説明

印刷装置およびその制御方法

【課題】文字情報や図形情報等を印刷画像データに隠蔽可能な印刷ができる印刷装置、または、不必要となった文字情報や図形情報を印刷媒体から消去可能な印刷ができる印刷装置を提供する。
【解決手段】入力された画像データを印刷媒体に印刷し、画像データが印刷された印刷媒体の印刷面に保護層を印刷するための手段、画像データとは異なる情報を入力するための手段、入力された情報の印刷媒体上の位置を設定するための手段、入力された情報の形状および設定された位置に従って印刷される保護層の諧調値を設定し、画像データおよび設定された諧調値に基づいて画像データおよび保護層を印刷媒体に印刷するための手段とを備え、保護層を印刷しない領域が入力された情報を表すように該諧調値の設定を制御する印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、その制御方法及びコンピュータプログラムに関し、特に印刷装置の印刷システムに適用されるオーバーコート層の印刷制御装置、その制御方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、携帯電話といった画像入力手段を有する機器で撮像された画像データを印刷出力可能な印刷装置が数多く製品化されている。
【0003】
前記画像入力機器で撮像した写真などの画像データを印刷出力する目的で使用されるフォト印刷装置で採用されている印刷方式の一例として、熱転写方式が挙げられる。
【0004】
熱転写方式印刷装置は、染料受容層を表面に有する印刷用紙を用い、サーマルヘッドの主走査方向に配列された複数個の発熱体を選択的に駆動させることで、インクシートの染料層を印刷用紙の染料受像層に熱転写させる。同時に印刷用紙をサーマルヘッドの副走査方向に搬送することで印刷用紙上にドットライン状の印刷を行い、印刷用紙上に画像を形成する。
【0005】
また、昇華型熱転写方式印刷装置は、固体から気体に昇華した染料を印刷用紙に付着させる方式のプリンタである。ヘッドに加える熱量と回数を制御して、1画素の濃度を変化させることで、滑らかで階調性豊かな画像を表現することができるため写真のプリント出力に適した方式である。
【0006】
熱転写方式印刷装置では、一般的に図2に示される構成のインクリボンが使用されている。インクリボンの基材上に画像を形成するイエロー(Y)色201、マゼンタ(M)色202、シアン(C)色203の昇華性染料層が順に配置され、最後に画像形成層を保護するためのオーバーコート層(熱溶融性の樹脂製材料クリア層)204が配置されている。また、各色のインクリボンの間及びオーバーコート層との間には、インクリボンの頭出し位置検出用のマーカー205が配置されている。ただし、モノクロ画像印刷専用などの特色系インクリボンの構成はこの限りではない。
【0007】
一つの画像は、Y色、M色、C色の3色の染料層及びオーバーコート層(保護層)から形成される。図3は、画像が形成された印刷用紙断面の概念図である。印刷用紙の染料受容層301側からイエロー(Y)色の昇華性染料302、マゼンタ(M)色の昇華性染料303、シアン(C)色の昇華性染料304、オーバーコート(OC)層305と順次印刷用紙へと熱転写処理が成される。
【0008】
昇華染料層により形成された画像をオーバーコート層で保護することにより、擦過性が向上し、経年による色あせの防止が図られ、また耐久性および耐水性に優れた仕上がりを実現することが可能となる。
【0009】
従ってインクリボンカートリッジ内のインクリボンには、印刷可能な枚数分だけY/M/C色、OC層が、繰り返し配置されている。通常、Y/M/C各色及びOC層のリボンの長さは、印刷する印刷用紙の長手方向のサイズが印刷可能な長さに設定されている。
【0010】
また、印刷する際に印刷装置側の設定で、撮影日時やユーザの要求する任意の文字情報を画像内に一緒に印刷可能な印刷装置が存在する。その他、画像内に模様などスタンプや吹き出し形状の図形を挿入して印刷画像のバリエーションを拡充する機能を持つ印刷装置もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−73034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、印刷物をポストカード(絵葉書)として郵送する際などに個人情報が記載された文字情報を郵送相手以外の第三者に読まれたくない場合がある。また、カードサイズ等の印刷物でスクラッチ印刷のように文字や記号情報を隠蔽しておき、ユーザの作業により文字や記号情報として認識できる機能が印刷画像のバリエーションの拡充として求められている。また前記要望とは反対に、不必要となった文字情報や図形情報を消去したいという要望もある。
【0013】
例えば、特許文献1では印刷画像の保護を行うオーバーコート層の塗布量を増減させて撮影画像に影響を与えない範囲でユーザの要求する情報を印刷画像に記録する技術が開示されている。文字情報部分のオーバーコート層の厚みが異なることにより反射率も異なり、ユーザが印刷物を斜め方向から目視することで、文字情報部分を認識可能となる。
【0014】
しかし、文字情報を認識するためには、蛍光灯等明かりのある場所で光に当てながら印刷物を確認する必要があり、暗い環境下での視認性という点で問題があった。また、意図せず第三者に読まれてしまうという可能性がある。
【0015】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するために成されたものである。すなわち、本発明の目的は、画像印刷において保護層を印刷する印刷装置において、印刷画像から文字情報または図形情報等を隠蔽することが可能な印刷装置を提供することである。また、不必要となった文字情報や図形情報を印刷後に消去することが可能な印刷装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明による印刷装置は、画像データを入力する画像データ入力手段、画像データ入力手段により入力された画像データを印刷媒体に印刷し、画像データが印刷された印刷媒体の印刷面に保護層を印刷する印刷手段、画像データとは異なる情報を入力する情報入力手段、印刷手段を制御して画像データおよび保護層を印刷媒体に印刷する制御手段とを備え、刷制御手段は、印刷手段を制御して、情報入力手段により入力された情報に基づいて保護層を印刷させ、この制御により印刷手段は、保護層を印刷しない部分が情報入力手段により入力された情報を表すことで情報の印刷を行う。
