説明

印刷装置及び印刷装置の制御方法

【課題】ホスト機器を使用するユーザ毎に一定時間間隔の時間帯毎の印刷状況を収集し、この実績をもとに現在ホスト機器を使用しているユーザに対応したユーザ毎の印刷実績のみを参照して稼働スケジュールを作成し、消費電力の削減を実現することを目的とする。
【解決手段】印刷装置であって、1日を一定時間間隔で分割し、一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザによる印刷回数の平均値を記憶する第1の記憶手段と、上記一定時間間隔内に行なわれた複数のユーザ個々の印刷回数を計数し、上記一定時間間隔毎に個々のユーザの印刷回数の情報を記憶する第2の記憶手段と、第2の記憶手段に記憶された上記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えている場合、装置をスリープモードに設定し、第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合、装置をレディーモードに設定する制御手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電力の削減を図る印刷装置及び印刷装置の電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、地球環境の保持が世界的に叫ばれ、地球温暖化防止会議を中心として温室効果ガスの排出規制が実現化に向かっている。このような状況において、プリンタ装置や複写機等の印刷装置においても、消費電力の削減が求められている。
【0003】
このような現状において、印刷装置においては、例えば熱定着器の温度を下げて消費電力を低減するスリープモードが設けられており、過去の印刷履歴をもとにスリープモードの自動制御方法も様々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、一定期間中の印刷指示時刻と稼動時間帯を記憶し、このデータに基づいて稼働状況に応じたスケジュールを作成し、印刷装置を運用している。また、特許文献2は、電源投入からの時間経過に従って時間帯を構成し、各々の時間帯の印刷回数の履歴から節電モードへの移行制御を行っている。
【0005】
また、一定時間間隔の時間帯毎の印刷状況の実績を収集し、この実績データに基づいて消費電力を低減すると共に、ウォームアップの待ち時間をユーザに感じさせることの少ない印刷装置の提案も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−155859号公報
【特許文献2】特開2007−30325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的なオフィス用途の印刷装置では、必ずしも毎日同じ時間帯に印刷が行なわれるわけではなく、例えば印刷履歴を調べても、このあたりの時間帯に印刷することが多いという程度の傾向が見られるに過ぎない。
【0008】
この様な傾向を印刷履歴から読み取って節電スケジュールを生成することに意義はあるが、上記特許文献1の方法では、まれに印刷する時間帯は節電対象となってしまい、印刷する毎にウォームアップ時間を待たされるか、待たされることを回避するためにスリープモードを禁止し、無駄な電力を消費してしまう問題がある。特に、長いウォームアップ時間を要する印刷装置では、上記問題は深刻である。
【0009】
また、特許文献2及び一定時間間隔の時間帯毎の印刷状況の実績を収集し、この実績データに基づいて消費電力を低減する装置においても、印刷装置の使用状態をユーザ毎に管理しているわけではない。例えば、生成したスケジュールには対応する時間帯に在席していないユーザが過去の同時間帯に印刷した実績も含まれており、当該ユーザの印刷実績を除くと対応する時間帯はスリープ状態のままで良い場合でも印刷待機中に設定されることがある。また、逆に対応する時間帯に在席しているユーザは過去の多くの場合で同時間帯に印刷した実績がある場合のみ在席しているような使用方法では、印刷装置全体としては印刷待機中でよい場合でもスリープ状態に設定されることもある。