説明

印刷装置および印刷方法

【課題】良好なパターンを基板に印刷することができる印刷装置および印刷方法を提供する。
【解決手段】版胴10は、軸心10aを中心に回転するとともに、外周面14に印刷版12を装着する。供給部20は、版胴10に装着された印刷版12に塗布液を供給することによって、印刷版12上に塗布液のパターン13を形成する。載置台30は、リニアガイド32に沿って進退させられる。制御ユニット90の駆動制御部93aは、基板Wおよび印刷版12が近接または当接した状態で、版胴10の回転に同期させつつ載置台30を矢印AR1方向(進行方向)に沿って移動させる。これにより、印刷版12から基板Wにパターン13が転写される。乾燥部40は、塗布液のパターン13が転写された基板Wを、パターン13の転写が完了する完了位置P1付近で乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、有機エレクトロルミネッセンスまたは液晶表示用ガラス基板および樹脂基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、並びに太陽電池用パネル等(以下、単に「基板」と称する)に対して、塗布液のパターンを印刷する印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence:以下、単に、「有機EL」と称する)の表示装置を製造する場合において、有機EL層が形成される前段階の薄膜トランジスタアレイ付き基板を、真空乾燥させる技術が、知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、インクジェット法によりパターンを形成した後、形成されたパターンを減圧乾燥する技術も、従来より知られている(例えば、特許文献2)。さらに、マルチノズルタイプのヘッドを形成したインクジェットプリンターも、従来より知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−181770号公報
【特許文献2】特開2009−094446号公報
【特許文献3】特開平06−182980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献2のパターン形成方法では、ヘッド本体を基板に対して相対的に2次元的に移動させることによって、基板上に所望のパターンを形成する。これにより、ヘッド本体の相対的移動に起因した気流が、基板付近に発生する。その結果、基板上に吐出されたインクが、発生した気流により順次乾燥され、形成されたパターンに気流に起因した乾燥不良が生ずる。
【0006】
これに対して、特許文献3の技術は、減圧状態で被印刷物に印刷を行うことによって、気流の発生を抑制している。したがって、特許文献3の技術では密閉印刷室を減圧することが必要となり、その結果、印刷時間が増大するという問題が生ずる。
【0007】
そこで、本発明では、良好なパターンを基板に印刷することができる印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、軸心を中心に回転するとともに、外周面に印刷版を装着する版胴と、前記版胴に装着された前記印刷版に塗布液を供給することによって、前記印刷版に前記塗布液のパターンを形成する供給部と、基板を載置する載置台と、前記基板を乾燥させる乾燥部と、前記版胴に装着された前記印刷版に対して前記載置台を相対的に移動させる駆動制御部とを備え、前記駆動制御部は、前記載置台に載置された前記基板と、前記版胴に装着された前記印刷版と、が近接または当接した状態で、前記版胴の回転に同期させつつ前記載置台を進行方向に沿って相対的に移動させることによって、前記パターンの形状を維持しつつ、前記印刷版から前記基板に前記パターンを転写させ、前記乾燥部は、前記パターンの転写が完了する完了位置付近に設けられており、内側に前記基板を収容する収容部と、前記収容部の内側および前記載置台に囲まれる密閉空間を減圧する減圧部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の印刷装置において、前記乾燥部は、前記密閉空間に収容された前記基板を加熱する加熱部、をさらに有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、少なくとも前記版胴、前記供給部、前記載置台、および前記乾燥部が配置された処理室内の雰囲気を制御する雰囲気制御部、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の印刷装置において、前記乾燥部は、前記完了位置に応じて、前記載置台の進行方向における前記収容部の位置を調整する位置調整部、をさらに有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の印刷装置において、前記乾燥部は、前記載置台に対して前記収容部を昇降させる昇降部、をさらに有