説明

印刷装置

【課題】媒体支持部の温度を効果的に低下させることのできる印刷装置を提供する。
【解決手段】本発明の印刷装置は、連続紙を支持する媒体支持面から裏面に貫通する複数の吸引孔と、複数の吸引孔と外部とを連通させる連通孔と、が形成された媒体支持部と、連続紙に対して印刷処理を施す印刷処理部と、裏面側に設けられ、複数の吸引孔に連通する圧力室と、印刷処理の実行中、複数の吸引孔を介して媒体支持面上に配置された連続紙に対して吸着力を付与する吸引機構と、印刷処理の実行中、媒体支持部を加熱する加熱装置と、吸引機構を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、印刷処理以外のときに印刷処理時の出力よりも高い出力で吸引機構を駆動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、普通紙を代表とする様々な記録媒体に対して印刷可能な印刷装置として、インクジェット式印刷装置が知られている。インクジェット式印刷装置は、記録ヘッドの記録媒体に対向する面に設けられたノズルから、記録媒体に対してインクを吐出し、記録媒体上に着弾させて浸透もしくは定着させることにより、記録媒体上に画像等を形成する装置である。
【0003】
このような印刷装置では、印刷物の形成制度や印刷速度の向上を図るべく、連続紙を支持するプラテン等に加熱装置を設けたものが提案されている。
このプラテン温度(加熱温度)を保つために、プラテンとして、十分な熱容量を持った金属板を採用している。例えば、25mmほどの厚みのある金属板を使用する場合、設定温度まで昇温させるまで時間はかかるが温度降下が緩やかであるため、一旦設定温度に達するまで加熱すればその温度を保持しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288427公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、記録媒体としてロール紙を用いる場合は、印刷処理の後に実行されるメンテナンス処理が終了するまでロール紙の搬送が停止されるので、加熱されたプラテン上にロール紙が載置されたままとなる。長時間熱に晒されることによってロール紙にしわ等が生じるおそれがある。このため、印刷処理が終了するのと同時にプラテン温度を低下させたいが、厚みのある熱容量の大きい金属板を採用したことから、自然冷却されるまで時間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、媒体支持部の温度を効果的に低下させることのできる印刷装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷装置は、連続紙を支持する媒体支持面から裏面に貫通する複数の吸引孔と、前記複数の吸引孔と外部とを連通させる連通孔と、が形成された媒体支持部と、前記連続紙に対して印刷処理を施す印刷処理部と、前記裏面側に設けられ、前記複数の吸引孔に連通する圧力室と、前記印刷処理の実行中、前記複数の吸引孔を介して前記媒体支持面上に配置された前記連続紙に対して吸着力を付与する吸引機構と、前記印刷処理の実行中、前記媒体支持部を加熱する加熱装置と、前記吸引機構を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記印刷処理以外のときに前記印刷処理時の出力よりも高い出力で前記吸引機構を駆動させることを特徴とする。
【0008】
これによれば、媒体支持部には複数の吸引孔と外部とを連通させる連通孔が形成されているので、印刷処理以外(メンテナンス処理時など)のときに吸引機構を駆動させると、連通孔を介して各吸引孔内に外気(冷気)を導入することができる。これにより、印刷処理時に加熱装置によって加熱された媒体支持部を強制的に冷却させることができる。よって、印刷処理以外のときに媒体支持部上で停止された連続紙が長時間熱に晒されることでシワが生じてしまうのを防止することができる。また、この構成であれば、媒体支持部の内側から冷却することが可能なため、加熱装置として媒体支持部の裏面側にフィルム状のヒーターを設けることができる。このような加熱冷却方法によって媒体支持部の温度応答性を高めることができるため、たとえば、印刷処理からメンテナンス処理へと迅速に移行することができる。
【0009】
また、前記連通孔は、前記複数の吸引孔どうしを互いに連通させるとともに、前記媒体支持部における前記連続紙が載置される領域以外の領域に開口する構成としてもよい。
