印刷装置及び印刷方法
【課題】搬送装置による搬送停止位置が変動しても転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置を提供する。
【解決手段】転写の際に、まず転写フィルムの供給スプール47の駆動モータM1を駆動して画像情報記録部dを転写開始位置Nにまで搬送して停止させる。このとき駆動モータM1のオーバーランによる停止位置のずれの量を駆動モータの回転に同期してエンコーダ80が発生するクロックパルスをカウントすることで検出し、続いてこのカウント値に基づきカードの先端が画像情報記録部dと頭合わせする位置まで搬送ローラ30により搬送して停止させる。そして、カードと転写フィルムとを同時に搬送するとともに、転写プラテン31とヒートローラ33にてカードと転写フィルム46をニップしてカードに画像を転写する。
【解決手段】転写の際に、まず転写フィルムの供給スプール47の駆動モータM1を駆動して画像情報記録部dを転写開始位置Nにまで搬送して停止させる。このとき駆動モータM1のオーバーランによる停止位置のずれの量を駆動モータの回転に同期してエンコーダ80が発生するクロックパルスをカウントすることで検出し、続いてこのカウント値に基づきカードの先端が画像情報記録部dと頭合わせする位置まで搬送ローラ30により搬送して停止させる。そして、カードと転写フィルムとを同時に搬送するとともに、転写プラテン31とヒートローラ33にてカードと転写フィルム46をニップしてカードに画像を転写する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカードなどの記録媒体に転写フィルム上の画像を転写する印刷装置に係わり、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の装置は、プラスチックカードなどの媒体上に顔写真、文字情報などの画像を形成する装置として広く知られているが、転写フィルムに形成した画像をプラテン部で記録媒体に転写する場合に、プラテン部まで搬送されてくる転写フィルムと記録媒体との位置合わせを正確に行う必要がある。
【0003】
そうしたことから、転写フィルムにおける画像の前端が再転写位置の直前まで搬送して、転写フィルム上の画像の前端とカードの前端との位置合わせを行った後、ヒートローラを移動させて転写フィルム面上に押し当てて転写を行う構成が知られていた(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
そして、中間転写プリンタの二次転写部において、転写フィルムとカードを転写開始位置で位置合わせを行うには、転写フィルムとカードとをヒートローラとプラテンとのニップ点に位置合わせを行う方法が従来採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−198963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術においては、カードはステッピングモータの駆動力にて搬送されるため、ヒートローラとプラテンとのニップ点に正確に止めることができるものの、転写フィルムはDCモータの駆動力にて搬送されるためDCモータは停止するときのオーバーランが一定ではなく、転写フィルムをニップ点で正確に止めることは困難でカードの転写開始位置とフィルムの転写開始位置がずれてしまう問題点があった。
【0007】
転写フィルムは供給スプールに大量に巻回されており、転写時に巻取スプールの回転により転写フィルムを供給スプールから小出ししながら取り出すものである。従って、大きな起動トルクや速度制御・出力制御のしやすさ等の特性に優れたDCモータは転写フィルムの搬送モータとして最適なモータとされている。
【0008】
本発明は、転写フィルムとカードとが正確に位置合わせした状態でヒートローラとプラテンとにニップされて、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため本発明による印刷装置は、フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷装置であって、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、前記フィルム状媒体を搬送するフィルム搬送手段と、前記フィルム搬送手段を制御して、前記フィルム状媒体に形成されている画像情報記録部を転写開始位置にまで搬送する位置合せ処理を行い、続いて前記記録媒体搬送手段を制御して、前記記録媒体を前記転写開始位置にまで搬送する位置合わせ処理を行う位置合わせ処理手段と、両方の前記位置合わせ後に前記記録媒体に前記画像情報記録部を圧し付けて画像を転写する転写手段とを備え、前記位置合わせ処理手段は、前記位置合わせ処理時に前記画像情報記録部の停止位置を検出する検出手段を有し、前記検出手段の検出結果に応じて、前記記録媒体の前記転写開始位置への搬送量を補正し、前記記録媒体搬送手段と前記フィルム搬送手段とは、前記転写手段による転写時にそれぞれ前記記録媒体と前記フィルム状媒体とを同時に搬送することを特徴としている。
【0010】
そして、前記記録媒体搬送手段はステッピングモータで駆動し、前記フィルム搬送手段はDCモータで駆動するように構成したことを特徴としている。
【0011】
そして、前記検出手段は、前記DCモータの回転に同期したクロックパルスを発生するエンコーダを備えて、前記フィルム搬送手段の停止制御から前記DCモータのオーバーランによる前記転写開始位置からのずれ量を、前記クロックパルスをカウントすることにより検出することを特徴としている。
【0012】
また、前記位置合わせ処理手段は、前記クロックパルスのカウント値に基づき検出した前記画像情報記録部の停止位置に応じて前記ステッピングモータの回転量を調整し、前記画像情報記録部と前記カードとの位置合わせを行うことを特徴としている。
【0013】
また、前記位置合わせ処理手段は、フィルムパス移動手段にて前記フィルム搬送手段によるフィルム搬送パスが移動して前記記録媒体搬送手段の前記媒体搬送パスと接触した状態で前記位置合わせ処理を行うことを特徴としている。
【0014】
そして、前記フィルムパス移動手段は、前記フィルム搬送手段を構成する剥離コロであることを特徴している。
【0015】
上記課題を達成するため本発明による印刷方法は、フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷方法であって、前記フィルム状媒体の画像情報記録部分を転写開始位置まで搬送するステップと、前記画像情報記録部分と転送開始位置とのずれを検出するステップと、検出された前記ずれの位置まで前記記録媒体の先端を搬送して位置合わせを行うステップと、前記位置合わせにより前記フィルム状媒体と前記記録媒体とを同時に搬送して前記画像情報記録部分の記録情報を前記記録媒体に転写するステップとを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルム搬送手段の位置合せ時の停止位置が安定しないため、先にフィルム状媒体の転写開始位置までへの頭出しによる位置合わせを行い、続いて記録媒体の位置合わせで補うことで、フィルムの画像情報記録部と記録媒体の印刷開始位置を正確に合わせることができる。これにより、転写ずれを引き起こすことがなく正確な印刷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わる印刷装置の全体構成を示す。
【図2】図1の装置に於けるフィルムカセットの斜視図を示す。
【図3】図1の装置に於ける画像転写に係わる部分の構成図を示す。
【図4】エンコーダの構成説明図を示す。
【図5】本発明に係わる印刷装置の制御構成をブロック図にて示す。
【図6】本発明に係わる印刷装置においてカードが接近してきた状態の動作説明図を示す。
【図7】本発明に係わる印刷装置において剥離コロが剥離位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図8】本発明に係わる印刷装置においてヒートローラが作動位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図9】本発明に係わる印刷装置においてカード後端がヒートローラを通過して転写が終了した状態の動作説明図を示す。
【図10】本発明に係わる印刷装置において剥離コロが剥離位置から退避位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図11】本発明に係わる印刷装置においての転写フィルムの画像情報記録部が転写開始位置から外れた状態の説明図を示す。
