説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】回転する版ロールに設けられた版により、走行する材料に印刷を順次行う際に、見当合わせを安価な構成にてかつ確実に行う。
【解決手段】印刷位置位相合わせ器32は、マーク信号、印刷タイミング信号及び圧胴ロール位置データからマーク位置データA及び印刷位置データBを設定し、印刷間隔長Lを演算し、印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する基準パルスを生成する。印刷位置偏差検出器33は、印刷タイミング信号のタイミングにて、基準パルスからカウンタの設定値を設定し、版ロールFBパルス及び圧胴ロールFBパルスの入力に伴って、設定値からゼロまで減少するカウンタ値を版ロールポジションエラーとして生成する。版ロール速度指令生成器34は、版ロールポジションエラーにゲインを乗算した結果を圧胴ロール速度FBに加算し、加算結果を版ロール速度指令として生成し、上下限制限及びランプ処理の後、版ロール3を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関し、特に、版が設けられた版ロールを回転させ、走行する材料に対して製品毎に印刷を順次行う印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続して走行するシート状の材料に対し、製品毎に一定間隔で印刷を連続して行うフレキソ印刷機が知られている。フレキソ印刷機は、印刷面となる版が設けられた版ロールを回転させ、その版にインクを供給することにより材料に対して印刷を行う輪転式の印刷機である。フレキソ印刷機には、センタードラム方式、スタック方式及びインライン方式がある。特に、インライン方式のフレキソ印刷機は、版ロールと圧胴ロールとが1ユニットになっており、ユニットを追加すれば印刷色を増やすことができるから、比較的簡単に印刷色を増やすことができる点で他の方式よりも有効である。
【0003】
このようなインライン方式のフレキソ印刷機には、完全同期式及びロータリー式の2つの制御方式がある。完全同期式は、版ロールの周長と印刷物である材料の製品長とを同一に設定し、版ロールと材料とを同期させ、すなわち、版ロールの回転速度と材料の走行速度とを同一にして印刷を行う方式である。
【0004】
一方、ロータリー式は、版ロールの周長と製品長とを同一に設定する必要がなく、版ロールの周長を固定にし、製品長に応じて版ロール自体を加減速制御することにより印刷を行う方式である(特許文献1を参照)。具体的には、印刷機は、材料を一定の速度で走行させ、印刷が終了してから次の製品の印刷が開始するまでの間に、版ロールを加減速制御することにより、版ロールの周長と製品長との間の差を吸収する。これにより、回転する版ロールに設けられた版を、走行する材料における製品毎の印刷位置に合わせることができる。例えば、版ロールの周長が製品長よりも長い場合、印刷が完了した後、版を次の製品の印刷開始位置にすばやく合わせるため、版ロールを加速して減速するか、または、加速して一定速度にした後に減速する。一方、版ロールの周長が製品長よりも短い場合、印刷が完了した後、次の製品の印刷開始位置が来るまで版ロールを待たせる必要があるため、版ロールを減速して加速するか、または、減速して停止させた後加速する。
【0005】
ところで、複数の印刷を連続して行う多色印刷機においては、色ムラ等をなくすことを目的に、印刷位置を正しい位置に合わせるための見当合わせの制御が行われる。多色印刷機を制御する印刷装置として、例えば、1台のモータをラインシャフトで連結し、全ての印刷機を同時に運転させる装置(第1の印刷装置)が知られている。この印刷装置による見当合わせは、位置ズレ検出装置を用いて印刷位置のズレを検出し、印刷機間の材料の長さを調整することにより、版ロールの回転速度と材料の走行速度とを同一にして位相を合わせることで実現される。
【0006】
また、材料上の製品毎に印刷されたマークを基準にして、版ロールを加減速させることにより、見当合わせの制御を行う印刷装置(第2の印刷装置)も知られている(特許文献2を参照)。この印刷装置は、材料上に印刷されたマークを第1検出手段が検出し、版が設けられた無端ベルト上に付された検出片を第2検出手段が検出し、マークの検出タイミングと検出片の検出タイミングとを比較し、版ロールを一定速または加減速にて回転させる。具体的には、印刷装置は、両検出タイミングが同じ場合、印刷位置Oから版の印刷原点P2までの間の距離と、印刷位置Oから、材料に印刷される予定の印刷原点P1までの間の距離とが一致していると判断し、版ロールの回転速度を材料の走行速度と同一にする(特許文献2の図2、第19頁第7〜16行目を参照)。一方、両検出タイミングが異なる場合、両距離が一致していないと判断し、両距離が一致するように、版ロールの回転速度を加速または減速させる(同図2、第20頁第1〜13行目を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−197084号公報
【特許文献2】特開平1−110151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の第1の印刷装置では、1台のモータをラインシャフトで連結し、複数台の印刷機を同時に運転させるから、モータ容量が大きくなり、機械構成が複雑になるという問題があった。また、印刷位置のズレを検出するために位置ズレ検出装置を用いるから、高価になるという問題もあった。
【0009】
また、前述の特許文献2に記載された第2の印刷装置では、材料上のマークの検出タイミングと、版が設けられた無端ベルト上の検出片の検出タイミングとが異なる場合、印刷位置Oから版の印刷原点P2までの間の距離と、印刷位置Oから、材料に印刷される予定の印刷原点P1までの間の距離とが一致するように、版ロールの回転速度を加速または減速させる。
【0010】
しかしながら、特許文献2には、両距離を一致させるために、どのような処理を行うかについては記載されておらず、具体的な制御内容が不明である。第2の印刷装置は、検出タイミングの時間差に基づいて両距離の差を求め、その差に応じて版ロールを加減速させるものと考えられるが、材料上のマーク及び無端ベルト上の検出片はそれぞれ1個しか存在せず、第1検出手段及び第2検出手段もそれぞれ1個しか存在しないから、加減速によって、両距離の差がどのようになったかを確認することができない。つまり、特許文献2には、両距離を一致させるための具体的な制御内容が記載されておらず、第2の印刷装置による処理を特定することができない。
【0011】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転する版ロールに設けられた版により、走行する材料に印刷を順次行う際に、見当合わせの制御を、安価な構成にてかつ確実に実現可能な印刷装置及び印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明による印刷装置は、圧胴ロールの回転によって、所定間隔でマークが付された材料を走行させると共に、版が設けられた版ロールを回転させ、前記圧胴ロールと前記版ロールとの間に前記材料を挟挿させることで、前記マークを基準にした前記材料の所定箇所に、前記版によって印刷を順次行う印刷装置において、予め設定された一定速度の圧胴ロール速度指令を生成し、前記圧胴ロールを回転させる圧胴ロール速度指令生成器と、前記圧胴ロールの回転位置を示す圧胴ロール位置データ、及び前記圧胴ロールの回転速度を示す圧胴ロール速度フィードバックを検出する圧胴ロール位置/速度検出器と、前記版ロールに設けられた原点検出片を検出する検出器から、前記原点検出片を検出したことを示す原点信号を入力し、前記原点信号に基づいて印刷タイミング信号を検出する印刷タイミング信号検出器と、前記マークを検出する検出器から、前記マークを検出したことを示すマーク信号を入力し、前記マーク信号の入力タイミングにおいて前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール位置データ、及び、前記印刷タイミング信号の検出タイミングにおいて前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール位置データに基づいて、前記材料上の印刷間隔長を演算し、前記印刷間隔長と、予め設定された印刷間隔設定値との間の偏差を求め、前記偏差を印刷位置偏差とし、前記版ロールの回転及び前記圧胴ロールの回転に伴って、前記印刷位置偏差を減少させゼロにする印刷位置偏差生成器と、前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール速度フィードバックの値を基準にして、前記印刷位置偏差を含む版ロール速度指令を生成し、前記版ロール速度指令によって前記版ロールを回転させ、前記印刷位置偏差に基づいて前記版ロールを加減速させる版ロール速度指令生成器と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による印刷装置は、前記印刷位置偏差生成器が、前記演算した印刷間隔長と予め設定された印刷間隔設定値との間の偏差を、前記版ロールの回転及び前記圧胴ロールの回転に伴ってカウンタ値がゼロに近づくカウンタの設定値に設定し、前記カウンタ値を印刷位置偏差として生成する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による印刷装置は、前記版ロール速度指令生成器が、前記印刷位置偏差生成器により生成された印刷位置偏差に所定値を乗算し、前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール速度フィードバックの値に前記乗算結果を加算し、加算結果に基づいて版ロール速度指令を生成し、前記版ロールを回転させる、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明による印刷装置は、前記印刷位置偏差生成器が、前記マーク信号を入力する毎に、前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール位置データを記憶部に書き込むマーク位置保持器と、前記印刷タイミング信号の検出タイミングにて、前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール位置データを印刷位置データとし、次回の印刷のための基準となるマークのマーク信号に対応する圧胴ロール位置データを、前記マーク位置保持器から読み出してマーク位置データとし、前記圧胴ロールと前記版ロールとの間で前記材料が挟挿されて印刷が行われる印刷位置と前記マークを検出する検出器の設置位置との間の距