これによれば、媒体支持部上に連続紙が載置された状態であっても、媒体支持部に形成された複数の吸引孔に外気(冷気)を導入することができる。
【0010】
また、前記連通孔の開口を閉塞する閉塞部が設けられている構成としてもよい。
これによれば、閉塞部によって連通孔の開口を閉塞することにより、吸引孔を介して、媒体支持部上に載置された連続紙に対して効果的に吸着力を付与することができる。
【0011】
また、前記裏面における前記複数の吸引孔が形成された領域以外の領域に、冷媒を流動させる冷却管が敷設されている構成としてもよい。
これによれば、冷却管内を流動する冷媒によって媒体支持部の裏面側から直接冷却することができるので、冷却効率が向上して短時間で冷却できる。
【0012】
また、前記冷却管に接続され、当該冷却管に対して一定の温度で前記冷媒を供給する循環機構を備える構成としてもよい。
これによれば、循環機構により、媒体支持部を冷却することで温められた冷媒を冷やして、再び媒体支持部側へと供給することにより、媒体支持部を所望の温度まで冷却させることができる。
【0013】
本発明の印刷装置は、連続紙を支持する媒体支持面から裏面に貫通する複数の吸引孔が形成された媒体支持部と、前記連続紙に対して印刷処理を施す印刷処理部と、前記裏面側に設けられ、前記複数の吸引孔に連通する圧力室と、前記印刷処理の実行中、前記複数の吸引孔を介して前記媒体支持面上に配置された前記連続紙に対して吸着力を付与する吸引機構と、前記印刷処理の実行中、前記媒体支持部を加熱する加熱装置と、前記吸引機構を駆動する制御装置と、を備え、前記圧力室には、前記媒体支持部を天面とする内部空間と外部とを連通させる開口が形成されていることを特徴とする。
【0014】
これによれば、吸引機構の駆動により、圧力室に形成された開口を介して内部空間内に外気が導入されるため、加熱装置によって加熱された媒体支持部を裏面側から冷却させることができる。よって、印刷処理以外の時に媒体支持部上で停止された連続紙が長時間、熱に晒されることでシワが生じるのを防止することができる。また、この構成であれば、媒体支持部に外気導入用の孔を形成するよりも、大きな開口を形成することが可能なため、多くの外気を吸引することが可能である。また、媒体支持部に連通孔を形成するよりも圧力室に開口を形成する方が簡単である。
【0015】
また、前記圧力室は、前記内部空間を少なくとも第1室と第2室とに区画するとともに前記第1室と前記第2室とを部分的に連通させる連通孔を有する仕切部を備え、前記開口が、前記媒体支持部を天面とする前記第1室と外部とを連通させるようにして形成されている構成としてもよい。
【0016】
これによれば、媒体支持部の裏面側に当該媒体支持部を天面とする第1室を形成することができる。内部空間を2つの空間に分離することによって、開口を介して吸入した外気を圧力室内で拡散させることなく第1室のみに流動させることが可能である。すなわち、第1室内に導入された外気(冷気)が媒体支持部の裏面に沿って流動することになり、媒体支持部の裏面全体を効率よく冷気に晒すことができる。このため、より短時間で媒体支持部を冷却することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るインクジェットプリンターの概略構成を示す側面図。
【図2】インクジェットプリンターの概略構成を示す上面図。
【図3】媒体支持テーブルの概略構成を示す図であって、図2のA−A線に沿う断面図。
【図4】(a)は、閉塞部による連通孔の閉塞状態を示す図、(b)は、連通孔の開放状態を示す図。
【図5】第2実施形態の媒体支持テーブルの概略構成を示す平面図。
【図6】図5のB−B線に沿う断面図。
【図7】第3実施形態の媒体支持テーブルの概略構成を示す断面図。
【図8】第4実施形態の媒体支持テーブルの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンターの概略構成を示す側面図である。図2は、インクジェットプリンターの概略構成を示す上面図である。
図1に示すように、インクジェットプリンター(印刷装置)1は、給送部(媒体搬送部)10と、記録部(印刷処理部)20と、排出部40とを備えている。
給送部10は、連続紙の一例であるロール紙(連続紙)Rを記録部20へ給送することができるように設けられている。具体的には、ロール媒体ホルダ11を有し、ロール媒体ホルダ11がロール状のロール紙Rを保持している。そして、ロール状のロール紙Rを回動させることにより、搬送方向下流側(Y軸の矢印方向)の記録部20へ、第1ローラ12を介して、ロール状態を解いた状態のロール紙Rを給送することができるように構成されている。