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置において、前記供給部は、前記軸心の延伸方向に沿った前記塗布液を吐出するスリットノズル、を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の印刷装置において、前記収容部は、前記載置台側に設けられた開口の周囲を囲繞するシール部、をさらに有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、(a)版胴に装着された印刷版に塗布液を供給することによって、前記印刷版に前記塗布液のパターンを形成する工程と、(b)載置台に載置された前記基板と前記印刷版とが近接または当接した状態で、前記版胴の回転に同期させつつ前記載置台を相対的に移動させることによって、前記パターンの形状を維持しつつ、前記印刷版から前記基板に前記パターンを転写させる工程と、(c)前記パターンの転写が完了する完了位置付近において、前記パターンが転写された前記基板を減圧乾燥する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし請求項8に記載の発明により基板に印刷版のパターンが転写される場合、載置台に載置された基板と、版胴に装着された印刷版とは、近接または当接する状態とされる。また、パターンの形状が維持されつつ、パターンが基板に転写されるため、版胴の回転速度、および載置台の移動速度は、低速度に設定されている。
【0017】
これにより、転写時において、基板移動に起因した気流が基板上のパターン付近に生ずることを抑制でき、この気流に起因したパターンの乾燥不良を抑制できる。また、基板に対してパターンの転写が完了すると、基板は、完了位置付近で速やかに減圧乾燥される。そのため、基板上に形成される塗布液のパターンの乾燥は均一なものとされる。
【0018】
特に、請求項2に記載の発明によれば、加熱部からの熱によって、密閉空間内の基板をさらに迅速に乾燥させることができる。
【0019】
特に、請求項3に記載の発明によれば、処理室内の雰囲気を制御することによって、転写時におけるパターンの乾燥を、さらに抑制することができる。そのため、塗布液のパターンを、基板上にさらに良好に形成することができる。
【0020】
特に、請求項4に記載の発明によれば、例えば、基板のサイズ、および印刷版のサイズに応じて、収容部の位置を調整することができる。すなわち、転写の完了位置と乾燥位置と、を一致させることができる。そのため、パターンの転写が完了した基板を、さらに迅速に乾燥することができる。
【0021】
特に、請求項6に記載の発明において、供給部はスリットノズルを有しており、版胴に対して塗布液をさらに均一に供給することができる。そのため、基板上に形成される塗布液のパターンを、さらに均一なものとすることができる。
【0022】
特に、請求項7に記載の発明によれば、シール部により載置台と収容部との間を良好に塞ぐことができ、密閉空間を良好に密封できる。これにより、密閉空間内の減圧速度をさらに向上させることができる。そのため、減圧乾燥に要する時間をさらに短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における印刷装置の全体構成の一例を示す正面斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における印刷装置の全体構成の一例を示す正面概略図である。
【図3】乾燥部付近の構成の一例を示す正面断面図である。
【図4】収容部を固定する固定機構の一例を示す正面断面図である。
【図5】パターンの転写手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】基板に転写されるパターンの一例を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
<1.印刷装置の全体構成>
図1および図2は、それぞれ本発明の実施の形態における印刷装置1の全体構成の一例を示す正面斜視図および正面概略図である。ここで、印刷装置1は、印刷版12に形成された塗布液のパターン13(図2参照)を、基板Wに転写する。図1および図2に示すように、印刷装置1は、主として、版胴10と、供給部20と、載置台30と、乾燥部40と、制御ユニット90と、を備えている。
【0026】
なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にすべく必要に応じて適宜、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が付されている。
【0027】
版胴10は、円筒状のローラであり、軸心10aを中心に回転する。版胴10は、軸心10aに連動接続されたモータ(図示省略)によって、矢印R1方向(図2における時計回りの方向)および、矢印R1の逆方向(図2における反時計回りの方向)に回転可能とされている。なお、本実施の形態においてパターンの転写が実行される場合、版胴10は、矢印R1方向に回転する。
