説明

印刷装置の制御方法、印刷装置およびメディア処理装置

【課題】良好な外観でメディアへ印刷することが可能な印刷装置の制御方法、印刷装置およびメディア処理装置を提供する。
【解決手段】メディアMにおける円環状の印刷可能領域Xの位置を検出し(ステップS02,S03)、印刷可能領域Xに対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷データを補正し(ステップS04)、補正した印刷データでメディアMに印刷する(ステップS05)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等の板状のメディアへの印刷処理が可能な印刷装置の制御方法、印刷装置およびメディア処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等の板状のメディア(情報記録媒体)のレーベル面への印刷ができる印刷装置が一般的に知られている。
DVD等のメディアは、中心に円形の孔を有する円盤状の樹脂製の基板の一方の面がレーベル面として設けられており、このレーベル面は、インク受容層として設けられている白色の印刷可能領域に印刷することが可能である。
そして、メディアに印刷処理を施す印刷装置では、トレイに保持したメディアに対して、幅方向に移動するキャリッジに搭載された吐出ヘッドからインクを吐出し、レーベル面の印刷可能領域に印刷を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−255905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような印刷装置では、メディアのレーベル面に印刷する場合、例えば、メディアを保持するトレイに設けた基準の目印を検出し、トレイにおけるメディアの収容部の中心位置を割り出し、その中心位置と印刷イメージの中心位置とを一致させている。これにより、メディアの中心に合わせて印刷が行われる。
ところが、メディアは、その基板中心に対して、インク受容層が設けられた印刷可能領域が偏心している場合が多い。そのため、メディアの中心に合わせて正確に印刷したとしても、印刷可能領域に対してずれが生じ、内周側及び外周側での余白が不均一となり、見た目が悪くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、良好な外観でメディアへ印刷することが可能な印刷装置の制御方法、印刷装置およびメディア処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することのできる本発明に係る印刷装置の制御方法は、板状のメディアへの印刷が可能な印刷装置の制御方法であって、
前記メディアにおける印刷可能領域の位置を検出する位置検出ステップと、
前記印刷可能領域に対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷データを補正するマッチングステップと、
補正した印刷データで前記メディアに印刷する印刷ステップと、
を行うことを特徴とする。
【0007】
この印刷装置の制御方法によれば、メディアにおける実際の印刷可能領域に対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷することができる。
これにより、メディアの基板の中心に対して印刷可能領域が偏心していたとしても、印刷可能領域に対する印刷範囲のずれをなくすことができ、印刷後の外観を良好にすることができる。
【0008】
また、前記印刷可能領域が円環状に設けられており、検出した前記印刷可能領域の位置情報に基づいて、前記メディアの印刷可能領域の内径及び外径を算出する位置演算ステップを含み、前記マッチングステップでは、前記印刷可能領域の内周側及び外周側に、指定された余白が形成されるように前記印刷データを補正することが好ましい。
この印刷装置の制御方法によれば、印刷可能領域に対して、印刷データのイメージの中心位置を一致させ、さらに、内周側及び外周側に指定された余白をあけて印刷を行うので、印刷可能領域における外周側及び内周側での余白を周方向に沿って均一化することができる。
【0009】
また、前記位置検出ステップは、前記メディアにおける前記印刷可能領域の内周縁及び外周縁における複数個所の位置を検出することが好ましい。
この印刷装置の制御方法によれば、メディアの印刷可能領域の内周縁及び外周縁における複数個所の位置を検出し、印刷可能領域の位置を精度良く割り出すことができる。
【0010】
また、本発明の印刷装置は、板状のメディアへ印刷処理を行う印刷処理部と、
前記メディアの印刷可能領域の位置を検出する位置検出センサと、