【0020】
記録部20は、給送部10から送られたロール紙Rに対して液体の一例であるインクを吐出して記録を実行することができるように設けられている。
具体的には、記録部20は、キャリッジ21と、記録ヘッド22と、媒体支持テーブル24と、カール押さえ部30等とを有している。
【0021】
キャリッジ21は、媒体支持テーブル24と対向し、不図示の第2ガイド軸に案内されながら、不図示のキャリッジモーターの動力によって、ロール紙Rの搬送方向Yに移動することができるように設けられている。
なお、図1では、キャリッジ21が媒体支持テーブル24より搬送方向上流側へ退避した状態を示している。
【0022】
また、記録ヘッド22は、キャリッジ21に設けられ、搬送方向Yにおいてキャリッジ21と一体に移動することができるように設けられている。
さらに、記録ヘッド22は、幅方向Xにおいて、キャリッジ21に対して相対的に移動することができるように構成されている。具体的には、不図示の第2ガイド軸に案内されながら、不図示の記録ヘッドモーターの動力によって、幅方向Xに移動することができるように設けられている。
【0023】
すなわち、記録ヘッド22は、媒体支持テーブル24と対向する範囲において、搬送方向であるY方向(副走査方向)および幅方向であるX方向(主走査方向)へ移動することができるように構成されている。
そして、記録ヘッド22における媒体支持テーブル24と対向する面に設けられたノズル列23からインクを吐出することにより、ロール紙Rに記録を実行することができる。
【0024】
媒体支持テーブル(媒体吸着支持装置)24は、ロール紙Rをその裏面側から支持することができるように設けられている。媒体支持テーブル24は、ロール紙Rを支持する媒体支持面PLを有するプラテン(媒体支持部)25と、プラテン25の裏面側に配置されたプラテンヒーター(加熱装置)51と、プラテンヒーター51の裏面51b側に配置された圧力室27と、圧力室27に連結された吸引機構(吸引装置)28とにより構成されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態のプラテン25は厚さ25mmのアルミニウム板からなり、ロール紙Rを支持する媒体支持面PLの略全体に亘って、例えば内径が数mm程度の貫通孔からなる吸引孔26が複数形成されている。具体的には、内径2〜3mmの吸引孔26が、プラテン25の長手方向であるY方向(ロール紙Rの搬送方向)と、幅方向であるX方向(ロール紙Rの幅方向)とに、それぞれ複数ずつ配列形成されている。
【0026】
プラテン25の短手方向(X方向)に列をなす複数の吸引孔26どうしは、同方向に延在する連通孔36によって互いに連通した状態となっている。連通孔36は、プラテン25の厚さ方向中央部分に形成されているとともに、プラテン25の長手方向(Y方向)に所定の間隔をおいて形成されており、具体的には、水平面(XY平面内)内に多数形成された吸引孔26のY方向におけるピッチに応じて形成されている。
ここで、X方向に延在する連通孔を設けて、Y方向に並ぶ複数の連通孔36同士もさらに連通させる構成としても良い。なお、連通孔36の構成は上記したものに限らない。
【0027】
プラテン25の裏面25cには、プラテン25の媒体支持面PL上のロール紙Rを加熱するプラテンヒーター51が設けられており、上記吸引孔26はプラテンヒーター51の厚さ方向を貫通して形成されている。このプラテンヒーター51は、印刷処理の実行に伴い、ロール紙Rを加熱してその表面に着弾されたインクの乾燥を促進するためのものである。具体的には、プラテンヒーター51は一例として不図示のニクロム線を有している。そして、通電されることにより、ニクロム線自体が発熱し、アルミニウム板からなるプラテン25の媒体支持面PL上のロール紙Rに対して熱を伝導することができる。プラテンヒーター51は、制御装置CONTにより制御される。
【0028】
吸引機構28は、吸引孔26を介して圧力室27の内部の空気を吸引し、圧力室27の内部空間K内を負圧にするものである。具体的には、軸流ファン29により圧力室27の内部の空気を吸引するように構成されている。これにより、プラテン25に形成された多数の吸引孔26を介して外気が吸引され、プラテン25上に載置したロール紙Rを媒体支持面PLに吸着保持するようになっている。この吸引機構28は、制御装置CONTによってその駆動が制御され、印刷処理時とプラテン冷却処理時とで出力を変化させる。
