説明

印刷装置、及び印刷装置の制御プログラム

【課題】
ユーザごとのジョブ処理優先度を時間帯や日付や曜日等に応じて経時的に変更することができる印刷装置、及び当該印刷装置を制御するための制御プログラムを提供する。
【解決手段】
本発明に係るプリンタ2は、各々の論理ポート(論理ポート1〜N)についてのジョブ処理優先度を含む各種ポート設定を、ポート設定情報Iを参照することにより経時的に変更する。これにより各々の論理ポートと関連付けられたユーザごとのジョブ処理優先度を時間帯や日付や曜日等に応じて経時的に変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から受信した印刷ジョブを実行するための印刷装置、及び当該印刷装置を制御するための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークプリンタに対してユーザごとの優先度や機能制限等を設定するためには、ネットワークサーバに格納されたユーザごとの認証情報を利用する方法が一般的であった。しかし、各ユーザの認証情報と優先度/機能制限を関連付けるためには大量のデータ処理が必要となるため、ユーザにとっての利便性が低下するという問題点が指摘されている。
【0003】
そこで、以下の特許文献1には、各ネットワーク層におけるプロトコル・印刷キューの組み合わせからなる複数の論理チャンネルを介してデータを受信するプリンタであって、各々の論理チャンネルに割り当てられた優先度を記録する優先度テーブルを参照することにより各々のホストコンピュータから送信されたデータの優先度を管理するプリンタが提案されている。このプリンタによれば、外部サーバに依存する従来の方法とは異なり、大量のデータ処理を伴わずにユーザごとの優先度を設定することができる。また、以下の特許文献2には、ROMに記録された優先順位テーブルに従って各ポートの優先順位を管理するプリンタが提案されている。
【0004】
これらのプリンタをオフィスに導入した場合、ユーザ(社員)ごとに個別に設定された優先度に従ってジョブが処理されることになる。そのため、ユーザごとの優先度の設定の仕方を工夫することで、緊急性が高いジョブが優先的に処理されるような状態を確保することができる。
【0005】
他方、オフィス内に多数の部署が存在する場合、各ユーザの業務の繁閑は周期的に変動するものと考えられるが(例えば、総務部に属するユーザは週末や月末が繁忙期であり、経理部に属するユーザは四半期末が繁忙期であると考えられる)、前述のプリンタにおいてはユーザごとの優先度が固定されているため、時期によっては繁忙期にあるユーザのジョブが後回しにされるという不都合が生じる可能性がある。そのため、ユーザごとの優先度を時間帯や日付や曜日等を指定して経時的に変更することができるプリンタに対するニーズが高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−143655号公報
【特許文献2】特開2000−43381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ユーザごとのジョブ処理優先度を時間帯や日付や曜日等に応じて経時的に変更することができる印刷装置、及び当該印刷装置を制御するための制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)印刷ジョブを受け付けるための複数の論理ポートを備えた印刷装置であって、各々の論理ポート向けの印刷ジョブの処理に関する各々の論理ポートの設定を経時的に変更する設定部を有する印刷装置。
【0010】
(2)前記設定部による変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブを、他の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに対して優先的に処理するための設定が含まれることを特徴とする上記(1)に記載の印刷装置。
【0011】
(3)前記設定部による変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理時に前記印刷装置の一部機能を制限するための設定が含まれることを特徴とする上記(1)に記載の印刷装置。
【0012】
(4)前記一部機能には、カラー印刷機能が含まれることを特徴とする上記(3)に記載の印刷装置。
【0013】
(5)前記一部機能としてカラー印刷機能が制限される場合、前記所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに基づくカラー画像を白黒印刷する印刷部をさらに有することを特徴とする上記(4)に記載の印刷装置。
【0014】
(6)前記設定部による変更後の論理ポートの前記設定には、所定の論理ポートでの印刷ジョブの受け付けを停止するための設定が含まれることを特徴とする上記(1)に記載の印刷装置。
【0015】
(7)全ての論理ポートでの印刷ジョブの受け付けが停止されている場合、印刷ジョブの処理に必要な電源を切断して節電モードに移行することを特徴とする上記(6)に記載の印刷装置。
