説明

印刷装置

【課題】被印刷媒体20を切断するための刃が設けられたカッタホルダ25をモータ駆動することで印刷ヘッド22による印刷が終了した被印刷媒体20を切断する構成において、カッタホルダ25をモータ駆動できなくなる前に、カッタホルダ25の交換をユーザに促すことができにようにする。
【解決手段】カッタホルダ25を駆動するモータ駆動負荷を負荷検知回路19により検知し、そのモータ駆動負荷があらかじめ定められたしきい値を越えたときには、カッタホルダ25の交換を促すメッセージを液晶表示部13に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷終了後の印刷媒体を切断するための機構が設けられた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状あるいはその他の連続的な媒体に印刷する印刷装置では、印刷終了後に被印刷媒体を切断するためのカッタ機構が用いられる。このようなカッタ機構として、被印刷媒体をその面に対して垂直に裁断するものや、2枚の刃で被印刷媒体を挟んで移動することでその被印刷媒体を切断するもの(例えば特許文献1〜5参照)が知られている。特に大型の印刷装置では、構造的にも切断精度の点からも、後者が多く用いられる。
【特許文献1】特開平8−197488号公報
【特許文献2】特開平8−267389号公報
【特許文献3】特開2000−158738号公報
【特許文献4】特開2002−226125号公報
【特許文献5】特開2007−54908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2枚の刃で被印刷媒体を切断するカッタ機構では一般に、安全のため刃がカッタホルダ内に備えられ、このカッタホルダをモータ駆動により移動させることで刃を被印刷媒体に当てて切断し、交換時にはカッタホルダごと交換できるようになっている。カッタホルダの交換は、ユーザが印刷装置の操作パネル上でカッタ交換オペレーションを実行し、カッタホルダが交換位置まで戻った状態で行われる。
【0004】
単に刃が切れ難くなっただけであれば、ユーザが気づいた時点でカッタ交換オペレーションを実行することで、カッタホルダを交換することができる。しかし、切断した被印刷媒体の破片(被印刷媒体が紙である場合には紙粉)がカッタホルダ内に入り込むなどしてカッタホルダが動き難くなると、駆動負荷が上昇し、場合によってはカッタホルダを交換位置まで戻すことができない状態になってしまう可能性がある。特に被印刷媒体として粘着シートを用いる場合には、切断破片が刃やその他の可動部に貼り付く可能性があることから、カッタホルダの駆動負荷上昇の原因になりやすいと考えられる。カッタホルダが交換位置まで戻らない場合には、ユーザで対応することは困難である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決し、カッタホルダをモータ駆動できなくなる前にカッタホルダの交換をユーザに促すことのできる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、被印刷媒体を切断するための刃が設けられたカッタホルダと、このカッタホルダをモータ駆動により被印刷媒体に対して切断方向に移動させる駆動手段と、この駆動手段のモータ駆動負荷を検知する負荷検知手段と、モータ駆動負荷があらかじめ定められたしきい値を越えたときにはカッタホルダの交換を促すメッセージを表示するメッセージ表示手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
しきい値として、切断対象が無い状態で測定した駆動手段のモータ駆動負荷初期値にあらかじめ決められた固定値を加算した値を用いることができる。駆動手段はPWM制御駆動され、負荷検知手段は、駆動手段を所定の速度となるように制御駆動させる際のデューティ比に基づいて、モータ駆動負荷を検知することがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[構成]