【0029】
カール押さえ部30は、プラテン25上に載置されたロール紙Rの側端Raを、媒体支持面PLに向けて押さえることにより、ロール紙Rの側端Raがカールしてプラテン25から離間する、所謂浮き上がりを防止するものである。
具体的には、カール押さえ部30は、柔軟性および可僥性を有した一対の帯状フィルムからなるカール押さえ部材31を備えている。各カール押さえ部材31は、プラテン25のX方向の両端側(ロール紙Rの幅方向の両端)において、Y方向(ロール紙Rの搬送方向)に沿ってY方向の全域に亘って配置される。
なお、カール押さえ部材31は、例えば厚みが0.5mm以下、幅が30mm程度である。また、素材としては、例えばポリイミド等を用いることができる。
【0030】
各カール押さえ部材31の両端(Y方向の端部)は、それぞれ、カール押さえ取付部35に連結されている。カール押さえ取付部35は、それぞれ、プラテン25の幅方向(X方向)とほぼ同一長さを有する部材であって、プラテン25の長手方向(Y方向)の端部から離間した位置に、幅方向に沿って、インクジェットプリンター1の基体部(不図示)に固定されている。
【0031】
また、カール押さえ取付部35は、カール押さえ部材31の両端を、それぞれX方向に沿って移動可能に連結している。これにより、各カール押さえ部材31は、その両端をカール押さえ取付部35のガイド軸35aに沿って移動させることで、プラテン25の幅方向(X方向)の任意位置において、プラテン25の長手方向(Y方向)に平行に配置される。したがって、プラテン25の上面に載置したロール紙Rの幅方向(X方向)の両端を、長手方向(Y方向)の全域に亘って押さえることが可能となっている。
【0032】
排出部40は、巻き取りローラ41を有し、第2ローラ13を介して、記録部20から送られたロール紙Rを、巻き取りローラ41に巻き取るように構成されている。
なお、排出部40は、記録部20から送られたロール紙Rを巻き取りローラ41で巻き取る際に、ロール紙Rの撓みを取り除くテンショナーを備えることもある。
【0033】
図3は、媒体支持テーブルの概略構成を示す図であって、図2のA−A線に沿う断面図である。図4(a)は、閉塞部による連通孔の閉塞状態を示す図、(b)は、連通孔の開放状態を示す図である。
図3に示すように、プラテン25の両側面25b,25bに開口する連通孔36の開口36a,36aは、閉塞部38,38によってそれぞれ閉塞可能であり、開口36a,36aを閉塞部38,38により閉塞することで、複数の吸引孔26を介して外気を吸引できる(図4(a))。すなわち、閉塞部38によって連通孔36の各開口36aを閉塞することにより、吸引機構28が低出力であっても、吸引孔26を介して外気を吸引し、プラテン25上に載置されたロール紙Rに対して効果的に吸着力を付与することができるため、省電力化が可能である。
【0034】
また、本実施形態では連通孔36の開口36a,36aがプラテン25の両側面25b,25bに設けられているが、これに限られることはなく、プラテン25におけるロール紙Rが載置される領域以外の領域に設けることができる。これにより、プラテン25上にロール紙Rが載置された状態で、連通孔36を介して複数の吸引孔26に外気(冷気)を効率よく導入することができるため、プラテン25を効果的に冷却できる。
【0035】
各閉塞部38は、プラテンの側面25bの略全体を覆う大きさを有しており、これによってY方向に並ぶ全ての連通孔36の一方の開口36aどうしを一度に閉塞することができる。
なお、プラテン25に形成された連通孔36ごとに一方の開口36aを閉塞する所定の大きさを有した閉塞部を備えるようにしてもよいし、複数の連通孔36ごとに、これらの一方の開口36a同士を閉塞する所定の大きさを有した閉塞部を複数備えるようにしてもよい。
【0036】
また、閉塞部38,38を開いて各連通孔36の両方の開口36a,36aを開放状態にすることにより(図4(b))、吸引孔26からだけでなく連通孔36を介して多くの外気を吸引することが可能となる。ここで、吸引孔26に対する連通孔36の大きさは、プラテン25の大きさや吸引孔26の数等に応じて設定される。例えば、吸引孔26よりも内径の大きい連通孔36を形成することにより、吸引機構28によって圧力室27の内部空間K内に多くの外気を迅速に導入させることができる。つまり、吸引孔26よりも連通孔36を介して多くの外気がプラテン25内に吸引されることになるため、媒体支持面PL上にロール紙Rが載置された状態でプラテン25の冷却を行うことが可能である。
