説明

印刷装置および印刷方法

【課題】本発明は、多大な設備投資が必要なく、配管内に不要インキが入らず、交換や廃棄の必要がないばかりでなく、容易にインキ自体の硬さを調製でき、生産効率が向上する印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明者らは、鋭意検討した結果、インキ受け部に異なる複数のインキをそれぞれ吐出する手段と、それぞれ吐出された前記異なる複数のインキを混合する手段と、混合されたインキを印刷する手段と、を備えることを特徴とする印刷装置、さらにインキ受け部に異なる複数のインキをそれぞれ吐出する工程と、それぞれ吐出された異なる複数のインキを混合する工程と、混合されたインキで印刷する工程と、を有することを特徴とする印刷方法とすることで前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷方式には、凸版、凹版、平版印刷方式などに分けられるが、現在では大半が平版印刷方式で、オフセット輪転印刷方式(以下、オフ輪印刷ともいう)と枚葉印刷方式(以下、枚葉印刷ともいう)があり、特にオフ輪印刷が主流となっている。このオフ輪印刷は、印刷機の性能向上や、印刷物の短納期化などから高速印刷化の傾向があり、使用する用紙や印刷物の内容によっては、印刷画像の品質の低下が起こる。特に、最近では、コスト削減のため、軽くて薄く比較的安価な微塗工紙の需要が高まり、従来の上質コート紙と使い分けて印刷しており、場合によってはインキの硬さを変更しなければならないときがある。
【0003】
インキの硬さは、概してインキメーカーの仕様として固定されており、特別な硬さのインキを調整してもらおうとしても、時間やコストがかかることになってしまう。
これを、印刷会社自身でインキの硬さを変更しようとするなら、通常主に使用しているインキの他に、それより軟らかいインキあるいは硬いインキ、場合によっては、さらに軟らかいインキあるいは硬いインキを予めインキメーカーから入手しておき、それら同士を適当量混合する作業を行って、必要な硬さのインキを得る必要がある。特殊な設計のインキを除いて、通常、硬いインキとは、高い粘度を有するインキのことを指し、軟らかいインキとは、低い粘度を有するインキのことを指す。
【0004】
一方で、特にオフ輪印刷では、印刷機の自動化はもちろん、その周辺装置も省人化、大型化あるいは自動化されることが多く、図3に例示する概略図のように印刷機のインキ壷にインキを供給する装置が広く用いられている。このインキ供給装置は、1000リットルコンテナ容器、200リットルドラム缶容器などの移動可能な容器やさらにはもっと大容量の固定式容器などから配管を通じて、印刷機の印刷ユニットのインキ壷内に該容器内に収容されたインキを、ポンプなどにより圧送するものである。このインキ供給装置は、自動化されているもの、手動により供給するものの両方があり、通常、印刷工場の規模や印刷機の種類、印刷機数、配置、印刷物などにより、適宜選ばれるもので、印刷機から離れた場所に設置することが多く、配管の距離としては数メートルから数10メートル、なかには100メートルを超えるものもある。
【0005】
したがって、配管中には数Kgから2〜300Kgを超えるインキが入っていることになり、インキの硬さを変更しようとして、別のドラム缶容器やコンテナ容器に交換したとしても、配管中のインキはすぐに交換されず、すぐにでも異なる硬さのインキに変更しようとするなら、該ドラム缶容器や該コンテナ容器に収容されているインキを強制的に供給して、配管中に入っている数Kgから2〜300Kgを超えるインキを十分に排出しなければならず、排出したインキが無駄になるとともに、非常に手間と時間がかかることになる。
【0006】
特許文献1には、複数の貯蔵タンクに貯えられたレギュラインキを所定量取り出し、ミキサーで混合して、ホースを介してマウスピースからインキ壷にインキを供給する装置が開示されている。
【0007】
特許文献2には、数種の添加剤タンク内の任意の添加剤を、インキを供給するインキ配管の途中に添加し、これらを混合し、硬さを調整したインキをインキ壷に供給する供給方法および供給装置が開示されている。
【0008】
特許文献3には、一つのインキタンクから供給されたインキは、印刷機幅方向(ローラ軸方向)に配設されたインキ供給ノズルから分配されて揺動ローラとインキ元ローラとの間のニップ部に流下させ、インキ供給ムラを解消しようとする供給装置が開示されている。
【0009】
特許文献4には、印刷機のインキ呼出しロール上にインキカートリッジに一体的に締結された噴出ガンを経由して直接インキを供給する方法であり、印刷が終了し、次の版やインキに交換する際に、廃棄するインキがはるかに少ないインキ供給方法が開示されている。
【0010】
また、特許文献5には、インキ貯留槽から配管を通じて、印刷ユニットのインキ壷にインキを供給するインキ供給装置において、配管中のインキを加熱または冷却する手段によって、インキ壷のインキ温度に合わせてインキを供給するインキ供給装置が開示されている。
【0011】
しかし、特許文献1は、硬さを調整することは開示されておらず、インキを混合するためにはミキサーが必要で、印刷終了後には、このミキサーを含め、ミキサーからマウスピースまでのホース、マウスピースを交換、洗浄または廃棄する必要がある。
【0012】
特許文献2は、インキ供給パイプの途中に添加剤を添加するため、添加剤が混合されたインキが必ず残り、この場合、次の印刷物の内容に伴って使用する用紙や印刷条件などが変わると、インキ供給パイプ中に残った混合インキでは不都合なことが多く、残った混合インキは不要インキとなる。したがって、この不要インキの排出を十分に行ない、取り除くことが必要なため、このインキ供給パイプの途中に設置された添加剤供給パイプからインキ吐出口までの距離が長いほどその間の不要インキが無駄になるとともに、排出の手間と時間がかかるという問題がある。
【0013】
特許文献3は、一種類のインキを印刷機の幅方向(ローラ軸方向)に単に分配するだけであり、使用するインキは、前述したようにインキメーカーの仕様として固定されており、硬さを調整することはできない。