前記位置検出センサからの位置情報に基づいて前記印刷可能領域に対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷データを補正して、前記印刷処理部による前記メディアへの印刷処理を行わせる制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この印刷装置によれば、制御部が、位置検出センサからの位置情報に基づいて、メディアにおける実際の印刷可能領域に対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷させるので、メディアの基板の中心に対して印刷可能領域が偏心していたとしても、印刷可能領域に対する印刷範囲のずれをなくすことができ、良好な外観でメディアへ印刷を行うことができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記位置検出センサからの位置情報に基づいて、前記メディアの印刷可能領域の内径及び外径を算出し、印刷可能領域の内周側及び外周側に指定された余白が形成されるように前記印刷データを補正することが好ましい。
この印刷装置によれば、制御部が、位置検出センサからの位置情報に基づいて、メディアの印刷可能領域の内径及び外径を算出し、印刷可能領域の内周側及び外周側に指定された余白が形成されるように印刷データを補正するので、印刷可能領域における外周側及び内周側での余白を周方向に沿って均一にすることができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記位置検出センサが検出した前記メディアの前記印刷可能領域の内周縁及び外周縁における複数個所の位置情報に基づいて前記印刷データを補正することが好ましい。
この印刷装置によれば、メディアの印刷可能領域の内周縁及び外周縁における複数個所の位置を検出し、印刷可能領域の位置を精度良く割り出すことができる。
【0014】
また、本発明のメディア処理装置は、
前記メディアに対して情報処理を行うメディア処理装置であって、上記本発明に係る何れかの印刷装置を備えていることを特徴とする。
【0015】
このメディア処理装置によれば、印刷可能領域に対する印刷範囲のずれをなくし、良好な外観でメディアへ印刷を行うことができる印刷装置を備えているため、高品質にメディアへ処理を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る印刷装置の制御方法、印刷装置およびメディア処理装置の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
なお、本実施形態では、メディア処理装置としてのパブリッシャを例示して説明する。
図1は各部を閉状態としたパブリッシャ(メディア処理装置)の外観斜視図、図2は各部を開状態としたパブリッシャの外観斜視図、図3はパブリッシャのケースを外した状態の前方上側から見た斜視図、図4はパブリッシャに設置されたレーベルプリンタ部分の斜視図、図5はレーベルプリンタ部分における駆動機構を説明する斜視図である。
【0017】
図1に示すように、パブリッシャ1は、例えばCDやDVD等の円板状のメディア(情報記録媒体)へのデータの書き込み及び/またはデータの読み込みやメディアのレーベル面への印刷を行うメディア処理装置であり、ほぼ直方体形状のケース2を備えている。このケース2の前面には、左右に開閉可能な開閉扉3,4が取り付けられている。ケース2の上側右(正面視左)端部には、表示ランプ、操作ボタン等が配列された操作面5が設けられており、また、ケース2の下端には、下方に突出するように載置用の脚部6が左右両側に設けられている。左右の脚部6の間位置には引出機構7が設けられている。
【0018】
装置左(正面視右)側の開閉扉3は、図2に示すように、パブリッシャ1の前面側の開口部8を開閉するもので、例えば未使用(ブランク)のメディアMを開口部8を介してセットする時、あるいは作成済みのメディアMを、開口部8を介して取り出すときに、開閉する扉である。
また、装置右(正面視左)側の開閉扉4は、図3に示すレーベルプリンタ11のインクカートリッジ12の入れ換え時に開閉するためのものであり、この開閉扉4を開けると、鉛直方向に配列された複数のカートリッジホルダ13を有するカートリッジ装着部14が露出するようになっている。
【0019】
パブリッシャ1のケース2の内部には、データ書き込み処理が行われていない複数枚(例えば50枚)の未使用のメディアMをスタック可能なメディア保管部としてのメディアスタッカ21と、複数枚(例えば50枚)の未使用のメディアMあるいは作成済みメディアMが保管されるメディア保管部としてのメディアスタッカ22とが保管されるメディアMの中心軸線が同一となるように上下に配置されている。メディアスタッカ21及びメディアスタッカ22は、それぞれ所定位置に対して着脱自在である。
【0020】
上側のメディアスタッカ21は、左右一対の円弧状の枠板24,25を備えており、これにより、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能な構成をなしている。メディアスタッカ21にメディアMを収容あるいは補充する作業は、開閉扉3を開けてメディアスタッカ21を取り出すことにより、簡単に行うことが可能となっている。