【図12】本発明に係わる印刷装置において転写フィルムの画像情報記録部とカード先端との位置合わせが行われた状態の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、フィルム状媒体を通して記録媒体に画像を転写する印刷装置に関するもので、好適な実施の形態として、カードに転写フィルムを通して画像情報を記録する印刷装置を示して本発明を説明する。
【0019】
図1は本発明に係わる印刷装置の全体構成の説明図である。この装置は、各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカード等に転写フィルムを通して画像情報を転写し印刷するものである。このため情報記録部Aと画像記録部(画像形成部;以下同様)Bと、これらにカードを供給するカード供給部Cが備えられている。
【0020】
[カード供給部]
装置ハウジング1にはカード供給部Cが設けられ、複数枚のカードを収納するカードカセットで構成されている。図1に示すカードカセット3は複数のカードを立位姿勢で整列して収納し、同図左端から右端にカードを繰り出す。そしてカードカセット3の先端には分離開口7が設けられ、ピックアップローラ19で最前列のカードから装置内に供給する。
【0021】
[情報記録部の構成]
上述のカードカセット3から送られたカード(記録媒体;以下同様)は搬入ローラ22から反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレーム(不図示)に旋回動可能に軸受け支持されたユニットフレームと、このフレームに支持された一対、或いは複数のローラ対で構成される。
【0022】
図示のものは距離を隔てて前後に配置された2つのローラ対20、21をユニットフレームに回転自在に軸支持されている。そしてユニットフレームは旋回モータ(パルスモータなど)で所定角度方向に旋回動し、これに取付けられているローラ対は搬送モータで正逆転方向に回転するように構成されている。この駆動機構は図示しないが、1つのパルスモータでユニットフレームの旋回動と、ローラ対の回転をクラッチで切り換えるように構成しても、ユニットフレームの旋回動とローラ対の回転を別駆動に構成してもよい。
【0023】
従ってカードカセット3に準備されたカードはピックアップローラ19と分離ローラ(アイドルコロ)9で1枚ずつ分離され下流側の反転ユニットFに送られる。そして反転ユニットFはカードをローラ対20、21でユニット内に搬入し、ローラ対でニップした状態で所定角度方向に姿勢偏向することとなる。
【0024】
上記反転ユニットFの旋回方向外周には、磁気記録ユニット24と、非接触式IC記録ユニット23及び接触式IC記録ユニット27と、リジェクトスタッカ25が配置されている。尚、図示28はバーコードリーダであり、例えば後述する画像形成部Bで印刷したバーコードを読み取って正誤判別(エラー判別)するためのユニットである。以下、これらの記録ユニットをデータ記録ユニットという。
【0025】
そこで反転ユニットFで所定の角度方向に姿勢偏向されたカードをローラ対20、21で記録ユニットに移送すると、カードに磁気的若しくは電気的にデータ入力することが可能となる。またこれらのデータ入力ユニットで記録ミスが生じた場合にはリジェクトスタッカ25に搬出する。
【0026】
上記反転ユニットFの下流側には画像形成部Bが設けられ、この画像形成部Bにカードカセット3からカードを移送する搬送経路P1が設けられ、この経路P1に前述の反転ユニットFが配置されている。また、搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)29、30が配置され、カードの正確な位置決め制御を実現するために図示しないステッピングモータに連結されている。この搬送ローラ29、30は正逆転切り換え可能に構成され、反転ユニットFから画像形成部Bにカードを搬送するのと同様に画像形成部Bからカードを反転ユニットFに搬送するようになっている。
【0027】
上記画像形成部Bの下流側には収容スタッカ55にカードを移送する搬出経路P2が設けられている。搬出経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0028】
尚、搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはディカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することによってカール矯正する。このためディカール機構36は図示しない昇降機構(カムなど)で図1上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0029】
[画像形成部]
画像形成部Bは、印刷のための記録媒体であるカードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成する。この画像形成部Bにはカード上に画像を形成する。図示の装置は、転写フィルム46(中間転写のフィルム状媒体)上に先ず画像形成(一次転写)し、更にこのフィルムの画像を転写プラテン31でカード上に転写(二次転写)する。このため装置ハウジング1には、インクリボンカセット42と転写フィルムカセット50が装備される。
【0030】
インクリボンカセット42は、昇華型インクリボンその他の熱転写インクリボン41を操出ローラ43と巻取ローラ44間に巻装し、装置ハウジング1に着脱可能に装着される。また、装置側にはサーマルヘッド40と画像形成プラテン45がインクリボン41を挟んで対向配置されている。
【0031】
上記サーマルヘッド40にはヘッドコントローラ用IC(図5参照)が連結され、サーマルヘッド40を熱制御するようになっている。このヘッドコントローラ用IC74aは画像データに従ってサーマルヘッド40を加熱制御することによってインクリボン41を後述する転写フィルム46に画像形成する。これにより転写フィルム46には画像情報記録部d(図11参照)が形成されて、後にカードに転写されることになる。このため、サーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取ローラ44が回転し、インクリボン41を所定速度で巻き取るように構成されている。冷却ファンf1はサーマルヘッド40を冷やす為のものである。
【0032】
一方、転写フィルムカセット50(以下「フィルムカセット」という)も装置ハウジング1に着脱可能に装着される。このフィルムカセット50に装填された転写フィルム46がプラテンローラ(画像形成プラテン)45とインクリボン41の間を走行して転写フィルム上に画像情報記録部dを形成する。このため転写フィルム46は供給スプール47と巻取スプール48に巻回され、この転写フィルム46は画像形成プラテン45で形成された画像を転写プラテン31と後述するヒートローラ33の間に移送する。
【0033】
移送ローラ49は、転写フィルム46への画像形成時(一次転写)にのみ転写フィルム46を搬送する主の搬送ローラとなるもので、ステッピングモータSM2に連結されている。そして、移送ローラ49の周面にピンチローラ32aと32bが配置されており、ピンチローラ32aと32bは一次転写状態では、図1及び図3で示すように移送ローラ49の周面を圧接して転写フィルム46を移送ローラ49に密接させており、移送ローラ49はステッピングモータSM2の駆動にて正確な搬送動作を行う。
【0034】
また、ガイドコロ34aは転写プラテン31に転写フィルム46を案内するもので、剥離コロ34bは転写プラテン31を記録媒体から剥離する。このガイドコロ34aと剥離コロ34bは転写プラテン31を挟んでガイドコロ34aが上流側に、剥離コロ34bが下流側に、それぞれフィルムカセット50に取付けられている。また、ガイドコロ34aと剥離コロ34bとの間隔L1は記録媒体Kの画像形成方向(搬送方向)長さLcより短く(L1<Lc)設定されている。
【0035】
ヒートローラ33は、転写フィルム46を挟んで転写プラテン31に対向して配置されている。ヒートローラ33は、転写フィルム46上に形成された画像情報記録部dの画像をカードに加熱圧接して転写する。そして、ヒートローラ33は、図示しないシフトモータの駆動により昇降し、フィルムカセット50の内側から転写プラテン31に圧接・離間するよう構成されている。
【0036】
センサSe1はインクリボン41の位置を検出するものであり、センサSe2は転写フィルム46の有無を検出する。また、画像形成部Bには装置内に発生した熱を外に出す為のファンf2が設けられている。
【0037】
[フィルムカセットの構成]
上述の転写フィルム46を装填するフィルムカセット50について説明する。このフィルムカセット50は図2に示すように装置ハウジング1とは分離したユニットで構成され、装置ハウジング1に着脱可能に取付けられている。図示しないが図1で前面側にフロントカバーが開閉自在に配置され、このフロントカバーを開けた状態で装置フレームにフィルムカセット50を図2の矢印方向に装着するようになっている。
