説明

印刷装置

【課題】両面印刷動作中に手差し経路を介して用紙が挿入された際の処理を効率良く行う印刷装置を提供すること。
【解決手段】プリンタ100は,両面搬送路と手差し経路とを備えている。そして,両面印刷動作中に,手差し経路に用紙が挿入された際,その挿入タイミングが両面印刷動作中の用紙の反転搬送が開始された後からその用紙が再搬送路12の所定の位置を通過するまでの期間(続行期間)であるか否かを判断する(S103,S105,S107)。続行期間内であれば(S105:YES),手差し経路に挿入された用紙をプロセス部50に搬入して排紙し(S121,S122),両面印刷動作を継続する(S123,S124)。継続期間外であれば(S103:YES,あるいはS107:YES),両面印刷動作を停止する(S191)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,両面印刷機能を有する印刷装置に関する。さらに詳細には,ユーザによって手動挿入される用紙を印刷部に案内する用紙搬送路(以下,「手差し経路」とする)を有する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,用紙を反転させる再搬送路を利用し,自動的に用紙を反転させて両面印刷を行う印刷装置が知られている。また,ユーザによって手動挿入される用紙を印刷部に案内する手差し経路を有する印刷装置が知られている。さらに,両面印刷機能と手差し経路との両方を有する印刷装置が,例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−86506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の印刷装置には,次のような問題があった。すなわち,両面印刷機能と手差し経路との両方を有する印刷装置においては,両面印刷動作中に手差し経路に用紙が挿入された際の対応が十分に検討されていない。例えば,両面印刷動作中に手差し経路を介して用紙が挿入された際に一律に異常停止にすると,用紙ジャムや用紙のオーバーラップを回避できるが印刷動作の連続性を欠くことになる。
【0005】
本発明は,前記した従来の印刷装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,両面印刷動作中に手差し経路を介して用紙が挿入された際の処理を効率良く行う印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は,両面印刷を行う際に用紙を搬送する両面搬送路と,両面搬送路と合流し,手動挿入される用紙を前記両面搬送路との合流箇所に向けて搬送する手差し経路と,手差し経路に用紙が挿入されたことを検知する検知部と,両面印刷動作中に前記手差し経路に用紙が挿入されたとしても両面印刷動作の続行が可能と定めた期間である続行期間内で,検知部が用紙を検知したか否かを判断する判断部と,判断部が肯定判断した場合には,両面搬送路に搬送されている用紙への両面印刷動作を継続し,否定判断をした場合には,両面搬送路に搬送されている用紙への両面印刷動作を停止する制御部とを備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の印刷装置は,両面搬送路と手差し経路とを備えており,両面印刷動作中に手差し経路に用紙が挿入されたとしても両面印刷動作の続行が可能と判断される期間(続行期間)があらかじめ定められている。両面印刷動作の続行可能な期間とは,例えば,両面印刷される用紙と手差し経路から挿入された用紙とが衝突しない期間が該当する。そして,用紙が手差し経路に挿入されたタイミングが続行期間内であるか否かを判断し,続行期間内であれば両面印刷動作を継続し,続行期間外であれば両面印刷動作を停止する。
【0008】
すなわち,本発明の印刷装置は,続行期間外で用紙が手差し経路に挿入されると,両面印刷動作を停止して用紙ジャムや用紙のオーバーラップを回避する。一方,続行期間内であれば,少なくとも両面印刷動作の途中の用紙に関して両面印刷を完了させる。つまり,手差し経路に用紙が挿入されても,一部の期間内であれば印刷を継続しており,印刷処理を効率よく完了することが期待できる。
【0009】
上記の続行期間の具体例としては,例えば,両面搬送路に搬送されている用紙が,両面搬送路中の用紙を反転させる再搬送路に搬入された後から,当該用紙が合流箇所よりも用紙搬送方向の上流側であって用紙サイズに応じて決定される位置を通過するまでの期間が該当する。なお,続行期間は,両面印刷動作が続行可能と予測される期間をあらかじめ定めた期間であって,実際に可能であるか否かを判断しているものではない。例えば,手差し経路に挿入された用紙の用紙長(用紙検知時に特定不能)によって,実際の続行可能期間は異なる。つまり,続行期間は,続行可能であろう予測期間を定めたものであり,その期間の長さは続行不能となるリスクをどのくらい許容するかによって異なる。そのため,判断部は,あくまでも用紙を検知した時点について両面印刷動作の続行が可能か否かを予測判断している。
