説明

印刷装置の搬送機構

【課題】記録動作が行われる直前の記録紙の浮き上がりを押さえて画質を向上させるとともに、インク吐出時に発生するインクミストによって生じる吐出不良や印刷物の汚染等の弊害を回避する。
【解決手段】インクを吐出口から吐出させる複数のインクヘッド110aと、印刷用紙の搬送方向におけるインクヘッド110a上流側に設けられ、搬送経路上面に押しつけられて回転する上流側ガイドローラー510aと、搬送方向におけるインクヘッド下流側に設けられ、搬送経路上面から所定距離離隔されて回転可能に設けられた下流側ガイドローラー510bとを備え、上流側ガイドローラー510aの径は、下流側ガイドローラー510bの径よりも大きく構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路上を搬送される印刷用紙に、インクを吐出して前記印刷用紙上に画像を形成する印刷装置の搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式としては、印刷用紙を搬送方向に送る副走査のみで記録するフルラインタイプがあり、このフルラインタイプでは、印刷用紙に対して一括して1行分の記録を連続的に行う。
【0003】
ところで、印刷用紙の記録面は、記録紙の吸湿等により浮き上がる場合があり、記録紙とインクヘッドとが接触し、インクヘッドの汚れ、故障等の問題が発生する。このような用紙の浮き上がりを防止するために、従来では、例えば特許文献1に開示されているような、インク上流側、下流側に紙押さえローラーを配置する構成が採用されている。これにより、インクヘッドの上流側及び下流側で、記録用紙押さえ付けて、浮き上がりを防止している。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、インクヘッドの上流、下流にある紙押さえローラーの支持機構をそれぞれ設けているため、すべてのローラーが均等な圧力でプラテンベルトに接触させることは困難であった。また、通常、インクヘッドよりインクを吐出する際に主液滴以外のミストが発生する。このミストは、紙搬送プラテンベルトが引き起こす風により舞い上がり、インクヘッド下流にある紙押さえローラーに集中的に付着して溜まり、記録用紙を汚染してしまう問題があった。
【特許文献1】特開2006−137027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、記録動作が行われる直前の記録紙の浮き上がりを押さえて画質を向上させるとともに、インク吐出時に発生するインクミストが、インクヘッド近傍に集中して溜まることによって生じる吐出不良や印刷物の汚染等の弊害を回避できる印刷装置の搬送機構を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、搬送経路上を搬送される印刷用紙に、インクを吐出して印刷用紙上に画像を形成する印刷装置の搬送機構であって、インクを吐出口から吐出させる複数のインクヘッドと、印刷用紙の搬送方向におけるインクヘッド上流側に設けられ、搬送経路上面に押しつけられて回転する上流側ガイドローラーと、搬送方向におけるインクヘッド下流側に設けられ、搬送経路上面から所定距離離隔されて回転可能に設けられた下流側ガイドローラーとを備え、上流側ガイドローラーの径は、下流側ガイドローラーの径よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、各インクヘッドの上流側ガイドローラーは、搬送経路上面に押しつけられて回転しているため、印刷用紙が搬送経路上面に搬送されてきた場合には、印刷用紙をガイドローラーと搬送経路上面とで挟持することにより、インクヘッドが印刷用紙にインクを吐出する直前に、印刷用紙の浮きを抑制することができ、画像形成部と用紙の浮きとの接触を防止して、記録ヘッドなどを保護することができる。
【0008】
また、下流側ガイドローラーの径が、上流側ガイドローラーの径よりも小さく、用紙搬送経路上面と接しない径であることから、インクヘッドより生じたインクミストの気流経路を確保し、ガイドローラーによる回転によってインクミストを流動させることができ、印刷用紙及びプラテンベルトへのミスト付着を防止することができる。
【0009】
上記発明において、上流側ガイドローラー及び下流側ガイドローラーとして、上流側ガイドローラー及び下流側ガイドローラーを同一の回転軸上に連結して配置した段付ガイドローラーを有することが好ましい。この場合には、同一軸上の上流側ガイドローラーにおいては、印刷用紙に対する押圧が一定となり、印刷画面全体の画質を向上させることができる。また、下流側ガイドローラーでは、同一の回転軸上に連結して配置された段付ガイドローラーに備えられている上流側ガイドローラーを駆動させる動力によって、駆動させることができるため、独自の駆動機構を要せず、製作点数の減少、コスト削減をすることができる。
【0010】