離、前記設定した印刷位置データ及びマーク位置データに基づいて印刷間隔長を演算する印刷間隔長演算器と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による印刷装置は、前記印刷位置偏差生成器の印刷間隔長演算器が、次回の印刷のための基準となるマークのマーク信号に対応する圧胴ロール位置データが、前記マーク位置保持器に書き込まれていない場合、予め設定された印刷間隔設定値を前記印刷間隔長とする、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による印刷装置は、前記印刷位置偏差生成器の印刷間隔長演算器が、前記圧胴ロールと前記版ロールとの間で前記材料が挟挿されて印刷が行われる印刷位置と前記マークを検出する検出器の設置位置との間の距離、前記距離を補正するための補正値、前記設定した印刷位置データ及びマーク位置データに基づいて印刷間隔長を演算する、ことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明による印刷方法は、圧胴ロールを一定速度で回転させることによって、所定間隔でマークが付された材料を走行させると共に、版が設けられた版ロールを回転させ、前記圧胴ロールと前記版ロールとの間に前記材料を挟挿させることで、前記マークを基準にした前記材料の所定箇所に、前記版によって印刷を順次行う印刷方法において、前記圧胴ロールの回転位置を示す圧胴ロール位置データ、及び前記圧胴ロールの回転速度を示す圧胴ロール速度フィードバックを検出するステップと、前記版ロールに設けられた原点検出片を検出する検出器から、前記原点検出片を検出したことを示す原点信号を入力し、前記原点信号に基づいて印刷タイミング信号を検出するステップと、前記マークを検出する検出器から、前記マークを検出したことを示すマーク信号を入力し、前記マーク信号の入力タイミングにおいて検出した圧胴ロール位置データ、及び、前記印刷タイミング信号の検出タイミングにおいて検出した圧胴ロール位置データに基づいて、前記材料上の印刷間隔長を演算するステップと、前記印刷間隔長と、予め設定された印刷間隔設定値との間の偏差を求め、前記偏差を印刷位置偏差とし、前記版ロールの回転及び前記圧胴ロールの回転に伴って、前記印刷位置偏差を減少させゼロにするステップと、前記検出した圧胴ロール速度フィードバックの値を基準にして、前記印刷位置偏差を含む版ロール速度指令を生成し、前記版ロール速度指令によって前記版ロールを回転させ、前記印刷位置偏差に基づいて前記版ロールを加減速させるステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、従来の第1の印刷装置に備えた高価な位置ズレ検出装置を用いる必要がない。したがって、安価な構成にて見当合わせを行うことができ、印刷位置のズレの補正を行うことができる。また、本発明によれば、測定された印刷間隔長と設定された印刷間隔設定値との間の偏差(印刷位置のズレ)を、版ロール及び圧胴ロールの回転に伴ってカウンタ値が増減するカウンタの設定値に設定し、このカウンタ値がゼロになるように、版ロールを加減速制御し、ゼロになった時点が、版ロールの速度と圧胴ロールの速度(材料の走行速度)が同期(一致)していることになる。これにより、見当合わせを確実に行い、印刷位置のズレをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態による印刷装置(コントローラ)を含む印刷機の全体構成を示すシステム図である。
【図2】印刷機の制御系を示す概略図である。
【図3】見当合わせを行ったときの印刷例を説明する図である。
【図4】コントローラの構成を示すブロック図である。
【図5】コントローラによる処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】版ロール位置/速度検出器の構成を示すブロック図である。
【図7】版ロール位置/速度検出器により検出される版ロール位置データを説明する図である。
【図8】圧胴ロール位置/速度検出器の構成を示すブロック図である。
【図9】印刷位置位相合わせ器の構成を示すブロック図である。
【図10】印刷位置位相合わせ器の処理を示すフローチャートである。
【図11】印刷位置位相合わせ器の印刷間隔長演算器により演算される印刷間隔長Lの式を説明する図である。
【図12】印刷間隔長Lの演算タイミングを説明する図である。
【図13】印刷間隔長Lの演算タイミング(続き)を説明する図である。
【図14】印刷間隔長Lの演算処理を説明する図である。
【図15】印刷位置偏差検出器の構成を示すブロック図である。
【図16】印刷位置偏差検出器の処理を示すフローチャートである。
【図17】印刷タイミング信号、版ロールポジションエラー等のタイミングチャートを示す図である。
【図18】版ロール速度指令生成器の構成を示すブロック図である。
【図19】版ロール速度指令生成器の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
〔印刷機の構成〕
図1は、本発明の実施形態による印刷装置(以下、コントローラという。)を含む印刷機の全体構成を示すシステム図である。図2は、印刷機の制御系を示す概略図である。この印刷機20は、連続して走行するシート状の材料1に対し、製品毎に一定間隔で印刷されたマーク(図1には図示せず、図2を参照)を基準にして、所定位置に印刷を順次行う機械である。印刷機20は、圧胴ロール2、版ロール3、アニロックスロール4、マークセンサー5、原点センサー6、圧胴ロールモータ7、圧胴ロールエンコーダ8、圧胴ロールインバータ9、版ロールモータ10、版ロールエンコーダ11、版ロールインバータ12及びコントローラ13を備えて構成される。尚、図1には、1セットの印刷機20が示されているが、多色印刷を行う場合には、印刷機20の前段及び/または後段に他の印刷機が設けられている。
【0022】
材料1は、図示しない巻出機から送出され、印刷機20、及び印刷機20の前段及び/または後段に設けられた他の印刷機を介して、図示しない巻取機に巻き取られる。また、材料1は、所定長の製品毎に、第1の印刷機により1色目が印刷され、第2の印刷機により2色目が印刷され、印刷機毎に所定の色の印刷が行われる。図1に示した印刷機20には、マークが印刷された材料1が送入されるものとする。このマークは、第1の印刷機により、材料1における所定長の製品毎に一定間隔で印刷されるようにしてもよいし、予め印刷されているものとしてもよい。コントローラ13は、このマークによって、材料1上の印刷基準位置を認識することができる。
【0023】
圧胴ロール2及び版ロール3は、走行する材料1を挟挿し、版ロール3に設けられた版(図示せず)により、材料1における製品上の所定位置に、マークを基準にした印刷が行われる。圧胴ロール2は、圧胴ロールモータ7の駆動により機械的に回転し、一定速度にて材料1を走行させる。版ロール3は、版ロールモータ10の駆動により、圧胴ロール2と同じ一定速度、または加減速された速度にて機械的に回転する。アニロックスロール4は、版ロール3と同様に、版ロールモータ10の駆動により回転し、印刷のためのインクを、版ロール3に設けられた版に供給する。
【0024】
マークセンサー5は、材料1における所定長の製品毎に一定間隔で印刷されたマークを検出し、マーク信号をコントローラ13に出力する。原点センサー6は、版ロール3に設けられた原点検出片(図示せず)を検出し、版ロール3における回転位置の原点を示す原点信号をコントローラ13に出力する。
【0025】
圧胴ロールモータ7は、圧胴ロールインバータ9から供給される電力に従って駆動し、圧胴ロール2を回転させ材料1を走行させる。圧胴ロールエンコーダ8は、圧胴ロールモータ7の回転に伴い、圧胴ロール2の回転位置及び速度、すなわち材料1の位置及び走行速度を検出するための圧胴ロールポジションFB(フィードバック)の信号を圧胴ロールインバータ9及びコントローラ13に出力する。圧胴ロールインバータ9は、コントローラ13から圧胴ロール速度指令を入力すると共に、圧胴ロールエンコーダ8から圧胴ロールポジションFBを入力し、圧胴ロールポジションFBから算出された圧胴ロールの速度が圧胴ロール速度指令になるように、電力を圧胴ロールモータ7へ供給する。
【0026】
版ロールモータ10は、版ロールインバータ12から供給される電力によって駆動し、版ロール3及びアニロックスロール4を回転させる。版ロールエンコーダ11は、版ロールモータ10の回転に伴い、版ロール3の回転位置及び速度を検出するための版ロールポジションFBの信号を版ロールインバータ12及びコントローラ13に出力する。版ロールインバータ12は、コントローラ13から版ロール速度指令を入力すると共に、版ロールエンコーダ11から版ロールポジションFBを入力し、版ロールポジションFBから算出された版ロールの速度が版ロール速度指令になるように、電力を版ロールモータ10へ供給する。
【0027】
コントローラ13は、マークセンサー5からマーク信号を、原点センサー6から原点信号を、圧胴ロールエンコーダ8から圧胴ロールポジションFBを、版ロールエンコーダ11から版ロールポジションFBをそれぞれ入力する。そして、コントローラ13は、予め設定された一定速度の圧胴ロール速度指令を圧胴ロールインバータ9へ出力する。これにより、圧胴ロール2は一定速度で回転し、材料1は一定速度で走行する。
【0028】
また、コントローラ13は、入力したマーク信号、原点信号、圧胴ロールポジションFB及び版ロールポジションFBから、今回の印刷が行われる材料1上の位置から次回の印刷が行われる材料1上の位置までの間の印刷間隔長Lを演算する。印刷間隔長Lの演算手法については後述する。そして、コントローラ13は、演算した印刷間隔長Lと、予め設定された印刷間隔設定値Sとの間の初期偏差を求め、この初期偏差をカウンタの設定値に設定する。このカウンタのカウンタ値は、圧胴ロール2及び版ロール3の回転に伴って、圧胴ロールポジションFB及び版ロールポジションFBにより生成されるパルスに応じて増減する。そして、コントローラ13は、圧胴ロールポジションFBから算出した圧胴ロール速度FBに対し、カウンタ値である印刷位置偏差にゲインを乗算した乗算結果を加算し、版ロール速度指令として版ロールインバータ12へ出力する。つまり、コントローラ13は、圧胴ロール2及び版ロール3の回転に伴ってカウンタ値がゼロになるように、すなわち印刷位置偏差がゼロになるように、カウンタ値である印刷位置偏差に応じた版ロール速度指令を版ロールインバータ12へ出力する。
【0029】
