説明

印刷装置、及び、印刷方法

【課題】 媒体の端部を印刷するときの印刷時間を短縮する。
【解決手段】 媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体を所定方向に搬送する搬送部と、前記所定方向に移動可能であり、前記インク吐出部の一部と対向し、対向する前記インク吐出部から吐出されたインクを受けるためのインク受け部と、前記インク吐出部によるインク吐出動作と、前記搬送部による搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が前記インク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させるコントローラと、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に向けてインクを吐出して印刷を行う印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙や布、フィルムなどの各種媒体に対して印刷を施す印刷装置として、インクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタは、シアン(C)やマゼンダ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)といった複数の色のインクを媒体に向けて吐出して、媒体に印刷を施すようになっている。
【0003】
一方、最近、このようなインクジェットプリンタにあっては、「縁無し印刷」と呼ばれる印刷が行える機能を有したものが登場している。ここで、「縁無し印刷」とは、媒体の縁までインクを打ち込んで印刷をする印刷方法のことで、媒体の縁にインクを打ち込むことにより、媒体の縁部に余白が生じないように印刷をすることができる。
しかし、媒体の縁に向けて吐出されたインクは、媒体から外れる虞がある。このような場合に、媒体から外れたインクがプラテンを汚し、その結果、媒体の裏面が汚れてしまう。
【0004】
そこで、このような「縁無し印刷」を実行するインクジェットプリンタにあっては、媒体から外れたインクを回収するための溝部がプラテンに設けられている。
【特許文献1】特開2002−103584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなインクジェットプリンタにあっては、次のような問題があった。すなわち、媒体の端部を印刷する場合、溝部に対向するノズルによって端部を印刷するので、使用できるノズルが限られてしまう。この結果、媒体の端部を印刷するときの搬送量が通常の印刷時の搬送量よりも少なくなり、印刷時間が長くなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、媒体の端部を印刷するときの印刷時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための主たる発明は、媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体を所定方向に搬送する搬送部と、前記所定方向に移動可能であり、前記インク吐出部の一部と対向し、対向する前記インク吐出部から吐出されたインクを受けるためのインク受け部と、前記インク吐出部によるインク吐出動作と、前記搬送部による搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が前記インク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させるコントローラと、を備えることを特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴は、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0009】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体を所定方向に搬送する搬送部と、前記所定方向に移動可能であり、前記インク吐出部の一部と対向し、対向する前記インク吐出部から吐出されたインクを受けるためのインク受け部と、前記インク吐出部によるインク吐出動作と、前記搬送部による搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が前記インク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させるコントローラと、を備えることを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置においては、媒体の縁まで印刷を行うときに、印刷時間の短縮を図ることができる。
【0010】
また、前記媒体の前記所定方向下流側の端部の印刷が終了した後、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させ、前記媒体の前記所定方向上流側の端部を印刷する際に、前記インク受け部を前記所定方向に移動させることが好ましい。
このような印刷装置においては、媒体の縁まで印刷を行うときに、印刷時間の短縮を図ることができる。
【0011】
また、前記インク吐出動作が行われていないときに、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させることが好ましい。
このような印刷装置においては、インク受け部の移動の影響で媒体が動いてインクの着弾位置がずれてしまい、画質が低下することを防止することができる。
【0012】
また、前記媒体の前記所定方向下流側の端部の印刷が終了した後、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、複数回に分けて、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させることが好ましい。
このような印刷装置においては、一度にインク受け部を動かすことによって、インク受け部の移動の影響により媒体が動くのを防止することができる。
【0013】
また、前記媒体の前記所定方向上流側の端部を検出するセンサを備え、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、前記センサの検出結果に応じた位置まで前記インク受け部を移動させることが好ましい。
このような印刷装置においては、インク受け部は、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の下部に正確に移動することができる。
【0014】
また、前記媒体の前記所定方向における端部を印刷するときの前記搬送動作における搬送量は、前記媒体の中央部を印刷するときの前記搬送動作における搬送量と同じであることが好ましい。
このような印刷装置においては、媒体の端部を印刷するときの搬送量と、媒体の中央部を印刷するときの搬送量が同じであるので、媒体に形成される画像にムラが生じるのを防止することができる。
【0015】
また、前記インク吐出部は、移動可能に設けられ、前記インク受け部は、前記インク吐出部の移動する方向に沿って、形成されていることが好ましい。