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、複数ユーザが使用するホスト機器が対象とする印刷装置において、ホスト機器を使用するユーザ毎に一定時間間隔の時間帯毎の印刷状況を収集し、この実績をもとに現在ホスト機器を使用しているユーザに対応したユーザ毎の印刷実績のみを参照して稼働スケジュールを作成し、消費電力の削減とウォームアップ待ち時間の低減を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は第1の発明によれば、ホスト機器に接続され、複数のユーザによって使用される印刷装置において、1日を一定時間間隔で分割し、該一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザによる印刷回数の平均値を記憶する第1の記憶手段と、前記一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザ個々の印刷回数を計数し、前記一定時間間隔毎に前記個々のユーザの印刷回数の情報を記憶する第2の記憶手段と、前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えている場合、装置をスリープモードに設定し、前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合、装置をレディーモードに設定する制御手段とを有する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0012】
また、上記課題は第2の発明によれば、前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が、前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合であっても、装置の電力消費特性に基づいて設定された閾値に基づいて装置をスリープモードに設定する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0013】
また、上記課題は第3の発明によれば、前記装置の電力消費特性に基づいて設定される閾値は、装置のウォームアップ時間の限界値に対する装置のウォームアップ時間の比率を計算し、該比率に従って設定される印刷装置を提供することによって達成できる。
【0014】
また、上記課題は第4の発明によれば、ホスト機器に接続され、複数のユーザによって使用される印刷装置の電源制御方法において、1日を一定時間間隔で分割し、該一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザによる印刷回数の平均値を第1の記憶手段に記憶する処理と、前記一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザ個々の印刷回数を計数し、前記一定時間間隔毎に前記個々のユーザの印刷回数の情報を第2の記憶手段に記憶する処理と、前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えている場合、装置をスリープモードに設定し、前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合、装置をレディーモードに設定する処理とを行う印刷装置の電源制御方法を提供することによって達成できる。
【0015】
また、上記課題は第5の発明によれば、前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が、前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合であっても、装置の電力消費特性に基づいて設定された閾値に基づいて装置をスリープモードに設定する印刷装置の電源制御方法を提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一定時間間隔毎の印刷スケジュールを作成し、該一定時間間隔の各時間帯毎のユーザ個々の印刷回数の情報と、各時間帯毎の全てのユーザの印刷回数の平均値の情報とを比較することによって、印刷装置をスリープモード又はレディーモードに設定し、消費電力の低減を図る印刷装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】印刷装置の内部構成を示す図である。
【図2】不揮発性メモリに記憶される内容を説明する図であり、印刷実績データの構成を示す図である。
【図3】不揮発性メモリに記憶される内容を説明する図であり、印刷実績データの具体的なデータ構成を説明する図である。
【図4】実績とり開始年月日、及びスケジュールを説明する図である。
【図5】1日分データの構成を説明する図である。