【0010】
また,本発明の印刷装置の制御部は,判断部が肯定判断した場合には,手差し経路に挿入された用紙に対して,両面搬送路に搬送されている用紙に後続する用紙に対応する画像の印刷を行うとよい。制御を継続していることから,手差し経路から挿入された用紙に対しても印刷を行うことで,印刷処理全体を早期に完了できる。
【0011】
また,上記の印刷装置の制御部は,手差し経路に挿入された用紙に対する印刷を完了できる場合に当該用紙に印刷を行い,印刷を完了できない場合には,当該用紙に印刷を行わず,当該用紙を反転することなく排紙するとよい。ここでいう「手差し経路に挿入された用紙に対する印刷を完了できる場合」とは,例えば,両面搬送路に搬送されている用紙に後続する用紙に対応する印刷が片面印刷の場合が該当する。これにより,より高度な対応となり,ユーザの手間が軽減される。
【0012】
また,本発明の印刷装置の制御部は,前記判断部が肯定判断した場合,手差し経路に挿入された用紙に対して印刷を行わず,当該用紙を反転することなく排紙するとよい。この場合,用紙を速やかに排紙しているため,搬送不具合を起こす可能性が低い。また,用紙に対して印刷することなく排紙するため,当該用紙を再利用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば,両面印刷動作中に手差し経路を介して用紙が挿入された際の処理を効率良く行う印刷装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態にかかるプリンタの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示したプリンタの,画像形成部の内部構成を示す概念図である。
【図3】画像形成部の内部のレジストローラ付近の構成を示す概念図である。
【図4】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】第1の形態にかかる両面印刷搬送処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】両面印刷動作と続行期間との関係を示すタイムチャートである。
【図7】第2の形態にかかる両面印刷搬送処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明にかかる印刷装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,両面印刷機能を有する電子写真方式のカラープリンタに本発明を適用したものである。
【0016】
[プリンタの全体構成]
実施の形態のプリンタ100は,図1に示すように,用紙に画像を形成する画像形成部10と,原稿の画像を読み取る画像読取部20とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0017】
また,画像形成部10の底部には,装置本体に対して着脱可能であり,用紙を収容する給紙カセット91が設けられている。また,画像形成部10の側面側には,ユーザによって用紙を手動挿入するための手差し口93が設けられている。
【0018】
[画像形成部の構成]
画像形成部10は,図2に示すように,トナー像を形成し,そのトナー像を用紙に転写するプロセス部50と,用紙上の未定着のトナーを定着させる定着装置8と,画像形成前の用紙を載置する給紙カセット91と,画像形成後の用紙を載置する排紙トレイ92とを備えている。また,画像形成部10内には,底部に位置する給紙カセット91に収容された用紙が,給紙ローラ71,レジストローラ72,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ76を介して上部の排紙トレイ92への導かれるように,略S字形状の搬送路11(図2中の一点鎖線)が設けられている。
【0019】
プロセス部50は,カラー画像の形成が可能であり,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色に対応するプロセス部を並列に配置している。具体的には,Y色の画像を形成するプロセス部50Yと,M色の画像を形成するプロセス部50Mと,C色の画像を形成するプロセス部50Cと,K色の画像を形成するプロセス部50Kとを備えている。さらに,プロセス部50は,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kに光を照射する露光装置53と,ローラ73,74によって張架され,用紙を各プロセス部50Y,50M,50C,50Kの転写位置に搬送する搬送ベルト7とを備えている。各プロセス部50K,50Y,50M,50Cは,周知の電子写真方式によってトナー像を形成するものである。
【0020】