これにより、版ロール3は、印刷位置偏差に応じて回転速度を加減速することで、印刷位置偏差がゼロになると、圧胴ロール2と同じ一定速度で回転する。したがって、版ロール3を加減速することで、圧胴ロール2及び版ロール3の位相ズレを補正することができ、印刷位置偏差がゼロになると、版ロール3が圧胴ロール2と同じ一定速度で同期して回転するから、圧胴ロール2及び版ロール3の位相を合わせることができる。つまり、このような見当合わせによって、印刷位置のズレの補正が行われ、印刷間隔長Lの材料1上の位置に版ロール3の版を合わせることができる。
【0030】
〔見当合わせの動作概要〕
次に、図1及び図2に示したコントローラ13による見当合わせの動作概要について説明する。図3は、見当合わせを行ったときの印刷例を説明する図である。図3に示すように、材料1には、製品長毎にマーク(点線の四角)が印刷されているものとする。(1)〜(7)は材料1上の個々の製品を示し、材料1は右方向へ走行するものとする。
【0031】
(a)は、マークセンサー5によりマークが検出されず、位相が合っていない状況を示している。コントローラ13は、マークセンサー5からマーク信号を入力しないから、印刷間隔長Lの演算を行うことができない。このため、コントローラ13は、予め設定された印刷間隔設定長Sを印刷間隔長Lとすることにより、印刷位置偏差がゼロになり、圧胴ロール2と同じ版ロール速度指令を生成する。これにより、版ロール3は、圧胴ロール2と同じ一定速度で回転するから、圧胴ロール2及び版ロール3の位相ズレを補正することができず、位相は合わない。(a)に示すように、製品長毎のマーク(点線の四角)と印刷箇所(実線の四角)との間のズレは、(1)から(4)への移行に従って小さくなるが、(4)から(7)への移行に従って大きくなることがわかる。
【0032】
(b)は、マークセンサー5によりマークが検出され、版ロール3を加減速させて位相が合っていく状況(マークセンサー距離が合っていない、すなわちマークセンサー5の設置箇所が正しくなく、定量のズレが残存している状況)を示している。マークセンサー距離とは、図2に示すように、材料1において、マークセンサー5の設置位置から圧胴ロール2及び版ロール3の挟挿位置(印刷位置)までの間の距離をいう。コントローラ13は、マークセンサー5からマーク信号を入力することができる。このため、コントローラ13は、マーク信号、原点信号、圧胴ロールポジションFB及び版ロールポジションFBから印刷間隔長Lを演算し、版ロール3を加減速するための版ロール速度指令を生成する。そして、コントローラ13は、印刷間隔長Lと印刷間隔設定長Sとの間の初期偏差を設定値としたカウンタのカウンタ値がゼロになるように、版ロール速度指令を生成する。そして、カウンタ値がゼロになったときに、圧胴ロール2と同じ一定速度で版ロール3を回転させるための版ロール速度指令を生成する。これにより、版ロール3が圧胴ロール2に同期し、位相が合うことになる。
【0033】
(b)に示すように、(1)から(4)への移行に従って、版ロール3の加減速によりマークと印刷箇所との間の距離は短くなるが、(5)以降では定量のズレが残存していることがわかる。この定量のズレは、マークセンサー距離が合っていない、すなわちマークセンサー5の設置箇所が正しくないことが原因である。(5)以降では、版ロール3が一定速度で回転し、定量のズレが残存するが、版ロール3が圧胴ロール2に同期し、位相が合っていることがわかる。
【0034】
(c)は、マークセンサー5によりマークが検出され、版ロール3を加速させた後に一定速度で回転させることにより、位相が合う様に減速し、位相が合うと版ロール3は圧胴ロール2と等速になっていく状況(マークセンサー距離が合っている、すなわちマークセンサー5の設置箇所が正しい状況)を示している。コントローラ13は、(b)と同様に、マークセンサー5からマーク信号を入力し、印刷間隔長Lを演算し、印刷間隔長Lに応じて、版ロール3を加速するための版ロール速度指令を生成し、その後、カウンタのカウンタ値がゼロになるように、版ロール速度指令を生成する。そして、カウンタ値がゼロになったときに、圧胴ロール2と同じ一定速度で版ロール3を回転させるための版ロール速度指令を生成する。これにより、版ロール3が圧胴ロール2に同期し、位相が合うことになる。
【0035】
(c)に示すように、(1)から(4)への移行に従って、版ロール3の加速によりマークと印刷箇所との間のズレは小さくなり、(4)では位相が合い減速も完了しそのズレがゼロになっていることがわかる。また、(4)から(7)への移行では、版ロール3が一定速度で回転し、ズレがゼロの状態を維持しており、版ロール3が圧胴ロール2に同期し、位相が合っており、定量ズレもないことがわかる。
【0036】
(d)は、マークセンサー5によりマークが検出され、版ロール3を減速させた後に一定速度で回転させることにより、位相が合う様に加速し、位相が合うと版ロール3は圧胴ロール2と等速になっていく状況(マークセンサー距離が合っている、すなわちマークセンサー5の設置箇所が正しい状況)を示している。コントローラ13は、(b)及び(c)と同様に、マークセンサー5からマーク信号を入力し、印刷間隔長Lを演算し、印刷間隔長Lに応じて、版ロール3を減速するための版ロール速度指令を生成し、その後、カウンタのカウンタ値がゼロになるように、版ロール速度指令を生成する。そして、カウンタ値がゼロになったときに、圧胴ロール2と同じ一定速度で版ロール3を回転させるための版ロール速度指令を生成する。これにより、版ロール3が圧胴ロール2に同期し、位相が合うことになる。
【0037】
(d)に示すように、(1)から(4)への移行に従って、版ロール3の減速によりマークと印刷箇所との間のズレは小さくなり、(4)では位相が合い版ロール3は圧胴ロール2と等速になりそのズレがゼロになっていることがわかる。また、(4)から(7)への移行では、版ロール3が一定速度で回転し、ズレがゼロの状態を維持しており、版ロール3が圧胴ロール2に同期し、位相が合っていることがわかる。
【0038】
〔コントローラの構成〕
次に、図1及び図2に示したコントローラ13について、図3に示した見当合わせを行う構成及び処理について詳細に説明する。図4は、コントローラ13の構成を示すブロック図である。このコントローラ13は、版ロール制御部30及び圧胴ロール制御部40を備えている。版ロール制御部30は、版ロール位置/速度検出器31、印刷位置位相合わせ器32、印刷位置偏差検出器33及び版ロール速度指令生成器34を備えている。また、圧胴ロール制御部40は、圧胴ロール位置/速度検出器41及び圧胴ロール速度指令生成器42を備えている。尚、印刷位置位相合わせ器32及び印刷位置偏差検出器33により、印刷位置偏差生成器が構成される。
【0039】
コントローラ13は、原点センサー6から原点信号を、版ロールエンコーダ11から版ロールポジションFBを、マークセンサー5からマーク信号を、圧胴ロールエンコーダ8から圧胴ロールポジションFBをそれぞれ入力する。そして、コントローラ13の版ロール制御部30は、版ロール速度指令を生成して版ロールインバータ12へ出力し、圧胴ロール制御部40は、予め設定された一定速度の圧胴ロール速度指令を生成して圧胴ロールインバータ9へ出力する。
【0040】
〔コントローラの処理〕
次に、図4に示したコントローラ13による処理の概要について説明する。図5は、コントローラ13による処理の概要を示すフローチャートである。まず、コントローラ13に備えた版ロール制御部30の版ロール位置/速度検出器31は、原点センサー6から原点信号を入力すると共に、版ロールエンコーダ11から版ロールポジションFBを入力し、原点信号及び版ロールポジションFBから、版ロールポジションFBの数値の変化に応じた版ロールFBパルスを生成すると共に、版ロール3が所定位置(印刷基準位置)にあることを示す印刷タイミング信号を生成する(ステップS501)。版ロールFBパルス及び印刷タイミング信号の詳細については後述する。
【0041】
圧胴ロール制御部40の圧胴ロール位置/速度検出器41は、圧胴ロールエンコーダ8から圧胴ロールポジションFBを入力し、圧胴ロールポジションFBから、圧胴ロールの回転位置を示す圧胴ロール位置データ、圧胴ロールポジションFBの数値の変化に応じた圧胴ロールFBパルス、及び、圧胴ロールFBの変化の程度を示す圧胴ロール速度FBを生成する(ステップS502)。圧胴ロール位置データ、圧胴ロールFBパルス及び圧胴ロール速度FBの詳細については後述する。
【0042】
版ロール制御部30の印刷位置位相合わせ器32は、版ロール位置/速度検出器31から印刷タイミング信号を、マークセンサー5からマーク信号を、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロール位置データをそれぞれ入力し、マーク信号の入力タイミングにおける圧胴ロール位置データをFIFO(First In First Out)の記憶部に保持する。
【0043】
印刷位置位相合わせ器32は、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、圧胴ロール位置データを印刷位置データBに設定すると共に、FIFOの記憶部から最旧の圧胴ロール位置データを読み出してマーク位置データAに設定する(ステップS503)。そして、印刷位置位相合わせ器32は、マーク位置データA及び印刷位置データB等から印刷間隔長Lを演算し(ステップS504)、印刷間隔長Lと予め設定された印刷間隔設定値Sとの間の偏差に応じた対応する基準パルスを生成する(ステップS505)。FIFOの記憶部から読み出される最旧の圧胴ロール位置データ、及び基準パルスの詳細については後述する。
【0044】
尚、印刷位置位相合わせ器32は、マークセンサー5からのマーク信号を所定時間の間入力しなかった場合、マークを検出できなかったと判断し、印刷間隔長Lに印刷間隔設定値Sを設定し、偏差ゼロに対応する基準パルスを生成する。これにより、版ロール3は、圧胴ロール2と同じ一定速度で回転する。
【0045】
版ロール制御部30の印刷位置偏差検出器33は、版ロール位置/速度検出器31から版ロールFBパルス及び印刷タイミング信号を、印刷位置位相合わせ器32から基準パルスを、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロールFBパルスをそれぞれ入力し、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、基準パルスからカウンタの設定値を設定する(ステップS506)。印刷位置偏差検出器33は、フィードバック制御された版ロールFBパルス及び圧胴ロールFBパルスの入力に伴って、設定値からゼロまで減少するカウンタ値を、版ロールポジションエラーとして生成する(ステップS507)。
【0046】
