説明

印刷装置

【課題】低解像度印刷時と高解像度印刷時における前余白長さの違いを解消できる印刷装置を提供する。
【解決手段】360dpiでは表層テープ31の1インチを360分割してなる各印刷ラインa上に各ドットが形成される。一方、180dpiでは印刷ラインa2本に跨ってドットが形成される。そして、判定手段が印刷開始から前余白カットのための一時停止までにドットが形成される印刷ラインaの数が、360dpiの印刷時と等しくならないと判定手段が判定した場合は、印刷開始から一時停止までに形成される一連のドットの一部を360dpiにより形成して印刷することにより、該印刷ラインaの数を第1解像度での印刷時と等しくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の印字媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記印字媒体において、印字媒体の単位長さを解像度により分割してなる各印刷ライン上に各ドットを形成することにより印刷を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドより搬送方向下流に配置されるカッタと、を備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状の印字媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記印字媒体において、印字媒体の単位長さを解像度により分割してなる各印刷ライン上に各ドットを形成することにより印刷を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドより搬送方向下流に配置されるカッタと、を備える印刷装置について様々な提案がなされている。このような印刷装置ではその機構上カッタは印字ヘッドと一定間隔離れて設置せざるをえない。このため、カッタが印字媒体において印刷開始の位置から印刷方向とは逆方向に形成される前余白を切断しようとする場合、印字ヘッドは印刷中の位置にあることになる。よって、カッタが前余白を切断するにあたり印字ヘッドは印刷を一時停止し、カット後に再開する印刷技術(以下、つなぎ印刷と称する)が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−38854号公報
【0004】
ところで、上記のつなぎ印刷可能な印刷装置のうち、高解像度と低解像度の2以上の解像度により印刷可能で、高解像度での印刷において形成されるドットは、印字媒体の単位長さを高解像度で分解してなる印刷ライン1本の上に形成される一方、低解像度での印刷で形成されるドットは、当該印刷ライン複数本に跨って形成される印刷装置がある。
例えば、図14は、360dpiと180dpiの2解像度で印刷可能な印刷装置の印字ヘッドにより形成された各ドットを示す。(A)は360dpiでの印刷により形成されたドットであり、印字媒体を1インチ360で割った長さ(約0.07mm)の間隔の印刷ラインa上にそれぞれ形成されている。一方、(B)及び(C)のように、解像度180dpiで形成されたドットは、360dpiの印刷ラインa2本分に跨って形成されており、結果として印刷されるドットの長さは360dpiで印刷する際のドットの長さの2倍となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のようなつなぎ印刷装置では、カッタが前余白をカットするにあたり印字ヘッドが印刷を一時停止する際に、印字ヘッドはドットを形成する途中の位置では印刷を一時停止できない。すると、当該印刷装置が高解像度と低解像度の2以上の解像度により印刷可能な場合、高解像度での印刷時と低解像度での印刷時では切断される前余白の長さが異なる場合がある。
例えば、図14(A)のように、360dpiの印刷時を基準に切断される前余白の長さをlと設定したとする。仮に、テープ搬送停止時にカッタは印字媒体において対向する個所を切断するとする。また仮に印刷開始位置から印字方向と逆の方向に形成される前余白がlとなる個所にカッタが対向する際にテープ搬送が停止し、ほぼ同時に印字ヘッドが印刷を一時停止すると、この時印字ヘッドはドットを印刷する区切り目にある。
ここで、図14(A)では、前余白長さの設定時に印刷開始から一時停止までに形成されるドット数(印刷ライン数aの数)が奇数となるとする。すると、図14(B)のように180dpiでの印刷時に、カッタが、前余白長さが図14(A)の場合と同じlとなる個所に対向しても印字ヘッドがドットを印刷途中の個所に来てしまう。すなわち印字ヘッドは360dpiの印刷ラインa2本に跨るドットを印刷途中の位置にあり、図14(C)のように当該ドットを形成し終えなくては印刷を一時停止できない。この場合、図14(A)、(C)のように、印刷開始から印刷一時停止までドットが形成される360dpiの印刷ラインaの数は180dpiでの印刷時と360dpiでの印刷時と異なる。これは印刷開始から印刷一時停止までの印字長さが180dpiでの印刷時と360dpiでの印刷時と異なることを意味する。印刷一時停止後にカットされる前余白の長さlはカッタから印字ヘッドまでの印字媒体の搬送距離nから印刷開始から一時停止までの印字長さβを引いた長さn−βであるから、結果として、前余白の長さが180dpiでの印刷時と360dpiでの印刷時では異なることとなる。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、低解像度印刷時と高解像度印刷時における前余白長さの違いを解消できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る印刷装置は、長尺状の印字媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記印字媒体において、印字媒体の単位長さを解像度により分割してなる各印刷ライン上に各ドットを形成することにより印刷を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドより搬送方向下流に配置されるカッタと、を備え、前記カッタが前記印字媒体において印刷開始の位置から印刷方向とは逆方向に形成される前余白を切断するにあたり前記印字ヘッドは印刷を一時停止する印刷装置において、前記解像度は、第1解像度と、前記ドットが前記単位長さを第1解像度により分割してなる第1印刷ライン複数本に跨って形成される第2解像度とを含み、前記第2解像度による印刷時に、前記印刷開始から前記一時停止までにドットが形成される第1印刷ラインの数が、第1解像度の印刷時と等しくなるか否かを判定する判定手段を備え、前記判定手段が前記第1ラインの数は第1解像度での印刷と等しくならないと判定した場合は、前記印刷開始から前記一時停止までに形成される一連のドットの一部を第1解像度により形成して印刷することにより、該第1ラインの数を第1解像度での印刷時と等しくすることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置であって、前記印字ヘッドは、通電により発熱される複数の発熱素子を前記搬送手段による搬送の方向と直交する方向に列設して構成されるサーマルヘッドであり、前記搬送手段には搬送モータが含まれ、前記一連のドットの一部とは、前記印字媒体において前記搬送モータの回転加速中に印刷される前記印刷開始の先頭部分、又は搬送モータの回転減速中に印刷される前記一時停止の直前部分に形成されるドットであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る印刷装置は、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置であって、前記搬送手段には正逆回転可能で前記印刷一時停止時に逆転する搬送モータが含まれ、前記印字ヘッドは前記搬送モータの再正転時において、印刷の一時停止までに形成されたドット列のうち少なくとも最終列と重なるように印刷を再開すると共に、各ライン印刷データを、搬送モータを正転し続けて印刷を続けた場合と同じ印刷領域に印刷し、前記一連のドットの一部とは、前記搬送モータの正転停止直前に形成される第1ドットであり、前記搬送モータ正転停止直後に前記第1ドットに続いて所定タイミングで形成される形成されるドットのうち1列又は複数列の第2ドットを、第1ドットと同じライン印刷データにより印刷して、当該ライン印刷データが印刷される領域幅を、搬送モータを正転し続けて印刷を続けた場合と近似させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る印刷装置では、第1解像度では印字媒体の単位長さを第1解像度により分割してなる各第1印刷ライン上に各ドットが形成される。一方、第2解像度では第1印刷ライン複数本に跨ってドットが形成される。そして、印刷開始から一時停止までにドットが形成される第1印刷ラインの数が、第1解像度の印刷時と等しくならないと判定手段が判定した場合は、印刷開始から一時停止までに形成される一連のドットの一部を第1解像度により形成して印刷することにより、該第1印刷ラインの数を第1解像度での印刷時と等しくする。これにより、第2解像度での印刷時の印刷開始から一時停止までにドットが形成される印字長さを第1解像度での印刷時とほぼ等しくすることができる。印刷一時停止後にカットされる前余白の長さは印刷開始から一時停止までの印字長さにより決定されるから、第1解像度印刷時と第2解像度印刷時における前余白長さの違いを解消できる。