ここで、プラテン25の冷却を行う際には、印刷処理時よりも吸引機構28の出力を高めることで、印刷処理時と同様の吸着力でプラテン25上にロール紙Rを吸着保持させることができる。
【0037】
上述したように本実施形態では、媒体支持面PL上に載置されたロール紙R上のインクの乾燥を促進させるために、プラテン25の裏面側に設けられたプラテンヒーター51によってプラテン25全体を加熱しながら印刷処理が実行される。印刷ジョブ間の非印刷期間中あるいは記録部20に対するメンテナンス処理期間中はロール紙Rの搬送が停止されるため、加熱されたプラテン25に停止状態のロール紙Rの一部領域が長時間接することになる。特に、本実施形態のプラテン25には、プラテン温度を所定温度に保つために熱容量の大きい25mmの厚さを有するアルミニウム板を採用しているため、プラテン25が自然冷却するには時間がかかり、高温のプラテン25に接しているロール紙Rにシワが生じてしまう虞がある。
【0038】
そこで本実施形態のインクジェットプリンター1は、加熱されたプラテン25を強制的に冷却させることができるようになっている。上述したように、プラテン25に形成された多数の吸引孔26同士が連通孔36によって互いに連通した状態となっているので、各連通孔36の開口36a,36aが開放された状態において吸引機構28の軸流ファン29を駆動させることにより、複数の連通孔36を介してプラテン25内に外気(冷気)を導入することができる。つまり、各連通孔36内を外気(冷気)が流動することによって当該プラテン25が内側から冷却され、プラテン温度を急速に低下させることが可能となっている。
【0039】
したがって、印刷処理中のみプラテンヒーター51によってプラテン25を所定温度まで加熱してインクの乾燥を促進させることで乾燥ムラの発生を防止し、印刷処理終了後、吸引機構28の出力を高めて加熱されたプラテン25を強制的に冷却することで、プラテン25上に載置された停止状態のロール紙Rが長時間熱に晒されることによってシワになるのを防止することができる。このように、加熱されたプラテン25を自然冷却させるよりも短時間で冷却させることができるため、ロール紙Rを良好な状態で保つことができる。
【0040】
また、本実施形態の構成であれば、プラテン25の内側から冷却することが可能なため、加熱装置としてプラテン25の裏面25c側にフィルム状のプラテンヒーター51を設けることができる。
【0041】
このように本実施形態では、プラテン25の裏面25cから直接加熱することができるとともにプラテン25の内側から直接冷却することができる。このような加熱冷却方法によってプラテン温度の応答性を高めることが可能となり、印刷処理からメンテナンス処理へと迅速に移行することができる。
【0042】
以下、本発明に係るインクジェットプリンターの各実施形態について、媒体支持テーブルの構成を中心に述べる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る媒体支持テーブルの概略構成について述べる。
図5は、第2実施形態の媒体支持テーブルの概略構成を示す平面図、図6は、図5のB−B線に沿う断面図である。
図5及び図6に示すように、本実施形態ではプラテンの冷却手段としてプラテン25の裏面25c側に冷却管60が設けられている。冷却管60は、プラテン25の裏面全体に亘って蛇行するように敷設され、冷媒61の流路として機能する。この冷却管60の両端側は外部の循環機構65に接続されており、当該循環機構65を介して、水などの冷媒61が冷却管60内を循環(還流)するように構成されている。循環機構65は、冷却管60へ供給する冷媒61の温度が常に一定となるように温度を制御するもので、冷却管60(プラテン25側)から流動してきた温まった冷媒61を冷やして再び冷却管60(プラテン25側)へと送り込む。
【0044】
冷却管60の敷設状態は上記したものに限ることなく、プラテン25の裏面全域に亘って冷媒61が流動する経路を形成することができればよい。このとき、図5に示すように、プラテン25に形成された多数の吸引孔26を避けるようにして冷却管60を敷設する。
【0045】
また、プラテン25には外部加熱装置(加熱装置)63が接続されており、当該外部加熱装置63から供給されるエネルギーによってプラテン25が所定温度まで加熱されて保持される。
【0046】