版ロール制御部30の版ロール速度指令生成器34は、印刷位置偏差検出器33から版ロールポジションエラーを入力すると共に、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロール速度FBを入力し、圧胴ロール速度FBに対し、版ロールポジションエラーにゲインを乗算した乗算結果を加算し、版ロール速度指令を生成し、上下限制限及びランプ処理の後、版ロールインバータ12へ出力する(ステップS508)。尚、圧胴ロール制御部40の圧胴ロール速度指令生成器42は、予め設定された一定速度の圧胴ロール速度指令を生成し、圧胴ロールインバータ9へ出力する。これにより、圧胴ロール2は一定速度で回転する。版ロール制御部30の版ロール速度指令生成器34は、圧胴ロール速度指令生成器42により生成された一定速度の圧胴ロール速度指令に対する圧胴ロール速度FBを基準にして、版ロール速度指令を生成し、版ロールインバータ12へ出力する。これにより、版ロール3は、圧胴ロール速度FBの一定速度を基準にして回転する。
【0047】
〔版ロール位置/速度検出器〕
次に、図4に示したコントローラ13に備えた版ロール制御部30の版ロール位置/速度検出器31について説明する。図6は、版ロール位置/速度検出器31の構成を示すブロック図である。この版ロール位置/速度検出器31は、速度変換器311、パルス変換器312、版ロール位置検出器313及び印刷タイミング信号検出器314を備えている。前述のとおり、版ロール位置/速度検出器31は、原点信号及び版ロールポジションFBから、版ロールポジションFBの数値の変化に応じた版ロールFBパルスを生成すると共に、版ロール3が所定位置にあることを示す印刷タイミング信号を生成する。
【0048】
版ロール位置/速度検出器31の速度変換器311は、版ロールエンコーダ11から版ロールポジションFBを入力すると共に、予め設定された速度変換係数を入力し、版ロールポジションFBに速度変換係数を乗算し、版ロール速度FBを生成して出力する。
【0049】
パルス変換器312は、版ロールエンコーダ11から版ロールポジションFBを入力すると共に、予め設定されたパルス変換係数を入力し、版ロールポジションFBにパルス変換係数を乗算し、乗算結果の数値の変化に応じた版ロールFBパルスを生成し、版ロール位置検出器313及び印刷位置偏差検出器33に出力する。
【0050】
ここで、版ロールFBパルスとしては、乗算結果の数値の変化が大きい場合、多数のパルス信号が生成され、乗算結果の数値の変化が小さい場合、少数のパルス信号が生成される。つまり、版ロール3が高速で回転している場合、版ロールポジションFBの数値変化が大きいから、パルス変換器312により出力される単位時間または1スキャンあたりの版ロールFBパルスの数は、版ロール3が低速で回転している場合に比べ、大きくなる。
【0051】
版ロール位置検出器313は、原点センサー6から原点信号を入力すると共に、パルス変換器312から版ロールFBパルスを入力し、さらに、予め設定された原点補正値を入力し、原点信号の入力タイミングにて、版の位置を示す版ロール位置データを原点補正値にプリセットして、版ロール位置データとして印刷タイミング信号検出器314に出力する。また、版ロール位置検出器313は、版ロールFBパルスを入力する毎に、版ロール位置データに所定値を加算し、加算結果の版ロール位置データを出力する。
【0052】
例えば、版ロール位置検出器313は、版ロール3が一回転する毎に、版ロール3の原点を基準にして、例えば−180°から+180°までの版ロール位置データを出力する。ここで、原点補正値は、原点信号を入力することによりプリセットされる版ロール位置データを補正するためのデータであり、版ロール3に設けられた版の位置が補正される。この版ロール位置データにより、版ロール3に設けられた版の位置、すなわち印刷位置が認識される。
【0053】
印刷タイミング信号検出器314は、版ロール位置検出器313から版ロール位置データを入力すると共に、予め設定された印刷タイミング位置設定値(例えば0°)を入力し、版ロール位置データが印刷タイミング位置設定値のときに、印刷タイミング信号を生成して印刷位置位相合わせ器32及び印刷位置偏差検出器33に出力する。
【0054】
図7は、版ロール位置/速度検出器31の版ロール位置検出器313により検出される版ロール位置データを説明する図であり、図7(1)は、版ロール3の回転と版ロール位置データの関係を示し、図7(2)は、版ロール位置データ及び印刷タイミング信号を示している。版ロール3としては、インクを材料1に供給する版のサイズに合わせて、複数のロール径から適切なロール径のロールが選択される。また、版は、版ロール3における所定位置に貼り付けられ、複数の版の場合は等間隔になるように貼り付けられる。版が貼り付けられる所定位置は、原点センサー6により原点信号として検出される版ロール3の原点検出片(版ロール3に取り付けられた原点信号検出用の板)に応じた位置となる。
【0055】
図7(1)を参照して、版ロール3には、対向する2個の版21−1,21−2が貼り付けられており、版21−1の中央箇所αが最上部に位置するときに、すなわち、図1及び図2において版21−1の中央箇所αが圧胴ロール2に最も接近する位置(圧胴ロール2及び版ロール3の挟挿位置)に存在するときに、0°の版ロール位置データが生成される。また、版21−1の中央箇所αが最下部に位置するときに、−180°または+180°の版ロール位置データが生成される。このような版ロール位置データが版ロール位置検出器313にて生成されるように、予め設定された原点補正値が入力される。
【0056】
図7(2)を参照して、版ロール位置検出器313は、版21−1の中央箇所αが最上部から最下部へ左回りに回転するに従って、版ロールFBパルスを入力し、0°から−180°まで変化する版ロール位置データを生成する。また、版21−1の中央箇所αが最下部から最上部へ左回りに回転するに従って、版ロールFBパルスを入力し、+180°から0°まで変化する版ロール位置データを生成する。尚、版ロール位置検出器313は、原点信号を入力する毎に、版ロール位置データを原点補正値に設定する。これにより、版ロール3の1回転毎に版ロール位置データを調整することができ、精度の高い版ロール位置データを生成することができる。また、印刷タイミング信号検出器314は、版ロール位置データが0°のときに、印刷タイミング信号を生成する。これにより、版21−1の中央箇所αが版ロール3の最上部に存在し、圧胴ロール2に最も近づいたときに、印刷タイミング信号が版ロール位置/速度検出器31から出力される。
【0057】
このように、版ロール位置/速度検出器31によって、原点信号及び版ロールポジションFBから、版ロールポジションFBの数値の変化に応じた版ロールFBパルスが生成され、版ロール3が所定位置にあることを示す印刷タイミング信号が生成される。
【0058】
〔圧胴ロール位置/速度検出器〕
次に、図4に示したコントローラ13に備えた圧胴ロール制御部40の圧胴ロール位置/速度検出器41について説明する。図8は、圧胴ロール位置/速度検出器41の構成を示すブロック図である。この圧胴ロール位置/速度検出器41は、速度変換器411、パルス変換器412及び圧胴ロールラインカウンタ413を備えている。前述のとおり、圧胴ロール位置/速度検出器41は、圧胴ロールポジションFBから、圧胴ロールの回転位置を示す圧胴ロール位置データ、圧胴ロールポジションFBの数値の変化に応じた圧胴ロールFBパルス、及び、圧胴ロールFBの変化の程度を示す圧胴ロール速度FBを生成する。
【0059】
圧胴ロール位置/速度検出器41の速度変換器411は、圧胴ロールエンコーダ8から圧胴ロールポジションFBを入力すると共に、予め設定された速度変換係数を入力し、圧胴ロールポジションFBに速度変換係数を乗算し、圧胴ロール速度FBを生成して版ロール速度指令生成器34に出力する。
【0060】
パルス変換器412は、圧胴ロールエンコーダ8から圧胴ロールポジションFBを入力すると共に、予め設定されたパルス変換係数を入力し、圧胴ロールポジションFBにパルス変換係数を乗算し、乗算結果の数値の変化に応じた圧胴ロールFBパルスを生成し、圧胴ロールラインカウンタ413及び印刷位置偏差検出器33に出力する。
【0061】
ここで、圧胴ロールFBパルスとしては、圧胴ロール2が一定速度で回転しており、圧胴ロールポジションFBが一定の速度にて変化する数値であるから、単位時間または1スキャンあたり一定数のパルス信号が生成される。
【0062】
尚、このパルス変換器412により出力される圧胴ロールFBパルスと、図6に示したパルス変換器312により出力される版ロールFBパルスとを比較すると、圧胴ロール2及び版ロール3が同じ一定速度で回転しているときは、単位時間または1スキャンあたり同じ数の圧胴ロールFBパルス及び版ロールFBパルスが出力される。また、圧胴ロール2よりも版ロール3が高速で回転しているときは、単位時間または1スキャンあたり圧胴ロールFBパルスよりも多い数の版ロールFBパルスが出力される。また、圧胴ロール2よりも版ロール3が低速で回転しているときは、単位時間または1スキャンあたり圧胴ロールFBパルスよりも少ない数の版ロールFBパルスが出力される。
【0063】
圧胴ロールラインカウンタ413は、圧胴ロールFBパルスを入力し、圧胴ロールFBパルスを入力する毎に、ゼロから予め設定された上限値までカウントし、上限値になったときにリセットしてゼロになるカウント値を生成し、カウンタ値を圧胴ロール位置データとして印刷位置位相合わせ器32に出力する。この圧胴ロールラインカウンタ413は、圧胴ロールFBパルスをカウントするフリーランカウンタである。
【0064】
このように、圧胴ロール位置/速度検出器41によって、圧胴ロールポジションFBから、圧胴ロールの回転位置を示す圧胴ロール位置データ、圧胴ロールポジションFBの数値の変化に応じた圧胴ロールFBパルス、及び、圧胴ロールFBの変化の程度を示す圧胴ロール速度FBが生成される。
【0065】
〔印刷位置位相合わせ器:構成〕
次に、図4に示したコントローラ13に備えた版ロール制御部30の印刷位置位相合わせ器32について説明する。図9は、印刷位置位相合わせ器32の構成を示すブロック図である。この印刷位置位相合わせ器32は、印刷位置データ保持器321、マーク位置データ保持器322、印刷間隔長演算器323、パルス変換器324及び基準パルス演算器325を備えている。前述のとおり、印刷位置位相合わせ器32は、マーク信号、印刷タイミング信号及び圧胴ロール位置データからマーク位置データA及び印刷位置データBを設定し、印刷間隔長Lを演算し、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する基準パルスを生成する。
【0066】