このような印刷装置においては、前記インク吐出部は、移動可能に設けられ、前記インク受け部は、前記インク吐出部の移動する方向に沿って、形成されている。
【0016】
また、前記媒体に縁無し印刷を行うことが好ましい。
このような印刷装置においては、前記媒体に縁無し印刷を行うことができる。
【0017】
また、媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体を所定方向に搬送する搬送部と、前記所定方向に移動可能であり、前記インク吐出部の一部と対向し、対向する前記インク吐出部から吐出されたインクを受けるためのインク受け部と、前記インク吐出部によるインク吐出動作と、前記搬送部による搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が前記インク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させるコントローラと、を備え、前記媒体の前記所定方向下流側の端部の印刷が終了した後、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させ、前記媒体の前記所定方向上流側の端部を印刷する際に、前記インク受け部を前記所定方向に移動させ、前記インク吐出動作が行われていないときに、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させ、前記媒体の前記所定方向下流側の端部の印刷が終了した後、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、複数回に分けて、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させ、前記媒体の前記所定方向上流側の端部を検出するセンサを備え、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、前記センサの検出結果に応じた位置まで前記インク受け部を移動させ、前記媒体の前記所定方向における端部を印刷するときの前記搬送動作における搬送量は、前記媒体の中央部を印刷するときの前記搬送動作における搬送量と同じであり、前記インク吐出部は、移動可能に設けられ、前記インク受け部は、前記インク吐出部の移動する方向に沿って、形成され、前記媒体に縁無し印刷を行うことを特徴とする印刷装置も実現可能である。
このようにすれば、既述の総ての効果を奏するため、本発明の目的が最も有効に達成される。
【0018】
また、媒体に向けてインクを吐出するインク吐出動作と、前記媒体を所定方向に搬送する搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が、吐出されたインクを受けるためのインク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させることを特徴とする印刷方法も実現可能である。
このようにして実現された印刷方法は、従来方法よりも優れた方法となる。
【0019】
また、コンピュータ本体と、このコンピュータ本体に接続可能な印刷装置とを具備した印刷システムであって、前記印刷装置は、媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体を所定方向に搬送する搬送部と、前記所定方向に移動可能であり、前記インク吐出部の一部と対向し、対向する前記インク吐出部から吐出されたインクを受けるためのインク受け部と、前記インク吐出部によるインク吐出動作と、前記搬送部による搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が前記インク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させるコントローラと、を備えることを特徴とする印刷システムも実現可能である。
このようにして実現された印刷システムは、従来システムよりも優れたシステムとなる。
【0020】
===印刷装置の概要===
本発明に係る印刷装置の実施の形態について、インクジェットプリンタを例にとり説明する。
図1〜図4は、そのインクジェットプリンタ1を示したものである。図1は、そのインクジェットプリンタ1の外観を示す。図2は、そのインクジェットプリンタ1の内部構成を示す。図3は、そのインクジェットプリンタ1の搬送部を示す。図4は、そのインクジェットプリンタ1のシステム構成を示すブロック構成図である。
【0021】
このインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、背面から供給された紙を前面から排出する構造を備えており、その前面部には操作パネル2、及び、排紙部3が設けられ、その背面部には給紙部4が設けられている。操作パネル2には、各種操作ボタン5、及び、表示ランプ6が設けられている。また、排紙部3には、不使用時に排紙口を塞ぐ排紙トレー7が設けられている。給紙部4には、カット紙(図示しない)を保持する給紙トレー8が設けられている。なお、インクジェットプリンタ1は、カット紙など単票状の紙のみならず、ロール紙などの連続した紙にも印刷できるような給紙構造を備えていても良い。
【0022】
このインクジェットプリンタ1の内部には、図2に示すように、キャリッジ41が設けられている。このキャリッジ41は、キャリッジ移動方向に沿って相対的に移動可能に設けられたものである。キャリッジ41の周辺には、キャリッジモータ(以下、CRモータともいう)42と、プーリ44と、タイミングベルト45と、ガイドレール46と、が設けられている。キャリッジモータ42は、DCモータなどにより構成され、キャリッジ41をキャリッジ移動方向に沿って相対的に移動させるための駆動源として機能する。また、タイミングベルト45は、プーリ44を介してキャリッジモータ42に接続されるとともに、その一部がキャリッジ41に接続され、キャリッジモータ42の回転駆動によってキャリッジ41をキャリッジ移動方向に沿って相対的に移動させる。ガイドレール46は、キャリッジ41をキャリッジ移動方向に沿って案内する。
【0023】
この他に、キャリッジ41の周辺には、キャリッジ41の位置を検出するリニア式エンコーダ51と、紙Sをキャリッジ移動方向と交差する方向(以下、搬送方向ともいう)に沿って搬送するための搬送ローラ17Aと、この搬送ローラ17Aを回転駆動させる紙搬送モータ15とが設けられている。
【0024】
一方、キャリッジ41には、各種インクを収容したインクカートリッジ48と、紙Sに対して印刷を行うヘッド21とが設けられている。インクカートリッジ48は、例えば、イエロ(Y)やマゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)などの各色のインクを収容しており、キャリッジ41に設けられたカートリッジ装着部49に着脱可能に装着されている。また、ヘッド21は、本実施形態では、紙Sに対してインクを吐出して印刷を施す。このためにヘッド21には、インクを吐出するための多数のノズルが設けられている。このヘッド21のインクの吐出機構については、後で詳しく説明する。
【0025】