【0014】
特許文献4は、次の版やインキに変更するときに、インキカートリッジを交換するだけであるが、特許文献3と同様に、インキカートリッジ内のインキは、インキメーカーの仕様として固定されており、硬さを調整することはできない。さらに、呼出しロールの軸方向に往復運動しながらインキを供給すれば、一個又は複数個の噴出ガンによって、呼出しロールの全幅にわたってインキの供給量を平準化することができるとしているが、異なる硬さのインキを収容したインキカートリッジを使用することは開示されていない。しかも、インキカートリッジであるので、小容量のものであることを想定しており、短時間で、大量部数を印刷し、インキ消費量の多い、オフ輪印刷では、インキカートリッジを使用することは想定されていない。
【0015】
特許文献5は、印刷ユニットのインキ壷のインキ温度に、加熱または冷却する手段によって、配管中のインキ温度を合わせることを目的としたものであり、温度変化による硬さの変動であって、インキ自体の硬さを調整するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平3−130156号公報
【特許文献2】特開平5−269972号公報
【特許文献3】特開平8−58068号公報
【特許文献4】特開2000−71425号公報
【特許文献5】特開2007−55185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明は、特許文献2のように非常に大掛かりな設備が必要なく、特許文献1や2のように、インキ配管内やミキサーなどに不要インキが混入することなく、交換やインキを廃棄する必要がない。特許文献3や4のように、一種類のインキのみを使用したものではなく、特許文献4のように、大量部数を印刷するのには不向きのインキカートリッジなどを使用しない。さらに、特許文献5のように、加熱または冷却手段を用いて、温度変化による硬さの変動をさせるものでもない。これらいずれのものとも異なり、容易にインキ自体の硬さを調製でき、生産効率が向上する印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、鋭意検討した結果、インキ受け部に異なる複数のインキをそれぞれ吐出する手段と、それぞれ吐出された前記異なる複数のインキを混合する手段と、混合されたインキを印刷する手段と、を備えることを特徴とする印刷装置、さらにインキ受け部に異なる複数のインキをそれぞれ吐出する工程と、それぞれ吐出された異なる複数のインキを混合する工程と、混合されたインキで印刷する工程と、を有することを特徴とする印刷方法とすることで前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明は、
(1) 異なる複数のインキをそれぞれ収容する複数のインキ収容部と、
インキ受け部と、
前記インキ収容部からそれぞれ供給されるインキを前記インキ受け部にそれぞれ吐出する複数の吐出部と、
前記インキ収容部と前記吐出部とをそれぞれつなぐ流路と、
それぞれ吐出された前記異なる複数のインキを混合する手段と、
混合されたインキで印刷する手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置、
(2) インキ用添加剤を収容するインキ用添加剤収容部をさらに有することを特徴とする(1)記載の印刷装置、
(3) 前記インキ受け部に前記異なる複数のインキをそれぞれ吐出する工程と、
それぞれ吐出された前記異なる複数のインキを混合する工程と、
混合されたインキで印刷する工程と、
を有することを特徴とする印刷方法、
(4) 前記異なる複数のインキが、実質的に同等の色相を有するインキで、かつ該インキの25℃における粘度差が、4Pa・s以上、70Pa・s未満であるインキを用いることを特徴とする(3)記載の印刷方法、
である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の印刷装置および印刷方法は、多大な設備投資が必要なく、配管内に不要インキが入らず、交換や廃棄の必要がないばかりでなく、容易にインキ自体の硬さを調製でき、生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の印刷装置および印刷方法を説明するための概略図である。
【図2】図2は、本発明の印刷装置および印刷方法において、インキ用添加剤収容部を適用した概略図である。
【図3】図3は、従来の印刷装置および印刷方法を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0022】
10 印刷機
11 第一インキ収容部
12 第二インキ収容部
13 第三インキ収容部
14 第四インキ収容部
110 第五インキ収容部
120 第六インキ収容部
130 第七インキ収容部
140 第八インキ収容部
15 第一インキ用添加剤収容部
21 第一流路
22 第二流路
23 第三流路
24 第四流路
210 第五流路
220 第六流路
230 第七流路
240 第八流路
25 第九流路
31a 第一インキ受け部(表面)
32a 第二インキ受け部(表面)
33a 第三インキ受け部(表面)
34a 第四インキ受け部(表面)
31b 第一インキ受け部(裏面)
32b 第二インキ受け部(裏面)
33b 第三インキ受け部(裏面)
34b 第四インキ受け部(裏面)
51a 第一吐出部(表面)
52a 第二吐出部(表面)
53a 第三吐出部(表面)
54a 第四吐出部(表面)
510a 第五吐出部(表面)
520a 第六吐出部(表面)
530a 第七吐出部(表面)
540a 第八吐出部(表面)
55a 第九吐出部(表面)
51b 第一吐出部(裏面)
52b 第二吐出部(裏面)
53b 第三吐出部(裏面)
54b 第四吐出部(裏面)
510b 第五吐出部(裏面)
520b 第六吐出部(裏面)
530b 第七吐出部(裏面)
540b 第八吐出部(裏面)
55b 第九吐出部(裏面)
91 第一ユニット
92 第二ユニット
93 第三ユニット
94 第四ユニット
400、500、600 印刷装置
