ダミーテーブルに登録する。そして、プリンタードライバーは、下端印刷領域に遷移させた通常印刷の使用ノズルのラスター位置が55番よりも大きくなるまで、ダミーのスケジューリングテーブルにラスター位置を登録する処理を実施する。なお、最後のラスター位置(図5ではL55)は媒体サイズや画像サイズ、印刷方法によって変動する。また、ここでは、下端印刷のパスのノズル同士(POLノズル同士)で1つのラスターラインを形成する事は無いとする。
【0058】
次に、プリンタードライバーは、下端印刷の使用ノズルの範囲を決定する(S102)。図6に示す下端印刷に関するパラメーターテーブルでは、開始ノズルがノズル##1であり、終了ノズルがノズル##6である。そのため、図11Aに示すように、プリンタードライバーは、下端印刷のパス10のスケジューリングテーブルにて、ノズル##1〜##6を使用ノズル(●)として登録し、使用ノズルの各ラスター位置を登録する。
【0059】
その後、プリンタードライバーは、パス10の使用ノズルの各ラスター位置とダミーのスケジューリングテーブルのラスター位置とを比較する(S103)。パス10では、全ての使用ノズル##1〜##6のラスター位置とダミーのスケジューリングテーブルのラスター位置が一致するので(S103→YES)、全ての使用ノズル##1〜##6が使用ノズルとして登録されたままとなる。そして、一致したラスター位置をダミーのスケジューリングテーブルから削除する(S105)。図12Aでは、ダミーのスケジューリングテーブルから削除されたラスター位置を、黒丸(●)から白丸(○)に変更して示す。ダミーのスケジューリングテーブルに登録されたラスター位置にだけ下端印刷においてラスターラインを形成すればよい。そのため、使用ノズルのラスター位置がダミーのスケジューリングテーブルのラスター位置と一致しない場合には(S103→NO)、その使用ノズルを「不使用ノズル」に変更する(S104)。
【0060】
次に、プリンタードライバーは、図11B〜図11Dに示すように、下端印刷のパス10の使用ノズルの中に、通常印刷のパスの下部POLノズル(□)と相方となるノズルがあるか否かを判断する(S106)。即ち、プリンタードライバーは、通常印刷のパスの下部POLノズルのラスター位置とパス10の使用ノズルのラスター位置とが一致するか否かを判断する。図11Bに示すように、パス7の下部POLノズル(##6)のラスター位置が、パス10の使用ノズル##1のラスター位置と一致する(S107→YES)。よって、パス10のノズル##1に関するノズル種別を使用ノズル(●)から「上部POLノズル(▲)」に変更する(S108)。こうすることで、通常印刷の下部POLノズルは他のノズルと共に同じラスターラインを形成することができ、画質劣化を抑制できる。なお、パス8及びパス9の下部POLノズルのラスター位置はパス10の使用ノズルのラスター位置と一致しない。そのため、他の使用ノズル##2〜##5は使用ノズルから変更されることなく、パス10のスケジューリングの作成が終了する。
【0061】
プリンタードライバーは、ダミーのスケジューリングテーブルに登録されたラスター位置が下端印刷にて全て形成されるまで(●が○になるまで)、下端印刷のパスのスケジューリングテーブルを作成する。図12Aはパス11のスケジューリングテーブルを作成する様子を示し、ノズル##4が上部POLノズルとして登録され、ノズル##5,##6が使用ノズルとして登録される。図12Bはパス12のスケジューリングテーブルを作成する様子を示し、ノズル##2が上部POLノズルとして登録され、ノズル##3〜##6が使用ノズルとして登録される。こうして、図5に示す印刷方法の全てのパスに関するスケジューリングテーブルが作成される。
【0062】
<まとめ>
上端印刷のスケジューリングテーブル作成時には、該当パスで形成可能なラスター位置と後続のパスで形成可能なラスター位置との比較処理を行う。そのため、本実施形態のプリンター1のように複数のヘッド41を有する場合、仮にヘッド41ごとに上端印刷のスケジューリングテーブルを作成しようとすると、該当パスにおける複数のヘッド41の各位置を算出し、各ヘッド41で形成可能なラスター位置を算出し、ヘッド41ごとにラスター位置の比較処理を行わなければならず、処理が複雑となる。同様に、通常印刷や下端印刷においても、ヘッドごとにスケジューリングテーブルを作成しようとすると、各ヘッドの位置などを算出しなければならず、処理が複雑となる。そこで、本実施形態のように、ノズル列方向に並ぶ複数のヘッド41を1つのヘッド(仮想1ヘッド)と見立て、仮想1ヘッドのスケジューリングテーブルを作成することによって、スケジューリングテーブルの作成処理を容易にすることができる。
【0063】
また、仮想1ヘッドのスケジューリングテーブルを作成する場合、図6に示すように、仮想1ヘッドの印刷に関するパラメーターテーブル(使用ノズルの範囲を示す情報など)だけをメモリーが記憶していれば良い。これに対して、仮にヘッド41ごとにスケジューリングテーブルを作成しようとすると、ヘッド41ごとにパラメーターテーブルをメモリーが記憶しなければならず、メモリー容量が増えてしまう。
【0064】
また、仮想1ヘッドでは、図4Aに示すように、重複領域のノズルに関係なく、Y方向の一方側(図では奥側)のノズルから順にノズル番号を設定する(連番のノズルとする)。そのため、Y方向に隣り合うヘッドの端部が重複しているプリンター1であっても、スケジューリングテーブルの作成時には重複領域のノズルを考慮する必要がなく、スケジューリングテーブルの作成処理を容易にすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、図5に示すように部分オーバーラップ印刷を例に挙げている。複数のヘッドを1つのヘッド(仮想1ヘッド)と見立てているため、仮想1ヘッドにおける端部ノズルが上部POLノズル(一端側ノズル群に相当)・下部POLノズル(他端側ノズル群に相当)と設定される。即ち、仮想1ヘッドの上部POLノズルと下部POLノズルによって1つのラスターライン(交差する方向に沿うドット列に相当)が形成される。そのため、ヘッド41ごとにPOLノズルを設定する場合に比べて、仮想1ヘッドの場合には、設定するPOLノズル数を少なくすることが可能である。この場合、上端印刷や下端印刷において相方となるPOLノズルを決定する処理(例えば、図7Eや図11Bなど)を容易にすることができる。
