説明

印刷装置

【課題】UV硬化性のインクを硬化させる紫外線照射手段として、UV−LEDを用いて良好にインクを硬化させ、UV−LEDの超寿命化・作業の高効率化を達成する。
【解決手段】紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型のインクをインクジェットヘッド12から吐出してメディア50に印刷を行うプリンタ10において、紫外線を照射するUV−LEDユニット20と、紫外線を集光させるシリンドリカルレンズ30とを有し、このシリンドリカルレンズ30がこれを用いずにUV−LEDユニット20から紫外線を照射した場合と比較して、紫外線の照射光の光強度を大きくしてインクの硬化に必要なエネルギーを低下させることにより、前述の低下させた前記インクの硬化に必要なエネルギー値の範囲に、紫外線の照射に使用する総エネルギー量を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性のインクを用いたインクジェット方式の印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線(UV)の照射により硬化するインク(紫外線硬化型のインク;UVインク)を用いた、インクジェットプリンタ等の印刷装置が知られている。このような印刷装置は、UVインクの優れたメディア特性のため、広く用いられるようになってきている。
【0003】
上述のような印刷装置において、UVインクを硬化させるための紫外線を発生する光源としては高圧水銀灯やメタルハライドランプ(MHランプ)等が広く知られ、使用されていた。しかし、高圧水銀灯は印刷装置において用いると消費電力が非常に大きくなり、また、発熱が大きいために耐熱性の低い素材の被記録媒体を用いることが困難になるおそれがある。
一方、上述の光源としてMHランプを使用する場合、高圧水銀灯と比べてエネルギー効率が良いという利点がある。しかし、UVインクを適切に硬化させるためには、例えば被記録媒体上でのエネルギー密度が4000〜10000mJ/cm程度となる強度で紫外線を照射する必要があるため、MHランプを用いる場合も結果として発熱が大きくなり、高圧水銀灯と同様に耐熱性の低い素材の被記録媒体を用いることが困難になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−358769号公報
【特許文献2】特開2005‐103852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題を解決するために、紫外線を発生する光源の一つとして、高圧水銀灯やMHランプと比べて小型であり、1灯あたりの消費電力が非常に小さいUV−LED(Light Emitting Diode)を用いることが考えられる。UV−LED素子の1灯あたりの出力エネルギーは、高圧水銀灯やMHランプに比べて小さいため、1個又は少数のUV−LEDを用いてUVインクに紫外線を照射しようとすると、インクを十分に硬化させることが難しい。そこで、安価で消費電力の小さいUV−LED等の光源を用いても、紫外線を集光することによりピーク光強度を増大させ、良好にUVインクを硬化させる技術も進められている(例えば、上記文献2)。
しかしながら、インクを十分に硬化させるためには、UV−LEDの照射に係る総エネルギー量(複数のUV−LED素子で構成されている場合、その積算光量)が多く必要となるため、寿命の問題や集光させることによる作業効率の点等、新たに生じる課題もあり、UV−LEDを使用する利点を十分に生かせるとはいえないものがあった。
そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、UV−LEDを用いてUVインクを硬化させるタイプの印刷装置の構成について、鋭意研究を行った。そして、UVインクに対して光の照射を行う際、UV−LEDの光強度を増加させるにつれ、UVインクの硬化に必要なエネルギー値を低下させることが可能であることを見出した。また、集光手段を用いてUV−LEDからの照射光を集光したとき、紫外線の照射に使用する総エネルギー量(UV−LED素子が複数用いられている場合、複数のUV−LED素子からの照射光の積算光量)を、上述の集光手段を用いない場合と比較して、低下させたUVインクの硬化に必要なエネルギー量の範囲に設定することが可能であり、課題の解消に有効であることを見出した。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
【0007】
(構成1)
紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型のインクをヘッドから吐出して被記録媒体に印刷を行う印刷装置において、紫外線を照射するUV−LEDと、UV−LEDから照射した紫外線を集光させる集光手段とを有し、集光手段は、この集光手段を用いずにUV−LEDから紫外線を照射した場合と比較して、紫外線の照射光の光強度を大きくしてインクの硬化に必要なエネルギーを低下させることにより、前述の低下させたインクの硬化に必要なエネルギー値の範囲に、紫外線の照射に使用する総エネルギー量を設定する。
【0008】