【0021】
下側のメディアスタッカ22も同一構造となっており、左右一対の円弧状の枠板27,28を備え、これによって、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能なスタッカが構成されている。
【0022】
これらのメディアスタッカ21及びメディアスタッカ22の後側には、メディア搬送機構31が配置されている。メディア搬送機構31は、本体フレーム30とシャーシ32の天板33との間に垂直に架け渡されている垂直ガイド軸35を有している。この垂直ガイド軸35に搬送アーム36が昇降及び旋回可能な状態で支持されている。搬送アーム36は、駆動モータ37によって垂直ガイド軸35に沿って昇降可能であるとともに、垂直ガイド軸35を中心に左右に旋回可能である。
【0023】
上下のスタッカ21,22及びメディア搬送機構31の側方の後方の部位には、上下に積層された2つのメディアドライブ41,41が配置され、これらメディアドライブ41,41の下側にレーベルプリンタ11のキャリッジ62(図4参照)が移動可能に配置されている。
メディアドライブ41は、メディアMへのデータ書き込み位置とメディアMの受け取り受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間で進退するように移動可能なメディアトレイ41aをそれぞれ有している。メディアドライブ41は、後退状態にあるメディアトレイ41a上のメディアMにデータの書き込み等を行う。
【0024】
また、レーベルプリンタ11は、メディアMのレーベル面へのレーベル印刷可能な印刷位置とメディアMの受け取り受け渡しを行うメディア受け渡し位置との間を移動可能なメディアトレイ45を有している。
【0025】
図3では、上下のメディアドライブ41のメディアトレイ41aが手前に引き出されてメディア受け渡し位置にある状態及び下側のレーベルプリンタ11のメディアトレイ45が手前側のメディア受け渡し位置にある状態が示されている。また、レーベルプリンタ11はインクジェットプリンタであり、インク供給機構60として各色(本実施形態ではブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの6色)のインクカートリッジ12が用いられ、これらのインクカートリッジ12がカートリッジ装着部14の各カートリッジホルダ13に前方から装着されている。
【0026】
ここで、メディアスタッカ21の左右一対の枠板24,25の間及びメディアスタッカ22の左右一対の枠板27,28の間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が昇降可能な隙間が形成されている。また、これら上下のメディアスタッカ21とメディアスタッカ22との間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が水平に旋回して、メディアスタッカ22の真上に位置できるように隙間が開いている。さらに、両メディアトレイ41aをメディアドライブ41に押し込むと、メディア搬送機構31の搬送アーム36を下降させて、メディア受け渡し位置にあるメディアトレイ45にアクセス可能となっている。
【0027】
メディア搬送機構31の搬送アーム36は、両メディアトレイ41aをデータ書き込み位置に位置させ、メディアトレイ45を奥側の印刷位置に位置させた状態で、メディアトレイ45の高さ位置よりもさらに下側まで下降可能となっている。そして、メディアトレイ45のメディア受け渡し位置の下方には、搬送アーム36がこの位置まで下降してリリースしたメディアMが通過するガイド穴であって、後述するメディアスタッカが装着されるガイド穴65(図2参照)が形成されている。
【0028】
引出機構7は、本体フレーム30の下側に、本体フレーム30から引き出して開いたり、収納して閉じたりすることが可能な引出トレイ70を有している。引出トレイ70には、スタッカ部71が下方に凹んで設けられている。引出トレイ70が収納位置(閉位置)にあるとき、スタッカ部71は、ガイド穴65の下方に位置し、スタッカ部71の中心部は、受け渡し位置にある両メディアトレイ41aとメディアトレイ45の中心軸線が同一となるように配置されている。このスタッカ部71は、ガイド穴65を介して投入されるメディアMを受け入れ、このメディアMを比較的少量(例えば5枚〜10枚程度)だけ収容する。スタッカ部71は、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収容可能となっている。
【0029】
