説明

印刷装置

【課題】使用する印字ヘッドのピンレイアウト形状が予めわかっている場合にしかレイアウト情報に基づく印字データの変換ができないという不具合を解決する手段を有する印刷装置を提供する。
【解決手段】使用する印字ヘッド2のピンレイアウト情報が入力設定されるレイアウト情報設定レジスタ部22と、印字DPIが設定される印字DPI設定レジスタ部23およびインパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタを生成するタイミングカウンタ部25を設ける。使用する印字ヘッド2のピンレイアウト情報がレイアウト情報設定レジスタ部22に設定され、印字DPI設定レジスタ部23に印字DPIが設定されると、それらの情報からタイミングカウンタ部25でインパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタが生成され、データ変換部9で印字データに基づいてインパクトタイミングが生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドット単位で印刷を行う印刷装置に関し、特に印字ヘッドのレイアウトが異なる場合に好適な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図35に従来のシリアルドットインパクトプリンタである印刷装置の制御ブロックを示す。図35において、従来の印刷装置1は、印字ヘッド2、ヘッドドライバ3、プログラムROM4、制御LSI5およびRAM6を備えている。制御LSI5にはレイアウト情報格納部7、レイアウト選択部8、印字データ変換部9、インパクトデータ取出部10およびインパクト実行部11が設けられている。またRAM6には印字データ保存部12およびインパクトデータ保存部13が設けられている。上記のうち印字ヘッド2以外は印刷装置1に設けられた基板14に実装されている。また印刷装置1は上位装置(ホストコンピュータ)15に接続されており、上位装置15から印字データを送信される。
【0003】
次に図36に示すフローチャートにしたがって動作を説明する。印刷装置1に電源が投入されると、プログラムROM4から数種類の印字ヘッドのピンレイアウト情報がレイアウト情報格納部7に格納される(ステップ1)。次に実際に使用する印字ヘッド2のレイアウト形状に合わせて、そのレイアウト形状を特定するための情報、例えばレイアウト形状がダイヤ型か、千鳥型かを示す情報をプログラムROM4からレイアウト選択部8に設定する(ステップ2)。
【0004】
その後上位装置15から印字データが送信されてくると(ステップ3)、印字データは印字データ保存部12に格納される(ステップ4)。印字データ変換部9は印字データ保存部12から印字データを取り出し(ステップ5)、レイアウト情報格納部7およびレイアウト選択部8からの情報に基づいてピンレイアウトを選択した後、印字データを印字ヘッド2のピンレイアウトに沿った形にデータ変換を行う(ステップ6)。
【0005】
ここでデータ変換について説明する。印字ヘッド2のピンレイアウトが、例えば図37に示すような24ピンの疑似ダイヤモンド形状である場合、まず図38に示すように、24のピンを4つのグループに分ける。即ち、最も上位から順に#1ピン、#2ピン、・・・、#24ピンとした場合、最も左側にある4つのピン(#9、#11、#13、#15)をグループA、その次に右側にある4つのピン(#5、#7、#17、#19)と右から3番目にある4つのピン(#2、#4、#22、#24)をグループB、左から3番目にある4つのピン(#1、#3、#21、#23)と右から2番目にある4つのピン(#6、#8、#18、#20)をグループC、そして最も右側にある4つのピン(#10、#12、#14、#16)をグループDとする。
【0006】
このとき、グループBおよびグループCのそれぞれにおける左側のピン(ODDピン)と右側のピン(EVENピン)との間の距離は(8/240)インチ離れているので、図39に示すように、EVENピンの印字データをODDピンの印字データに対してすべて8カラム離間させるようにデータ移動を行う。なお図39に示す例は、全てのピンに印字データがある縦バー印字の場合を示す。このように、印字ヘッド2のピンレイアウト情報に基づいて印字データの変換を行う。以上のように変換された印字データはインパクトデータ保存部13に格納される(ステップ7)。
【0007】
そしてインパクト割り込み信号が入力されると(ステップ8)、インパクトデータ取出部10がインパクトデータ保存部13からインパクトデータを取り出し(ステップ9)、次のインパクト割り込み信号が入力すると(ステップ10)、印字を行う(ステップ11)。
【0008】
印字は図40に示すようなタイミングで行われる。図40は従来のインパクトタイミングを示すタイムチャートである。図40において、各カラムごとにインパクトタイミング信号が入力され、インパクトタイミング信号が入力する度に各グループごとのインパクトタイミング信号がタイミングをずらせて入力される。グループB、グループCおよびグループDのEVENピンは1カラム目のインパクトタイミングでは印字せず、8カラム目のインパクトタイミングで印字を行う。
【0009】
以上のように複数のピンをいくつかのグループに分け、各グループごとに印字の制御を行うものとして、例えば、特開平7−52413号公報に開示されるものがある。
【特許文献1】特開平7−52413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記従来の印刷装置においては、使用する印字ヘッドのピンレイアウト形状が予めわかっている場合にしかレイアウト情報に基づく印字データの変換ができない。また、考え得るすべての印字ヘッド形状のレイアウトデータを制御LSI内に用意するにはゲート数が膨大となり、現実的には実現性がない。そのため実際には数種類のレイアウトデータしか用意できない。
【0011】
したがって、印刷装置の開発途中において、印字ヘッドのピンレイアウトを変更する必要が生じた場合、変更ができないという事態になったり、あるいは現在までの資産である既存の制御LSIをそのまま使用したい場合に、制御不能という理由で使用不可になってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、印字ヘッドによりドット単位で印刷を行う印刷装置において、使用する印字ヘッドのレイアウト情報を入力設定するレイアウト入力設定手段と、前記レイアウト入力設定手段により入力設定されたレイアウト情報に基づいて印字すべきタイミングを生成するタイミング生成手段とを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用する印字ヘッドのレイアウト情報を各ピン毎に入力設定可能にしたので、使用する印字ヘッドのレイアウトが予め設定されていなくても、使用する印字ヘッドのレイアウト情報に合わせて印字すべきタイミングを生成することが可能となり、装置の開発途中で印字ヘッドを変更し、レイアウトが変更される場合にも同じ制御回路あるいは同じ制御LSIを使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。各図面に共通する要素には同一の符号を付す。図1は第1の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。図1において、第1の実施の形態の印刷装置21は、従来例と同様に、印字ヘッド2、ヘッドドライバ3、プログラムROM4、制御LSI5およびRAM6を備えている。
【0015】
制御LSI5には、レイアウト情報設定レジスタ部22、印字DPI設定レジスタ部23、レイアウト情報格納部24、タイミングカウンタ部25、印字データ変換部9、インパクトデータ取出部10およびインパクト実行部11が設けられる。またRAM6には印字データ保存部12およびインパクトデータ保存部13が設けられている。上記のうち印字ヘッド2以外は基板14に実装されている。また印刷装置21は上位装置(ホストコンピュータ)15に接続されており、上位装置15から印字データを送信される。
【0016】
レイアウト情報設定レジスタ部22は、印字ヘッド2の各ピンの位置を(1/720)インチ単位で設定できるレジスタで構成される。印字DPI設定レジスタ部23は印字DPI(dots per inch)を設定するレジスタである。レイアウト情報格納部24は、レイアウト情報設定レジスタ部22で設定された印字ヘッド2のピンレイアウト情報を格納する。タイミングカウンタ部25は、レイアウト情報設定レジスタ部22と印字DPI設定レジスタ部23から入力される情報に基づいて、インパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタを生成するものである。
【0017】
次に第1の実施の形態の印字動作を図2のフローチャートにしたがって説明する。図2は第1の実施の形態の印字動作を示すフローチャートである。まず、レイアウト情報設定レジスタ部22に、装置21が使用する印字ヘッド2のピンレイアウトを入力する(ステップ21)。入力は、印字ヘッド2の各ピンごとに(1/720)インチ単位で設定する。レイアウト情報の設定は、ファームウェア(プログラム)処理により制御LSI5内の制御レジスタであるレイアウト情報設定レジスタ部22に対して行われるが、図3に示すように、ある基準ポイントに対して各ピンがどれだけ離れているかの情報を設定する。図3はピンのレイアウト情報の設定を示す説明図である。
【0018】
