説明

印刷装置

【課題】印字媒体に厚い部分があっても、該厚い部分に衝撃を与えることなく印字ヘッドとプラテンとの間を通過させることができるようにする。
【解決手段】シール14を搬送する搬送路6と、この搬送路6によって搬送されるシール14の搬送方向に沿う厚さの変化を検出する厚さ検出部8と、この厚さ検出部8によって厚さの変化が検出されたシール14の一面側に情報を印字する第1の印字部10、及びシール14の他面側に情報を印字する第2の印字部11を有し、第1及び第2の印字部10,11が、搬送路6を介して対向配置されるプラテンローラ17及びサーマルヘッド16からなる印刷手段と、第1及び第2の印字部10,11のプラテンローラ17に対しサーマルヘッド16を加圧する加圧機構25と、この加圧機構25の加圧力を厚さ検出部8によって検出された厚さ情報に基づいて可変制御する制御部35とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1及び第2の印字部を備え、これら第1及び第2の印字部により媒体の表裏面にそれぞれ情報を印字する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の印刷装置は、媒体の搬送路に沿って第1及び第2の印字部を配設している。第1及び第2の印字部は、媒体の搬送路を介して離間対向するサーマルヘッドとプラテンを備え、媒体の表面側と裏面側にそれぞれ情報を印刷できるようになっている。
【0003】
サーマルヘッドはバネ等の付勢部材で付勢されてプラテンに圧接され、媒体はこれらサーマルヘッドとプラテンとの間に通過されて印刷される(例えば、特許文献1参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、サーマルヘッドは一定の付勢力でプラテンに圧接されていたため、媒体の厚さが搬送方向で異なるような場合、例えば、媒体としてラベル紙にRFIDの電子タグが入っているような場合には、電子タグが入った部分では厚さが大きくなる。このため、ラベル紙の電子タグが入った部分がサーマルヘッドとプラテンとの間を通過する際には大きな衝撃を受け、電子タグが破損してしまう虞があった。
【0005】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、印字媒体に厚い部分があっても、該厚い部分に衝撃を与えることなく印字ヘッドとプラテンとの間を通過させることができるようにした印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、印刷媒体を搬送する搬送路と、この搬送路によって搬送される前記印刷媒体の搬送方向に沿う厚さの変化を検出する検出手段と、この検出手段によって厚さの変化が検出された前記印刷媒体の一面側に情報を印字する第1の印字部、及び前記印刷媒体の他面側に情報を印字する第2の印字部を有し、前記第1及び第2の印字部が、前記搬送路を介して対向配置されるプラテン及び印字ヘッドからからなる印刷手段と、前記第1及び第2の印字部のプラテンに対し前記印字ヘッドを加圧する加圧手段と、この加圧手段の加圧力を前記検出手段によって検出された厚さ情報に基づいて可変制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印字媒体に厚い部分があっても、該厚い部分に衝撃を与えることなく印字ヘッドとプラテンとの間を通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態である印刷装置のサーマルヘッドがプラテンに強く圧接された状態を示す図。
【図2】図1の印刷装置で用いられる印刷媒体を示す平面図。
【図3】図2の印刷媒体を示す側断面図。
【図4】図1のサーマルヘッドをプラテンに対し接離する方向に移動させるための駆動制御系を示す図。
【図5】図1のサーマルヘッドがプラテンに弱く圧接された状態を示す図。
【図6】図1のサーマルヘッドがプラテンから離間された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施の形態である印刷装置を示すものである。
【0011】
印刷装置は装置本体1を備え、この装置本体1の一側面側には用紙を搬入させる搬入口2が設けられ、他側面側には用紙を排出させる排出口3が設けられている。
【0012】
装置本体1内には搬入口2から搬入された印刷媒体としてのラベル紙5を排出口3に向かって搬送する搬送路6が設けられている。搬送路6中にはラベル紙5の搬送方向に沿って検出手段としての厚さ検出部8、リーダ・ライタ9、印刷手段としての第1及び第2の印字部10,11が配設されている。
【0013】
ラベル紙5は、図2及び図3に示すようにその一面側に搬送方向(矢印で示す)に沿って所定間隔を存して無線タグ13を配置し、これら無線タグ13はシール14によってシールされている。無線タグ13には各種の情報が記録されている。