収納状態にある引出トレイ70のスタッカ部71及びガイド穴65には、スタッカ部71よりもメディアMの収容量が多いメディアスタッカ72が着脱可能となっている(図3参照)。このメディアスタッカ72も、一対の円弧状の枠板73,74を備えており、これによって、メディアMを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で複数枚(例えば50枚)収容可能となっている。一対の円弧状の枠板73,74の間には、メディア搬送機構31の搬送アーム36が昇降可能な隙間が形成されている。また、一方の枠板74の上部には着脱時にユーザによって把持される取っ手75が設けられている。
【0030】
従って、メディアスタッカ72を取り付けた状態とすれば、下側のメディアスタッカ22から未使用のメディアMを取り出し、メディアドライブ41及びレーベルプリンタ11でデータ記録及び印刷を行った後に、メディアスタッカ72に収容することができる。
また、例えば、上側のメディアスタッカ21及び下側のメディアスタッカ22にそれぞれの最大収容枚数(50枚+50枚)の未使用のメディアMを装填し、下側のメディアスタッカ22の全枚数(50枚)のメディアMを順次処理してメディアスタッカ72に収容し、次に、上側のメディアスタッカ21の全枚数(50枚)のメディアMを順次処理して、空となった下側のメディアスタッカ22に収容する。このようにして、上側のメディアスタッカ21及び下側のメディアスタッカ22の最大収容枚数(50枚+50枚)のメディアMを一度に処理する(バッチ処理モード)。
【0031】
また、メディアスタッカ72を取り外した状態とすれば、上側のメディアスタッカ21あるいは下側のメディアスタッカ22から未使用のメディアMを取り出し、メディアドライブ41及びレーベルプリンタ11でデータ記録及び印刷を行った後に、収納状態にある引出トレイ70のスタッカ部71に収容することができる。
【0032】
これにより、その後、引出トレイ70を引き出すことでスタッカ部71から処理が完了したメディアMを取り出すことができる。つまり、メディアMへの処理中であっても、開閉扉3を閉じたまま、処理が完了したメディアMから順に一枚ずつあるいは複数枚ずつ取り出すことができる(外部排出モード)。
【0033】
ここで、メディア搬送機構31の搬送アーム36の昇降及び左右への旋回の組み合わせ動作によって、メディアMは、メディアスタッカ21,22、引出トレイ70のスタッカ部71(またはメディアスタッカ72)、各メディアドライブ41のメディアトレイ41a及びレーベルプリンタ11のメディアトレイ45間で適宜搬送される。
【0034】
図4及び図5に示すように、レーベルプリンタ11はインク吐出用のノズル(図示省略)を備えたインクジェットヘッド61を有するキャリッジ62を備えており、このキャリッジ62は、キャリッジモータ68の駆動力で走行するタイミングベルト67により、キャリッジガイド軸66に沿って水平方向に往復移動する。
【0035】
レーベルプリンタ11は、インクカートリッジ12が装着されるカートリッジ装着部14を有するインク供給機構60を備えている。このインク供給機構60は、縦型構造を有しており、パブリッシャ1の本体フレーム30上に立設されて鉛直方向に配設されている。このインク供給機構60には、可撓性を有するインク供給チューブ63の一端が接続されており、このインク供給チューブ63の他端は、キャリッジ62に接続されている。
【0036】
そして、インク供給機構60に装着されるインクカートリッジ12のインクは、インク供給チューブ63を介してキャリッジ62に供給され、このキャリッジ62に設けられたダンパユニット及び背圧調整ユニット(図示省略)を経てインクジェットヘッド61に供給されインクノズル(図示省略)から吐出される。
なお、インク供給機構60には、その上部に主部を配置するように加圧機構64が設けられており、この加圧機構64は、圧縮空気を送り出してインクカートリッジ12内を加圧し、インクカートリッジ12内のインクパックに貯留しているインクを送り出す。
【0037】
また、キャリッジ62のホームポジション(図4に示す位置)における下方側には、ヘッドメンテナンス機構81が設けられている。
このヘッドメンテナンス機構81は、ホームポジションに配置されたキャリッジ62の下面に露出するインクジェットヘッド61のインクノズルを覆うヘッドキャップ82と、インクジェットヘッド61のヘッドクリーニング動作やインク充填動作によってヘッドキャップ82に排出されたインクを吸引する廃インク吸引ポンプ83とを備えている。
【0038】
そして、このヘッドメンテナンス機構81の廃インク吸引ポンプ83によって吸引されたインクは、チューブ84を介して、廃インク吸収タンク85へ送り込まれる。
この廃インク吸収タンク85は、ケース86内に図示しない吸収材を配設したもので、その上面は、複数の通気孔87を有するカバー88によって覆われている。
なお、ヘッドメンテナンス機構81の下方には、廃インク吸収タンク85の一部である廃インク受け部89が設けられ、ヘッドメンテナンス機構81から滴下したインクを受け止め、吸収材によって吸収するようになっている。
【0039】
