説明

印刷装置

【課題】サーマルヘッドの長手方向中央位置にコネクタ等の配線接続手段を設けても、被記録媒体搬送方向の小型化を図ることが可能となる印刷装置を提供する。
【解決手段】サーマルヘッド26は、該サーマルヘッド26の長手方向中央位置の用紙7の搬送方向上流側の側端縁部に、該サーマルヘッド26を駆動するためのFFC54が接続されるコネクタ42が設けられている。また、このサーマルヘッド26を保持して上下方向に揺動可能に支持されるヘッド支持部材29は、コネクタ42に対向する部分から揺動支持部41の側端縁部まで切り欠かれた切欠部43が形成されている。そして、ヘッド支持部材29は、揺動支持部41の切欠部43の両外側後端縁部に形成される各突起部45、46のうち、左側突起部45と突片52Aとの接触部分を揺動支点として、各案内突起部44が挿入される各案内溝48に沿って上下方向に揺動可能に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、上下方向に揺動可能に支持されるヘッド支持部材にサーマルヘッドが保持された印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、上下方向に揺動可能に支持されるヘッド支持部材にサーマルヘッドが保持された印刷装置が種々提案されている。
例えば、記録媒体をその周面に接触させながら搬送するプラテンローラと、該プラテンローラの周面に沿って、この記録媒体に対して画素形成を行うための少なくとも一列の印字素子列が形成され、この印字素子列が形成された部分とプラテンローラの周面とが少なくとも二箇所で接触するように配置された印字ヘッドと、この印字ヘッドをプラテンローラ側に押圧する押圧部材と、を有する印刷装置において、印字ヘッドとプラテンローラの周面との接触位置から記録媒体搬送方向に沿って離隔した位置を支点として、この印字ヘッドを押圧部材による押圧方向に沿った方向に揺動可能に支持する支持手段を設けた印刷装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−34305号公報(段落(0013)〜(0045)、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に記載される構成では、印字ヘッドを押圧方向に揺動可能に支持する揺動支点は、サーマルヘッドの長手方向中央位置に対向するように設けられているため、このサーマルヘッドの駆動用配線を接続するコネクタ等の配線接続手段を、サーマルヘッドの長手方向中央位置に取り付けた場合には、コネクタ等の配線接続手段へ駆動用配線を接続するための作業空間を、この配線接続手段と揺動支点との間に設ける必要がある。このため、このコネクタ等の配線接続手段と揺動支点との距離が大きくなり、印刷装置の被記録媒体搬送方向の小型化が難しくなるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、サーマルヘッドの長手方向中央位置に、このサーマルヘッドの駆動用配線を接続するコネクタ等の配線接続手段を設けても、被記録媒体搬送方向の小型化を図ることが可能となる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係る印刷装置は、一対の側壁部を有するフレームと、サーマルヘッドを保持して上下方向に揺動可能に支持されるヘッド支持部材と、前記一対の側壁部に回転可能に軸支されるプラテンローラと、前記ヘッド支持部材の長手方向に配設されて前記サーマルヘッドを前記プラテンローラの周面に所定荷重で当接させる複数の弾性部材と、を備え、前記サーマルヘッドは、該サーマルヘッドの長手方向中央位置の被記録媒体搬送方向上流側の側端縁部に設けられて、該サーマルヘッドの駆動用配線が接続される配線接続手段を有し、前記ヘッド支持部材は、前記配線接続手段に対向する部分から揺動支持部側の端縁部まで切り欠かれた切欠部を有し、該ヘッド支持部材は、前記切欠部より長手方向外側の一方の前記揺動支持部側の端縁部に揺動支点が設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置において、前記複数の弾性部材のうちの前記ヘッド支持部材の長手方向において揺動支点に近い位置に配設される弾性部材の押圧力は、該長手方向において揺動支点から遠い位置に配設される弾性部材の押圧力よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0007】