印刷位置位相合わせ器32の印刷位置データ保持器321は、版ロール位置/速度検出器31から印刷タイミング信号を入力すると共に、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロール位置データを入力し、さらに、印刷間隔長演算器323から読出指令を入力する。印刷位置データ保持器321は、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、入力した圧胴ロール位置データを記憶部に書き込み、読出指令の入力タイミングにて、記憶部に書き込まれた圧胴ロール位置データを読み出し、印刷位置データBに設定して印刷間隔長演算器323に出力する。このとき、読み出した圧胴ロール位置データを記憶部から削除する。
【0067】
マーク位置データ保持器322は、マークセンサー5からマーク信号を入力すると共に、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロール位置データを入力し、さらに、印刷間隔長演算器323から読出指令を入力する。マーク位置データ保持器322は、マーク信号の入力タイミングにて、入力した圧胴ロール位置データをFIFOの記憶部に順次書き込み、読出指令の入力タイミングにて、FIFOの記憶部に書き込まれた最旧の圧胴ロール位置データを読み出し、マーク位置データAに設定して印刷間隔長演算器323に出力する。このとき、読み出した最旧の圧胴ロール位置データをFIFOの記憶部から削除する。尚、マーク位置データ保持器322は、マークセンサー5からマーク信号を入力した後、予め設定されたマスク時間の間、新たなマーク信号を入力しないようにマスクするようにしてもよい。これにより、マークセンサー5によるマークの誤検出をなくすことができる。
【0068】
印刷間隔長演算器323は、版ロール位置/速度検出器31から印刷タイミング信号を入力し、その入力タイミングにて、読出指令を印刷位置データ保持器321及びマーク位置データ保持器322に出力し、印刷位置データ保持器321から印刷位置データBを入力すると共に、マーク位置データ保持器322からマーク位置データAを入力する。そして、印刷間隔長演算器323は、以下の式(1)により、次回の印刷間隔長Lを演算してパルス変換器324に出力する。
L=(X+Y)−(B−A) ・・・(1)
ここで、Xは、マークセンサー距離であるセンサー距離設定値、すなわち、材料1において、マークセンサー5の設置位置から圧胴ロール2及び版ロール3の挟挿位置(印刷位置)までの間の距離である(図2を参照)。Yは、センサー距離補正値、すなわち、図3(b)に示した、マークと印刷箇所との間に残存しているズレをなくし、図3(c)または(d)に示した状況となるようにするための補正値である。つまり、マークを基準にした所定箇所に印刷を行う際に定量的なズレが生じている場合、ユーザは、センサー距離補正値Yを変更することにより、その定量的なズレをなくすことができる。
【0069】
印刷位置データBは、印刷位置データ保持器321が印刷タイミング信号の入力タイミングにて記憶部に書き込んだ圧胴ロール位置データであり、記憶部に書き込まれた直後に、読出指令によって読み出される。マーク位置データAは、マーク位置データ保持器322がマーク信号の入力タイミングにてFIFOの記憶部に書き込んだ圧胴ロール位置データであり、FIFOの記憶部に書き込まれている最旧の圧胴ロール位置データが、マーク位置データAとして読出指令によって読み出される。
【0070】
ここで、マーク位置データ保持器322のFIFOの記憶部には、材料1において印刷の基準となるマークのマーク信号毎に、その検出タイミングにおける圧胴ロール位置データが順次書き込まれる。また、このFIFOの記憶部から読み出され、マーク位置データAとして印刷間隔長演算器323に出力される最旧の圧胴ロール位置データは、次回の印刷のための基準となるマークのマーク信号に対応する圧胴ロール位置データである。したがって、印刷間隔長演算器323により演算される印刷間隔長Lは、今回印刷される材料1上の位置と次回印刷される材料1上の位置との間の距離となる。
【0071】
尚、印刷間隔長演算器323は、前記式(1)により演算した印刷間隔長Lが、予め設定された最長値よりも大きい場合、最長値を印刷間隔長Lに設定する。また、前記式(1)により演算した印刷間隔長Lが、予め設定された最短値よりも小さい場合、最短値を印刷間隔長Lに設定する。
【0072】
パルス変換器324は、印刷間隔長演算器323から印刷間隔長Lを入力すると共に、予め設定されたパルス変換係数を入力し、印刷間隔長Lにパルス変換係数を乗算し、乗算結果の数値の大きさに応じた印刷間隔長パルスを生成し、基準パルス演算器325に出力する。ここで、印刷間隔長パルスとしては、乗算結果の数値に比例する数のパルス信号が生成され、出力される。
【0073】
基準パルス演算器325は、パルス変換器324から、印刷間隔長Lの数値に応じた数のパルス信号である印刷間隔長パルスを入力すると共に、予め設定された印刷間隔設定値パルスを入力し、印刷間隔長パルスの数から印刷間隔設定値パルスの数を減算し、減算結果の数のパルス信号である基準パルスを生成し、印刷位置偏差検出器33に出力する。
【0074】
ここで、印刷間隔設定値パルスは、印刷間隔設定値Sに対応する数のパルス信号である。尚、印刷間隔設定値パルス、及びパルス変換器324により生成された印刷間隔長パルスは、共に、印刷間隔設定値S及び印刷間隔長Lの距離に応じた数のパルス信号により構成される。印刷間隔設定値Sと印刷間隔長Lとが同じ場合、同じ数のパルス信号を有する印刷間隔設定値パルス及び印刷間隔長パルスとなる。また、印刷間隔設定値Sよりも印刷間隔長Lが小さい場合、印刷間隔設定値パルスよりも少ない数のパルス信号を有する印刷間隔長パルスとなり、印刷間隔設定値Sよりも印刷間隔長Lが大きい場合、印刷間隔設定値パルスよりも多い数のパルス信号を有する印刷間隔長パルスとなる。
【0075】
また、印刷間隔設定値Sは、以下の式(2)により計算され、予め設定される。
S=π×(D+2×T)/M ・・・(2)
ここで、Dは、版ロール3の直径を示し、Tは、版ロール3に貼り付けられた版21−1,21−2の厚みを示し、Mは、版ロール3に貼り付けられた版21−1,21−2の数を示す。図7(1)の場合は、M=2である。つまり、式(2)により設定される印刷間隔設定値Sは、版21−1,21−2の厚みを含む版ロール3の外周の距離のうち、1つの版に対応する外周の距離となる。尚、版ロール3の周長がマークの間隔に対応する場合は、版21−1,21−2の数に関係なく、M=1である。この場合の印刷間隔設定値Sは、版21−1,21−2の厚みを含む版ロール3の外周の距離となる。
【0076】
〔印刷位置位相合わせ器:処理〕
次に、図9に示した印刷位置位相合わせ器32の処理について説明する。図10は、印刷位置位相合わせ器32の処理を示すフローチャートである。まず、印刷位置位相合わせ器32のマーク位置データ保持器322は、マーク信号を入力したか否かを判定し(ステップS1001)、マーク信号を入力したと判定した場合(ステップS1001:Y)、そのときに入力した圧胴ロール位置データをFIFOの記憶部に書き込み(ステップS1002)、処理を終了してステップS1001を実行する。このようにして、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部には、マーク信号の入力タイミング毎に圧胴ロール位置データが順次書き込まれる。一方、マーク位置データ保持器322は、マーク信号を入力していないと判定した場合(ステップS1001:N)、ステップS1003へ移行する。
【0077】
ステップS1001から移行して、印刷位置データ保持器321及び印刷間隔長演算器323は、印刷タイミング信号を入力したか否かを判定する(ステップS1003)。印刷位置データ保持器321は、ステップS1003において、印刷タイミング信号を入力したと判定した場合(ステップS1003:Y)、そのときに入力した圧胴ロール位置データを記憶部に書き込み、印刷間隔長演算器323からの読出指令を受けて、記憶部から圧胴ロール位置データを読み出し、印刷位置データBに設定する(ステップS1004)。また、印刷間隔長演算器323は、ステップS1003において、印刷タイミング信号を入力したと判定した場合(ステップS1003:Y)、印刷位置データ保持器321に読出指令を出力し、読出指令に対応する印刷位置データBを入力すると共に、マーク位置データ保持器322に読出指令を出力する。マーク位置データ保持器322は、印刷間隔長演算器323からの読出指令を受けて、FIFOの記憶部に書き込まれた最旧の圧胴ロール位置データを読み出し、マーク位置データAに設定し(ステップS1005)、読み出した圧胴ロール位置データをFIFOの記憶部から削除する(ステップS1006)。尚、マーク位置データ保持器322は、FIFOの記憶部に圧胴ロール位置データが書き込まれていない場合、ヌルのデータをマーク位置データAに設定する。そして、印刷間隔長演算器323は、マーク位置データ保持器322から読出指令に対応するマーク位置データAを入力する。
【0078】
印刷間隔長演算器323は、印刷タイミングにて、印刷位置データB及びマーク位置データAを入力すると、マーク位置データAが存在するか否かを判定する(ステップS1007)。印刷間隔長演算器323は、ステップS1007において、マーク位置データAが存在しない、すなわちマーク位置データAがヌルのデータであると判定した場合(ステップS1007:N)、印刷間隔長Lに印刷間隔設定値Sを設定する(ステップS1008)。一方、印刷間隔長演算器323は、ステップS1007において、マーク位置データAが存在する、すなわちマーク位置データAがヌルのデータでないと判定した場合(ステップS1007:Y)、前記式(1)により、印刷間隔長Lを演算する(ステップS1009)。尚、マークセンサー距離X及びセンサー距離補正値Yは、予め設定されているものとする。
【0079】
ステップS1008またはステップS1009から移行して、基準パルス演算器325は、印刷間隔長Lに応じた印刷間隔長パルスにおけるパルス信号の数と、予め設定された印刷間隔設定値パルスにおけるパルス信号の数との間の差を基準パルスとして生成し、すなわち、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する数のパルス信号を有する基準パルスを生成し、印刷位置偏差検出器33に出力する(ステップS1010)。
【0080】
このように、印刷位置位相合わせ器32によって、マーク信号、印刷タイミング信号及び圧胴ロール位置データからマーク位置データA及び印刷位置データBが設定され、印刷間隔長Lが演算され、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する基準パルスが生成される。これにより、次回の印刷に際して前もって、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差を示す圧胴ロール2及び版ロール3の位相ズレを、基準パルスとして求めることができる。したがって、後段の印刷位置偏差検出器33及び版ロール速度指令生成器34において、圧胴ロール2及び版ロール3の位相ズレをなくすための処理を行って位相を合わせ、印刷位置のズレを補正することができる。