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0024】
本発明の印刷装置は、図1に示すように、異なる複数のインキをそれぞれ収容する複数のインキ収容部(第一インキ収容部11および第五インキ収容部110、第二インキ収容部12および第六インキ収容部120、第三インキ収容部13および第七インキ収容部130、第四インキ収容部14および第八インキ収容部140)と、印刷機10の各印刷ユニット(第一ユニット91、第二ユニット92、第三ユニット93、第四ユニット94)のそれぞれの上下のインキ受け部(第一インキ受け部(表面)31a、第一インキ受け部(裏面)31b、第二インキ受け部(表面)32a、第二インキ受け部(裏面)32b、第三インキ受け部(表面)33a、第三インキ受け部(裏面)33b、第四インキ受け部(表面)34a、第四インキ受け部(裏面)34b)と、異なる複数のインキをそれぞれ収容する複数のインキ収容部からそれぞれ供給されるインキをインキ受け部にそれぞれ吐出する複数の吐出部(第一吐出部(表面)51aおよび第一吐出部(裏面)51b、第二吐出部(表面)52aおよび第二吐出部(裏面)52b、第三吐出部(表面)53aおよび第三吐出部(裏面)53b、第四吐出部(表面)54aおよび第四吐出部(裏面)54b、第五吐出部(表面)510aおよび第五吐出部(裏面)510b、第六吐出部(表面)520aおよび第六吐出部(裏面)520b、第七吐出部(表面)530aおよび第七吐出部(裏面)530b、第八吐出部(表面)540aおよび第八吐出部(裏面)540b)と、異なる複数のインキをそれぞれ収容する複数のインキ収容部と吐出部とをそれぞれつなぐ流路(第一流路21および第五流路210、第二流路22および第六流路220、第三流路23および第七流路230、第四流路24および第八流路240)と、前記インキ受け部に異なる複数のインキをそれぞれ吐出する手段と、それぞれ吐出された前記異なる複数のインキを混合する手段と、混合されたインキで印刷する手段と、を備えている。
【0025】
本実施形態による印刷装置500は、それぞれ粘度の異なるインキをそれぞれ収容する第一インキ収容部11と第五インキ収容部110が一対をなすように設けられている。これら二つのインキ収容部から第一ユニット91の第一インキ受け部(表面)31aまたは第一インキ受け部(裏面)31bに吐出する第一吐出部(表面)51aおよび第一吐出部(裏面)51bが設けられている。さらに、それぞれのインキ収容部と吐出部とを連通する第一流路21および第五流路210が設けられている。
さらに詳しくは、一方の第一インキ収容部11から供給されたインキは、第一流路21を通り、第一吐出部(表面)51aまたは第一吐出部(裏面)510aから、第一インキ受け部(表面)31aまたは第一インキ受け部(裏面)31bに吐出され、他方の第五インキ収容部110から供給されたインキは、第五流路210を通り、第五吐出部(表面)510aまたは第五吐出部(裏面)510bから、第一インキ受け部(表面)31aまたは第一インキ受け部(裏面)31bに吐出されるように設けられている。
同様に、第二インキ収容部12と第六インキ収容部120から第二インキ受け部(表面)32aまたは第二インキ受け部(裏面)32bへ、第三インキ収容部13および第七インキ収容部130から第三インキ受け部(表面)33aまたは第三インキ受け部(裏面)33bへ、第四インキ収容部14および第八インキ収容部140から第四インキ受け部(表面)34aまたは第四インキ受け部(裏面)34bにそれぞれ粘度の異なるインキが吐出されるように設けられている。
また、本実施形態では第一〜第八インキ収容部の八つの収容部について、例示したが、少なくとも二つの粘度の異なるインキを収容する収容部を設けたものであれば、数に制限はない。
【0026】
それぞれのインキ受け部(31a〜34aおよび31b〜34b)に異なる複数のインキをそれぞれ吐出する手段は、インキ収容部から、それぞれの流路にインキを送り出す圧送部(図示せず)や、流路からインキ受け部にインキを吐出する吐出部(51a〜54aおよび51b〜54b、510a〜540aおよび510b〜540b)から構成されている。前記圧送部は、インキ収容部と吐出部をつなぐ流路の途中に設けられていればよく、インキの供給や添加剤などの輸送に通常供されるものであればよい。例えば、油圧ポンプ、ギアポンプ、空気圧縮ポンプ、ロータリーポンプ、ピストンポンプなど従来公知のものが使用でき、特に制限はない。前記圧送部は、固設したものであっても、架台に組み着けて、可動または固設したものであってもよい。
【0027】
それぞれ吐出された前記異なる複数のインキを混合する手段は、前記吐出手段によって、インキ受け部に異なる複数のインキを吐出したそれぞれのインキを撹拌する撹拌部(図示せず)から構成されている。前記撹拌部は、インキの撹拌に通常供されるものであればよい。例えば、撹拌部材を電気駆動方式や空圧駆動方式でインキ受け部内の幅方向に往復移動させてインキを撹拌するように設けられたものであってもよく、前記撹拌部材は棒状で、円形または多角形の形状、または板状のものでもよく、三角錐状の形状であってもよい。また前記撹拌部材は一つでなく、複数あってもよい。また、幅方向の往復移動とともに、前記撹拌部材自体が回転するようにしていてもよい。
また、混合手段としては、前記のような撹拌部を有しなくとも、インキ受け部内のインキをへらなどを用いてオペレータが撹拌してもよい。
【0028】
混合されたインキで印刷する手段は、前記混合手段によって、インキ受け部内で混合されたインキを印刷機10の各印刷ユニット内のインキ供給ローラ部、版胴、圧胴(いずれも図示せず)などから構成される凸版、凹版、平版印刷方式のいずれかの印刷方式によって、第一ユニット91を上流側とし、第二ユニット92、第三ユニット93、第四ユニット94の順で、被印刷物(図示せず)に印刷される。特に、平版印刷方式の構成によって印刷されることが好ましい。印刷ユニットは、前記第一から第四ユニットの四つとは限らず、少なくとも一つの印刷ユニットを有する構成であれば、数に制限はない。また、使用する印刷ユニットは、被印刷物に応じて、適宜選択され、必ずしも全ての印刷ユニットを使用する必要はない。