更に、請求項3に係る印刷装置は、請求項2に記載の印刷装置において、前記複数の弾性部材のそれぞれの前記押圧力は、前記サーマルヘッドが該サーマルヘッドの長手方向において等分布荷重で前記プラテンローラを押圧するように設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る印刷装置では、サーマルヘッドは、該サーマルヘッドの長手方向中央位置の被記録媒体搬送方向上流側の側端縁部に、該サーマルヘッドの駆動用配線が接続される配線接続手段が設けられている。また、このサーマルヘッドを保持して上下方向に揺動可能に支持されるヘッド支持部材は、配線接続手段に対向する部分から揺動支持部側の端縁部まで切り欠かれた切欠部が形成されている。更に、ヘッド支持部材は、この切欠部より長手方向外側の一方の揺動支持部側の端縁部に揺動支点が設けられている。
これにより、サーマルヘッドの長手方向中央位置に、このサーマルヘッドの駆動用配線を接続するコネクタ等の配線接続手段を設けても、ヘッド支持部材の揺動支点は、切欠部より長手方向外側の一方の揺動支持部側の端縁部に設けられているため、配線接続手段と揺動支点との被記録媒体搬送方向の距離を狭くしても、配線接続手段へ駆動用配線を接続するための作業空間を確保することが可能となり、印刷装置の被記録媒体搬送方向の小型化を図ることが可能となる。
【0009】
また、請求項2に係る印刷装置では、複数の弾性部材のうちのヘッド支持部材の長手方向において揺動支点に近い位置に配設される弾性部材の押圧力は、該長手方向において揺動支点から遠い位置に配設される弾性部材の押圧力よりも大きくなるように設定されている。
これにより、複数の弾性部材の押圧力によってヘッド支持部材に働く揺動支点回りのモーメントの釣り合いを容易にとることができ、サーマルヘッドを被記録媒体の幅方向全体にほぼ均一な圧力で接触させることが可能となり、印刷装置は、印字精度や送り精度の向上を図りつつ高品質の印字を行うことができる。また、複数の弾性部材のそれぞれの押圧力を設定するだけで、該弾性部材の配置位置を変更することなく構成することができ、簡易な構成で印字品質の向上を図ることができる。
【0010】
更に、請求項3に係る印刷装置では、複数の弾性部材によるサーマルヘッドをプラテンローラの周面に当接させる所定荷重は、サーマルヘッドの長手方向において等分布荷重になるように設定されている。これにより、サーマルヘッドを被記録媒体の幅方向全体に均一な圧力で接触させることが可能となり、印刷装置は、更なる高品質の印字を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る印刷装置について、本発明を具体化した一実施例に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
先ず、本実施例に係る印刷装置の概略構成について図1乃至図4に基づき説明する。
図1乃至図3に示すように、印刷装置1は、平面視、略矩形の形状を有し、平面視略A5サイズ程度の大きさで、厚みが約2cmの、上面が開放された箱形の本体ケース2を有している。この本体ケース2の上面には、本体ケース2の長手方向の一端寄りに本体上面を覆う略矩形の固定カバー部3を有する。この固定カバー部3の箇所を除く本体ケース2内には、感熱紙からなるA6サイズのカットシート状の被記録媒体としての用紙7を複数枚収納した用紙パッケージ8が収容できる収容部5が形成されている。また、固定カバー部3に覆われた本体ケース2の内部には、後述の印刷機構部11(図4参照)が設けられている。
【0013】
また、収納部5を覆うようにケースカバー4が設けられている。このケースカバー4は、本体ケース2の後端右側角部に設けられた右側リンクユニット9と、本体ケース2の後端左側角部に設けられた左側リンクユニット10とによって、本体ケース2に対して着脱可能に取り付けられている。
また、ケースカバー4の自由端側には、このケースカバー4を閉じた際に、各コイルバネ19によって、積層された用紙7の上端部を押さえてピックアップローラ22(図4参照)に押圧する押さえ板20が設けられている。
【0014】
また、ケースカバー4は、所定厚さ(本実施例では、約1mmの厚さである。)の樹脂製表面部材4Aと、この樹脂製表面部材4Aの内側面をほぼ覆うように溶着や接着等により固着される所定厚さ(本実施例では、約1mmの厚さである。)のステンレス等によって形成される金属製補強板4Bとから構成されている。
また、樹脂製表面部材4Aの後端中央部は、内側方向に長方形に切りかかれて、透明な樹脂で作成された窓部材4Cが接着や両面粘着テープ等によって固着されている。
【0015】