図3において、例えば#1のピンは、基準ポイント“0”から“25”の値だけ離れており、#1ピンの設定値は“25”となる。同様に、#2のピンは基準ポイント“0”から“46”の値だけ離れており、#2ピンの設定値は“46”となる。このようにそれぞれのピンについて基準ポイントからどれだけ離れているかの値を設定する。ここで設定値“1”は(1/720)インチに相当する。全てのピンについてレイアウト情報を設定するには、6ビット(=0〜63)×24ピン分の制御レジスタがあれば実現可能である。入力設定された印字ヘッド2の各ピンのレイアウト情報は、制御LSI5内の内部レジスタであるレイアウト情報格納部24に格納される。ピンの縦方向の位置は、9ピン、24ピン等の印字ヘッドで固定のため、予めプログラムで保持している。
【0019】
次に上位装置15から印字データが入力されると(ステップ22)、印字データは印字データ保存部12に格納される(ステップ23)。ここで印字データ内で指定されたDPIモードを印字DPI設定レジスタ部23に入力し設定する(ステップ24)。次にレイアウト情報設定レジスタ部22に設定された各ピンのレイアウト情報と印字DPI設定レジスタ部23の情報がタイミングカウンタ部25に入力され、タイミングカウンタ部25は、インパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタを生成する(ステップ25)。
【0020】
タイミングカウンタの生成について図4を用いて説明する。図4はタイミングカウンタの生成を示す説明図である。図4において、まず基本となる(1/720)インチのインパクトタイミングをカウントすることにより、所望の印字DPIの印字すべきタイミングを得る。例えば、360DPIの場合は、印字タイミングは(2/720)インチ単位になるので、(1/720)インチタイミングが2つ分となり、図4のように生成される。他のDPIの場合も同様に印字タイミングが生成される。
【0021】
また各ピンのレイアウト情報に基づくインパクトタイミングは、第1ドット位置の印字タイミングに対して、第1ドット位置に印字を行うピンから離間距離分だけ離すようなタイミングに設定される。例えば、第1ドット位置に印字するピンから(3/720)インチ離れている場合は、(1/720)インチを3つ分離したカウントしたタイミングに設定される。
【0022】
またレイアウト情報設定レジスタ部22の情報と印字DPI設定レジスタ部23の情報がレイアウト情報格納部24に入力される(ステップ26)。レイアウト情報格納部24では、入力された情報に基づいて、即ち、印字ヘッド2のODDピンとEVENピンとのピン離間距離と印字DPIの情報に基づいて、印字データの離間分とインパクトタイミングからのディレイ(遅れ)量を各ピンごとに算出する。図5を用いて説明する。図5はインパクトタイミングのディレイ量の求め方を示す説明図である。
【0023】
図5に示す例は、図3に示す疑似タイヤモンド24ピンを有する印字ヘッドで、360DPIで黒ベタ印字を行う場合を示し、(1/720)インチ単位で印字タイミングの設定が可能な場合を示す。図5において、1カラム目の印字においてグループA(図38に示す)のODDピンは、"0"のタイミングで印字タイミングを取るが、グループBのODDピンは、図3に示すようにピン間の離間距離がグループAのODDピンに対して(3/720)インチだけ離間しているので、1カラム目の印字タイミングより(3/720)インチだけディレイさせる。同様に、グループCのODDピンは、グループBのODDピンに対して(3/720)インチだけ離間しているので、1カラム目の印字タイミングより(6/720)インチだけディレイさせる。以下同様に、各グループのピンをピン間の離間距離分ディレイさせて印字タイミングを設定する。なおグループDのODDピンおよびグループAのEVENピンは実際には印字されない。
【0024】
次に印字データ変換部9は、印字データ保存部12に格納されている印字データを取り出し(ステップ27)、レイアウト情報格納部24の情報に基づいて、印字データを印字ヘッド2のピンレイアウトに沿う形でデータ変換を行う(ステップ28)。このデータ変換において、例えば、図4に示す#3ピンや#8ピンは印字タイミングに跨っているので、即ち、DPIに基づく印字タイミングの中間に位置しているので、このようなピンについては次の印字タイミングでインパクトするようにデータを変換する。
【0025】
以上のように変換された印字データは、インパクトデータ保存部13に格納される(ステップ29)。そしてインパクト割り込み信号が入力されると(ステップ30)、インパクトデータ取り出し部10がインパクトデータ保存部13からインパクトデータを取り出し(ステップ31)、次のインパクト割り込み信号が入力すると(ステップ32)、印字を行う(ステップ33)。
【0026】
以上のように第1の実施の形態によれば、使用する印字ヘッド2に合わせてそのピンレイアウト情報をレイアウト情報設定レジスタ部22に入力設定するようにしたので、どのようなピンレイアウトの印字ヘッドを使用する場合でも対応可能となり、印刷装置の開発途中において、印字ヘッドのピンレイアウトを変更する必要が生じた場合、現在までの資産である既存の制御回路あるいは制御LSIをそのまま使用することが可能となる。ピンレイアウトの入力設定は、印刷装置に設けられたオペレータパネルの操作部から入力することもできるし、所定のコマンドデータを上位装置から送信することでも可能である。
【0027】
次に第2の実施の形態を説明する。図6は第2の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。図6において、第2の実施の形態の印刷装置31は、第1の実施の形態の印刷装置と同様に、レイアウト情報設定レジスタ部22、印字DPI設定レジスタ部23、レイアウト情報格納部24およびタイミングカウンタ部25を有し、さらに印字ヘッド2に不揮発性メモリ32が実装されている。
【0028】
不揮発性メモリ32には印字ヘッド2のピンレイアウト情報があらかじめ格納されており、印字ヘッド2が印刷装置31に実装されると、不揮発性メモリ32は制御LSI5に接続され、制御LSI5との間でデータのやり取りを行うことができる。その他の構成は前記第1の実施の形態と同様である。
【0029】
次に第2の実施の形態の動作を図7に示すフローチャートにしたがって説明する。図7は第2の実施の形態の印字動作を示すフローチャートである。まず、不揮発性メモリ32を設けた印字ヘッド2が印刷装置31に実装される(ステップ41)。この実装により不揮発性メモリ32は制御LSI5と接続される。次に装置31の電源が投入されると(ステップ42)、レイアウト情報設定レジスタ部22が不揮発性メモリ32のピンレイアウト情報を読み取ることによりピンレイアウトデータを取得する(ステップ43)。
【0030】
次に上位装置15から印字データが入力されると(ステップ44)、印字データは印字データ保存部12に格納される(ステップ45)。ここで印字データ内で指定されたDPIモードを印字DPI設定レジスタ部23に入力し設定する(ステップ46)。次にレイアウト情報設定レジスタ部22に設定された各ピンのレイアウト情報と印字DPI設定レジスタ部23の情報がタイミングカウンタ部25に入力され、第1の実施の形態と同様に、タイミングカウンタ部25は、インパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタを生成する(ステップ47)。
【0031】
またレイアウト情報設定レジスタ部22の情報と印字DPI設定レジスタ部23の情報がレイアウト情報格納部24に入力される(ステップ48)。レイアウト情報格納部24では、第1の実施の形態と同様に、入力された情報に基づいて、即ち、印字ヘッド2のODDピンとEVENピンとのピン離間距離と印字DPIの情報に基づいて、印字データの離間分とインパクトタイミングからのディレイ(遅れ)量を各ピンごとに算出する。
【0032】
次に印字データ変換部9は、印字データ保存部12に格納されている印字データを取り出し(ステップ49)、第1の実施の形態と同様に、レイアウト情報格納部24の情報に基づいて、印字データを印字ヘッド2のピンレイアウトに沿う形でデータ変換を行う(ステップ50)。
【0033】
変換された印字データは、インパクトデータ保存部13に格納される(ステップ51)。そしてインパクト割り込み信号が入力されると(ステップ52)、インパクトデータ取り出し部10がインパクトデータ保存部13からインパクトデータを取り出し(ステップ53)、次のインパクト割り込み信号が入力すると(ステップ54)、印字を行う(ステップ55)。
【0034】
以上のように第2の実施の形態によれば、前記第1の実施の形態の有する効果に加えて、印字ヘッド2にその印字ヘッド2のピンレイアウト情報を持たせ、電源投入の際にピンレイアウト情報をレイアウト情報設定レジスタ部22に設定するようにしたので、プログラム(ファームウェア処理)で印字ヘッド2の選択をすることが不要となり、装置の用途により印字ヘッドを使い分ける等の応用が可能である。
【0035】
次に第3の実施の形態を説明する。ところで、印字ヘッドのスペーシング方向(フォワード方向/リバース方向)に規格外の印字位置ズレが発生した場合、従来では所謂レジストレーション補正を行って、例えば、ファームウェアで認識している印字ヘッドの現在位置と実際の印字ヘッドの位置との差異によるズレを補正している。しかしながらこの制御方法は、インパクトタイミングに対して、CPU等のタイマを使用して遅延制御またはその逆の制御を行うことにより、インパクトのタイミングをずらしていたので、CPUの負荷が大きくなり、パフォーマンスの低下につながっていた。第3の実施の形態はこの点をも鑑みてなされたものである。
【0036】