【0016】
(8)所定の権限を有する管理者から、前記設定を経時的に変更するための設定情報を取得する設定情報取得部と、前記設定情報取得部により取得した前記設定情報を記録する記録部と、をさらに有し、前記設定部は、前記記録部に記録された前記設定情報に従って前記設定を経時的に変更することを特徴とする上記(6)に記載の印刷装置。
【0017】
(9)前記管理者及び各々の論理ポート向けに印刷ジョブを送信するユーザから、前記記録部に記録された当該論理ポートの前記設定情報を更新するための更新情報を取得する更新情報取得部をさらに有することを特徴とする上記(8)に記載の印刷装置。
【0018】
(10)前記更新情報取得部は、前記所定の論理ポートでの印刷ジョブの受け付けが停止されている場合、前記管理者のみから前記更新情報を取得することを特徴とする上記(9)に記載の印刷装置。
【0019】
(11)前記設定部による変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理を保留するための設定が含まれることを特徴とする上記(1)に記載の印刷装置。
【0020】
(12)印刷ジョブを受け付けるための複数の論理ポートを備えた印刷装置の制御プログラムであって、各々の論理ポート向けの印刷ジョブの処理に関する各々の論理ポートの設定を経時的に変更する手順(A)を前記印刷装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【0021】
(13)前記手順(A)での変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブを、他の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに対して優先的に処理するための設定が含まれることを特徴とする上記(12)に記載の制御プログラム。
【0022】
(14)前記手順(A)での変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理時に前記印刷装置の一部機能を制限するための設定が含まれることを特徴とする上記(12)に記載の制御プログラム。
【0023】
(15)前記一部機能には、カラー印刷機能が含まれることを特徴とする上記(14)に記載の制御プログラム。
【0024】
(16)前記一部機能としてカラー印刷機能が制限される場合、前記所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに基づくカラー画像を白黒印刷する手順を前記印刷装置にさらに実行させることを特徴とする上記(15)に記載の制御プログラム。
【0025】
(17)前記手順(A)での変更後の前記設定には、所定の論理ポートでの印刷ジョブの受け付けを停止するための設定が含まれることを特徴とする上記(12)に記載の制御プログラム。
【0026】
(18)全ての論理ポートでの印刷ジョブの受け付けが停止されている場合、印刷ジョブの処理に必要な電源を切断して節電モードに移行する手順(B)を前記印刷装置にさらに実行させることを特徴とする上記(15)に記載の制御プログラム。
【0027】
(19)所定の権限を有する管理者から、前記設定を経時的に変更するための設定情報を取得する手順(a)と、前記手順(a)で取得した前記設定情報を前記印刷装置の記録部に記録する手順(b)と、を前記印刷装置にさらに実行させ、前記手順(A)では、前記手順(b)で前記記録部に記録された前記設定情報に従って前記設定が経時的に変更されることを特徴とする上記(12)に記載の制御プログラム。
【0028】
(20)前記管理者及び各々の論理ポート向けに印刷ジョブを送信するユーザから、前記手順(b)で前記記録部に記録された当該論理ポートの前記設定情報を更新するための更新情報を取得する手順(c)を前記印刷装置にさらに実行させることを特徴とする上記(19)に記載の制御プログラム。
【0029】
(21)前記手順(c)では、前記所定の論理ポートでの印刷ジョブの受け付けが停止されている場合、前記管理者のみから前記更新情報が取得されることを特徴とする上記(20)に記載の制御プログラム。
【0030】
(22)前記手順(A)での変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理を保留するための設定が含まれることを特徴とする上記(12)に記載の制御プログラム。
【0031】