制御装置CONTは、印刷処理が終了すると、循環機構65から冷却管60への冷媒61の供給を開始して、プラテン25の温度が所定温度(ロール紙Rがプラテン25に長時間接した状態でもシワにならない温度)に低下するまで、冷媒61を循環させる。
【0047】
本実施形態の構成によれば、プラテン25の裏面25cに設けた冷却管60内で所定温度の冷媒61を循環させることによって、プラテン25を直接冷却することができる。また、外気温度よりも低い温度の冷媒61を循環させることで冷却効率が向上し、プラテン温度を短時間で低下させることが可能となり、プラテン25を所望の温度まで効率よく冷却することが可能である。
【0048】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る媒体支持テーブルの概略構成について述べる。
図7は、第3実施形態の媒体支持テーブルの概略構成を示す断面図である。
本実施形態の媒体支持テーブル24は、複数の吸引孔26が形成されたプラテン25と、壁部27bに開口27Aが形成された圧力室27、および吸引機構28を有して構成され、吸引機構28を駆動させることにより、開口27Aを介して圧力室27内に外気が吸引される。開口27Aは、圧力室27の各壁部27bに複数ずつ形成されており、例えば、平面視円形状を呈する。あるいは、各壁部27bの長さ方向に沿うスリット状の開口としてもよい。開口27Aの形状はこれらに限定されない。ここで、複数の開口27Aの開口面積が、複数の吸引孔26の開口面積よりも大きくなっているため、吸引機構28の駆動時には複数の開口27A側から多くの外気が吸引されることになる。
【0049】
このような構成とすることにより、圧力室27の天面を構成するプラテン25の裏面25c側が、圧力室27の壁部27bに形成された開口27Aを介して吸引された外気(冷気)に晒されて冷却されることになる。このため、プラテンヒーターは用いずにプラテン25の裏面25c側を露出させておき、当該プラテン25の加熱は外部加熱装置63により行うようにする。
また、本実施形態では圧力室27の壁部27bにこれを貫通する開口27Aを形成すればよく、上記第1実施形態のようにプラテン25の母材に対して吸引孔26とは貫通方向が異なる孔を複数形成する必要がないため、加工が容易となる。
【0050】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る媒体支持テーブルの概略構成について述べる。
図8は、第4実施形態の媒体支持テーブルの概略構成を示す断面図である。
本実施形態の媒体支持テーブルは、2重床構造をなす圧力室27を備えており、該圧力室27の内部空間が、底部42と平行に設けられた仕切部43によって2つの空間(第1室44A、第2室44B)に分離されている。圧力室27の壁部27bに形成される開口27Aは第1室44Aだけに連通する。そして、吸引機構28の駆動により、開口27Aを介して第1室44A内に吸引された外気は、まずプラテン25の裏面25cに沿って流動し、仕切部43に形成された貫通孔43Aを介して第2室44B側へと流動する。なお、仕切部43に形成する貫通孔43Aの数や平面形状等は特に限定しない。
【0051】
本実施形態では圧力室27の内部空間を2層構造としたため、プラテン25と仕切部43との間に形成される狭い空間(第1室44A)内に外気(冷気)が導入される。つまり、開口27Aを介して導入した外気を内部空間全体に拡散させることなく第1室44Aのみに流動させることができるので、第1室44A内に導入された外気がプラテン25の裏面25cに沿って流動することになる。これにより、プラテン25の裏面25c全体が満遍なく外気(冷気)に晒されるため、冷却ムラがなくなって効率よくプラテン25を冷却することが可能である。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
上述の実施形態においては、印刷装置として、インク等の液体を噴射する液体噴射装置を例にして説明したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に適用することができる。液体噴射装置が噴射可能な液体は、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体を含む。
【0054】