【0081】
(印刷間隔長Lの演算例)
次に、図9に示した印刷位置位相合わせ器32の印刷間隔長演算器323による印刷間隔長Lの演算例について説明する。図11は、印刷間隔長Lの演算式(前記式(1))を説明する図である。材料1上には、マークセンサー5によって検出されるマークm1〜m4が印刷されており、印刷位置位相合わせ器32の印刷間隔長演算器323は、版ロール3に設けられた版21−1の中央箇所αが最上部に位置するときに、すなわち印刷タイミング信号の入力タイミングにて、前記式(1)により印刷間隔長Lを演算する。印刷間隔長Lは、(X+Y)−(B−A)=Z−(B−A)により演算される。Zは、補正後のマークセンサー距離であり、Z=X+Yである。
【0082】
ここで、(B−A)は、版ロール3に設けられた版21−1の中央箇所αが最上部に位置する印刷タイミング信号の入力タイミング(図11に示した状態)における圧胴ロール位置データである印刷位置データBから、材料1上のマークm2がマークセンサー5により検出されたマーク信号の過去の入力タイミング(図11において、マークm2がマークセンサー5の近傍を通過したときに、マークセンサー5により検出された過去の状態)における圧胴ロール位置データであるマーク位置データAを減算した結果を示している。したがって、(B−A)は、マークm2がマークセンサー5の位置から、図11に示した状態の位置まで進んだ距離を示している。つまり、(X+Y)−(B−A)の演算結果である印刷間隔長Lは、図11に示した状態のマークm2の位置と、印刷が行われる圧胴ロール2及び版ロール3の挟挿位置との間の距離となり、言い換えると、マーク1を基準にして今回印刷が行われる位置と、マークm2を基準にして次回印刷が行われる位置との間の距離となる。この場合、演算結果である印刷間隔長Lが印刷間隔設定値Sと同じであれば、版ロール3の回転速度を、一定速度である圧胴ロール2の回転速度(材料1の走行速度)に一致させることにより、図11に示した状態のマークm2が、材料1の走行に伴って圧胴ロール2及び版ロール3の挟挿位置に到着するタイミングと、図11に示した状態において挟挿位置に存在する版21−1の中央箇所αが1回転して、同じ挟挿位置に到着するタイミングとが一致することになる。印刷位置位相合わせ器32は、これらのタイミングを一致させることを目的に、版ロール3を加減速させ、圧胴ロール2の回転速度(材料の走行速度)と同じ一定速度で回転させるための基準パルスを生成する。
【0083】
図12は、印刷位置位相合わせ器32の印刷間隔長演算器323による印刷間隔長Lの演算タイミングを説明する図であり、図13は、図12の続きである。また、図14は、その演算処理を説明する図である。
【0084】
図12(1)は、時刻t1において、材料1上のマークm1がマークセンサー5により検出され、マークm1によるマーク信号の入力タイミングの状態を示している。この状態では、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部に、このときの圧胴ロール位置データA1が書き込まれる。
【0085】
図12(2)は、時刻t1後の時刻t2において、版ロール3が回転して中央箇所αが挟挿位置(最上部)に存在する印刷タイミング信号の入力タイミングの状態を示している。この状態では、印刷位置データ保持器321に備えた記憶部に、このときの圧胴ロール位置データB1が書き込まれる。図14に示すように、時刻t2において、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部には、次回の印刷の基準となるマークの圧胴ロール位置データが書き込まれていない。つまり、対応するマーク信号の入力タイミングにおける圧胴ロール位置データが書き込まれていない。これは、材料1上にマークが存在しないため、マークセンサー5がマークを検出することができなかったからである。したがって、印刷間隔長演算器323は、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、印刷位置データ保持器321から印刷位置データB1を入力し、マーク位置データ保持器322からヌルのマーク位置データAを入力し、前記式(1)の演算を行うことなく、印刷間隔設定長Sを印刷間隔長Lに設定し、出力する。これにより、版ロール3は、次回の印刷までの間、圧胴ロール2と同じ一定速度で回転する。
【0086】
図12(3)は、時刻t2後の時刻t3において、材料1上のマークm2がマークセンサー5により検出され、マークm2によるマーク信号の入力タイミングの状態を示している。この状態では、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部に、このときの圧胴ロール位置データA2が書き込まれる。FIFOの記憶部には、マークm1,m2の圧胴ロール位置データA1,A2が存在している。
【0087】
図12(4)は、時刻t3後の時刻t4において、版ロール3が回転して中央箇所αが挟挿位置(最上部)に存在する印刷タイミング信号の入力タイミングの状態を示している。この状態では、印刷位置データ保持器321に備えた記憶部に、このときの圧胴ロール位置データB2が書き込まれる。図14に示すように、時刻t4において、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部には、対応するマーク信号の入力タイミングにおける圧胴ロール位置データが書き込まれていない。これは、材料1上にマークが存在しないため、マークセンサー5がマークを検出することができなかったからである。したがって、印刷間隔長演算器323は、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、印刷位置データ保持器321から印刷位置データB2を入力し、マーク位置データ保持器322からヌルのマーク位置データAを入力し、前記式(1)の演算を行うことなく、印刷間隔設定長Sを印刷間隔長Lに設定し、出力する。これにより、版ロール3は、次回の印刷までの間、圧胴ロール2と同じ一定速度で回転する。
【0088】
図13(5)は、時刻t4後の時刻t5において、材料1上のマークm3がマークセンサー5により検出され、マークm3によるマーク信号の入力タイミングの状態を示している。この状態では、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部に、このときの圧胴ロール位置データA3が書き込まれる。FIFOの記憶部には、マークm1,m2,m3の圧胴ロール位置データA1,A2,A3が存在している。
【0089】
図13(6)は、時刻t5後の時刻t6において、版ロール3が回転して中央箇所αが挟挿位置(最上部)に存在する印刷タイミング信号の入力タイミングの状態を示している。この状態では、印刷位置データ保持器321に備えた記憶部に、このときの圧胴ロール位置データB3が書き込まれる。図14に示すように、時刻t6において、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部には、次回の印刷の基準となるマークm1の圧胴ロール位置データA1、つまり、対応するマーク信号の入力タイミングにおける圧胴ロール位置データA1(次回の印刷の基準となるマークm1の圧胴ロール位置データA1)が存在する。したがって、印刷間隔長演算器323は、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、印刷位置データ保持器321から印刷位置データB3を入力し、マーク位置データ保持器322からマーク位置データA1(FIFOの記憶部に書き込まれた最旧のマーク位置データA1)を入力し、前記式(1)によってL=Z−(B3−A1)の演算を行い、印刷間隔長Lを出力する。これにより、版ロール3は、次回の印刷までの間、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に応じて加減速し、その後、圧胴ロール2と同じ一定速度で回転する。尚、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部には、マーク位置データA1が読み出された後、マークm2,m3の圧胴ロール位置データA2,A3が存在している。
【0090】
図13(7)は、時刻t6後の時刻t7において、材料1上のマークm4がマークセンサー5により検出され、マークm4によるマーク信号の入力タイミングの状態を示している。この状態では、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部に、このときの圧胴ロール位置データA4が書き込まれる。FIFOの記憶部には、マークm2,m3,m4の圧胴ロール位置データA2,A3,A4が存在している。
【0091】
図13(8)は、時刻t7後の時刻t8において、版ロール3が回転して中央箇所αが挟挿位置(最上部)に存在する印刷タイミング信号の入力タイミングの状態を示している。この状態では、印刷位置データ保持器321に備えた記憶部に、このときの圧胴ロール位置データB4が書き込まれる。図14に示すように、時刻t8において、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部には、対応するマーク信号の入力タイミングにおける圧胴ロール位置データA2(次回の印刷の基準となるマークm2の圧胴ロール位置データA2)が存在する。したがって、印刷間隔長演算器323は、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、印刷位置データ保持器321から印刷位置データB4を入力し、マーク位置データ保持器322からマーク位置データA2(FIFOの記憶部に書き込まれた最旧のマーク位置データA2)を入力し、前記式(1)によってL=Z−(B4−A2)の演算を行い、印刷間隔長Lを出力する。これにより、版ロール3は、次回の印刷までの間、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に応じて加減速し、その後、圧胴ロール2と同じ一定速度で回転する。尚、マーク位置データ保持器322に備えたFIFOの記憶部には、マーク位置データA2が読み出された後、マークm3,m4の圧胴ロール位置データA3,A4が存在している。
【0092】