【0014】
厚さ検出部8は、ラベル紙5の搬送方向に沿う厚さの変化を検出するものである。
【0015】
リーダ・ライタ9は無線タグ13に対し情報を記録し或いは読み取るものである。
【0016】
第1及び第2の印字部10,11は、それぞれ搬送路6を介して対向配置されるサーマルヘッド16とプラテンローラ17とを有して構成されている。第1の印字部10は搬送路6の上部側にプラテンローラ17、下部側にサーマルヘッド16を配置し、第2の印字部11は搬送路6の上部側にサーマルヘッド16、下部側にプラテンローラ17を配置している。第1の印字部10はラベル紙5の裏面側(一面側)の印字エリアに情報を印字し、第2の印字部11はラベル紙5の表面側(他面側)の印字エリアに情報を印字するようになっている。
【0017】
第1及び第2の印字部10,11のサーマルヘッド16はヘッド支持板19に取り付けられてヘッドユニット20を構成している。ヘッド支持板19は支軸22に回動自在に支持され、支軸22は本体フレームに固定されている。
【0018】
また、ヘッドユニット20は加圧手段としての加圧機構25によって加圧され、サーマルヘッド16をプラテンローラ17に圧接させている。
【0019】
加圧機構25は、略中央部がシャフト26を介して回動自在に支持されたカムアーム27を備えている。カムアーム27はヘッド支持板19の幅方向(ラベル紙の搬送方向と直交する方向)の両端部と中央部にそれぞれ対向する状態で3本配設されている。
【0020】
カムアーム27の一端部側にはカム28が当接され、他端部側には押圧ピン30が取り付けられている。押圧ピン30は付勢部材としてのコイル状のヘッドスプリング31によってヘッド支持板19に向かって付勢されている。
【0021】
ヘッドスプリング31の一端部は固定フレーム33に固定され、他端部側には押圧ピン30の頭部が嵌入されている。押圧ピン30の頭部外周部には鍔部30aが形成され、この鍔部30aにヘッドスプリング31の他端部が当接されている。
【0022】
図4はプラテンローラ17に対するサーマルヘッド16の圧接力を可変制御する制御系を示すブロック図である。
【0023】
上記した厚さ検出部8は送信回路を介して制御部35に接続され、この制御部35には制御回路を介してカムモータ36が接続されている。制御部35は厚さ検出部8で検出されたラベル紙5の厚さの変化に基づいてカムモータ36を駆動させてカム28を回転させるようになっている。
【0024】
すなわち、制御部35は、厚さ検出部8がラベル紙5の厚さが薄い部分(印字エリア)を検出した場合には、この検出された部分(印字エリア)がサーマルヘッド16とプラテンローラ17との間に送られてくるタイミングでカムモータ36を駆動させてカム28を図1に示すように初期位置に設定するようになっている。
【0025】
このときには、ヘッドユニット20は3箇所のヘッドスプリング31によって付勢される3箇所の押圧ピン30を介して押圧され、そのサーマルヘッド16をプラテンローラ17に強い圧接力で圧接させるようになっている。
【0026】
また、制御部35は、厚さ検出部8でラベル紙5の厚さが厚い部分、即ち、無線タグ搭載部を検出した場合には、この検出された部分(無線タグ搭載部)がサーマルヘッド16とプラテンローラ17との間に送られてくるタイミングでカムモータ36を駆動させてカム28を図5に示すように回動させて1段階ストロークさせるようになっている。
【0027】
このときには、両サイドの2箇所のヘッドスプリング31がカムアーム27の回動により圧縮されて両サイドの押圧ピン30がヘッドユニット20から離間される。これにより、ヘッドユニット20は中央部の1箇所のヘッドスプリング31により付勢される一箇所の押圧ピン30のみを介して押圧され、サーマルヘッド16をプラテンローラ17に弱い圧接力で圧接させるようになっている。
【0028】
なお、制御部35は、ラベル紙5の巻き戻しなどの指示を受けると、図5に示す状態からさらに図6に示すようにカム28を回動させて2段階ストロークさせる。これにより、3箇所全てのヘッドスプリング31が圧縮されるとともに、カムアーム27によってヘッド支持板19が持ち上げられ、ヘッドユニット20がプラテンローラ17から退避した状態となる。
【0029】
次に、上記したように構成される印刷装置の印字動作について説明する。
【0030】
ラベル紙5が搬送路6に沿って搬送されると、その電子タグ13の情報がリーダ・ライダ8によって読み取られるとともに、その搬送方向の厚さが厚さ検出部9によって検出される。リーダ・ライタ8の読取情報に基づいてラベル紙5の一面側の印字エリアには、第1の印字部10によって情報が印字され、他面側の印字エリアには第2の印字部11によって情報が印字される。
【0031】
ところで、この印字に際しては、厚さ検出部9で検出された部分が第1或いは第2の印字部10,11に送られてくるタイミングでプラテンローラ17に対するサーマルヘッド16の圧接力が可変制御される。