上記発明において、インクヘッドは、搬送方向と直交する方向に、複数列に配置され、これら複数列内において各列に含まれるインクヘッドは、隣接する他の列に含まれるインクヘッドと搬送方向に重ならない部分が生じるように千鳥状に配置され、上流側ガイドローラー及び下流側ガイドローラーは、各インクヘッドの配置に対応させた、千鳥状の配置となっていることが好ましい。
【0011】
この場合には、インクヘッドと隣接する他の列のインクヘッドが、搬送方向において一定以上の空間を生じるように配置されているので、印刷時に発生するインクミストの気流経路であるインクヘッドの下流側に一定の空間を確保することができる。また、千鳥状の配置によって画像形成部全体にインクヘッド下流側の一定空間を均一の構造で保つことが可能となることから、画面形成部全体のガイドローラーに対するミスト付着による汚染を防止することができる。さらに、上流側ガイドローラーにおいても、画像形成部全体に対して千鳥状に配置されているため、印刷用紙全体で浮き防止を可能とすることができる。
【0012】
上記発明において、インクヘッドの各列は、搬送方向に所定間隔をおいて配置され、列間に主方向流路を形成し、上流側ガイドローラー及び下流側ガイドローラーとは、主方向流路内に配置されていることが好ましい。この場合には、インクヘッドの列間の主方向流路に形成された空間を利用して上流側及び下流側ガイドローラーを取り付けることができ、ミストの気流経路を確保しつつ、部品の取合いを適正化することができ、装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、この発明によれば、記録動作が行われる直前の記録紙の浮き上がりを押さえて画質を向上させるとともに、インク吐出時に発生するインクミストによって生じる吐出不良や印刷物の汚染等の弊害を回避する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(印刷装置の全体構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)は、本実施形態に係る印刷装置100の印刷用紙搬送経路の概要を示す図である。本実施形態では、印刷装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の記録用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成するインクジェット方式のラインカラープリンタを例に説明する。
【0015】
図1に示すように印刷装置100は、環状の搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する装置であり、搬送経路は、用紙を供給する給紙系搬送路FRと、この給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て排紙経路DRへ至る通常経路CRと、通常経路CRに分岐接続された反転経路SRとから概略構成されてる。
【0016】
給紙系搬送路FRにおいて、印刷用紙の供給を行う給紙機構としては、筐体側面の外部に配設されたサイド給紙台120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(130a、130b、130c、130d)とが備えられている。また、印刷済みの印刷用紙を排出する排紙機構として排紙口140を備えている。
【0017】
サイド給紙台120、給紙トレイ130のいずれかの給紙機構から給紙された印刷用紙は、ローラー等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路FRに沿って搬送され、印刷用紙の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。レジスト部Rのさらに搬送方向側には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙は、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルトであるプラテンベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各印字ヘッドから吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。
【0018】
印刷済みの印刷用紙は、さらに、ローラー等の駆動機構によって通常経路CR上を搬送される。印刷用紙の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合は、そのまま排紙経路DRを経て、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷用紙が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0019】