そして、このケースカバー4を開く場合には、図2(A)→(B)→(C)に示すように、ケースカバー4を固定カバー部3と離間する方向へスライドさせることによって、ケースカバー4の金属製補強板4Bの後端部に形成される各係止片13、14と各リンクユニット9、10に形成される各係合部9A、10Aとの係合が解除されると共に、該金属製補強板4Bの後端縁部両側に形成される各係止片12、15と収納部5の右側側壁部5F及び左側側壁部5Dの後端部近くに形成される各係合凸部5G、5Eとの係合が解除されて、右側リンクユニット9の右側ねじりコイルバネ16Aと左側リンクユニット10の左側ねじりコイルバネ16Bによって外側方向に回動されて開くようになっている。
【0016】
また、ケースカバー4を閉じる場合には、図2(C)→(B)→(A)に示すように、ケースカバー4を各ねじりコイルバネ16A、16Bの付勢力に抗して本体ケース2に当接させて、固定カバー部3の方向へスライドさせることによって、各係止片13、14が各係合部9A、10Aに係合し、各係止片12、15が各係合凸部5G、5Eに係合して閉じるようになっている。また、ケースカバー4と固定カバー部3との間には、所定隙間が形成され、印刷された用紙7が排出される排出口18(図4参照)が設けられている。
【0017】
また、図4に示すように、印刷機構部11は、積層された用紙7を分離して搬送方向に給紙を行うピックアップローラ22と、分離部材23と、搬送された用紙7をプラテンローラ24の外周回りに案内するペーパーガイド25と、用紙7をサーマルヘッド26へ搬送するプラテンローラ24と、ヘッド支持部材29の下面に固着されて一対の左バネ27及び右バネ28(図5参照)の付勢力でプラテンローラ24方向に押圧され、そのプラテンローラ24上で用紙7に加熱印刷を行うサーマルヘッド26とが設けられている。また、分離部材23の固定カバー部3側の斜面部と、固定カバー部3の収納部5側の側端縁部とによって排出口18が形成されている。
【0018】
そして、収納部5に収納された用紙7は、各コイルバネ19によって押さえ板20を介してピックアップローラ22に付勢され、積層された用紙7のうちの最下層の用紙7のみがピックアップローラ22の回転駆動によって搬送される。この搬送された用紙7は、下面が搬送方向斜め下方に傾斜する分離部材23に当接して下側方向へ案内され、プラテンローラ24の下側を通過して、更に、断面がプラテンローラ24の外周面に沿うように断面横向き略U字状等の凹湾曲状に形成されたペーパーガイド25によってプラテンローラ24の外周面に沿って案内され、サーマルヘッド26とプラテンローラ24とが当接する印刷位置まで搬送される。そして、サーマルヘッド26により用紙7の印刷面に印刷され、更に、プラテンローラ24の回転駆動によって分離部材23の収納部5側へ斜め上方向に傾斜する傾斜面と、固定カバー部3の収納部5側の側端縁部下面に立設される側面視下側方向に凸の直角三角形状の複数のリブ30の斜面部とによって上方へ案内されて、排出口18から排出される。
【0019】
また、各リブ30の内側には、ステンレス等の金属製で薄い(本実施例では、厚さは約0.5mm〜1mmである。)細長形状に形成された補強板31(図6参照)が、固定カバー部3の下面に対して略垂直に当接するように設けられている。
【0020】
次に、印刷機構部11を構成するサーマルヘッド26やプラテンローラ24等が設けられた印刷ユニットの概略構成について図5乃至図7に基づいて説明する。
図5は分離部材23と補強板31とを除いた状態の印刷ユニット35を用紙7の搬送方向上流側の上方から見た上方斜視図である。図6は印刷ユニット35を揺動支持部側の上方から見た上方斜視図である。図7は印刷ユニット35を揺動支持部側の下方から見た下方斜視図である。
図5乃至図7に示すように、印刷ユニット35は、長手方向の両側部が上方へ垂直に折り曲げられて形成された一対の側壁部37を有する鋼板製(本実施例では、厚さ約1mmのSPCC等の鋼板製である。)のフレーム38を備えており、その一対の側壁部37の間には、ピックアップローラ22、分離部材23、プラテンローラ24、ペーパーガイド25や、放熱板として機能するヘッド支持部材29、ステッピングモータ等により構成されてギヤ列を介してピックアップローラ22及びプラテンローラ24を回転駆動する用紙送り用モータ40等が設けられている。
【0021】
このピックアップローラ22及びプラテンローラ24は、一対の側壁部37にその両端部を軸支されており、上述したように、用紙送り用モータ40等により回転駆動される。