また、本実施形態において、各印刷ユニットのインキ受け部は、表面と裏面の両面を同時に印刷できるように設けられているが、これに限るものではなく、片面のみを印刷するように設けていてもよく、また片面を印刷した後に、被印刷物を反転し、連続して反対面を印刷するように設けていてもよい。
【0029】
図2に示す本発明の印刷装置600は、前記印刷装置500にさらにインキ用添加剤を収容する第一インキ用添加剤収容部15を有し、第一インキ用添加剤収容部15と、印刷機10の各印刷ユニット(91〜94)のそれぞれの上下のインキ受け部(31a〜34aまたは31b〜34b)と、さらにインキ用添加剤を収容する第一インキ用添加剤収容部から供給されるインキ用添加剤をインキ受け部に吐出する吐出部(55aおよび55b)と、さらにインキ用添加剤を収容するインキ用添加剤収容部と吐出部とをそれぞれつなぐ第九流路25と、を有する印刷装置である。
【0030】
本実施形態による印刷装置600は、第一インキ用添加剤収容部15が設けられている。この第一インキ用添加剤収容部から第一ユニット91の第一インキ受け部(表面)31aまたは第一インキ受け部(裏面)31b、第二ユニット92の第二インキ受け部(表面)32aまたは第二インキ受け部(裏面)32b、第三ユニット93の第三インキ受け部(表面)33aまたは第三インキ受け部(裏面)33b、第四ユニット94の第四インキ受け部(表面)34aまたは第四インキ受け部(裏面)34bに、インキ用添加剤が吐出されように、それぞれ第九吐出部(表面)55aおよび第九吐出部(裏面)55bが設けられている。
本実施形態による印刷装置600の吐出手段、混合手段、印刷手段は、前記印刷装置500で述べたと同様の手段で行うことができる。
また、本実施形態では、第一インキ用添加剤収容部の一つの収容部について、例示したが、少なくとも一つのインキ用添加剤を収容する収容部を設けたものであれば、数に制限はない。
【0031】
さらに図1または図2に示す本発明の印刷装置(500、600)は、前記異なる複数のインキが、実質的に同等の色相を有するインキで、かつ該インキの25℃における粘度差が、4Pa・s以上、70Pa・s未満であるインキを用いることができる。
前記異なる複数のインキの25℃における粘度差が4Pa・sより小さいと、混合しても粘度の変動幅が小さく、所望な硬さのインキが得られにくく、印刷手段において、印刷画像品質の改善に効果が出ない可能性がある。また、非常に硬いインキと非常に軟らかいインキでは、混合手段において混合しても、うまく混ざり合わず均一になりにくく、実用的ではない。
【0032】
前記実質的に同等の色相を有するインキとは、各インキを混合し、そのインキを使用して印刷しても印刷画像の色相が変化しないインキのことを意味し、前記粘度範囲内にあるインキを用いることで、印刷手段において、インキの硬さが原因で発生するトラブルなどが発生した際に、印刷画像の色相をほとんど変化させずに、適切な、より安定した硬さのインキを調製できるものである。
【0033】
前記異なる複数のインキが、二つである場合、一方が25℃において10〜80Pa・sの粘度を有するインキであり、他方が25℃において6〜60Pa・sの粘度を有するインキであることが好ましい。さらに、両者は、25℃において4Pa・s以上、70Pa・s未満の粘度差を有することが好ましい。
【0034】
オフ輪インキの場合、一方のインキの25℃における粘度は、10〜40Pa・sが好ましい。12〜35Pa・sがより好ましく、13〜30Pa・sがさらに好ましい。
また、他方のインキの25℃における粘度は、6〜26Pa・sが好ましい。8〜23Pa・sがより好ましく、9〜19Pa・sがさらに好ましい。
【0035】
枚葉インキの場合、一方のインキの25℃における粘度は、20〜80Pa・sが好ましい。22〜60Pa・sがより好ましく、25〜50Pa・sがさらに好ましい。
また、他方のインキの25℃における粘度は、10〜60Pa・sが好ましい。12〜45Pa・sがより好ましく、14〜35Pa・sがさらに好ましい。
【0036】
前記異なる複数のインキが、三つ以上である場合、一番高い粘度を有するインキと一番低い粘度を有するインキの25℃における粘度差が4Pa・s以上、70Pa・s未満であることが好ましい。
【0037】
本発明における粘度は、JIS K 5701(平版インキおよびとっ版インキの試験方法)に採用されているL型粘度計により、25℃において測定されるものである。
【0038】
前記インキは、通常の平版印刷に使用されるものであればよく、市販品も使用できる。市販品としては、ウエブアクタスSDメジャー、LT−R、HC−S、アルックスウエブ、ジップセット、アルックス、オフ輪用ゴールド、EX−2、特金、特銀、アルックスゴールド、アルックスシルバーなど(以上、東京インキ(株)製)、WDレオエックス、WDレオエコー、WDアクワレス、TK NEX、TKハイユニティ、ゴールドキングレオ、シルバーキングレオ、TKハイエコーSOYゴールド、TKハイエコーSOYシルバーなど(以上、東洋インキ製造(株)製)、ニューアドバンプレミア、ウェブゼット、WSL SOYBI VISTA、フュージョンG、ナチュラリス、NS PVF−K、シルバー、プレミアゴールドなど(以上、DICグラフィックス(株)製)、BEST WEB、スーパーテックプラス、ニューアルポ、タイガーゴールド、タイガーシルバーなど(以上、(株)製ティーアンドケイ東華製)、ウェブレックス、リソレックス、ハイテックスなど(以上、大日精化工業(株)製)、ウエブスター、ソイエコ、ロイヤルゴールド、ロイヤルシルバー(以上、三星インキ(株)製)、ウェブトーン、オピスなど(以上、大阪印刷インキ製造(株)製)、WEB−VS、ユニソイ、ユニエコなど(以上、合同インキ(株)製)などを使用することができる。
これらのインキを1色以上使用することができる。通常、プロセス4色印刷と呼ばれる黄、紅、藍、墨の4色のインキが使用できるが、場合によってはこれに加え、金赤、紫、グリーンなどの中間色や金、銀など、または水なし平版印刷用インキなどを選択または組み合わせて使用することができる。また、通常、上記に挙げたインキは異なる粘度のものが数種類用意されているので、印刷条件や印刷目的などによって、適宜選択して使用することができる。