この他に、このインクジェットプリンタ1の内部には、ヘッド21のノズルの目詰まりを解消するためのクリーニングユニット30が設けられている。このクリーニングユニット30は、ポンプ装置31と、キャッピング装置35とを有する。ポンプ装置31は、ヘッド21のノズルの目詰まりを解消するために、ノズルからインクを吸い出す装置であり、ポンプモータ(図示外)により作動する。一方、キャッピング装置35は、ヘッド21のノズルの目詰まりを防止するため、印刷を行わないとき(待機時など)に、ヘッド21のノズルを封止する。
【0026】
次にこのインクジェットプリンタ1の搬送部の構成について説明する。この搬送部は、図3に示すように、紙挿入口11A、及び、ロール紙挿入口11Bと、給紙モータ(不図示)と、給紙ローラ13と、プラテン14と、紙搬送モータ(以下、PFモータともいう)15と、搬送ローラ17Aと排紙ローラ17Bと、フリーローラ18Aとフリーローラ18Bと、ギヤ19Aとギヤ19Bとプラテン移動モータ19Cとを有する。これらのうち、紙搬送モータ15や搬送ローラ17A、排紙ローラ17Bなどは、本発明の搬送機構を構成している。
【0027】
紙挿入口11Aは、紙Sを挿入するところである。給紙モータ(図示外)は、紙挿入口11Aに挿入された紙Sをインクジェットプリンタ1内に搬送するモータであり、パルスモータ等で構成される。給紙ローラ13は、紙挿入口11Aに挿入された紙Sを図中矢印A方向(ロール紙の場合は矢印B方向)にインクジェットプリンタ1の内部に自動的に搬送するローラであり、給紙モータによって駆動される。給紙ローラ13は、略D形の横断面形状を有している。給紙ローラ13の円周部分の周囲長さは、紙搬送モータ15までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて紙Sを紙搬送モータ15まで搬送することができる。
【0028】
給紙ローラ13により搬送された紙Sは、紙検知センサ53に当接する。この紙検知センサ53は、給紙ローラ13と、搬送ローラ17Aとの間に設置されたもので、給紙ローラ13により給紙された紙Sを検知するようになっている。
【0029】
紙検知センサ53により検知された紙Sは、プラテン14へと搬送される。プラテン14は、印刷中の紙Sを支持する支持部である。プラテン14の底面には、ギヤ19Aが設けられている。そして、ギヤ19Aと噛み合うようにしてギヤ19Bが設けられている。ギヤ19Bは、プラテン移動モータ19Cの回転軸と接続されている。よって、プラテン移動モータ19Cが回転することによって、プラテン14は搬送方向に移動可能である。
【0030】
紙搬送モータ15は、紙Sを搬送方向に送り出すモータであり、DCモータで構成される。搬送ローラ17Aは、給紙ローラ13によってインクジェットプリンタ1内に搬送された紙Sを印刷可能な領域まで送り出すローラであり、紙搬送モータ15によって駆動される。フリーローラ18Aは、搬送ローラ17Aと対向する位置に設けられ、紙Sを搬送ローラ17Aとの間に挟むことによって紙Sを搬送ローラ17Aに向かって押さえる。
【0031】
排紙ローラ17Bは、印刷が終了した紙Sをインクジェットプリンタ1の外部に排出するローラである。排紙ローラ17Bは、不図示の歯車により、紙搬送モータ15によって駆動される。フリーローラ18Bは、排紙ローラ17Bと対向する位置に設けられ、紙Sを排紙ローラ17Bとの間に挟むことによって紙Sを排紙ローラ17Bに向かって押さえる。
【0032】
<システム構成>
次にこのインクジェットプリンタ1のシステム構成について説明する。このインクジェットプリンタ1は、図4に示すように、バッファメモリ122と、イメージバッファ124と、コントローラ126と、メインメモリ127と、EEPROM129とを備えている。バッファメモリ122は、ホストコンピュータ140から送信された印刷データ等の各種データを受信して一時的に記憶する。また、イメージバッファ124は、受信した印刷データをバッファメモリ122より取得して格納する。また、メインメモリ127は、ROMやRAMなどにより構成される。
【0033】
一方、コントローラ126は、メインメモリ127から制御用プログラムを読み出して、当該制御用プログラムに従ってインクジェットプリンタ1全体の制御を行う。本実施形態のコントローラ126は、キャリッジモータ制御部128と、搬送制御部130と、プラテン移動モータ制御部131と、ヘッド駆動部132と、ロータリ式エンコーダ134と、リニア式エンコーダ51とを備えている。キャリッジモータ制御部128は、キャリッジモータ42の回転方向や回転数、トルクなどを駆動制御する。また、ヘッド駆動部132は、ヘッド21の駆動制御を行う。搬送制御部130は、搬送ローラ17Aを回転駆動する紙搬送モータ15など、搬送系に配置された各種駆動モータを制御する。プラテン移動モータ制御部131は、プラテン移動モータ19Cを制御する。
【0034】
ホストコンピュータ140から送られてきた印刷データは、一旦、バッファメモリ122に蓄えられる。ここで蓄えられた印刷データは、その中から必要な情報がコントローラ126により読み出される。コントローラ126は、その読み出した情報に基づき、リニア式エンコーダ51やロータリ式エンコーダ134からの出力を参照しながら、制御用プログラムに従って、キャリッジモータ制御部128、搬送制御部130、プラテン移動モータ制御部131、及び、ヘッド駆動部132を各々制御する。
【0035】
イメージバッファ124には、バッファメモリ122に受信された複数の色成分の印刷データが格納される。ヘッド駆動部132は、コントローラ126からの制御信号に従って、イメージバッファ124から各色成分の印刷データを取得し、この印刷データに基づきヘッド21に設けられた各色のノズルを駆動制御する。
【0036】
また、コントローラ126には、紙検知センサ53から出力された紙Sを検知しているか否かを示す信号が入力される。これにより、コントローラ126は、紙検知センサ53が紙Sを検知しているか否かを知ることができる。
【0037】
<ヘッド>
図5は、ヘッド21の下面部に設けられたインクのノズルの配列を示した図である。ヘッド21の下面部には、同図に示すように、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色ごとにそれぞれ複数のノズル♯1〜♯180からなるノズル群211Y、211M、211C、211Kが設けられている。なお、これらイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び、ブラック(K)の各色のノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯180は、本発明のインク吐出部に相当する。
【0038】
各ノズル群211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯180は、紙Sの搬送方向に沿って直線状に配列されている。各ノズル群211Y、211M、211C、211Kは、キャリッジ移動方向に沿って相互に間隔をあけて平行に配置されている。各ノズル♯1〜♯180には、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(図示外)が設けられている。