【図6】スケジュールテーブルの構成を説明する図である。
【図7】プリンタ装置を使用するユーザ名の情報を記憶するテーブル構成を説明する図である。
【図8】本実施形態の基本的な処理を説明するフローチャートである。
【図9】プリンタ装置を使用するユーザ名の情報を記憶するテーブルである。
【図10】スケジュールテーブルの作成処理を説明するフローチャートである。
【図11】プリンタエンジンに関する消費電力を説明する図である。
【図12】印刷実績の収集処理を説明するフローチャートである。
【図13】スケジュール処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置の内部構成を説明する図である。
本例の印刷装置(以下、プリンタ装置で示す)1はCPU2、ROM3、RAM4、不揮発性メモリ5、時計回路6、プリント制御LSI7、プリンタエンジンインターフェース(以下、プリンタエンジンI/Fで示す)8、USB/LANインターフェース(以下、USB/LAN I/Fで示す)9で構成されている。尚、上記プリンタ装置1には不図示のホスト機器から印刷データが供給され、この印刷データに基づいて印刷処理が行われる。
【0019】
CPU2は、ROM3や不揮発性メモリ5に記憶されたプログラム及びデータに従ってプリンタ装置1のシステム制御や、後述するスケジュールテーブルの作成処理、印刷実績データの取得処理、及びスケジュールの実行制御等を行なう。また、RAM4はワークエリアとして機能する。
【0020】
ホスト機器から供給される印刷データは、例えばUSB/LAN I/F9を介してプリンタ装置1に供給され、CPU2の制御に従ってRAM4に描画処理が行われ、プリント制御LSI7を用いてプリンタエンジンI/F8から不図示のエンジン部へ描画データが転送され、印刷出力が行われる。
【0021】
プリンタ装置1に配設された不揮発性メモリ5には以下で説明する情報が記憶され、時計回路6は時刻の計時処理を行う。
【0022】
図2及び図3は、上記不揮発性メモリ5に記憶される内容を説明する図であり、図2は印刷実績データの構成を示し、図3は印刷実績データの具体的なデータ構成を説明するものである。ここで、印刷実績データとは、後述する一定時間帯毎のプリンタ装置1の印刷履歴である。
【0023】
図2に示すように印刷実績データは、印刷実績ユーザ名データと、前月分の印刷実績データ(参照用)と、前月分の印刷実績データに今月分の実績を書き込んだ今月分の印刷実績データ(書き込み用)で構成されている。印刷実績ユーザ名データとしては、同図に示すようにユーザナンバー(ユーザNo.)とユーザ名の情報であり、例えば512名分のユーザNo.とユーザ名の情報が記憶されている。また、前月分印刷実績データと今月分印刷実績データは基本的に同じ構成であり、図3に示すように、「ヘッダ」、「曜日別データ」、「日付別データ」で構成されている。
【0024】
「ヘッダ」には、ヘッダコード、領域ID、実績とり開始年月日、データ年月、待ち時間限界値の各エリアが設けられ、対応するデータが記憶される。ここで、実績とり開始年月日とは、例えば図4に示す例で説明すると、2009年3月10日が実績とり開始年月日である。尚、同図の例では、後述するスケジュールの実行は、上記実績とり開始年月日から1ヶ月後の2009年4月10日から行うことができる。
【0025】
一方、「曜日別データ」には、第1週から第6週までの1ヶ月分の曜日別データのエリアが設けられ、各週のエリアにはそれぞれの週の1週間分(日曜日〜土曜日)のデータが記憶される。尚、第6週まで存在しない月は、第5週までのデータとなる。
また、「日付別データ」には、1日から31日までの1ヶ月分の日付別データの記憶エリアが設けられ、各日付の記録エリアにデータが記憶される。
【0026】
図5は、上記「曜日別データ」、及び「日付別データ」として記憶される各日の「1日分のデータ」構成を説明する図である。本例では「1日分データ」として、144個のエリアを有し、10分毎にプリンタエンジンからの情報を取得し、記憶する構成である。また、144個の各エリアにはユーザ毎の印刷回数と使用中状態の情報が記憶されている。印刷回数と使用中状態の記憶エリアで構成され、10分間に行われたプリンタ装置1の印刷回数と使用中状態が記憶される。
【0027】
一方、図6はスケジュールテーブルの構成を示す図である。このスケジュールテーブルは後述する処理によって生成されるテーブルであり、スケジュールテーブルにはスケジュール実行許可のフラグ領域と、レディ状態維持時間、閾値、及び00:00〜24:00までの10分毎の平均印刷回数のデータが書き込まれる。