【0017】
また、本件発明の印刷装置は、画像データ入力手段で入力された画像データおよび情報入力手段で入力された情報を、設定手段による設定に従って表示するための表示手段を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、文字情報や図形情報等を印刷画像内に隠蔽することが可能な印刷を行える印刷装置を提供することが出来る。また、印刷後に不必要となった文字情報や図形情報を容易に消去することが可能なように印刷を行える印刷装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置により文字列を印刷したときの印刷用紙の印刷面を示す図である。
【図2】熱転写方式印刷装置で一般的に使用されるインクリボンの構成を示す図である。
【図3】熱転写方式印刷装置で画像が形成された印刷用紙の断面を示す概念図である。
【図4】本発明の各実施形態に係る印刷装置とそれに用いられるカートリッジの外観構成図である。
【図5】本発明の各実施形態に係る印刷装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の各実施形態に係る印刷装置において、カートリッジが装着されたときの印刷装置の側断面図である。
【図7】本発明の一つの実施形態に係る印刷装置において表示部と操作部材の構成を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置のGUIの表示例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置のGUIの表示例を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置のGUIの表示例を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置により文字列が印刷された印刷用紙の印刷面を示す模式図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置で画像が形成された印刷用紙の断面を示す概念図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置により図形が印刷された印刷用紙の印刷面を示す図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置により文字列およびその背景部に格子模様を印刷した印刷用紙の印刷面を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置のGUIの表示例を示す図である。
【図18】本発明の第3の実施形態に係る印刷装置によりデジタル文字列を印刷した印刷用紙の印刷面を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に係る印刷装置で画像が形成された印刷用紙の断面を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、図1乃至図19を参照して詳細に説明する。図1〜19を参照して、本発明の実施例によるプリンタシステムの概要について説明する。
【0021】
図4は、本実施形態にかかる印刷装置400および印刷装置400に用いられるカートリッジ410の外観構成を示す図である。
図4に示すように、印刷装置400は、その側面が開閉してカートリッジ410を図示する矢印420方向に着脱可能な(装着可能/取り出し可能)構成を有するハウジング401を備える。該ハウジング401の上部には、表示部402と操作部403とが配されている。GUI(Graphical User Interface)の表示を行う表示部402は液晶ディスプレイ等の表示画面から構成され、画像データの表示や印刷に必要な設定データを入力するためのメニューの表示を行う。操作部403は、図7に示される各種操作部材を備える。
【0022】
図7に示されるように、操作部材には、印刷装置の電源のON/OFFを行う電源ボタン701、印刷出力の実行・中止を行う印刷/中止ボタン706が配置されている。電源ボタン701の押下により電源が投入される。十字キー705を操作して画像データを選択し、SETボタン712の押下により選択した画像データの決定を行う。またジョグダイヤル711を回転させることで画像データの送り動作、スクロール動作、メニュー選択動作が行なえる。
【0023】
メニューボタン703の押下により印刷枚数設定画面や印刷媒体(印刷用紙)種類設定画面への移行ができる。編集ボタン710により画像データのトリミング編集作業画面へ遷移し、ズームインボタン708及びズームアウトボタン707を操作して画像データのトリミングサイズを決定する。表示ボタン709で画像データのファイル名や撮影日、画像サイズといった情報の表示を行う。おたのしみボタン702は、カレンダ作成、マルチレイアウト作成(複数の画像データを並べてレイアウトする)、といった編集機能の選択画面へ遷移するためのボタンである。
【0024】
印刷する画像データの選択と各種設定終了後に印刷/中止ボタン706を押下することで、印刷処理が開始される。印刷処理開始後に処理を中止したい場合は同印刷/中止ボタン706を押下する。
【0025】
カートリッジ410には、インクが塗布されているインクリボンと、印刷紙としてのロール紙(ローラに巻かれた帯状の記録媒体)とが収納されている。また、カートリッジ410を印刷装置400に装着する前の状態では、ロール紙はハウジング411により密閉された構成となっており、ユーザがロール紙に直接触れることができない構成となっている。印刷時にはロール紙がカートリッジ410から引き出され、インクリボンに塗布されたインクが印刷装置のサーマルヘッドによりロール紙に転写される。
【0026】
熱転写方式の印刷装置で一般的に使用されるインクリボンを図2に示す。このインクリボンでは、基材上に画像を形成するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)用の昇華性染料層201乃至203が順に配置され、次に画像形成層を保護するオーバーコート層204(熱溶融性の樹脂製材料クリア層)が配置される。また、各色のインクリボンの間及びオーバーコート層との間には、インクリボンの頭出し位置検出用のマーカー205が配置される(先頭のY色マーカーは二重線となっている)。ただし、モノクロ画像専用などの特色系インクリボンの構成はこの限りではない。