【0066】
なお、ここでは部分オーバーラップ印刷を例に挙げているがこれに限らず、他の印刷方法であっても、複数のヘッドを1つのヘッド(仮想1ヘッド)と見立ててスケジューリングテーブルを作成することによって、処理を容易にすることができる。
【0067】
<抽出・並べ替え処理>
図14は、画素がマトリクス状に構成された画像データ(ハーフトーン処理後の画像データ)を示す図である。図中の正方形(小さいマス目)は画像を構成する画素を示し、画素の中に記された数字が画素データに相当し、ドット形成の有無やドットの種類を示す。X方向に並ぶ画素データによって、1つのラスターラインが印刷される。このX方向に並ぶ画素データ群を「ラスターデータ」と呼ぶ。そして、Y方向奥側に位置するラスターデータから順に小さい番号を付す。画像データのうち、Y方向の最も奥側に位置するラスターデータが印刷開始位置の1番目のラスターデータに相当する。
【0068】
プリンタードライバーは、該当パスのスケジューリングテーブルに基づき、そのパスの印刷で使用するラスターデータ(全部又は一部)を図14の画像データの中から抽出し、抽出したラスターデータをノズルに割り付ける順に並べ替える。なお、画像データはインクの色(YMCK)ごとに作成される。そのため、プリンタードライバーは色ごとにラスターデータの抽出・並べ替え処理を実施する。
【0069】
ところで、プリンタードライバーは、図4Aに示すように、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)を1つの大きなヘッド(仮想1ヘッド)と見立て、スケジューリングテーブルを作成している。ゆえに、プリンタードライバーは、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルに基づき、仮想1ヘッドの各ノズル(##1〜##6)のノズル種別や、仮想1ヘッドの各ノズルに割り付けるラスターデータの番号を判断することができる。しかし、プリンタードライバーは最終的に、実際のヘッド41ごとに、そのヘッド41の印刷で使用するラスターデータをプリンター1に転送しなければならない。そのために、プリンタードライバーは、実際のヘッド41ごとに、ラスターデータを並べ替えなければならない。
【0070】
そこで、実際のヘッドに属する各ノズルと仮想1ヘッドにおけるノズルとを対応付ける。そして、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルの情報を、仮想1ヘッドを構成するヘッド41ごとの情報に置き換える。ここでは、プリンタードライバーは、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルに基づき、第1ヘッド用のスケジューリングテーブルと、第2ヘッド用のスケジューリングテーブルとを作成する。
【0071】
図15Aは、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)の構成に関するパラメーターテーブルを示す図であり、図15Bは、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルを第1ヘッド用のスケジューリングテーブル及び第2ヘッド用のスケジューリングテーブルに変換する様子を示す図であり、図15Cは、各ヘッド41(1),41(2)用に並べ替えられたラスターデータを示す図である。図15Aのパラメーターテーブルには、各ヘッド41に属するノズル数(ノズル数に相当)と、各ヘッド41のY方向の間隔(ヘッド間隔に相当)と、重複領域の不使用ノズル数とが記憶されている。なお、図15Aのパラメーターテーブルは、プリンター1のメモリー13(記憶部に相当)が記憶していても良いし、コンピューター60にプリンタードライバーをインストールする際にコンピューター60のメモリー(記憶部に相当)が記憶するようにしても良い。また、図15Bでは、上端印刷のスケジューリングテーブルの作成処理を説明した図7Eのパス1のスケジューリングテーブルを例に挙げる。
【0072】
ここでは、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)のY方向の間隔(ヘッド間隔)をノズル数で表す。図4Aに示すように、第1ヘッド41(1)のY方向手前側の端部の2個のノズル(#3,#4)と、第2ヘッド41(2)のY方向奥側の端部の2個のノズル(#1,#2)とが重複している。そのため、図15Aのパラメーターテーブルでは、ヘッド間隔が「2個」と記憶されている。なお、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)が重複しておらず、例えば、第2ヘッド41(2)のノズル#1が、第1ヘッド41(1)のノズル#4よりも、ノズルピッチ長さだけY方向手前側に位置する場合は、ヘッド間隔を0とする。また、第2ヘッド41(2)のノズル#1が、第1ヘッド41(1)のノズル#4よりも、ノズルピッチの整数倍の長さだけY方向手前側に位置する場合は、ヘッド間隔を負の数のノズル数とする。
【0073】