【0028】
また、図7はプリンタ装置1を使用するユーザ名情報を記憶するテーブルであり、ユーザ名、ホストアドレス、有効期限が記憶されている。例えば、同図に示す例では、512のユーザ設定が可能であり、ホストアドレスにはユーザに対応するホストコンピュータ(ホスト機器)のアドレスデータ(1)〜(512)が記憶され、それぞれが有する有効期限が記憶される。
【0029】
以上の構成において、以下に本例の処理動作を説明する。
図8は、本実施形態の基本的な処理を説明するフローチャートである。
先ず、プリンタ装置1の電源を投入すると、印刷実績データの確認(ステップ(以下、Sで示す)1)、印刷データ受信/タイマー割込待ち(S2)、及び状態監視データ受信/タイマー割込み待ち(S3)の各プロセスが駆動する。
【0030】
先ず、印刷データ受信/タイマー割込待ち(S2)の処理は、一定時間毎の割り込み処理において、プリンタ装置1にホスト機器からの印刷データの受信が有るか判断するものであり、印刷データを受信すると(S4がYES)、印刷データを展開し(S5)、ユーザ毎の印刷実績データの印刷回数をプラス(+)1する(S6)。例えば、図5の対応する時間帯のエリアの対応するユーザ名の印刷回数を+1する。
【0031】
その後、例えばRAM4に構築されたフレームメモリに展開した印刷データをプリンタエンジンI/F8を介して不図示の印字ヘッドに送信し、用紙等の記録媒体に印刷処理を行う(S7)。その後、後述するスケジュール実行許可の判断を行い(S8)、スケジュールの実行処理を行う(S9)。尚、このスケジュール実行処理については、後述する。
【0032】
また、状態監視データ受信/タイマー割込み待ち(S3)の処理は、一定時間毎の割り込み処理において、ホスト機器から送信された受信データ内にログインユーザ情報が含まれている場合(S10がYES)、プリンタ装置1の使用ユーザ名情報の更新処理を行うものである(S11)。
【0033】
図9は使用ユーザ名情報の更新処理を具体的に説明するフローチャートである。先ず、現在時刻の取得を行い(S11−1)、ユーザ名情報更新フラグをクリアする(S11−2)。すなわち、CPU2は時計回路6から時刻データを読み取ると共に、ユーザ名情報更新フラグを“0”にセットする。
【0034】
次に、ユーザ名情報分の処理行うため、先ずユーザ名情報分の処理が完了したか判断する(S11−3)。この最初の判断はNOであり、以後入力ユーザ名がプリンタ使用ユーザ名情報テーブル上のユーザ名と一致するか判断し(S11−4)、一致する場合(S11−4がYES)、当該ユーザ情報の有効期限のチェックを行う(S11−5)。一方、一致しない場合には次のユーザ名に対する処理を行う(S11−4がNO、S11−3)。
【0035】
次に、上記ユーザ名が一致する場合(S11−4がYES)、更に当該ユーザ名情報の有効期限が過去の時刻(<現在時刻)であるか判断する(S11−5)。ここで、ユーザ名情報の有効期限が過去の時刻でなければ(S11−5がNO)、対応するユーザ名情報の有効期限に現在時刻を加算し(S11−7)、ユーザ名情報更新フラグをオンにセットする(S11−8)。一方、ユーザ名情報の有効期限が過去の時刻であれば(S11−5がYES)、ユーザ名情報変化フラグをセットする(S11−6)。
【0036】
上記のようにユーザ名情報更新フラグ、及びユーザ名情報変化フラグをセットすることによって、ユーザ名情報分の処理が完了した後(S11−3がYES)、ユーザ名情報更新フラグのオンを判断し、対応するユーザ名情報が登録されているか否かの判断を行うことができる(S11−9)。例えば、対応するユーザ名情報が登録されていない場合(S11−9がNO)、当該ユーザ名情報を図7に示すプリンタ使用ユーザ名情報のテーブルに追加する(S11−10)。この場合、新たなユーザ名情報のエリアに、有効期限として現在時刻に有効時間を加算した情報をセットし(S11−11)、更にユーザ名情報変化フラグをセットする(S11−12)。
【0037】
次に、図8に示すフローチャートの説明に戻り、印刷実績データの確認処理を実行する(S1)。この処理は、不揮発性メモリ5に記憶されている印刷実績データをRAM4に読み出し、確認処理を行う。具体的には、不揮発性メモリ5に印刷実績データが記憶されていること、及び読み出した印刷実績データに問題が無いことを確認する。
【0038】