【0027】
一つの画像を形成するために、Y色、M色、C色の3色の染料層及びオーバーコート層である保護層を一組として、順次印刷用紙への熱転写処理が行われる。従ってインクリボンカートリッジ内のインクリボンには、印刷可能な枚数分だけY/M/C色、オーバーコート層が、繰り返し配置されている。
【0028】
図4において、412はロール紙が巻かれたローラの回転軸である。カートリッジ410を印刷装置400に装着した際には、回転軸412が印刷装置400が有する給紙モータの回転機構と結合され、印刷装置400によってローラの回転が制御される。413、414は、それぞれインクリボンの供給ローラと巻き取りローラの回転軸である。巻き取りローラの回転軸414は、カートリッジ410を印刷装置400に装着した際に、印刷装置400が有するインクリボン巻上げモータ517の回転機構と結合される。これにより、印刷装置400によって巻き取りローラの回転が制御される。
【0029】
図5は印刷装置400の機能構成を示すブロック図である。501は印刷装置400全体を制御するメインコントローラで、システム制御及び各種コンピュータプログラムに従った演算処理を行う。メインコントローラ501の演算処理により画像データに加工処理を施し、印刷処理に必要な画像データを生成する。502はメインコントローラ501に接続され、制御プログラムなどが格納されるROMであり、メインコントローラ501は、ROM502に格納された制御プログラムに従って動作する。また、ROM502にはカール量予測用テーブルが格納されており、メインコントローラ501でカール量を演算処理して算出する。RAM503は、メインコントローラの演算処理用のワークメモリや、印刷用データの保管用メモリとして使用される。また、操作部403を介して入力された各種設定データ等のも一時格納メモリとして使用される。
【0030】
529の画像データ入力部は、印刷装置400に具備するカードスロットに挿入されたメモリカードから画像データを読み出す。また、他に印刷装置400の入出力I/FであるUSB Aコネクタ端子(不図示)とデジタルカメラのUSB mini-Bコネクタ端子(不図示)をケーブルで接続して画像データを取得することが可能である。この場合は印刷装置側がホスト機器として機能し、デジタルカメラ側から印刷操作を行うことが可能である。次に、印刷装置の入出力I/FであるUSB Bコネクタ端子とPC(Personal Computer)とを接続することで、印刷装置側がデバイス機器として機能し、PC側から印刷操作を行うことも可能である。
【0031】
527はサーマルヘッドであり、主走査方向に配置された発熱体(不図示)が発熱することにより、インクリボンに塗布されたインクを昇華させ、ロール紙上に付着させる。526はサーマルヘッド527に内蔵される発熱体を駆動させるヘッド駆動回路である。メインコントローラ501に接続されたドライバコントローラ525が、RAM503にビットマップ形式で記録された画像データを用いてヘッド駆動回路526を制御することで印刷が行われる。ビットマップ形式データの最大階調値は225である。また、オーバーコート層印刷時の画像データの階調値は170である。
【0032】
511は駆動モータ512、513を駆動するためのロール紙搬送モータドライバである。駆動モータ512、513は回転機構を介して、後述するカール補正ローラやグリップローラ、排紙ローラ、排紙蹴りだしローラ等に結合されており、これらのローラを駆動させることによりロール紙を搬送する。
【0033】
514は給紙モータドライバであり、給紙モータ515の回転を制御する。カートリッジ410が装着された状態においては、給紙モータ515は、ロール紙ユニットの回転軸となっているローラ412と回転機構を介して結合され、給紙モータドライバ514によりローラ412の回転駆動を制御する。
【0034】
516はインクリボン巻上げモータドライバであり、インクリボン巻上げモータ517の回転を制御する。カートリッジ410が装着された状態では、インクリボンの巻き取りローラ414とインクリボン巻上げモータ517とが回転機構を介して結合されるので、インクリボン巻上げモータドライバ516によりインクリボンの巻き取り、巻き上げが制御される。
【0035】
518はヘッドアップダウンモータードライバである。このドライバ518がサーマルヘッド527の昇降を行うヘッドアップダウンモータ519の回転を制御することで、サーマルヘッド527を印刷位置と退避位置との間で動作させる。
【0036】
520はカッターモータドライバである。カッターモータドライバ520が、カッターユニットを構成するカッター刃及びカッター受け刃を駆動するカッターモータ521を制御することで、ロール紙の切断を行う。
【0037】
504はリボン残量検出センサである。リボン巻き取り時の回転速度を検出し、その回転速度からローラに巻き回されたロール紙の残量を検知する。ロール紙の残量がなくなった場合には、表示部402にロール紙の残量が少ない旨のメッセージが表示される。
【0038】
505はロール紙検出センサである。カートリッジ410内に配されたロール紙が押し出され、先端部がカートリッジ出口から排出されたことを検出するセンサである。ロール紙検出センサ505は、カートリッジ出口近傍に、ロール紙の幅方向に対向して設けられており、カートリッジ出口から排出されたロール紙の幅方向右端部と左端部とをそれぞれ検出する。ロール紙検出センサ505によるロール紙両端部の検出タイミングの差により、印刷装置400では、カートリッジ出口より押し出されたロール紙の幅方向の傾きを認識することができる。
【0039】
506はロール紙頭出しセンサであり、サーマルヘッド527に対向して設けられるプラテンローラの後方に配され、印刷開始時に、カートリッジ410から引き出されたロール紙の先端部がプラテンローラの後方を通過したことを検出する。
【0040】
507はリボン頭出しセンサであり、インクリボンの各色の先端部に塗布された識別帯を検出する。インクリボン巻上げモータ517によるインクリボンの巻き上げ動作は、リボン頭出しセンサ507の検出結果に基づいて制御される。
【0041】