【0039】
ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯180から吐出される。
【0040】
===印刷方式===
次に、図6を参照して印刷方式について説明する。図6は、インターレース方式により紙Sにドットを形成して画像Gを印刷する方法について概略的に説明するものである。なお、ノズルの数は180個であるが、ここでは説明の便宜上、4個とする。また、同図では、インクを吐出するノズルが紙Sに対して移動しているように描かれているが、同図はノズルと紙Sとの相対的な位置関係を示すものであって、実際には、紙Sが搬送方向に沿って移動している。また、同図において、黒丸で示されたノズルは、インクを吐出するノズルであり、白丸で示されたノズルは、インクを吐出しないノズルである。図6Aは、パス1〜パス4におけるノズルの位置と、ドットの形成の様子を示し、図6Bは、パス1〜パス6におけるノズルの位置とドットの形成の様子を示している。
【0041】
ここで、『パス』とは、ヘッド21がキャリッジ41の移動によりその移動方向に沿って1回移動する動作のことをいう。『インターレース方式』では、このような『パス』を繰り返し実行することによって、各パスごとにキャリッジ41の移動方向に沿ってドットを並べて形成して、印刷する画像Gを構成するラスタラインを順次形成して、画像Gを印刷する。なお、『ラスタライン』とは、キャリッジ41の移動方向に並ぶ画素の列である。また、『画素』とは、インク滴を着弾させてドットを記録する位置を規定するために、紙S上に仮想的に定められた方眼状の桝目である。
【0042】
インターレース方式では、紙Sが搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあり、搬送量FはN・Dに設定される。
【0043】
ここでは、ノズル群211のノズルピッチは4D(=k・D)なので、インターレース方式で行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすため、3つのノズル♯1〜♯3が用いられる。また、3つのノズルが用いられるため、紙Sは搬送量3・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル群211を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて紙にドットが形成される。
【0044】
同図は、最初のラスタラインはパス3のノズル♯1が形成し、2番目のラスタラインはパス2のノズル♯2が形成し、3番目のラスタラインはパス1のノズル♯3が形成し、4番目のラスタラインはパス4のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、パス1では、ノズル♯3のみがインクを吐出し、パス2では、ノズル♯2とノズル♯3のみがインクを吐出している。これは、パス1、及び、パス2において全てのノズルからインクを吐出すると、連続したラスタラインを紙Sに形成できないためである。なお、パス3以降では、3つのノズル(♯1〜♯3)がインクを吐出し、紙が一定の搬送量F(=3・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。これにより、各パスごとにラスタラインが順次形成されて画像Gが印刷される。
【0045】
ノズル数180個で720dpiのドット間隔にて印刷する場合、「Nとkが互いに素の関係」を満たすため、179個のノズル♯1〜♯179が用いられる。この場合、インクを吐出するノズル数が179個なので、紙Sの搬送量は179・Dとなる。
【0046】
===縁無し印刷===
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1にあっては、「縁無し印刷」を実行することができる。
【0047】
<縁無し印刷の概要>
図7、及び、図8は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1で実行される「縁無し印刷」の概要を説明するものである。図7は、「縁無し印刷」ではなく、通常印刷を行ったときの紙Sと、印刷領域Pとの関係を説明したものである。図8は、「縁無し印刷」を行ったときの紙Sと、印刷領域Pとの関係を説明したものである。
【0048】
通常印刷の場合には、図7に示すように、印刷領域Pは紙Sに収まるように、紙Sよりも小さなサイズに設定される。紙Sの周縁部には、その左右両側部、及び、上下両側部に沿って余白部が形成される。このように印刷領域Pが紙Sに収める処理は、ホストコンピュータ140に搭載されたプリンタドライバにより行われる。プリンタドライバは、ホストコンピュータ140で実行されるアプリケーションプログラムから与えられた画像データに基づき、印刷領域Pが紙Sに収まるように印刷データを生成する。ここで、プリンタドライバは、印刷領域Pを紙S内に納めることができないような画像データを処理する場合には、画像データにより表される画像の一部を印刷対象から除外したり、また、その画像を縮小処理するなどして紙Sに収まるようにすることもある。こうしてプリンタドライバにより作成された印刷データは、ホストコンピュータ140からインクジェットプリンタ1に向けて送信される。インクジェットプリンタ1は、ホストコンピュータ140から送られてきた印刷データに基づき印刷処理を実行することで、通常印刷が実施される。
【0049】
一方、「縁無し印刷」の場合には、図8に示すように、印刷領域Pは、紙Sからはみ出すように、紙Sよりも大きなサイズになるように設定される。紙Sの周縁部には、図7で説明した通常印刷の場合と異なり、余白部は形成されない。
【0050】
このように印刷領域Pが紙Sからはみ出させる処理は、通常印刷の場合と同様、プリンタドライバなどにより行う。プリンタドライバは、アプリケーションプログラムから与えられた画像データに基づき、印刷領域Pが紙Sからはみ出すような印刷データを生成する。ここで、プリンタドライバは、印刷領域Pが紙Sよりも小さくなるような画像データを処理する場合には、印刷領域Pが紙S全体をカバーするように印刷領域Pを拡大したりする。こうして作成された印刷データは、ホストコンピュータ140からインクジェットプリンタ1に向けて送信される。インクジェットプリンタ1は、ホストコンピュータ140から送られてきた印刷データに基づき印刷処理を実行することで、「縁無し印刷」が実行される。これによって、縁の無い見栄えに優れた印刷が実現できる。
【0051】

<インク受け部>
このような「縁無し印刷」が実行される場合には、各ノズル群211の各ノズル♯1〜♯180から吐出されたインクは、紙Sから外れる場合がある。例えば、図8において、紙Sの外側の印刷領域(打ち漏らし領域ともいう)に吐出されるインクは、紙Sから外れるインクである。このようにインクが紙Sから外れた場合に、プラテンなどを汚すなどの悪影響を及ぼす虞がある。そこで、このような「縁無し印刷」を実行する印刷装置にあっては、紙Sから外れたインクを受けるインク受け部として、プラテン14に溝部が設けられている。
【0052】
===参考例===