以上のような構成を取ることにより、たとえば、UV−LED1灯当たりの出力エネルギーを変えることなく、集光手段によりUV−LEDの照射光の光強度を強めることができる。そして、照射光の光強度が強まると、インクの硬化に必要なエネルギーが相対的に低下することが判っているため(後述)、その結果、紫外線の照射に使用する総エネルギー量を上述の低下させたエネルギー値の範囲に設定することができる。したがって、UV−LEDの動作に係る消費電力を低下させることができ、長寿命化を達成することが可能である。ここでいう消費電力とは、例えば、紫外線の照射に用いられているUV−LEDが、複数のUV−LED素子で構成されたユニット形式のものである場合、複数のUV−LED素子の消費電力の総和である。また、UV−LEDの照射光を集光手段により集光することで、光強度の制御ができるため、インクを硬化させるのに係る時間を短くして工程の短時間化・高効率化を図ることも可能である。
【0009】
(構成2)
上述の設定(低下させたインクの硬化に必要なエネルギー値の範囲に、紫外線の照射に使用する総エネルギー量を設定)は、UV−LEDとヘッドとが一体化した構成の印刷装置である場合、被記録媒体に記録されたインクに対し紫外線を照射する際に、集光手段を用いない場合と比較してヘッドの走行速度を速くすることにより行う。
【0010】
ヘッドの走行速度を相対的に速くすることにより、紫外線を照射する時間が短くなり、したがって照射される紫外線の総エネルギー量が少なくなるため、紫外線の照射光の量を低下させずにインクの硬化に必要なエネルギー値を低下させることができる。上述のエネルギー値の具体的な設定については、例えば使用するインクや集光手段の特性により、集光手段を用いない場合と用いる場合とで光強度と積算光量との関係を調べた上で、所望の最適な値に設定するものとする。そしてその値が得られるためのヘッドの走行速度に設定することにより、構成1と同様の効果を得ることができる。また、インクの硬化に係る時間が短くなるので、作業効率を向上させることができる。
【0011】
(構成3)
構成2と同様、上述の設定は、集光手段を用いない場合と比較して、UV−LEDからの紫外線の照度を低下させることにより行う。
【0012】
この紫外線の照度の低下は、具体的には、UV−LED素子の個数を削減したり、UV−LED素子の1灯当たりの出力エネルギーを低下させたりすることにより行う。このようにして個々のUV−LED素子から照射する紫外線の照度を低下させても、集光手段によりインクの硬化に必要な強度の光を得ることができ、かつ集光手段を用いない場合と比較してインクの硬化に必要なエネルギー値を低下させて、その結果、集光手段を用いない場合よりも紫外線の照射に係る総エネルギー量を低下させることができる。したがって、UV−LEDの動作に係る消費電力を低下させることができ、長寿命化を達成することが可能である。
【0013】
(構成4)
集光手段は、シリンドリカルレンズである。
シリンドリカルレンズは、断面の一方向に曲率を持ったレンズであり、UV−LEDからの照射光を線状に集光させることができる集光手段である。このような機能を有するシリンドリカルレンズを集光手段とすることにより、ピーク光強度を増大させ、良好にUVインクを硬化させることができるため、上述の構成1−構成3の効果を奏する印刷装置を容易に得ることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の印刷装置は、集光手段により、UV−LEDからの紫外線の照射光の光強度を強くしてインクの硬化に必要なエネルギー値を低下させ、この低下させたエネルギー値の範囲に、UV照射に係る総エネルギー量を設定することができる。
したがって、UV−LEDを用いた場合でも、短時間で十分なインクの硬化を望むことができ、しかもインクの硬化に係る総エネルギー量を低下させることができるので、紫外線照射手段の省エネルギー化・長寿命化・高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は実施の形態のプリンタ(印刷装置)の例を示す概略的な平面図である。
【図2】図2は、実施の形態のUV−LEDユニット及びシリンドリカルレンズの配置の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、シリンドリカルレンズにより紫外線が集光される様子の模式図である。
【図4】図4は、実施の形態のUV−LEDユニットを用いて紫外線を照射したときの、被記録媒体に照射された光強度の分布図である。
【図5】図5は、UV−LEDからの紫外線の光強度を段階的に変化させ、UVインクが完全に硬化するために照射した紫外線の積算光量(総エネルギー量)を求めた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るプリンタ(印刷装置)10の構成の一例を示す平面図である。プリンタ10は、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型のインクを用いて印刷を行うインクジェットプリンタである。また、プリンタ10は、メディア50を搬送しつつ印刷を行ういわゆる縦型のインクジェットプリンタであり、インクジェットヘッド12aとその両脇に備えられたUV−LEDユニット20とからなるヘッドユニット12を備えている。
UV−LEDユニット20は、インクジェットヘッド12aとは別に制御基板、LED用電源と接続されている。また、ヘッドユニット12はガイドレール15に沿ってY方向に走行する構成となっている。
【0017】