【0032】
即ち、第1或いは第2の印字部10,11に送られてくるラベル紙5の部分が印字エリア(薄い部分)である場合には、図1に示すように3箇所のヘッドスプリング31によって付勢される3箇所全ての押圧ピン30によってヘッドユニット20が押圧される。これにより、サーマルヘッド16がプラテンローラ17に強い圧接力で圧接されてラベル紙5の印字エリアに情報が印字される。
【0033】
また、第1或いは第2の印字部10,11に送られてくるラベル紙5の部分が無線タグ13の搭載部分(厚い部分)の場合には、カム28が初期位置から回動されて1段階ストロークする。これにより、カムアーム27により両サイドの2箇所のヘッドスプリング31が圧縮され、両サイドの2箇所の押圧ピ30がヘッドユニット20から離間される。これにより、ヘッドユニット20は中央部のヘッドスプリング31により付勢される1箇所の押圧ピン30のみによって押圧され、サーマルヘッド16をプラテンローラ17に弱い圧接力で圧接させる。従って、ラベル紙5の無線タグ搭載部分がサーマルヘッド16とプラテンローラ17との間を通過する際に受ける衝撃を低減でき、その損傷を防止することができる。
【0034】
上記したように、この実施の形態によれば、サーマルヘッド16とプラテンローラ17との圧接力をラベル紙5の印字エリアに印字する場合には強く、ラベル紙5の無線タグ装填部を通過させる場合には弱くするため、良好な印字が可能になるとともに、無線タグを損傷させることもないという利点を有する。
【0035】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【符号の説明】
【0036】
5…ラベル紙(印刷媒体)、6…搬送路、8…厚さ検出部(検出手段)、10…第1の印字部(印刷手段)、11…第2の印字部(印刷手段)、13…無線タグ、14…シール材、17…プラテン、16…サーマルヘッド(印字ヘッド)、19…ヘッド支持板、20…ヘッドユニット、25…加圧機構(加圧手段)、27…カムアーム、28…カム、30…押圧ピン、31…ヘッドスプリング(付勢部材)、35…制御部(制御手段)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開2006−178943号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を搬送する搬送路と、
この搬送路によって搬送される前記印刷媒体の搬送方向に沿う厚さの変化を検出する検出手段と、
この検出手段によって厚さの変化が検出された前記印刷媒体の一面側に情報を印字する第1の印字部、及び前記印刷媒体の他面側に情報を印字する第2の印字部を有し、前記第1及び第2の印字部が、前記搬送路を介して対向配置されるプラテン及び印字ヘッドからからなる印刷手段と、
前記第1及び第2の印字部のプラテンに対し前記印字ヘッドを加圧する加圧手段と、
この加圧手段の加圧力を前記検出手段によって検出された厚さ情報に基づいて可変制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段によって検出された印刷媒体の厚さが薄い場合には、前記プラテンに対する前記印字ヘッドの圧接力を強く、検出された印刷媒体の厚さが厚い場合には、前記プラテンに対する前記印字ヘッドの圧接力を弱くなるように制御することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記加圧手段は、カムと、このカムによって回動される複数本のカムアームと、これらカムアームの回動端側にそれぞれ取り付けられた複数本の押圧ピンと、これら押圧ピンを弾性的に付勢して前記印字ヘッドを前記プラテンに圧接させる付勢部材とを具備し、
前記カムの回動により前記押圧ピンの全てにより、或いは選択された1本の押圧ピンにより前記印字ヘッドを押圧することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印字媒体は、その搬送方向に沿って所定間隔を存して配設される無線タグと、この無線タグをシールするシール材とを備えるラベル紙であることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の印字部は、回動自在に支持されたヘッド支持板と、このヘッド支持板に取り付けられた印字ヘッドとからヘッドユニットを有することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−56786(P2011−56786A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208796(P2009−208796)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】