図8は第3の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。図8において、第3の実施の形態の印刷装置41には、印字品位検出部42と印字品位調整部43が設けられている。印字品位検出部42は、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との差異が所定の印字品位を満足する程度のものであるか否かを検出するもので、所定の印字品位を満足しないと判断した場合にはアラーム信号を印字品位調整部43に対して出力する。印字品位調整部43は、印字品位検出部42からアラーム信号を入力すると、印字品位を調整するための調整値を算出し、算出した調整値をレイアウト情報設定レジスタ部22に送る。その他の構成は前記第1の実施の形態と同様である。
【0037】
印字品位検出部42は印字ヘッド2の実際の位置を検出する位置検出機構に接続されている。図9に位置検出機構を示す。図9において、位置検出機構44は、印字ヘッド2を搭載する移動可能なキャリッジ45の後方に設けたリニアスケール46と、キャリッジ45上に設けられたリニアセンサ47とから構成される。リニアスケール46は印刷装置41の本体側に設けられ、帯状に白黒の印刷パターンを交互に備えている。リニアスケール46は印字ヘッド2の移動方向に沿って配設されている。
【0038】
リニアセンサ47はキャリッジ45上にリニアスケール46に対向して設けられ、発光部47aと受光部47bで構成される。発光部47aで照射された光はリニアスケール46で反射し、受光部47bで受光される。発光部47aとしては例えば発光ダイオードを用いることができ、また受光部47bとしてはフォトダイオードまたはフォトトランジスタを用いることができる。
【0039】
キャリッジ45(印字ヘッド2)をスペーシング移動させるスペーシングモータとしてステッピングモータを使用している場合において、印字ヘッド2の実際の位置を検出する機構を持たない場合は、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置が異なった場合、スペーシング方向の印字ズレを修正することができず、印字品位が悪くなる。
【0040】
そこで上記のような印字ヘッド2の位置を検出する機構を設けることにより、実際の印字ヘッド2の位置を検出し、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との差異を印字品位補正値として適用することが可能になる。具体的には、イニシャル動作時に上記の差異を検出し、その差異を補正値として後述するように印字ヘッド2のピンレイアウトを動的に変更することにより、印字品位を所定以上に保持するものである。
【0041】
次に第3の実施の形態の動作を図10Aおよび図10Bに示すフローチャートにしたがって説明する。図10Aおよび図10Bは第3の実施の形態の動作を示すフローチャートである。まず、第1の実施の形態と同様に、レイアウト情報設定レジスタ部22に、装置41で使用する印字ヘッド2のピンレイアウト情報を入力する(ステップ61)。入力は、印字ヘッド2の各ピンごとに(1/720)インチ単位で設定する。レイアウト情報の設定は、ファームウェア(プログラム)処理により制御LSI5内の制御レジスタであるレイアウト情報設定レジスタ部22に対して行われるが、図3に示すように、ある基準ポイントに対して各ピンがどれだけ離れているかの情報を設定する。入力設定された印字ヘッド2の各ピンのレイアウト情報は、制御LSI5内の内部レジスタであるレイアウト情報格納部24に格納される。
【0042】
次に上位装置15から印字データが入力されると(ステップ62)、印字データは印字データ保存部12に格納される(ステップ63)。ここで印字データ内で指定されたDPIモードを印字DPI設定レジスタ部23に入力し設定する(ステップ64)。次にレイアウト情報設定レジスタ部22に設定された各ピンのレイアウト情報と印字DPI設定レジスタ部23の情報がタイミングカウンタ部25に入力され、タイミングカウンタ部25は、インパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタを生成する(ステップ65)。
【0043】
またレイアウト情報設定レジスタ部22の情報と印字DPI設定レジスタ部23の情報がレイアウト情報格納部24に入力される(ステップ66)。レイアウト情報格納部24では、第1の実施の形態と同様に、入力された情報に基づいて、即ち、印字ヘッド2のODDピンとEVENピンとのピン離間距離と印字DPIの情報に基づいて、印字データの離間分とインパクトタイミングからのディレイ(遅れ)量を各ピンごとに算出する。
【0044】
次に印字データ変換部9は、印字データ保存部12に格納されている印字データを取り出し(ステップ67)、第1の実施の形態と同様に、レイアウト情報格納部24の情報に基づいて、印字データを印字ヘッド2のピンレイアウトに沿う形でデータ変換を行う(ステップ68)。変換された印字データは、インパクトデータ保存部13に格納される(ステップ69)。
【0045】
そしてインパクト割り込み信号が入力されると(ステップ70)、印字品位検出部42がアラーム信号を出力しているか否かを判断する(ステップ71)。印字品位検出部42は、位置検出機構44から印字ヘッド2の実際の位置の情報を得るとともに、また図示しないスペーシングモータの制御信号からファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置の情報を得る。
【0046】
図11を用いて説明すると、印字品位検出部42は、印字ヘッド2の実際の位置を、位置検出機構44から出力されるリニアスケールΦA信号とリニアスケールΦB信号により求め、ファームウェアで認識する印字ヘッド2の位置を、スペーシング(SP)モータΦA信号とスペーシング(SP)モータΦB信号とから求める。なお図9に示すリニアセンサ47の受光部47bは、互いにパルスの位相が90°ずれた2つのリニアスケール信号(ΦA、ΦB)を出力するものとなっている。
【0047】
印字品位検出部42は、両方の位置情報からファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との差異を求め、その差異が印字品位に影響を与える程度のものであるか否かを所定の基準値と比較することにより判断し、基準値以上である場合には、印字品位調整部43にアラーム信号を出力する。印字品位検出部42はアラーム信号を出力するとともに、差異の値を印字品位調整部43に送る。
【0048】
ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との間に差異αが発生した場合(図11に示す例では実際の印字ヘッド2の位置が進みすぎている)、印字が開始される位置は、ファームウェアで認識している第1ドット印字位置に対してαだけずれており、印字ヘッド2のFOW方向での印字とREV方向での印字間のズレを考えると、β(=2α)の印字ズレが発生することになる。
【0049】
印字品位調整部43は、印字品位検出部42から差異の情報を受け取ると、その情報から印字調整値を算出する(ステップ72)。例えば、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との間に差異αが、0.1mmである場合、(3/720)インチ=0.1058mmであるので、印字ヘッド2のピンレイアウトを全体に(3/720)インチずらすことにより補正が可能となるので、(3/720)インチが印字調整値となる。
【0050】
印字品位調整部43は、算出した調整値をレイアウト情報設定レジスタ部22に入力する(ステップ73)。レイアウト情報設定レジスタ部22には既に印字ヘッド2のピンレイアウト情報が設定されているので、そのピンレイアウト情報を調整値で補正することになる。図12により具体例を用いて説明する。図12は調整値によるピンレイアウトの補正を示す説明図である。
【0051】
図12は図5と同様に360DPIで黒ベタ印字の場合を示し、図12(a)は補正前の各グループのピンの印字タイミングを示し、図12(b)は補正後の各グループのピンの印字タイミングを示す。
【0052】
例えば、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との間に差異αが、0.1mmである場合、上述のように、印字ヘッド2のピンレイアウトを全体に(3/720)インチずらす必要があるが、実際の印字ヘッド2の位置が進みすぎていることにより差異が発生しているので、図12(b)に示すように、各グループのピンの印字タイミングをタイミングを早くする方向に(3/720)インチずらす。
【0053】
ステップ71で印字品位検出部42からアラーム信号が出力されなかった場合、およびステップ73で印字品位調整部43で算出した調整値をレイアウト情報設定レジスタ部22に入力した後、インパクトデータ取り出し部10がインパクトデータ保存部13からインパクトデータを取り出し(ステップ74)、次のインパクト割り込み信号が入力すると(ステップ75)、印字を行う(ステップ76)。
【0054】
ステップ76における印字は補正前の印字タイミングで行われるが、次の行の印字または次のページの印字または次のジョブの印字では、調整値により補正されたレイアウト情報設定レジスタ部22のレジスタ値による印字タイミングで印字が行われる。その結果、スペーシング方向の印字ズレを防止することが可能となる。
【0055】
以上のように第3の実施の形態では、上記第1の実施の形態の有する効果に加えて、次の効果を奏する。即ち、従来ではCPU等のタイマを使用して、印字ヘッドのスペーシング方向(フォワード方向/リバース方向)の印字ズレを補正していたが、第3の実施の形態によれば、検出された差異に基づいて印字品位調整部43で調整値を算出し、その調整値でレイアウト情報設定レジスタ部22のレジスタ値を補正するようにしたので、パフォーマンスを低下させることなく、印字ズレの補正を行うことが可能となる。
【0056】