画像形成部10は,給紙カセット91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙をプロセス部50に搬送し,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。さらに,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92に排出する。
【0021】
また,画像形成部10内には,用紙の両面に印刷を行うための両面印刷機構が設けられている。図2中の搬送路12(図2中の二点鎖線)は,一方の面(片面)に印刷が行われた用紙の,その裏面(他面)にも印刷が行われるように,用紙を反転してプロセス部50に再搬送するための搬送経路である。搬送路12は,定着装置8よりも用紙の搬送方向の下流側の位置で,搬送路11から分岐している。また,搬送路12は,用紙の搬送方向を反転させるために用紙を一時的に待機させる搬送路121(以下,「一旦停止路121」とする)と,反転した用紙を搬送路11に戻す搬送路122(以下,「復帰路122」とする)とで構成される。
【0022】
具体的に,両面印刷機構による両面印刷では,次のような手順で用紙を反転させる。まず,搬送路11(以下,「正送路11」とする)を経由して片面に印刷を行い,その片面印刷済みの用紙を,定着装置8での熱定着後に搬送路12(以下,「再搬送路12」とする)に搬入する。そして,その用紙を,一旦停止路121内に搬入し,搬送を一旦停止する。その後,転向ローラ75の回転方向の切り換えることで用紙の搬送方向を反転させ,その用紙を復帰路122に搬入する。そして,その用紙を,正送路11のプロセス部50よりも上流側で,正送路11に戻す。これにより,用紙の表裏が反転され,他面に印刷が行われる。すなわち,画像形成部10では,正送路11と再搬送路12とによって両面搬送路が構成される。
【0023】
また,画像形成部10内には,ユーザが用紙を手動挿入するための手動給紙機構が設けられている。図2中の搬送路13(図2中の破線。手差し経路の一例)は,本体側面に設けられた手差し口93から挿入された用紙を,正送路11との合流箇所に導くための経路である。搬送路13(以下,「手差送路13」とする)は,手差し口93を上流端とし,正送路11との合流箇所を下流端としている。この合流箇所は,正送路11中,レジストローラ72よりも上流に位置する。
【0024】
具体的に,手動給紙機構による印刷では,次のような手順で用紙を搬送する。まず,手差し口93から用紙が挿入される。挿入された用紙は,手差送路13を経由して正送路11に搬入され,その用紙がレジストローラ72まで挿入されると,レジストローラ72が用紙を把持し,その用紙を画像形成部10内に取り込む。その後,その用紙がプロセス部50を通過することで印刷が行われる。なお,レジストローラ72が用紙を把持するまでは,ユーザが用紙を挿入し続け,レジストローラ72が用紙を把持した後は自動搬送となる。
【0025】
また,画像形成部10内には,用紙の通過を検知する各種のセンサが配置されている。具体的には,図2に示したように,正送路11の搬送方向上,給紙ローラ71の下流側直後の位置に,給紙センサ61が配置されている。給紙センサ61は,給紙カセット91からの用紙の搬入検知の他,その用紙の用紙長の取得にも利用される。
【0026】
また,図3に示すように,正送路11の搬送方向上,レジストローラ72の上流側直前の位置に,レジ前センサ62が配置されている。レジ前センサ62(検知部の一例)は,正送路11と手差送路13との合流箇所14よりも下流側に位置し,手差送路13からの用紙の挿入検知も兼ねる。また,正送路11の搬送方向上,レジストローラ72の下流側直後の位置に,レジ後センサ63が配置されている。
【0027】
また,図2に示すように,再搬送路12の搬送方向上,転向ローラ75よりも下流であって,再搬送路12と正送路11との再合流箇所よりも上流側の位置に,再搬送センサ64が配置されている。また,正送路11の搬送方向上,排紙ローラ76の上流側直前の位置に,排紙センサ65が配置されている。なお,画像形成部10内に配置されているセンサはこれらに限るものではない。
【0028】
[プリンタの電気的構成]
続いて,プリンタ100の電気的構成について説明する。プリンタ100は,図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(不揮発性RAM)34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース36とを備えている。また,ASIC35は,画像形成部10,画像読取部20,操作パネル40等と電気的に接続されている。
【0029】
ROM32には,プリンタ100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0030】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,プリンタ100の各構成要素(例えば,露光装置53の点灯タイミング,正送路11や再搬送路12を構成する各種ローラの駆動モータ(不図示),画像読取部20を構成するイメージセンサユニットの移動用モータ(不図示))を,ASIC35を介して制御する。