次に、プリンタ装置1を使用しているユーザ名情報を取得する(S12)。図10は、ユーザ名情報の取得処理を説明するフローチャートである。
【0039】
先ず、RAM4のワークエリアの競合による情報の矛盾を避けるため、ユーザ名情報を全て別エリアに読み出す(S12−1)。次に、前述のユーザ名情報変化フラグの読み込み処理を行い(S12−2)、ユーザ名情報変化フラグをクリアする(S12−3)。
【0040】
次に、現在時刻の情報を取得し(S12−4)、ユーザ名情報の有効性を判断するため、ユーザ名情報分の処理が終了したか判断する(S12−5)。この最初の判断はNOであり、先ず読み込んだユーザ名情報の各ユーザ名毎の有効期限と現在時刻の比較を行い(S12−6)、有効期限が現在時刻より過去の時刻である場合(S12−6がYES)、更に前回処理時刻との比較を行う(S12−7)。そして、前回処理時刻より過去の時刻となっている場合、当該ユーザ名は無効であり、ユーザ名情報に変化が発生したと判断し(S12−7がNO)、読み込んだユーザ名情報変化フラグをセットする(S12−8)。
【0041】
その後、ユーザ名情報分の処理が終了すると(S12−5がYES)、取得した現在時刻を前回処理時刻として保存する(S12−9)。
以上のようにしてプリンタ使用ユーザ名情報の取得を行った後、図8に示すフローチャートの説明に戻り、スケジュールテーブルの作成処理を行う(S13)。この処理はワークエリア上の印刷実績データ、及び前述の処理において取得したプリンタ使用ユーザ名情報を用いて、図6に示すスケジュールテーブルを作成する処理である。
【0042】
図11は、このスケジュールテーブルの作成処理を具体的に説明するフローチャートである。先ず、CPU2はプリンタエンジンの情報を読み込み(S13−1)、プリンタエンジンを識別する(S13−2)。すなわち、「プリント時の消費電力」や、「レディ状態の消費電力」、「スリープ状態の消費電力」をもとに、所定の演算を行い閾値を決定する。尚、この閾値の意味については後述する。
【0043】
次に、印刷実績データの読込処理を行う(S13−3)。この印刷実績データの読み込み処理は、上記「曜日別データ」及び「日付別データ」の両方のデータを読み込む。
次に、実績取り開始から1ヶ月以下であるか判断する(S13−4)。すなわち、前述の「ヘッダ」に記憶した実績とり開始年月日の情報を確認し、実績データの収集を開始した日から1ヶ月を経過しているか判断する。この理由は、スケジュールを曜日別で行なう場合には1週間、日付別で行う場合には1月間のリードタイムが必要であり、本例では「曜日別データ」と「日付別データ」の両方のデータを使用するため、少なくとも1ヶ月の実績情報の収集を必要とする。したがって、前述の図4に示す例では、2009年4月10日から印刷実績データの読み込み処理を行うことが可能となる。
【0044】
ここで、実績とり開始年月日から1ヶ月が経過していない場合(S13−4がYES)、図6に示すスケジュールテーブルのスケジュール実行許可のフラグをリセットし、実行禁止に設定する(S13−5)。一方、実績とり開始年月日から1ヶ月が経過している場合(S13−4がNO)、スケジュール実行許可のフラグを実行許可に設定する(S13−6)。
次に、スケジュールテーブルの時間帯を0にセットし(S13−7)、時間帯が144を越えるまで以下の処理を行なう(S13−8)。すなわち、先ずユーザNo.1をセットし(S13−9)、「曜日別データ」と「日付別データ」のそれぞれの時間帯毎の印刷回数と使用中状態延べ数を集計するため、曜日別時間帯別印刷回数/使用中状態カウンタのクリア処理と、日付別時間帯別印刷回数/使用中状態カウンタのクリア処理を行い(S13−10、S13−11)、現在使用中ユーザ分の集計を行う。
【0045】
先ず、前述の処理によって取得した読み込み済みプリンタ使用ユーザ名情報の有効期限が現在時刻より過去の場合(S13−12がNO、S13−13がYES)、当該ユーザ名情報は無効であり、スケジュールテーブル作成の対象としない。一方、有効期限が現在時刻以後の場合(S13−13がNO)、使用中ユーザNo.に対応した曜日別データの指定時間帯の印刷回数を曜日別の印刷回数カウンタへ加算し、使用中状態カウンタを+1する(S13−14)。また、使用中ユーザNo.に対応した日付別データの指定時間帯の印刷回数を日付別の印刷回数カウンタへ加算し、使用中状態カウンタを+1する(S13−15)。その後、次の使用中ユーザ分の処理を行うべく、ユーザNo.を+1する(S13−16)。
【0046】