図5に示すように、キャリッジ62に搭載されているインクジェットヘッド61は、そのノズル面が下向きとされており、インクジェットヘッド61の下側位置を、前後方向に水平にメディアトレイ45が往復移動可能となっている。メディアトレイ45は、その右側の端が、前後方向に水平に延びるガイド軸302によって支持され、その左側の端が、スライド可能な状態で、前後方向に水平に延びるガイドレール303によって支持されている。このメディアトレイ45の駆動機構も、前後方向に水平に架け渡したタイミングベルト304と、これを駆動するためのトレイモータ305とを備えた構成となっている。
メディアトレイ45は、矩形の板の上面に、メディアMの外周端面と当接してメディアMの移動を規制するための円形の低い凸部45aを備えており、この凸部45a内が収容部46として形成されている。
【0040】
図6に示すように、メディアMは、円板形状に形成された透明なポリカーボネイト製の基板90の中心に円形状のチャッキング用の中心孔Maが形成されたものであり、中心孔Maが、搬送アーム36及びメディアトレイ45に設けられた保持機構(図示省略)によって保持される。
このメディアMは、一方の面(図6における表面)がレーベル面として形成されており、このレーベル面には、レーベルプリンタ11によって印刷可能なインク受容層91が円環状に形成されている。このインク受容層91は、例えば、白色であり、このインク受容層91が形成された領域が、インクジェットヘッド61から吐出されるインクが定着可能な印刷可能領域Xとなっている。
【0041】
また、メディアMは、他方の面(図6における裏面側)がデータ記録面とされており、このデータ記録面には、メディアドライブ41によってデータが記録される。
【0042】
図7に示すように、印刷処理部であるインクジェットヘッド61を支持するキャリッジ62には、例えば、反射型の光センサからなる位置検出センサ62aが設けられている。この位置検出センサ62aは、メディアトレイ45へ向かって光を照射し、その反射光を検出することにより、メディアトレイ45の収容部46に収容されているメディアMのインク受容層91からなる印刷可能領域Xの位置を検出する。
【0043】
図8に示すように、レーベルプリンタ11を制御するパブリッシャ1の制御部100には、ホストコンピュータ101が接続され、このホストコンピュータ101から印刷データを含む印刷指令が制御部100の演算部102に送信される。また、制御部100の演算部102には、位置検出センサ62aが接続されており、この位置検出センサ62aからの位置情報として検出信号が送信されるようになっている。
【0044】
制御部100は、指令部103を有しており、この指令部103から、キャリッジモータ68及びトレイモータ305に駆動指令が送信される。また、指令部103には、インク供給機構60及びインクジェットヘッド61などからなる印刷処理部104が接続されており、この印刷処理部104にインクの吐出指令が送信される。
【0045】
次に、制御部100によるレーベルプリンタ11でのメディアMのレーベル面への印刷処理の制御について説明する。
図9は印刷処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【0046】
レーベルプリンタ11のメディアトレイ45が、その収容部46に、搬送アーム36からメディアMを受け取ると(ステップS01)、メディアMのインク受容層91からなる印刷可能領域Xの位置検出処理が開始される。
【0047】
この印刷可能領域位置検出処理では、制御部100の指令部103からキャリッジモータ68及びトレイモータ305に駆動指令が送信され、メディアトレイ45が移動されるとともに、キャリッジ62が往復移動される。そして、位置検出センサ62aからの検出信号によって印刷可能領域Xの周縁部を検出する。
例えば、図10に示すように、位置検出センサ62aからの検出信号から、メディアMの印刷可能領域Xの内周縁Xiにおける4点の内径検出ポイントa,b,c,d及び外周縁Xoにおける4点の外径検出ポイントA,B,C,Dの位置を検出する。
【0048】
ここで、内径検出ポイントa,b,c,dは、例えば、メディアトレイ45の移動方向の隣り合う各ポイント間(a,c間、b,d間)が印刷可能領域Xの内径(直径)dxの2/3となる点とし、また、外径検出ポイントA,B,C,Dは、例えば、メディアトレイ45の移動方向の隣り合う各ポイント間(A,C間、B,D間)が印刷可能領域Xの外径(直径)Dxの2/3となる点とし、A,Bが検出できる位置でメディアトレイ45の移動を停止し、キャリッジ62を移動してA及びBの位置を検出する。その後、再びメディアトレイ45を移動させてa,bが検出できる位置でメディアトレイ45の移動を停止するとともにキャリッジ62を移動してa及びbの位置を検出する。同様に、c,dとC,Dを検出する。
【0049】
次に、制御部100の演算部102によってメディアMのインク受容層91からなる印刷可能領域Xの位置演算処理が行われる(ステップS03)。