一方、印刷用紙の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙経路DR側に導かれずに、さらに筐体内を搬送され、反転経路SRに送出される。このため、印刷装置100は、裏面印刷用に搬送路を切り替えるための切替機構170が設けられており、切替機構170によって排出経路へ送出されなかった印刷用紙は、反転経路SRに引き込まれる。
【0020】
この反転経路SRでは、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復させてることにより用紙の表裏を反転させる、いわゆるスイッチバックを行う。そして、ローラー等の駆動機構によって、切替機構172を経由して通常経路CRに戻され、レジスト部Rを経て再給紙されて、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行われる。その後、裏面の印刷が行われ、両面に画像が形成された印刷用紙は、排紙経路DRを通じて排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。
【0021】
なお、本実施形態では、両面印刷時におけるスイッチバックを、排紙台150内に設けられた空間を利用して行うようにしている。排紙台150内に設けられた空間は、スイッチバック時に印刷用紙が外部から取り出せないように覆われた構成となっている。これにより、利用者が誤って反転動作中の印刷用紙を引き抜いてしまうことを防ぐことができる。また、排紙台150は、本来印刷装置100に備えられているものであり、排紙台150内の空間を利用してスイッチバックを行うことにより、印刷装置100内に、別途スイッチバック用の空間を設ける必要がなくなる。したがって、筐体のサイズが増大してしまうことを防ぐことができる。さらに、排紙経路と反転経路とを共用しないため、スイッチバック処理と他の用紙の排紙とを並行して行うことができる。
【0022】
印刷装置100では、給紙された印刷用紙の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rには、両面印刷時に片面印刷済みの印刷用紙も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷用紙の搬送経路と、裏面印刷の用紙が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流地点が形成される。そして、レジスト部Rは、給紙系搬送路FRと通常経路CRとの合流点近傍において、用紙の送り出しを行う。
【0023】
なお、本実施形態では、上記合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙系搬送路FRとし、それ以外の経路を搬送経路とする。この搬送経路は環状をなし、上述したように通常経路CRと反転経路SRとが含まれる。図1(b)は、給紙系搬送路FRと通常経路CRと反転経路SRとを模式的に示した図である。なお、同図では、駆動部を構成するローラーの個数は適宜省略している。
【0024】
給紙系搬送路FRには、サイド給紙台120からの給紙を行うためのサイド給紙駆動部220、給紙トレイ130(130a、130b、130c、130d)からの給紙を行うためのトレイ1駆動部230a、トレイ2駆動部230b…が備えられている。これらによって、レジスト部Rに用紙を送り出す給紙手段が構成されている。
【0025】
さらに、上述した給紙系搬送路FRにおけるいずれの駆動部(トレイ1駆動部230a、トレイ2駆動部230b…)も複数のローラー等で構成された駆動機構を備え、給紙台又は給紙トレイに積載された印刷用紙を1枚ずつ取り込んで、レジスト部R方向に搬送する。各駆動部は独立に駆動することが可能であり、給紙を行う給紙機構に応じて必要な駆動部の動作が行われる。
【0026】
また、給紙系搬送路FRには、搬送センサが複数個配置され、給紙系搬送路FRにおける搬送ジャムを検出できるようになっている。すなわち、各搬送センサは、印刷用紙の有無又は印刷用紙の先端を検出するセンサであり、例えば、搬送経路上に複数の搬送センサを適当な間隔で並べ、給紙側に設けられた搬送センサが印刷用紙を検出してから所定時間内に搬送方向側の搬送センサが印刷用紙を検出しない場合に、搬送ジャムが発生したと判断することができる。
【0027】
これら搬送センサのうち、用紙の送り出しを行うレジスト部R手前のレジストセンサは、搬送中の用紙サイズを計測し、例えば、用紙の通過速度及び通過時間に基づいて、通過中の用紙のサイズを測定したり、サイド給紙駆動部220、トレイ1駆動部230a等を駆動させてから所定時間内に搬送センサが印刷用紙を検出しない場合に、搬送ジャム(給紙エラー)が発生したと判断することができる。
【0028】