508は周囲環境検出センサであり、印刷装置400が載置された環境の温度及び湿度を検出する。ヘッド駆動回路526によりサーマルヘッド527に投入される投入エネルギーは、周囲環境検出センサ508で取得した温度検出結果に基づいて制御される。また、カール量予測では、周囲環境検出センサ508で取得した温度、湿度検出結果がパラメータとして使用される。
【0042】
509はヘッド圧検出センサであり、印刷時にサーマルヘッド527が印刷位置まで下降してプラテンローラとの間でインクリボンとロール紙とを押圧するときのヘッド圧を検出する。510は印刷範囲識別センサであり、カッターユニット近傍に配され、印刷された範囲を識別する。
【0043】
522は表示制御部であり、印刷する画像データや印刷に必要な設定を行うためのGUI画面を表示部402に表示するための制御を司る。530はIC読み書き部であり、カートリッジ410に配されたカートリッジ情報チップ(IC)からの情報の読み取りと、該ICへの情報の書き込みを行う。ICより読み出される情報としては、例えば、ロール紙のサイズ(幅、厚さ、長さ)、ロール紙の特性、ローラ径、製造年月日の情報、インクリボンの特性情報、インクリボンの巻き取りローラの径、インクリボンの供給ローラの径等がある。また、ICに書込まれる情報としては、例えば、印刷された枚数情報、印刷ミスした枚数情報、印刷ミスの要因情報等がある。
【0044】
図6は、カートリッジ410が印刷装置400に装着された状態を、印刷装置400の側面から見た場合の断面図である。図6を用いて、印刷装置400が印刷処理を行う際に動作する各部の構成について簡単に説明する。なお、上述の説明においてすでに説明した構成については、同じ参照番号を付すこととし、ここでは説明は省略する。
【0045】
図6において、601はカートリッジ410に内包されたロール紙613-2が印刷時に印刷位置611まで引き出される場合に通過する搬送路である。602はカートリッジ出口である。ローラ613-1に巻かれていたロール紙613-2は、分離部材614により引き剥がされることで、カートリッジ出口602よりカートリッジ410の外部に引き出され、搬送路601を通過する。
【0046】
603-1、603-2はカール補正ローラ及びカール補正従動ローラであり、ロール紙613-2のカールを矯正する。604-1、604-2はピンチローラ及びグリップローラであり、ロール紙613-2を介して対向する位置に配され、ロール紙613-2の表裏面を挟持する。当該1対のローラが正転することで(ピンチローラ604-1が紙面に向かって左回りに回転することで)、カートリッジ410から引き出されたロール紙613-2が、印刷位置611に向かって搬送する。
【0047】
なお、カートリッジ410が印刷装置400に装着された状態では、印刷位置611に対応する位置においてインクリボン615を覆っていたカートリッジ410のハウジングは取り除かれている。そして、インクリボン615がカートリッジ410の外部に露出した状態となっている。
【0048】
605はプラテンローラであり、印刷位置611において、サーマルヘッド527との間で、インクリボン615とロール紙613-2とを重畳させた状態を維持する。612はヘッド位置規定部材であり、昇降を行うヘッドアップダウンモータ519の制御機構に連動する。
【0049】
606は排紙ローラであり、ロール紙613-2を排紙方向に搬送する。607は排紙蹴りだしローラであり、凹凸部を備え、印刷後に切断されたロール紙613-2を後述の印刷用紙スタックに蹴りだす。排紙ローラ606と排紙蹴りだしローラ607とは、ロール紙613-2を介して対向する位置に配され、ロール紙613-2の表裏面を挟持する。
【0050】
608はカッターモータ521の動作をカッターユニットに伝達するギア列である。609、610はカッターユニットを構成するカッター刃とカッター受け刃であり、ロール紙613-2の搬送路を挟んで、対向した位置に配置されている。カッター刃609とカッター受け刃610は、ギア列608により駆動され、はさみ状に上下の刃がすりあわされることにより、ロール紙613-2を切断する。
【0051】
なお、図6では、ロール紙613-2の先端部が分離部材614により引き剥がされ、搬送路601にとどまった状態となっている。しかし、印刷装置400では、カートリッジ410を印刷装置400に装着した直後に、当該状態が実現されるわけではない。また、カッターユニットにより切り出された印刷用紙は、排紙ローラ606と排紙蹴りだしローラ607により排紙口から送り出される。
【0052】
なお、図5のブロック図には図示されていないが、印刷装置は、動作に必要な電力を供給するための電源回路及び各種IC、電気素子を実装した回路基板などを装置内に格納している。
【0053】
上述したように、本発明の印刷装置は、画像データを入力する画像データ入力し、入力された画像データを印刷媒体に印刷し、画像データが印刷された印刷媒体の印刷面に保護層を印刷する。
【実施例1】
【0054】
以下、本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の印刷設定及び印刷処理動作について、フローを用いて詳しい説明を行う。図8は、第1の実施形態に係る印刷装置の印刷処理手順を示すフローチャートである。図9〜11は、図8のフローチャートで示される処理を実施する際の表示部402のGUIの表示例である。図8のフローチャートおよび図9乃至11のGUIの表示は、ROM502に格納されているコンピュータプログラムにしたがってメインコントローラ501が動作することで実現できる。
【0055】
表示部402に表示されているGUIであるメニュー画面(不図示)の印刷設定を、十字キー705およびSETボタン712の操作により選択すると、画像データ入力部529により画像データが読み出される。読み出された画像データは、サムネイルとして表示部402に一覧表示される。次に、操作部材の十字キー705の操作により画像データの一覧表示から印刷対象となる画像データ901を選択する(ステップS801)。続いておたのしみボタン702の押下により、図10のおたのしみ印刷設定画面に遷移する(ステップS802)。次に十字キー705で『オーバーコート抜き文字印刷1001』を選択し、SETボタン712を押下する(ステップS803)。
【0056】