【0031】
ネットワークインターフェース36は,インターネット等のネットワークに接続され,プリンタ100用のプリンタドライバが組み込まれた外部装置との接続を可能にしている。プリンタ100は,ネットワークインターフェース36を介して印刷ジョブのやりとりを行うことができる。
【0032】
[両面印刷搬送処理]
[第1の形態]
続いて,プリンタ100の両面印刷搬送処理(検知部,判断部,制御部の一例)について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。プリンタ100は,例えば,外部装置から送られて来た両面印刷の印刷ジョブを受信したことを契機に,あるいは操作パネル40にて両面印刷が指示されたことを契機に,両面印刷搬送処理を実行する。なお,以下の説明では,両面印刷動作中に手差し口93から用紙が挿入されたときの動作を中心に説明し,印刷動作については説明を省略する。
【0033】
まず,給紙カセット91から用紙の給紙を開始する(S101)。用紙が正送路11に搬入されたことは,給紙センサ61からの信号によって判断できる。なお,以下の説明では,S101にて両面印刷用に給紙カセット91から給紙された用紙を「両面用紙」とし,手差送路13から挿入された用紙を「手差用紙」とする。
【0034】
次に,給紙センサ61からの信号を基に,正送路11に搬入された両面用紙の用紙サイズを取得する(S102)。例えば,給紙センサ61からの信号を基に,両面用紙の先端の通過から後端の通過までに要した時間を取得し,その時間と用紙搬送速度とを基に用紙搬送方向の用紙長を算出する。
【0035】
次に,両面用紙の給紙開始からその両面用紙が反転動作を開始するまでの間,手差送路13から用紙が挿入されたか否かを判断する(S103)。両面用紙の反転動作の開始は,両面用紙の後端が再搬送路12に搬送されたことによって判断できる。再搬送路12への両面用紙の搬送は,例えば,レジ後センサ63による両面用紙の後端検出からの経過時間によって判断できる。再搬送路12に搬送された両面用紙は,プロセス部50を通過したことで片面側に印刷が行われた状態である。また,手差送路13からの用紙挿入は,例えば,レジ前センサ62による,予期しないタイミングでの用紙検出によって判断できる。すなわち,両面用紙の検出は,給紙センサ61の検出タイミングや再搬送センサ64の検出タイミングからの経過時間によって予期できるが,手差送路13から挿入された用紙の検出タイミングは予期できない。
【0036】
両面用紙が反転動作を開始するまでの間は,両面用紙は正送路11内を移動中と見做すことができる。そのため,両面用紙が反転動作を開始するまでの間に(S104:NO),手差用紙が検出された場合には(S103:YES),両面用紙および手差用紙の両用紙が衝突する可能性が高い。そのため,両用紙の搬送を停止し,エラーメッセージを操作パネル40の表示部41に表示する(S191)。その後,本処理を異常終了する。
【0037】
次に,手差用紙の挿入が無く,両面用紙が反転動作を開始した後は(S104:YES),両面用紙の先頭が,再搬送路12中の,用紙サイズごとに決められている所定の位置を通過するまでの間,手差送路13から用紙が挿入されたか否かを判断する(S105)。この所定の位置は,手差用紙の挿入を許容する限界位置であり,用紙サイズによってその位置は異なる。そのため,プリンタ100では,あらかじめ用紙サイズごとに限界位置が定められており,S102によって取得した用紙サイズに応じて所定の位置を決定する。そして,所定の位置への両面用紙先端の到達は,例えば,再搬送センサ64に
よる,両面用紙の先端検出からの経過時間によって判断できる。この場合,再搬送センサ64の位置は,所定の位置よりも上流側となる。
【0038】
両面用紙が反転動作を開始してから所定の位置に到達するまでの間は,両面用紙が再搬送路12内を移動中である。そのため,両面用紙が反転動作を開始してから所定の位置に到達するまでの間に,手差用紙が検出された場合には,手差用紙の搬送が両面用紙の搬送に影響する可能性は低い。
【0039】
そこで,両面用紙が反転動作を開始してから所定の位置に到達するまでの間に(S106:NO),手差用紙が検出された場合には(S105:YES),手差用紙をプロセス部50に向けて搬入する(S121)。なお,この手差用紙の搬入は,両面印刷動作中の異例な搬送であり,この手差用紙には印刷を行わない。その結果,白紙状態の手差用紙を排紙する(S122)。
【0040】
また,両面印刷動作も継続しており,両面用紙を正送路11に戻し,その両面用紙をプロセス部50に搬入する(S123)。そして,両面用紙の他面に印刷を行う。その後,両面印刷済みの両面用紙を排紙する(S124)。
【0041】