具体的には、演算部102が、内径検出ポイントa,b,c,d及び外径検出ポイントA,B,C,Dの位置情報に基づいて、メディアMの印刷可能領域Xの内径及び外径を算出するとともに、印刷可能領域Xの中心位置を割り出す。
【0050】
さらに、演算部102は、内径、外径及び中心位置を算出した印刷可能領域Xに対して、コンピュータ101から送信された印刷データのイメージを合わせるマッチング処理を行う(ステップS04)。
具体的には、印刷データとして送信されたイメージを、実際のメディアMの印刷可能領域Xに対して中心位置を一致させ、さらに、内周側及び外周側に、指定された余白Yi,Yoが形成されるように、縮小、拡大させたり、マスク範囲を変更する。
【0051】
その後、指令部103からキャリッジモータ68、トレイモータ305に駆動指令が送信されるとともにインク吐出部104に吐出指令が送信され、マッチング処理された印刷データでメディアMに印刷処理が行われる(ステップS05)。
これにより、メディアMには、図11に示すように、インク受容層91からなる印刷可能領域Xに対して、印刷可能領域Xの中心位置を中心とし、内周側及び外周側に指定された余白Yi,Yoをあけて印刷が施される(図11中斜線Z部分)。
印刷処理が終了すると、メディアトレイ45が搬送アーム36との受け渡し位置へ移動され、印刷が施されたメディアMが搬送アーム36によって搬送される(ステップS06)。
【0052】
ここで、図12に示すように、メディアMは、その基板90の中心に対して、インク受容層91からなる印刷可能領域Xが偏心している場合がある。図12では、印刷可能領域Xの中心線をXc、基板90の中心線を90cで示している。
そして、このように、基板90の中心に対して印刷可能領域Xが偏心したメディアMに、メディアMの中心に合わせて印刷すると、図13に示すように、印刷可能領域Xにおける外周側及び内周側での余白Yi,Yoが周方向に沿って不均一となり、印刷範囲Zにずれが生じたように見えてしまい、見た目が悪くなってしまう。
【0053】
これに対して、上記実施形態では、印刷可能領域Xに対して、印刷可能領域Xの中心位置を中心とし、内周側及び外周側に指定された余白Yi,Yoをあけて印刷を行うため、基板90の中心に対して印刷可能領域Xが偏心していたとしても、図14に示すように、印刷可能領域Xにおける外周側及び内周側での余白Yi,Yoが周方向に沿って均一となり、印刷可能領域Xに対する印刷範囲Zのずれがなくなり、印刷後の外観が良好となる。
【0054】
このように、本実施形態によれば、メディアMにおける円環状の印刷可能領域Xの位置を検出し、印刷可能領域Xに対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷データを補正し、補正した印刷データでメディアMに印刷するため、メディアMにおける実際の印刷可能領域Xに対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷することができる。
これにより、メディアMの基板90の中心に対して印刷可能領域Xが偏心していたとしても、印刷可能領域Xに対する印刷範囲Zのずれをなくすことができ、印刷後の外観を良好にすることができる。
【0055】
特に、印刷可能領域Xに対して、印刷データのイメージの中心位置を一致させ、さらに、内周側及び外周側に指定された余白Yi,Yoをあけて印刷を行うので、印刷可能領域Xにおける外周側及び内周側での余白Yi,Yoを周方向に沿って均一化することができる。
【0056】
また、位置検出センサ62aが検出したメディアMの印刷可能領域Xの内周縁Xi及び外周縁Xoにおける複数個所の位置情報に基づいて印刷データを補正するので、印刷可能領域Xの位置を精度良く割り出すことができる。
【0057】
そして、本実施形態のパブリッシャ1によれば、印刷可能領域Xに対する印刷範囲Zのずれをなくし、良好な外観でメディアMへ印刷を行うことができるレーベルプリンタ11を備えているので、高品質にメディアMへ処理を施すことができる。
【0058】
なお、メディアMの位置を検出する位置検出センサ62aとしては、反射型に限らず、メディアMを透過した光を検出する透過型であっても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、円板状のメディアMへのデータの書き込み処理およびレーベル面への印刷処理を行うパブリッシャ1におけるレーベルプリンタ11を例示して説明したが、用紙サイズのトレイにメディアMを保持させて印刷を行うことが可能な用紙用のプリンタにも適用可能である。
【0060】
なお、用いられるメディアは、上記実施形態のメディアMのような円板状のメディアに限定されるものではなく、矩形状等の多角形状や楕円状のメディアにも適用可能であり、また、その記録方式も、光記録方式、光磁気記録方式等、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るメディア処理装置(パブリッシャ)の外観斜視図である。