【0028】
印刷版12は、例えばポリエステル系樹脂により形成された凸版である。図2に示すように、印刷版12は、版胴10の外周面14に装着される。ここで、凸版は、印刷される画線部以外の部分をくぼませることによって、画線部(凸部)を相対的に突起させた印刷版である。そして、画線部につけられた塗布液が基板Wに転写されることによって、基板W上にパターンが形成される。
【0029】
供給部20は、版胴10に装着された印刷版12に塗布液24を供給することによって、印刷版12上に塗布液のパターン13を形成する。図2に示すように、供給部20は、主として、複数(本実施の形態では3つ)の発光材料供給源21(21a〜21c)と、複数(本実施の形態では3つ)のスリットノズル22(22a〜22c)と、インキングローラ23と、を有している。
【0030】
複数の発光材料供給源21(21a〜21c)は、それぞれ有機ELの高分子発光材料(赤色、緑色、および青色発光材料)を、塗布液として供給する。図2に示すように、各発光材料供給源21(21a〜21c)は、設置テーブル25に固定されている。
【0031】
また、赤色発光材料供給源21aは第1スリットノズル22aと、緑色発光材料供給源21bは第2スリットノズル22bと、青色発光材料供給源21cは第3スリットノズル22cと、それぞれ連通接続されている。
【0032】
したがって、赤色発光材料は第1スリットノズル22aから、緑色発光材料は第2スリットノズル22bから、青色発光材料は第3スリットノズル22cから、それぞれ吐出される。そして、各スリットノズル22(22a〜22c)から吐出された発光材料は、インキングローラ23に供給される。
【0033】
取付台26は、設置テーブル25の下方に設けられた移動体である。各スリットノズル22(22a〜22c)は、吐出口(図示省略)がインキングローラ23と対向するように、取付台26に固定されている。
【0034】
リニアガイド28は、図2に示すように、設置テーブル25に取り付けられた案内部である。取付台26および各スリットノズル22は、リニアガイド28によって、矢印AR1方向(−X軸方向)および矢印AR1と逆方向に案内される。したがって、不図示のリニアモータから取付台26に駆動力が伝達されると、取付台26は、リニアガイド28に沿って進退(水平移動)させられる。そのため、取付台26の停止位置に応じた塗布液(本実施の形態では、赤色、緑色、または青色発光材料)が、インキングローラ23に供給される。
【0035】
インキングローラ23は、第1ないし第3スリットノズル22a〜22cのいずれかから吐出された発光材料を、回転接触により隣接する版胴10に(より具体的には、版胴10に装着された印刷版12に)転写させる。
【0036】
インキングローラ23は、版胴10と同様に、円筒状のローラであり、軸心23aを中心に回転する。図1および図2に示すように、インキングローラ23は、パターン転写時における載置台30の進行方向(矢印AR1方向)から見て、版胴10の上流側に設けられている。
【0037】
また、インキングローラ23は、軸心23aに連動接続されたモータ(図示省略)によって、矢印R2方向(図2における反時計回りの方向)および、矢印R2の逆方向(図2における時計回りの方向)に回転可能とされている。なお、本実施の形態においてパターンの転写が実行される場合、インキングローラ23は、矢印R2方向に回転する。
【0038】
ここで、版胴10の軸心10aと、インキングローラ23の軸心23aと、は、互いに平行となるように配置されている。また、各スリットノズル22(22a〜22c)の吐出口(図示省略)は、版胴10の軸心10aの延伸方向(矢印AR2方向:Y軸方向)、およびインキングローラ23の軸心23aの延伸方向(矢印AR2方向)に沿って形成されている。これにより、各スリットノズル22(22a〜22c)は、この延伸方向に沿った細長の塗布液を吐出する。
【0039】
このように、一方向に延びる塗布液24は、各スリットノズル22のいずれかから選択的に吐出されるとともに、インキングローラ23を介して版胴10に供給される。また、塗布液24は、版胴10に対して均一に供給される。そのため、基板W上に形成される塗布液のパターン13は、均一なものとなる。
【0040】
載置台30は、版胴10および供給部20の下方に設けられた移動体である。載置台30は、基板Wを載置しつつ、矢印AR1方向(進行方向)および矢印AR1と逆方向に案内される。
【0041】
複数(本実施の形態では2本)のリニアガイド32は、図1および図2に示すように、定盤35上に取り付けられた案内部である。したがって、不図示のリニアモータから載置台30に駆動力が伝達されると、載置台30は、複数のリニアガイド32に沿って進退(水平移動)させられる。
【0042】