【0011】
また、請求項2に係る印刷装置では、第1解像度で形成されるドットは搬送モータの回転加速中に印刷される印刷開始の先頭部分又は、搬送モータの回転減速中に印刷される一時停止直前部分に形成されるため、低解像度である第2解像度から高解像度である第1解像度への切り替えを低速での印刷時に行うことができ、CPUへの負担を軽減でき、高性能のCPUを用いなくてもよく、製造コスト削減ができる。
また、印字ヘッドがサーマルヘッドであるため、高速印刷時にドットの一部を高解像度である第1解像度で形成することにより発熱素子の温度が十分に上がりきらなかったり、下がりきらなかったりする印刷品質の低下の問題を回避できる。
【0012】
請求項3の印刷装置では、印刷一時停止時に搬送モータが逆転する。また印字ヘッドは搬送モータの再正転時において、印刷一時停止までに形成されたドット列のうち少なくとも最終列のドットと重なるように印刷を再開する。よって印刷の一時停止によっても印刷されない印刷ライン(以下ホワイトラインと記載する)が生まれない。また、搬送モータの再正転時において各ライン印刷データを、搬送モータを正転し続けて印刷を続けた場合と同じ印刷領域に印刷するので、搬送モータを正転し続けて印刷を続けた場合と変わらない見た目良い印刷結果が得られる。
また請求項3の印刷装置では、第2解像度による印刷時に、印刷開始から印刷一時停止までに形成される一連のドットのうち第1解像度により形成されるのは搬送モータ正転停止直前に形成される第1ドットである。よってモータ回転の最低速時に解像度の切り替えを行うことができ、更にCPUへの負担を軽減できる。更に、第1ドットに続き、搬送モータ正転停止直後に所定タイミングで形成されるドットのうち、1列又は複数列の第2ドットを第1ドットと同じライン印刷データを印刷して、当該ライン印刷データが印刷される領域幅を、搬送モータを正転し続けて印刷を続けた場合と近似させる。よって、第1ドットを形成する際に解像度を変更しても、印刷結果の歪みを確実に防止して、搬送モータを正転し続けて印刷を続けた場合と変わらない見た目良い印刷結果を確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る印刷装置の外観斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る印刷装置のカセット収納部周辺を示した上面図である。
【図3】第1実施形態に係る印刷装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る印刷装置による印刷開始から前余白カットのための一時停止までの印刷例を示す模式図である。(A)は360dpiでの印刷例、(B)は初期状態、(C)、(D)及び(E)は180dpiでの印刷例である。
【図5】第1実施形態に係る印刷前処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る判定処理を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態に係るモータ動作処理を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態に係る印刷処理を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態に係る停止時処理を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態の印刷装置による印刷開始から印刷の一時停止を経た印刷再開までの印刷例を示す模式図である。(A)は360dpi、(B)及び(C)は180dpiでの印刷例である。
【図11】第2実施形態に係るモータ動作処理を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態に係る印刷処理を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態に係る停止時処理を示すフローチャートである。
【図14】従来の印刷装置における印刷開始から前余白カットのための一時停止までの印刷例を示す模式図である。(A)は360dpiでの印刷例、(B)及び(C)は180dpiでの印刷例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る印刷装置についてテープカセットから排出されるテープに対して印刷を行う印刷装置1に具体化した2つの実施形態について説明する。まず第1実施形態の印刷装置について図1〜図9を参照しながら説明する。
【0015】
第1実施形態に係る印刷装置1の概略構成を図1、図2に示す。図1は、第1実施形態に係る印刷装置1の外観斜視図である。図2は、第1実施形態に係る印刷装置1のカセット収納部周上面図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態に係る印刷装置1は、筐体内部に内蔵されたテープカセット5(図2参照)から排出されるテープに対して印刷を行う印刷装置であり、筐体上面にキーボード3と液晶ディスプレイ4を有している。また、同じく筐体上面には平面視矩形状のテープカセット5を収納するカセット収納部8が収納カバー9で覆われて配設されている。また、このキーボード3の下側には、制御回路部が構成される制御基板(図示せず)が配設されている。また、カセット収納部8の左側面部には、印刷されたテープが排出されるテープ排出口10が形成されている。また、印刷装置1の右側面部には、接続インターフェース71(図3参照)が配設されている。この接続インターフェースは、外部機器78(例えば、パーソナルコンピュータ等、図3参照)と有線または無線接続をする際に用いられる。従って、印刷装置1は、外部機器78から送信された印刷データを印刷することも可能である。
【0017】
ここで、キーボード3は、文字入力キー3A、印刷キー3B、カーソルキー3C、電源キー3D、設定キー3E、リターンキー3R等の複数種類の入力キーを備えている。文字入力キー3Aは、文書データからなるテキストを作成する際の文字入力に用いられる。印刷キー3Bは、作成されたテキスト等からなる印刷データの印刷実行を指令する際に用いられる。そして、カーソルキー3Cは、液晶ディスプレイ4上に表示されるカーソルを、上下左右に移動する際に用いられる。また、電源キー3Dは装置本体の電源をON又はOFFする際に用いられる。リターンキー3Rは、改行指令や各種処理の実行、選択決定を指令する際に用いられる。液晶ディスプレイ4は、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する表示装置であり、キーボード3によって作成される印刷データ等を表示しうる。
尚、第1実施形態の印刷装置1では180dpi又は360dpiのいずれかに設定可能であり、設定キー3Eを操作することによって印刷解像度を360dpi(高解像度)と180dpi(低解像度)のいずれかに設定できる。印刷装置1において現在設定されている印刷解像度は後述するEEPROM63に記憶される。
【0018】
そして、図2に示すように、印刷装置1は、内部のカセット収納部8に対してテープカセット5を装着可能に構成されている。更に、印刷装置1の内部には、テープ駆動印刷機構16及びカッタ17を含むテープ切断機構が配設されている。印刷装置1は、テープ駆動印刷機構16により、テープカセット5から引き出されたテープに対して、所望の印刷データに基づく印刷を施すことができる。そして、印刷装置1は、テープ切断機構のカッタ17により、印刷されたテープを切断することができる。切断されたテープは、印刷装置1の左側側面に形成されたテープ排出口10から排出される。
【0019】
そして、印刷装置1の内部には、カセット収納部フレーム18が配設されている。図2に示すように、このカセット収納部フレーム18には、テープカセット5が着脱自在に装着される。
テープカセット5は、その内部に、テープスプール32、リボン供給スプール34、巻取スプール35、基材供給スプール37、接合ローラ39を備えており、夫々回転自在に軸支されている。テープスプール32には、表層テープ31が巻回されている。表層テープ31は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等からなる透明なテープである。そして、リボン供給スプール34には、インクリボン33が巻回されている。このインクリボン33には、インク加熱により溶融或いは昇華するインクが塗布され、インク層を形成している。巻取スプール35は、印刷に使用されたインクリボン33を巻き取る。そして、基材供給スプール37には、二重テープ36が巻回されている。この二重テープ36は、表層テープ31と同一幅で両面に接着剤層を有する両面接着テープの片面に対して、剥離テープを貼り合わせて構成されている。又、当該二重テープ36は、剥離テープが外側に位置するように、基材供給スプール37に巻回されている。そして、接合ローラ39は、二重テープ36と表層テープ31とを重ねて接合させる際に用いられる。
【0020】
図2に示すように、カセット収納部フレーム18には、アーム20が、軸20aを中心として揺動可能に配設されている。アーム20の先端には、プラテンローラ21、搬送ローラ22が回動可能に軸支されている。プラテンローラ21、搬送ローラ22は、何れもゴム等の可撓性部材を表面に有している。