次に、ユーザが所望の文字列領域902を入力するため図11に示される文字入力画面(情報入力)に遷移する。ソフトウェアキーボード画面1101において十字キー705を押下して入力する文字を選択し(手動選択)、SETボタン712の押下により、文字入力フィールド1102に入力した文字列が表示される(ステップS804)。文字列の入力完了後に図9に示される配置選択画面で、十字キー705の押下により画像データ901内に配置する文字列領域902の位置を決定する(ステップS805)。印刷設定完了後に、印刷/中止ボタン706を押下する(手動設定)(ステップS806)。
【0057】
給紙モータ515が回転駆動することによりロール紙313-2が引き出され、ピンチローラ604-1及びグリップローラ604-2へと搬送される(ステップS807)。以降の印刷用紙搬送はステッピング・モータである駆動モータ512、513により駆動制御されるグリップローラ604-2により行われる(ステップS808)。駆動モータ512、513はロール紙搬送モータドライバ511から送り出されるパルス信号のStep数だけ回転駆動し、印刷用紙の先端位置検出後は、オープン・ループで位置制御を行う。
【0058】
グリップローラ604-2により送られてきた印刷用紙先端をロール紙検出センサ505により検出する(ステップS809)。ロール紙613-2の画像の書き出し位置がサーマルヘッド527のところに来るまで定められたStep数分だけ印刷用紙搬送を実行する(ステップS810)。次にリボン巻き取りローラ回転軸414の回転を制御して、Y色の頭出しを行う。インクリボン頭出し用マーカー検出センサで、Y色の頭出しマーカーを検出する(ステップS811)。Y色インクリボンの頭出し終了後に、印刷用紙搬送及びインクリボン頭出し中は待避していていたサーマルヘッド527を、ロール紙613-2とインクリボン615を挟み込む形でプラテンローラ605側へと圧着する。
【0059】
画像データ入力部529から画像データを読出し、メインコントローラ201の処理によりRAM203にY色インク印刷データを生成する。生成された印刷データを、サーマルヘッド
527を制御するヘッド駆動回路526へと転送し、ヘッド制御信号の通電によりサーマルヘッド527に配置された発熱体を発熱させる。インクリボンが熱されることにより、接しているロール紙613-2へと染料が昇華・定着し、1ライン毎に印刷処理が実行される。サーマルヘッド527の通電処理と同期してグリップローラ604-2が印刷用紙送りを行い、画像を形成する(ステップS812)。本ステップの処理で印刷用紙の染料受容層に、イエロー(Y)色の昇華性染料層が形成される。
【0060】
Y色の印刷処理終了したら、サーマルヘッド527を待避させる。そして、グリップローラ604-2を印刷処理時とは逆方向に回転駆動させ、ロール紙613-2の画像第1面の書き出し位置がサーマルヘッド527の発熱体の位置に来るまでロール紙613-2を戻す(ステップS813)。
【0061】
ステップS811と同様にリボン巻き取りローラ回転軸414の回転を制御して、M色のインクリボンのマーカーを検出、頭出しを行う(ステップS814)。Y色で形成された画像と重なるようにステップS812と同様にM色のインクリボンで印刷処理を実施する(ステップS815)。印刷処理後、ステップS813と同様に、画像の書き出し位置までロール紙613-2を戻す(ステップS816)。本ステップでマゼンタ(M)色の昇華性染料層が形成される。C色の印刷処理ステップS817〜S819までは、M色の印刷処理ステップS814〜S816と同様の処理を行い、ロール紙613-2の染料受容層に画像を形成する。本ステップでシアン(C)色の昇華性染料層が形成される。
【0062】
続いてインクリボンのオーバーコート層の頭出しを行う(ステップS820)。メインコントローラ201の処理により文字列領域902部分は階調値が0、文字列領域902部分以外は階調値が170となるオーバーコート層印刷用のデータをRAM203に生成する。生成された印刷データを、サーマルヘッド527を制御するヘッド駆動回路526へと転送し、ヘッド制御信号の通電によりサーマルヘッド527に配置された発熱体が発熱する。サーマルヘッド527の発熱体の発熱により樹脂製材料クリア層(オーバーコート層)が印刷用紙表面に透明な保護層を形成する。(ステップS821)。
【0063】
その後、サーマルヘッド527を待避させ、グリップローラ604-2を印刷処理時と同方向に回転駆動させる。これにより、ロール紙613-2のカット位置が印刷用紙カット機構であるカッター刃609の位置に来るまでロール紙613-2を送り、カッター刃609を駆動して印刷用紙の切断を行う(ステップS822)。
【0064】
切断された印刷用紙を排紙ローラ606と排紙蹴り出しローラ607で挟み込み駆動モータ512,513の駆動力により、排紙方向へと回転させることで、印刷済みの印刷用紙を印刷装置外部へと排紙する(ステップS823)。以上で画像データ1枚分の印刷処理が完了する。
【0065】
上記印刷処理により、文字列領域902以外の部分は染料印刷オーバーコート層印刷領域101となる。文字列領域902の部分は、図12に示すように、染料印刷オーバーコート層印刷領域101と染料印刷オーバーコート層非印刷領域102が形成される。染料印刷オーバーコート層印刷領域101は、図3に示されるようにイエロー(Y)色の昇華性染料302、マゼンタ(M)色の昇華性染料303、シアン(C)色の昇華性染料304の上にオーバーコート層305が形成されている。したがって染料がオーバーコート層305に保護されており、印刷用紙の印刷面が擦れた場合でも染料が染料受容層301から除去されることはない。
【0066】
一方、染料印刷オーバーコート層非印刷領域102は、図13に示されるようにイエロー(Y)色の昇華性染料302、マゼンタ(M)色の昇華性染料303、シアン(C)色の昇華性染料304の上に保護層がない状態である。したがって、印刷用紙の印刷面が字消しや指等で擦れた場合、上記染料層が染料受容層301から除去される。例えばユーザが字消し等で、染料印刷オーバーコート層非印刷領域102の一部を擦ると、染料が染料受容層301から除去されて図1に示されるように染料除去オーバーコート層非印刷領域103が形成される。染料除去オーバーコート層非印刷領域103は印刷用紙の下地の色(白色等)が見えるため、文字列を認識することが可能となる。ただし、染料が染料受容層301から除去されていない場合は、染料が画像を形成しているため、染料印刷オーバーコート層印刷領域101と染料印刷オーバーコート層非印刷領域102の境界面は視認し難く、文字列領域902部分は判別が困難である。
【0067】