乾燥部40は、塗布液のパターン13が転写された基板Wを、パターン13の転写が完了する完了位置P1付近で乾燥させる。なお、乾燥部40のハードウェア構成の詳細については、後述する。
【0043】
制御ユニット90は、印刷装置1の各構成要素の動作制御(例えば、載置台30の駆動制御や、処理室5内の雰囲気制御等)、およびデータ演算を実現する。図2に示すように、制御ユニット90は、主として、ROM91と、RAM92と、CPU93と、を有している。
【0044】
ROM(Read Only Memory)91は、いわゆる不揮発性の記憶部であり、例えば、プログラム91aが格納されている。なお、ROM91としては、読み書き自在の不揮発性メモリであるフラッシュメモリが使用されてもよい。RAM(Random Access Memory)92は、揮発性の記憶部であり、例えば、CPU93の演算で使用されるデータが格納される。
【0045】
CPU(Central Processing Unit)93は、例えばROM91のプログラム91aに従った動作制御やデータ処理を実行する。ここで、図2中のCPU93内のブロック(各ブロックには、それぞれ符号93a、93bが付与されている)に対応する演算機能は、CPU93によって実現される。
【0046】
駆動制御部93aは、少なくとも、載置台30を進退させるリニアモータ(図示省略)、および版胴10を回転させるモータ(図示省略)の動作を制御することによって、版胴10の印刷版12に対して載置台30を移動させる。
【0047】
例えば、駆動制御部93aは、載置台30に載置された基板Wと、版胴10に装着された印刷版12と、が近接または当接した状態で、版胴10の回転に同期させつつ載置台30を矢印AR1方向(進行方向)に沿って移動させる。これにより、印刷版12に形成されたパターン13の形状を維持しつつ、印刷版12から基板Wにパターン13を転写させることができる。
【0048】
雰囲気制御部93bは、少なくとも版胴10、供給部20、載置台30、および乾燥部40が配置された処理室5内の雰囲気(より具体的には、処理室5内における湿度および有機溶剤の濃度)を制御する。
【0049】
ここで、各発光材料供給源21(21a〜21c)から供給される塗布液には、有機溶剤としてトルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系の有機化合物が含まれている。したがって、処理室5内におけるこれら有機溶剤の濃度を管理することによって、転写時におけるパターン13の乾燥を、さらに抑制することができる。そのため、塗布液のパターン13を、基板W上にさらに良好に形成することができる。
【0050】
<2.乾燥部の構成>
図3は、乾燥部40付近の構成の一例を示す正面断面図である。また、図4は、シール部41dの構成の一例を示す正面断面図である。乾燥部40は、上述のように、パターン14が転写された基板Wを乾燥する。図1ないし図3に示すように、乾燥部40は、主として、収容部41と、昇降部42と、減圧部43と、を有している。
【0051】
収容部41は、図3に示すように中空状の蓋体であり、図2に示すようにパターン14の転写が完了する完了位置P1付近に設けられている。また、図3に示すように、収容部41の載置台30側には、開口41aが設けられている。したがって、収容部41が下降し、収容部41の下端と載置台30の上面とが接すると、収容部41の内側および載置台30に囲まれる空間として、密閉空間41bが形成される。
【0052】
加熱部41cは、図3に示すように、収容部41の内側上部付近に固定されたヒータである。これにより、密閉空間41bに収容された基板Wを加熱することができる。そのため、加熱部41cからの熱によって、密閉空間41b内の基板Wをさらに迅速に乾燥させることができる。
【0053】
シール部41dは、例えばゴムやフッ素系樹脂により形成された環状の密封用部品である。図4に示すように、シール部41dは、開口41aの周囲を囲繞するように、収容部41の下端に取り付けられている。
【0054】
これにより、載置台30と収容部41との間を良好に塞ぐことができ、密閉空間41bを良好に密封できる。そのため、減圧部43の動作時において、密閉空間41bの減圧速度をさらに向上させることができる。その結果、減圧乾燥に要する時間を、さらに短縮することができる。
【0055】
昇降部42は、載置台30に対して収容部41を昇降させる。図1に示すように、昇降部42は、主として、架橋構造体44と、一対の支持部45と、摺動体46と、シリンダ47と、を有している。
【0056】
架橋構造体44は、リニアガイド32を跨ぐように配置された構造物である。図1に示すように、架橋構造体44は、載置台30の進行方向(矢印AR1方向)と直交する方向(矢印AR2方向)に延びる複数(本実施の形態では2本)のブラケット44aと、これらブラケットの間に設けられた複数(本実施の形態では2本)の補強部材44bと、を有している。
【0057】
一対の支持部45のそれぞれは、図1に示すように、複数(本実施の形態では2本)の支柱部材を有しており、矢印AR2方向における架橋構造体44の両端を固定する。