アーム20が最も時計回りに揺動すると、プラテンローラ21は、表層テープ31及びインクリボン33を、後述するサーマルヘッド41に対して圧接する。又、この時、搬送ローラ22は、表層テープ31及び二重テープ36を、接合ローラ39に対して圧接する。
【0021】
また、カセット収納部フレーム18には、プレート42が立設されている。このプレート42のプラテンローラ21側側面には、サーマルヘッド41が配設されている。サーマルヘッド41は、表層テープ31及び二重テープ36の幅方向と同方向、すなわち表層テープ31及び二重テープ36の搬送方向と直交する方向に、複数(例えば、128個や256個)の発熱素子を1列に列設することで構成される。テープカセット5が所定位置に装着されると、プレート42は、テープカセット5の凹部43に嵌め込まれる。
【0022】
また、図2に示すように、カセット収納部フレーム18には、リボン巻取ローラ46、接合駆動用ローラ47が立設されている。テープカセット5が所定位置に装着されると、リボン巻取ローラ46は、テープカセット5の巻取スプール35内に挿入される。同様に、接合駆動用ローラ47は、テープカセット5の接合ローラ39内に挿入される。
【0023】
また、カセット収納部フレーム18には、ステッピングモータからなるテープ搬送モータ2(図3参照)が配設されている。テープ搬送モータ2による駆動力は、カセット収納部フレーム18に沿って配設されたギア列を介して、プラテンローラ21、搬送ローラ22、リボン巻取ローラ46及び接合駆動用ローラ47等に夫々伝達される。
従って、テープ搬送モータ2に対する電力供給により、テープ搬送モータ2の回転が開始されると、巻取スプール35、接合ローラ39、プラテンローラ21、搬送ローラ22も連動して回転を開始する。これにより、テープカセット5内の表層テープ31、インクリボン33、二重テープ36は、テープスプール32、リボン供給スプール34、基材供給スプール37からそれぞれ巻き解かれ、下流方向(テープ排出口10、巻取スプール35方向)へと搬送される。
【0024】
その後、表層テープ31及びインクリボン33は、互いに重ね合わされてからプラテンローラ21とサーマルヘッド41との間を通過する。表層テープ31とインクリボン33は、表層テープ31がインクリボン33のインク層と接触した個所がプラテンローラ21とサーマルヘッド41とによって挟まれた状態で搬送される。この時、サーマルヘッド41に配列された多数の発熱素子は、制御部60(図3参照)によって、印刷データに基づいて選択的かつ間欠的に通電される。
【0025】
ここで、各発熱素子は、通電により発熱し、インクリボン33に塗布されているインクを溶融或いは昇華させるので、インクリボン33に形成されたインク層のインクは、表層テープ31にドット単位で転写される。この結果、表層テープ31には、印刷データに基づくユーザ所望のドット画像が鏡像で形成される。
【0026】
その後、インクリボン33は、サーマルヘッド41を通過すると、リボン巻取ローラ15によって巻き取られる。一方、表層テープ31は、二重テープ36と重ねられ、搬送ローラ22と接合ローラ39との間を通過する。この時、表層テープ31と二重テープ36は、搬送ローラ22、接合ローラ39により圧接され、積層テープ38となる。ここで、当該積層テープ38は、ドット印刷済みの表層テープ31の印刷面側が二重テープ36と強固に重ね合わされる。従って、ユーザは、表層テープ31の印刷面の裏面側(即ち、積層テープ38の表面側)から印刷画像の正像を視認可能である。
【0027】
そして、積層テープ38は、搬送ローラ22の更に下流に搬送され、カッタ17を含むテープ切断機構に到達する。テープ切断機構は、カッタ17と、切断用モータ72(図3参照)によって構成されている。そして、カッタ17は、固定刃17aと、回動刃17bに備えており、固定刃17aに対して回動刃17bを回動させることで切断対象物を剪断する鋏形式のカッタである。そして、回動刃17bは、切断用モータ72によって支点を中心に往復揺動可能に配設されており、切断用モータ72の駆動により、積層テープ38は、固定刃17a、回動刃17bに剪断される。
ここで、カッタ17は、積層テープ38の印刷開始位置から印刷方向と逆方向において所定長さ形成される前余白及び、印刷終了位置から印刷方向に所定長さ形成される後余白を自動的にカットするよう制御される。なおサーマルヘッド41からカッタ17までの表層テープ31の搬送距離nは、前余白の所定長さよりも長いので、カッタ17が前余白をカットする際にはサーマルヘッド41は印刷中の位置にあり、後述するように各ドットを形成する区切り目で印刷を一時停止し、テープの搬送が停止されてカッタ17が前余白をカットする。
【0028】
切断された積層テープ38は、テープ排出口10を介して、印刷装置1の外部へ排出される。そして、当該積層テープ38は、二重テープ36の剥離紙を剥がし、接着剤層を露出させれば、任意の場所に貼り付けることが可能な粘着ラベルとして使用可能である。
【0029】
次に、印刷装置1の制御構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図3は、印刷装置1の制御系を示すブロック図である。
印刷装置1内には、制御基板(図示せず)が配設されており、この制御基板上には、制御部60、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70が配設されている。
【0030】
そして、制御部60は、CPU61、CG−ROM62、EEPROM63、ROM64、RAM66により構成されている。又、当該制御部60は、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70と接続されている。更に、制御部60は、液晶ディスプレイ4、カセットセンサ7、キーボード3、接続インターフェース71にも接続されている。
【0031】
CG−ROM62は、印刷される文字や記号の画像データをコードデータと対応させてドットパターンで記憶するキャラクタージェネレータ用メモリである。又、EEPROM63は、記憶内容の書込・消去ができる不揮発性メモリであり、当該印刷装置1におけるユーザ設定等を示すデータを格納している。
そしてROM64には、印刷装置1における各種制御プログラムやデータが格納されている。従って、後述する印刷前処理、モータ動作処理、印刷処理、停止前処理の各種プログラムは、このROM64に格納されている。
【0032】
また、RAM66は、CPU61での演算結果等を一時的に格納する記憶装置である。このRAM66には、キーボード3の入力により生成された印刷データや、外部機器78から接続インターフェース71を介して取り込まれた印刷データも格納される。また、RAM66には後述する半ドット処理を行うか否かを決定するための半ドットモード決定フラグがON又はOFFに設定されて記憶されている。
そして、タイマ67は、印刷装置1の制御を実行する際に所定期間の経過を計時する計時装置である。タイマ67は、サーマルヘッド41の発熱素子に対する通電期間等の開始・終了を判断する際に参照される。
【0033】
また、CPU61は、印刷装置1における各種制御の中枢を担う中央演算処理装置である。CPU61は、文字入力キー3Aで入力された文字列情報から、発熱素子でドットを形成するための印刷データを生成する。具体的には、CPU61は文字入力キー3Aで入力された文字列及びCG−ROM62に格納されているドットパターンに基づいて、印刷対象とする印刷データ(ドット単位のデータで構成されたイメージデータ)を生成し、更にその印刷データを、サーマルヘッド41に列設された発熱素子で印刷される1ライン単位に分割する。よって、尚、印刷解像度が360dpi(高解像度)に設定されている場合には1インチ当たり360ラインに分割したライン印刷データを生成し、印刷解像度が180dpi(低解像度)に設定されている場合には1インチ当たり180ラインに分割したライン印刷データを生成する。
【0034】
また、ヘッド駆動回路68は、CPU61からの制御信号に基づいて、サーマルヘッド41に駆動信号を供給し、サーマルヘッド41の駆動態様を制御する回路である。この時、ヘッド駆動回路68は、発熱素子毎に対応付けられたストローブ番号に基づいて、各発熱素子の通電の有無を制御することで、サーマルヘッド41全体の発熱態様を制御する。そして、切断用モータ駆動回路69は、CPU61からの制御信号に基づいて切断用モータ72に駆動信号を供給し、切断用モータ72の駆動制御を行う回路である。又、搬送モータ駆動回路70は、CPU61からの制御信号に基づいてテープ搬送モータ2に駆動信号を供給し、テープ搬送モータ2の駆動制御を行う制御回路である。
【0035】
ここで、図4を参照に、サーマルヘッド41への通電により、表層テープ31の各印刷ライン上にドットが形成される過程について詳述する。ここで印刷ラインとは、一列の発熱素子に一印刷周期の通電がなされることにより表層テープ31の幅方向に一列のドットが形成されるラインであり、表層テープ31の搬送方向の単位長さを解像度により分割した間隔ごとにある。
ここで、図4では、テープ幅方向の一列のドットを1個のドットとして示しているが、以下の説明では、図4における1個のドットを1列のドットと見なして説明する。後述の図10でも同様である。
【0036】