一方,手差用紙の挿入が無く,両面用紙が所定の位置に到達した後は(S106:YES),両面用紙が再度プロセス部50を経由して排紙されるまでの間,手差送路13から用紙が挿入されたか否かを判断する(S107)。両面用紙の排紙完了は,例えば,排紙センサ65による両面用紙の後端検出からの経過時間によって判断できる。
【0042】
両面用紙が所定の位置に到達してから排紙されるまでの間は,両面用紙が再び正送路11内を移動中であると見做すことができる。そのため,両面用紙が所定の位置に到達してから排紙されるまでの間に(S108:NO),手差用紙が検出された場合には(S107:YES),両面用紙および手差用紙の両用紙が衝突する可能性が高い。そのため,両用紙の搬送を停止し,エラーメッセージを操作パネル40の表示部41に表示する(S191)。その後,本処理を異常終了する。
【0043】
両面用紙の排紙完了後(S108:YES),あるいはS124の後,未印刷のページがあるか否かを判断する(S109)。未印刷のページがある場合には(S109:YES),S101に戻り,新たな両面用紙の給紙を開始する。一方,未印刷のページがない場合には(S109:NO),本処理を正常終了する。
【0044】
図6は,両面用紙が給紙されてから排紙されるまでの経過を示すタイムチャートである。第1の形態の両面印刷搬送処理では,両面用紙が再搬送路12へ搬入されてから再搬送路12中の所定の位置に到達するまでの間(図6中の続行期間)は,手差用紙の挿入を許容している。そのため,この続行期間内に挿入された手差用紙については,装置内に取り込み,プロセス部50を経由して排紙する。すなわち,第1の形態の両面印刷搬送処理では,続行期間の間に手差用紙が挿入された場合には,両面印刷動作を継続する。この場合,両面印刷動作の連続性を維持できる。
【0045】
[第2の形態]
続いて,プリンタ100の両面印刷搬送処理(検知部,判断部,制御部の一例)の他の形態について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。第2の形態では,両面印刷動作中に手差用紙が挿入されたとしても,所定の条件を満たす際には手差用紙に印刷を行う。この点,手差用紙を必ず白紙排紙する第1の形態とは異なる。
【0046】
なお,本形態は,両面用紙が反転動作を開始してから再搬送路12中の所定の位置に到達するまでの間(続行期間)に,手差用紙が挿入された場合(S105:YES)の応用例である。そのため,図7は,図5中のAからBまでの部分の変形例となっている。なお,第1の形態と同じ処理については,第1の形態と同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0047】
まず,現在再搬送路12を移動中の両面用紙の他面に印刷される予定のページ(「現ページ」とする)に後続するページ(「次ページ」とする)の印刷準備が完了しており,かつその次ページが非両面印刷(つまり片面のみの印刷)であるか否かを判断する(S120)。なお,ここでいう次ページは,搬送中の両面用紙への両面印刷が完了した後に給紙される用紙に印刷されるページであればよく,搬送中の両面用紙に印刷されるページの次のページに限らず,例えば最終ページであってもよい。また,印刷準備の完了は,例えば,印刷対象ページの印刷データの展開が完了したか否かによって判断できる。
【0048】
すなわち,S120では,手差用紙が検知された時点(S105:YES)で,次ページの印刷を開始できる状態にあるか否かを判断する。さらには,その次ページは,片面のみに印刷を行う片面印刷であるか否かを判断する。
【0049】
次ページの印刷準備が完了しており,かつ次ページが片面印刷である場合には(S120:YES),手差用紙をプロセス部50に向けて搬入する(S141)。このとき,次ページの印刷が可能であることから,搬入された手差用紙に次ページの印刷を行う。その後,片面印刷済みの手差用紙を排紙する(S142)。
【0050】
その後,両面用紙を正送路11に戻し,両面用紙をプロセス部50に搬入する(S143)。そして,両面用紙の他面に現ページの印刷を行う。その後,両面印刷済みの両面用紙を排紙する(S144)。
【0051】
一方,次ページの印刷準備が完了していない,または次ページが両面印刷である場合には(S120:NO),第1の形態と同様に,手差用紙を白紙排紙し(S121,S122),両面用紙の他面に現ページの印刷を行ってその両面用紙を排紙する(S123,S124)。
【0052】
すなわち,第2の形態の両面印刷搬送処理では,次ページの印刷準備が済んでおりかつその次ページが両面印刷でなければ,手差用紙に対する印刷を完了可能と判断し,その手差用紙にその次ページの印刷を行う。これにより,手差用紙の搬送が無駄ではなくなるとともに,次ページの印刷物を早期に取得できることから印刷ジョブ全体の処理時間を短縮できる。
【0053】