【0039】
また、前記インキ用添加剤としては、溶剤、ワニス、植物油、ワックスコンパウンド、乾燥促進剤、乾燥防止剤、整面剤などが挙げられる。これらは一つまたは二つ以上組み合わせて使用することができ、混合手段において混合され、必要な印刷適性を適宜付与して印刷手段に供される。
例えば、印刷手段において、紙質が著しく悪かったり、インキの着肉性が劣る場合などは、溶剤を2〜5%程度を吐出し、混合する。印刷画像の光沢を良くするためには、ワニスや植物油などを5〜10%程度を吐出し、混合する。印刷面に擦れなどによって傷が発生するなどの場合には、ワックスやマイクロクリスタリンワックスなどを含んだコンパウンドを2〜5%程度を吐出し、混合する。印刷版の非画線部の整面効果を向上させる場合には、整面剤を1〜3%程度を吐出し、混合する。枚葉印刷の場合、乾燥速度を速める場合には、乾燥促進剤を0.5〜2%程度を吐出し、混合する。また、乾燥を遅くする場合には、乾燥防止剤を0.5〜2%程度を吐出し、混合する。
【0040】
図1または図2に示す本発明の印刷装置(500、600)において、前記インキ収容部またはインキ用添加剤収容部は、1000リットル角型コンテナ容器を例示したものであるが、これに限るものではない。
前記インキ収容部またはインキ用添加剤収容部の収容量や数は、印刷機の仕様、使用するインキタイプ、インキやインキ用添加剤の使用頻度、印刷機数、収容部の設置場所や設置面積などにより、適宜選択できる。
例えば、収容量が1000Kg、1500Kg、2000Kgなど、またはそれ以上の通い角型または丸型コンテナ容器、収容量が200Kg、150Kg、100Kgなどのドラム缶容器、収容量が20Kgなどのペール缶容器、収容量が10Kg、5Kgなどの角型缶容器、収容量が2Kg、1Kgなどの缶容器といった移動可能な容器、収容量が5000Kgなど、またはそれ以上の固定式のコンテナ容器といった容器が挙げられる。通常大容量の缶容器は、金属性のものが多いが、少容量の缶容器は、金属製、紙製、プラスチック製などあり、適宜選択できる。なかでも、比較的規模の大きいオフ輪印刷機を主に有する印刷会社では、収容量が1000Kgなどの通い角型または丸型コンテナ容器や収容量が200Kgのドラム缶容器、あるいは収容量が3000Kgや5000Kgといった固定式の容器が好ましく使用される。枚葉印刷機を主に有する印刷会社では、収容量が200Kgのドラム缶容器や収容量が5Kg、1Kgの缶容器が好ましく使用される。
【0041】
図1または図2に示す本発明の印刷装置(500、600)において、前記インキ受け部は、各印刷ユニットに二つずつ有し、吐出手段により吐出されるインキまたはインキ用添加剤を受け、ある程度の容量を貯留することができ、混合手段の妨げにならない幅と形状を有し、印刷手段に支障のない構成であれば、特に制限はない。通常、インキ壷、インキパンといった名称で呼ばれるものである。
本実施形態では、各印刷ユニットに上下(または表裏)一つずつ有する構成を例示しているが、どちらか一方のみの構成であってもよい。
【0042】
図1または図2に示す本発明の印刷装置(500、600)において、前記吐出部は、インキを吐出する弁やノズルなどにより構成されており、弁やノズルの形状、数などは、特に制限はない。これらの開閉による流路内の圧力変動に伴い、前記圧送部を自動で作動させてもよいし、あるいは弁やノズルなどを開放しておき、手動で前記圧送部を作動させてインキを吐出させてもよい。さらに、弁やノズルなどの開閉のための操作部(図示せず)を設けていてもよい。操作部は、手動または自動あるいは手動、自動の切り替えができるものいずれでもよく、自動の場合、流路の途中に質量流量計などの流量検出部(図示せず)を設け、インキ流量を検出し、制御部(図示せず)により弁やノズルなどを自動開閉させるようにしてもよい。他に、インキ受け部にセンサーなどの検知部(図示せず)を設け、レベルなどを検出して前記制御部と連動させて、弁やノズルなどを自動開閉させるようにしてもよいし、あるいは制御部に連動させずに、検知部からの検知信号に基づき、手動で開閉できるようにしてもよい。
【0043】
図1または図2に示す本発明の印刷装置(500、600)において、前記流路は、気体や液体などの流体を輸送できる中空の管により構成され、パイプのように柔軟性がなく、設備や構造として設置した構成であってもよく、ホースのように柔軟性があって、随時任意に曲げて利用する構成であってもよい。または、それらを組み合わせた構成としてもよい。
本実施形態では、各印刷ユニットの上下(または表裏)に有する吐出部の両方につなぐ構成を例示しているが、どちらか一方の吐出部のみにつなぐ構成であってもよい。
また、該流路の途中に切替部(図示せず)を設けて、流路を分岐して、別の印刷機の印刷ユニットの吐出部につなぐ構成としてもよい。
【0044】
さらに、図1または図2に示す本発明の印刷装置(500、600)において、前記収容部、インキ受け部、流路などの各部に、温度を調節する温度調節部(図示せず)を設けてもよい。
【0045】
前記被印刷物は、印刷用紙、樹脂フィルムなど印刷方式に合わせて適宜選択して使用できる。
【0046】
前記印刷用紙は、通常印刷に使用される市販品の印刷用紙であれば良く、特に制限はない。印刷用紙のグレードとしては、例えば、塗工紙のA1アート、A2上質コート(グロス、ダル、マット)、A3上質軽量コート(グロス、ダル、マット)、B2中質コート、微塗工紙Iセミ上質ベース(スーパー、ノースーパー)、微塗工紙II中質紙ベース(スーパー、ノースーパー)、非塗工紙の印刷用紙A、印刷用紙B、印刷用紙Cなどが挙げられる。なかでも、塗工紙のA2上質コート、A3上質軽量コート、B2中質コート、微塗工紙Iセミ上質ベース、微塗工紙II中質紙ベース、非塗工紙の印刷用紙A、印刷用紙B、印刷用紙Cなどが好ましい。
【0047】