また、一印刷周期とは、表層テープ31の幅方向に一列のドットを形成するために必要な時間であり、印刷開始時のサーマルヘッドの熱容量不足を補うための“予備加熱1”の時間と、対応する発熱素子の温度を熱転写が可能となる(即ち、インクリボンのインク層を溶融させることが可能な)所定温度(以下、インク溶融必要温度といい、例えば90°である)へと上昇させるための“予備加熱2”の時間と、対応する発熱素子の温度をインク溶融必要温度で一定に保つための“本加熱”の時間と、からなる。
なお、一印刷周期の長さは解像度と表層テープ31の搬送速度により変わる。例えば、360dpi、40mm/sでの印刷時の一印刷周期は、360dpiでの印刷ラインa間(約0.07mm)を40mm/sで通過するのに必要な時間(約1.8ms)であり、180dpi、80mm/sでの印刷時の一印刷周期、すなわち180dpiでの印刷ラインb間(約0.14mm)を80mm/sで通過するのに必要な時間と同等である。なお、図4では180dpiの印刷ラインbは360dpiの印刷ラインaを一本置きにしたものとして表している。
【0037】
よって表層テープ31の幅方向に1列のドットを形成するに当たり、サーマルヘッド41には制御部60からCPU61が生成した1印刷ライン分のライン印刷データが転送され、転送された1印刷ライン分のライン印刷データに基づいて、対応する発熱素子に通電される。1印刷ライン分のライン印刷データとは、一列の発熱素子に一印刷周期の通電がなされることにより表層テープ31の幅方向に一列のドットが形成されるための印刷データである。
【0038】
よって1印刷ライン分のライン印刷データに基づいて通電された発熱素子はインク層のインクを溶融させるのに必要なインク溶融必要温度(例えば90°)まで発熱する。その結果、インクリボン33のインク層の内、サーマルヘッド41と接触する箇所のインクがサーマルヘッド41の加熱により溶融する。そして、溶融されたインク層のインクが表層テープ31に接着され、その後、インクリボン33を表層テープ31から離間させることにより、接着されたインクのみが1印刷ライン分のドットとして表層テープ31へと転写される。
そして、表層テープ31及びインクリボン33を所定の搬送速度で搬送しつつ、上記熱転写の処理を1印刷ラインずつ繰り返し実行する。印刷装置1では360dpiでの1印刷ラインa間(約0.07mm)を搬送するにあたり、テープ搬送モータ2が回転するパルス数は2であり、180dpiでの1印刷ライン間(約0.14mm)を搬送するにあたり、テープ搬送モータ2が回転するパルス数は4である。なお1パルス当たりに表層テープ31が搬送される搬送量は一定である。
サーマルヘッド41に配列された多数の発熱素子はその都度、制御部60から転送される各印刷ライン分の印刷データに基づいて選択的かつ間欠的に通電される。その結果、表層テープ31には、文字入力キー3Aで入力された文字列に基づくユーザ所望のドット画像が形成される。
【0039】
よって、図4(A)に示すように、360dpiに印刷解像度が設定された場合には、1インチ当たり360ラインに分割された各ライン印刷データに対応する発熱素子が発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの1印刷ラインa分搬送することにより、360dpiの1本の印刷ラインに熱転写されたドットを表層テープ31上に形成する。一方、図4(C)に示すように、180dpiに印刷解像度が設定された場合には、1インチ当たり180ラインに分割された各ライン印刷データに対応する発熱素子が発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの2印刷ラインa分搬送する事により、360dpiの2本の印刷ラインaに跨って熱転写されたドットを表層テープ31上に形成する。結果として、表層テープ31の搬送方向において180dpiの印刷時に形成されるドットの長さは、360dpiの印刷時に形成されるドットの長さの2倍となる。
【0040】
なお、図4(D)、(E)では、180dpiでの印刷時であるのに360dpiの印刷ラインa1本分のみに形成される「半ドット」が形成されるが、これは1インチ当たり180ラインに分割された各ライン印刷データに対応する発熱素子が発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの1印刷ラインa分だけ搬送させることにより形成される。半ドット形成により一列のドットを形成する際の一印刷周期は180dpiでの通常印刷の場合の半分の時間、すなわち搬送速度が同じ場合の360dpiの一印刷周期と同じ長さの時間となる。またサーマルヘッド41への通電時間も搬送速度が同じ場合の360dpiで一列のドットを印刷する場合と同じ長さとなる。結果として、半ドット処理により形成されたドットの長さは360dpiの印刷時に形成されるドットの長さと同じとなる。
つまり、第1実施形態において「半ドット」を形成するとは、180dpiでの印刷時のドットの一部を180dpiではなく360dpiで形成することである(第2実施形態も同様)。
【0041】
次に、印刷装置1における各処理プログラムについて、図4〜図9を参照しつつ詳細に説明する。まず、図5に示す印刷前処理について説明する。尚、以下の図5〜図9のフローチャートで示されるプログラムは、各々ROM64等に記憶されており、CPU61により実行される。
図5に示す印刷前処理は、印刷装置1の電源がON状態であり、文字入力キー3Aの入力操作に基づいて印刷対象となる文字や図形が入力された状態でキーボード3の印刷キー3Bが押され、EEPROM63に記憶された現在設定中の解像度が180dpiである場合に実行される。なお設定中の解像度が360dpiである場合には以下で説明される処理は行われず、通常の処理が行われる。
図4(B)に印刷前処理が開始される前の初期状態を示す。
【0042】
ここでROM64には、表層テープ31がサーマルヘッド41からカッタ17までの距離nを搬送する間にテープ搬送モータ2が回転するパルス数P1(図4参照)が予め算出
されて記憶されている。また、所望の前余白長さlを搬送する間のパルス数P2(図4参照)も予め算出されて記憶されている。
ここでP1−P2で表されるパルス数は2で割り切れる。前余白長さがlとなる個所にカッタ17が対向する際にサーマルヘッド41が対向する表層テープ31の位置を一時停止予定位置とすると、P1−P2で表されるパルス数とは、印刷開始位置から一時停止予定位置まで表層テープ31が搬送される間にテープ搬送モータ2が回転するパルス数である。そして2とは、上述のように360dpiの1印刷ライン間を搬送するに当たりテープ搬送モータ2が回転するパルス数である。よって、P1−P2が2で割りきれるとは、図4(A)に示すように前余白長さがlとなる個所にカッタ17が対向する際にサーマルヘッド41はドットを形成した区切り目となる一時停止予定位置で印刷を一時停止できることを示している。
また予め、印刷処理において半ドット処理を行うか行わないかを決定する半ドットモード決定フラグはOFFに設定されてRAM66に記憶されている。
【0043】
印刷前処理が開始されると、CPU61は先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1において、印刷装置1においてサーマルヘッド41の印字媒体に対する相対位置を示す現在位置を0に設定するとともにテープ搬送モータ2を停止させる。なお、現在位置は、テープ搬送モータ2のパルス周期ごとに1ずつ増えていく。
【0044】
次に、S2において、CPU61は各種パラメータの初期化及び読み込みを行う。すなわち、RAM66に格納されていた印刷データを消去した上で、キーボード3等からの入力信号に基づいて、上述した印刷ライン毎にサーマルヘッド41の複数の発熱素子毎に発熱の有無を特定するライン印刷データを生成する。
また、CPU61は、ROM64から、上述したサーマルヘッド41からカッタ17まで表層テープ31が搬送されるパルス数P1及び所定の前余白長さlが搬送されるパルス数P2を読み出す。
【0045】
そしてS3において、CPU61は、サーマルヘッド41からカッタ17まで搬送するためのパルス数P1から前余白の所定長さlを搬送するためのパルス数P2を引いたP1−P2を算出して予定印字長としてRAM66に記憶する。
【0046】
次に、CPU61はS4に進み、半ドット有無判定処理を行う。図6に示すように半ドット有無判定は、次の印刷開始から前余白カットのための印刷一時停止までの間に前述した半ドット処理を行う必要があるか否かを判定するものである。判定処理が開始されると、S21においてCPU61は予定印字長として記憶されたパルス数P1−P2をRAM66から読み出す。そしてP1−P2から現在位置0を引いたパルス数P1−P2−0が、4で割り切れるか計算する。上述したように、4とは180dpiでの1印刷ラインb間を搬送するにあたり、テープ搬送モータ2が回転するパルス数である。
【0047】
よってP1−P2−0が4で割り切れる場合とは、前述した一時停止予定位置(サーマルヘッド41の現在位置の値がP1となる位置)がドットを形成した区切り目にある場合、つまり前余白長さが所定長さlとなる個所にカッタ17が対向する際にサーマルヘッド41はドットを形成した区切り目で印刷を一時停止できる場合である。すなわち印刷開始から一時停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaの数が360dpiでの印刷時と等しいことを意味する。