(23)上記(12)〜(22)のいずれか1つに記載の制御プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る印刷装置は、各々の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理優先度を含む各種ポート設定を時間帯や日付や曜日等に応じて経時的に変更することができる。そのため、本発明によれば、各々の論理ポートと関連付けられたユーザごとのジョブ処理優先度を経時的に変更することができるので、複数のユーザで1つの印刷装置を共有する場合の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るPCの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るプリンタの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るポート設定情報の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るプリンタの動作の概要を示す概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るプリンタによる印刷ジョブ取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係るプリンタの印刷待ちキュー内の印刷ジョブの一例を示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るプリンタによる起床時間決定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
−システムの構成(図1〜図4)
図1は、本実施形態に係る印刷システムSの全体構成を示すブロック図である。図1のように、印刷システムSは、印刷ジョブを生成するための端末装置としてのPC1、及びPC1から受信した印刷ジョブに基づく印刷画像を記録媒体に印刷するための印刷装置としてのプリンタ2を備えており、これらはネットワークNを介して双方向通信可能に接続されている。ネットワークNは、イーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI等の規格によるLAN、又はLANどうしを専用線で接続したWAN等である。なお、図1の例において、各々のPC1は、印刷システムSが設置されたオフィス内の部門1〜部門Nのいずれかに属するユーザによって使用される。また、PC1により生成される印刷ジョブには、見積書や請求書のような所定フォームの帳票を印刷するためのバリアブル印刷用の印刷ジョブが含まれる。
【0036】
続いて、上記機器の構成について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係るPC1の構成を示すブロック図である。図2のように、本実施形態に係るPC1は、制御部11、記録部12、表示部13、操作部14、通信インタフェース15を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス16を介して相互に接続されている。これらの構成要素について以下に順に説明する。
【0037】
制御部11は、CPUであり、プログラムに従って各部の動作を制御するともに所定の演算処理を実行する。記録部12は、ROM、RAM、ハードディスクからなり、OS(オペレーティングシステム)を含む各種制御プログラムを格納している。表示部13は、液晶表示装置であり、ユーザに各種情報を表示する。例えば、表示部13は、各種制御プログラムにより提供される所定のGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)をユーザに表示する。操作部14は、キーボードやマウス等の入力装置であり、ユーザから種々の動作指示を取得する。通信インタフェース15は、PC1をネットワークNに接続し、プリンタ2を含むネットワークN上の他の機器と通信するためのインタフェースである。
【0038】
以上のような構成を有するPC1には、プリンタ2により処理すべき印刷ジョブを生成するためのプリンタドライバがインストールされている。各々のプリンタドライバにはPC1へのインストール時にプリンタ2の論理ポートのいずれかが割り振られることになるが、同一の部門に属するユーザのPC1には同一の論理ポートが割り振られるものとする。より具体的には、図1の部門1〜Nに属するユーザのPC1には、論理ポート1〜Nがそれぞれ割り振られるものとする。なお、各々のプリンタドライバと論理ポートの関連付けには、プリンタドライバのインストール時に発行されるログインパスワードが用いられる。つまり、各々のプリンタドライバは、その起動時にユーザから受け付けたログインパスワードを参照して当該ユーザ向けの論理ポートを特定する。
【0039】
続いて、図3は、本実施形態に係るプリンタ2の構成を示すブロック図である。図3のように、本実施形態に係るプリンタ2は、制御部21、記録部22、操作部23、印刷部24、通信インタフェース25を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス26を介して相互に接続されている。これらの構成要素について以下に順に説明する。
【0040】