次に第4の実施の形態を説明する。図13は第4の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。図13において、第4の実施の形態の印刷装置51には、レイアウト情報設定レジスタA部22aとレイアウト情報設定レジスタB部22bが設けられている。レイアウト情報設定レジスタA部22aには、装置51で使用する印字ヘッド2のピンレイアウト情報がカラム単位で入力される。またレイアウト情報設定レジスタB部22bには、装置51で使用する印字ヘッド2のピンレイアウト情報がカラム以下の単位で入力される。またタイミングカウンタ部25は、レイアウト情報設定レジスタA部22aおよびレイアウト情報設定レジスタB部22bと印字DPI設定レジスタ部23からの情報からインパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタを生成する。その他の構成は前記第1の実施の形態と同様である。
【0057】
次に第4の実施の形態の動作を説明する。図14は第4の実施の形態の印字動作を示すフローチャートである。なお説明にあたって図15乃至図21の動作説明図を随時参照して説明する。まずステップ1において印字ヘッド2のピンレイアウト情報を各ピン毎および各ピングループ毎にレイアウト情報設定レジスタA部22aおよびレイアウト情報設定レジスタB部22bに入力する。
【0058】
レイアウト情報設定レジスタA部22aに入力される情報は、「印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲」が走査していき、基本印字タイミングに到達した地点から印字ヘッドピンまでの離間したカラム単位での離間量である。またレイアウト情報設定レジスタB部22bに入力される情報は、「印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲」が走査していき、基本印字タイミングに到達した地点から印字ヘッドピンまでの離間したカラム以下の単位での離間量である。なおカラム以下の単位は、印字DPIにより異なる。図を用いて説明する。
【0059】
図15A乃至図15Hは印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査は、図示しないスペーシングモータを回転させて印字ヘッド2をスペーシング移動させることにより行う。図15A乃至図15Hにおいては、24ピン系疑似タイヤモンドの印字ヘッドで、A〜Dの4グループで、ピン間距離が1/240インチで、180DPI時を例にしている。まず図15Aにおいて印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲52は、その先頭部が停止位置に位置している。この状態では印字ヘッドが「印字開始ポイント」に到達していない。この状態から図における右方向へ走査していく。
【0060】
印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲52が図15Bに示す位置に来ると、即ち、図15Aの停止位置から3/720インチ進んだ位置にくると、グループAのピンが印字開始位置に到達したので、グループAのピンはこの印字タイミングでインパクトする。他のグループのピンはインパクトしない。このときグループAのピンの離間距離を“0”に設定する。さらに図15Bの位置から3/720インチ進んで図15Cに示す位置になると、グループBのピンが印字開始位置に到達したので、グループBのピンはこの印字タイミングでインパクトする。他のグループのピンはインパクトしない。このときグループBのピンの離間距離を“3”に設定する。
【0061】
さらに図15Cの位置から1/720インチ進んで図15Dに示す位置になると、グループAのピンが印字タイミング位置に到達したので、グループAのピンはこの印字タイミングでインパクトする。他のグループのピンはインパクトしない。さらに図15Dの位置から2/720インチ進んで図15Eに示す位置になると、グループCのピンが印字タイミング位置に到達したので、グループCのピンはこの印字タイミングでインパクトする。他のグループのピンはインパクトしない。このときグループCのピンの離間距離を“6”に設定する。
【0062】
さらに図15Eの位置から1/720インチ進んで図15Fに示す位置になると、グループBのピンが印字タイミング位置に到達したので、グループBのピンはこの印字タイミングでインパクトする。他のグループのピンはインパクトしない。さらに図15Fの位置から1/720インチ進んで図15Gに示す位置になると、グループAのピンが印字タイミング位置に到達したので、グループAのピンはこの印字タイミングでインパクトする。他のグループのピンはインパクトしない。
【0063】
さらに図15Gの位置から1/720インチ進んで図15Hに示す位置になると、グループDのピンが印字開始位置に到達したので、グループDのピンはこの印字タイミングでインパクトする。他のグループのピンはインパクトしない。このときグループDのピンの離間距離を“9”に設定する。
【0064】
以上のようにグループAとグループBのピンは第1カラム(印字タイミング)でインパクトし、グループCのピンは第2カラムでインパクトし、グループDのピンは第3カラムでインパクトするので、グループAとグループBはカラム単位として「0」に設定され、グループCはカラム単位として「1」に設定され、グループDはカラム単位として「2」に設定される。またグループAはカラム以下の単位として「0」に設定され、グループBはカラム以下の単位として「3」に設定され、グループCはカラム以下の単位として「2」に設定され、グループDはカラム以下の単位として「1」に設定される。
【0065】
図16は24ピン系疑似タイヤモンドの印字ヘッドで、A〜Dの4グループで、ピン間距離が1/240インチで、60DPI時を例にした場合の説明図である。図16に示すように、この場合は1つの印字タイミング中にすべてのピンがインパクトできるので、すべてのグループのピンについてカラム単位は「0」と設定される。またカラム以下の単位については、グループAは「0」に設定され、グループBは「3」に設定され、グループCは「6」に設定され、グループDは「9」に設定される。
【0066】
図17は24ピン系疑似タイヤモンドの印字ヘッドで、A〜Dの4グループで、ピン間距離が1/240インチで、360DPI時を例にした場合の説明図である。図17に示すように、この場合はグループAのピンは第1カラムでインパクトし、グループBのピンは第2カラムでインパクトし、グループCのピンは第4カラムでインパクトし、グループDのピンは第5カラムでインパクトするので、グループAはカラム単位として「0」に設定され、グループBはカラム単位として「1」に設定され、グループCはカラム単位として「3」に設定され、グループDはカラム単位として「4」に設定される。またカラム以下の単位については、グループAとグループCは「0」に設定され、グループBとグループDは「1」に設定される。
【0067】
図18は9ピン系傾斜配列の印字ヘッドで、A〜J(Iは無し)の9グループで、ピン間距離が1/240インチで、60DPI時を例にした場合の説明図である。図19に9ピン系傾斜配列型のピンレイアウトを示す。図19において、#1ピン〜#9ピンは1/240インチずれて傾斜した配列となっている。このピンレイアウトにおいては、各ピンがそれぞれグループを構成している。
【0068】
図18に示すように、この場合はグループA乃至グループDのピンが第1カラムでインパクトし、グループE乃至グループHのピンが第2カラムでインパクトし、グループJのピンが第3カラムでインパクトするので、グループA乃至グループDはカラム単位として「0」に設定され、グループE乃至グループHはカラム単位として「1」に設定され、グループJはカラム単位として「2」に設定される。またカラム以下の単位については、グループAとグループEとグループJは「0」に設定され、グループBとグループFは「3」に設定され、グループCとグループGは「6」に設定され、グループDとグループHは「9」に設定される。
【0069】
図20は9ピン系傾斜配列の印字ヘッドで、A〜J(Iは無し)の9グループで、ピン間距離が1/240インチで、360DPI時を例にした場合の説明図である。図20に示すように、この場合はグループAのピンが第1カラムでインパクトし、グループBのピンが第2カラムでインパクトし、グループCのピンが第4カラムでインパクトし、グループDのピンが第5カラムでインパクトし、グループEのピンが第7カラムでインパクトし、グループFのピンが第8カラムでインパクトし、グループGのピンが第10カラムでインパクトし、グループHのピンが第11カラムでインパクトし、グループJのピンが第13カラムでインパクトするので、カラム単位としてグループAは「0」に設定され、グループBは「1」に設定され、グループCは「3」に設定され、グループDは「4」に設定され、グループEは「6」に設定され、グループFは「7」に設定され、グループGは「9」に設定され、グループHは「10」に設定され、グループJは「12」に設定される。
【0070】
またカラム以下の単位としては、グループAとグループCとグループEとグループGとグループJは「0」に設定され、グループBとグループDとグループFとグループHは「1」に設定される。
【0071】
図21は9ピン系傾斜配列の印字ヘッドで、A〜J(Iは無し)の9グループで、ピン間距離が1/240インチで、135DPI時を例にした場合の説明図である。135DPI時の場合、印字タイミング間隔が1/135インチであるので、(5/720)+{(1/720)×(1/3)}インチ毎に印字タイミングが発生する。図21では印字タイミングを{(1/720)×(1/3)}インチ単位で示している。したがって印字タイミングは、16/(720×3)インチ毎に発生する。
【0072】