市販品としては、A1アートは、例えば、OK金藤+、サテン金藤(以上、王子製紙(株)製)、特菱アート両面N、特菱アート片面N(以上、三菱製紙(株)製)、雷鳥特アートN、雷鳥ダルアートN(以上、中越パルプ工業(株)製)などが挙げられる。
A2上質コートは、例えば、ミューホワイトグロス、ミューホワイト、ミューコートネオス、デルタミューネオス、ミューマット(以上、北越紀州製紙(株)製、OKトップコートS、OKトップコート+、OKトップコートダル、OKトップコートマットN、OKロイヤルコート、OKコートNグリーン100、OKマットコートNグリーン100(以上、王子製紙(株)製)、オーロラコート、しらおいマット、ユーライト、リサイクルコートT−6(以上、日本製紙(株)製)、パールコートN、ニューVマット、ホワイトニューVマット(以上、三菱製紙(株)製)、(S)ユトリロコート、ユトリログロスマット、ユトリロマットコート、グリーンユトリロ、グリーンユトリロマット(以上、大王製紙(株)製)、雷鳥コート、雷鳥マットコートN、レジーナ雷鳥コート100、レジーナ雷鳥マット100(以上、中越パルプ工業(株)製)、シナールグロスコート、シナールDGグロス、シナールマットコート、シナールDGマット(以上、エイピーピー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
A3上質軽量コートは、例えば、ハイアルファ、オメガグロス、オメガマット、オメガソフト、アルファマット、キンマリHi−L、スノーホワイト(以上、北越紀州製紙(株)製)、OKコートL、OKホワイトL、ロイヤルコートL、OKコートLグリーン100、OKマットコートLグリーン100(以上、王子製紙(株)製)、オーロラL、オーロラLマット、リサイクルコートL100(以上、日本製紙(株)製)、NパールコートL、スイングマット(以上、三菱製紙(株)製)、(S)ユトリロコートL、ユトリロエクセル、グリーンユトリロL(以上、大王製紙(株)製)、スーパーエミネ、シャトン、レジーナシャトン100(以上、中越パルプ工業(株)製)、ドリームコートG、ステラマット、スターコートR、ドリームコート、チェリーホワイト(以上、丸住製紙(株)製)などが挙げられる。
B2中質コートは、例えば、OK中質コート、OKアストロ、OKノンリンクルDL、OKノンリンクルAL(以上、王子製紙(株)製)、キングO、ホワイトヘンリー(以上、日本製紙(株)製)、パールライトAX(三菱製紙(株)製)、ゲーテコート(大王製紙(株)製)などが挙げられる。
微塗工紙Iセミ上質ベースは、例えば、ホワイトソフト、ホワイトハミング、ハミング(以上、北越紀州製紙(株)製)、OKエバーライトコート、OKノンリンクルBL、OKブライト、OKエバーライトロイヤルウルトラ、OKエバーライトロイヤル、OKロイヤルライトS、OK微塗工スーパーエコG100、OKロイヤルライトSグリーン100(以上、王子製紙(株)製)、オーロラS、ペガサス、ハイブローマット、ピレーヌEX、ピレーヌDX、ピレーヌマットDX、ハイパーピレーヌEXタフ(以上、日本製紙(株)製)、コスモエース、ニューコスモバルキー(以上、日本大昭和板紙(株)製)、マルガリーソフトA(三菱製紙(株)製)、エクセルスーパーB、カントエクセル(以上、大王製紙(株)製)、スマッシュ、ありそ(以上、中越パルプ工業(株)製)などが挙げられる。
微塗工紙II中質紙ベースは、例えば、シロマリL(北越紀州製紙(株)製)、OKスターライトコート、OKソフトロイヤル(以上、王子製紙(株)製)、スーパーアンデスDX、アンデスDX(以上、日本製紙(株)製)、パールソフトA、パールソフトバルキーA(以上、三菱製紙(株)製)、ハイネエクセル、ダンテエクセル(以上、大王製紙(株)製)などが挙げられる。
印刷用紙Aは、例えば、キンマリSW、キンマリN、キンマリV、淡クリームキンマリ、淡クリームラフ書籍(以上、北越紀州製紙(株)製)、OKプリンス上質、OK上質紙、OKシュークリーム、OKプリンス上質EH、OKシュークリームグリーン100(以上、王子製紙(株)製)、ニューNpi上質、しらおい、オペラクリーム、書籍用紙N、Npiクリーム大ラフ、オペラホワイトゼウス、リサイクル上質(以上、日本製紙(株)製)、エコー上質(日本大昭和板紙(株)製)、金菱、ラフ書籍用紙、ダイヤホワイト(以上、三菱製紙(株)製)、たいおう、たいおうラフ、カントエクセルWB、グリーンたいおう(以上、大王製紙(株)製)、雷鳥上質、淡クリームせんだい、レジーナ雷鳥上質100(以上、中越パルプ工業(株)製)、マイセン100(東海パルプ(株)製)、シナール上質、シナールロイヤルホワイト上質(以上、エイピーピー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
印刷用紙Bは、例えば、セミ上質紙、(S)シロマリ(以上、北越紀州製紙(株)製)、OKエバーライトW、OKエバーライト、OKクリームN本文用紙ラフ、エバーライトバルキー、ニュークリームバルキー、OKスターライト、OKスターライトバルキー、やまゆり(以上、王子製紙(株)製)、HAKURO、ピレーヌ、ピレーヌタフ、ハイランド、ハイランドタフ、グリーンランド、ホワイトランド、アンデス、軽量オフ輪用紙(以上、日本製紙(株)製)、カント、淡クリームカント、タイオウハイネ、文庫本用紙、ダンテ、ダンテコミック(以上、大王製紙(株)製)、スターリンデンAW、スターエルムN、スターエルム(以上、丸住製紙(株)製)などが挙げられる。
印刷用紙Cは、例えば、(S)トクギンマリ(北越紀州製紙(株)製)、OKニューライト(王子製紙(株)製)、アルプス、セーヌ(以上、日本製紙(株)製)、銀河(日本大昭和板紙(株)製)、ニューAD用紙(大王製紙(株)製)、スターローレル、スターロベリア(以上、丸住製紙(株)製)などが挙げられる。
【0048】
前記樹脂フィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテートなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン−ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、防湿セロハン、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルムなどが挙げられる。これらは延伸、未延伸のどちらでも良く、一種類または二種類以上を積層していても良い。機械的強度や寸法安定性などを考慮して、適切なものが選択できる。また、印刷面にはインキの密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。