制御部21は、CPUであり、プログラムに従って各部の動作を制御するとともに所定の演算処理を実行する。記録部22は、ROM、RAM、ハードディスクからなり、OSを含む各種制御プログラム、及び制御部21がプログラム実行時に参照すべき各種データを格納している。特に、記録部22は、各々の論理ポート向けの印刷ジョブの処理に関する設定(以下、単に「ポート設定」ともいう)を経時的に変更するためのポート設定情報Iを格納している。図4は、記録部22に格納されたポート設定情報Iの一例を示す概略図である。このポート設定情報Iの詳細については後述する。また、記録部22はPC1から送信された印刷ジョブを一時的に保持することができる。
【0041】
操作部23は、プリンタ2のステータス情報や設定情報等をユーザに表示するとともに種々の操作指示をユーザから取得するためのタッチパネルである。特に、操作部23は、印刷システムSの各種設定に関する所定の権限を有するシステム管理者(以下、単に「システム管理者」ともいう)から前述のポート設定情報Iを取得することができる。この点についてはさらに後述する。
【0042】
印刷部24は、PC1から受信した印刷ジョブに基づく印刷画像を記録媒体に印刷する。より具体的に、印刷部24は、感光体ドラムを帯電させる帯電工程、レーザ光により感光体ドラム上に静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラム上の静電潜像にトナーを付着させてトナー画像を形成する現像工程、感光体ドラム上のトナー画像を転写ベルトにより記録用紙に転写する転写工程、記録用紙に転写されたトナー画像を定着ローラにより加熱・定着させる定着工程からなる印刷処理を実行する。なお、印刷部24が採用する印刷方式はインパクト方式や熱転写方式やインクジェット方式等の他の印刷方式であってもよい。
【0043】
通信インタフェース26は、外部機器と通信するためのインタフェースであり、ネットワークNを介してPC1と通信するためのNIC(Network Interface Card)のみならず、外部機器と直接通信するためのUSB(Universal Serial Bus)や近距離無線通信のためのBluetooth等を備えている。
【0044】
以上のような構成を有するプリンタ2は、前述のポート設定情報Iに従って各々の論理ポートについてのポート設定を時間帯や曜日や日付等に応じて経時的に変更することができる。再び図4を参照すると、本実施形態に係るポート設定情報Iは、各々の論理ポートについてのポート設定の時間帯に応じて変化を週単位で記録するテーブルである。ただし、ポート設定情報Iは、図4のような週単位の変化ではなく、月単位又は年単位のより長期間にわたる変化を記録することもできる。プリンタ2は、このようなポート設定情報Iを前述のシステム管理者から取得する。また、プリンタ2は、記録部22に格納されたポート設定情報Iを更新するための更新情報をシステム管理者から随時取得することができる。この点についてはさらに後述する。
【0045】
なお、本実施形態に係るポート設定には、各々の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの他の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに対する優先度(以下、単に「ジョブ処理優先度」ともいう)や、各々の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理時に適用すべきプリンタ2の機能制限(以下、単に「機能制限」ともいう)や、各々の論理ポートでの印刷ジョブの受け付け可否(以下、「ジョブ受け付け可否」ともいう)が含まれる。図4のテーブルに示されたポート設定の具体的内容は以下の表1の通りである。
【0046】
【表1】

【0047】
表1のように、本実施形態に係るプリンタ2は、各々の論理ポートのジョブ処理優先度を「高」、「標準」、「低」、「保留」のいずれかに変更することができる。ここで、ジョブ処理優先度「高」とは、その論理ポートで受け付けた印刷ジョブを最優先に処理するための設定である。また、ジョブ処理優先度「標準」とは、その論理ポートで受け付けた印刷ジョブを、ジョブ処理優先度「標準」の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの後に処理するための設定であり、ジョブ処理優先度「低」は、その論理ポートで受け付けた印刷ジョブを、ジョブ処理優先度「高」及び「標準」の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの後に印刷するための設定である。なお、ジョブ処理優先度が等しい複数の論理ポートで印刷ジョブを受け付けた場合には、ポート番号が小さい論理ポートで受け付けた印刷ジョブを優先的に処理することになる。このようにジョブ処理優先度を多段階に変更可能とすることで、より緊急性の高いジョブをより迅速に処理することができるようになる。
【0048】