図9は、参考例のインクジェットプリンタの溝部の一例を示したものである。ここでは、インクを受ける溝部として、プラテン14上に2つの溝部354a、354bが設けられている。これら2つの溝部354a、354bは、それぞれヘッド21に対向して設けられている。一方の溝部354aは、紙Sの搬送方向の上流側に設けられたものであり、ヘッド21のノズル♯178〜♯180と対向するように形成されている。他方の溝部354bは、紙Sの搬送方向の下流側に設けられたものであり、ヘッド21のノズル♯1〜♯3と対向するように形成されている。これによって、ヘッド21のノズル♯1〜♯3、♯178〜♯180から吐出されたインクは、溝部354a、354b内にそれぞれ回収されるようになっている。言い換えれば、吐出したインクが紙Sから外れる虞がある場合、ノズル♯1〜♯3又はノズル♯178〜♯180を用いて印刷すれば、プラテン14を汚さなくて済む。
【0053】
このため、紙Sの先端部(紙Sの搬送方向下流側の端部)を印刷するとき、ノズル♯1〜♯3を用いれば、プラテン14を汚さずに済む。また、紙Sの後端部(紙Sの搬送方向上流側の端部)を印刷するとき、ノズル♯178〜♯180を用いれば、プラテン14を汚さずに済む。
【0054】
但し、インクを吐出するノズル数が3つになると、インターレース方式により印刷する場合、搬送量Fは3・Dになる。つまり、通常のインターレース方式による印刷時の搬送量Fは179・Dなので、紙Sの先端部や後端部を印刷するとき、紙の中心部を印刷するときと比べ、搬送量Fが少なくなり、印刷速度が低下してしまう。
【0055】
また、紙の搬送量が途中で変わると、印刷を一様に行うことができず、印刷ムラを生じさせる原因となる。
そこで、本実施形態では、つぎのような溝部を備えている。
【0056】
===本実施形態の溝部===
図10は、本実施形態の溝部を示したものである。図10に示される例においては、溝部357は、キャリッジ移動方向に沿って直線上に形成されている。溝部357は、対向するノズルから吐出され、紙Sに着弾しないインクを受けることができる。また、本実施形態の溝部357は、搬送方向に移動可能である。コントローラ126は、プラテン移動モータ制御部131を介してプラテン移動モータ19Cを回転させることによって、プラテン14に設けられた溝部357を移動させる。
【0057】
溝部357が移動するため、溝部357の位置が変わると、溝部357と対向するノズルが変わることになる。つまり、前述の参考例では、紙Sの先端部を印刷できるノズルがノズル♯1〜♯3に決まっていたが、本実施形態では、紙Sの先端部を印刷できるノズルを変えることができる。
【0058】
===本実施形態の印刷方法===
次に、本実施形態の印刷方法について説明する。図11は、本実施形態の印刷方法のフロー図である。図12は、紙の端部の位置、及び、溝部357の位置の説明図である。図13は、紙の先端部の位置、及び、溝部357の位置とノズルとの相対位置の説明図である。図14は、紙の後端部の位置、及び、溝部357の位置とノズルとの相対位置の説明図である。
【0059】
なお、図13では、図6と同様に、ノズルと紙との相対的な位置関係が示されている。図13においては、パス1〜パス4における180個のノズルの位置が一部示されており、番号に斜線のあるノズルはインクを吐出しないノズルである。また、図中の右側には、紙の先端部の位置とともに、溝部の位置が示されている。図中において、溝部の位置は固定されて描かれているが、実際には、溝部の位置は、紙Sの先端部の位置とともに搬送方向に移動する。
【0060】
本実施の形態では、ノズル♯1〜♯180のうちの♯1〜♯179を用いて、インターレース方式により、720dpiのドット間隔にて画像を印刷する。また、179個のノズルが用いられるため、紙Sは搬送量179・Dにて搬送される。
【0061】
ステップS11において、コントローラ126は、給紙ローラ13を回転させ、紙Sを給紙する。そして、コントローラ126は、紙搬送モータ15を駆動し搬送ローラ17Aを回転させることによって、紙Sを初期搬送量搬送する。搬送後の紙Sの先端部の搬送方向の位置は、ノズル♯152とノズル♯153との間にある(図13、及び、図14のパス1を参照)。
【0062】
ステップS12において、コントローラ126は、プラテン移動モータ19Cを駆動し、溝部357を初期位置まで移動させる。ここでいう、初期位置とは、図13に示される溝部の位置のことである。このとき、溝部357の搬送方向下流側の端の位置は、ノズル♯150の搬送方向の位置とほぼ同じである(図13のパス1を参照)。そして、溝部357は、ノズル♯150〜♯155と対向する。そして、紙Sの先端部は、溝部357の上に位置している。
【0063】
ステップS13において、コントローラ126は、パス数のカウントを開始する。最初、カウント値は1にセットされる。
【0064】
ステップS14において、コントローラ126は、キャリッジを移動させ、吐出ヘッド21のノズル♯151〜♯179からインクを吐出させ(インク吐出動作)、パス1における印刷を行う。このとき、ノズル♯151、及び、ノズル♯152から吐出されたインクは、紙Sには着弾せず、溝部357に着弾する。一方、ノズル♯153〜♯179から吐出されたインクは、紙Sに着弾し、紙の先端部が印刷される。
【0065】
ステップS15において、コントローラ126は、パス数のカウントを1つ上げる。これにより、カウント値が2になる。ステップS16において、コントローラ126は、パス数が4以下であるか否かを判断する。パス数が4よりも小さいので、処理は、ステップS17に進む。
【0066】
ステップS17において、コントローラ126は、紙Sを搬送量179・Dで搬送する(搬送動作)。搬送後の紙Sの先端部の搬送方向の位置は、ノズル♯107とほぼ対向する位置である(図13のパス2を参照)。
【0067】
次に、ステップS18において、コントローラ126は、プラテン移動モータ19Cを駆動し、溝部357を搬送量179・Dで移動させる。このとき、溝部357の搬送方向下流側の端の位置は、ノズル♯104とノズル♯105との間である(図13のパス2を参照)。そして、溝部357は、ノズル♯105〜♯109と対向する。そして、紙Sの先端部は、溝部357の上に位置している。
【0068】
そして、処理はステップS14に戻り、コントローラ126は、ノズル♯105〜♯179からインクを吐出させ、パス2における印刷を行う。このとき、ノズル♯105、及び、ノズル♯106から吐出されたインクは、紙Sには着弾せず、溝部357に着弾する。一方、ノズル♯107〜♯179から吐出されたインクは、紙Sに着弾し、紙の先端部が印刷される。
【0069】
そして、コントローラ126は、パス数のカウントを1つ上げた後(ステップS15)、紙Sを搬送量179・Dで搬送するとともに(ステップS17)、溝部357も移動量179・Dにて移動させる(ステップS18)。
【0070】
このように、ステップS14〜S18の処理を繰り返し、パス1〜パス4における印刷を行う。そして、パス4における印刷が終了すると、紙の先端部の印刷が終了する(このため、ステップS14〜S18の処理を先端印刷処理(上端印刷処理)ともいう)。そして、ステップS16において、コントローラ126が、パス数が4以上であると判断した場合、処理は、ステップS19に進む。