図21に示すように、この場合は、グループAとグループBのピンが第1カラムでインパクトし、グループCとグループDのピンが第2カラムでインパクトし、グループEとグループFのピンが第3カラムでインパクトし、グループGとグループHのピンが第4カラムでインパクトし、グループJのピンが第5カラムでインパクトするので、カラム単位としてはグループAとグループBは「0」に設定され、グループCとグループDは「1」に設定され、グループEとグループF「2」に設定され、グループGとグループHは「3」に設定され、グループJは「4」に設定される。
【0073】
この例の場合、カラム単位でのレイアウト情報だけでは端数である{(1/720)×(1/3)}インチ単位の情報が欠落するので、正確な印字位置にインパクトができなくなるので、カラム単位のほかにカラム以下の単位でレイアウト情報を設定する必要がある。カラム以下の単位としては、グループA(1ピン)は「0」に設定され、グループB(2ピン)は「9」に設定され、グループC(3ピン)は「2」に設定され、グループD(4ピン)は「11」に設定され、グループE(5ピン)は「4」に設定され、グループF(6ピン)は「13」に設定され、グループG(7ピン)は「6」に設定され、グループH(8ピン)は「15」に設定され、グループJ(9ピン)は「8」に設定される。
【0074】
以上のカラム単位の設定値はレイアウト情報設定レジスタA部22aに設定され、カラム以下の単位の設定値はレイアウト情報設定レジスタB部22bに設定される。
【0075】
次に上位装置15から印字データが入力されると(ステップ82)、印字データは印字データ保存部12に格納される(ステップ83)。ここで印字データ内で指定されたDPIモードを印字DPI設定レジスタ部23に入力し設定する(ステップ84)。次にレイアウト情報設定レジスタA部22aおよびレイアウト情報設定レジスタB部22bに設定された各ピンのレイアウト情報と印字DPI設定レジスタ部23の情報がタイミングカウンタ部25に入力され、タイミングカウンタ部25は、第1の実施の形態と同様に、インパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタを生成する(ステップ85)。
【0076】
またレイアウト情報設定レジスタA部22aおよびレイアウト情報設定レジスタB部22bの情報と印字DPI設定レジスタ部23の情報がレイアウト情報格納部24に入力される(ステップ86)。レイアウト情報格納部24では、第1の実施の形態と同様に、入力された情報に基づいて、印字データの離間分とインパクトタイミングからのディレイ(遅れ)量を各ピンごとに算出する。
【0077】
次に印字データ変換部9は、印字データ保存部12に格納されている印字データを取り出し(ステップ87)、第1の実施の形態と同様に、レイアウト情報格納部24の情報に基づいて、印字データを印字ヘッド2のピンレイアウトに沿う形でデータ変換を行う(ステップ88)。
【0078】
変換された印字データは、インパクトデータ保存部13に格納される(ステップ89)。そしてインパクト割り込み信号が入力されると(ステップ90)、インパクトデータ取り出し部10がインパクトデータ保存部13からインパクトデータを取り出し(ステップ91)、次のインパクト割り込み信号が入力すると(ステップ92)、印字を行う(ステップ93)。
【0079】
以上のように第4の実施の形態によれば、ピンのレイアウト情報としてカラム単位だけでなく、カラム以下の単位でも設定するようにしたので、印字DPIがどのようなものであっても正確な印字タイミングでインパクトすることが可能となる。例えば、図18示す例において、グループHの#8ピンは、カラム単位で1つ、カラム以下の単位(1/720インチ)で2つ、シフトさせることにより、そのタイミングで印字データを印字することができる。
【0080】
次に第5の実施の形態を説明する。図22は第5の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。図22において、第5の実施の形態の印刷装置61には、同時ピン設定レジスタ部62が設けられている。同時ピン設定レジスタ部62は同時に駆動される複数のピンの情報が設定されるもので、プログラムROM4およびインパクト実行部11に接続されている。
【0081】
ここで複数ピンの同時駆動が発生した場合の問題点について説明する。まずインパクト式の印字ヘッドのピンがインパクトするためのメカニズムについて説明する。印字しない状態では印字ピンは印字ヘッド内の永久磁石に引きつけられており、印字ピンは突出しない。また印字ピンが永久磁石により引き付けられる際に偏倚する板バネを配置しており、偏倚により発生する板バネのバネ力と永久磁石の吸引力との大小関係は、(永久磁石の力)>(板バネの力)となっている。永久磁石はそれぞれのピンに対して個別に設けられているわけではなく、全てのピンに対して共有的に設けられている。
【0082】
印字を行う場合は、引き付けられた状態の印字ピンを解放するために、永久磁石の磁束を打ち消すための電流(消磁電流)を流すと、板バネのバネ力で印字ピンが突出する。同時駆動ピンが発生した場合は、それぞれのピンに対して消磁電流を流すが、その際、消磁電流が互いに影響し合うために、消磁効果が薄れてしまう。その結果、インパクト力が弱くなり、印字品位が損なわれるという弊害が出てしまう。これに対する対策としては、同時駆動ピンが発生した場合には、そのピン数分の余分の電流を流すことにより消磁力を大きくし、インパクト力を正常に設定している。
【0083】
同時駆動されるピンの組み合わせは、印字DPIと印字ヘッドのピンレイアウトとの組み合わせにより、異なる。そのため、従来のようにピンレイアウトが予め決まっている場合には、そのピンレイアウトに応じて同時駆動ピンの組み合わせを論理回路に組み込むことが可能であるが、本発明のようにピンレイアウトが可変である場合には、印字DPIとピンレイアウトの組み合わせにより、同時駆動ピンの組み合わせは膨大なものとなる。
【0084】
第5の実施の形態では、複数ピンの同時駆動が発生し得る組み合わせを、制御LSI5内の同時ピン設定レジスタ部62に設定することにより制御サポートする。同時ピン設定レジスタ部62は具体的には16ビット構成を有し、サポートする印字ヘッド2の「総グループ数÷2」の数だけ用意される。
【0085】
例えば、9ピン系傾斜配列の印字ヘッドで、ピン間距離が1/240インチで、120DPIの印字ヘッドの場合は、図23に示すように、#1、#3、#5、#7、#9の各ピンが1つの同時駆動のグループとなり、#2、#4、#6、#8の各ピンがもう1つの同時駆動のグループとなる。この場合、同時ピン設定レジスタ部62の設定は、図24に示すようになる。なお図23は同時駆動ピンを示す説明図であり、図24は同時ピン設定レジスタ部の設定例を示す説明図である。なお図24において、ビットが“0”の場合は単独でインパクトされる。
【0086】
以上のようにして同時駆動ピンのパターン(同時にインパクトする可能性のある組み合わせのパターン)が設定されると、この情報は印字時にインパクト実行部11に送出される。インパクト実行部11には、インパクトデータ取り出し部10がインパクトデータ保存部13から取り出したインパクトデータが送出されるが、インパクト実行部11では、同時駆動ピンパターンデータとインパクトデータに基づいて同時駆動される際の消磁電流を制御する。具体的には、複数ピンの同時駆動の場合はドライブ時間を長く延ばすことで、単独駆動の場合と同じ電流量に制御する。
【0087】
以上のように第5の実施の形態によれば、同時ピン設定レジスタ部62を設け、このレジスタ部62に同時駆動ピンパターンデータを設定するようにしたので、印字DPIと使用し得る印字ヘッドのピンレイアウトの組み合わせの全パターンを論理回路で構成する必要がなくとも、各ピンのインパクト力を正常に設定することが可能となる。パターンデータの設定も操作部や所定のコマンドデータににより行われる。
【0088】
次に第6の実施の形態を説明する。図25は第6の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。図25において、第6の実施の形態の印刷装置71においては、印字ヘッド2に不揮発性メモリ72が設けられている。不揮発性メモリ72には、レイアウト情報格納部73、印字DPI情報格納部74および同時ピン設定レジスタ部75が設けられている。
【0089】
レイアウト情報格納部73は、印字ヘッドピンのレイアウト情報を格納するもので、印字データ変換部9およびタイミングカウンタ部25に対して直接ピンレイアウト情報を送出することができる構成となっている。
【0090】
印字DPI情報格納部74は、印字DPI情報を格納しており、格納している印字DPI情報はタイミングカウンタ部25に送られる。また同時ピン設定レジスタ部75は、第5の実施の形態で説明した印字DPI毎の同時駆動ピンのパターン情報を格納しており、ピンパターン情報はインパクト実行部11に直接送出可能である。
【0091】
印字ヘッド2が装着されると、不揮発性メモリ72は制御LSI5の各部と接続される。上位装置15から印字データが送られると、印字データは印字データ保存部12に格納される。ここで印字データ内で指定されたDPIモードが印字DPI情報格納部74に入力される。次にレイアウト情報格納部73に格納された各ピンのレイアウト情報と、印字DPI情報格納部74のDPI情報がタイミングカウンタ部25に入力され、第1の実施の形態と同様に、タイミングカウンタ部25は、インパクトタイミングを生成するためのタイミングカウンタを生成する。
【0092】
レイアウト情報格納部73のピンレイアウト情報は印字データ変換部9にも入力される。印字データ変換部9は、印字データ保存部12に格納されている印字データを取り出し、第1の実施の形態と同様に、レイアウト情報格納部73からの情報に基づいて、印字データを印字ヘッド2のピンレイアウトに沿う形でデータ変換を行う。