その後、上記処理(S13−12〜S13−16)の処理を繰り返し、使用中ユーザ分の集計を行う。
【0047】
次に、上記処理が完了すると(S13−12がYES)、使用中ユーザのみの曜日別データの指定時間帯平均印刷回数を算出する(S13−17)。この計算は、例えば「曜日別時間帯別印刷回数カウンタ÷曜日別時間帯別使用中状態カウンタ」を計算することによって求める。同様に、使用中ユーザのみの日付別データの指定時間帯平均印刷回数を算出する(S13−15)。この計算は、例えば「日付別時間帯別印刷回数カウンタ÷日付別時間帯別使用中状態カウンタ」を計算することによって求める。
【0048】
そして、それぞれの平均印刷回数の大きい方、即ち印刷実績の高い方をスケジュールテーブルの該当時間帯に書き込む(S13−19〜S13−21)。この処理はプリンタ装置1を使用する業種や使用者の業務内容によって、曜日を基準に仕事を行う場合もあり、または日付を基準に仕事を行う場合もあり、何れの場合でも、時間帯毎の平均印刷回数の大きい方を選択する方がユーザの便宜を図ることができると考えるからである。したがって、10分毎の時間帯によって、ある時間帯では「曜日別データ」が使用され、別のある時間帯では「日付別データ」が使用される。
【0049】
その後、次の時間帯を処理するため時間帯を+1し(S13−22)、上記処理を繰り返し(S13−8〜S13−22)、144の時間帯全てに対して処理を行い(S13−8がYES)、スケジュールテーブルの作成処理を終了する。
【0050】
以上のようにしてスケジュールテーブルの作成処理が完了すると、図8に示すフローチャートの説明に戻り、現在時刻の情報を読み取る(S14)。その後、1分間隔でプリンタ使用ユーザ名取得処理を行い(S15、S16)、使用中のユーザ情報に変化がある場合(S17がYES)、スケジュールテーブルの作成処理を再度行う(S18)。このスケジュールテーブルの作成処理は、前述の図11において説明した処理と同様であり、1分間隔でこの処理を繰り返すことによって、プリンタ使用中ユーザが増減した場合でも運用状態に即したスケジュールテーブルの作成処理を行うことができる。
【0051】
次に、10分経過の判断を行い(S19)、印刷実績の収集処理を行う(S20)。図12は、この印刷実績収集処理を具体的に説明するフローチャートである。先ず、この時間帯のユーザ毎の印刷実績データを取得するため、ユーザ毎の印刷実績データの当該時間帯のデータを読み込む(S20−1)。
【0052】
次に、印刷実績データ(RAM)が管理する全ユーザ分のデータ処理を行うため、先ずユーザNo.1をセットし(S20−2)、ユーザNo.1のユーザ名情報の有効期限が、この時間帯より前(現在時刻−10分より以前)であるか判断する(S20−3がNO、S20−4)。そして、当該ユーザ名情報の有効期限がこの時間帯より前である場合(S20−4がYES)、当該ユーザの印刷実績データは無効であるので処理を行わない。
【0053】
一方、有効期限がこの時間帯以後の場合(S20−4がNO)、印刷実績データの更新処理を行う。先ず、ユーザNo.に対応したユーザの日付別データの印刷回数に、この時間帯のユーザ毎の印刷実績データの印刷回数を加算する(S20−5)。次に、ユーザNo.に対応したユーザの日付別データの使用中回数を+1する(S20−6)。
【0054】
ここで、「日付別データ」は毎月の日付別の印刷実績を履歴となるものであり、実際の作業に対応するものであるが、「曜日別データ」は毎週の曜日別の印刷実績を記録するものであり、単純に記録する場合には問題がある。例えば、毎月特定の日付に大量の印刷が行われるのは日付別データで記録すべき項目であり、これを曜日別に記録すると本来の曜日別の目的と異なった結果が導き出される。
【0055】
そこで、大量の印刷が行われることの多い、例えば期初日後1週間であるか判断し(S20−7)、この期間内であれば「曜日別データ」の更新を行うことなく、次のユーザNo.の処理を行う(S20−7がNO)。
【0056】
一方、上記期間内でなければ(S20−7がYES)、ユーザNo.に対応したユーザの曜日別データの印刷回数に、この時間帯のユーザ毎の印刷実績データの印刷回数を加算し、(S20−8)、ユーザNo.に対応したユーザの曜日別データの使用中回数を+1する(S20−9)。また、次の使用中ユーザ分の処理を行うべく、ユーザNo.を+1する(S20−10)。
【0057】