また、ジョブ処理優先度「保留」とは、その論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理を、ジョブ処理優先度が「高」、「標準」、「低」のいずれかに変更されるまで保留するための設定である。このとき保留される印刷ジョブは一時的に記録部22に保持される。このようにジョブ処理優先度を「保留」に変更可能とすることで、その論理ポート向けの印刷ジョブを処理可能な時間帯を所定の時間帯のみに限定することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るプリンタ2は、各々の論理ポートの機能制限を、「カラー禁止」に変更することができる。ここで、「カラー禁止」とは、その論理ポートで受け付けた印刷ジョブのカラー印刷を禁止するための設定である。なお、プリンタ2は「カラー禁止」状態の論理ポートでカラー印刷用の印刷ジョブを受け付けた場合には、その印刷ジョブに基づくカラー画像をカラー印刷せずに白黒印刷することになる。各々の論理ポートの機能制限としては、「カラー禁止」の他にもN−up印刷を禁止するための「N−up禁止」や両面印刷を禁止するための「両面禁止」等が考えられる。
【0050】
また、本実施形態に係るプリンタ2は、各々の論理ポートのジョブ受け付け可否を「停止」に変更することができる。ここで、ジョブ受け付け可否「停止」とは、その論理ポート向けの印刷ジョブの受け付けを一時的に停止するための設定である。プリンタ2は全ての論理ポートが「停止」状態になった時点で印刷部24への電力供給を停止して節電モードに移行する。なお、このような「停止」状態との対比のために、印刷ジョブを受け付け可能な状態のことを以下では「稼動」状態ということにする。
【0051】
以上をまとめると、図4のテーブルにより規定される各々の論理ポートのポート設定は次の通りである:
論理ポート1(部門1のユーザ用):月曜日〜金曜日の毎日8時〜20時はジョブ処理優先度「標準」で印刷処理を実行可能である(ただし、カラー印刷は禁止)。それ以外の期間中は印刷ジョブの受け付けを停止する
論理ポート2(部門2のユーザ用):金曜日の12時〜20時はジョブ処理優先度「高」で印刷処理を実行可能である。月曜日の8時〜金曜日の12時、金曜日の20時〜24時は受け付けた印刷ジョブを保留する。それ以外の期間中は印刷ジョブの受け付けを停止する
論理ポート3(部門3のユーザ用):月曜日〜木曜日の毎日8時〜12時はジョブ処理優先度「高」で印刷処理を実行可能である。金曜日の8時〜20時はジョブ処理優先度「低」で印刷処理を実行可能である。月曜日の0時〜8時、月曜日〜木曜日の毎日12時〜翌日8時、金曜日の20時〜24時は受け付けた印刷ジョブを保留する。それ以外の期間中は印刷ジョブの受け付けを停止する
論理ポート4(部門4のユーザ用):月曜日〜金曜日の毎日8時〜20時はジョブ優先度「標準」で印刷処理を実行可能である。それ以外の期間中は印刷ジョブの受け付けを停止する
論理ポート5(部門5のユーザ用):月曜日〜金曜日の毎日8時〜20時はジョブ優先度「低」で印刷処理を実行可能である(ただし、カラー印刷は禁止)。それ以外の期間中は印刷ジョブの受け付けを停止する
論理ポートN(部門Nのユーザ用):月曜日の0時〜金曜日の24時はジョブ優先度「高」で印刷処理を実行可能である。それ以外の期間中は印刷ジョブの受け付けを停止する。
【0052】
−動作の概要(図5〜図8)
続いて、本実施形態に係るプリンタ2の動作の概要について説明する。図4は、プリンタ2がプログラムに従って実行する主要な処理である「設定情報取得処理」、「更新情報取得処理」、「起床処理」、「稼動時間確認処理」、「印刷ジョブ取得処理」、「印刷処理」、及び「起床処理」について説明するための概念図である。なお、図中の実線は外部から受信した印刷ジョブの流れを表しており、図中の点線は各々の処理を実行する際の制御部21のデータ参照先を表している。
【0053】
ここで、「設定情報取得処理」とは、システム管理者からポート設定情報Iを取得する処理である。ここで、プリンタ2は、操作部23によりポート設定情報Iを直接的に取得してもよいし、PC1上で稼動する専用のアプリケーションによりネットワーク経由でこれを取得してもよい。このようにして取得されたポート設定情報Iは記録部22に格納される。
【0054】
続いて、「更新情報取得処理」とは、「設定情報取得処理」により記録部22に格納されたポート設定情報Iを更新するための更新情報をシステム管理者から取得する処理である。なお、プリンタ2は、各々の論理ポートについての更新情報を、当該論理ポートを使用するユーザからも取得することができる。例えば、プリンタ2は、論理ポートNについての更新情報をシステム管理者のみならず部門Nのユーザからも取得することができる。ただし、論理ポートが「停止」状態である場合、プリンタ2はその論理ポートについての更新情報をシステム管理者以外の者から取得することはできない。つまり、図4の例において、プリンタ2は、土曜日の0時〜日曜日の24時の期間中はシステム管理者以外の者から更新情報を取得することはできない。これにより「稼動」状態の論理ポートを利用するユーザにとっての利便性を向上させるとともに「停止」状態の論理ポートの不正使用を防止することができる。なお、更新情報の取得方法は、前述の設定情報取得処理と同様である。
【0055】