【0093】
変換された印字データは、インパクトデータ保存部13に格納され、インパクト割り込み信号が入力されると、インパクトデータ取り出し部10がインパクトデータ保存部13からインパクトデータを取り出し、次のインパクト割り込み信号が入力すると印字を行う。
【0094】
また同時ピン設定レジスタ部75の情報は印字時にインパクト実行部11に送出される。インパクト実行部11には、インパクトデータ取り出し部10がインパクトデータ保存部13から取り出したインパクトデータが送出されるが、インパクト実行部11では、第5の実施の形態と同様に、同時駆動ピンパターンデータとインパクトデータに基づいて同時駆動される際の消磁電流を制御する。
【0095】
以上のように第6の実施の形態によれば、使用する印字ヘッド2にレイアウト情報格納部73および印字DPI情報格納部74を設けたので、プログラム(ファームウェア処理)で印字ヘッド2のピンレイアウト情報および印字DPI情報を設定する必要がなくなる。また印字ヘッド2に同時ピン設定レジスタ部75を設けたので、プログラムで同時駆動ピンのパターン情報を生成、保存する必要がなくなる。例えば、プログラムがデバッグ終了した後での印字ヘッドレイアウト変更の際も、同時駆動ピンのパターンを判定し直すような作業が不要になる。
【0096】
次に第7の実施の形態を説明する。図26は第7の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。図26において、第7の実施の形態の印刷装置81には、タイミングカウンタ部82、印字DPI分別部83およびタイミング選択部84が設けられている。タイミングカウンタ部82にはレイアウト情報設定レジスタA部22aおよびレイアウト情報設定レジスタB部22bの情報が入力される。
【0097】
タイミングカウンタ部82にはタイミングパターン生成1部82−1乃至タイミングパターン生成N部82−nが設けられている。タイミングパターン生成1部82−1は、(1/720インチ)×(1/1)単位の印字タイミングを生成し、タイミングパターン生成2部82−2は、(1/720インチ)×(1/2)単位の印字タイミングを生成し、タイミングパターン生成N部82−nは、(1/720インチ)×(1/n)単位の印字タイミングを生成する。
【0098】
印字DPI分別部83は、印字DPI設定レジスタ部23から送られる印字DPI情報に基づいて印字DPIを分別する。分別の種類としては、設定された印字DPIが「(1/720インチ)×(1/1)単位」、「(1/720インチ)×(1/2)単位」、・・・、「(1/720インチ)×(1/n)単位」のどれに該当するかを判別する。
【0099】
例えば、120DPIの場合は、6/720インチなので、「(1/720インチ)×(1/1)単位」となり、96DPIの場合は、7.5/720インチ=15/(720×2)インチなので、「(1/720インチ)×(1/2)単位」となり、また108DPIの場合は、6.66/720インチ=20/(720×3)インチなので、「(1/720インチ)×(1/3)単位」となる。
【0100】
さらに、411.47DPIの場合は、1.75/720インチ=7/(720×4)インチなので、「(1/720インチ)×(1/4)単位」となり、200DPIの場合は、3.6/720インチ=18/(720×5)インチなので、「(1/720インチ)×(1/5)単位」となる。以上のように、「A/(720×N)インチ」の「A」が整数になるように、その印字DPIを分別する。
【0101】
タイミングカウンタ部82および印字DPI分別部83はタイミング選択部84に接続されている。タイミング選択部84では、印字DPI分別部83の分別結果に基づいて、タイミングカウンタ部82内のどのタイミングパターン生成部の出力タイミングを使用するかを選択する。
【0102】
次に動作を説明する。ここでは主にタイミングカウンタ部82の動作について図27に従って説明する。図27は印字タイミングの生成を示すタイムチャートである。タイミングカウンタ部82のタイミングパターン生成1部82−1は、図27(a)に示す(1/720インチ)×(1/1)単位の印字タイミングを生成し、タイミングパターン生成2部82−2は、(1/720インチ)×(1/2)単位の印字タイミングを生成する。一般に、タイミングパターン生成N部82−nは、(1/720インチ)×(1/n)単位の印字タイミングを生成する。
【0103】
したがって例えば、120DPIの場合は、6/720インチなので、図27(a)に示すように、タイミングパターン生成1部82−1で生成する「(1/720インチ)×(1/1)単位」のタイミングのみを使用して基本印字タイミングと各印字ピンの出力タイミングを生成する。また96DPIの場合は、7.5/720インチ=15/(720×2)インチなので、「(1/720インチ)×(1/2)単位」となり、図27(a)に示すように、タイミングパターン生成1部82−1で生成するタイミングと、タイミングパターン生成2部82−2で生成した「(1/720インチ)×(1/2)単位」のタイミングで基本印字タイミングと各ピンの印字タイミングを生成する。
【0104】
また108DPIの場合は、6.66/720インチ=20/(720×3)インチなので、「(1/720インチ)×(1/3)単位」となり、図27(b)に示すように、タイミングパターン生成1部82−1で生成するタイミングと、タイミングパターン生成2部82−2で生成するタイミングと、タイミングパターン生成3部82−3で生成した「(1/720インチ)×(1/3)単位」のタイミングで基本印字タイミングと各ピンの印字タイミングを生成する。また411.47DPIの場合は、1.75/720インチ=7/(720×4)インチなので、「(1/720インチ)×(1/4)単位」となり、図27(c)に示すように、タイミングパターン生成1部82−1で生成するタイミングと、タイミングパターン生成2部82−2で生成するタイミングと、タイミングパターン生成3部82−3で生成するタイミングと、タイミングパターン生成4部82−4で生成した「(1/720インチ)×(1/4)単位」のタイミングで基本印字タイミングと各ピンの印字タイミングを生成する。
【0105】
さらに200DPIの場合は、3.6/720インチ=18/(720×5)インチなので、「(1/720インチ)×(1/5)単位」となり、図27(d)に示すように、タイミングパターン生成1部82−1で生成するタイミングと、タイミングパターン生成2部82−2で生成するタイミングと、タイミングパターン生成3部82−3で生成するタイミングと、タイミングパターン生成4部82−4で生成するタイミングと、タイミングパターン生成5部で生成した「(1/720インチ)×(1/5)単位」のタイミングで基本印字タイミングと各ピンの印字タイミングを生成する。
【0106】
以上のように、「(1/720インチ)×(1/1)単位」の印字DPIではない印字DPIの場合も各ピンの印字タイミングを生成する。このように、第7の実施の形態では、基本となる(1/720)インチ単位のタイミングからその「1/1」、「1/2」、・・、「1/N」のタイミングを生成することにより、(1/720)インチ単位以外の印字DPIの印字タイミングを正確に生成することができる。
【0107】
次に第8の実施の形態を説明する。図28は第8の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。第8の実施の形態の印刷装置91には、ディレイ方向選択部92、ディレイ基本クロック選択部93、ディレイ量設定部94が設けられている。その他の構成は第7の実施の形態と同様である。
【0108】
印字ヘッド2をスペーシング移動させる駆動源としてステッピングモータ等のオープンループ制御を行う場合で、印字ヘッド2の移動速度にばらつきが発生することが予め分かっている場合や、加速印字または減速印字を行っている場合などは、速度のばらつきが発生する箇所や加速・減速を行っている箇所に印字位置ズレが発生することがある。その場合、印字品位を低下させないために印字位置の補正を行う。
【0109】
例えば、加速印字を行っている箇所について、図29により説明する。図29において、実線aは制御カーブ(理論カーブ)であり、実線bは印字ヘッドの実際の速度を示す。図に示すように、制御カーブaと実測値bは一致していない。そのため例えば区間Aにおいては、理論速度が実測速度より大きいので、印字タイミングの間隔(印字DPIのドット間隔)は、正常な場合より狭くなる。また区間Bのように理論速度が実測速度より小さい場合は、印字タイミングの間隔は広くなる。
【0110】
図30は印字領域とステッピングモータの速度の関係を示す説明図である。図30において、点線で囲む印字領域は、フォワード方向の印字時はステッピングモータの加速時の印字であり、リバース方向の印字時はステッピングモータの定速時の印字領域である。図29の上段は、図30の点線で囲んだ部分における印字タイミングの位置を示したものである。
【0111】
図29において、太線は印字タイミング位置を示し、上段の太線はフォワード方向移動時の印字タイミング位置で、下段の太線はリバース方向移動時の印字タイミング位置を示す。また矢印はフォワード時とリバース時の印字タイミングのズレ量を示す。図に示すように、加速時であるフォワード時は、定速時であるリバース時に対して印字タイミング位置が左側にずれる。
【0112】
このように印字位置がずれる原因としては、印字ヘッドを移動させる駆動源としてステッピングモータ等のオープンループ制御を行っている場合は、ステッピングモータを制御するファームプログラムは、実際の印字ヘッドの挙動がどうであろうとその挙動を検出する手段を持っていないので、印字ヘッドの理論的な移動速度と実際の印字ヘッドの移動速度に違いが生じ、印字位置ズレが発生した場合でもそのズレを補正することができない。移動速度が違うと理論的な累積移動距離と実際の累積移動距離が異なってくるので、ズレを補正する必要がある。