【0071】
ステップS19において、コントローラ126は、プラテン移動モータ19Cを駆動し、溝部357を初期位置に戻す。つまり、コントローラ126は、紙の先端部の印刷が終了した後、紙の後端部の印刷を開始する前に、溝部357を搬送方向上流側に移動させる。これは、紙の後端部の印刷(後述のステップS24〜ステップS28)に備えるためである。
【0072】
ステップS20において、コントローラ126は、紙Sを搬送量179・Dで搬送する。この状態において、インクを吐出する全てのノズル♯1〜♯179は、紙Sと対向している(図12のパス5参照)。
ステップS21において、コントローラ126は、吐出ヘッド21のノズル♯1〜♯179からインクを吐出させる。ノズル♯1〜♯179は紙Sと対向しているので、吐出されたインクは、全て紙に着弾する(但し、紙の側端部では、紙から外れるインクが存在する)。
ステップS22において、コントローラ126は、パス数のカウントを1つ上げる。ステップS23において、コントローラ126は、パス数がN−4以下であるか否かを判断する。パス数がN−4より小さい場合には、処理は、ステップS20に戻る。
そして、ステップS20〜S23の処理を繰り返し、パス5〜パスN−4における印刷を行う。この間、紙Sの中央部を印刷しているので、ステップS20〜S23の処理を通常印刷処理ともいう。
【0073】
パス数がN−4に達した場合には、処理は、ステップS24に進む。
ステップS24において、コントローラ126は、紙Sを搬送量179・Dで搬送する。搬送後、紙の後端部がヘッド21と対向する位置になる。ここでは、説明の簡略化のため、このときの紙Sの後端部の位置は、パス1のときの紙の先端部の位置と同じ位置にあるものとする。すなわち、搬送後の紙Sの後端部の搬送方向の位置は、ノズル♯152とノズル♯153との間にある(図14のパスN−3を参照)。
【0074】
なお、溝部は既に初期位置まで戻っているので(ステップS19)、溝部357は、ノズル♯150〜♯155と対向する。そして、紙Sの後端部は、溝部357の上に位置している。
【0075】
ステップS25において、コントローラ126は、キャリッジを移動させ、吐出ヘッド21のノズル♯1〜♯154からインクを吐出させ、パスN−3における印刷を行う。このとき、ノズル♯153、及び、ノズル♯154から吐出されたインクは、紙Sには着弾せず、溝部357に着弾する。一方、ノズル♯1〜ノズル♯152から吐出されたインクは、紙Sに着弾し、紙Sの後端部が印刷される。
【0076】
ステップS26において、コントローラ126は、パス数のカウントを1つ上げる。これにより、カウント値がN−2になる。ステップS27において、コントローラ126は、パス数がN以下であるか否かを判断する。パス数がNより小さいので、処理は、ステップS28に進む。
【0077】
ステップS28において、コントローラ126は、プラテン移動モータ19Cを駆動し、溝部357を搬送量179・Dで移動させる。このとき、溝部357の搬送方向下流側の端の位置は、ノズル♯104とノズル♯105との間である(図14のパスN−2を参照)。そして、溝部357は、ノズル♯105〜♯109と対向する。
【0078】
処理がステップS24に戻り、コントローラ126は、紙Sを搬送量179・Dで搬送する。搬送後の紙Sの後端部の搬送方向の位置は、ノズル♯107とほぼ対向する位置であり、溝部357の上にある(図14のパスN−2を参照)。
【0079】
そして、ステップS25において、コントローラ126は、ノズル♯1〜♯108からインクを吐出させ、パスN−2の印刷を行う。このとき、ノズル♯107、及び、ノズル♯108から吐出されたインクは、紙Sには着弾せず、溝部357に着弾する。一方、ノズル♯1〜♯106から吐出されたインクは、紙Sに着弾し、紙の後端部が印刷される。
【0080】
このように、ステップS24〜S28の処理を繰り返し、パスN−3〜パスNにおける印刷を行う。そして、パスNにおける印刷が終了すると、紙の後端部の印刷が終了する(このため、ステップS24〜S28の処理を後端印刷処理(下端印刷処理)ともいう)。そして、ステップS27において、コントローラ126が、パス数がN以上であると判断した場合、処理はステップS29に進む。
【0081】
紙の後端部の印刷が終了したので、その紙全体の印刷は終了している。そのため、コントローラ126は、次の印刷に備えるために、パス数のカウントをリセットし(ステップS29)、紙搬送モータ15を駆動し排紙ローラ17Bを回転させることによって、紙Sを排紙する(ステップS30)。
ステップS31において、コントローラ126は、印刷すべき印刷データがあるか否かを判断する。コントローラ126が、印刷すべき印刷データがあると判断した場合には、処理は、ステップS11に戻る。コントローラ126が、印刷すべき印刷データがないと判断した場合には、処理は、終了する。
【0082】
本実施形態によれば、溝部357が搬送方向に移動可能に設けられている。そして、コントローラ126は、紙Sの先端部を印刷する際に(ステップS14)、又は、紙Sの後端部を印刷する際に(ステップS25)、紙Sの先端部・後端部が溝部の上に位置するように、溝部357を搬送方向に移動させている(図12を参照)。
【0083】
これにより、紙Sの先端部や後端部を印刷する際の搬送動作(ステップS17、ステップS24)の搬送量Fを179・Dにすることができる。このため、参考例の場合と比較して、搬送量Fを大きくすることができ、印刷時間を短縮することができる。また、通常印刷時の搬送動作(ステップS20)のときと同じ搬送量なので、印刷ムラをなくし、印刷画像の画質を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、紙Sの先端部の印刷が終了した後、紙Sの後端部の印刷が開始される前に、コントローラ126は、溝部357を搬送方向上流側へ移動させ、紙Sの後端部を印刷する際に、溝部357を搬送方向に移動させている。これにより、先端印刷処理時、及び、後端印刷処理時の際のいずれの搬送動作の搬送量Fも179・Dにすることができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、ステップS19において、ノズルからインクを吐出しないときに、溝部357を戻している。これは、インクが吐出されているときに溝部357を移動すると、溝部357の移動の影響で紙Sが動いてインクの着弾位置がずれてしまい、画質が低下するためである。
【0086】
なお、本実施形態によれば、ステップS19において、1回で溝部357の位置を戻している。しかし、一度に溝部357を動かすと、溝部357の移動の影響で紙Sが動く虞がある。このため、複数回に分けて溝部357の位置を戻し、溝部357が1度に動く移動量を小さくし、紙Sが動くことを抑制するようにしても良い。
【0087】
===印刷システム等の構成===
次に、本発明に係る印刷システムの一例として、印刷装置としてインクジェットプリンタを備えた印刷システムを例にして説明する。
【0088】
