説明

印刷装置

【課題】 サーマルヘッド、バネ材、プラテンローラなどの取付位置のズレや、サーマルヘッドの左右の重さの違いなどの影響を受けることなく、サーマルヘッドの接触圧を均一化できるようにする。
【解決手段】 上部筐体が閉じられた状態で、係止ピン15a,15bを上下方向に移動させることにより、サーマルヘッドを付勢するためのバネ材の付勢力を調整する調整手段14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POS、ECR、バーコード、計量器などに使用される印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の印刷装置は、サーマルヘッドと、このサーマルヘッドに対向されるプラテンローラを備え、サーマルヘッドは、通常、その上部鉛直方向からバネ機構により付勢されてプラテンローラに圧接されている。記録媒体はサーマルヘッドとプラテンローラとによって挟持搬送されてサーマルヘッドにより印字される。
【0003】
ところで、サーマルヘッドとプラテンローラとによって記録媒体を挟持搬送する際には、挟持圧力が印字品質に大きく影響する。具体的には、サーマルヘッドの走査方向の左右で圧力の不均衡が発生すると、圧力が弱い側は、熱伝達不良による印字ムラを発生し易くなり、圧力が強い側は印字潰れや尾引が発生し易くなる。また、サーマルヘッドの左右の圧力が不均衡だと、熱転写リボンの送り不良などの原因ともなる。
【0004】
このサーマルヘッドとプラテンローラの挟持圧力は、サーマルヘッドの取付位置に依存している。
【0005】
そこで、通常、サーマルヘッドは予め圧力が均衡になるように取付位置が調整されて製造されている。
【0006】
一方、サーマルヘッドやプラテンローラに走査方向の撓みが生じた場合も、左右の圧力が不均衡になる場合がある。
【0007】
このような現象に対しては、複数のネジにより、撓みを防止したり(例えば、特許文献1参照。)、複数のバネにより圧力を均一にする方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−100459号
【特許文献2】特開平9−290522号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来においては、サーマルヘッドの圧力が均衡になるようにその取付位置を調整して製造しても、その位置精度に製造上のバラツキが含まれており、予め調整された圧力から外れ、印字不良を起こすことがあった。
【0009】
また、ネジやバネを用いてのサーマルヘッドの圧力調整では、バネやプラテンローラの取付位置のバラツキ、また、サーマルヘッドの左右の重さの違いなどにより、やはり、予め調整された圧力から外れ、印字不良を起こす場合があった。
【0010】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、サーマルヘッド、バネ材、プラテンローラなどの取付位置のバラツキや、サーマルヘッドの左右の重さの違いなどの影響を受けることなく、サーマルヘッドの接触圧が均一になるように調整できるようにした印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、内部にプラテンローラを備えるとともに、両側部に係止部材を配設する下部筐体と、この下部筐体に開閉自在に取り付けられる上部筐体と、この上部筐体に配設されるサーマルヘッド、及びこのサーマルヘッドを付勢して前記プラテンローラに弾性的に押し付ける第1の付勢手段と、前記上部筐体を開放する方向に付勢する第2の付勢手段と、前記上部筐体の両側部に配設され、前記上部筐体の閉時に前記係止部材に係脱自在に係止されてロックするロック部材と、前記上部筐体が閉じられた状態で、前記係止部材を上下方向に移動させて前記第1の付勢手段の付勢力を調整する調整手段とを具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サーマルヘッド、バネ材、プラテンローラなどの取付位置のバラツキや、サーマルヘッドの左右の重さの違いなどの影響を受けることなく、サーマルヘッドの接触圧を均一に調整でき、良好な印字が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である印刷装置1を示す側面図で、図2はその正面図である。