続いて、「稼働時間確認処理」とは、通信インタフェース25で受信した印刷ジョブの宛先論理ポートが現在「稼動」状態であるかどうかを確認する処理である。このとき、プリンタ2は、記録部22内のポート設定情報Iを参照することにより、各々の論理ポートが「稼動」状態であるか、又は「停止」状態であるかを判定する。そして、宛先論理ポートが現在「稼動」状態である場合は、その論理ポートの印刷待ちキューに印刷ジョブを転送し、宛先論理ポートが現在「停止」状態である場合は、印刷ジョブを廃棄する。
【0056】
続いて、「印刷ジョブ取得処理」とは、前述の「稼動時間確認処理」を経て各々の論理ポートの印刷待ちキューに転送された印刷ジョブを取得し、印刷部24に転送する処理である。図6は「印刷ジョブ取得処理」の具体的手順を示すフローチャートである。このフローチャートについて以下に詳細に説明する。
【0057】
図6において、先ず、プリンタ2は、記録部22内のポート設定情報Iを参照し、ジョブ処理優先度が最も高い論理ポートを選択する(S101)。そして、S101で選択した論理ポートの印刷待ちキュー内に印刷ジョブが存在するかどうかを判定する(S102)。ここで、印刷待ちキュー内に印刷ジョブが存在する場合は(S102のYES)、印刷待ちキュー内の先頭の印刷ジョブを取得し(S105)、それを印刷処理のために印刷部24に転送する(S106)。その後、プリンタ2は一連の処理を終了する(エンド)。
【0058】
他方、印刷待ちキュー内に印刷ジョブが存在しない場合(S102のNO)、全ての論理ポートに対するS102の判定が完了しているかどうかをさら判定する(S103)。ここで、全ての論理ポートに対するS102の判定が完了している場合(S103のYES)、現在印刷待ち状態の印刷ジョブは存在しないことになるので、プリンタ2はどの印刷待ちキューからも印刷ジョブを取得することなく一連の処理を終了する(エンド)。また、全ての論理ポートに対するS102の判定が完了していない場合(S103のNO)、プリンタ2は次にジョブ処理優先度が高い論理ポートを選択し(S104)、その論理ポートについてS102以降の手順を実行する。
【0059】
以上の手順で印刷部24に転送された印刷ジョブの処理が終了したら、プリンタ2は次に処理すべき印刷ジョブを取得するために再度「印刷ジョブ取得処理」を実行することになる。例えば、記録部22に図4のようなポート設定情報Iが格納されており、ある月曜日の9時の時点において印刷待ちキューに図7のような印刷ジョブが存在する場合、プリンタ2はこれらの印刷ジョブをJOB3−1、JOB1−1、JOB1−2、JOB1−3、JOB5−1の順に取得することになる。なお、論理ポート2は「保留」状態であるため、JOB2−1はジョブ処理優先度が「高」に変更される金曜日の12時まで記録部22に保持されることになる。
【0060】
続いて、「印刷処理」とは、前述の「印刷ジョブ取得処理」を経て印刷部24に転送された印刷ジョブに基づく印刷画像を印刷部25により記録用紙に印刷するための処理である。「印刷処理」の具体的手順は前述の通りである。なお、この「印刷処理」実行時には、ポート設定情報Iに基づき「カラー禁止」や「両面禁止」等の機能制限が適用される場合がある。
【0061】
続いて、「起床時間決定処理」とは、節電モード運転中のプリンタ2が次に通常モードに復旧する時間(起床時間)を決定するための処理である。なお、プリンタ2は、前述のように、全ての論理ポートが「停止」状態になった時点で節電モードに移行するものとする。図8は、起床時間決定処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートについて以下に詳細に説明する。
【0062】
図8において、先ず、プリンタ2は、記録部22内のポート設定情報Iを参照して、論理ポート1の現在の「停止」状態が終了する時間を取得する(S201)。そして、S201で取得した時間を起床時間として記録部22に登録する(S202)。続いて、プリンタ2は、次の論理ポート(論理ポート2)についても同様に、現在の「停止」状態が終了する時間を取得し(S203)、それがS202で登録された起床時間よりも早く到来するかどうかを判定する(S204)。そして、S203で取得した時間がより早く到来する場合は(S204のYES)、S202で登録された起床時間を更新し(S205)、そうでない場合は(S204のNO)、S202で登録された起床時間を更新することなくS205に進む。
【0063】
続いて、S205では、現在の「停止」状態が終了する時間を取得する手順が全ての論理ポートについて完了しているかどうかさらに判定し(S205)、完了している場合は(S205のYES)、その時点で記録部22に登録されている起床時間を実際の起床時間として決定する(S206)。その後、プリンタ2は一連の処理を終了する(エンド)。他方、全ての論理ポートについての同手順が完了していない場合は(S205のNO)、次の論理ポート(論理ポート3〜)についてS203以降の手順を実行する。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るプリンタ2は、論理ポート1〜Nで受け付けた印刷ジョブの処理優先度を含む各種ポート設定を時間帯や日付や曜日等に応じて経時的に変更することができる。そのため、本実施形態によれば、各々の論理ポートと関連付けられたユーザごとのジョブ処理優先度を経時的に変更することができるので、複数のユーザでプリンタ2を共有する場合の利便性を向上させることができる。