図1は本発明の実施の形態を示す図であり、印刷装置の機構系の概略と、この機構系を制御する制御系のブロック構成とを示す。この印刷装置は、機構系として、被印刷媒体20を搬送する搬送ローラ21、印刷ヘッド22、この印刷ヘッド22を搬送するキャリッジ23、被印刷媒体20を挟んで印刷ヘッド22と向き合うように配置されたプラテン24、ロール状に巻かれた状態から引き出される被印刷媒体20を切断するための刃が例えば2枚が設けられたカッタホルダ25、このカッタホルダ25をモータ駆動により被印刷媒体20に対して切断方向に移動させる駆動手段(図1では駆動手段のうちスライダ26のみを示し、モータは示していない)、および排出ローラ27を備える。また、制御系として、全体の動作を制御する制御部11、ユーザが操作を行うための操作パネル12、この操作パネル12に設けられ各種の表示を行う液晶表示部(LCD)13、外部との接続のためのインタフェース14、搬送ローラ21を駆動させるモータ(図示せず)を制御する搬送駆動回路15、キャリッジ23を駆動させるモータ(図示せず)を制御するキャリッジ駆動回路16、印刷ヘッド22による印刷を制御する印刷ヘッドコントローラ17、カッタホルダ25を駆動させるモータ(図1には示さず)を制御するカッタ駆動回路18、および駆動手段のモータ駆動負荷を検知する負荷検知手段としての負荷検知回路19を備える。
【0009】
[印刷および切断動作]
操作パネル12からのユーザの印刷指示、あるいはインタフェース14を経由してホスト装置(直接接続されたコンピュータ、あるいはネットワークを介して接続されたコンピュータ)からの印刷の指示があると、制御部11は、搬送駆動回路15、キャリッジ駆動回路16および印刷ヘッドコントローラ17に指示を与え、それぞれ被印刷媒体20の搬送位置、印刷ヘッド22の走査位置、および印刷ヘッド22による印刷を制御する。印刷が完了すると、制御部11はカッタ駆動回路18を介してモータに指示を与え、カッタホルダ25を被印刷媒体20を横切る方向、すなわち印刷ヘッド22の走査方向と平行方向にモータ駆動する。これにより、被印刷媒体20の印刷が施された部分(周辺の余白部分を含む)が切り離され、排出ローラ27によってユーザが取り出せる位置に排出される。
【0010】
[カッタホルダの構造および動作]
図2はカッタホルダ25とその誘導構造を示す斜視図であり、図3はカッタホルダ25の刃32の部分の拡大断面図を示す。カッタホルダ25には被印刷媒体を誘導するスリット状のガイド部31が設けられ、このガイド部31内に刃32が設けられる。カッタホルダ25の裏面にはスライダ26が取り付けられ、このスライダ26がレール33に沿って移動する。
【0011】
図4はカッタホルダ25を駆動するための構成例を示す。カッタホルダ25に取り付けられたスライダ26(図4には図示せず)は、駆動プーリ42と従動プーリ43との間に架けられた無終端ベルト44に取り付けられ、駆動プーリ42をモータ41により駆動することで、図2に示したレール33に沿って、駆動プーリ42と従動プーリ43との間を移動する。被印刷媒体をきれいに切断するには、カッタホルダ25を一定の速度で駆動することが望ましい。このため、モータ41、駆動プーリ42あるいは従動プーリ43にはロータリーエンコーダが取り付けられ(図示せず)、カッタ駆動回路18はそのロータリーエンコーダの出力に応じてモータ41の駆動電圧デューティ比を制御する。ロータリエンコーダではなくリニアエンコーダを用いて、カッタホルダ25の速度を検出する構成とすることもできる。
【0012】
カッタホルダ25を交換するためには、図1に示した操作パネル12上で、ユーザがカッタ交換オペレーションを実行する。これによりカッタ駆動回路18がモータ41を駆動させ、カッタホルダ25を駆動プーリ42側、あるいは従動プーリ43側の交換位置に戻す。この交換位置に戻った状態であれば、ユーザがカッタホルダ25を取り出すことができ、新しいものに交換することができる。
【0013】
なお、図4ではカッタホルダ25が駆動プーリ42側に移動するときに被印刷媒体を切断するように示しているが、逆方向の移動で被印刷媒体を切断する構成とすることもできる。
【0014】
[カッタホルダの交換時期]
カッタホルダの交換時期は、切断対象の被印刷媒体によって異なる。被印刷媒体として一般には紙が用いられるが、その品質は様々である。また、粘着シートを用いた場合には、早期にカッタホルダ25の交換が必要となると考えられる。この交換時期を知るため、図1に示した構成において、カッタ駆動回路18により駆動されるモータ41の駆動負荷を負荷検知回路19により検知し、制御部11は、検知されたモータ駆動負荷があらかじめ定められたしきい値を越えたときに、カッタホルダ25の交換を促すメッセージを操作パネル12の液晶表示部13に表示する。
【0015】