一方、P1−P2−0が4で割り切れない場合とは、前述した一時停止予定位置(サーマルヘッド41の現在位置の値がP1となる位置)がドットを印刷途中の個所にある場合、つまり前余白長さが所定長さlとなる個所にカッタ17が対向する際にサーマルヘッド41はドットを形成する区切り目で印刷を一時停止できない場合である。その場合、更にもう1印刷ラインaまで印刷途中のドットを跨がせて形成したり、一時停止予定位置に係るドットを形成する手前で一時停止する等の処置を取らなければ一時停止できない。そのため印刷開始から一時停止までにドットが形成される360dpiの印刷ライン数が360dpiでの印刷時と異なる。
【0048】
P1−P2が4で割り切れる場合(S21:NO)、S23において、CPU61がRAM66に記憶された半ドットモード決定フラグをOFFのままとする。従って次の印刷開始から前余白カットのための印刷の一時停止までに半ドット処理は行われないこととなる。一方、4で割り切れない場合(S21:YES)、S22においてCPU61は半ドットモード決定フラグをONに設定しなおしてRAM66に記憶する。従って次の印刷開始から印刷の一時停止までの印刷処理において半ドット処理が行われることになる。
【0049】
以上で半ドット有無判定処理が終了し、CPU61はS5(図5参照)に進み、モータ動作処理を開始し、テープ搬送モータ2を加速させる。以下図7のS31〜S43で説明するモータ動作処理は、テープ搬送モータ2の動作パルス周期ごとに実行される。よってモータ動作処理が行われる間隔は、モータ加速中は徐々に短くなり、定速動作中は一定となり、減速中は徐々に長くなる。
【0050】
図7で示すように、モータ動作処理では、まずCPU61はS31において、サーマルヘッド41の現在位置が印刷すべき位置にあるか否かを判定する。現在位置がP2の値を超えるまでは印刷位置にない。現在位置が印刷位置にない場合は(S31:NO)、CPU61は、S33に進み、テープ搬送モータ2を1パルス分回転させ、現在位置に1を加算した数をRAM66に記憶し、S34に進む。
【0051】
S34においてCPU61はテープ搬送モータ2のモータ状態を判定する。モータの加速中であれば(S34:加速中)、S35において搬送モータ駆動回路70にテープ搬送モータ2を加速するよう駆動信号を出すモータ加速処理を行った上でS36に進んでまたテープ搬送モータ2のモータ状態を確認し、テープ搬送モータ2の加速が完了したか否かを判定する。加速が完了したと判定すれば(S36:YES)、CPU61はS37に進み搬送モータ駆動回路70にテープ搬送モータ2に回転加速を止めて定速回転させるよう駆動信号を出すモータ定速処理を行った上でモータ動作処理を終了させる。加速が完了していないと判定した場合は(S36:NO)、モータ動作処理を終了する。
またS34においてCPU61が、モータ状態は定速動作中であると判定した場合は(S34:定速動作中)S38に進み、搬送モータ駆動回路70にテープ搬送モータ2をそのまま定速で回転させるよう駆動信号を出すモータ定速処理を行う。そしてS39に進み、サーマルヘッド41の現在位置が減速開始位置か否かを判定し、もし減速開始位置であれば(S39:YES)、S40に進んで搬送モータ駆動回路70にテープ搬送モータ2の回転を減速させるよう駆動信号を出してテープ搬送モータ2を減速させた上でモータ動作処理を終了させる。一方、もしサーマルヘッド41の現在位置が減速開始位置で無ければ(S39:NO)、そのままモータ動作処理を終了させる。
またS34においてモータ状態が減速中であれば(S34:減速中)、CPU61はS41に進み、搬送モータ駆動回路70にテープ搬送モータ2の回転をそのまま減速させるよう駆動信号を出してテープ搬送モータ2の回転を減速させるモータ減速処理を行う。そしてS42に進み、減速が完了したか否か、すなわちテープ搬送モータ2の回転速度が停止したか否かを判定する。もし減速が完了すれば(S42:YES)、CPU61はテープ搬送モータ2を停止させた上でモータ動作処理を終了させる。一方、もし減速完了していなければ(S42:NO)、そのままモータ動作処理を終了させる。
【0052】
また、S32において、現在位置がP2の値を超えた場合、現在位置は印刷位置に来る事になる。現在位置は印刷位置にある場合(S31:YES)、図8で説明する印刷処理(S51〜S59)を行う。
図8に基づき印刷処理について説明する。上述したように印刷処理はモータ動作処理の一環であるので、テープ搬送モータ2のパルス周期ごとに行われる。
【0053】
上述のように現在位置は印刷位置にある場合(S31:YES)、CPU61はS51において、テープ搬送モータ2のモータ状態を判定する。そして、テープ搬送モータ2が回転加速中の場合は(S51:加速中)、S52に進み、RAM66から半ドットモード決定フラグを読み出し、半ドットモード決定フラグがONに設定されており、且つサーマルヘッド41が印刷を開始した1列目のドットを印刷しようとしているのか否かを判定する。半ドットモード決定フラグがONに設定され且つ、印刷開始の1列目のドットを印刷しようとしている場合は、S53に進み半ドット印刷を行う。
【0054】
半ドット印刷では上述したように、CPU61は、RAM66から読み出し、サーマルヘッド41に転送した一のライン印刷データに対応する発熱素子が発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの1印刷ラインa分搬送する。この間、テープ搬送モータ2は2パルス分、表層テープ31を搬送するので、サーマルヘッド41が1列の半ドットを形成するに当たっては印刷処理を含むモータ動作処理が2回繰り返される。以上より半ドットは360dpiの1印刷ライン上に形成され、半ドットの長さは通常180dpiでの印刷時に印刷される通常ドットの長さの半分となる。
そしてCPU61はS54に進み、半ドットモード決定フラグをOFFに設定し直してRAM66に記憶して印刷処理を終了しS33に進む(図6参照)。
【0055】
また、S52において、半ドットモード決定フラグがOFFに設定されていたり、サーマルヘッド41が印刷を開始する先頭ドットを印刷しようとしているのではない場合(S52:NO)、CPU61はS55に進んで通常ドット印刷を行う。
通常ドット印刷では、CPU61はRAM66から読み出し、サーマルヘッド41に転送した一のライン印刷データに対応する発熱素子が発熱された状態で、表層テープ31及びインクリボン33を360dpiの2印刷ラインa分搬送する。この間、テープ搬送モータ2は4パルス分、表層テープ31を搬送するので、サーマルヘッド41が1列のドットを形成するに当たっては印刷処理を含むモータ動作処理が4回繰り返される。以上より通常ドットは360dpiの2印刷ラインに跨り形成される。
そしてCPU61は印刷処理を終了しS33に進む(図6参照)。
【0056】
一方、S51において、CPU61がテープ搬送モータ2は定速動作中であると判定した場合(S51:定速動作中)、CPU61はS56に進んで通常ドット印刷を行った上で印刷処理を終了しS33に進む(図6参照)。
【0057】
また、S51においてテープ搬送モータ2のモータ状態が減速中であると判定した場合(S51:減速中)、CPU61はS57においてRAM66から半ドットモード決定フラグを読み出し、半ドットモード決定フラグがONに設定されており且つ、現在位置がP1−1となっており、サーマルヘッド41が印刷一時停止予定位置に来る前に形成する最終列のドットを形成としているのか否かを判定する。ここで第1実施形態では表層テープ31の搬送停止とサーマルヘッド31の印刷一時停止はほぼ同時に行われるのでS51はテープ搬送モータ2の停止直前のドット列を形成しようとしているのかを判定するとも言える。
半ドットモード決定フラグがONに設定され且つ印刷一時停止予定位置に来る前に形成する最終列のドットを形成しようとしている場合は、S58に進み、半ドット印刷を行った上で印刷処理を終了してS33に進む(図6参照)。
一方、半ドットモード決定フラグがOFFに設定されている場合や印刷一時予定位置に来る前に形成する最終列のドットを形成するのでない場合(S57:NO)、S59に進み、通常ドットの印刷を行った上で印刷処理を終了してS33に進む(図6参照)。
【0058】
続いてモータ動作処理のS43(図6参照)においてテープ搬送モータ2が回転を停止させた際の停止時処理について図9に基づき説明する。
図9に示すように、テープ搬送モータ2が停止されると、CPU61は、S61において切断用モータ72の駆動状態を確認してカット動作が有効か否かを判定する。カット動作が有効であると判定した場合(S61:YES)、CPU61はS62に進み、切断用モータ駆動回路69に駆動信号を送る。よって切断用モータ72が駆動され、積層テープ38は、固定刃17a、回動刃17bに剪断されて前余白がカットされる。
一方、カット動作が有効でないと判断した場合は(S61:NO)、CPU61は前余白をカットせずにそのまま印刷を再開する。
【0059】
以上をまとめると、CPU61は、印刷前処理により上述した半ドット有無判定処理(図6参照)を行った後に、テープ搬送モータ2の1パルス周期毎にモータ動作処理を行う。そして現在位置の値が0からP2の値までは印刷処理を伴わないモータ動作処理を繰り返して表層テープ31を搬送し、現在位置の値がP2を超えてから印刷を開始し、現在位置がP1の値となるまで印刷処理を伴うモータ動作処理を繰り返す。印刷中、モータ動作は加速から定速、減速へと徐々に切り替わり、前余白をカットするために印刷を一時停止する。それとほぼ同時に表層テープ31の搬送が停止されてカッタ17が前余白をカットする。
【0060】