また、ヘッド支持部材29には、プラテンローラ24に対向する下面において、ライン形サーマルヘッド26が固定されている。また、このヘッド支持部材29の用紙7の搬送方向上流側の側端縁部には、長手方向中央位置から外側方向に延出された揺動支持部41が設けられている。また、この揺動支持部41には、サーマルヘッド26の長手方向中央位置に設けられたコネクタ42に対向する部分が側端縁部まで切り欠かれた切欠部43が形成されている。
【0022】
また、このヘッド支持部材29の長手方向両端側には、外側に延出される各案内突起部44が形成されると共に、揺動支持部41の切欠部43の両外側後端縁部には、外側方向に延出される左側突起部45と右側突起部46とが形成されている。また、一対の側壁部37の上端部には、各案内突起部44が上方から挿入される各案内溝48が形成されている。
【0023】
また、フレーム38には、ヘッド支持部材29の揺動支持部41に対向する側端縁部に、側面視L字形の前側側壁部材50が各ビス51(図7参照)によって固着されている。この前側側壁部材50には、左側突起部45が挿入される左側長孔52と、右側突起部46が挿入される右側長孔53とが、フレーム38の底面部に対して水平に穿設されている。
この左側長孔52の下縁には上向きの突片52Aが突設され、この突片52Aの先端と左側長孔52の上縁との隙間寸法は、左側突起部45の厚さ寸法にほぼ等しく形成され、この突片52Aの先端が左側突起45の下面に点接触する。また、左側長孔52の長手方向幅寸法は、左側突起部45の幅寸法とほぼ等しくなるように形成されている。
【0024】
一方、右側長孔53は、右側突起部46の断面よりも大きい開口部に形成され、この右側突起部46の周囲と右側長孔53との間には隙間が形成される。
従って、ヘッド支持部材29は、揺動支持部41の切欠部43の両外側後端縁部に形成される各突起部45、46のうち、左側突起部45と突片52Aとの接触部分を揺動支点として、各案内突起部44が挿入される各案内溝48に沿って上下方向に揺動可能に支持される。これにより、ヘッド支持部材29は、左側突起部45と突片52Aとの接触部分を揺動支点として、プラテンローラ24に対して上下方向に揺動可能に支持されると共に、該プラテンローラ24の中心軸に対して長手方向に傾斜可能に支持される。
【0025】
また、前側側壁部50には、揺動支持部41の両外側側縁部に対向する位置に左側バネ27と右側バネ28とが支架されている。この左側バネ27と右側バネ28とは、ねじりコイルバネタイプで一端はヘッド支持部材29上に位置して、ヘッド支持部材29を介してサーマルヘッド26をプラテンローラ24側に押圧する方向の付勢力を常時加えている。
【0026】
また、前側側壁部50のフレーム38に対向する折曲部の中央位置には、サーマルヘッド26を駆動するためのFFC(flexible flat cable)54が挿通される水平方向に長い横長孔55が穿設されている。そして、この横長孔55からフレーム38内に挿通されたFFC54は、切欠部43から把持されてコネクタ42に挿通された後、フレーム38の下面に折り曲げられている。
また、フレーム38の前側側壁部材50が取り付けられた側端縁部の両端部には、印刷ユニット35を固定カバー部3にネジ止めするための各貫通孔56が穿設されている。
【0027】
また、各側壁部37に形成される各案内溝48の用紙7の搬送方向下流側には、補強部材31の長手方向両端縁部が上方から挿入される側面視略V字型の各挿入溝57が形成されている。この補強部材31は、細長板状でヘッド支持部材29の長手方向の長さとほぼ同じ長さに形成されている。そして、補強部材31の長手方向両端縁部が各側壁部37の上端部に形成される各挿入溝57に上方から挿入されて、ヘッド支持部材29の用紙7の搬送方向下流側に配置される。
また、この補強部材31の用紙搬送方向下流側には、分離部材31が各側壁部37間に横架されている。
【0028】
ここで、左側バネ27がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P1と、右側バネ28がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P2との関係について図4及び図6に基づいて説明する。