また、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)が重複している場合、重複している2つのノズルを使用することもでき、重複している2つのノズルのうちの一方のノズルだけを使用することもできる。そこで、図15Aのパラメーターテーブルには重複領域の不使用ノズル数を記憶する。第1ヘッド41(1)では、重複領域の手前側の不使用ノズル数が「1個」と記憶されている。これは、第1ヘッドの重複領域のノズル#3,#4のうちY方向手前側の1個のノズル#4を不使用ノズルにすることを意味する。同様に、第2ヘッド41(2)の重複領域のノズル#1,#2のうちY方向奥側の1個のノズル#1を不使用ノズルとする。即ち、重複領域の不使用ノズル数(重複するノズルの中で画像を印刷するために使用するノズルを決定するための情報に相当)により、ここでは、重複している2つのノズルのうちの一方のノズルだけを使用して印刷することが分かる。
【0074】
そして、図15Bに示すように、プリンタードライバーは、このヘッド構成に関するパラメーターテーブル(図15A)と、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルとに基づき、第1ヘッド用のスケジューリングテーブルと第2ヘッド用のスケジューリングテーブルとを作成する。
【0075】
図4Aに示すように、各ヘッド41のノズルに対してY方向奥側(所定方向の一端側に相当)のノズルから順に正の整数の番号が付けられ(#1・#2…)、仮想1ヘッドのノズルに対してY方向奥側のノズルから順に正の整数の番号が付けられている(##1・##2…)。そして、仮想1ヘッドのノズル番号(##1〜##6)は、第1ヘッド41(1)のY方向奥側のノズル#1から順に、第2ヘッド41(2)のY方向手前側のノズル#4まで加算されている。即ち、Y方向奥側を基準位置としている。そこで、プリンタードライバーは、まず、Y方向奥側の第1ヘッド用のスケジューリングテーブルを作成する。そのために、プリンタードライバーは、第1ヘッド41(1)のノズル範囲(#1〜#4)が、仮想1ヘッドのどのノズル範囲に相当するのかを算出する。即ち、プリンタードライバーは、仮想1ヘッドのノズル番号を実際のヘッド(第1ヘッド41(1))のノズル番号に置き換える。
【0076】
まず、プリンタードライバーは、第1ヘッド41(1)の開始ノズル(Y方向奥側の端部ノズル)#1が、仮想1ヘッドの何番ノズルに相当するのかを算出する。プリンタードライバーは、第1ヘッド41(1)は、仮想1ヘッドのノズル加算の基準位置(Y方向の最も奥側)に位置するので、第1ヘッド41(1)の開始ノズル「#1」は仮想1ヘッドのノズル「##1」に相当すると判断する。
【0077】
次に、プリンタードライバーは、第1ヘッド41(1)の終了ノズル(Y方向手前の端部ノズル)#4が、仮想1ヘッドの何番ノズルに相当するのかを算出する。該当ヘッド(N番目のヘッドに相当)の終了ノズル番号(Wに相当)に対応する仮想1ヘッドのノズル番号を、式「仮想1ヘッドにおける該当ヘッドの開始ノズル番号(Zに相当)+該当ヘッドに属するノズル数(Vに相当)−1」により算出することができる。プリンタードライバーは、図15Aのパラメーターテーブルを参照し、第1ヘッド41(1)の終了ノズル#4が、仮想1ヘッドの「ノズル##4(=##1+4−1)」に相当すると算出する。
【0078】
こうしてプリンタードライバーは、第1ヘッド41(1)のノズル範囲「#1〜#4」が仮想1ヘッドの「ノズル##1〜##4」に相当することが分かる。そこで、プリンタードライバーは、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルにおけるノズル##1〜##4に関する情報を、第1ヘッド用のスケジューリングテーブルに登録するとよい。ただし、図15Aのパラメーターテーブルによれば、重複領域のノズル#4が不使用ノズルとなるため、プリンタードライバーはノズル#4を不使用ノズルとして第1ヘッド用のスケジューリングテーブルに登録する。そして、プリンタードライバーは、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルにおけるノズル##1〜##3までの情報を、第1ヘッド用のスケジューリングテーブルのノズル#1〜#3までの情報として、順番に登録する。例えば、仮想1ヘッドのノズル##1の情報を第1ヘッド用スケジューリングテーブルにおけるノズル#1の情報として登録する。こうして、第1ヘッド用のスケジューリングテーブルの作成が終了する。
【0079】
次に、プリンタードライバーは、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルの情報を、第2ヘッド用のスケジューリングテーブルに分配する。そのために、プリンタードライバーは、第2ヘッド41(2)のノズル範囲「#1〜#4」が、仮想1ヘッドのどのノズル範囲に相当するのかを算出する。まず、プリンタードライバーは、第2ヘッド41(2)の開始ノズル#1が、仮想1ヘッドの何番ノズルに相当するのかを算出する。該当ヘッド(N番目のヘッドに相当)の開始ノズルの番号に対応する仮想1ヘッドのノズル番号は、式「該当ヘッドよりもY方向奥側に位置するヘッドまでに属する合計ノズル数(Xに相当)−該当ヘッドまでの重複領域の合計ノズル数(Y)+1」により算出することができる。プリンタードライバーは、図15Aのパラメーターテーブルを参照し、第2ヘッド41(2)の開始ノズル#1が、仮想1ヘッドの「ノズル##3(=4−2+1)」に相当すると算出する。また、プリンタードライバーは、第2ヘッド41(2)の終了ノズル#4が、仮想1ヘッドの「ノズル##6(=##3+4−1)」に相当すると算出する。
【0080】
こうしてプリンタードライバーは、第2ヘッド41(2)のノズル範囲「#1〜#4」が仮想1ヘッドの「ノズル##3〜##6」に相当することが分かる。ただし、図15Aのパラメーターテーブルによれば、第2ヘッド41(2)の重複領域に属するノズル#1を不使用ノズルとするため、プリンタードライバーは第2ヘッド用のスケジューリングテーブルにおけるノズル#1を不使用ノズルとして登録する。そして、プリンタードライバーは、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルにおけるノズル##4〜##6までの情報を、第2ヘッド用のスケジューリングテーブルのノズル#2〜#4までの情報として順に登録する。