【0038】
このフィルムカセット50には、供給スプール47と巻取スプール48が着脱可能に装着される。軸受部52はスプールの一端を支持しており、カップリング部材56はスプールの他端側を支持している。そして、供給スプール47から剥離コロ34b、を経てガイドコロ34a、35b、35a、次いで巻取スプール48に転写フィルム46が架け渡される。
【0039】
上記ガイドコロ35a、35b、34a及び剥離コロ34bは、図示のものはフィルムカセット50に取付けたピン部材(従動コロ)で構成しているが、固定ピン(不回転)であっても良い。本装置では、カードに転写フィルム46上の画像を転写する際は供給スプール47で転写フィルム46を巻き取りながら転写を行う。よって、剥離コロ34bは転写フィルム46の転写時におけるフィルム搬送方向下流側(ヒートローラ33よりも供給スプール47側)に設けられて、カードと転写フィルム46とを剥離する。
【0040】
供給スプール47と巻取スプール48、及びこのスプール47,48との間で転写フィルム46が架け渡される剥離コロ34b、ガイドコロ34a、35b、35a等はフィルム搬送手段を構成している。剥離コロ34bは、前述したヒートローラ33の昇降動作を駆動する同じシフトモータの駆動により上下方向に昇降するように構成されている。そして、剥離コロ34bが上方に移動したとき、転写フィルム46の搬送パスと搬送ローラ30による記録媒体搬送手段の搬送パスとを接触するようになる。
【0041】
そして、図3で示すように、供給スプール47と巻取スプール48はそれぞれDCモータM1、M2の出力軸に連結されており、転写フィルム46を転写位置まで搬送するときはDCモータM1が駆動し、転写フィルム46を巻き取るときはDCモータM2が駆動する。
【0042】
転写フィルム46の巻き取り動作は、インクリボン41にて画像を形成(一次転写)する際にカラー画像であれば構成色に応じて、転写フィルム46がサーマルヘッド40面を往復移動するときの復動時に行われる。
【0043】
また、インクリボンカセット42における熱転写インクリボン41の操出ローラ43と巻取ローラ44もそれぞれDCモータM3、M4の出力軸に連結されている。
【0044】
供給スプール47や巻取スプール48によって搬送される転写フィルム46の搬送量は、DCモータM1、M2に同期して回転するエンコーダ80によって検出される。エンコーダ80は、図4に示すように、スリットが穿設された回転板81と光学式センサ82とで構成され、回転板81がDCモータM(M1、M2)の駆動力にて回転するフィルムスプールS(供給スプール47と巻取スプール48)と共に回転すると、センサ82は回転板81のスリットを検出するタイミングでオン・オフしてクロック信号を発生する。このクロック信号は、1クロックを1クロックとして使用する高密度モードと、32クロックを1クロックとして使用する分周モードの2通りの使用モードがある。
【0045】
高密度モードでクロック信号は、DCモータM1の駆動による供給スプール47の回動にて、転写フィルム46をヒートローラ33による転写位置(二次転写)にまで搬送する際、転写フィルムの停止位置のずれを把握するフィルム位置合わせ処理時に使用される。しかしながら、転写フィルム46を搬送する全ての制御において高密度モードを採用すると、制御CPUの負荷が大きくなって装置全体の処理能力が落ちてしまうため、通常は分周モードで処理する。
【0046】
上記のフィルム位置合わせ処理は、転写フィルム46に予め設定してある頭出し部をセンサSe2にて検出してからのエンコーダ80が発生するクロックパルスを制御部がカウントすることで、サーマルヘッド40にて一次転写された画像情報記録部d(図11参照)が転写プラテン31に到達したかを判断する処理である。ところで、転写プラテン31に到達したことを判断するクロックパルス数は供給スプール47が既に巻回している転写フィルム46の量に応じて異なる。すなわち、巻回している転写フィルム46の量が多いほどフィルムスプール径が大きく転写フィルム46の搬送量が増大する。そのため、当該時点でのフィルムスプール径に応じて、頭出し部をセンサSe2にて検出してから画像情報記録部dが転写プラテン31に到達するまでの供給スプール47の回転量(DCモータM1の駆動量)を算出しておく必要がある。
【0047】
この供給スプール47の回転量(DCモータM1の駆動量)は、一次転写の際に転写フィルム46の搬送に主となる移送ローラ49を駆動するステッピングモータSM2のステップ数と、エンコーダ80からのクロックパルス数の比率で算出できる。すなわち、一次転写時においてステッピングモータSM2が駆動したとき、そのステップ数は搬送距離に対応しているために、定められたステップ数の間にエンコーダ80が発生するクロックパルス数はそのときのフィルムスプール径に応じた転写フィルム46の搬送量を示すことになる。
【0048】
したがって、一次転写時にステッピングモータSM2のステップ数と、エンコーダ80からのクロックパルス数の比率をしておけば、次に二次転写のために画像情報記録部dが転写プラテン33に到達するまでにエンコーダ80が発生するクロックパルス数を予測することが可能となる。一次転写中の移送ローラ49を駆動するステッピングモータSM2は0.0106mm/stepと高分解なため、フィルムスプール径に応じた転写フィルム46の搬送量を高精度に行うことができる。
【0049】
[制御部]
制御部Hは、図5にて示すように制御CPU70で構成され、CPU70にはROM71とRAM72が備えられている。そして制御CPU70には、データ入力制御部73と、画像形成制御部74と、カード搬送制御部75が構成されている。
【0050】
カード搬送制御部75は搬送経路P1と搬出経路P2に配置されている記録媒体搬送手段(図1に示す搬送ローラ対)を制御するように図示しない駆動モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。このカード搬送制御部75は反転ユニットFの旋回モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。これと共にカード搬送制御部75はデータ入力制御部73からジョブ信号を受信するように接続されており、ジョブ信号が入力されると、装置内に配置している各カードの検知センサからの検知信号に基づきカードの搬送状態を監視するように構成されている。
【0051】
データ入力制御部73は、磁気記録ユニット24に内蔵されているデータR/W用のIC73xに入力データの送受信を制御するコマンド信号を送信し、同様に非接触式IC記録ユニット23及び接触式ICのデータR/W用のIC73yにコマンド信号を送信するように構成されている。
【0052】
画像形成制御部74は、画像形成部Bでカードの表裏面への画像形成を制御する。この画像形成制御は、カード搬送制御75でコントローラされるカードの搬送に応じてこのカード表面に転写プラテン31で画像転写する。このため画像形成制御部74は、一次転写時にサーマルヘッド40を制御して転写フィルム45に画像形成するヘッドコントローラIC74a、DCモータM3、M4の駆動を制御するインクリボンワインドモータ制御部74bと、DCモータM1、M2及びステッピングモータSM2の駆動を制御する転写フィルムワインドモータ制御部74cと、ヒートローラ33と剥離コロ34昇降させる上記のシフトモータの駆動を制御するシフトモータドライブ回路74dを備えている。
【0053】
そして上記RAM72には、データ入力部(磁気・IC記録部)でカード上にデータ入力する処理時間が、例えばデータテーブルに記憶されている。
【0054】
上記構成の本発明の実施形態に係わる印刷装置において、制御CPU70による転写フィルムとカードとの位置合わせ処理と、これに続く二次転写動作について説明する。
【0055】
画像形成するカードの転写プラテン31への接近をセンサSe4にて検知すると、制御CPU70のカード搬送制御部75はこのカードを一旦停止するようステッピングモータSM1を制御する(図6)。そして、制御CPU70の画像形成制御部74はシフトモータドライブ回路74dを制御して剥離コロ34bは剥離位置に移動させ図7の状態となる。
【0056】
この図7の状態では、剥離コロ34bを退避位置から剥離動作のための作動位置に移動させており、剥離コロ34bの移動により、転写フィルム46も剥離コロ34bと共に移動するために供給スプール47又は巻取りスプール48からフィルムが引き出されてフィルムパスが変わる。このときのフィルムパスは転写時の搬送ローラ29、30によって形成される媒体搬送手段による媒体搬送パス(搬送経路P1)と接触することになって転写フィルムの位置が確定する。
【0057】