通常経路CRは、循環搬送路の一部を構成し、用紙を供給する給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て、排紙経路DRへ至る経路であり、この通常経路CR上において用紙上面に画像が形成される。この通常経路CRには、レジスト部Rに印刷用紙を導くレジスト駆動部240、ヘッドユニット110の対向面に設けられたプラテンベルト160を無端移動させるために駆動するベルト駆動部250、搬送方向側に順に配置される第1上面搬送駆動部260及び第2上面搬送駆動部265、排紙口140に印刷済みの用紙を導く上面排出駆動部270、裏面印刷用に印刷用紙を反転経路SRに引き込む駆動手段が備えられている。いずれの駆動部も1又は複数のローラー等で構成された駆動機構を備え、搬送経路に沿って印刷用紙を1枚ずつ搬送する。各駆動部は独立に駆動することが可能であり、印刷用紙の搬送状況に応じて必要な駆動部の動作が行われる。
【0029】
さらに、通常経路CRにも搬送センサが複数個配置され、通常経路CRにおける搬送ジャムを検出できるようになっている。さらに、レジスト部Rにおいても適切に印刷用紙が搬送されていることを確認できるようになっている。通常経路CRでは、駆動部対応に搬送センサが設けられており、通常経路CRのどの駆動部で搬送ジャムが発生したかを特定することができるようになっている。
【0030】
反転経路SRは、通常経路CRに分岐接続され、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復(スイッチバック)させて通常経路CRに戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路及び搬送機構であり、この反転経路SRには、用紙を反転させて合流地点に導く反転駆動部281が備えられている。そして、反転経路SRでは、通常経路CRと異なる速度で搬送が可能であり、通常経路CRから用紙を引き継ぐ際に、加速・減速させたり、スイッチバックの際の停止時間を延長したり短縮したりすることができる。
【0031】
そして、本実施形態においては、ある印刷用紙を給紙した後、その印刷用紙に印刷が施され排紙されるのを待って次の印刷用紙を給紙するのではなく、スケジューリングにより、先行する印刷用紙が排紙される前に、後続の印刷用紙を給紙して、所定の間隔で連続的に印刷することができるようになっている。したがって、両面印刷時の通常のスケジューリングでは、表面の用紙を給紙する際に、反転経路SRから戻ってきた用紙が挿入される位置を確保するように、予めスペースを確保しておく。これにより、本装置では、表面の印刷と裏面の印刷とを並行させることができ、片面印刷時に対して1/2の生産性を確保することができる。
【0032】
前記プラテンベルト160は、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラー161及び従動ローラー162に掛け渡されており、図1中時計回り方向に回転移動する。また、プラテンベルト160の上面には、そのベルト移動方向に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つのインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成するヘッドユニット110が対向配置されている。
【0033】
さらに、図1に示すように、印刷装置100には、演算処理部330が備えられている。この演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールであり、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理部330には、操作パネル340が接続されており、この操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0034】
(画像形成経路における搬送機構)
図2は、画像形成が行われる画像形成経路を側方から示す説明図であり、図3(a)は、画像形経路の上方に配置されるヘッドホルダー500を下方から示す説明図であり、図3(b)は、ヘッドホルダー500の側面を拡大して示す説明図である。また、図4(a)は、ヘッドホルダー500を上方から示す斜視図であり、図4(b)は、ヘッドホルダー500下面を模式的に示す説明図である。
【0035】
詳述すると、用紙の通常経路CRには、プラテンベルト160、駆動ローラー161、従動ローラー162等から構成される画像形成経路CR1が含まれており、この画像形成経路CR1の上方には、ヘッドホルダー500が設けられている。このヘッドホルダー500は、ヘッドホルダー面500aを底面に有する函体であり、インクヘッド110aを保持して固定するとともに、インクヘッド110aからインクを吐出させるための他の機能部分をユニット化して収納する。
【0036】
また、このヘッドホルダー500の底面であるヘッドホルダー面500aが、搬送経路に対して平行となるように対向配置される。このヘッドホルダー面500aには、ヘッドユニット110を構成する複数のインクヘッド110aそれぞれの水平断面と同形状の取付開口部500bが複数配列され、複数のインクヘッド110aは、取付開口部500bにそれぞれ挿通されて、その吐出口をヘッドホルダー面500aから突出させている。