以上の処理を繰り返し、全ユーザ分の処理が終了すると(S20−3がYES)、日付別印刷実績データを不揮発性メモリ5に書き込み(S20−11)、続けて曜日別印刷実績データを不揮発性メモリ5に書き込み(S20−12)、更に印刷実績ユーザ名データの差分を不揮発性メモリ5に書き込む(S20−13)。
【0058】
次に、図8に示すフローチャートに戻り、更新されたスケジュールテーブルに基づいてスケジュールを実行すべく、スケジュールの判断を行う。この判断は、前述の図6に示すスケジュールテーブルのスケジュール実行許可フラグを確認し(S21)、スケジュール実行許可フラグが設定されていれば(S21がYES)、スケジュールを実行する(S22)。
図13は、上記スケジュール実行処理を具体的に説明するフローチャートである。
先ず、プリンタエンジンから現在の状態情報(EngSts)を読み出す(S20−1)。次に、スケジュールテーブルから当該時間帯の平均印刷回数(PrintAve)の情報を読み出し(S20−2)、更にユーザ毎の印刷実績データから当該の時間帯の印刷回数(PrintCnt)の情報を読み出す(S20−3)。
【0059】
次に、スケジュールテーブルから閾値の情報を読み出す(S20−4)。ここで、閾値の情報を使用することは、以下の意味をもつ。すなわち、プリンタ装置1では省電力のため、例えば定着器への電源供給を停止するなどの方法によって節電状態(Sleep状態)の設定を行っている。このため、再度印刷を行う際には、ウォームアップを行うための電力が必要である。このことを考慮すると、印刷完了後、印刷可能状態(Ready状態)を維持して次の印刷を開始する場合の消費電力が、節電状態で待機後ウォームアップして次の印刷を開始する場合の消費電力より小さくて済む限界時間(印刷可能状態の維持時間)が存在することが考えられる。
【0060】
そこで、この限界時間(印刷可能状態の維持時間)t1を求め、このt1時間以内で印刷が行われるならば、印刷可能状態(Ready状態)を維持した方が節電状態(Sleep状態)に移行させるより消費電力が小さくて済む。このため、印刷実績を収集する前述の時間間隔(10分)とt1が近似している場合、その時間間隔内の印刷回数を計数することが、印刷時間や印刷枚数より消費電力の少ない設定を導き出すことに容易な方法である。プリンタエンジン装置の各状態毎の消費電力の測定値と状態移行に要する時間を基に演算を行った結果、本例では限界時間t1は、0.152時間(9.12分)を得ており、このt1の値を前述の時間間隔で実行できる回数を閾値として設定を行う。
【0061】
すなわち、本実施形態のプリンタ装置1の場合、時間間隔は10分に設定されており、印刷回数は「時間間隔÷t1」で求めることにより1.10回(10分÷9.12分)となり、この回数以上であれば印刷処理と印刷処理の間隔がt1時間以上となる。したがって、閾値として例えば1.10の設定が行われている。
【0062】
次に、上記閾値を読み出し(S22−4)、この時間帯の印刷回数(PrintCnt)がこの時間帯の平均印刷回数(PrintAve)より大きいか判断する(S22−5)。すなわち、(PrintCnt-PrintAve≧0)の計算を行い、PrintCnt-PrintAve≧0である場合(S22−5がYES)、プリンタエンジン状態(EngSts)がReady状態であれば(S22−6がYES)、プリンタ装置1をSleep状態に設定する(S22−7)。また、PrintCnt-PrintAve≧0ではない場合(S22−5がNO)でも、当該時間帯の平均印刷回数(PrintAve)が閾値より小さい場合(S22−8がNO)、プリンタ装置1をSleep状態に設定する(S22−6、S22−7)。
【0063】
一方、PrintCnt-PrintAve≧0ではなく(S22−5がNO)、当該時間帯の平均印刷回数(PrintAve)が閾値より大きい場合(S22−8がYES)、プリンタ装置1をSleep状態に設定するため、プリンタエンジン状態(EngSts)がReady状態でなければ(S22−9がNO)、プリンタ装置1をReady状態に設定する(S22−10)。
【0064】