転写フィルムの位置確定により、次に、制御CPU70は位置合わせ処理手段としての制御を行う。まず、転写フィルムワインドモータ74cを制御して転写フィルム46の画像情報記録部d(図11参照)の位置合わせ処理を行うために転写フィルム46を搬送する。この場合、画像形成制御部74は、センサSe2にて転写フィルム46の画像情報記録部dの先頭に設定しているフィルム頭出しマーク(図示せず)を検知してからエンコーダ80から発生するクロック信号をカウントし、カウント値が所定値に達すると転写フィルム46の搬送を停止する。
【0058】
既に説明したように、転写フィルムの46の搬送量は、供給スプール47のそのときのフィルムスプール径によって搬送量が異なる。したがって、画像形成制御部74は、当該二次転写の前段での一次転写時の段階において、ステッピングモータSM2のステップ数とエンコーダ80からのクロックパルス数の比率を割り出し、これに基づき転写フィルム4の画像情報記録部dが転写プラテン31に到達するまでの間にエンコーダ80が発生するクロックパルス数を予測して所定値として持っており、カウント値が所定値に達すると転写フィルム46の搬送を停止する。
【0059】
転写フィルムの46の搬送が停止したとき、一次転写された画像情報記録部dが転写プラテン31とヒートロール33とのニップ位置である転写開始位置Nに到達している筈である。しかしながら、DCモータM1の特性から生じるオーバーランにて画像情報記録部dの停止位置は転写開始位置Nではなく誤差pが生じている(図11参照)。従って、画像形成制御部74は、転写フィルムワインドモータ制御部74cによりDCモータM1の停止制御を行ってからも、引き続いてエンコーダ80から発生するクロックパルスをカウントすることで、画像情報記録部dの停止位置を検出する。
【0060】
そして、カード搬送制御部75は、画像形成制御部74が停止制御以後からクロックパルスをカウントすることで検出した誤差pに基づいて、次のカード位置合わせ時のステッピングモータSM1の駆動量を補正する。すなわち、カード搬送制御部75には、カードKの先端がセンサSe4から転写開始位置Nまで搬送するためにステッピングモータSM1が回転するのに必要なステップ数が予め設定されており、カード搬送制御部75は画像形成制御部74が検出した誤差pを示すクロックパルスのカウント値が入力するとステッピングモータSM1のステップ数に変換して、この値を予め設定されているステップ数値に加算することで補正を行う。
【0061】
そして、カード搬送制御部75は、補正したステップ値に基づきステッピングモータSM1の回転を制御し、図7に示すようにカードは転写プラテン31まで搬送される。しかしながら、図11で示すように転写フィルム46はDCモータM1のオーバーランにて転写開始位置Nから外れているが、転写フィルム46のずれに応じてステッピングモータSM1の駆動量が補正されているために転写フィルム46の画像情報記録部dとカードKの先端の位置が図12で示すようにずれることがない。
【0062】
次に、制御CPU70の画像形成制御部74がシフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータの回転によりヒートローラ33は作動位置に移動して図8の状態となり、ヒートローラ33が転写プラテン31を圧接すると正確な位置合わせによる精度の高い転写を行うことができる。
【0063】
こうして転写フィルムの位置が確定した時点で、まず転写フィルム46の位置合わせ処理を行い、その後、転写フィルム46停止位置のずれを見越したカード先端の位置合わせ処理を行うことで転写時にカードと転写フィルム46の画像情報記録部dとがずれることがない。また、転写フィルム46の位置合わせを先に行うことで、画像情報記録部dが位置合わせ搬送中にカードと接触により擦れて破損するようなこともない。
【0064】
このとき、ヒートローラ33は硬度の低い材質のため、フィルムの停止位置がヒートローラ33と転写プラテン31とが接するニップ位置である転写開始位置Nから多少ずれてもヒートローラ33からの熱は十分伝わるために、転写に大きな影響はなく印刷品質は維持される。なお、ヒートローラ33からの熱が伝わる範囲外(例えば、転写開始位置Nから±1ミリ)にフィルムが停止した場合、エラーとして位置合せ処理をもう一度行う。
【0065】
そして、制御CPU70の画像形成制御部74は、カード後端がヒートローラ33を通過するのを見込した時間(予め設定されたタイマー時間又はカード搬送量)が経過すると、シフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータを更に所定角度回転させて、ヒートローラ33を作動位置から待機位置に復帰させる(図9)。このとき剥離コロ34は転写フィルム46をカードから剥離させる作動状態に保持されている。
【0066】
その後、制御CPU70は、カード後端が剥離コロ34bを通過する見込み時間(タイマー時間又はカード搬送量)の終了後に、再びシフトモータを所定角度回転させて、剥離コロ34bを剥離位置から退避位置に移動する(図10)。フィルムパスは媒体搬送パス(搬送経路P1)から外れる。このときヒートローラ33は待機位置に保持されている。
【0067】
上記した如く、フィルム搬送手段の供給スプール47を駆動するDCモータM1はオーバーラン等により位置合せ時の停止位置が安定しないため、先に転写フィルム46の転写開始位置Nまでへの頭出しによる位置合わせを行い、続いてオーバーランによりずれた誤差分をカード先端の頭出しによる位置合わせで補うことで、転写フィルム46の画像情報記録部dとカードの印刷開始位置を正確に合わせることができる。これにより、カードへの転写ずれを引き起こすことがなく正確な印刷が可能となる。
【符号の説明】
【0068】
29 搬送ローラ(記録媒体搬送手段)
30 搬送ローラ(記録媒体搬送手段)
31 転写プラテン(転写手段)
33 ヒートローラ(転写手段)
34b 剥離コロ(フィルムパス移動手段)
46 転写フィルム(中間転写フィルム状媒体)
47 供給スプール(フィルム搬送手段)
48 巻取スプール(フィルム搬送手段)
70 制御CPU(位置合わせ処理手段)
P1 媒体搬送パス(搬送経路)
【技術分野】
【0001】
本発明はカードなどの記録媒体に転写フィルム上の画像を転写する印刷装置に係わり、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の装置は、プラスチックカードなどの媒体上に顔写真、文字情報などの画像を形成する装置として広く知られているが、転写フィルムに形成した画像をプラテン部で記録媒体に転写する場合に、プラテン部まで搬送されてくる転写フィルムと記録媒体との位置合わせを正確に行う必要がある。
【0003】
そうしたことから、転写フィルムにおける画像の前端が再転写位置の直前まで搬送して、転写フィルム上の画像の前端とカードの前端との位置合わせを行った後、ヒートローラを移動させて転写フィルム面上に押し当てて転写を行う構成が知られていた(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
そして、中間転写プリンタの二次転写部において、転写フィルムとカードを転写開始位置で位置合わせを行うには、転写フィルムとカードとをヒートローラとプラテンとのニップ点に位置合わせを行う方法が従来採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−198963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術においては、カードはステッピングモータの駆動力にて搬送されるため、ヒートローラとプラテンとのニップ点に正確に止めることができるものの、転写フィルムはDCモータの駆動力にて搬送されるためDCモータは停止するときのオーバーランが一定ではなく、転写フィルムをニップ点で正確に止めることは困難でカードの転写開始位置とフィルムの転写開始位置がずれてしまう問題点があった。
【0007】
転写フィルムは供給スプールに大量に巻回されており、転写時に巻取スプールの回転により転写フィルムを供給スプールから小出ししながら取り出すものである。従って、大きな起動トルクや速度制御・出力制御のしやすさ等の特性に優れたDCモータは転写フィルムの搬送モータとして最適なモータとされている。
【0008】