【0065】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内容に応じて種々改変することができる。例えば、本発明に係る印刷装置は、上記実施形態において説明したようなプリンタ2ではなく、コピー機能、スキャン機能、及びファクシミリ送受信機能等を備えた多機能周辺機器(MFP)であってもよい。
【0066】
本発明に係る印刷装置は、上記手順を実行するための専用のハードウェア回路によっても、上記手順を記述したプログラムをCPUが実行することによっても実現可能である。後者により本発明を実現する場合、印刷装置を作動させるプログラムは、フロッピー(登録商標)ディスクやCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ROMやハードディスク等に転送され記録される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、印刷装置の一機能として各装置のソフトウェアに組み込まれてもよい。
【0067】
なお、上述した実施形態は、以下の技術思想的側面を更に有する。
【0068】
(1)印刷ジョブを受け付けるための複数の論理ポートを備え、前記複数の論理ポートの各々は、当該論理ポート向けの印刷ジョブの処理に関する設定が設けられており、これら論理ポートのうち少なくとも一つは、受け付けた印刷ジョブの処理時に前記印刷装置の一部機能を制限するための設定がなされていることを特徴とする印刷装置。
【0069】
(2)前記一部機能には、カラー印刷機能が含まれることを特徴とする上記(1)に記載の印刷装置。
【0070】
(3)前記一部機能としてカラー印刷機能が制限される場合、前記少なくとも一つの論理ポートで受け付けた印刷ジョブに基づくカラー画像を白黒印刷する印刷部をさらに有することを特徴とする上記(2)に記載の印刷装置。
【0071】
上記(1)の印刷装置によると、前記少なくとも一つの論理ポートを開放するユーザについて、当該ユーザによる印刷装置機能(例えば、上記(2)の印刷装置にあってはカラー印刷機能)の使用を制限(例えば、上記(3)の印刷装置にあっては強制的に白黒印刷に変更)することが出来る。従って、論理ポート毎に当該論理ポートを開放するユーザを決めることにより、ユーザ単位で印刷機能の使用権限を管理することが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1 PC、
2 プリンタ、
22 記録部、
24 印刷部、
25 通信インタフェース、
S 印刷システム、
I ポート設定情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブを受け付けるための複数の論理ポートを備えた印刷装置であって、
各々の論理ポート向けの印刷ジョブの処理に関する各々の論理ポートの設定を経時的に変更する設定部を有する印刷装置。
【請求項2】
前記設定部による変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブを、他の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに対して優先的に処理するための設定が含まれることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記設定部による変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理時に前記印刷装置の一部機能を制限するための設定が含まれることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記一部機能には、カラー印刷機能が含まれることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記一部機能としてカラー印刷機能が制限される場合、前記所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに基づくカラー画像を白黒印刷する印刷部をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記設定部による変更後の論理ポートの前記設定には、所定の論理ポートでの印刷ジョブの受け付けを停止するための設定が含まれることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
全ての論理ポートでの印刷ジョブの受け付けが停止されている場合、印刷ジョブの処理に必要な電源を切断して節電モードに移行することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