【実施例】
【0049】
実施例1
図1に示す本発明の印刷装置500を用いて、行った。
異なる複数のインキとして、オフ輪黄インキA(ウエブアクタスSDメジャー黄TX−1 Y、20Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、オフ輪黄インキB(ウエブアクタスSDメジャーLWC黄 Y、10Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、オフ輪紅インキA(ウエブアクタスSDメジャー紅TX−1 Y、25Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、オフ輪紅インキB(ウエブアクタスSDメジャーLWC紅 Y、13Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、オフ輪藍インキA(ウエブアクタスSDメジャー藍TX−1 Y、24Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、オフ輪藍インキB(ウエブアクタスSDメジャーLWC藍 Y、14Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、オフ輪墨インキA(ウエブアクタスSDメジャー墨TX−1 Y、20Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、オフ輪墨インキB(ウエブアクタスSDメジャーLWC墨 X、11Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)を、表1記載の割合で混合し、印刷速度600rpm、A3上質軽量コート(OKコートL、王子製紙(株)製)を使用し、墨、藍、紅、黄の順で、オフ輪印刷を行った。このとき、上記インキは、すべて1000リットル角型コンテナ容器に収容されたものを使用した。印刷機は、(株)小森コーポレーション製 4色オフ輪印刷機、印刷版はCTP版(富士フイルム(株)製)を使用した。
【0050】
実施例1について、印刷画像評価、生産効率について評価し、表1に記載した。
【0051】
<印刷画像評価>
印刷開始から一定部数印刷経過する間に、印刷画像の品質として劣らないものを○、一定部数印刷経過する間に、印刷画像の品質としてはやや劣ってくるが、実用上問題ないものを△、一定部数経過前に、明らかに印刷画像の品質として劣るものを×として、目視により印刷画像を評価した。
【0052】
<生産効率>
印刷開始から一定部数印刷経過する間に、印刷機の停止あるいは印刷中において版などの洗浄作業を行なわなかったものを○、印刷開始から一定部数印刷経過する間に、印刷機の停止あるいは印刷中において版などの洗浄作業を行なったものを×として、生産効率を評価した。
【0053】
実施例2
使用した用紙を微塗工紙(中質紙ベース)(ダンテエクセル、大王製紙(株)製)、印刷速度を500rpmに変え、表1記載の割合にした以外は、実施例1と同様にしてオフ輪印刷を行った。また、実施例1と同様に評価し、表1に記載した。
【0054】
実施例3
異なる複数のインキとして、オフ輪黄インキC(ウエブアクタスSDメジャー黄TX−1 WZ、30Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、オフ輪黄インキB(ウエブアクタスSDメジャーLWC黄 Y、10Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、オフ輪紅インキC(ウエブアクタスSDメジャー紅TX−1 WZ、35Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、オフ輪紅インキB(ウエブアクタスSDメジャーLWC紅 Y、13Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、オフ輪藍インキC(ウエブアクタスSDメジャー藍TX−1 WZ、36Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、オフ輪藍インキB(ウエブアクタスSDメジャーLWC藍 Y、14Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、オフ輪墨インキC(ウエブアクタスSDメジャー墨TX−1 WZ、32Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、オフ輪墨インキB(ウエブアクタスSDメジャーLWC墨 X、11Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)を、表1記載の割合で混合し、実施例2と同様にしてオフ輪印刷を行った。また、実施例1と同様に評価し、表1に記載した。
【0055】
実施例4