【0014】
印刷装置1は装置本体1aを備え、この装置本体1aは下部筐体2と、この下部筐体2に支軸4を介して開閉自在に取り付けられる上部筐体3とによって構成されている。
【0015】
上部筐体3内の後部側には第2の付勢手段としてのバネ機構6が設けられ、このバネ機構6により上部筐体3が上方に向かって開放するように付勢されている。上部筐体3の開放端側にはサーマルヘッド7が設けられ、このサーマルヘッド7の上面側両端部は第1の付勢手段としてのバネ材9a,9bによって下方に向かって弾性的に付勢されている。また、上部筐体3の両側面部には、ロック部材としてのフック部材12a,12bが配設されている。
【0016】
下部筐体2内の前部側上方部にはプラテンローラ10が設けられ、このプラテンローラ10にサーマルヘッド7が押し付けられている。このプラテンローラ10とサーマルヘッド7との間に記録媒体としての用紙が挟持されて搬送されるようになっている。
【0017】
また、下部筐体2内の前部側両側部には、上記したフック部材12a,12bを係脱自在に係止させる係止部材としての係止ピン15a,15bが配設されている。フック部材12a,12bが係止ピン15a,15bに係止されることにより、サーマルヘッド7を付勢するバネ材9a,9bのバネ圧が決定される。
【0018】
また、上記した上部筐体3のバネ機構6とサーマルヘッド7のバネ材9a,9bとのバネ圧の力学的なバランスと、係止ピン15a,15bの位置により、サーマルヘッド7とプラテンローラ10との圧接力が決定される。
【0019】
図3は、上記したサーマルヘッド7を付勢するバネ材9a,9bのバネ圧を調整する調整手段14を示すものである。
【0020】
調整手段14は、回動レバー16a,16bを備え、この回動レバー16a,16bの略中央部に上記した係止ピン15a,15bが一体的に突設されている。回動レバー16a,16bは、その一端部側が支軸18を介して下部筐体2のフレーム19に取り付けられ、支軸18を中心として他端部側を上下方向に回動できるようになっている。回動レバー16a,16bの他端部側には調整ネジ20が取り付けられ、調整ネジ20はフレーム19に穿設された円弧状の調整孔19a内に沿って上下方向に移動できるようになっている。上記した左右の係止ピン15a,15bは帯状の連結材22を介して連結されている。
【0021】
また、下部筐体2内の前部側には、図2に示すように長方形状のガイドブロック13が設けられ、連結材22はガイドブロック13の一側面部、底面部、他側面部に沿って掛け渡されている。ガイドブロック13の底面両側部には、連結材22を掛け渡すローラ23が配設され、連結材22は、ガイドブロック13の一側面部、底面部、他側面部に沿ってスムーズに移動できるようになっている。この連結材22の移動時には、ガイドブロック13の一側面部に沿う部分の長さをL、他側面部に沿う部分の長さをRとしたとき、L+Rが常に一定になるように構成されている。
【0022】
次に、プラテンローラ10に対するサーマルヘッド7の接触圧を調整する場合について説明する。
【0023】
まず、図2に示すように、上部筐体3をバネ機構6の付勢力に抗して閉じてそのフック部材12a,12bを係止ピン15a,15bに係止させてロックする。この状態から調整手段14の調整ネジ20を緩める。このとき、製造上のバラツキ、例えば、サーマルヘッド7、バネ材9a、9b、プラテンローラ10などの取付位置のバラツキ、或いは、上部筐体3の左右の重さの違いなどが存在すると、上部筐体3のバネ機構6とサーマルヘッド7のバネ材9a,9bとが力学的なバランスをとるように調整手段14が動作する。例えば、図4に示すように回動レバー16aが支軸18を中心にして下方に回動して係止ピン15aが距離d(例えば5mm)下降する。これにより、図5に示すようにバネ材9aが押し縮められ、その分、他方の回動レバー16bが支軸18を中心にして上方に回動して係止ピン15aが5mm上昇してバネ材9bが引き伸ばされる。
【0024】
これにより、サーマルヘッド7の接触圧が走査方向に均一になるようにバネ材9a,9bの付勢力が調整される。この調整後、調整ネジ20を締め込んで回動レバー16a,16bを固定し係止ピン15a、15bを固定する。