本発明は、転写フィルムとカードとが正確に位置合わせした状態でヒートローラとプラテンとにニップされて、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため本発明による印刷装置は、フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷装置であって、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、前記フィルム状媒体を搬送するフィルム搬送手段と、前記フィルム搬送手段を制御して、前記フィルム状媒体に形成されている画像情報記録部を転写開始位置にまで搬送する位置合せ処理を行い、続いて前記記録媒体搬送手段を制御して、前記記録媒体を前記転写開始位置にまで搬送する位置合わせ処理を行う位置合わせ処理手段と、両方の前記位置合わせ後に前記記録媒体に前記画像情報記録部を圧し付けて画像を転写する転写手段とを備え、前記位置合わせ処理手段は、前記位置合わせ処理時に前記画像情報記録部の停止位置を検出する検出手段を有し、前記検出手段の検出結果に応じて、前記記録媒体の前記転写開始位置への搬送量を補正し、前記記録媒体搬送手段と前記フィルム搬送手段とは、前記転写手段による転写時にそれぞれ前記記録媒体と前記フィルム状媒体とを同時に搬送することを特徴としている。
【0010】
そして、前記記録媒体搬送手段はステッピングモータで駆動し、前記フィルム搬送手段はDCモータで駆動するように構成したことを特徴としている。
【0011】
そして、前記検出手段は、前記DCモータの回転に同期したクロックパルスを発生するエンコーダを備えて、前記フィルム搬送手段の停止制御から前記DCモータのオーバーランによる前記転写開始位置からのずれ量を、前記クロックパルスをカウントすることにより検出することを特徴としている。
【0012】
また、前記位置合わせ処理手段は、前記クロックパルスのカウント値に基づき検出した前記画像情報記録部の停止位置に応じて前記ステッピングモータの回転量を調整し、前記画像情報記録部と前記カードとの位置合わせを行うことを特徴としている。
【0013】
また、前記位置合わせ処理手段は、フィルムパス移動手段にて前記フィルム搬送手段によるフィルム搬送パスが移動して前記記録媒体搬送手段の前記媒体搬送パスと接触した状態で前記位置合わせ処理を行うことを特徴としている。
【0014】
そして、前記フィルムパス移動手段は、前記フィルム搬送手段を構成する剥離コロであることを特徴している。
【0015】
上記課題を達成するため本発明による印刷方法は、フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷方法であって、前記フィルム状媒体の画像情報記録部分を転写開始位置まで搬送するステップと、前記画像情報記録部分と転送開始位置とのずれを検出するステップと、検出された前記ずれの位置まで前記記録媒体の先端を搬送して位置合わせを行うステップと、前記位置合わせにより前記フィルム状媒体と前記記録媒体とを同時に搬送して前記画像情報記録部分の記録情報を前記記録媒体に転写するステップとを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルム搬送手段の位置合せ時の停止位置が安定しないため、先にフィルム状媒体の転写開始位置までへの頭出しによる位置合わせを行い、続いて記録媒体の位置合わせで補うことで、フィルムの画像情報記録部と記録媒体の印刷開始位置を正確に合わせることができる。これにより、転写ずれを引き起こすことがなく正確な印刷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わる印刷装置の全体構成を示す。
【図2】図1の装置に於けるフィルムカセットの斜視図を示す。
【図3】図1の装置に於ける画像転写に係わる部分の構成図を示す。
【図4】エンコーダの構成説明図を示す。
【図5】本発明に係わる印刷装置の制御構成をブロック図にて示す。
【図6】本発明に係わる印刷装置においてカードが接近してきた状態の動作説明図を示す。
【図7】本発明に係わる印刷装置において剥離コロが剥離位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図8】本発明に係わる印刷装置においてヒートローラが作動位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図9】本発明に係わる印刷装置においてカード後端がヒートローラを通過して転写が終了した状態の動作説明図を示す。
【図10】本発明に係わる印刷装置において剥離コロが剥離位置から退避位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図11】本発明に係わる印刷装置においての転写フィルムの画像情報記録部が転写開始位置から外れた状態の説明図を示す。
【図12】本発明に係わる印刷装置において転写フィルムの画像情報記録部とカード先端との位置合わせが行われた状態の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、フィルム状媒体を通して記録媒体に画像を転写する印刷装置に関するもので、好適な実施の形態として、カードに転写フィルムを通して画像情報を記録する印刷装置を示して本発明を説明する。
【0019】
図1は本発明に係わる印刷装置の全体構成の説明図である。この装置は、各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカード等に転写フィルムを通して画像情報を転写し印刷するものである。このため情報記録部Aと画像記録部(画像形成部;以下同様)Bと、これらにカードを供給するカード供給部Cが備えられている。
【0020】
[カード供給部]
装置ハウジング1にはカード供給部Cが設けられ、複数枚のカードを収納するカードカセットで構成されている。図1に示すカードカセット3は複数のカードを立位姿勢で整列して収納し、同図左端から右端にカードを繰り出す。そしてカードカセット3の先端には分離開口7が設けられ、ピックアップローラ19で最前列のカードから装置内に供給する。
【0021】
[情報記録部の構成]
上述のカードカセット3から送られたカード(記録媒体;以下同様)は搬入ローラ22から反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレーム(不図示)に旋回動可能に軸受け支持されたユニットフレームと、このフレームに支持された一対、或いは複数のローラ対で構成される。
【0022】
図示のものは距離を隔てて前後に配置された2つのローラ対20、21をユニットフレームに回転自在に軸支持されている。そしてユニットフレームは旋回モータ(パルスモータなど)で所定角度方向に旋回動し、これに取付けられているローラ対は搬送モータで正逆転方向に回転するように構成されている。この駆動機構は図示しないが、1つのパルスモータでユニットフレームの旋回動と、ローラ対の回転をクラッチで切り換えるように構成しても、ユニットフレームの旋回動とローラ対の回転を別駆動に構成してもよい。
【0023】
従ってカードカセット3に準備されたカードはピックアップローラ19と分離ローラ(アイドルコロ)9で1枚ずつ分離され下流側の反転ユニットFに送られる。そして反転ユニットFはカードをローラ対20、21でユニット内に搬入し、ローラ対でニップした状態で所定角度方向に姿勢偏向することとなる。
【0024】
上記反転ユニットFの旋回方向外周には、磁気記録ユニット24と、非接触式IC記録ユニット23及び接触式IC記録ユニット27と、リジェクトスタッカ25が配置されている。尚、図示28はバーコードリーダであり、例えば後述する画像形成部Bで印刷したバーコードを読み取って正誤判別(エラー判別)するためのユニットである。以下、これらの記録ユニットをデータ記録ユニットという。
【0025】
そこで反転ユニットFで所定の角度方向に姿勢偏向されたカードをローラ対20、21で記録ユニットに移送すると、カードに磁気的若しくは電気的にデータ入力することが可能となる。またこれらのデータ入力ユニットで記録ミスが生じた場合にはリジェクトスタッカ25に搬出する。
【0026】
上記反転ユニットFの下流側には画像形成部Bが設けられ、この画像形成部Bにカードカセット3からカードを移送する搬送経路P1が設けられ、この経路P1に前述の反転ユニットFが配置されている。また、搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)29、30が配置され、カードの正確な位置決め制御を実現するために図示しないステッピングモータに連結されている。この搬送ローラ29、30は正逆転切り換え可能に構成され、反転ユニットFから画像形成部Bにカードを搬送するのと同様に画像形成部Bからカードを反転ユニットFに搬送するようになっている。
【0027】
上記画像形成部Bの下流側には収容スタッカ55にカードを移送する搬出経路P2が設けられている。搬出経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0028】