その後、図8のフローチャートの処理に戻り、次の時間経過処理に備えて時間待ちを行い(S23)、時間待ち終了後に再度現在時刻の情報を読み取り(S14)、上記処理を繰り返す(S14〜S23)。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、プリンタ装置1の印刷実績データに基づいて、プリンタ装置1の使用状況をユーザ毎に管理し、且つ現在プリンタ装置1を使用する目的でホスト機器にログインしているプリンタ装置1の使用予定のあるユーザの印刷実績の印刷傾向を把握し、生成した節電スケジュールに従ってプリンタ装置1の省電力状態を制御することにより、消費電力の更なる低減を可能とすることができる。また、当該時間帯に在席していないユーザの印刷実績に左右されることなく、且つ当該時間帯に在席しているユーザにとっては印刷時のウォームアップ待ちを減らし、更なる迅速な印刷処理を実行することが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態の説明では、閾値について具体的な数値を使用して説明したが、本発明は上記数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1・・・プリンタ装置
2・・・CPU
3・・・ROM
4・・・RAM
5・・・不揮発性メモリ
6・・・時計回路
7・・・プリント制御LSI
8・・・プリンタエンジンI/F
9・・・USB/LAN I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト機器に接続され、複数のユーザによって使用される印刷装置において、
1日を一定時間間隔で分割し、該一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザによる印刷回数の平均値を記憶する第1の記憶手段と、
前記一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザ個々の印刷回数を計数し、前記一定時間間隔毎に前記個々のユーザの印刷回数の情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えている場合、装置をスリープモードに設定し、前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合、装置をレディーモードに設定する制御手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が、前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合であっても、装置の電力消費特性に基づいて設定された閾値に基づいて装置をスリープモードに設定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記装置の電力消費特性に基づいて設定される閾値は、装置のウォームアップ時間の限界値に対する装置のウォームアップ時間の比率を計算し、該比率に従って設定されることを特徴とする請求項1、又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
ホスト機器に接続され、複数のユーザによって使用される印刷装置の電源制御方法において、
1日を一定時間間隔で分割し、該一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザによる印刷回数の平均値を第1の記憶手段に記憶する処理と、
前記一定時間間隔内に行なわれた前記複数のユーザ個々の印刷回数を計数し、前記一定時間間隔毎に前記個々のユーザの印刷回数の情報を第2の記憶手段に記憶する処理と、
前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えている場合、装置をスリープモードに設定し、前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合、装置をレディーモードに設定する処理と、
を行うことを特徴とする印刷装置の電源制御方法。
【請求項5】
前記第2の記憶手段に記憶された前記一定時間間隔毎の印刷回数の情報が、前記第1の記憶手段に記憶された前記平均値を超えていない場合であっても、装置の電力消費特性に基づいて設定された閾値に基づいて装置をスリープモードに設定することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置の電源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−135969(P2012−135969A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290442(P2010−290442)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】