また、図15に示すように、文字列領域902の画像を格子(ブロック)模様やグラデーション模様とする処理を追加してもよい。これにより、染料印刷オーバーコート層印刷領域101と染料印刷オーバーコート層非印刷領域102の境界をより判別し難く、隠蔽性を高めることが可能となる。
【0068】
上記実施例では文字列領域902の文字部分を染料印刷オーバーコート層非印刷領域102として作成したが、図14に示すように、星型等の図形や記号を染料印刷オーバーコート層非印刷領域102として作成することも可能である。図形や記号は、ユーザが表示部402に表示される選択候補から選択してもユーザが任意の形状を作成して設定しても良い。
【0069】
以上、本件発明によれば、ユーザの任意の位置に文字情報や図形情報等を、印刷画像上にオーバーコート層を印刷しない領域として印刷することにより、文字情報や図形情報等を印刷画像内に隠蔽することを可能にできる。また、隠蔽された情報は、印刷用紙の印刷面をこすることによって容易に可視化することができる。
【実施例2】
【0070】
以下、本発明の第2の実施形態に係る印刷装置の印刷設定及び印刷処理動作について、フローを用いて詳しい説明を行う。図16は、第2の実施形態に係る印刷装置の印刷処理手順を示すフローチャートである。図17は、図16のフローチャートで示される処理を実施する際の表示部402のGUIの表示例である。図16のフローチャートおよび図17のGUIの表示は、第1の実施形態と同様に、ROM502に格納されているコンピュータプログラムにしたがってメインコントローラ501が動作することで実現できる。
【0071】
第1の実施形態と同様にメニュー画面で印刷設定を選択したら、画像データ入力部529により入力された画像データから印刷対象の画像データを選択する(S1601)。さらに、第1の実施形態と同様の方法で文字列/図形を入力、設定する(S1602)。次にメインコントローラ501で、印刷対象となる画像データの濃度分布を解析(S1603)する。文字列/図形のサイズを元に、染料除去オーバーコート層非印刷領域103が識別可能な所定の濃度値位置以上の領域を探し、そこに文字列/図形を自動配置する。そして、図17(a)に示すGUIを表示部402に表示する(S1604)。文字列1702は画像データ1701内で所定の濃度値以上の領域に自動配置されている。なお、自動配置の際には、画像データ内1701で顔検出を行い(被写体情報の検出)、所定濃度値以上の領域であっても人物部分を避けるように配置しても良い。また、おたのしみ印刷設定画面で文字列1702の背景部(背景画)として吹き出し図形1703等が設定されている場合であって、所定濃度値以上の色の吹き出しが画像データに付加されている場合は吹き出しの領域に、自動配置するようにしてもよい。
【0072】
また、例えば図10のおたのしみ印刷設定画面で文字列1702の背景部として吹き出し図形1703等が設定されている場合は、吹き出し図形1703の自動配色処理を行ってもよい。すなわち、吹き出し図形1703の配色を染料除去オーバーコート層非印刷領域103が識別可能な所定の濃度値以上となる配色を自動的に選択し、図17(b)に示すGUIを表示部402に表示する(S1605)。その後、ユーザは文字列/図形の自動配置及び文字列/図形背景部の自動配色結果を確認し、変更の必要がない場合には十字キー705の操作によりOKボタン1704を選択し、SETボタン712を押下する(S1606のYES)。微調整が必要な場合には、十字キー705の操作により微調整ボタン1705を選択し、SETボタンを押下する(S1606のNO)。ステップS1607では文字列/図形の配置、及び背景部の配色をユーザが表示部402のGUI画面を確認しながら操作部材403を使用して調整する(手動調整)。また、自動配色処理を行うのではなく、吹き出しの色が所定の濃度値以上となる色となるように、選択可能な色を制限してもよい。
【0073】
設定後、ユーザによる文字列/図形の配置、及び背景部の配色が、染料除去オーバーコート層非印刷領域103の識別が困難な場合はユーザに通知を出す仕様にしても良い。設定が完了後、印刷/中止ボタン706を押下して印刷処理(S1610)へと遷移する。
【0074】
ステップS1610の印刷処理では、図8のフローチャートで示されるステップS803〜S819の処理が実行される。ただし、文字列/図形の背景部は画像データとしてインクリボン各色で印刷処理される。
【0075】
以上説明したように、印刷装置側で文字情報や図形情報等の配置、配色の設定が自動で行われる。これにより、より簡単な操作で、オーバーコート層を印刷しない領域として文字情報や図形情報等を隠蔽することが可能になる。
【実施例3】
【0076】
以下、本発明の第3の実施形態に係る印刷装置の印刷設定及び印刷処理動作について、図18を参照して説明する。図18は、第3の実施形態に係る印刷用紙の印刷面の一部を示す図である。本実施形態では印刷用紙の余白等に、入力された文字情報などに基づいてオーバーコート層非印刷領域1802を形成する。ただし、本実施形態では画像データの印刷とともに数字やアルファベットなどの入力情報を余白等に印刷したうえで染料印刷オーバーコート層非印刷領域1803を形成する。なお、図中、1801は染料印刷オーバーコート層印刷領域を示す。
【0077】
入力情報は、ユーザによるメモや印刷用紙の残枚数等を示す情報であっても良い。さらに、タグ情報等を印刷物と一緒に印刷して管理に使用しても良い。これらの情報の入力は、第1および2実施形態と同様の入力方法によるか、あるいは適宜設定画面による自動設定としてもよい。また、染料印刷オーバーコート層非印刷領域1803の位置も、第1または第2の実施形態のように、手動または自動での設定とすることができる。印刷した情報が不必要になったときは、染料オーバーコート層非印刷領域1803を擦ることで、数字やアルファベットを構成する染料を除去することができる。
【0078】
図18ではデジタル文字の形状でオーバーコート層非印刷領域1802を形成しているが、領域1802の形状は、文字列に合わせた帯状や、文字に併せた四角形状等でも良い。また、染料印刷領域を除去することでQRコード(二次元バーコード)や文字列/図形等が残るような領域形状を有するようオーバーコート層非印刷領域1802を形成しても良い。
以上説明したように、本実施形態では、入力情報の位置を印刷媒体の画像データ印刷領域以外の領域に設定したときは、入力された情報を設定された位置に印刷するよう構成されている。この構成により、必要に応じて印刷用紙に文字情報や図形情報などを印刷し、それが不必要となったときに印刷面をこするだけで容易に消去することが可能となる。