【0037】
インクヘッド110aは、図4(b)に示すように、搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に、複数列にわたって配置され、これら複数列内において、各列に含まれるインクヘッド110aは、隣接する他の列に含まれる他のインクヘッド110aと、その両端部が搬送方向にオーバーラップされるように千鳥状に配置され、各インクヘッドの中央部分は、搬送方向に重ならない部分が生じるようになっている。換言すると、インクヘッド110aは、主走査方向に、列L1,L2,L3…が複数形成され、各列L1,L2,L3…は、主走査方向に、互いに重ならない部分b1が生じるように形成され、さらに、複数列L1,L2,L3…は、副走査方向において、隣接する他の複数列と重なる部分b2が生じるように千鳥状に配置されている。
【0038】
また、これらインクヘッド各列L1,L2,L3…は、搬送方向に所定間隔をおいて配置され、列間に主走査流路111が形成されているとともに、同列内において隣接する各インクヘッドは、所定間隔おいて配置されてインクヘッド間に副走査流路112を形成している。そして、これら主走査流路111と副走査流路112は、相互に連通して網目状のミスト排出路を形成する。なお、図3(b)に示すように、本実施形態において、インクヘッド110aのヘッドホルダー面500aからの突出長さHは、主方向流路の幅Lよりも大きい。
【0039】
また、各主方向流路111には、段付ガイドローラー510が設けられている。この段付ガイドローラー510は、異なる径のガイドローラーを連結して一本のローラーとして形成したものであり、例えば、金属製のロッドを削り出すことにより成型される。具体的に、この段付ガイドローラー510は、径の大きい上流側ガイドローラー510aと、上流側ガイドローラー510aよりも径の小さい下流側ガイドローラー510bとを同一の回転軸上に交互に連結して配置した構成となっている。上流側ガイドローラー510aは、搬送方向において、各インクヘッド110aの上流側に設けられ、下方に向けて付勢され、搬送経路上面に押しつけられて回転する。一方、下流側ガイドローラー510bは、搬送方向において、各インクヘッド110aの下流側に設けられ、搬送経路上面から所定距離離隔されて回転可能に軸支されている。
【0040】
そして、各インクヘッドの千鳥配置に対応させて、上流側ガイドローラー510a及び下流側ガイドローラー510bも千鳥状の配置となっている。また、段付ガイドローラー510が主方向流路111内に配置されていることから、これら上流側ガイドローラー510a及び下流側ガイドローラー510bも、主方向流路111内に交互に配置されることとなる。なお、本実施形態において、段付ガイドローラー510は、ヘッドホルダー面500aの両側に配置された軸受部520により、回転可能に軸支され、ヘッドホルダー500と一体構造となっている。
【0041】
次いで、画像形成経路CR1における用紙搬送機構について説明する。図5は、本実施形態に係る画像形成経路CR1の用紙搬送機構を一部切り欠いて示す上面図である。図5に示すように、画像形成経路CR1には、プラテンベルト160と、駆動ローラー161と、従動ローラー162と、プラテンプレート620とが含まれている。
【0042】
プラテンベルト160は、印刷用紙を吸着させるベルト穴165を多数有するとともに、搬送経路中のインクヘッド110aと対向する範囲において摺動して、印刷用紙を搬送する無端状のベルト部材である。具体的には、このプラテンベルト160は、搬送方向に直交させて配置された一対の駆動ローラー161及び従動ローラー162間に掛け回されて、搬送方向に周回される。
【0043】
プラテンプレート620は、プラテンベルト160の上面を、インクヘッド110aと対向する位置において、プラテンベルト160を摺動可能に支持するとともに、ベルト穴165が通過する箇所に貫通された吸引穴622を多数有する板状の部材である。なお、このプラテンプレート620の下方には、吸引穴622及びベルト穴165を通じて、プラテンプレート620上面の印刷用紙を吸着するための負圧を発生させる吸引手段であるサクションファンが備えられている。
【0044】
また、プラテンプレート620上面の吸引穴622は、プラテンプレート620の上面側において拡開されることによって、プラテンプレート620上面には、吸引穴622に連通する凹部621が多数画成されている。本実施形態では、この凹部621は、隣接する他の凹部と相互に独立して画成されることにより、プレート上面において分断された微小空間を形成している。これら微小空間は、いわゆる千鳥配置となっており、搬送方向と垂直な方向においてその範囲が一致しないようになっている。なお、この範囲が一致しないようにするために、本実施形態では、千鳥配置を採用したが、例えば、凹部の面積や位置などを交互に変化させるようにしてもよい。