尚、搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはディカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することによってカール矯正する。このためディカール機構36は図示しない昇降機構(カムなど)で図1上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0029】
[画像形成部]
画像形成部Bは、印刷のための記録媒体であるカードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成する。この画像形成部Bにはカード上に画像を形成する。図示の装置は、転写フィルム46(中間転写のフィルム状媒体)上に先ず画像形成(一次転写)し、更にこのフィルムの画像を転写プラテン31でカード上に転写(二次転写)する。このため装置ハウジング1には、インクリボンカセット42と転写フィルムカセット50が装備される。
【0030】
インクリボンカセット42は、昇華型インクリボンその他の熱転写インクリボン41を操出ローラ43と巻取ローラ44間に巻装し、装置ハウジング1に着脱可能に装着される。また、装置側にはサーマルヘッド40と画像形成プラテン45がインクリボン41を挟んで対向配置されている。
【0031】
上記サーマルヘッド40にはヘッドコントローラ用IC(図5参照)が連結され、サーマルヘッド40を熱制御するようになっている。このヘッドコントローラ用IC74aは画像データに従ってサーマルヘッド40を加熱制御することによってインクリボン41を後述する転写フィルム46に画像形成する。これにより転写フィルム46には画像情報記録部d(図11参照)が形成されて、後にカードに転写されることになる。このため、サーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取ローラ44が回転し、インクリボン41を所定速度で巻き取るように構成されている。冷却ファンf1はサーマルヘッド40を冷やす為のものである。
【0032】
一方、転写フィルムカセット50(以下「フィルムカセット」という)も装置ハウジング1に着脱可能に装着される。このフィルムカセット50に装填された転写フィルム46がプラテンローラ(画像形成プラテン)45とインクリボン41の間を走行して転写フィルム上に画像情報記録部dを形成する。このため転写フィルム46は供給スプール47と巻取スプール48に巻回され、この転写フィルム46は画像形成プラテン45で形成された画像を転写プラテン31と後述するヒートローラ33の間に移送する。
【0033】
移送ローラ49は、転写フィルム46への画像形成時(一次転写)にのみ転写フィルム46を搬送する主の搬送ローラとなるもので、ステッピングモータSM2に連結されている。そして、移送ローラ49の周面にピンチローラ32aと32bが配置されており、ピンチローラ32aと32bは一次転写状態では、図1及び図3で示すように移送ローラ49の周面を圧接して転写フィルム46を移送ローラ49に密接させており、移送ローラ49はステッピングモータSM2の駆動にて正確な搬送動作を行う。
【0034】
また、ガイドコロ34aは転写プラテン31に転写フィルム46を案内するもので、剥離コロ34bは転写プラテン31を記録媒体から剥離する。このガイドコロ34aと剥離コロ34bは転写プラテン31を挟んでガイドコロ34aが上流側に、剥離コロ34bが下流側に、それぞれフィルムカセット50に取付けられている。また、ガイドコロ34aと剥離コロ34bとの間隔L1は記録媒体Kの画像形成方向(搬送方向)長さLcより短く(L1<Lc)設定されている。
【0035】
ヒートローラ33は、転写フィルム46を挟んで転写プラテン31に対向して配置されている。ヒートローラ33は、転写フィルム46上に形成された画像情報記録部dの画像をカードに加熱圧接して転写する。そして、ヒートローラ33は、図示しないシフトモータの駆動により昇降し、フィルムカセット50の内側から転写プラテン31に圧接・離間するよう構成されている。
【0036】
センサSe1はインクリボン41の位置を検出するものであり、センサSe2は転写フィルム46の有無を検出する。また、画像形成部Bには装置内に発生した熱を外に出す為のファンf2が設けられている。
【0037】
[フィルムカセットの構成]
上述の転写フィルム46を装填するフィルムカセット50について説明する。このフィルムカセット50は図2に示すように装置ハウジング1とは分離したユニットで構成され、装置ハウジング1に着脱可能に取付けられている。図示しないが図1で前面側にフロントカバーが開閉自在に配置され、このフロントカバーを開けた状態で装置フレームにフィルムカセット50を図2の矢印方向に装着するようになっている。
【0038】
このフィルムカセット50には、供給スプール47と巻取スプール48が着脱可能に装着される。軸受部52はスプールの一端を支持しており、カップリング部材56はスプールの他端側を支持している。そして、供給スプール47から剥離コロ34b、を経てガイドコロ34a、35b、35a、次いで巻取スプール48に転写フィルム46が架け渡される。
【0039】
上記ガイドコロ35a、35b、34a及び剥離コロ34bは、図示のものはフィルムカセット50に取付けたピン部材(従動コロ)で構成しているが、固定ピン(不回転)であっても良い。本装置では、カードに転写フィルム46上の画像を転写する際は供給スプール47で転写フィルム46を巻き取りながら転写を行う。よって、剥離コロ34bは転写フィルム46の転写時におけるフィルム搬送方向下流側(ヒートローラ33よりも供給スプール47側)に設けられて、カードと転写フィルム46とを剥離する。
【0040】
供給スプール47と巻取スプール48、及びこのスプール47,48との間で転写フィルム46が架け渡される剥離コロ34b、ガイドコロ34a、35b、35a等はフィルム搬送手段を構成している。剥離コロ34bは、前述したヒートローラ33の昇降動作を駆動する同じシフトモータの駆動により上下方向に昇降するように構成されている。そして、剥離コロ34bが上方に移動したとき、転写フィルム46の搬送パスと搬送ローラ30による記録媒体搬送手段の搬送パスとを接触するようになる。
【0041】
そして、図3で示すように、供給スプール47と巻取スプール48はそれぞれDCモータM1、M2の出力軸に連結されており、転写フィルム46を転写位置まで搬送するときはDCモータM1が駆動し、転写フィルム46を巻き取るときはDCモータM2が駆動する。
【0042】
転写フィルム46の巻き取り動作は、インクリボン41にて画像を形成(一次転写)する際にカラー画像であれば構成色に応じて、転写フィルム46がサーマルヘッド40面を往復移動するときの復動時に行われる。
【0043】
また、インクリボンカセット42における熱転写インクリボン41の操出ローラ43と巻取ローラ44もそれぞれDCモータM3、M4の出力軸に連結されている。
【0044】
供給スプール47や巻取スプール48によって搬送される転写フィルム46の搬送量は、DCモータM1、M2に同期して回転するエンコーダ80によって検出される。エンコーダ80は、図4に示すように、スリットが穿設された回転板81と光学式センサ82とで構成され、回転板81がDCモータM(M1、M2)の駆動力にて回転するフィルムスプールS(供給スプール47と巻取スプール48)と共に回転すると、センサ82は回転板81のスリットを検出するタイミングでオン・オフしてクロック信号を発生する。このクロック信号は、1クロックを1クロックとして使用する高密度モードと、32クロックを1クロックとして使用する分周モードの2通りの使用モードがある。
【0045】
高密度モードでクロック信号は、DCモータM1の駆動による供給スプール47の回動にて、転写フィルム46をヒートローラ33による転写位置(二次転写)にまで搬送する際、転写フィルムの停止位置のずれを把握するフィルム位置合わせ処理時に使用される。しかしながら、転写フィルム46を搬送する全ての制御において高密度モードを採用すると、制御CPUの負荷が大きくなって装置全体の処理能力が落ちてしまうため、通常は分周モードで処理する。
【0046】
上記のフィルム位置合わせ処理は、転写フィルム46に予め設定してある頭出し部をセンサSe2にて検出してからのエンコーダ80が発生するクロックパルスを制御部がカウントすることで、サーマルヘッド40にて一次転写された画像情報記録部d(図11参照)が転写プラテン31に到達したかを判断する処理である。ところで、転写プラテン31に到達したことを判断するクロックパルス数は供給スプール47が既に巻回している転写フィルム46の量に応じて異なる。すなわち、巻回している転写フィルム46の量が多いほどフィルムスプール径が大きく転写フィルム46の搬送量が増大する。そのため、当該時点でのフィルムスプール径に応じて、頭出し部をセンサSe2にて検出してから画像情報記録部dが転写プラテン31に到達するまでの供給スプール47の回転量(DCモータM1の駆動量)を算出しておく必要がある。