図15は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。印刷システム1000は、コンピュータ本体1102と、表示装置1104と、インクジェットプリンタ1などの印刷装置1106と、入力装置1108と、読取装置1110とを備えている。コンピュータ本体1102は、本実施形態ではミニタワー型の筐体に収納されているが、これに限られるものではない。表示装置1104は、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)やプラズマディスプレイや液晶表示装置等が用いられるのが一般的であるが、これに限られるものではない。印刷装置1106は、上記に説明されたプリンタが用いられている。入力装置1108は、本実施形態ではキーボード1108Aとマウス1108Bが用いられているが、これに限られるものではない。読取装置1110は、本実施形態ではフレキシブルディスクドライブ装置1110AとCD−ROMドライブ装置1110Bが用いられているが、これに限られるものではなく、例えばMO(Magnet Optical)ディスクドライブ装置やDVD(Digital Versatile Disk)等の他のものであっても良い。
【0089】
図16は、図15に示した印刷システムの構成を示すブロック図である。コンピュータ本体1102が収納された筐体内にRAM等の内部メモリ1202と、ハードディスクドライブユニット1204等の外部メモリがさらに設けられている。
【0090】
上述したインクジェットプリンタ1の動作を制御するコンピュータプログラムは、例えばインターネット等の通信回線を経由して、印刷装置1106に接続されたコンピュータ1000等にダウンロードさせることができるほか、コンピュータによる読み取り可能な記録媒体Sに記録して配布等することもできる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクFD、CD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスクMO、ハードディスク、メモリ等の各種記録媒体を用いることができる。なお、このような記憶媒体に記憶された情報は、各種の読取装置1110によって、読み取り可能である。
【0091】
なお、以上の説明においては、印刷装置1106が、コンピュータ本体1102、表示装置1104、入力装置1108、及び、読取装置1110と接続されて印刷システムを構成した例について説明したが、これに限られるものではない。
【0092】
このようにして実現された印刷システムは、システム全体として従来システムよりも優れたシステムとなる。
【0093】
===その他の実施の形態===
以上、一実施形態に基づき、本発明に係るプリンタ等の印刷装置について説明したが、上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更または改良され得るとともに、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に係る印刷装置に含まれるものである。
【0094】
また、本実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部又は全部をソフトウェアによって置き換えてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアによって置き換えてもよい。
【0095】
また、印刷装置側にて行っていた処理の一部をホスト側にて行ってよく、また印刷装置とホストの間に専用の処理装置を介設して、この処理装置にて処理の一部を行わせるようにしてもよい。
【0096】
<プラテン14の位置を初期位置に戻すタイミングについて>
本実施の形態においては、パス数が4以上になった場合に、コントローラ126は、プラテン移動モータ19Cを駆動しプラテン14を初期位置に戻した。しかしながら、プラテン14の位置を初期位置に戻すタイミングは、パス数が4以上N−2以下の範囲にあれば、どのタイミングであってもかまわない。すなわち、紙Sの後端部を印刷する際に、紙Sの後端部がプラテン14に設けられた溝部357上に位置するのであれば、プラテン14を移動するタイミングは、どのタイミングであってもよい。
【0097】
また、本実施の形態においては、コントローラ126は、パス数をカウントすることにより、プラテン14の位置を初期位置に戻すタイミングを決定した。しかしながら、コントローラ126は、紙検知センサ53によって紙Sの後端部を検知し、紙Sの後端部が印刷されるときにどこに位置するかを計算することもできる。そして、コントローラ126は、紙Sの後端部が印刷されるときに紙Sの後端部が溝部357上に位置するように、プラテン14を移動させることも可能である。このようにすることによって、紙Sの搬送誤差に影響されることなく、印刷されるときの紙Sの後端部は溝部357上に位置するようになる。
【0098】
<媒体について>
媒体Sについては、普通紙やマット紙、カット紙、光沢紙、ロール紙、用紙、写真用紙、ロールタイプ写真用紙等をはじめ、これらの他に、OHPフィルムや光沢フィルム等のフィルム材や布材、金属板材などであっても構わない。すなわち、インクの吐出対象となり得るものであれば、どのような媒体であっても構わない。
【0099】
<インクについて>
使用するインクについては、顔料インクであっても良く、また染料インクであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る印刷装置の一実施形態の斜視図。
【図2】印刷装置の内部構成を説明した斜視図。
【図3】印刷装置の搬送部を示す断面図。
【図4】印刷装置のシステム構成を示すブロック構成図。
【図5】印刷装置のヘッドの一例を示す平面図。
【図6】図6A、及び、図6Bは、インターレース方式による画像印刷手順の一例を説明する説明図。
【図7】通常印刷時の印刷領域Pと媒体Sとの関係を説明した説明図。
【図8】縁無し印刷時の印刷領域Pと媒体Sとの関係を説明した説明図。
【図9】参考例の問題点を説明する図。
【図10】本発明の溝部の一例を説明する断面図。
【図11】印刷処理の一例を説明するフローチャート。
【図12】紙の端部の位置、及び、溝部の位置の説明図である。
【図13】紙の先端部の位置、及び、溝部の位置とノズルとの相対位置の説明図である。
【図14】紙の後端部の位置、及び、溝部の位置とノズルとの相対位置の説明図である。
【図15】印刷システムの外観構成を示した説明図である。
【図16】図15に示した印刷システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0101】
1 インクジェットプリンタ、2 操作パネル、3 排紙部、4 給紙部、
5 操作ボタン、6 表示ランプ、7 排紙トレー、8 給紙トレー、
11A 紙挿入口、11B ロール紙挿入口、13 給紙ローラ、14 プラテン、
15 紙搬送モータ、17A 搬送ローラ、17B 排紙ローラ、
18A フリーローラ、18B フリーローラ、19A ギヤ、19B ギヤ、
19C プラテン移動モータ、21 ヘッド、
30 クリーニングユニット、31 ポンプ装置、35 キャッピング装置、
41 キャリッジ、42 キャリッジモータ、44 プーリ、45 タイミングベルト、