【図2】図1のパブリッシャのケースを外した状態の前方側の斜視図である。
【図3】図1のパブリッシャのケースを外した状態の後方側の斜視図である。
【図4】図1のパブリッシャに設置されたプリンタ部分の斜視図である。
【図5】図4のプリンタ部分におけるトレイ駆動機構を示す斜視図である。
【図6】図1のパブリッシャに用いられるメディアを示す平面図である。
【図7】図5のメディアトレイとキャリッジの構造を示す概略断面図である。
【図8】図1のパブリッシャのレーベルプリンタを制御する制御系の概略ブロック図である。
【図9】図1のパブリッシャの印刷処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】メディアに対する位置検出を示すメディアの平面図である。
【図11】印刷が施されたメディアの平面図である。
【図12】印刷可能領域が偏心したメディアの平面図である。
【図13】補正を行わない場合における印刷可能領域が偏心したメディアへの印刷状態を示すメディアの平面図である。
【図14】補正を行った場合における印刷可能領域が偏心したメディアへの印刷状態を示すメディアの平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1…パブリッシャ(メディア処理装置)、11…レーベルプリンタ(印刷装置)、31…メディア搬送機構、36…搬送アーム、45…メディアトレイ(トレイ)、46…収容部、62a…位置検出センサ、100…制御部、104…印刷処理部、M…メディア、X…印刷可能領域、Xi…内周縁、Xo…外周縁、Yi,Yo…余白。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のメディアへの印刷が可能な印刷装置の制御方法であって、
前記メディアにおける印刷可能領域の位置を検出する位置検出ステップと、
前記印刷可能領域に対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷データを補正するマッチングステップと、
補正した印刷データで前記メディアに印刷する印刷ステップと、
を行うことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置の制御方法において、
前記印刷可能領域が円環状に設けられており、
検出した前記印刷可能領域の位置情報に基づいて、前記メディアの印刷可能領域の内径及び外径を算出する位置演算ステップを含み、
前記マッチングステップでは、前記印刷可能領域の内周側及び外周側に、指定された余白が形成されるように前記印刷データを補正することを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置の制御方法において、
前記位置検出ステップは、前記メディアにおける前記印刷可能領域の内周縁及び外周縁における複数個所の位置を検出することを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項4】
板状のメディアへ印刷処理を行う印刷処理部と、
前記メディアの印刷可能領域の位置を検出する位置検出センサと、
前記位置検出センサからの位置情報に基づいて前記印刷可能領域に対して印刷データのイメージの中心位置が一致するように印刷データを補正して、前記印刷処理部による前記メディアへの印刷処理を行わせる制御部と、を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記印刷可能領域が円環状に設けられており、
前記制御部は、前記位置検出センサからの位置情報に基づいて、前記メディアの前記印刷可能領域の内径及び外径を算出し、前記印刷可能領域の内周側及び外周側に指定された余白が形成されるように前記印刷データを補正することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記位置検出センサが検出した前記メディアの前記印刷可能領域の内周縁及び外周縁における複数個所の位置情報に基づいて前記印刷データを補正することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
前記メディアに対して情報処理を行うメディア処理装置において、
請求項4から6の何れか一項に記載の印刷装置を備えていることを特徴とするメディア処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−196290(P2009−196290A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42491(P2008−42491)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】