異なる複数のインキとして、枚葉黄インキD(ジップセットニューセルボ黄 Y、30Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、枚葉黄インキE(ジップセットニューセルボ黄 WX、16Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、枚葉紅インキD(ジップセットニューセルボ紅 Y、40Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、枚葉紅インキE(ジップセットニューセルボ紅 WX、21Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、枚葉藍インキD(ジップセットニューセルボ藍 Y、40Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、枚葉藍インキE(ジップセットニューセルボ藍 WX、21Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)、枚葉墨インキD(ジップセットニューセルボ墨 Y、30Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)と、枚葉墨インキE(ジップセットニューセルボ墨 WX、16Pa・s/25℃、東京インキ(株)製)を、表1記載の割合で混合し、印刷速度8000枚/時、A2上質コート(ミューホワイトグロス、北越紀州製紙(株)製)を使用し、墨、藍、紅、黄の順で、枚葉印刷を行った。このとき、上記インキはすべて200リットルドラム缶容器に収容されたものを使用した。印刷機は、(株)小森コーポレーション製 4色枚葉印刷機、印刷版はCTP版(富士フイルム(株)製)を使用した。また、実施例1と同様に評価し、表1に記載した。
【0056】
実施例5
使用した用紙をB2中質コート(ホワイトヘンリー、日本製紙(株)製)、印刷速度を6000枚/時に変え、表1記載の割合にした以外は、実施例3と同様にして枚葉印刷を行った。また、実施例1と同様に評価し、表1に記載した。
【0057】
実施例6
図2に示す本発明の印刷装置600を用いて、行った。
異なる複数のインキとして、実施例1と同様のインキを用い、さらにインキ用添加剤として、インキ用溶剤(AFソルベント7号、新日本石油(株)製)を、表1記載の割合で混合し、印刷速度600rpm、印刷用紙B(OKエバーライト、王子製紙(株)製)を使用し、オフ輪印刷を行った。このとき、上記インキ用溶剤は、200リットルドラム缶容器に収容されたものを使用した。印刷機は、(株)小森コーポレーション製 4色オフ輪印刷機、印刷版はCTP版(富士フイルム(株)製)を使用した。また、実施例1と同様に評価し、表1に記載した。
【0058】
比較例1〜3は、図3(従来の印刷装置400)に示すような、一つのインキを収容するインキ収容部と、インキ受け部と、前記一つのインキを収容するインキ収容部から供給されるインキを前記インキ受け部に吐出する吐出部と、前記一つのインキを収容するインキ収容部と前記吐出部とを連通する流路と、を有する印刷装置を使用した例である。
【0059】
比較例1
インキは、実施例1で使用したオフ輪黄インキA、オフ輪紅インキA、オフ輪藍インキA、オフ輪墨インキAを使用、実施例1と同じ印刷速度600rpmおよびA3上質軽量コート(OKコートL、王子製紙(株)製)を使用し、墨、藍、紅、黄の順で、オフ輪印刷を行った。また、実施例1と同様に評価し、表1に記載した。
【0060】
比較例2
使用するインキを、実施例1で使用したオフ輪黄インキC、オフ輪紅インキC、オフ輪藍インキC、オフ輪墨インキCを使用、実施例2と同じ印刷速度500rpmおよび微塗工紙(中質紙ベース)(ダンテエクセル、大王製紙(株)製)を使用し、墨、藍、紅、黄の順で、オフ輪印刷を行った。また、実施例1と同様に評価し、表1に記載した。
【0061】
比較例3
使用するインキを、実施例1で使用したオフ輪黄インキB、オフ輪紅インキB、オフ輪藍インキB、オフ輪墨インキBを使用、実施例2と同じ印刷速度500rpmおよび微塗工紙(中質紙ベース)(ダンテエクセル、大王製紙(株)製)を使用し、墨、藍、紅、黄の順で、オフ輪印刷を行った。また、実施例1と同様に評価し、表1に記載した。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から、本発明の印刷装置および印刷方法は、容易にインキ自体の硬さを調製でき、印刷画像品質の劣化がなく、機械停止などがないため、生産効率が向上することが明らかである。
なお、比較例1〜3は、従来の印刷装置および印刷方法を用いた例である。
比較例1および比較例2は、紙質が悪い用紙に対して適切なインキの硬さではない例で、比較例1においては、着肉が徐々に悪くなり、印刷画像の品質が劣る、いわゆる、がさつきと呼ばれる現象が起こり、実用上問題のない程度ではあったが、印刷中、版の洗浄作業を行った(この作業の間に印刷された印刷物は廃棄処分された)。比較例2においては、さらに、この現象が顕著であり、印刷を中断しなければならなかった。比較例3においては、インキが軟らかすぎる例で、非画線部での汚れ(地汚れ)や乳化による汚れ(浮き汚れ)が出たり、ドットゲイン(網点の太り)が大きくなって、印刷画像の品質が劣り、さらに、この現象が起こったことにより、印刷を中断しなければならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数のインキをそれぞれ収容する複数のインキ収容部と、
インキ受け部と、
前記インキ収容部からそれぞれ供給されるインキを前記インキ受け部にそれぞれ吐出する複数の吐出部と、
前記インキ収容部と前記吐出部とをそれぞれつなぐ流路と、
それぞれ吐出された前記異なる複数のインキを混合する手段と、
混合されたインキで印刷する手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
インキ用添加剤を収容するインキ用添加剤収容部をさらに有することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記インキ受け部に前記異なる複数のインキをそれぞれ吐出する工程と、
それぞれ吐出された前記異なる複数のインキを混合する工程と、
混合されたインキで印刷する工程と、
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
前記異なる複数のインキが、実質的に同等の色相を有するインキで、かつ該インキの25℃における粘度差が、4Pa・s以上、70Pa・s未満であるインキを用いることを特徴とする請求項3記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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