【0025】
図6は、サーマルヘッド7の接触圧の調整前と調整後とを比較して示すものである。
【0026】
即ち、図2に示すように調整前のサーマルヘッド7とプラテンローラ10の両端部間で幅1cmのラベル紙27を挟持し、このラベル紙27をプッシュプルゲージで2cm引いて測定したときの圧力の値と、図5に示すように調整後のサーマルヘッド7とプラテンローラ10の両端部間で幅1cmのラベル紙27を挟持し、このラベル紙27をプッシュプルゲージで2cm引いて測定したときの圧力の値を比較して示すものである。
【0027】
図2に示す場合には、サーマルヘッド7の左側の圧力が463g、右側の圧力が553gとなり、サーマルヘッド7の左右での圧力差が90gと大きくなり、この状態で印字を行なうと、左側にやや掠れが生じる。
【0028】
図5に示す場合には、サーマルヘッド7の左側の圧力が520g、右側の圧力が537gとなり、サーマルヘッド7の左右での圧力差が17gと小さくなり、この状態で印字を行なうと、良好な印字を得ることができる。
【0029】
上記したように、この実施の形態によれば、サーマルヘッド7、バネ材9a、9b、プラテンローラ10などの取付位置のズレや、サーマルヘッド7の左右の重さの違いなどの影響を受けることなく、サーマルヘッド7の接触圧を走査方向に均一に調整でき、良好な印字が可能となる。
【0030】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態である印刷装置を示す側面図。
【図2】図1の印刷装置を示す正面図。
【図3】図1のサーマルヘッドの接触圧を調整する調整機構を示す図。
【図4】図3の調整機構の調整ネジが緩められて係止ピンが下方に移動された状態を示す図。
【図5】図4の調整により、バネ材のバネ圧が変化された状態を示す図。
【図6】サーマルヘッドの接触圧を調整前と調整後とで比較して示す図。
【符号の説明】
【0032】
2…下部筐体、3…上部筐体、6…バネ機構(第2の付勢手段)、7…サーマルヘッド、9a、9b…バネ材(第1の付勢手段)、10…プラテンローラ、12a,12b…フック部材(ロック部材)、13…ガイドブロック、14…調整手段、15a,15b…係止ピン(係止部材)、16a,16b…回動レバー、20…調整ネジ、22…連結部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にプラテンローラを備えるとともに、両側部に係止部材を配設する下部筐体と、
この下部筐体に開閉自在に取り付けられる上部筐体と、
この上部筐体に配設されるサーマルヘッド、及びこのサーマルヘッドを付勢して前記プラテンローラに弾性的に押し付ける第1の付勢手段と、
前記上部筐体を開放する方向に付勢する第2の付勢手段と、
前記上部筐体の両側部に配設され、前記上部筐体の閉時に前記係止部材に係脱自在に係止されてロックするロック部材と、
前記上部筐体が閉じられた状態で、前記係止部材を上下方向に移動させて前記第1の付勢手段の付勢力を調整する調整手段と
を具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記調整手段は、一端部側が回動自在に支持され、中途部に前記係止部材を一体的に取り付ける回動レバーと、この回動レバーの他端部側に設けられ、締め付けられることにより前記回動レバーをロックし、緩められることにより前記回動レバーをアンロック状態にして前記係止部材を上下方向に移動させる調整ネジとを有すことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記下部筐体の両側部に配設される係止部材は、連結部材を介して連結され、前記調整ネジが緩められるのに基づいて互いに逆方向に等量移動することを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記下部筐体内にガイドブロックを設け、
前記連結部材は、前記ガイドブロックの一側面部、底面部、他側面部に沿って設けられることを特徴とする請求項3記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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