46 ガイドレール、48 インクカートリッジ、49 カートリッジ装着部、
51 リニア式エンコーダ、122 バッファメモリ、124 イメージバッファ、
126 コントローラ、127 メインメモリ、
128 キャリッジモータ制御部、129 EEPROM、130 搬送制御部、
131 プラテン移動モータ制御部、132 ヘッド駆動部、
134 ロータリ式エンコーダ、
140 ホストコンピュータ、211 ノズル群、211Y ノズル群(Y)、
211M ノズル群(M)、211C ノズル群(C)、211K ノズル群(K)、
354a 溝部、354b 溝部、357 溝部、
1102 コンピュータ本体、1104 表示装置、1106 印刷装置、
1108 入力装置、1108A キーボード、1108B マウス、
1110 読取装置、1110A フレキシブルディスクドライブ装置、
1110B CD−ROMドライブ装置、
1202 内部メモリ、1204 ハードディスクドライブユニット、
S 紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体を所定方向に搬送する搬送部と、
前記所定方向に移動可能であり、前記インク吐出部の一部と対向し、対向する前記インク吐出部から吐出されたインクを受けるためのインク受け部と、
前記インク吐出部によるインク吐出動作と、前記搬送部による搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が前記インク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させるコントローラと、を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記媒体の前記所定方向下流側の端部の印刷が終了した後、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させ、前記媒体の前記所定方向上流側の端部を印刷する際に、前記インク受け部を前記所定方向に移動させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
前記インク吐出動作が行われていないときに、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の印刷装置において、
前記媒体の前記所定方向下流側の端部の印刷が終了した後、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、複数回に分けて、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記媒体の前記所定方向上流側の端部を検出するセンサを備え、
前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、前記センサの検出結果に応じた位置まで前記インク受け部を移動させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記媒体の前記所定方向における端部を印刷するときの前記搬送動作における搬送量は、前記媒体の中央部を印刷するときの前記搬送動作における搬送量と同じである
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記インク吐出部は、移動可能に設けられ、
前記インク受け部は、前記インク吐出部の移動する方向に沿って、形成されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記媒体に縁無し印刷を行う
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体を所定方向に搬送する搬送部と、
前記所定方向に移動可能であり、前記インク吐出部の一部と対向し、対向する前記インク吐出部から吐出されたインクを受けるためのインク受け部と、
前記インク吐出部によるインク吐出動作と、前記搬送部による搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が前記インク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させるコントローラと、を備え、
前記媒体の前記所定方向下流側の端部の印刷が終了した後、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させ、前記媒体の前記所定方向上流側の端部を印刷する際に、前記インク受け部を前記所定方向に移動させ、
前記インク吐出動作が行われていないときに、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させ、
前記媒体の前記所定方向下流側の端部の印刷が終了した後、前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、複数回に分けて、前記インク受け部を前記所定方向上流側に移動させ、
前記媒体の前記所定方向上流側の端部を検出するセンサを備え、
前記媒体の前記所定方向上流側の端部の印刷が開始される前に、前記センサの検出結果に応じた位置まで前記インク受け部を移動させ、
前記媒体の前記所定方向における端部を印刷するときの前記搬送動作における搬送量は、前記媒体の中央部を印刷するときの前記搬送動作における搬送量と同じであり、
前記インク吐出部は、移動可能に設けられ、
前記インク受け部は、前記インク吐出部の移動する方向に沿って、形成され、
前記媒体に縁無し印刷を行う
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
媒体に向けてインクを吐出するインク吐出動作と、前記媒体を所定方向に搬送する搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が、吐出されたインクを受けるためのインク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させる
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
コンピュータ本体と、このコンピュータ本体に接続可能な印刷装置とを具備した印刷システムであって、
前記印刷装置は、媒体に向けてインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体を所定方向に搬送する搬送部と、前記所定方向に移動可能であり、前記インク吐出部の一部と対向し、対向する前記インク吐出部から吐出されたインクを受けるためのインク受け部と、前記インク吐出部によるインク吐出動作と、前記搬送部による搬送動作とを交互に実行して前記媒体の前記所定方向における端部を印刷する際に、搬送される前記媒体の前記端部が前記インク受け部上に位置するように、前記インク受け部を前記所定方向に移動させるコントローラと、を備える
ことを特徴とする印刷システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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