このように、印刷間隔長演算器323によって、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、印刷位置データ保持器321から印刷位置データBが入力され、マーク位置データ保持器322のFIFOの記憶部から最旧のマーク位置データAが入力され、前記式(1)を用いて印刷間隔長Lが演算される。また、入力されたマーク位置データAがヌルのデータの場合、すなわち、マーク位置データ保持器322のFIFOの記憶部に、次回の印刷の基準となるマークの圧胴ロール位置データが書き込まれていない場合、印刷間隔設定値Sが印刷間隔長Lに設定される。この場合、後述の印刷位置偏差検出器33及び版ロール速度指令生成器34により、版ロール3を回転させるための版ロール速度指令は、圧胴ロール2と同じ一定速度となり、版ロール3及び圧胴ロール2は等速で回転することになる。
【0093】
〔印刷位置偏差検出器〕
次に、図4に示したコントローラ13に備えた版ロール制御部30の印刷位置偏差検出器33について説明する。図15は、印刷位置偏差検出器33の構成を示すブロック図であり、図16は、印刷位置偏差検出器33の処理を示すフローチャートである。この印刷位置偏差検出器33は、設定器331及び偏差カウンタ332を備えている。前述のとおり、印刷位置偏差検出器33は、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、基準パルスに基づいてカウンタの設定値を設定し、フィードバック制御された版ロールFBパルス及び圧胴ロールFBパルスの入力に伴って、設定値からゼロまで減少するカウンタ値を、版ロールポジションエラーとして生成する。
【0094】
印刷位置偏差検出器33の設定器331は、版ロール位置/速度検出器31から印刷タイミング信号を入力したか否かを判定し(ステップS1601)、印刷タイミング信号を入力したと判定した場合(ステップS1601:Y)、印刷位置位相合わせ器32から、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する数のパルス信号を有する基準パルスを入力する。そして、設定器331は、基準パルスにおけるパルス信号の数に基づいて、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する基準設定値を求め(ステップS1602)、偏差カウンタ332に出力する。一方、設定器331は、ステップS1601において、印刷タイミング信号を入力していないと判定した場合(ステップS1601:N)、処理を終了してステップS1601を実行し、印刷タイミング信号の入力を待つ。
【0095】
偏差カウンタ332は、設定器331から基準設定値を入力すると共に、版ロール位置/速度検出器31から版ロールFBパルスを、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロールFBパルスをそれぞれ入力する。ここで、基準設定値は、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する値であり、版ロールFBパルスは、版ロール3の回転に伴う版ロールポジションFBの数値の変化に応じたパルス信号により構成され、圧胴ロールFBパルスは、圧胴ロール2の回転に伴う圧胴ロールポジションFBの数値の変化に応じたパルス信号により構成される。圧胴ロール2は一定速度で回転するから、圧胴ロールポジションFBの数値は一定速度で増加し、圧胴ロールFBパルスは、一定間隔で定期的なパルス信号となる。また、版ロール3は、圧胴ロール2と同じ一定速度で回転する場合もあるし、加減速する場合もある。したがって、版ロール3が圧胴ロール2と同じ一定速度で回転する場合、版ロールポジションFBの数値は一定速度で増加し、版ロールFBパルスは、圧胴ロールFBパルスと同じ一定間隔で定期的なパルス信号となる。また、版ロール3が加速して圧胴ロール2よりも高速で回転する場合、版ロールポジションFBの数値は急激に増加するから、版ロールFBパルスは、圧胴ロールFBパルスよりも短い間隔のパルス信号となる。また、版ロール3が減速して圧胴ロール2よりも低速で回転する場合、版ロールポジションFBの数値は急激に減少し、版ロールFBパルスは、圧胴ロールFBパルスよりも長い間隔のパルス信号となる。
【0096】
偏差カウンタ332は、入力した基準設定値をカウンタの設定値に設定し(ステップS1603)、フィードバック制御されて入力する版ロールFBパルスの数と、一定間隔で入力する圧胴ロールFBパルスの数との間の差分を設定値から減算し、減算結果をカウンタ値として生成する(ステップS1604)。このカウンタ値は、版ロールFBパルスを入力する毎に減少し、圧胴ロールFBパルスを入力する毎に増加する。版ロールFBパルスがフィードバック制御されるのは、版ロールFBパルスの入力間隔が、当該偏差カウンタ332のカウンタ値である版ロールポジションエラーの値に応じて生成される版ロール速度指令に依存するからである。そして、偏差カウンタ332は、カウンタ値を版ロールポジションエラーとして、版ロール速度指令生成器34に出力する(ステップS1605)。
【0097】
図17は、印刷タイミング信号、版ロールポジションエラー等のタイミングチャートを示す図である。図17に示すように、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する基準パルスに基づいて基準設定値が求められ、この基準設定値が偏差カウンタ332の設定値に設定される。基準設定値は、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に比例して大きくなる。そして、偏差カウンタ332のカウンタ値である版ロールポジションエラーは、一定間隔の圧胴ロールFBパルスの入力によって加算され、フィードバックされた版ロールFBパルスの入力によって減算される。版ロール速度指令は、印刷位置偏差検出器33及び版ロール速度指令生成器34によって、偏差カウンタ332の版ロールポジションエラーがゼロになるように制御され、図17に示すように、後述する版ロール速度指令生成器34による上下限制限及びランプ処理の制限の下で、加速して一定速度になり減速して元の一定速度(圧胴ロール2と同じ一定速度)に戻る。このように、版ロールポジションエラーは、ゼロに向かって減少しゼロになる。ここで、版ロール速度指令の一定速度は、版ロール速度指令生成器34の上下限制限器345によりクランプされ、版ロール速度指令の加速及び減速の変化量は、版ロール速度指令生成器34のランプ器346により制限される。
【0098】
このように、印刷位置偏差検出器33によって、印刷タイミング信号の入力タイミングで、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する基準パルスに基づいてカウンタの設定値が設定され、フィードバック制御された版ロールFBパルス及び圧胴ロールFBパルスの入力に伴って、設定値からゼロまで減少するカウンタ値が、版ロールポジションエラーとして生成される。これにより、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差を示す圧胴ロール2及び版ロール3の位相ズレが、カウンタの設定値に設定され、このカウンタ値である版ロールポジションエラーがゼロになるように、後述する版ロール速度指令生成器34において版ロール速度指令が生成される。
【0099】
〔版ロール速度指令生成器〕
次に、図4に示したコントローラ13に備えた版ロール制御部30の版ロール速度指令生成器34について説明する。図18は、版ロール速度指令生成器34の構成を示すブロック図であり、図19は、版ロール速度指令生成器34の処理を示すフローチャートである。この版ロール速度指令生成器34は、乗算器341,343,344、加算器342、上下限制限器345及びランプ器346を備えている。前述のとおり、版ロール速度指令生成器34は、圧胴ロール速度FBに対し、版ロールポジションエラーにゲインを乗算した乗算結果を加算し、加算結果を版ロール速度指令として生成し、上下限制限及びランプ処理を行う。
【0100】
版ロール速度指令生成器34の乗算器341は、印刷位置偏差検出器33から版ロールポジションエラーを入力すると共に、予め設定されたポジションゲインを入力し、版ロールポジションエラーにポジションゲインを乗算してポジションエラー速度を生成し、ポジションエラー速度を加算器342に出力する(ステップS1901)。このポジションエラー速度は、版ロール3によって印刷が材料1上の所定位置に行われるようにするために、現時点における圧胴ロール2及び版ロール3の同期ズレを補正するための速度である。
【0101】
加算器342は、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロール速度FBを入力すると共に、乗算器341からポジションエラー速度を入力し、圧胴ロール速度FBにポジションエラー速度を加算して速度指令を生成し、速度指令を上下限制限器345に出力する(ステップS1902)。
【0102】
乗算器343は、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロール速度FBを入力すると共に、予め設定された最大速度変化率を入力し、圧胴ロール速度FBに最大速度変化率を乗算して上限値を生成し、上限値を上下限制限器345に出力する。また、乗算器344は、圧胴ロール位置/速度検出器41から圧胴ロール速度FBを入力すると共に、予め設定された最小速度変化率を入力し、圧胴ロール速度FBに最小速度変化率を乗算して下限値を生成し、下限値を上下限制限器345に出力する。そして、上下限制限器345は、加算器342から速度指令を入力すると共に、乗算器343から上限値を、乗算器344から下限値をそれぞれ入力し、速度指令の上下限制限を行い(ステップS1903)、速度指令が上限値以上の場合は上限値を速度指令に設定し、速度指令が下限値以下の場合は下限値を速度指令に設定し、上下限制限後の速度指令をランプ器346に出力する。
【0103】
ランプ器346は、上下限制限器345から速度指令を入力し、入力した速度指令に対してランプ処理(例えば、1次遅れの特性を有するフィルタ処理)を施すことにより、速度指令を所定の時定数にて遅延させ(ステップS1904)、ランプ処理後の速度指令を版ロール速度指令として版ロールインバータ12へ出力する(ステップS1905)。
【0104】
図17に示した版ロール速度指令を参照して、版ロール速度指令は、圧胴ロール速度FBを基準にして、この値に版ロールポジションエラーの乗算結果を加算した指令である。版ロール速度指令は、ランプ器346のランプ処理によって立ち上がりの加速度が制限され、版ロール速度指令が上限値に達すると、上下限制限器345の上限チェックにより制限されることで上限値の値を維持する。そして、版ロールポジションエラーが小さくなるに従って、版ロール速度指令が上限値以下になり、ランプ器346のランプ処理によって立下りの減速度が制限される。