そして、半ドット有無判定により、S21で行う半ドット有無判定でP2−P1−0が4で割り切れる場合(S21:NO)は、図4(C)に示すように印刷開始から一時停止までに形成する全てのドットを通常ドットにより形成して印刷する。この場合、現在位置がP1となる一時停止予定位置でドットをちょうど印刷し終えるのでサーマルヘッド41による印刷は当該位置で一時停止できる。よって、印刷開始から一時停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaの数は360dpiでの印刷時と等しくなり、カッタ17の切断により得られる前余白長さは長さlとなる。
【0061】
一方、図4(D)に示すように、P1−P2−0が4で割り切れない場合(S21:YES)であって現在位置がP2+1の値となった際にテープ回転モータ2が加速していた時には(S51:加速中)、印刷開始して1列目のドットが半ドットとして形成される。その後、半ドットモード決定フラグはOFFに設定しなおされる(S54)から、一時停止までは通常ドットが形成される。この場合、現在位置がP1となる一時停止予定位置でドットをちょうど形成し終えるのでサーマルヘッド41は当該位置で一時停止できる。よって、印刷開始から一時停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaの数は360dpiでの印刷時と等しくなり、カッタ17の切断により得られる前余白長さは長さlとなる。
【0062】
また、図4(E)に示すように、P1−P2−0が4で割り切れない場合(S21:YES)であって現在位置がP2+1の値となった際にテープ回転モータ2が定速・又は減速していた時には(S51:定速動作中又は減速中)、印刷を開始後の先頭ドットは半ドットとはならず、半ドットモードがONのまま印刷が続行されるため、現在位置がP1−1の値となる時に形成される最終列のドットが半ドットとなるように形成される。この場合も、現在位置がP1となる一時停止予定位置で当該半ドットをちょうど印刷し終えるのでサーマルヘッド41は当該位置で一時停止できる。よって、印刷開始から一時停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaの数は360dpiでの印刷時と等しくなり、カッタ17の前余白カットにより得られる前余白長さは長さlとなる。
【0063】
続いて、第2実施形態の印刷装置について説明する。第2実施形態の印刷装置において、第1実施形態の印刷装置1と同一・相等する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0064】
ここで、第2実施形態の印刷装置による印刷例を図10に示す。図10(A)は、360dpiで印刷する場合(以下360dpi印刷時と略記)、図10(C)は180dpi印刷時にテープ搬送モータ2の停止直前に形成されるドットを360dpiで印刷する場合(以下180dpi半ドット印刷時と略記)を示す。
また、図10(B)は、半ドット印刷を行わずに、テープ搬送モータ2の正転停止時点を360dpi印刷時よりも180dpi印刷時の通常ドットの半分(半ドット分)前にずらしたため360dpi印刷時と余白長が異なってしまう比較例を示す。
各ドットに書き込まれるアルファベットはドットを印刷するライン印刷データの順番を表す。また、矢印は印刷方向を示す(正転時の印刷方向はテープ搬送方向と逆方向である)。
【0065】
図10のように、第2実施形態の印刷装置では、テープ搬送モータ2が正逆回転可能であり、印刷一時停止に伴いテープ搬送モータ2が逆転する。そして、テープ搬送モータ2の再正転時には、再正転時までに形成されたドット列のうち、少なくとも最終列のドットと重なるように印刷が開始される。
後述するが、第2実施形態では、テープ搬送モータ2の逆転停止時に前余白をカットする。そして、テープ搬送モータ2の逆転停止前の最終列のドット形成が終了した時点を印刷一時停止時点とする。
【0066】
図10において、180dpi印刷時における半ドットを斜線で、その他のテープ搬送モータ2の正転停止前に形成されるドットと、再度正転開始後に形成されるドットを灰色で示す。すなわち、灰色ドットや、斜線で示される半ドットは、第1実施形態で形成されたドットと同様、テープ搬送モータ2の正転中に形成されるドットである。
第2実施形態では、テープ搬送モータ2の正転停止中もドットが形成される。正転停止中のドット形成は惰性により行われるが、後述するように予め決められたタイミングで形成される。ここで、「予め決められたタイミングで」とは当該タイミングで打たれるドットを印刷する時間、すなわち印刷周期も予め定められていることを意味する。また、テープ搬送モータ2の逆転中も、所定の逆転パルスが出力されたタイミングでドットが形成される。これらは図10では白色で表される。テープ搬送モータ2の停止中や逆転中に形成されるドットの大きさや位置は解像度によらない。
【0067】
また、第2実施形態でも図5の印刷前処理及び図6の半ドット有無判定処理を行う点は第1実施形態と同様である。ただし以下の相違点がある。
第1実施形態では、テープ搬送停止時にそのまま前余白を切断するとしていたので、サーマルヘッド41・カッタ17間の距離nを搬送する間にテープ搬送モータ2が回転するパルス数P1から、所望の前余白長さlを搬送する間のパルス数P2を引いたP1−P2に基づいて半ドット有無を判定していた。
これに対し、第2実施形態では、モータ正転停止から切断までの表層テープ31の変動距離rを考慮する。例えば図10のように、切断時のヘッド位置がモータ停止時のヘッド位置に対し搬送方向と逆方向に僅かに距離rだけずれていた場合、サーマルヘッド41とカッタ17間の距離nから引いた距離n−rを搬送する間のパルス数P3を用い、P3−P2が4で割り切れるか否かにより半ドット有無を判定する。なお、P3−P2は2で割りきれ、図10(A)のように、360dpi印刷時には、テープ搬送モータ2の正転停止時点でサーマルヘッド41はドットを形成した区切り目にあるとする。
なお、仮に切断時のヘッド位置がモータ停止時のヘッド位置に対して搬送方向に距離rずれていた場合、P3は距離n+rを搬送する間のパルス数となる。
【0068】
そしてP3−P2が4で割り切れる場合は、テープ搬送モータ2が正転停止時点でサーマルヘッド41はドットを形成した区切り目に位置する場合である。これは印刷開始からテープ搬送モータ2の正転停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaの数が360dpi印刷時と等しいことを示す。
また上述のように、テープ搬送モータ2の正転停止後、惰性で形成されるドット及び逆転時に形成されるドットの大きさや位置は解像度によらない。このため、テープ搬送モータ2の正転停止後、印刷一時停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaの数はどの解像度でも同じである。よって、印刷開始からテープ正転停止までにドットが形成される印刷ラインaの数が360dpiでの印刷時と等しければ、印刷開始から印刷一時停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaが360dpi印刷時と等しいことになる。
一方、P3−P2が4で割り切れない場合とは、テープ搬送モータ2の正転停止時点でサーマルヘッド41はドットを形成する途中に位置する場合である。この場合、仮に印刷開始からテープ搬送モータ2正転停止中に360dpi印刷時と同じタイミングでドットを形成するためには、テープ搬送モータ2の正転停止タイミングを360dpi印刷時と比べて半ドット分ずらさざるを得ず、印刷開始からテープ搬送モータ2の正転停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaの数が360dpiでの印刷時と等しくならない(図10(B)参照)。
【0069】
よって第2実施形態では半ドット有無判定(図6)のS21においてP3−P2が4で割り切れる場合にS23に進み、S21においてP3−P2が4で割り切れない場合にS22に進むものとする。
【0070】
また、第2実施形態のモータ動作処理と停止時処理について図11に基づいて説明する。
図11のように、第2実施形態のモータ動作処理は、第1実施形態のモータ動作処理(図7参照)にテープ搬送モータ2が停止中に行われる停止中処理(S180〜S182)とテープ搬送モータ2の逆転中に行われる逆転処理(S183〜S185)が追加されたものであり、その他S131〜S143の処理は第1実施形態のモータ動作処理のS31〜S43の処理とほぼ同様である。
【0071】
図11のように、S141のモータ減速処理を行い、S142で減速が完了したと判断されると、S143に進み、テープ搬送モータ2が停止される。
上述したように第1実施形態のモータ動作処理(図7参照)は、テープ搬送モータ2の動作パルス周期ごとに実行される。
しかし、テープ搬送モータ2停止中のモータ動作処理は予め定められたタイミングにおいて、モータ動作処理が開始される。そしてモータ動作処理が開始したタイミングが定められた印字タイミングと判断された場合(S131:YES)、S132の印刷処理を経てS133に進む。一方、モータ動作処理のタイミングが印字タイミングでない場合(S131:NO)、S133に進む。
【0072】