所定の権限を有する管理者から、前記設定を経時的に変更するための設定情報を取得する設定情報取得部と、
前記設定情報取得部により取得した前記設定情報を記録する記録部と、をさらに有し、
前記設定部は、前記記録部に記録された前記設定情報に従って前記設定を経時的に変更することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記管理者及び各々の論理ポート向けに印刷ジョブを送信するユーザから、前記記録部に記録された当該論理ポートの前記設定情報を更新するための更新情報を取得する更新情報取得部をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記更新情報取得部は、前記所定の論理ポートでの印刷ジョブの受け付けが停止されている場合、前記管理者のみから前記更新情報を取得することを特徴とする請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記設定部による変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理を保留するための設定が含まれることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項12】
印刷ジョブを受け付けるための複数の論理ポートを備えた印刷装置の制御プログラムであって、
各々の論理ポート向けの印刷ジョブの処理に関する各々の論理ポートの設定を経時的に変更する手順(A)を前記印刷装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項13】
前記手順(A)での変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブを、他の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに対して優先的に処理するための設定が含まれることを特徴とする請求項12に記載の制御プログラム。
【請求項14】
前記手順(A)での変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理時に前記印刷装置の一部機能を制限するための設定が含まれることを特徴とする請求項12に記載の制御プログラム。
【請求項15】
前記一部機能には、カラー印刷機能が含まれることを特徴とする請求項14に記載の制御プログラム。
【請求項16】
前記一部機能としてカラー印刷機能が制限される場合、前記所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブに基づくカラー画像を白黒印刷する手順を前記印刷装置にさらに実行させることを特徴とする請求項15に記載の制御プログラム。
【請求項17】
前記手順(A)での変更後の前記設定には、所定の論理ポートでの印刷ジョブの受け付けを停止するための設定が含まれることを特徴とする請求項12に記載の制御プログラム。
【請求項18】
全ての論理ポートでの印刷ジョブの受け付けが停止されている場合、印刷ジョブの処理に必要な電源を切断して節電モードに移行する手順(B)を前記印刷装置にさらに実行させることを特徴とする請求項15に記載の制御プログラム。
【請求項19】
所定の権限を有する管理者から、前記設定を経時的に変更するための設定情報を取得する手順(a)と、
前記手順(a)で取得した前記設定情報を前記印刷装置の記録部に記録する手順(b)と、を前記印刷装置にさらに実行させ、
前記手順(A)では、前記手順(b)で前記記録部に記録された前記設定情報に従って前記設定が経時的に変更されることを特徴とする請求項12に記載の制御プログラム。
【請求項20】
前記管理者及び各々の論理ポート向けに印刷ジョブを送信するユーザから、前記手順(b)で前記記録部に記録された当該論理ポートの前記設定情報を更新するための更新情報を取得する手順(c)を前記印刷装置にさらに実行させることを特徴とする請求項19に記載の制御プログラム。
【請求項21】
前記手順(c)では、前記所定の論理ポートでの印刷ジョブの受け付けが停止されている場合、前記管理者のみから前記更新情報が取得されることを特徴とする請求項20に記載の制御プログラム。
【請求項22】
前記手順(A)での変更後の前記設定には、所定の論理ポートで受け付けた印刷ジョブの処理を保留するための設定が含まれることを特徴とする請求項12に記載の制御プログラム。
【請求項23】
請求項12〜22のいずれか1つに記載の制御プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−104950(P2011−104950A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265199(P2009−265199)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】