図5はモータ駆動負荷と切断回数との関係を示す。同じ品質の被印刷媒体を切断する場合であれば、切断回数が増加するにつれて、モータ駆動負荷が増加する。また、初期状態で切断対象が無い場合でも、モータ駆動負荷は零にはならず、この値は機体毎にバラツキがある。そこで、工場出荷時に印刷対象が無い状態でモータ駆動負荷初期値を測定し、これを「低速測定値」として不揮発性メモリに記憶しておく。そして、この低速測定値にあらかじめ決められた固定値Cut_OVL_Ofsを加算した値を異常負荷判定しきい値とし、このしきい値を越えたときには、カッタホルダ25の交換を促すメッセージを表示するものとする。
【0016】
モータ駆動負荷を高い精度で測定するには、モータ41に供給される電流を測定することがよい。しかし、電流を測定するには素子コストが高くなる。素子コストを抑える場合には、モータ41を駆動するパルス幅変調(PWM)のデューティ比により測定する。デューティ比が100%になればそれ以上の負荷はなく、これが切断動作不良負荷となる。異常負荷判定しきい値としては、モータ41のバラツキも考慮し、切断動作不良負荷よりも20〜30%低い値とすることが望ましい。
【0017】
以上の説明においては、被印刷媒体を切断するための刃32、この刃32を収容するカッタホルダ25およびこのカッタホルダ25を移動させるための構造(レール等)のそれぞれについて、ひとつの例を示して説明した。本発明はこれらの構造に限定されるものではなく、例えば、2枚の刃32で被印刷媒体を挟むのではなく、被印刷媒体に対して斜めに配置される1枚の刃を用いることもできる。また、刃32の形状も、円弧状ではなく、直線状あるいは凹んだ形状とすることもできる。カッタホルダ25は、刃32が人の手に触れず、かつ切断対象の被印刷媒体を切断してスムーズに移動できるものであれば、どのような形状でもよい。カッタホルダ25とレール33および無終端ベルト44の配置も、種々の変更が可能である。
【0018】
被印刷媒体としてロール状のものを用いた例を示したが、シート状の被印刷媒体であっても本発明を同様に実施できる。また、印刷が施された部分の周辺に余白を残すのではなく、印刷していない余白部分を切り取ることも可能である。本発明は被印刷媒体の種類や形状に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であり、印刷装置の機構系の概略と、この機構系を制御する制御系のブロック構成とを示す。
【図2】カッタホルダとその誘導構造を示す斜視図である。
【図3】カッタホルダの刃の部分の拡大断面図である。
【図4】カッタホルダを駆動するための構成例を示す図である。
【図5】モータ駆動負荷と切断回数との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
11 制御部
12 操作パネル
13 液晶表示部
14 インタフェース
15 搬送駆動回路
16 キャリッジ駆動回路
17 印刷ヘッドコントローラ
18 カッタ駆動回路
19 負荷検知回路
20 被印刷媒体
21 搬送ローラ
22 印刷ヘッド
23 キャリッジ
24 プラテン
25 カッタホルダ
26 スライダ
27 排出ローラ
31 ガイド部
32 刃
33 レール
41 モータ
42 駆動プーリ
43 従動プーリ
44 無終端ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体を切断するための刃が設けられたカッタホルダと、
このカッタホルダをモータ駆動により上記被印刷媒体に対して切断方向に移動させる駆動手段と、
この駆動手段のモータ駆動負荷を検知する負荷検知手段と、
上記モータ駆動負荷があらかじめ定められたしきい値を越えたときには上記カッタホルダの交換を促すメッセージを表示するメッセージ表示手段と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記メッセージ表示手段は、前記しきい値として、切断対象が無い状態で測定した前記駆動手段のモータ駆動負荷初期値にあらかじめ決められた固定値を加算した値を用いることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記駆動手段はPWM制御駆動されると共に、前記負荷検知手段は、前記駆動手段を所定の速度となるように制御駆動させる際のデューティ比に基づいて、前記モータ駆動負荷を検知することを特徴とする請求項1または2記載の印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−234176(P2009−234176A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86095(P2008−86095)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】