【0058】
摺動体46は、載置台30の進行方向(矢印AR1方向)と直交する方向に延びるブラケットである。図1に示すように、収容部41は、摺動体46の下方に固定されている。また、摺動体46は、各支持部45に沿って、上下方向に摺動する。さらに、一対の支持部45のそれぞれに設けられたシリンダ47のロッドは、矢印AR2方向における摺動体46の両端に固定されている。
【0059】
これにより、各シリンダ47のロッドが往復運動すると、摺動体46、および摺動体46に固定された収容部41が、昇降運動する。そのため、収容部41は、待機位置(図2の2点鎖線位置)と、密閉位置(図2の実線位置)と、の間で昇降させられることになる。
【0060】
複数のリニアガイド48は、図1に示すように、定盤35上に取り付けられた案内部である。一対の支持部45のそれぞれは、対応するリニアガイド48によって、矢印AR1方向および矢印AR1と逆方向に案内される。したがって、不図示のリニアモータ、または印刷装置1の保守者から一対の支持部45に駆動力が付与されると、収容部41は、リニアガイド48に沿って進退させられる。
【0061】
複数(本実施の形態では2つ:ただし、図示の都合上、一方(−Y側)のみ記載)の固定機構49は、リニアガイド48に沿った所望の位置に一対の支持部45を固定する。各固定機構49が、対応するリニアガイド48の側方を押圧することによって、各固定機構49に対応する支持部45が、リニアガイド48に対して位置決めされる。
【0062】
このように、各支持部45は、対応するリニアガイド48に沿って進退でき、かつ、各支持部45は、対応する固定機構49により固定できる。これにより、パターン13転写の完了位置P1と、乾燥部40による乾燥位置と、が一致するように、矢印AR1方向(進行方向)における一対の支持部45を位置決めすることができる。そのため、パターン転写が完了した基板を、さらに迅速に乾燥することができる。
【0063】
すなわち、複数のリニアガイド48および複数の固定機構49は、矢印AR1方向における収容部41の位置を調整する「位置調整部」として機能する。
【0064】
減圧部43は、いわゆる減圧ポンプであり、共通排気管50に設けられている。図2に示すように、減圧部43は、フレキシブル配管51、排気管52、およびバルブ54を介して収容部41の内側の空間と連通接続されている。また、減圧部43は、共通排気管50を介して印刷装置1外の排気ドレイン55と連通接続されている。
【0065】
したがって、バルブ54が開放され、減圧部43が動作させられることによって、密閉空間41bの雰囲気が強制的に排気ドレイン55に排気され、密閉空間41bが減圧される。そのため、密閉空間41b内に収容された基板Wは、減圧乾燥される。すなわち、塗布液に含まれる有機溶剤が、パターン13から蒸発して、基板W上のパターン13が、固化される。
【0066】
ここで、フレキシブル配管51は、撓み変形可能な材料によって形成されており、収容部41の内側の空間と、ブラケット44aに埋設された排気管52(図1の破線)と、を連通接続させる。これにより、収容部41が昇降させられる場合であっても、収容部41の内側の空間と、排気管52と、の接続を良好に維持することができる。
【0067】
<3.パターンの転写手順>
図5は、パターン13の転写手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、図5を参照しつつ、パターン13の転写手順について説明する。なお、本転写手順に先立って、載置台30に基板Wが載置されている。また、本転写手順において、供給部20は、塗布液として複数種の発光材料(液)を供給する。
【0068】
本転写手順では、まず、制御ユニット90によって、供給部20から供給される複数の発光材料(赤色、緑色、および青色発光材料)のうち一の発光材料が選択される(S101)。
【0069】
次に、選択された発光材料が、供給部20から回転する版胴10の印刷版12に供給される(S102)。これにより、印刷版12の凸部(図示省略)に発光材料が付着し、印刷版12にパターン13が形成される。
【0070】
続いて、駆動制御部93aによって、載置台30に載置された基板Wと、版胴10に装着された印刷版12と、が近接または当接した状態で、載置台30が、版胴10の回転に同期しつつ矢印AR1方向に沿って移動させられる。これにより、印刷版12に形成されたパターン13は、その形状が維持されつつ、印刷版12から基板Wの表面に転写される(S103)。
【0071】
続いて、パターン13の転写が完了した後、載置台30は、収容部41の直下の乾燥位置に停止する。一方、パターン13の転写が完了した後、またはパターン13の転写が完了することに先立って、収容部41の下降動作が開始される。
【0072】