【0081】
このように、プリンタードライバーは、仮想1ヘッドのスケジューリングテーブルとヘッド構成に関するパラメーターテーブル(図15A)とに基づいて、仮想1ヘッドを構成する第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)の各スケジューリングテーブルを作成する。その結果、プリンタードライバーは、第1ヘッド41(1)の各ノズル#1〜#4のノズル種別と、各ノズルが形成すべきラスターラインの番号を判断でき、また、第2ヘッド41(2)の各ノズル#1〜#4のノズル種別と、各ノズルが形成すべきラスターラインの番号を判断できる。
【0082】
コンピューター60には、図15Cに示すように、ヘッドごと(ノズル列ごと)に、各ノズル#1〜#4のラスターデータ(全部又は一部)を記憶させる記憶領域(バッファ)が設けられている。そこで、プリンタードライバーは、各ノズルで形成すべきラスターデータを画像データの中から抽出し、抽出したラスターデータを各ノズルに対応する記憶領域に記憶させる。その結果、プリンター1に転送する順にラスターデータを並べ替えることができる。
【0083】
例えば、プリンタードライバーは、第1ヘッド用のスケジューリングテーブルのノズル#1の情報を参照し、第1ヘッド41(1)のノズル#1は「使用ノズル」であると判断する。この場合、プリンタードライバーは、そのノズル#1のラスター位置が1番であることを参照し、画像データ(図14)の中から1番目のラスターデータを抽出し、ノズル#1に対応する記憶領域に1番目のラスターデータを記憶させる。同様にして、ノズル#2に対応する記憶領域には4番目のラスターデータが記憶され、ノズル#3に対応する記憶領域には7番目のラスターデータが記憶される。そして、プリンタードライバーは、ノズル#4が「不使用ノズル」であると判断し、ノズル#4に対応する記憶領域に「NULLデータ(インクを吐出しないデータ)」を記憶させる。
【0084】
同様にして、プリンタードライバーは、第2ヘッド用のスケジューリングテーブルを参照し、第2ヘッド41(2)に転送すべきデータを並べる。第2ヘッド41(2)のノズル#1,#4は不使用ノズルであるため、ノズル#1,#4に対応する記憶領域にはNULLデータが記憶される。第2ヘッド41(2)のノズル#2,#3は使用ノズルであるため、プリンタードライバーはラスター位置を参照し、ノズル#2に対応する記憶領域に10番目のラスターデータを記憶させ、ノズル#3に対応する記憶領域に13番目のラスターデータを記憶させる。
【0085】
こうしてプリンタードライバーはパス1に関するノズル割り付け処理を終了する。ヘッド41ごとに並べ替えられたデータは、プリンタードライバーによってプリンター1に送信される。プリンター1は、受信したデータに基づき、パス1における各ヘッド41(2),41(2)の印刷を制御する。その結果、図5に示す印刷方法を実現できる。
【0086】
以上をまとめると、本実施形態では、プリンタードライバーは、ノズル列方向に並ぶ複数のヘッドを1つのヘッド(仮想1ヘッド)と見立て、仮想1ヘッドのスケジューリングテーブルを作成する。そのため、スケジューリングテーブルを作成後、プリンタードライバーは、各ヘッド41のノズルにラスターデータを割り付ける際に(ラスターデータを抽出し、転送順に並べ替える際に)、仮想1ヘッドのノズル番号と実際のヘッド41のノズル番号とを対応づける。そのために、プリンタードライバーは、プリンター1又はコンピューター60のメモリーに記憶されたヘッド構成に関するパラメーターテーブル(図15A・ヘッドに属するノズル数・ヘッド間隔)を参照する。
【0087】
そして、プリンタードライバーは、実際のヘッド41のノズル番号に対応する仮想1ヘッドのノズル番号のスケジューリングテーブル情報(ノズル種別・ラスター位置)に基づき、実際のヘッド41のノズルに割り付けるべきラスターデータを決定する。こうすることで、プリンタードライバーは、ノズル列方向に並ぶ複数のヘッド41に対して転送する印刷データ(ラスターデータ)を、ヘッド41ごとに並べ替えることが出来る。
【0088】
なお、本実施形態では、プリンタードライバーがノズル割り付け処理(仮想1ヘッドのスケジューリングテーブルを作成した後に実際のヘッドごとにデータを並べ替える処理)を実施する。そのため、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター60とプリンター1のコントローラー10が「制御部」に該当し、プリンター1及びコンピューター60を接続した印刷システムが「印刷装置」に該当する。ただし、これに限らず、プリンタードライバーの処理をプリンター1内のコントローラー10が実施してもよく、この場合、プリンター1のコントローラー10が制御部に該当し、プリンター1単体が印刷装置に該当する。
【0089】
また、図15Aのパラメーターテーブルでは、仮想1ヘッドを構成する第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)のY方向のヘッド間隔をノズル数で表しているがこれに限らない。例えば、ヘッド間隔を長さで示してもよい。ヘッド間隔として各ヘッドの端部ノズルの間隔が記憶されている場合、プリンタードライバーは、各ヘッドの端部ノズルの間隔とノズルピッチとに基づいて、仮想1ヘッドのノズル番号を実際のヘッド41のノズル番号に置き換えることができる。また、ヘッド間隔がラスター数で表されていても良く、この場合、プリンタードライバーは、ヘッド間隔であるラスター数とノズルピッチとノズル間ピッチとに基づいて、仮想1ヘッドのノズル番号を実際のヘッド41のノズル番号に置き換えることができる。また、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)のY方向のヘッド間隔に相当する値を記憶するに限らず、ヘッド間隔を算出できる値を記憶しても良い。例えば、基準位置に対する第1ヘッド41(1)の位置と基準位置に対する第2ヘッド41(2)の位置とを各々記憶していれば、ヘッド間隔を算出することができる。