【実施例4】
【0079】
以下、本発明の第4の実施形態に係る印刷装置の印刷設定及び印刷処理動作について、図19を参照して説明する。図19(a)、(b)は、第4の実施形態に係る印刷装置により印刷された印刷用紙の断面を示す概略図である。本実施形態では、オーバーコート層305のエッジ部の形状を、オーバーコート層の印刷データの補正処理で達成する。すなわち、本件発明では、保護層を印刷しない領域と保護層を印刷する領域との境界部分の保護層の階調値変化を補正する。
【0080】
図19(a)は、オーバーコート層305を印刷しない領域とオーバ−コート層305を印刷する領域との境界でのオーバーコード層305のエッジ部1901の諧調値が急峻に変化する(階調値0から階調値170への変化で、最大値変化率)状態を示す。本実施形態によれば、このようなオーバーコード層のエッジ部を形成するように、印刷データにエッジ強調等の補正処理を行う。すなわち、エッジ補正処理では、保護層を印刷しない領域と該保護層を印刷した領域との境界部分の保護層の階調値変化が最大となるようにエッジ補正を行う。
【0081】
本実施形態により、染料印刷領域を除去した際に文字列/図形の輪郭が明確となる効果がある。
【0082】
図19(b)は、オーバーコート層305を印刷しない領域とオーバ−コート層305を印刷する領域との境界でのエッジ部1902の階調値が、0から170または170から0まで段階的(最大値より小さい変化率)に変化する状態を示す。本実施形態によれば、このようにオーバーコード層のエッジ部を形成するよう印刷データの補正処理を行うことができる。すなわち、エッジ補正処理は、保護層を印刷しない領域と保護層を印刷した領域との境界部分の保護層の階調値の変化が、最大よりも小さくなるようにエッジ補正を行う。
【0083】
本処理により、オーバーコート層を印刷しない領域とオーバーコート層を印刷する領域との境界が区別し難くなる効果がある。なお、諧調値の変化率は図19に限るものではなく、他の変化率に補正してもより。
【0084】
以上説明したように、本発明によれば、ユーザの任意の位置に文字情報や図形情報等を、オーバーコート層を印刷しない領域として設け、文字情報や図形情報等を隠蔽することが可能な印刷装置を提供することが出来る。また、不必要となった文字情報や図形情報を消去することが可能な印刷装置を提供することが出来る。
【0085】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。実施形態ではロール紙印刷装置について説明したが、カット紙やその他の印刷用紙を使用する印刷装置にも適用が可能である。その他、インクジェット方式の印刷装置等で、保護層が形成される印刷装置にも適用が可能である。尚、実施例では隠蔽部分が文字情報/図形情報の場合ついて記載したが、限定されるものではない。例えば文字情報や図形情報にはアイコンや符号化コード情報等、印刷装置で印刷可能な内容は全て含まれる。なお、メインコントローラ501の制御は1つのハードウェアが行ってもよいし、複数のハードウェアが処理を分担することで、装置全体の制御を行ってもよい。
【0086】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給するよう構成することによっても達成されることはいうまでもない。この場合、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)がコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することにより、上記機能が実現されることとなる。なお、この場合、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0087】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現される場合に限られない。例えば、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0088】
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。つまり、プログラムコードがメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって実現される場合も含まれる。
【符号の説明】
【0089】
101 染料印刷オーバーコート層印刷領域
102 染料印刷オーバーコート層非印刷領域
103 染料除去オーバーコート層非印刷領域
201 イエロー(Y)色の昇華性染料層
202 マゼンタ(M)色の昇華性染料層
203 シアン(C)色の昇華性染料層
204 オーバーコート(OP)層(熱溶融性の樹脂製材料クリア層)
205 インクリボンの頭出し位置検出用のマーカー
301 印刷用紙の染料受容層
302 イエロー(Y)色の昇華性染料
303 マゼンタ(M)色の昇華性染料
304 シアン(C)色の昇華性染料
305 オーバーコート(OP)層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に保護層とともに画像データを印刷する印刷装置において、
画像データを入力する画像データ入力手段、
該画像データ入力手段により入力された該画像データを印刷媒体に印刷し、該画像データが印刷された該印刷媒体の印刷面に保護層を印刷する印刷手段、
該画像データとは異なる情報を入力する情報入力手段、
前記印刷手段を制御して該画像データおよび保護層を該印刷媒体に印刷する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記印刷手段を制御して、前記情報入力手段により入力された情報に基づいて前記保護層を印刷させ、当該制御により前記印刷手段は、前記保護層を印刷しない部分が前記情報入力手段により入力された情報を表すことで当該情報の印刷を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、該情報入力手段は手動で該情報入力する手動入力手段を含み、該設定手段は手動で該情報入力の位置を設定する手動設定手段を含み、該情報入力手段により入力される情報は、文字情報、図形情報および符号化されたコード情報の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記情報入力手段により入力された情報を前記保護層の印刷しない部分により表す前記印刷媒体中の位置を設定する設定手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