【0113】
補正の一つの方法として、印字ズレ量から補正値を決定し、決定した補正値を適用する方法がある。例えば、図31に示すように、まず補正を適用しない状態で印字ズレ量δを測定し、測定したズレ量δ分を補正値として適用することにより、印字位置ずれをなくす方法である。図31に示す印字タイミング位置は図29に示した例と同じものである。
【0114】
この方法を適用した従来の補正方法においては、図32に示すように、ステッピングモータ制御部から(1/720)インチタイミングのみを受け取り、そのタイミングに対してディレイをかけることにより印字タイミング位置を補正するようにしていた。即ち、“+側”にディレイをかける場合は、印字タイミングにディレイをかけたい時間を加えたタイミングに設定していた。
【0115】
ここで、ディレイ時間が(1/720)インチタイミングを超える場合は、印字タイミングの次の(1/720)インチタイミングに、(1/720)インチタイミングを超えないディレイ時間を加えるように設定していた。例えば、120DPIの場合で、ディレイ時間が(1/720)インチタイミングを100μsだけ超える場合は、((6+1)/720インチのタイミング)+(ディレイをかけたい時間(100μs))を印字タイミングとしている。
【0116】
また“−側”にディレイをかける場合は、印字タイミングの前の(1/720)インチタイミングにディレイをかけたい時間を加えたタイミングに設定していた。ここで、ディレイ時間が(1/720)インチタイミングを超える場合は、さらにその前の(1/720)インチタイミングに、(1/720)インチタイミングを超えないディレイ時間を加えるように設定していた。例えば、120DPIの場合で、ディレイ時間が(1/720)インチタイミングを150μsだけ超える場合は、((6−2)/720インチのタイミング)+(ディレイをかけたい時間(150μs))を印字タイミングとしている。
【0117】
しかしながら上記の従来の補正方法においては、“−側”にディレイをかけた場合に、ディレイ時間が(1/720)インチタイミングより大きい場合は、(1/720)インチタイミングがなくなるという問題が発生する。図32で説明すると、“−側”に(1/720)インチタイミングより大きいディレイをかけた場合、(4/720)インチタイミングの後で、(5/720)インチタイミング(点線で囲むタイミング)より先に印字タイミングが発生する。この場合、点線で囲む(5/720)インチタイミングがなくなり、このタイミングで印字すべきデータがリセットされるので印字できなくなり、脱ドットが発生するという問題が発生する。
【0118】
第8の実施の形態はこの脱ドットを発生させることなく印字位置ズレを補正することを図ったものである。図28において、図示しないステッピングモータ制御部から「(1/720)インチタイミング」を受け取るのではなく、「(1/720)インチ生成タイマ値」を受け取る。そして受け取ったタイマ値に対して、ディレイ方向選択部92、ディレイ基本クロック選択部93およびディレイ量設定部94にそれぞれの設定値を与えることによりディレイをかける。
【0119】
ディレイ方向選択部92には、“+側”にディレイをかけるのか、“−側”にディレイをかけるのかを選択し設定する。ディレイ基本クロック選択部93には、ディレイ量の最小単位(ディレイ設定値=1の場合に適用される量(時間))を“大”にするのか、あるいは“小”にするのかを選択し設定する。例えば、印字ヘッド2の移動速度が遅い場合に、最小単位を“小”にしてディレイ設定値(時間)=1と設定した場合には、進む程度が少なくて補正の効果が顕現しない場合がある。その場合には最小単位を“大”に設定することで補正の効果が現れるようにすることができる。また印字ヘッド2の移動速度が速い場合に、最小単位を“大”にしてディレイ設定値(時間)=1と設定した場合には、進む程度が大きすぎて補正の意味がなくなってしまう場合がある。その場合には最小単位を“小”に設定することで補正の効果が適正に現れるようにすることができる。またディレイ量設定部94には、かけたいディレイ量(時間)が設定される。
【0120】
図33は第8の実施の形態の動作を示すタイミングチャートで、120DPIの場合を示す。図33において、1/180インチ周期のタイマレジスタ設定値からデクリメントカウントしてカウント値が“0”になった時点でタイミング信号を発生する。このタイミング信号の間隔は(1/720)インチタイミングに相当する。補正をしない場合は、(6/720)インチタイミングで印字タイミングとなる。
【0121】
図33に示すように、“+側”にディレイをかける場合、まずタイマカウンタで(1/720)インチのタイミングの分だけカウントした後、さらにディレイ分のタイマカウント値をカウントする。そしてそのカウントが終了した時点から、再び(1/720)インチのタイミングの分だけカウントし、さらにディレイ分のタイマカウント値をカウントする。これを6回繰り返すことにより、ディレイ分だけ間隔の長い印字タイミングを得る。
【0122】
また“−側”にディレイをかける場合は、まずタイマカウンタで(1/720)インチのタイミングの分だけカウントした後、“−側”にディレイ分のタイマカウント値をカウントする。そしてそのカウントが終了した時点から、再び“+側”に(1/720)インチのタイミングの分だけカウントし、さらに“−側”にディレイ分のタイマカウント値をカウントする。これを6回繰り返すことにより、ディレイ分だけ間隔の短い印字タイミングを得る。このとき、基本となる(1/720)インチのタイミングを6回カウントするので、(1/720)インチタイミングの抜けがなくなることはない。
【0123】
以上のように第8の実施の形態によれば、基本となる(1/720)インチのタイミングのタイマ値をカウントすることにより、(1/720)インチタイミングの抜けがなくなることなく、印字位置ズレの補正をすることが可能となり、良好な印字品位を保つことが可能となる。
【0124】
次に第9の実施の形態を説明する。図34は第9の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。図34において、第9の実施の形態の印刷装置101には、第3の実施の形態と同様に、印字品位検出部42と印字品位調整部43が設けられている。印字品位検出部42は、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との差異が所定の印字品位を満足する程度のものであるか否かを検出するもので、所定の印字品位を満足しないと判断した場合にはアラーム信号を印字品位調整部43に対して出力する。印字品位調整部43は、印字品位検出部42からアラーム信号を入力すると、印字品位を調整するための調整値を算出し、算出した調整値をディレイ方向選択部92、ディレイ基本クロック選択部93、ディレイ量設定部94に送る。その他の構成は前記第8の実施の形態と同様である。
【0125】
印字品位検出部42は、図9に示す位置検出機構44に接続されている。印字ヘッド2をスペーシング移動させるスペーシングモータとしてステッピングモータを使用している場合において、印字ヘッド2の実際の位置を検出する機構を持たない場合は、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置が異なった場合、スペーシング方向の印字ズレを修正することができず、印字品位が悪くなる。
【0126】
そこで上記のような印字ヘッド2の位置を検出する機構を設けることにより、実際の印字ヘッド2の位置を検出し、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との差異を印字品位補正値として適用することが可能になる。具体的には、イニシャル動作時に、印字品位検出部42で、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との差異を検出し、印字品位調整部43で、その差異をディレイ補正値としてディレイ方向選択部92、ディレイ基本クロック選択部93、ディレイ量設定部94にそれぞれ設定することにより、第8の実施の形態で説明したように、印字位置ズレの補正を行う。
【0127】
以上のように第9の実施の形態によれば、ファームウェアで認識している印字ヘッド2の位置と実際の印字ヘッド2の位置との差異を検出し、この差異からディレイ補正値を求めるようにしたので、第8の実施の形態の有する効果に加えて、ディレイ補正値の算出が容易になるという効果を奏する。
【0128】
上記各実施の形態では、印刷装置としてドットインパクトプリンタを例にして説明したが、これに限らず、印字ヘッドがドット単位であるインクジェットプリンタにも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】第1の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図2】第1の実施の形態の印字動作を示すフローチャートである。
【図3】ピンのレイアウト情報の設定を示す説明図である。
【図4】タイミングカウンタの生成を示す説明図である。
【図5】インパクトタイミングのディレイ量の求め方を示す説明図である。
【図6】第2の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図7】第2の実施の形態の印字動作を示すフローチャートである。
【図8】第3の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図9】位置検出機構を示す機構図である。