【0090】
また、本実施形態では、図15Aのパラメーターテーブルにおいて、各ヘッドに属するノズル数およびヘッド間隔と共に、重複領域の不使用ノズル数を記憶させているが、これに限らない。Y方向に並ぶヘッド41の端部ノズルが重複しない場合には、重複領域の不使用ノズル数(又は使用ノズル数)を記憶させる必要がない。また、印刷モードや印刷方法によって重複領域の不使用ノズル数が変化しない場合などでは、例えば、図15Cに示す各ノズルに対応した記憶領域に、変更不可なデータとして予めNULLデータを記憶させるようにしてもよい。
【0091】
また、本実施形態では、プリンタードライバーが、図15Bに示すように、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルから、第1ヘッド用のスケジューリングテーブルと第2ヘッド用のスケジューリングテーブルを作成しているが、これに限らない。プリンタードライバーは、仮想1ヘッド用のスケジューリングテーブルの情報から直接に仮想1ヘッドのノズルと実際のヘッド41(1),41(2)のノズルとを対応付け、各ヘッド41(1),41(2)に割り付けるデータを抽出し並べ替える処理を行っても良い。
【0092】
また、本実施形態のスケジューリングテーブルでは(例えば図15B)、ノズルごとにラスター位置が記憶されているが、これに限らない。該当パスにて各ノズルに対応するラスター位置を算出できる情報(例えば、該当パスのノズル#1が対応するラスター位置など)が1つ記憶されているだけでも良い。この場合、プリンタードライバーは、ラスターデータを並べ替える際に、印刷に関するパラメーターテーブル(図6)を参照し、各ノズルに対応するラスター位置を算出するとよい。また、部分オーバーラップ印刷の場合にはノズル種別にてPOLノズルか否かを区別する必要がある。しかし、その他の印刷方法の場合において、ノズル種別が使用ノズルか否かだけを区別するだけで良い場合、スケジューリングテーブルに、ノズル種別ではなく、使用ノズルの範囲を記憶しても良い。これらの場合、スケジューリングテーブルのメモリー容量を削減することができる。
【0093】
===その他の実施例===
図16Aから図16Cは、重複する2つのノズルを使用する場合のノズル割り付け処理を説明する図である。前述の実施例(図15)では、重複する2つのノズルのうちの一方のノズルだけを使用ノズルとしている。そのため、プリンタードライバーは、重複領域に属する使用ノズルがPOLノズルで無い場合、画像データの中から抽出したラスターデータをそのまま割り付ける。例えば、図15Cに示すように、第1ヘッド41(1)の重複領域に属する使用ノズル#3に7番目のラスターデータを割り付ける。
【0094】
これに対して、図16Aのパラメーターテーブルでは、重複領域の不使用ノズル数が0個となっている。この場合、第1ヘッド41(1)の重複領域に属するノズル#3,#4も、それに対応する第2ヘッド41(2)の重複領域に属するノズル#1,#2も使用ノズルとなる。この場合、仮に、重複する2つのノズルに各々ラスターデータをそのまま割り付けてしまうと、2重にラスターラインが形成されてしまう。
【0095】
そこで、重複する2つのノズルの両方を使用する場合、図16Cに示すように、プリンタードライバーは、画像データから抽出したラスターデータに対してマスク処理を行う。ここで、重複する2つのノズルのうち、第1ヘッド41(1)のノズル(#3,#4)が偶数画素にドットを形成し、第2ヘッド41(2)のノズル(#1,#2)が奇数画素にドットを形成するとする。そこで、プリンタードライバーは、抽出したラスターデータを第1ヘッド41(1)の重複ノズル(#3,#4)の記憶領域に記憶させる前に、ラスターデータに第1ヘッド用マスクを乗じる。そして、プリンタードライバーはマスク済みのデータを重複領域のノズルに対応する記憶領域に記憶させる。なお、第1ヘッド用マスクでは、奇数画素に対応する画素は「ドット無しの画素(白い画素)」で構成され、偶数画素に対応する画素は「ドット形成の画素(黒い画素)」で構成される。第1ヘッド用マスクをラスターデータに乗じることによって、ドット形成を示す奇数画素もドット無しに変更される。
【0096】
一方、プリンタードライバーは、抽出したラスターデータを第2ヘッド41(2)の重複ノズル(#1,#2)の記憶領域に記憶させる前に、ラスターデータに第2ヘッド用マスクを乗じる。第2ヘッド用マスクは第1ヘッド用マスクとは逆に、奇数画素に対応する画素は「ドット形成の画素(黒い画素)」で構成され、偶数画素に対応する画素は「ドット無しの画素(白い画素)」で構成される。第2ヘッド用マスクをラスターデータに乗じることによって、ドット形成を示す偶数画素もドット無しに変更される。
【0097】
この結果、重複する2つのノズルを使用する場合であっても、一方のノズルで偶数画素によりドットが形成され、他方のノズルにより奇数画素にドットが形成される。その結果、2重にラスターラインが形成されてしまうことを防止できる。
【0098】
図17A及び図17Bは、重複する2つのノズルが下部POLノズルに設定された場合のノズル割付処理を説明する図である。図17Aでは、第1ヘッド41(1)の重複領域のノズル#3と、それに対応する第2ヘッド41(2)の重複領域のノズル#1が、共に下部POLノズルに設定されている。図5の印刷方法では、上部POLノズル(△)が偶数画素にドットを形成し、下部POLノズル(□)が奇数画素にドットを形成する。そこで、プリンタードライバーは、図17Bに示すように、抽出したラスターデータを記憶領域に記憶させる前に、ラスターデータに下部POL用マスクを乗じる。下部POL用マスクは、奇数画素に対応する画素は「ドット形成の画素(黒い画素)」で構成され、偶数画素に対応する画素は「ドット無しの画素(白い画素)」で構成される。