続いて、収容部41および載置台30により密閉空間41bが形成されると、密閉空間41bの雰囲気が排気される。このように、転写の完了位置P1付近となる乾燥位置(ただし、完了位置P1と乾燥位置が一致する場合には、完了位置P1)で基板W上のパターンが減圧乾燥される(S104)。
【0073】
減圧乾燥が完了すると、密閉空間41bが大気開放され、載置台30に対する収容部41の固定が解除される。続いて、収容部41が上昇することによって、載置台30が進退可能状態とされる。
【0074】
そして、すべての発光材料について転写および減圧乾燥が完了したと判断される場合、本転写手順が終了する(S105)。一方、いずれかの発光材料について転写および減圧乾燥が完了してないと判断される場合、ステップS101に戻る。そして、他の発光材料について転写および減圧乾燥が実行される(S101〜S104)。
【0075】
図6は、基板Wに転写されるパターンの一例を説明するための正面図である。図6には、有機EL素子の一例が示されている。図6に示すように、赤色発光材料により赤色発光層71が、緑色発光材料により緑色発光層72が、青色発光材料により青色発光層73が、それぞれ形成されている。また、隣接する赤色および緑色発光層71、72の間の距離D1、緑色および青色発光層72、73の間の距離D2、並びに青色および赤色発光層73、71の間の距離D3は、それぞれ一定とされている。
【0076】
さらに、隣接する赤色発光層71同士の距離D4は、距離D1、D2、D3を合計したものとなる。また同様に、隣接する緑色発光層72同士の距離、および隣接する青色発光層73同士の距離も、距離D1、D2、D3を合計したものとなる。
【0077】
そのため、載置台30の矢印AR2方向の位置を、距離D1、D2、D3に基づいて所望量シフトさせることによって、同一の印刷版12を用いて各発光材料のパターンを形成することができる。例えば、赤色発光材料の転写位置から矢印AR1方向に距離D1だけシフトさせた位置が、緑色発光材料の転写位置となる。
【0078】
このように、複数種の発光材料(液)のそれぞれにより形成されたパターンを、基板Wに転写しつつ減圧乾燥する場合、供給部20は、複数種の発光材料のうち選択された発光材料を印刷版12に供給する。また、駆動制御部93aは、各発光材料毎に転写位置を矢印AR2方向に所定量シフトさせる。さらに、乾燥部40は、各発光材料のパターンが形成される毎に、パターンを乾燥させる。
【0079】
これにより、形状が同一で発光材料が相違する複数のパターンを、各液毎に転写および減圧乾燥することができる。そのため、一連の処理によって、複数のパターンを基板W上に容易に形成することができる。
【0080】
<4.本実施の形態の印刷装置の利点>
以上のように、本実施の形態の印刷装置1によって基板Wに印刷版12のパターン13が転写される場合、載置台30に載置された基板Wと、版胴10に装着された印刷版12と、は、近接または当接する状態とされる。また、パターンの形状が維持されつつ、パターンが基板Wに転写されるため、版胴10の回転速度、および載置台30の移動速度は、低速度に設定されている。
【0081】
これにより、転写時において、基板Wの進行方向と、印刷版12の進行方向(基板Wとの接点付近における接線方向)と、は同一方向となり、基板移動に起因した気流が基板W上のパターン付近に生ずることを抑制できる。すなわち、この気流に起因したパターンの乾燥不良を抑制できる。また、基板Wに対してパターンの転写が完了すると、基板Wは、完了位置P1付近で速やかに減圧乾燥される。そのため、基板W上に均一の塗布液のパターンを形成することができる。
【0082】
なお、載置台30の移動速度および版胴10の回転速度等の転写条件は、塗布液(例えば、塗布液に含まれる溶質または溶媒)の種類に基づいて設定しても良い。
【0083】
<5.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0084】
(1)本実施の形態において、図6のステップS101〜S104を繰り返すことによって、複数のパターンを基板Wに形成するものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、1種類の発光材料のみを基板Wに供給する場合、ステップS101〜S104による一連の工程は、1回だけ実行される。
【0085】
(2)また、本実施の形態において、駆動制御部93aは、版胴10を回転させつつ載置台30を水平移動させることによって、版胴10の印刷版12に対して載置台30を移動させるものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、駆動制御部93aは、版胴10および載置台30のいずれか一方を駆動(回転または移動)させ、他方を停止させることによって、版胴10の印刷版12に対して載置台30を移動させても良い。すなわち、駆動制御部93aは、版胴10に装着された印刷版12に対して載置台30を相対的に移動させれば良い。
【0086】