請求項3記載の印刷装置において、該設定手段は、該入力された情報の位置を自動で設定する自動設定手段を含み、該自動設定手段は該画像データの濃度値に基づいて該情報の位置を設定することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4記載の印刷装置において、該自動設定手段は、該情報の位置の設定された背景画の配色を、該印刷媒体の配色との識別ができる濃度値以上に設定することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の印刷装置において、該自動設定手段は該画像データの濃度値に基づいて該情報の位置を設定するときに、画像データに含まれる被写体情報を検出し、該検出された被写体情報と該濃度値とに基づいて該情報の位置を設定することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
前記請求項4ないし6のいずれか一項記載の印刷装置において、該設定手段は、該自動設定手段による設定を手動で調整する手動調整手段を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項2ないし7のいずれか一項に記載の印刷装置において、さらに該画像データ入力手段で入力された該画像データおよび該情報入力手段で入力された該情報を、該設定手段による設定に従って表示する表示手段を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の印刷装置において、該制御手段は、該設定手段によって設定された位置に所定の背景画を印刷するよう該印刷手段を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の印刷装置において、該制御手段は、該保護層を印刷しない領域と該保護層を印刷する領域との境界部分の該保護層の階調値変化を補正するエッジ補正手段を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
前記請求項10記載の印刷装置において、該エッジ補正手段は、該保護層を印刷しない領域と該保護層を印刷した領域との境界部分の該保護層の階調値変化を最大とするエッジ補正を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
請求項10記載の印刷装置において、該エッジ補正手段は、該保護層を印刷しない領域と該保護層を印刷した領域との境界部分の該保護層の階調値の変化を、最大よりも小さくするエッジ補正を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項13】
請求項1記載の印刷装置において、該設定手段が該入力情報の位置を該印刷媒体の画像データ印刷領域以外の領域に設定したときは、該制御手段は該印刷手段を制御して、該情報入力手段で入力された該情報を該設定された位置に印刷することを特徴とする印刷装置。
【請求項14】
請求項1に記載の印刷装置において、前記画像データ入力手段により入力された画像データに吹き出しを付加して印刷する吹き出し設定手段を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項15】
請求項14に記載の印刷装置において、前記吹き出し設定手段は、吹き出しの色の設定を行い、前記設定手段により設定された吹き出しの色が所定の色の場合は、前記制御手段は前記印刷手段を制御して、前記吹き出しが印刷される位置に前記情報入力手段により入力された情報を印刷することを特徴とする印刷装置。
【請求項16】
請求項14に記載の印刷装置において、前記吹き出し設定手段は、吹き出しの色の設定を行い、前記吹き出し設定手段により設定された前記吹き出しが印刷される位置に前記情報入力手段により入力された情報を印刷する場合は、前記制御手段は、前記吹き出し設定手段により設定される吹き出しの色を制限することを特徴とする印刷装置。
【請求項17】
印刷媒体に保護層とともに画像データを印刷する印刷装置の制御方法において、
画像データを入力する画像データ入ステップ、
該画像データ入力ステップで入力された該画像データを印刷媒体に印刷し、該画像データが印刷された印刷媒体の印刷面に保護層を印刷する印刷ステップ、
該画像データとは異なる情報を入力する情報入力ステップ、
前記印刷ステップを制御して該画像データおよび保護層を該印刷媒体に印刷する制御ステップとを備え、
前記制御ステップは、前記印刷ステップを制御して、前記情報入力ステップで入力された情報に基づいて前記保護層を印刷させ、当該制御により前記印刷ステップは、前記保護層を印刷しない部分が前記情報入力ステップで入力された情報を表すことで当該情報の印刷を行うことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項18】
コンピュータを、
画像データを入力する画像データ入力手段、該画像データ入力手段により入力された該画像データを印刷媒体に印刷し、該画像データが印刷された印刷媒体の印刷面に保護層を印刷する印刷手段を有する印刷装置の制御方法において、
該画像データとは異なる情報を入力する情報入力手段、および
前記印刷手段を制御して該画像データおよび保護層を該印刷媒体に印刷する制御手段であり、前記印刷手段を制御して前記情報入力手段により入力された情報に基づいて前記保護層を印刷させ、前記保護層を印刷しない部分が前記情報入力手段により入力された情報を表すことで当該情報の印刷を行う制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項19】
請求項18に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−45711(P2012−45711A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186774(P2010−186774)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】