図4及び図6に示すように、左側バネ27は、右側バネ28よりも揺動支点としての左側突起部45と突片52Aとの接触部分に近くなるように配置されている。このため、この左側バネ27がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P1は、右側バネ28がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P2よりも大きくなるように設定され、左側バネ27がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P1と、右側バネ28がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P2とは、下記式(1)に示される関係を充足している。
【0029】
2×L2×(L3×P1+L5×P2)=(2×L2×L4−2×L1×L4+L1×L6)×(P1+P2)・・・・(1)
【0030】
これにより、左側バネ27がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P1と、右側バネ28がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P2とが上記式(1)の関係を充足する場合には、サーマルヘッド26が該サーマルヘッド26の長手方向において等分布荷重でプラテンローラ24を押圧することとなる。
【0031】
尚、図4に示すように、L1は、揺動支点としての左側突起部45と突片52Aとの接触部分から、各バネ27、28がヘッド支持部材29を押圧する加重位置までのサーマルヘッド26の長手方向に対して直角方向の距離である。また、L2は、揺動支点としての左側突起部45と突片52Aとの接触部分から、サーマルヘッド26とプラテンローラ24との接触部分までのサーマルヘッド26の長手方向に対して直角方向の距離である。
【0032】
また、図6に示すように、L3は、揺動支点としての左側突起部45と突片52Aとの接触部分に近い方のサーマルヘッド26の長手方向端縁部から、左側バネ27がヘッド支持部材29を押圧する加重位置までの該サーマルヘッド26の長手方向の距離である。L4は、揺動支点としての左側突起部45と突片52Aとの接触部分に近い方のサーマルヘッド26の長手方向端縁部から、この左側突起部45と突片52Aとの接触部分までの該サーマルヘッド26の長手方向の距離である。L5は、揺動支点としての左側突起部45と突片52Aとの接触部分に近い方のサーマルヘッド26の長手方向端縁部から、右側バネ28がヘッド支持部材29を押圧する加重位置までの該サーマルヘッド26の長手方向の距離である。L6は、サーマルヘッド26の長手方向の長さである。
【0033】
ここで、左側バネ27と右側バネ28は、弾性部材として機能する。また、用紙7は、被記録媒体として機能する。また、FFC54は、駆動用配線として機能する。また、コネクタ42は、配線接続手段として機能する。また、左側突起部45と突片52Aとの接触部分は、揺動支点として機能する。
【0034】
従って、本実施例に係る印刷装置1では、サーマルヘッド26は、該サーマルヘッド26の長手方向中央位置の用紙7の搬送方向上流側の側端縁部に、該サーマルヘッド26を駆動するためのFFC54が接続されるコネクタ42が設けられている。また、このサーマルヘッド26を保持して上下方向に揺動可能に支持されるヘッド支持部材29は、コネクタ42に対向する部分から揺動支持部41の側端縁部まで切り欠かれた切欠部43が形成されている。更に、ヘッド支持部材29は、揺動支持部41の切欠部43の両外側後端縁部には、外側方向に延出される左側突起部45と右側突起部46とが形成されている。そして、ヘッド支持部材29は、揺動支持部41の切欠部43の両外側後端縁部に形成される各突起部45、46のうち、左側突起部45と突片52Aとの接触部分を揺動支点として、各案内突起部44が挿入される各案内溝48に沿って上下方向に揺動可能に支持される。
【0035】
これにより、サーマルヘッド26の長手方向中央位置に、このサーマルヘッド26を駆動するためのFFC54が接続されるコネクタ42を設けても、ヘッド支持部材29の揺動支点は、切欠部43の外側後端縁部に設けられているため、コネクタ42と揺動支点、即ち、コネクタ42と前側側壁部材50との距離を狭くしても、コネクタ42にFFC54を接続するための作業空間を確保することが可能となり、印刷装置1の用紙7の搬送方向の小型化を図ることが可能となる。
【0036】
また、左側バネ27は、右側バネ28よりも揺動支点に近い位置に配置されているため、この左側バネ27がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P1は、右側バネ28がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P2よりも大きくなるように設定され、左側バネ27がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P1と、右側バネ28がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P2とは、下記式(1)に示される関係を充足している。