【図10A】第3の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図10B】第3の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図11】印字ヘッドの位置ずれを検出するための説明図である。
【図12】調整値によるピンレイアウトの補正を示す説明図である。
【図13】第4の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図14】第4の実施の形態の印字動作を示すフローチャートである。
【図15A】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。
【図15B】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。
【図15C】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。
【図15D】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。
【図15E】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。
【図15F】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。
【図15G】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。
【図15H】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す動作説明図である。
【図16】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す説明図である。
【図17】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す説明図である。
【図18】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す説明図である。
【図19】9ピン系傾斜配列型のピンレイアウトを示す説明図である。
【図20】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す説明図である。
【図21】印字ヘッドピンレイアウト情報設定範囲の走査を示す説明図である。
【図22】第5の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図23】同時駆動ピンを示す説明図である。
【図24】同時ピン設定レジスタ部の設定例を示す説明図である。
【図25】第6の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図26】第7の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図27】印字タイミングの生成を示すタイムチャートである。
【図28】第8の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図29】印字位置ズレを示す説明図である。
【図30】印字領域とステッピングモータの速度の関係を示す説明図である。
【図31】印字位置ズレ量を示す説明図である。
【図32】従来の印字位置ズレ補正方法を示すタイムチャートである。
【図33】第8の実施の形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図34】第9の実施の形態の印刷装置を示す制御ブロック図である。
【図35】従来の印刷装置の制御ブロックを示すブロック図である。
【図36】従来の印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【図37】印字ヘッドのピンレイアウトを示す説明図である。
【図38】ピンのグループ分けを示す説明図である。
【図39】印字データの変換を示す説明図である。
【図40】従来のインパクトタイミングを示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0130】
2 印字ヘッド
21、31、41、51、61、71、81,91、101 印刷装置
22 レイアウト情報設定レジスタ部
22a レイアウト情報設定レジスタA部
22b レイアウト情報設定レジスタB部
23 印字DPI設定レジスタ部
25、82 タイミングカウンタ部
32、72 不揮発性メモリ
42 印字品位検出部
43 印字品位調整部
62、75 同時ピン設定レジスタ部
73 レイアウト情報格納部
74 印字DPI情報格納部
83 印字DPI分別部
84 タイミング選択部
94 ディレイ量設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドによりドット単位で印刷を行う印刷装置において、
使用する印字ヘッドのレイアウト情報を入力設定するレイアウト入力設定手段と、
前記レイアウト入力設定手段により入力設定された前記レイアウト情報に基づいて印字すべきタイミングを生成するタイミング生成手段とを設けたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記レイアウト情報を記憶する記憶手段を印字ヘッドに設け、
前記記憶手段から前記レイアウト入力設定手段に前記レイアウト情報を入力設定する請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
印字ヘッドのスペーシング方向の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出した印字ヘッドのスペーシング方向の実際の位置と、ファームウェア上で認識した印字ヘッドのスペーシング方向の位置との差異を検出する印字品位検出手段と、
前記印字品位検出手段により検出された差異に基づいて前記レイアウト入力設定手段に設定される前記レイアウト情報を調整する印字品位調整手段とを設けた請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印字品位検出手段は、前記位置検出手段により検出した印字ヘッドのスペーシング方向の位置とファームウェア上で認識した印字ヘッドのスペーシング方向の位置との差異が印字品位を低下すると判断した場合にアラーム信号を前記印字品位調整手段に送出し、
前記印字品位調整手段は、前記印字品位検出手段から前記アラーム信号を受信した場合に、前記印字品位検出手段から送られた差異に基づいて前記レイアウト情報を調整する請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
印字密度情報を入力設定する印字密度入力設定手段を有し、
前記レイアウト入力設定手段は、前記印字密度入力設定手段の印字密度情報に基づいてカラム単位で各ピンのレイアウト情報を設定する第1のレイアウト設定手段と、前記印字密度入力設定手段の印字密度情報に基づいてカラム以下の単位で各ピンのレイアウト情報を設定する第2のレイアウト設定手段とにより構成される請求項1記載の印刷装置。
【請求項6】
使用する印字ヘッドのピンレイアウト情報と印字密度情報に基づいて同時に駆動される複数のピンの組み合わせの情報を設定する同時ピン情報設定手段を設けた請求項1記載の印刷装置。
【請求項7】
前記レイアウト入力設定手段と、印字密度情報を入力設定する印字密度入力設定手段と、前記同時ピン情報設定手段を印字ヘッドに設けた請求項6記載の印刷装置。
【請求項8】
前記タイミング生成手段は、基本印字タイミングで印字タイミングを生成する基本タイミング生成部と、基本印字タイミングの1/Nの印字タイミングを生成する複数の1/Nタイミング生成手段を有し、
前記印字密度入力設定手段の印字密度情報に基づいて、前記基本タイミング生成部または前記1/Nタイミング生成部のいずれかを選択するタイミング選択手段を有し、
基本タイミング生成部と1/Nタイミング生成部を組み合わせることにより、基本印字タイミングをN等分した印字密度の印字タイミングを得る請求項5記載の印刷装置。
【請求項9】
ディレイ量を設定するディレイ量設定手段と、
基本印字タイミングに相当するカウント値と前記ディレイ量設定手段に設定されたディレイ量に相当するカウント値をカウントするカウント手段を設け、
前記カウント手段は、基本印字タイミングに相当するカウント値をカウントする度に前記ディレイ量に相当するカウント値をカウントすることにより印字密度に対応する印字タイミングを得る請求項8記載の印刷装置。
【請求項10】
印字ヘッドのスペーシング方向の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出した印字ヘッドのスペーシング方向の実際の位置と、ファームウェア上で認識した印字ヘッドのスペーシング方向の位置との差異を検出する印字品位検出手段と、
前記印字品位検出手段により検出された差異に基づいて前記レイアウト入力設定手段に設定される前記ピンレイアウト情報を調整する印字品位調整手段とを設けた請求項9記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図15G】
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【図15H】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2008−179123(P2008−179123A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164828(P2007−164828)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】