以上詳細に説明したように本実施の形態のプリンタ100は,両面用紙の反転搬送が開始された後からその両面用紙が再搬送路12の所定の位置を通過するまでの期間を両面印刷動作の続行期間としている。そして,両面印刷動作中に手差用紙が挿入されたとしても,その手差用紙が挿入されたタイミングが,続行期間内であれば両面印刷動作を継続し,続行期間外であれば両面印刷動作を停止している。すなわち,プリンタ100は,手差用紙の挿入タイミングが続行期間外(S103:YES,もしくはS107:YES)であれば,両面印刷動作を停止して用紙ジャムや用紙のオーバーラップを回避する。一方,続行期間内(S105:YES)であれば,手差用紙を取り込んで排紙するとともに両面印刷動作の途中の両面用紙に関して両面印刷を完了させる。つまり,プリンタ100は,手差送路13に用紙が挿入されても,一部の期間内であれば印刷を継続しており,印刷処理を効率よく完了することが期待できる。
【0054】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,プリンタに限らず,複合機,FAX装置等,両面印刷機能を備えるものであれば適用可能である。また,画像形成部の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0055】
また,実施の形態では,手差送路13中に,搬送手段(搬送ローラ等)が存在しないが,搬送手段を配置してもよい。すなわち,手差送路13中に,手差用紙の挿入を補助する搬送手段を配置してもよい。
【0056】
また,実施の形態では,両面用紙が反転動作を開始してから再搬送路12中の所定の位置に到達するまでを続行期間としているが,続行期間はこれに限るものではない。すなわち,両面印刷が続行可能と予想される期間であればよく,その期間は搬送不具合となる可能性の許容量や再搬送路の配置によって適宜決めればよい。例えば,再搬送路12中の所定の位置は,用紙サイズによって可変とせず,固定位置であってもよい。また,再搬送路12の合流箇所と,手差送路13の合流箇所とが離れている場合には,所定の位置を正送路11内に設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 画像形成部
11 正送路
12 反転送路
13 手差送路
14 正送路と手差送路との合流箇所
20 画像読取部
50 プロセス部
100 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面印刷を行う際に用紙を搬送する両面搬送路と,
前記両面搬送路と合流し,手動挿入される用紙を前記両面搬送路との合流箇所に向けて搬送する手差し経路と,
前記手差し経路に用紙が挿入されたことを検知する検知部と,
両面印刷動作中に前記手差し経路に用紙が挿入されたとしても両面印刷動作の続行が可能と定めた期間である続行期間内で,前記検知部が用紙を検知したか否かを判断する判断部と,
前記判断部が肯定判断した場合には,前記両面搬送路に搬送されている用紙への両面印刷動作を継続し,否定判断をした場合には,前記両面搬送路に搬送されている用紙への両面印刷動作を停止する制御部と,
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷装置において,
前記制御部は,前記判断部が肯定判断した場合には,前記手差し経路に挿入された用紙に対して,前記両面搬送路に搬送されている用紙に後続する用紙に対応する画像の印刷を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載する印刷装置において,
前記制御部は,前記手差し経路に挿入された用紙に対する印刷を完了できる場合に当該用紙に印刷を行い,印刷を完了できない場合には,当該用紙に印刷を行わず,当該用紙を反転することなく排紙することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載する印刷装置において,
前記手差し経路に挿入された用紙に対する印刷を完了できる場合とは,前記両面搬送路に搬送されている用紙に後続する用紙に対応する印刷が片面印刷の場合であることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載する印刷装置において,
前記制御部は,前記判断部が肯定判断した場合,前記手差し経路に挿入された用紙に対して印刷を行わず,当該用紙を反転することなく排紙することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記続行期間とは,前記両面搬送路に搬送されている用紙が,前記両面搬送路中の用紙を反転させる再搬送路に搬入された後から,当該用紙が前記合流箇所よりも用紙搬送方向の上流側であって用紙サイズに応じて決定される位置を通過するまでの期間であることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−93160(P2011−93160A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248137(P2009−248137)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】