テープ搬送モータ2停止中の場合、S133では現在位置は変更されずにS134に進む。S134ではモータ状態が停止中と判断されS180に進む。そして、S180ではテープ搬送モータ2が駆動されていないことを確認し、S181に進む。S181では、テープ搬送モータ2の停止が完了するタイミングか否かが判断され、停止完了のタイミングではないと判断された場合(S181:NO)、モータ動作処理を終了し、所定のタイミングで再びS131に戻る。一方、S181で停止完了と判断した場合は(S181:YES)、S182に進み、次に表層テープ31を搬送方向と反対方向に搬送するための逆転パルスを出力させてモータ動作処理を終了すると共に、当該逆転パルスのタイミングにより再びS131に戻る。
【0073】
テープ搬送モータ2の逆転パルスが出力されると、逆転パルスの周期ごとにS131以降の処理が繰り返される。S134ではモータ状態が逆転中と判断され(S134:逆転中)、S184では逆転が完了するタイミングか否かが判断される。そして、逆転完了のタイミングと判断されると(S184:YES)、S185に進み、再びテープ搬送モータ2を停止させる。
【0074】
続いて図12に基づいて、第2実施形態の印刷処理について説明する。第2実施形態の印刷処理は、テープ搬送モータ2の停止中の印刷処理である停止中印刷処理(S186)、テープ搬送モータ2の逆転中の印刷処理である逆転中印刷処理(S187)以外の、S151〜S158の処理は第1実施形態の印刷処理S51〜S59(図8参照)とほぼ同様である。ただし第2実施形態の印刷処理では、第1実施形態の印刷処理のS52〜S54(図8参照)とは異なり、印刷開始後1列目のドットを半ドットとして印刷する処理は行わない。第2実施形態ではモータ状態が減速中の場合であって(S151:減速中)、半ドットモード決定フラグがONに設定されると共にテープ搬送モータ2停止前に形成されるドットのうち最終列のドットを形成しようとするときに(S157:YES)、当該ドットを半ドットとして形成する。
【0075】
よって、180dpiの印刷時においてP3−P2が2で割り切れない場合は、すなわち印刷開始から印刷一時停止までにドットが形成される360dpiの印刷ラインaが360dpi印刷時と異なる場合は(S157:YES)、S158に進み、印刷開始からテープ搬送モータ2が停止するまでに形成されるドットのうち、最終列のドットが半ドットに形成されると共に最終列より前の列のドットは通常ドットとして形成される(図10(C)参照)。
【0076】
図12のように、テープ搬送モータ2の停止中の所定タイミングで印刷処理(S132)が行われる場合、S151からS186に進む。S186の停止中印刷処理では、印刷方向に1列のドットを形成する。
また、モータ動作処理において所定の逆転パルスが出力される際に、印刷処理(S132)が行われる場合S151からS187に進む。S187の逆転中印刷処理では印刷方向に1列のドットを形成する。
S186の停止中印刷処理、S187の逆転中印刷処理については後述する。
【0077】
次に図13に基づいて第2実施形態の停止時処理を説明する。第2実施形態の停止時処理では、テープ搬送モータ2が正転停止後、逆転し(S160)、停止すると、テープ搬送モータ2への通電が停止する。その時点でカット動作有効か否かの確認(S161)、カット動作処理(S162)の処理が行われて前余白が切断される。なお、逆転停止時に積層テープ38を切断することにより、切断時の積層テープ38の変動を小さくできる。その後テープ搬送モータ2が再び通電されて正転してS163の印刷再開処理が行われる。
すると再びモータ動作処理(図11)ではモータ加速処理(S135)が開始され、印刷処理(図12)では通常ドット印刷処理(S155)が行われることになる。
【0078】
以下では図10に基づいて、上記で説明した停止中印刷処理と逆転中印刷処理、印刷再開処理におけるドット形成について詳述する。
ここで、図11〜図13で説明した各処理は180dpi印刷時においてテープ搬送モータ2の正転停止直前に半ドットを形成する場合、すなわち図10(C)の印刷例のような半ドット形成を行うことを想定したものだが、そのうち停止中印刷処理、逆転中印刷処理、印刷再開処理については360dpi印刷時でも半ドット形成を行わない180dpi印刷時でも行われるから、図10(A)〜(C)を参照に以下の説明を行う。
【0079】
図10(A)〜(C)では、テープ搬送モータ2正転停止後、停止中と逆転中では同じタイミング・印刷周期でドットが形成される。上述したように、図10(B)の例では、テープ搬送モータ2の正転停止後に360dpi印刷時と同じタイミングでドットを形成するために、半ドットを形成せずにテープ搬送モータ2の正転停止タイミングを半ドット分、前にずらしている。
【0080】
停止中印刷処理(図12参照)により形成されるドットを、図10の各印刷例で示すと、いずれもライン印刷データAにより印刷された1列のドットの後に、印刷方向に4列並んだ白色のドットである。
ここで、これらの白色ドットがどのライン印刷データにより形成されるかは、各列のドットが、どのライン印刷データの予定印刷領域に形成されるかによる。予定印刷領域とは、テープ搬送モータ2を正転し続けて印刷を一時停止せずに続けた場合に各ライン印刷データを印刷解像度で印刷した通常ドットのドット列が形成される領域を言う。当該領域を具体的に言うと、当該ドット列のテープ搬送方向側端部から搬送方向逆側の端部までとしてもよい。各ドット列の搬送方向長さも当該ライン印刷データに係る予定印刷領域をはみ出さないようにドット形成のタイミングが制御される。
これは逆転中印刷処理(図12参照)のドット形成でも同様である。
【0081】
例えば図10(A)の360dpi印刷時の例で言えば、ライン印刷データCで印刷されて2列並んだ白色ドットは、印刷を一時停止せずに続けた場合にライン印刷データCで形成される360dpi印刷時の通常ドット(ライン印刷データAが形成される印刷ラインaから搬送方向逆側に2本目の印刷ラインa上に形成される360dpi印刷時の通常ドット)の予定印刷領域内に印刷される。
【0082】
またテープ搬送モータ2の停止中に形成されるドットのうち、再正転時に形成されるドットと重ならないものについては、当該ドットに係るライン印刷データが印刷される領域幅を、テープ搬送モータ2を、印刷を一時停止せずに続けた場合の予定印刷領域幅と近似させるように特にドット形成タイミングが制御される。例えば図10(A)の場合は、ライン印刷データBが印刷される2列のドットの搬送方向幅の合計が、360dpi印刷時における通常ドット1列の搬送方向幅と近似させる。
また図10(C)のようにテープ搬送モータ2の正転停止直前に半ドットを形成する場合は、テープ搬送モータ2の正転停止直後に形成される1列又は複数列のドットも同じライン印刷データで形成して、当該ライン印刷データの印刷領域幅をテープ搬送モータ2が正転し続け印刷を続けた場合と近似させる。図10(C)の例では、ライン印刷データAで印刷される半ドットと当該半ドットに続く2列の白色ドットの搬送方向幅合計を180dpi印刷時における通常ドット1列の搬送方向幅と近似させる。
【0083】
また、逆転中印刷処理(図12参照)によるドット形成だが、図10の各印刷例では、いずれも逆転時の印刷方向に並ぶ2列の白色ドットである。これらは図10の各印刷例のように逆転前に形成された印字部分の一部に重なるように印刷されても、逆転前に形成された印字部分より搬送方向上流側にずれる位置に印刷されるのでもよいが、その形成タイミング・印刷周期及びどのライン印刷データを印刷するかは、各ライン印刷データの予定印刷領域に応じて制御される。
【0084】
またテープ搬送モータ2が再正転した印刷再開時(図13参照)のドット形成だが、サーマルヘッド41は印刷一時停止までに形成されたドット列のうち少なくとも最終列のドットと重なるように印刷を再開し、各ライン印刷データを予定印刷領域に印刷する。
なお、図10においては、サーマルヘッド41は印刷一時停止までに形成されたドット列のうち最終列のドットと重なるように印刷を再開するが、後述のように、印刷再開時に印刷一時停止までに形成されるドット列の最後尾部分に当たる複数列のドットが重なるように印刷するのでも構わない。
【0085】
図10(A)の例で示すと、印刷一時停止までに形成されるドット列のうち最終列のドットはライン印刷データCにより印刷されたドットである。そしてテープ搬送モータ2の再正転時に形成される1列目のドットは、この最終列ドットと同じライン印刷データCを360dpi印刷時の通常ドットとして印刷する。またライン印刷データCはテープ搬送モータ2の正転停止直前にドットが形成されたライン印刷データAから2つ目のライン印刷データなので、当該ライン印刷データAが印刷された印刷ラインaから搬送方向と逆側に2本目となる印刷ラインa上に形成されることとなる。
【0086】
また図10(B)及び図10(C)の例では、印刷一時停止までのドット列のうち最終列のドットはライン印刷データBにより印刷されたドットである。そしてテープ搬送モータ2の再正転時における一列目のドットは、この最終列のドットと同じライン印刷データBを180dpi印刷時の通常ドットとして印刷する。また当該一列目のドットは、ライン印刷データAが印刷される印刷ラインbから搬送方向逆側隣の印刷ラインb上に(又は、ライン印刷データAが印刷される印刷ラインa2本に対して搬送方向逆側隣の印刷ラインa2本に跨って)形成される。
【0087】