【0047】
この供給スプール47の回転量(DCモータM1の駆動量)は、一次転写の際に転写フィルム46の搬送に主となる移送ローラ49を駆動するステッピングモータSM2のステップ数と、エンコーダ80からのクロックパルス数の比率で算出できる。すなわち、一次転写時においてステッピングモータSM2が駆動したとき、そのステップ数は搬送距離に対応しているために、定められたステップ数の間にエンコーダ80が発生するクロックパルス数はそのときのフィルムスプール径に応じた転写フィルム46の搬送量を示すことになる。
【0048】
したがって、一次転写時にステッピングモータSM2のステップ数と、エンコーダ80からのクロックパルス数の比率をしておけば、次に二次転写のために画像情報記録部dが転写プラテン33に到達するまでにエンコーダ80が発生するクロックパルス数を予測することが可能となる。一次転写中の移送ローラ49を駆動するステッピングモータSM2は0.0106mm/stepと高分解なため、フィルムスプール径に応じた転写フィルム46の搬送量を高精度に行うことができる。
【0049】
[制御部]
制御部Hは、図5にて示すように制御CPU70で構成され、CPU70にはROM71とRAM72が備えられている。そして制御CPU70には、データ入力制御部73と、画像形成制御部74と、カード搬送制御部75が構成されている。
【0050】
カード搬送制御部75は搬送経路P1と搬出経路P2に配置されている記録媒体搬送手段(図1に示す搬送ローラ対)を制御するように図示しない駆動モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。このカード搬送制御部75は反転ユニットFの旋回モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。これと共にカード搬送制御部75はデータ入力制御部73からジョブ信号を受信するように接続されており、ジョブ信号が入力されると、装置内に配置している各カードの検知センサからの検知信号に基づきカードの搬送状態を監視するように構成されている。
【0051】
データ入力制御部73は、磁気記録ユニット24に内蔵されているデータR/W用のIC73xに入力データの送受信を制御するコマンド信号を送信し、同様に非接触式IC記録ユニット23及び接触式ICのデータR/W用のIC73yにコマンド信号を送信するように構成されている。
【0052】
画像形成制御部74は、画像形成部Bでカードの表裏面への画像形成を制御する。この画像形成制御は、カード搬送制御75でコントローラされるカードの搬送に応じてこのカード表面に転写プラテン31で画像転写する。このため画像形成制御部74は、一次転写時にサーマルヘッド40を制御して転写フィルム45に画像形成するヘッドコントローラIC74a、DCモータM3、M4の駆動を制御するインクリボンワインドモータ制御部74bと、DCモータM1、M2及びステッピングモータSM2の駆動を制御する転写フィルムワインドモータ制御部74cと、ヒートローラ33と剥離コロ34昇降させる上記のシフトモータの駆動を制御するシフトモータドライブ回路74dを備えている。
【0053】
そして上記RAM72には、データ入力部(磁気・IC記録部)でカード上にデータ入力する処理時間が、例えばデータテーブルに記憶されている。
【0054】
上記構成の本発明の実施形態に係わる印刷装置において、制御CPU70による転写フィルムとカードとの位置合わせ処理と、これに続く二次転写動作について説明する。
【0055】
画像形成するカードの転写プラテン31への接近をセンサSe4にて検知すると、制御CPU70のカード搬送制御部75はこのカードを一旦停止するようステッピングモータSM1を制御する(図6)。そして、制御CPU70の画像形成制御部74はシフトモータドライブ回路74dを制御して剥離コロ34bは剥離位置に移動させ図7の状態となる。
【0056】
この図7の状態では、剥離コロ34bを退避位置から剥離動作のための作動位置に移動させており、剥離コロ34bの移動により、転写フィルム46も剥離コロ34bと共に移動するために供給スプール47又は巻取りスプール48からフィルムが引き出されてフィルムパスが変わる。このときのフィルムパスは転写時の搬送ローラ29、30によって形成される媒体搬送手段による媒体搬送パス(搬送経路P1)と接触することになって転写フィルムの位置が確定する。
【0057】
転写フィルムの位置確定により、次に、制御CPU70は位置合わせ処理手段としての制御を行う。まず、転写フィルムワインドモータ74cを制御して転写フィルム46の画像情報記録部d(図11参照)の位置合わせ処理を行うために転写フィルム46を搬送する。この場合、画像形成制御部74は、センサSe2にて転写フィルム46の画像情報記録部dの先頭に設定しているフィルム頭出しマーク(図示せず)を検知してからエンコーダ80から発生するクロック信号をカウントし、カウント値が所定値に達すると転写フィルム46の搬送を停止する。
【0058】
既に説明したように、転写フィルムの46の搬送量は、供給スプール47のそのときのフィルムスプール径によって搬送量が異なる。したがって、画像形成制御部74は、当該二次転写の前段での一次転写時の段階において、ステッピングモータSM2のステップ数とエンコーダ80からのクロックパルス数の比率を割り出し、これに基づき転写フィルム4の画像情報記録部dが転写プラテン31に到達するまでの間にエンコーダ80が発生するクロックパルス数を予測して所定値として持っており、カウント値が所定値に達すると転写フィルム46の搬送を停止する。
【0059】
転写フィルムの46の搬送が停止したとき、一次転写された画像情報記録部dが転写プラテン31とヒートロール33とのニップ位置である転写開始位置Nに到達している筈である。しかしながら、DCモータM1の特性から生じるオーバーランにて画像情報記録部dの停止位置は転写開始位置Nではなく誤差pが生じている(図11参照)。従って、画像形成制御部74は、転写フィルムワインドモータ制御部74cによりDCモータM1の停止制御を行ってからも、引き続いてエンコーダ80から発生するクロックパルスをカウントすることで、画像情報記録部dの停止位置を検出する。
【0060】
そして、カード搬送制御部75は、画像形成制御部74が停止制御以後からクロックパルスをカウントすることで検出した誤差pに基づいて、次のカード位置合わせ時のステッピングモータSM1の駆動量を補正する。すなわち、カード搬送制御部75には、カードKの先端がセンサSe4から転写開始位置Nまで搬送するためにステッピングモータSM1が回転するのに必要なステップ数が予め設定されており、カード搬送制御部75は画像形成制御部74が検出した誤差pを示すクロックパルスのカウント値が入力するとステッピングモータSM1のステップ数に変換して、この値を予め設定されているステップ数値に加算することで補正を行う。
【0061】
そして、カード搬送制御部75は、補正したステップ値に基づきステッピングモータSM1の回転を制御し、図7に示すようにカードは転写プラテン31まで搬送される。しかしながら、図11で示すように転写フィルム46はDCモータM1のオーバーランにて転写開始位置Nから外れているが、転写フィルム46のずれに応じてステッピングモータSM1の駆動量が補正されているために転写フィルム46の画像情報記録部dとカードKの先端の位置が図12で示すようにずれることがない。
【0062】
次に、制御CPU70の画像形成制御部74がシフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータの回転によりヒートローラ33は作動位置に移動して図8の状態となり、ヒートローラ33が転写プラテン31を圧接すると正確な位置合わせによる精度の高い転写を行うことができる。
【0063】
こうして転写フィルムの位置が確定した時点で、まず転写フィルム46の位置合わせ処理を行い、その後、転写フィルム46停止位置のずれを見越したカード先端の位置合わせ処理を行うことで転写時にカードと転写フィルム46の画像情報記録部dとがずれることがない。また、転写フィルム46の位置合わせを先に行うことで、画像情報記録部dが位置合わせ搬送中にカードと接触により擦れて破損するようなこともない。
【0064】
このとき、ヒートローラ33は硬度の低い材質のため、フィルムの停止位置がヒートローラ33と転写プラテン31とが接するニップ位置である転写開始位置Nから多少ずれてもヒートローラ33からの熱は十分伝わるために、転写に大きな影響はなく印刷品質は維持される。なお、ヒートローラ33からの熱が伝わる範囲外(例えば、転写開始位置Nから±1ミリ)にフィルムが停止した場合、エラーとして位置合せ処理をもう一度行う。
【0065】