【0037】
これにより、各バネ27、28の各押圧力P1、P2によってヘッド支持部材29に働く揺動支点回りのモーメントの釣り合いを容易にとることができる。また、左側バネ27がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P1と、右側バネ28がヘッド支持部材29を押圧する押圧力P2とが上記式(1)の関係を充足するため、サーマルヘッド26が該サーマルヘッド26の長手方向において等分布荷重でプラテンローラ24を押圧することとなり、サーマルヘッド26を用紙7の幅方向全体にほぼ均一な圧力で接触させることが可能となり、印刷装置1は、印字精度や送り精度の向上を図りつつ高品質の印字を行うことができる。また、各バネ27、28の各押圧力P1、P2を設定するだけで、該各バネ27、28の配置位置を変更することなく構成することができ、簡易な構成で印字品質の向上を図ることができる。
【0038】
尚、本発明は前記実施例に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例に係る印刷装置の外観斜視図である。
【図2】印刷装置のケースカバーの開閉動作を示した図である。
【図3】印刷装置のケースカバーを開けて示す右側上方からの斜視図である。
【図4】図3のX1−X1矢視断面図である。
【図5】分離部材と補強板とを除いた状態の印刷ユニットを用紙の搬送方向上流側の上方から見た上方斜視図である。
【図6】印刷ユニットを揺動支持部側の上方から見た上方斜視図である。
【図7】印刷ユニットを揺動支持部側の下方から見た下方斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 印刷装置
2 本体ケース
3 固定カバー
4 ケースカバー
5 収納部
7 用紙
11 印刷機構部
18 排出口
20 押さえ板
22 ピックアップローラ
23 分離部材
24 プラテンローラ
26 サーマルヘッド
35 印刷ユニット
37 側壁部
38 フレーム
41 揺動支持部
42 コネクタ
43 切欠部
44 案内突起部
45 左側突起部
46 右側突起部
48 案内溝
50 前側側壁部
52 左側長孔
52A 突片
53 右側長孔
54 FFC(flexible flat cable)
41 横長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側壁部を有するフレームと、
サーマルヘッドを保持して上下方向に揺動可能に支持されるヘッド支持部材と、
前記一対の側壁部に回転可能に軸支されるプラテンローラと、
前記ヘッド支持部材の長手方向に配設されて前記サーマルヘッドを前記プラテンローラの周面に所定荷重で当接させる複数の弾性部材と、
を備え、
前記サーマルヘッドは、該サーマルヘッドの長手方向中央位置の被記録媒体搬送方向上流側の側端縁部に設けられて、該サーマルヘッドの駆動用配線が接続される配線接続手段を有し、
前記ヘッド支持部材は、前記配線接続手段に対向する部分から揺動支持部側の端縁部まで切り欠かれた切欠部を有し、
該ヘッド支持部材は、前記切欠部より長手方向外側の一方の前記揺動支持部側の端縁部に揺動支点が設けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記複数の弾性部材のうちの前記ヘッド支持部材の長手方向において揺動支点に近い位置に配設される弾性部材の押圧力は、該長手方向において揺動支点から遠い位置に配設される弾性部材の押圧力よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記複数の弾性部材のそれぞれの前記押圧力は、前記サーマルヘッドが該サーマルヘッドの長手方向において等分布荷重で前記プラテンローラを押圧するように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−110483(P2008−110483A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293033(P2006−293033)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】