【0099】
更に、重複する2つのノズルが下部POLノズルと設定された場合、プリンタードライバーは、図17Bに示すように、ラスターデータに各ヘッド用のマスクを乗じる。第1ヘッド用マスクは、左から1番目の画素から4個おきの画素(1番目、5番目、9番目…の画素)が「ドット形成の画素」で構成されている。一方、第2ヘッド用マスクは、左から3番目の画素から4個おきの画素(3番目、7番目、11番目…の画素)が「ドット形成の画素」で構成されている。この結果、第1ヘッド41(1)の重複領域の下部POLノズル#3と第2ヘッド41(2)の重複領域の下部POLノズル#1とによって、奇数画素にドットが形成され、2重にドットが形成されてしまうことを防止できる。
【0100】
図18A及び図18Bは、3つのヘッド41を1つの大きなヘッド(仮想1ヘッド)と見立てて、各ヘッド41の使用ノズルの範囲が決定される様子を示す図である。3つのヘッド41を1つの仮想ヘッドと見立てた場合、図18Aに示すようにヘッド構成に関するパラメーターテーブルでは、各ヘッドに属するノズル数(360個)と、第1ヘッドと第2ヘッドの重複ノズル数(10個)と、第2ヘッドと第3ヘッドの重複ノズル数(10個)とが記憶される。図18Bに示すように、仮想1ヘッドのノズル数は1060個(=360×3−10×2)となり、仮想1ヘッドに属するノズルはノズル##1〜##1060となる。以下、本実施形態のノズル割り付け処理のまとめを3つのヘッドを例に挙げて説明する。
【0101】
プリンタードライバーは、図18Aに示す印刷に関するパラメーターテーブルに基づき、上端印刷のあるパスの仮想1ヘッドの使用ノズルの範囲を「ノズル##1〜##538」と判断する。そこで、プリンタードライバーは、図18Bに示すように、仮想1ヘッドのノズル##1〜##538を使用ノズル(●)とし、ノズル##539〜##1060を不使用ノズル(○)とする。
【0102】
次に、プリンタードライバーは、印刷に関するパラメーターテーブルを参照し、上端印刷のあるパスの開始ラスター位置、即ち、仮想1ヘッドのノズル##1に対応するラスター位置を取得する。ここでは、仮想1ヘッドのノズル##1に対応するラスター位置が「−8番」であるとする。印刷開始のラスター位置を「1番」とすると、プリンタードライバーは、−8番から0番のラスター位置に対応する仮想1ヘッドのノズル##1〜##9を不使用ノズル(○)に変更する。即ち、プリンタードライバーは、印刷領域外のラスター位置に対応づけられるノズルを「不使用ノズル」に変更する。こうして、プリンタードライバーは、上端印刷のあるパスの仮想1ヘッドの使用ノズルの範囲を「ノズル##10〜ノズル##538」として取得する。なお、図5の印刷方法では、パス1のY方向奥側ノズル##1が印刷開始位置に対応し、パス12のY方向手前側ノズル##12が印刷終了位置に対応している。よって、図5の印刷方法では、印刷領域外のラスター位置に対応付けられるノズルが存在しない。
【0103】
次に、プリンタードライバーは、この仮想1ヘッドの使用ノズルの範囲を、仮想1ヘッドを構成する3つのヘッドの使用ノズルの範囲に置き換える。仮想1ヘッドのノズル番号はY方向奥側の第1ヘッドのノズル#1から順に加算されている。よって、仮想1ヘッドのノズル番号##iと第1ヘッドのノズル番号#iは等しい。プリンタードライバーは、第1ヘッドの使用ノズルの範囲の開始ノズルが、仮想1ヘッドの使用ノズル範囲と同じで、「ノズル#10」であると判断する。そして、プリンタードライバーは、第1ヘッドのY方向手前側の端部ノズル#360と仮想1ヘッドの使用ノズル範囲の終了ノズル##538とを比較し、第1ヘッドのノズル#10以降のノズルは全て使用ノズルの範囲内であると判断する。よって、プリンタードライバーは、第1ヘッドのノズル#10〜#360を使用ノズルとして登録する。
【0104】
次に、プリンタードライバーは、第2ヘッドのノズル#1〜#360が、仮想1ヘッドの何番ノズルに相当するのかを算出する。プリンタードライバーは、図18Aのパラメーターテーブルを参照し、第2ヘッドのノズル#1が仮想1ヘッドの「ノズル##351(=該当ヘッドよりもY方向奥側に位置するヘッドまでに属する合計ノズル数(X)−該当ヘッドまでの重複領域の合計ノズル数(Y)+1=360−10+1)」に相当することを算出する。なお、仮想1ヘッドにおける第2ヘッドの開始ノズルの番号は、「該当ヘッドとY方向奥側に並ぶヘッドの仮想1ヘッドにおける開始ノズルの番号+該当ヘッドとY方向奥側に並ぶヘッドに属するノズル数−重複領域のノズル数=##1+360−10=##351」によっても算出することができる。
【0105】
そして、プリンタードライバーは第2ヘッドの終了ノズル#360が仮想1ヘッドの「ノズル##710(=##351+360−1)」に相当することを算出する。仮想1ヘッドの使用ノズルはノズル##538までであるため、プリンタードライバーは第2ヘッドの途中のノズルで使用ノズルの範囲が終了すると判断する。そこで、プリンタードライバーは、仮想1ヘッドの使用ノズルのうちの最終ノズル##538が、第2ヘッドの「ノズル#188(=##538−##351+1)」に相当すると算出する。よって、プリンタードライバーは、第2ヘッドのノズル#1〜#188を使用ノズルとして登録する。
【0106】
最後に、プリンタードライバーは、第2ヘッドの途中のノズルから不使用ノズルに切り替わるため、第3ヘッドのノズル#1〜#360を全て不使用ノズルとして登録する。なお、第3ヘッドの開始ノズル#1は仮想1ヘッドの「ノズル##701(=360×2−10×2+1)」に相当し、第3ヘッドの終了ノズル#360は仮想1ヘッドの「ノズル##1060(=##701+360−1)に相当する。
【0107】