【0105】
このように、版ロール速度指令生成器34によって、圧胴ロール速度FBが基準にされ、この値に、版ロールポジションエラーにゲインを乗算した乗算結果が加算され、加算結果が版ロール速度指令として生成され、上下限制限及びランプ処理が行われる。これにより、版ロール速度指令は、圧胴ロール速度FBを基準にして、版ロールポジションエラーの大きさに応じた値になる。そして、版ロール速度指令は、版ロールポジションエラーがゼロに近づくに従って圧胴ロール速度FBの値に近づき、圧胴ロール2及び版ロール3の位相ズレがなくなって版ロールポジションエラーがゼロになると、圧胴ロール速度FBの値、すなわち圧胴ロール2と同じ一定速度となる。つまり、版ロール3が圧胴ロール2と同じ一定速度で同期して回転するから、圧胴ロール2及び版ロール3の位相を合わせることができる。
【0106】
以上のように、本発明の実施形態による印刷装置であるコントローラ13によれば、印刷位置位相合わせ器32が、マーク信号、印刷タイミング信号及び圧胴ロール位置データからマーク位置データA及び印刷位置データBを設定し、印刷間隔長Lを演算し、印刷間隔長Lと印刷間隔設定値Sとの間の偏差に対応する基準パルスを生成するようにした。また、印刷位置偏差検出器33が、印刷タイミング信号の入力タイミングにて、基準パルスに基づいてカウンタの設定値を設定し、フィードバック制御された版ロールFBパルス及び圧胴ロールFBパルスの入力に伴って、設定値からゼロまで減少するカウンタ値を、版ロールポジションエラーとして生成するようにした。また、版ロール速度指令生成器34が、圧胴ロール速度FBに対し、版ロールポジションエラーにゲインを乗算した乗算結果を加算し、加算結果を版ロール速度指令として生成し、上下限制限及びランプ処理を行った後、版ロール3を版ロール速度指令にて回転させるようにした。これにより、版ロールポジションエラーがゼロに近づいてゼロになり、版ロール速度指令が、圧胴ロール速度FBの値、すなわち圧胴ロール2と同じ一定速度となる。つまり、版ロール3が圧胴ロール2と同じ一定速度で同期して回転するから、圧胴ロール2及び版ロール3の位相を合わせることができ、圧胴ロール2及び版ロール3の位相ズレの補正を行うことができる。言い換えると、マーク信号による材料1上の印刷基準位置と、印刷タイミング信号による版ロール3上の印刷基準位置とを合わせることができ、見当合わせを確実に行うことができる。
【0107】
また、多色印刷を行う複数の印刷機においては、圧胴ロールモータ7及び圧胴ロールエンコーダ8は印刷機毎に設けられるから、ラインシャフトで連結した1台の大容量のモータを用いる必要がない。したがって、圧胴ロールモータ7及び圧胴ロールエンコーダ8の容量は、従来のモータよりも小さくすることができる。また、高価な位置ズレ検出装置を用いる必要がないから、安価な構成にて、印刷位置のズレの補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0108】
1 材料
2 圧胴ロール
3 版ロール
4 アニロックスロール
5 マークセンサー
6 原点センサー
7 圧胴ロールモータ
8 圧胴ロールエンコーダ
9 圧胴ロールインバータ
10 版ロールモータ
11 版ロールエンコーダ
12 版ロールインバータ
13 印刷装置(コントローラ)
20 印刷機
21 版
30 版ロール制御部
31 版ロール位置/速度検出器
32 印刷位置位相合わせ器
33 印刷位置偏差検出器
34 版ロール速度指令生成器
40 圧胴ロール制御部
41 圧胴ロール位置/速度検出器
42 圧胴ロール速度指令生成器
311,411 速度変換器
312,412 パルス変換器
313 版ロール位置検出器
314 印刷タイミング信号検出器
321 印刷位置データ保持器
322 マーク位置データ保持器
323 印刷間隔長演算器
324 パルス変換器
325 基準パルス演算器
331 設定器
332 偏差カウンタ
341,343,344 乗算器
342 加算器
345 上下限制限器
346 ランプ器
413 圧胴ロールラインカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧胴ロールの回転によって、所定間隔でマークが付された材料を走行させると共に、版が設けられた版ロールを回転させ、前記圧胴ロールと前記版ロールとの間に前記材料を挟挿させることで、前記マークを基準にした前記材料の所定箇所に、前記版によって印刷を順次行う印刷装置において、
予め設定された一定速度の圧胴ロール速度指令を生成し、前記圧胴ロールを回転させる圧胴ロール速度指令生成器と、
前記圧胴ロールの回転位置を示す圧胴ロール位置データ、及び前記圧胴ロールの回転速度を示す圧胴ロール速度フィードバックを検出する圧胴ロール位置/速度検出器と、
前記版ロールに設けられた原点検出片を検出する検出器から、前記原点検出片を検出したことを示す原点信号を入力し、前記原点信号に基づいて印刷タイミング信号を検出する印刷タイミング信号検出器と、
前記マークを検出する検出器から、前記マークを検出したことを示すマーク信号を入力し、前記マーク信号の入力タイミングにおいて前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール位置データ、及び、前記印刷タイミング信号の検出タイミングにおいて前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール位置データに基づいて、前記材料上の印刷間隔長を演算し、前記印刷間隔長と、予め設定された印刷間隔設定値との間の偏差を求め、前記偏差を印刷位置偏差とし、前記版ロールの回転及び前記圧胴ロールの回転に伴って、前記印刷位置偏差を減少させゼロにする印刷位置偏差生成器と、
前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール速度フィードバックの値を基準にして、前記印刷位置偏差を含む版ロール速度指令を生成し、前記版ロール速度指令によって前記版ロールを回転させ、前記印刷位置偏差に基づいて前記版ロールを加減速させる版ロール速度指令生成器と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記印刷位置偏差生成器は、
前記演算した印刷間隔長と予め設定された印刷間隔設定値との間の偏差を、前記版ロールの回転及び前記圧胴ロールの回転に伴ってカウンタ値がゼロに近づくカウンタの設定値に設定し、前記カウンタ値を印刷位置偏差として生成する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置において、
前記版ロール速度指令生成器は、
前記印刷位置偏差生成器により生成された印刷位置偏差に所定値を乗算し、前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール速度フィードバックの値に前記乗算結果を加算し、加算結果に基づいて版ロール速度指令を生成し、前記版ロールを回転させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記印刷位置偏差生成器は、
前記マーク信号を入力する毎に、前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール位置データを記憶部に書き込むマーク位置保持器と、
前記印刷タイミング信号の検出タイミングにて、前記圧胴ロール位置/速度検出器により検出された圧胴ロール位置データを印刷位置データとし、次回の印刷のための基準となるマークのマーク信号に対応する圧胴ロール位置データを、前記マーク位置保持器から読み出してマーク位置データとし、前記圧胴ロールと前記版ロールとの間で前記材料が挟挿されて印刷が行われる印刷位置と前記マークを検出する検出器の設置位置との間の距離、前記設定した印刷位置データ及びマーク位置データに基づいて印刷間隔長を演算する印刷間隔長演算器と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記印刷位置偏差生成器の印刷間隔長演算器は、
次回の印刷のための基準となるマークのマーク信号に対応する圧胴ロール位置データが、前記マーク位置保持器に書き込まれていない場合、予め設定された印刷間隔設定値を前記印刷間隔長とする、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記印刷位置偏差生成器の印刷間隔長演算器は、
前記圧胴ロールと前記版ロールとの間で前記材料が挟挿されて印刷が行われる印刷位置と前記マークを検出する検出器の設置位置との間の距離、前記距離を補正するための補正値、前記設定した印刷位置データ及びマーク位置データに基づいて印刷間隔長を演算する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
圧胴ロールを一定速度で回転させることによって、所定間隔でマークが付された材料を走行させると共に、版が設けられた版ロールを回転させ、前記圧胴ロールと前記版ロールとの間に前記材料を挟挿させることで、前記マークを基準にした前記材料の所定箇所に、前記版によって印刷を順次行う印刷方法において、
前記圧胴ロールの回転位置を示す圧胴ロール位置データ、及び前記圧胴ロールの回転速度を示す圧胴ロール速度フィードバックを検出するステップと、
前記版ロールに設けられた原点検出片を検出する検出器から、前記原点検出片を検出したことを示す原点信号を入力し、前記原点信号に基づいて印刷タイミング信号を検出するステップと、
前記マークを検出する検出器から、前記マークを検出したことを示すマーク信号を入力し、前記マーク信号の入力タイミングにおいて検出した圧胴ロール位置データ、及び、前記印刷タイミング信号の検出タイミングにおいて検出した圧胴ロール位置データに基づいて、前記材料上の印刷間隔長を演算するステップと、
前記印刷間隔長と、予め設定された印刷間隔設定値との間の偏差を求め、前記偏差を印刷位置偏差とし、前記版ロールの回転及び前記圧胴ロールの回転に伴って、前記印刷位置偏差を減少させゼロにするステップと、
前記検出した圧胴ロール速度フィードバックの値を基準にして、前記印刷位置偏差を含む版ロール速度指令を生成し、前記版ロール速度指令によって前記版ロールを回転させ、前記印刷位置偏差に基づいて前記版ロールを加減速させるステップと、
を有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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