【0045】
(ヘッドホルダー面によるミスト付着防止)
本実施形態では、上述したヘッドホルダー面500aにより、インク吐出時に発生したミストが他の機能部分に付着するのを防止している。図6〜図8は、ヘッドホルダー面によるミスト付着防止の説明図である。
【0046】
上述したように、本実施形態において、インクヘッド110aは、ヘッドホルダー500のヘッドホルダー面500aで保持され、インクヘッド110a間はヘッドホルダー面500aで覆われており、インクヘッド間や装置内にミストが吹き込み、他の機能部分にミストが付着するのを防止している。
【0047】
そして、特に、本実施形態では、インクヘッド110aのヘッドホルダー面500aからの突出長さHは、主方向流路の幅Lよりも大きく設定している。図6は、ヘッドホルダー面500aの高さを変えた場合の、インクヘッド周りに発生する気流の状態を比較する説明図である。
【0048】
図6(a)に示すように、インクヘッドの突出長さh1を、主方向流路の幅Lよりも小さく設定した場合には、ヘッドホルダー面500aと、前後のインクヘッド側面と、プラテンベルト160とにより囲まれた空間が狭くなる。このように狭い空間内において巻き上げられたミストは、段付ガイドローラー510により巻き上げられるが、その巻き上げられた渦の回転半径が小さいため、渦の粘性抵抗により気流の減衰が著しく、インクヘッド周辺や、近傍のヘッドホルダー面500aに付着しやすくなる。これに対し、本実施形態では、図6(b)に示すように、インクヘッドの突出長さh1を、主方向流路の幅Lよりも大きく設定していることから、上記空間が広くなり、段付ガイドローラー510に巻き上げられたミストの渦の回転半径が大きくなり、ミストが気流に乗って拡散され、インクヘッド近傍に集中して溜まるのを低減することができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、ヘッドホルダー面500aには、千鳥は位置されたインクヘッド110aにより、網目状のミスト排出路が形成されている。図7は、ヘッドホルダー面500aの周囲で発生したミスト気流を示す説明図であり、(a)は、ヘッドホルダー500の下面を示す平面図であり、(b)は、インクヘッド110a周囲のミスト気流を示す側面図である。
【0050】
図7(a)に示すように、インクヘッド110aの各列は、搬送方向に所定間隔をおいて配置され、列間に主方向流路111を形成し、同列内では、所定間隔おいて配置されてインクヘッド間に副方向流路112を形成し、主方向流路111と副方向流路112は、相互に連通して網目状のミスト排出路116を形成している。搬送方向に隣接する列同士では、インクヘッド110aは、その両端部dが相互にオーバーラップされており、各列に含まれる112も相互に重ならないように配置されている。
【0051】
このような、ミスト排出路によれば、図8に示すように、インクヘッド110a周囲に、副走査方向及び主走査方向に広がる一定以上の空間が形成され、主方向流路111と副方向流路112は網目状に相互に連通しているため、印刷時に発生するインクミストを消散させるための気流経路を確保することができる。
【0052】
特に、本実施形態では、ヘッドホルダー面500aからのインクヘッド110aの突出長さHは、主方向流路111の幅Lよりも大きく設定されていることから、インクヘッド110aのインク吐出面とヘッドホルダー面500aとに空間が確保することができ、図7(b)に示すように、風圧によってインクヘッド110aから吐出されたインクミストを拡散することができ、ヘッドホルダー500やインクヘッド110aへのミスト付着を防止することができる。このとき、本実施形態では、各インクヘッド110aの上流側の主方向流路111には、搬送経路上面に押しつけられて回転する段付ガイドローラー510がそれぞれ設けられているため、この段付ガイドローラー510によってインクミストが上方に巻き上げられ、ミスト排出路116中の気流にミストを乗せて消散させることができる。
【0053】
ここで、段付ガイドローラー510は、径の大きい上流側ガイドローラー510aと、径の小さい下流側ガイドローラー510bとを同一の回転軸上に連結して構成されている。そして、上流側ガイドローラー510aは、印刷用紙の搬送方向におけるインクヘッド110aの上流側に設けられて、搬送経路上面に押しつけられて回転され、下流側ガイドローラー510bは、インクヘッド110aの下流側に設けられ、搬送経路上面から所定距離離隔されて用紙搬送経路上面と接しない。これらのことから、上流にあるインクヘッド110aから生じたインクミストが、小径の下流側ガイドローラー510b周辺の隙間から下流へ流動され(図7(b)の矢印f1及びf2)、そのさらに下流にある上流側ガイドローラー510aでは、搬送経路上面に押しつけられて回転することにより、プラテンベルト160の摺動により一定の回転速度が維持され、この回転により、上流の下流側ガイドローラー510bからのインクミストを上方に巻き上げて(図7(b)の矢印f2)、ミスト排出路116中の気流に乗せて消散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は、本実施形態に係る印刷装置の印刷用紙搬送経路の概要を示す構成図であり、(b)は、給紙系搬送路FRと通常経路CRと反転経路SRとを模式的に示した説明図である。