図19A及び図19Bは、Y方向に並ぶヘッド41(1),41(2)の端部が重複しない例を説明する図である。図19Aでは、第1ヘッド41(1)の端部ノズル#4と第2ヘッド41(2)の端部ノズル#1がノズルピッチに等しい間隔(3D)で並んでいる。そのため、第1ヘッド41(1)と第2ヘッド41(2)を合わせた仮想1ヘッドに属するノズル数(8個)は、2つのヘッド41の合計ノズル数(4個×2)に相当する。図では、仮想1ヘッドのノズル番号をY方向奥側のノズルから順に設定したとする。この場合、実際のヘッド41(N番目のヘッドに相当)の開始ノズル#1に対応する仮想1ヘッドのノズル番号(Zに相当)は、式「該当ヘッドよりもY方向奥側に位置するヘッドに属する合計ノズル数(Xに相当)+(ヘッド間隔(Uに相当)/ノズルピッチ(Tに相当))」により算出することができる。図19Aの例によれば、第2ヘッド41(2)の開始ノズル#1は、仮想1ヘッドの「ノズル##5(=4+(3D/3D)」に相当すると算出される。なお、前述の実施例と同様に、ヘッド間隔をノズル数で表してもよく、図19Aの場合、ヘッド間隔がゼロとなる。
【0108】
図19Bでは、第1ヘッド41(1)の端部ノズル#4と第2ヘッド41(2)の端部ノズル#1がノズルピッチの2倍の長さを離れている。このように、Y方向に隣り合うヘッド41の端部ノズルの間隔がノズルピッチの2倍以上である場合、実際のヘッドには存在しないノズルでも、仮想1ヘッドでは存在するとする。即ち、仮想1ヘッドではノズルがノズルピッチ(3D)おきに並んでいるとする。この場合、仮想1ヘッドのノズル##5は実際のヘッド41には存在しないノズルである。そのため、第2ヘッド41(2)の開始ノズル#1は、上式を用いて、仮想1ヘッドのノズル##6(=4+(6D/3D))に相当すると算出される。なお、ヘッド間隔をノズル数で表してもよく、図19Bの場合、ヘッド間隔が−1となる。
【0109】
ただし、これに限らず、端部のノズルが重複しないヘッドを仮想1ヘッドと見立てる場合に、実際のヘッド41に存在しないノズルは仮想1ヘッドにおいても存在しないとしてもよい。この場合、例えば、図19Bのヘッド構成では、第2ヘッドの開始ノズル#1は仮想1ヘッドのノズル##5に相当する。そして、あるヘッド41の開始ノズル#1は、式「該当ヘッドよりもY方向奥側に位置するヘッドに属する合計ノズル数+1」によって算出することが出来る。
【0110】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、印刷データの作成方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0111】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、ヘッドユニット40を媒体搬送方向に移動しながら画像を形成する動作と、ヘッドユニット40を紙幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターを例に挙げているがこれに限らない。例えば、ヘッドを移動方向に移動しながら単票紙に画像を形成する動作と、ヘッドに対して単票紙を移動方向と交差する搬送方向に搬送する動作と、を繰り返すプリンターでもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 搬送ローラー、
30 駆動ユニット、31 X軸ステージ、32 Y軸ステージ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、60 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)媒体に対してインクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列をそれぞれ備える複数のヘッドであって、前記所定方向に並んで配置された複数のヘッドと、
(B)画像データを構成する複数の画素データを並び替えて印刷データを作成し、前記印刷データに基づいて、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向と交差する方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる画像形成動作と、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向に相対移動させる動作と、を繰り返し実行させる制御部と、
(C)各前記ヘッドが備える前記ノズル列に属する前記ノズルの数であるノズル数と、前記所定方向に並ぶ前記複数のヘッドの前記所定方向の間隔であるヘッド間隔とを、記憶する記憶部と、
を有し、
(D)前記制御部は、
(D1)前記複数のヘッドを1つの仮想ヘッドと見立て、或る画像形成動作時に印刷に使用する前記仮想ヘッドにおけるノズルと、当該ノズルによって前記或る画像形成動作時に形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置とを対応させ、
(D2)前記記憶部に記憶された前記ノズル数と前記ヘッド間隔とに基づいて、実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルと前記仮想ヘッドにおける前記ノズルとを対応付け、前記或る画像形成動作時に実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルによって形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置を取得し、
(D3)取得した前記位置に基づいて、前記或る画像形成動作時に印刷に使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出し、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記仮想ヘッドにおける各前記ノズルが、画像を印刷するために使用する使用ノズルであるのか、又は、画像を印刷するために使用しない不使用ノズルであるのか、を決定し、