図10(B)に示す180dpi印刷時の印刷例では、360dpi印刷時の印刷例(図10(A))、180dpi半ドット印刷時の印刷例(図10(C))と同じ位置から印刷を再開すると、ライン印刷データBの予定印刷領域をはみ出してしまうので、180dpi印刷時及び360dpi印刷時に対して半ドット分搬送方向にずれた位置から印刷を再開している。
【0088】
ここで、表層テープ31は印字媒体を構成する。またテープ搬送モータ2は搬送モータを構成する。サーマルヘッド41は印字ヘッドを構成する。360dpiは第1解像度の一例であり、180dpiは第2解像度の一例である。CPU61、ROM64及びRAM66は判定手段を構成する。
【0089】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態及び第2実施形態に係る印刷装置では、360dpiでは表層テープ31の1インチを360分割してなる各印刷ラインa上に各ドットが形成される。一方、180dpiでは印刷ラインa複数本に跨ってドットが形成される。そして、CPU61、ROM64及びRAM66が、印刷開始から前余白カットのための一時停止までにドットが形成される印刷ラインaの数が、360dpiの印刷時と等しくならないと判定した場合は、印刷開始から一時停止までに形成される一連のドットの一部を360dpiにより形成して印刷することにより、該印刷ラインaの数を第1解像度での印刷時と等しくする。これにより、180dpiでの印刷時の印刷開始から一時停止までにドットが形成される印字長さを360dpiでの印刷時とほぼ等しくすることができる。前余白長さは、該印字長さにより決定されるから、以上により、第1解像度印刷時と第2解像度印刷時における前余白長さの違いを解消できる。
【0090】
また、第1実施形態及び第2実施形態に係る印刷装置では、360dpiで形成されるドットはテープ搬送モータ2の回転加速中に印刷される印刷開始の先頭部分、又は回転減速中に印刷される一時停止直前部分に形成されるため、180dpiでのドット形成から360dpiへの切り替えを低速での印刷時に行うことができ、CPUへの負担を軽減でき、高性能のCPUを用いなくてもよく、製造コスト削減ができる。
また、サーマルヘッドを用いるため、高速印刷時に360dpiへの切り替えを行うことによって発熱素子の温度が十分に上がりきらなかったり、下がりきらなかったりする印刷品質の低下の問題を回避できる。
【0091】
また、第2実施形態に係る印刷装置では、印刷一時停止時にテープ搬送モータ2が逆転する。またサーマルヘッド41はテープ搬送モータ2の再正転時において、印刷一時停止までに形成されたドット列のうち、少なくとも最終列と重なるように印刷を再開するので、ホワイトラインが生じない。また、テープ搬送モータ2の再正転時において各ライン印刷データを、テープ搬送モータ2を正転し続けて印刷を続けた場合と同じ印刷領域に印刷するので、テープ搬送モータ2を正転し続けて印刷を続けた場合と変わらない見た目良い印刷結果が得られる。
また第2実施形態の印刷装置では、180dpi印刷時に、印刷開始から印刷一時停止までに形成される一連のドットのうちテープ搬送モータ2正転停止直前のドットを360dpiにより半ドットとして形成する。よってモータ回転の最低速時に解像度の切り替えを行うことができ、更にCPUへの負担を軽減できる。更に、当該半ドットに続き、テープ搬送モータ2の正転停止直後に所定タイミングで形成されるドットのうち、1列又は複数列のドットを半ドットと同じライン印刷データを印刷して、当該ライン印刷データが印刷される領域幅を、テープ搬送モータ2を正転し続けて印刷を続けた場合と近似させる。よって、半ドットを形成する際に解像度を変更しても、印刷結果の歪みを確実に防止して、テープ搬送モータ2を正転し続けて印刷を続けた場合と変わらない見た目良い印刷結果を確実に得られる。
【0092】
尚、本発明は前記2つの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば実施形態では、第2解像度の一例である180dpiの印刷時に形成されるドットは第1解像度の一例である360dpiの印刷ラインを2本跨ぐよう形成される。しかし、本発明では第2解像度での印刷時に形成されるドットが第1解像度の印刷ラインを3本以上跨いで形成されるのでも構わない。この場合、例えば「前記印刷開始から前記一時停止までに形成される一連のドットの一部を、第1解像度により形成して印刷する」という意味は、必ずしも第2解像度のドットn列の代わりに第1解像度のドットn列を形成し
て印刷するというように、第2解像度から第1解像度へ切り替えるドット列の数が1対1で対応することのみを意味せず、例えば第2解像度のドットn列を第1解像度のドット2n列で形成する等といった場合も含まれる。なお、ここで説明に用いたnは任意の整数を意味する。
また、例えば実施形態においては、インクリボンのインク層を印字媒体へと転写する熱転写方式を採用したサーマル印刷装置を用いたが、感熱紙に対して印刷を行う感熱方式を採用したサーマル印刷装置でも、インクジェット印刷装置でも構わない。
また、実施形態においては、テープ搬送モータ2をステッピングモータとしているが、テープ搬送量を正確に制御する別の機構を設ければDCモータとすることもできる。
【0093】
また、第2実施形態のドット形成タイミングは図10の例に限定するものではもちろんない。例えば、テープ搬送モータ2の逆転中にドットを形成したが、形成しなくても構わない。また、モータ停止中に形成されるドットは4列に限定されず、またモータ停止中のドットで印刷されるライン印刷データの数も例えば図10(A)の場合のライン印刷データB、Cのように2つに限定されず、1、3、4・・・のように変更してもよい。
また、印刷再開時のドットは、印刷一時停止までに形成されたドット列のうち少なくとも最終列のドットと重なるように形成すればよい。よって、印刷再開時の一列目のドットは必ずしも印刷一時停止までの最終列のドットと同じライン印刷データで印刷する必要はなく、最終列ドットの数列前のドットと同じライン印刷データで印刷しても、各列のドットが予定印刷領域に対応して印刷されていれば構わない。
【符号の説明】
【0094】
1 印刷装置
17 カッタ
31 表層テープ
41 サーマルヘッド
61 CPU
a 360dpiの印刷ライン
b 180dpiの印刷ライン
l 設定余白長さ
n サーマルヘッドからカッタまでの搬送距離
r モータ停止時のヘッド位置と前余白切断時のヘッド位置との距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の印字媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記印字媒体において、印字媒体の単位長さを解像度により分割してなる各印刷ライン上に各ドットを形成することにより印刷を行う印字ヘッドと、前記印字ヘッドより搬送方向下流に配置されるカッタと、を備え、
前記カッタが前記印字媒体において印刷開始の位置から印刷方向とは逆方向に形成される前余白を切断するにあたり前記印字ヘッドは印刷を一時停止する印刷装置において、
前記解像度は、第1解像度と、前記ドットが前記単位長さを第1解像度により分割してなる第1印刷ライン複数本に跨って形成される第2解像度とを含み、
前記第2解像度による印刷時に、前記印刷開始から前記一時停止までにドットが形成される第1印刷ラインの数が、前記第1解像度の印刷時と等しくなるか否かを判定する判定手段を備え、
前記判定手段が前記第1印刷ラインの数は前記第1解像度での印刷と等しくならないと判定した場合は、前記印刷開始から前記一時停止までに形成される一連のドットの一部を、第1解像度により形成して印刷することにより、該第1印刷ラインの数を第1解像度での印刷時と等しくすることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印字ヘッドは、通電により発熱される複数の発熱素子を前記搬送手段による搬送の方向と直交する方向に列設して構成されるサーマルヘッドであり、
前記搬送手段には搬送モータが含まれ、
前記一連のドットの一部とは、前記印字媒体において前記搬送モータの回転加速中に印刷される前記印刷開始の先頭部分、又は搬送モータの回転減速中に印刷される前記一時停止の直前部分に形成されるドットであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送手段には正逆回転可能で前記印刷一時停止時に逆転する搬送モータが含まれ、
前記印字ヘッドは前記搬送モータの再正転時において、印刷の一時停止までに形成されたドット列のうち少なくとも最終列と重なるように印刷を再開すると共に、各ライン印刷データを、搬送モータを正転し続けて印刷を続けた場合と同じ印刷領域に印刷し、
前記一連のドットの一部とは、前記搬送モータの正転停止直前に形成される第1ドットであり、
前記搬送モータ正転停止直後に前記第1ドットに続いて所定タイミングで形成される形成されるドットのうち1列又は複数列の第2ドットを、第1ドットと同じライン印刷データにより印刷して、当該ライン印刷データが印刷される領域幅を、搬送モータを正転し続けて印刷を続けた場合と近似させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−42160(P2011−42160A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107339(P2010−107339)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】