【図2】実施形態に係る画像形成が行われる画像形成経路を側方から示す説明図である。
【図3】(a)は、画像形経路の上方に配置されるヘッドホルダーを下方から示す説明図であり、(b)は、ヘッドホルダーの側面を拡大して示す説明図である。
【図4】(a)は、実施形態に係るヘッドホルダーを上方から示す斜視図であり、(b)は、ヘッドホルダー下面を模式的に示す説明図である。
【図5】実施形態に係る実施形態に係る画像形成経路の用紙搬送機構を一部切り欠いて示す上面図である。
【図6】実施形態に係るヘッドホルダー面の高さを変えた場合の、インクヘッド周りに発生する気流の状態を比較する説明図である。
【図7】実施形態に係るヘッドホルダー面の周囲で発生したミスト気流を示す説明図であり、(a)は、ヘッドホルダーの下面を示す平面図であり、(b)は、インクヘッド周囲のミスト気流を示す側面図である。
【図8】実施形態に係るミスト排出路によってインクミストを消散させる様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
CR…通常経路
DR…排紙経路
FR…給紙系搬送路
R…レジスト部
SR…反転経路
100…印刷装置
110…ヘッドユニット
110a…インクヘッド
111…主方向流路
112…副方向流路
116…ミスト排出路
120…サイド給紙台
130…給紙トレイ
140…排紙口
150…排紙台
160…プラテンベルト
161…駆動ローラー
162…従動ローラー
165…ベルト穴
170…切替機構
172…切替機構
220…サイド給紙駆動部
230a…駆動部
230b…駆動部
240…レジスト駆動部
250…ベルト駆動部
260…第1上面搬送駆動部
265…第2上面搬送駆動部
270…上面排出駆動部
281…反転駆動部
330…演算処理部
340…操作パネル
500…ヘッドホルダー
500a…ヘッドホルダー面
500b…取付開口部
510…段付ガイドローラー
510a…上流側ガイドローラー
510b…下流側ガイドローラー
520…軸受部
620…プラテンプレート
621…凹部
622…吸引穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路上を搬送される印刷用紙に、インクを吐出して前記印刷用紙上に画像を形成する印刷装置の搬送機構であって、
前記インクを吐出口から吐出させる複数のインクヘッドと、
前記印刷用紙の搬送方向における前記インクヘッド上流側に設けられ、前記搬送経路上面に押しつけられて回転する上流側ガイドローラーと、
前記搬送方向における前記インクヘッド下流側に設けられ、前記搬送経路上面から所定距離離隔されて回転可能に設けられた下流側ガイドローラーと
を備え、
前記上流側ガイドローラーの径は、前記下流側ガイドローラーの径よりも大きいことを特徴とする印刷装置の搬送機構。
【請求項2】
前記上流側ガイドローラー及び前記下流側ガイドローラーとして、該上流側ガイドローラー及び該下流側ガイドローラーを同一の回転軸上に連結して配置した段付ガイドローラーを有することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置の搬送機構。
【請求項3】
前記インクヘッドは、前記搬送方向と直交する方向に、複数列に配置され、これら複数列内において各列に含まれるインクヘッドは、隣接する他の列に含まれるインクヘッドと前記搬送方向に重ならない部分が生じるように千鳥状に配置され、
前記上流側ガイドローラー及び前記下流側ガイドローラーは、各インクヘッドの配置に対応させた、千鳥状の配置となっている
ことを特徴する請求項1又は2に記載の印刷装置の搬送機構。
【請求項4】
前記インクヘッドの各列は、搬送方向に所定間隔をおいて配置され、列間に主方向流路を形成し、
前記上流側ガイドローラー及び前記下流側ガイドローラーは、前記主方向流路内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置の搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−95366(P2010−95366A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269115(P2008−269115)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】