実際の前記ヘッドに属する或るノズルが前記仮想ヘッドにおける前記不使用ノズルと対応する場合、インクを吐出しないデータを前記或るノズルに割り付け、
実際の前記ヘッドに属する或るノズルが前記仮想ヘッドにおける前記使用ノズルと対応する場合、前記或るノズルによって形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置に対応する前記画素データを前記画像データの中から抽出し、抽出した前記画素データを前記或るノズルに割り付ける、
印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、
実際の前記ヘッドに属する前記ノズルに対して、前記所定方向の一端側に位置する前記ノズルから順に、正の整数の番号が付けられ、
前記仮想ヘッドにおける前記ノズルに対して、前記所定方向の前記一端側に位置する前記ノズルから順に、正の整数の番号が付けられ、
前記所定方向に並ぶ前記ヘッドがそれぞれ有する前記ノズル列の端部ノズルが重複し、前記記憶部は前記ヘッド間隔として重複する前記ノズルの数を記憶し、
前記複数のヘッドにおいて前記所定方向の最も前記一端側の前記ヘッドからN−1番目の前記ヘッドまでに属する前記ノズルの合計数をXとし、前記所定方向の最も前記一端側の前記ヘッドからN番目の前記ヘッドまでに重複する前記ノズルの合計数をYとしたとき、前記N番目の前記ヘッドの1番ノズルに対応する前記仮想ヘッドにおける前記ノズルの番号Zを表す式が、
Z=X−Y+1
となる印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記記憶部は、前記所定方向に並ぶ前記ヘッドがそれぞれ有する前記ノズル列の端部の重複する前記ノズルの中で画像を印刷するために使用する前記ノズルを決定するための情報を、記憶する、
印刷装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、
実際の前記ヘッドが備える前記ノズル列では前記ノズルが前記所定方向に所定の間隔で並び、
前記仮想ヘッドでは前記ノズルが前記所定方向に前記所定の間隔で並び、
実際の前記ヘッドに属する前記ノズルに対して、前記所定方向の一端側に位置する前記ノズルから順に、正の整数の番号が付けられ、
前記仮想ヘッドにおける前記ノズルに対して、前記所定方向の前記一端側に位置する前記ノズルから順に、正の整数の番号が付けられ、
前記所定方向に並ぶ前記ヘッドがそれぞれ有する前記ノズル列の端部ノズルが重複せず、
前記複数のヘッドにおいて前記所定方向の最も前記一端側の前記ヘッドからN−1番目の前記ヘッドまでに属する前記ノズルの合計数をXとし、前記所定の間隔をTとし、前記ヘッド間隔をUとしたとき、前記所定方向の前記一端側からN番目の前記ヘッドの1番ノズルに対応する前記仮想ヘッドにおける前記ノズルの番号Zを表す式が、
Z=X+(U/T)
となる印刷装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記N番目の前記ヘッドに属するノズル数をVとしたとき、前記N番目の前記ヘッドが備える前記ノズル列のうちの前記所定方向の最も他端側に位置する前記ノズルに対応する前記仮想ヘッドにおける前記ノズルの番号Wを表す式が、
W=Z+V−1
となる印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記仮想ヘッドにおける前記ノズルのうちの前記所定方向の一端側に位置する一端側ノズル群と前記所定方向の他端側に位置する他端側ノズル群を設定し、
前記一端側ノズル群に属する前記ノズルと、前記他端側ノズル群に属する前記ノズルとで、前記交差する方向に沿うドット列を形成する前記印刷データを作成する、
印刷装置。
【請求項8】
媒体に対してインクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列をそれぞれ備える複数のヘッドであって前記所定方向に並んで配置された複数のヘッドを有し、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向と交差する方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる画像形成動作と、前記媒体と前記複数のヘッドの相対位置を前記所定方向に相対移動させる動作と、を繰り返し実行する印刷装置の印刷データを、コンピューターに作成させるためのプログラムであって、
前記複数のヘッドを1つの仮想ヘッドと見立て、或る画像形成動作時に印刷に使用する前記仮想ヘッドにおけるノズルと、当該ノズルによって前記或る画像形成動作時に形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置とを対応させることと、
各前記ヘッドが備える前記ノズル列に属する前記ノズルの数と、前記所定方向に並ぶ前記複数のヘッドの前記所定方向の間隔とに基づいて、実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルと前記仮想ヘッドにおける前記ノズルとを対応付け、前記或る画像形成動作時に実際の前記ヘッドに属する各前記ノズルによって形成されるドットの前記媒体上における前記所定方向の位置を取得することと、
取得した前記位置に基づいて、前記或る画像形成動作時に印刷に使用する画素データを画像データの中から抽出し、前記或る画像形成動作を実施するための印刷データを作成することと、
を前記コンピューターに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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