また、上述した実施形態において、印刷装置(液体噴射装置)から噴射される液体としては、インクのみならず、特定の用途に対応する液体を適用可能である。液体噴射装置に、その特定の用途に対応する液体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する液体を噴射して、その液体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、液体噴射装置は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した液体(液状体)を噴射する液体噴射装置に適用可能である。
【0055】
また、液体噴射装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…インクジェットプリンター(印刷装置)、K…内部空間、R…ロール紙(連続紙)、20…記録部(印刷処理部)、25…プラテン(媒体支持部)、25c,51b…裏面、26…吸引孔、27…圧力室、27A,36a…開口、28…吸引機構、30…カール押さえ部、36…連通孔、37…閉塞部、43,46…仕切部、44A…第1室、44B…第2室、51…プラテンヒーター(加熱装置)、60…冷却管、61…冷媒、63…外部加熱装置(加熱装置)、65…循環機構、PL…媒体支持面、CONT…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続紙を支持する媒体支持面から裏面に貫通する複数の吸引孔と、前記複数の吸引孔と外部とを連通させる連通孔と、が形成された媒体支持部と、
前記連続紙に対して印刷処理を施す印刷処理部と、
前記裏面側に設けられ、前記複数の吸引孔に連通する圧力室と、
前記印刷処理の実行中、前記複数の吸引孔を介して前記媒体支持面上に配置された前記連続紙に対して吸着力を付与する吸引機構と、
前記印刷処理の実行中、前記媒体支持部を加熱する加熱装置と、
前記吸引機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記印刷処理以外のときに前記印刷処理時の出力よりも高い出力で前記吸引機構を駆動させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記連通孔は、前記複数の吸引孔どうしを互いに連通させるとともに、前記媒体支持部における前記連続紙が載置される領域以外の領域に開口する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記連通孔の開口を閉塞する閉塞部が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記裏面における前記複数の吸引孔が形成された領域以外の領域に、冷媒を流動させる冷却管が敷設されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記冷却管に接続され、当該冷却管に対して一定の温度で前記冷媒を供給する循環機構を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
連続紙を支持する媒体支持面から裏面に貫通する複数の吸引孔が形成された媒体支持部と、
前記連続紙に対して印刷処理を施す印刷処理部と、
前記裏面側に設けられ、前記複数の吸引孔に連通する圧力室と、
前記印刷処理の実行中、前記複数の吸引孔を介して前記媒体支持面上に配置された前記連続紙に対して吸着力を付与する吸引機構と、
前記印刷処理の実行中、前記媒体支持部を加熱する加熱装置と、
前記吸引機構を駆動する制御装置と、を備え、
前記圧力室には、前記媒体支持部を天面とする内部空間と外部とを連通させる開口が形成されており、
前記制御装置は、前記印刷処理以外のときに前記印刷処理時のときよりも高い出力で前記吸引機構を駆動させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
前記圧力室は、
前記内部空間を少なくとも第1室と第2室とに区画するとともに前記第1室と前記第2室とを部分的に連通させる連通孔を有する仕切部を備え、
前記開口が、前記媒体支持部を天面とする前記第1室と外部とを連通させるようにして形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−223908(P2012−223908A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90999(P2011−90999)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】