そして、制御CPU70の画像形成制御部74は、カード後端がヒートローラ33を通過するのを見込した時間(予め設定されたタイマー時間又はカード搬送量)が経過すると、シフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータを更に所定角度回転させて、ヒートローラ33を作動位置から待機位置に復帰させる(図9)。このとき剥離コロ34は転写フィルム46をカードから剥離させる作動状態に保持されている。
【0066】
その後、制御CPU70は、カード後端が剥離コロ34bを通過する見込み時間(タイマー時間又はカード搬送量)の終了後に、再びシフトモータを所定角度回転させて、剥離コロ34bを剥離位置から退避位置に移動する(図10)。フィルムパスは媒体搬送パス(搬送経路P1)から外れる。このときヒートローラ33は待機位置に保持されている。
【0067】
上記した如く、フィルム搬送手段の供給スプール47を駆動するDCモータM1はオーバーラン等により位置合せ時の停止位置が安定しないため、先に転写フィルム46の転写開始位置Nまでへの頭出しによる位置合わせを行い、続いてオーバーランによりずれた誤差分をカード先端の頭出しによる位置合わせで補うことで、転写フィルム46の画像情報記録部dとカードの印刷開始位置を正確に合わせることができる。これにより、カードへの転写ずれを引き起こすことがなく正確な印刷が可能となる。
【符号の説明】
【0068】
29 搬送ローラ(記録媒体搬送手段)
30 搬送ローラ(記録媒体搬送手段)
31 転写プラテン(転写手段)
33 ヒートローラ(転写手段)
34b 剥離コロ(フィルムパス移動手段)
46 転写フィルム(中間転写フィルム状媒体)
47 供給スプール(フィルム搬送手段)
48 巻取スプール(フィルム搬送手段)
70 制御CPU(位置合わせ処理手段)
P1 媒体搬送パス(搬送経路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷装置であって、
前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、
前記フィルム状媒体を搬送するフィルム搬送手段と、
前記フィルム搬送手段を制御して、前記フィルム状媒体に形成されている画像情報記録部を転写開始位置にまで搬送する位置合せ処理を行い、続いて前記記録媒体搬送手段を制御して、前記記録媒体を前記転写開始位置にまで搬送する位置合わせ処理を行う位置合わせ処理手段と、
両方の前記位置合わせ後に前記記録媒体に前記画像情報記録部を圧し付けて画像を転写する転写手段と、を備え、
前記位置合わせ処理手段は、前記位置合わせ処理時に前記画像情報記録部の停止位置を検出する検出手段を有し、前記検出手段の検出結果に応じて、前記記録媒体の前記転写開始位置への搬送量を補正し、
前記記録媒体搬送手段と前記フィルム搬送手段とは、前記転写手段による転写時にそれぞれ前記記録媒体と前記フィルム状媒体とを同時に搬送することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記記録媒体搬送手段はステッピングモータで駆動し、前記フィルム搬送手段はDCモータで駆動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記DCモータの回転に同期したクロックパルスを発生するエンコーダを備えて、前記フィルム搬送手段の停止制御から前記DCモータのオーバーランによる前記転写開始位置からのずれ量を、前記クロックパルスをカウントすることにより検出することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記位置合わせ処理手段は、前記クロックパルスのカウント値に基づき検出した前記画像情報記録部の停止位置に応じて前記ステッピングモータの回転量を調整し、前記画像情報記録部と前記カードとの位置合わせを行うことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記位置合わせ処理手段は、フィルムパス移動手段にて前記フィルム搬送手段によるフィルム搬送パスが移動して前記記録媒体搬送手段の前記媒体搬送パスと接触した状態で前記位置合わせ処理を行うことを特徴とする前記請求項1乃至4の何れかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記フィルムパス移動手段は、前記フィルム搬送手段を構成する剥離コロであることを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷方法であって、
前記フィルム状媒体の画像情報記録部分を転写開始位置まで搬送するステップと、
前記画像情報記録部分と転送開始位置とのずれを検出するステップと、
検出された前記ずれの位置まで前記記録媒体の先端を搬送して位置合わせを行うステップと、
前記位置合わせにより前記フィルム状媒体と前記記録媒体とを同時に搬送して前記画像情報記録部分の記録情報を前記記録媒体に転写するステップと、
を含む印刷方法。
【請求項1】
フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷装置であって、
前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、
前記フィルム状媒体を搬送するフィルム搬送手段と、
前記フィルム搬送手段を制御して、前記フィルム状媒体に形成されている画像情報記録部を転写開始位置にまで搬送する位置合せ処理を行い、続いて前記記録媒体搬送手段を制御して、前記記録媒体を前記転写開始位置にまで搬送する位置合わせ処理を行う位置合わせ処理手段と、
両方の前記位置合わせ後に前記記録媒体に前記画像情報記録部を圧し付けて画像を転写する転写手段と、を備え、
前記位置合わせ処理手段は、前記位置合わせ処理時に前記画像情報記録部の停止位置を検出する検出手段を有し、前記検出手段の検出結果に応じて、前記記録媒体の前記転写開始位置への搬送量を補正し、
前記記録媒体搬送手段と前記フィルム搬送手段とは、前記転写手段による転写時にそれぞれ前記記録媒体と前記フィルム状媒体とを同時に搬送することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記記録媒体搬送手段はステッピングモータで駆動し、前記フィルム搬送手段はDCモータで駆動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記DCモータの回転に同期したクロックパルスを発生するエンコーダを備えて、前記フィルム搬送手段の停止制御から前記DCモータのオーバーランによる前記転写開始位置からのずれ量を、前記クロックパルスをカウントすることにより検出することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記位置合わせ処理手段は、前記クロックパルスのカウント値に基づき検出した前記画像情報記録部の停止位置に応じて前記ステッピングモータの回転量を調整し、前記画像情報記録部と前記カードとの位置合わせを行うことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記位置合わせ処理手段は、フィルムパス移動手段にて前記フィルム搬送手段によるフィルム搬送パスが移動して前記記録媒体搬送手段の前記媒体搬送パスと接触した状態で前記位置合わせ処理を行うことを特徴とする前記請求項1乃至4の何れかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記フィルムパス移動手段は、前記フィルム搬送手段を構成する剥離コロであることを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷方法であって、
前記フィルム状媒体の画像情報記録部分を転写開始位置まで搬送するステップと、
前記画像情報記録部分と転送開始位置とのずれを検出するステップと、
検出された前記ずれの位置まで前記記録媒体の先端を搬送して位置合わせを行うステップと、
前記位置合わせにより前記フィルム状媒体と前記記録媒体とを同時に搬送して前記画像情報記録部分の記録情報を前記記録媒体に転写するステップと、
を含む印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−232475(P2012−232475A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102456(P2011−102456)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
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