(3)また、本実施の形態において、加熱部41cは、収容部41の内側上部付近に固定されるものとして説明したが、加熱部41cの配置はこれに限定されるものでない。例えば、加熱部41cは、収容部41の上部に埋設されても良い。
【0087】
(4)また、本実施の形態において、図2中のブロック93a、93bのそれぞれに対応する演算機能は、ROM91に格納されたプログラム91aに従い、CPU93によって実現されるものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、演算回路(ハードウェア)によって、これら演算機能が実現されてもよい。
【0088】
(5)さらに、本実施の形態において、供給部20は、塗布液として有機ELの発光材料を供給するものとして説明したが、供給される塗布液の種類は、これに限定されるものでない。例えば、塗布液として液晶用のカラーフィルタ材料が供給されても良い。
【符号の説明】
【0089】
1 印刷装置
5 処理室
10 版胴
10a 軸心
12 印刷版
13 パターン
14 外周面
22a〜22c 第1ないし第3スリットノズル
24 塗布液
30 載置台
32 リニアガイド
40 乾燥部
41 収容部
41a 開口
41b 密閉空間
41c 加熱部
41d シール部
42 昇降部
43 減圧部
48 リニアガイド
49 固定機構
90 制御ユニット
93 CPU
93a 駆動制御部
93b 雰囲気制御部
P1 完了位置
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 軸心を中心に回転するとともに、外周面に印刷版を装着する版胴と、
(b) 前記版胴に装着された前記印刷版に塗布液を供給することによって、前記印刷版に前記塗布液のパターンを形成する供給部と、
(c) 基板を載置する載置台と、
(d) 前記基板を乾燥させる乾燥部と、
(e) 前記版胴に装着された前記印刷版に対して前記載置台を相対的に移動させる駆動制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、前記載置台に載置された前記基板と、前記版胴に装着された前記印刷版と、が近接または当接した状態で、前記版胴の回転に同期させつつ前記載置台を進行方向に沿って相対的に移動させることによって、前記パターンの形状を維持しつつ、前記印刷版から前記基板に前記パターンを転写させ、
前記乾燥部は、
(d-1) 前記パターンの転写が完了する完了位置付近に設けられており、内側に前記基板を収容する収容部と、
(d-2) 前記収容部の内側および前記載置台に囲まれる密閉空間を減圧する減圧部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記乾燥部は、
(d-3) 前記密閉空間に収容された前記基板を加熱する加熱部、
をさらに有することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
少なくとも前記版胴、前記供給部、前記載置台、および前記乾燥部が配置された処理室内の雰囲気を制御する雰囲気制御部、
をさらに備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の印刷装置において、
前記乾燥部は、
(d-4) 前記完了位置に応じて、前記載置台の進行方向における前記収容部の位置を調整する位置調整部、
をさらに有することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の印刷装置において、
前記乾燥部は、
(d-5) 前記載置台に対して前記収容部を昇降させる昇降部、
をさらに有することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷装置において、
前記供給部は、
(b-1) 前記軸心の延伸方向に沿った前記塗布液を吐出するスリットノズル、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の印刷装置において、
前記収容部は、
前記載置台側に設けられた開口の周囲を囲繞するシール部、
をさらに有することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
(a) 版胴に装着された印刷版に塗布液を供給することによって、前記印刷版に前記塗布液のパターンを形成する工程と、
(b) 載置台に載置された前記基板と前記印刷版とが近接または当接した状態で、前記版胴の回転に同期させつつ前記載置台を相対的に移動させることによって、前記パターンの形状を維持しつつ、前記印刷版から前記基板に前記パターンを転写させる工程と、
(c) 前記パターンの転写が完了する完了位置付近において、前記パターンが転写された前記基板を減圧乾燥する工程と、
を備えることを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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