インクジェットヘッド12aは、メディア50に対してインクを吐出する印刷ヘッドである。本例において、インクジェットヘッド12aは、ヘッドユニット12と共にガイドレール15に沿って主走査方向(Y方向)へ移動しつつ、メディア50に対してインクを吐出する。
【0018】
尚、インクジェットヘッド12aは、主走査方向と直交する方向(X方向)に複数のノズルが並ぶノズル列を有しており、ノズル列の各ノズルから、インクを吐出する。本例において、インクジェットヘッド12aは、例えば、Y方向に並ぶ複数のノズル列を有する。また、プリンタ10がカラープリントを行う印刷装置である場合、プリンタ10は、必要に応じて、複数のインクジェットヘッド12aを備える。プリンタ10は、例えば4色〜8色、あるいはそれ以上の色数に対応するインクジェットヘッド12aを備えてもよい。
【0019】
ガイドレール15は、主走査方向(Y方向)へのヘッドユニット12の移動をガイドするレールである。その他、図示していないが、インクが吐出されるメディア50を支持するプラテンや、メディア50を搬送する送りローラ等も備えられている。送りローラはX方向へメディア50を搬送することにより、ヘッドユニット12を上述のX方向へ、メディア50に対して相対的に移動させる。また、プリンタ10は、送りローラとの間にメディア50を挟む押さえローラ等を更に備える構成であっても良い。
【0020】
次に、図2を用いてプリンタ10の紫外線の照射に係るUV−LEDユニット20につき説明をする。
図2(a)は、図1のヘッドユニット12に備えられたUV−LEDユニット20を、メディア50側から見た図である。また、図2(b)は図1のUV−LEDユニット20の、UV−LED素子20aを含む、例えば図2(a)のA−A線に沿った位置における断面図を概略的に示す図である。ここでは、UV−LED素子20aにシリンドリカルレンズ30の平面が対向するように配置している。シリンドリカルレンズ30の形状の例については図3を用いて後述する。
【0021】
図2において、紫外線を発生する光源である複数のUV−LED素子20aがメディア50の搬送方向(X方向)に設けられている。そして、インクが吐出されたメディア50に紫外線を照射することにより、インクを硬化させている。本例によれば、主走査方向へインクジェットヘッド12aを往復させつつ印刷を行う場合に、往路及び復路のそれぞれにおいて、適切に紫外線を照射することができる。また、これにより、紫外線硬化型のインクを用いた印刷動作を適切に行うことができる。
【0022】
また、30はこのUV−LED素子20aからの照射光を集光するシリンドリカルレンズ(集光手段)である。ここで、シリンドリカルレンズ30は、例えば図3に示すように全体としての概形は蒲鉾状であり、断面の一方向に曲率を有するレンズである。このような形状のレンズは周囲から入射したUV−LEDからの照射光を屈折させ、レンズから出射した光を線状に集光させることができる。指向性が強いUV−LEDは、集光しやすく光強度を高めやすいため、このような集光手段を用いて紫外線を集光させるのに適しているといえる。
【0023】
尚、UV−LEDユニット20を設ける位置は、例えば上記と異なる位置であってもよい。例えば、UV−LEDユニット20は、メディア50の搬送方向においてインクジェットヘッド12aよりも下流側に設けられてもよい。この場合、UV−LEDユニット20は、例えば、ガイドレール15と平行に設けられたUV−LEDユニット20用のガイドレールに沿って、インクジェットヘッド12aとは独立に、主走査方向へ移動する。このように構成した場合も、メディア50に吐出されたインクに適切に紫外線を照射することができる。また、これにより、紫外線硬化型のインクを用いた印刷動作を適切に行うことができる。
【0024】
上述の実施の形態のプリンタ10において、UV−LEDユニット20直下2mmの位置でUV−LEDユニット20からシリンドリカルレンズ30を介してメディア50に対して紫外線を照射する実験を行い、得られた紫外線の光強度の分布を図4に示す。
図4から、約60×10mmの範囲内で、400mW/cm以上の十分な照射強度が得られていることが理解できる。これは、たとえば一般的なラジカル重合タイプのUVインクの硬化を瞬時に行うのに十分な照射強度である。このときの照射幅は約2インチ(5.08×10−2m)のインクジェットヘッドをカバーする程度とした。
以上のことから、シリンドリカルレンズ30を用いることにより、紫外線を線状に集光させてピーク光強度を増大させ、良好にUVインクを硬化させることが可能である。
【0025】
次に、UV−LEDユニット20からシリンドリカルレンズ30で集光させた光を、光の強度Iを段階的に変化させながら照射し、上述のUVインクが完全硬化するのに必要なエネルギーのUV照射強度依存性を調べる実験を行った結果を図5に示す。
尚、紫外線の照射は、インクジェットヘッド12aの走査時に、インクジェットヘッド12aと共にUV−LEDユニット20をY方向へ移動させつつ行った。媒体50としては、塩化ビニル系フィルムを用いた。この実施の形態で用いたUVインクは、ラジカル重合タイプのいわゆるUV−LED用の高感度インクであるものとする。また、使用したUV−LED素子20aの発光波長は380nmであり、UVインクには350〜390nm程度に吸収を持つ増感剤を使用した。
【0026】
図5において、縦軸にインクの硬化に必要な総UVエネルギー量、すなわち複数のUV−LED素子から照射光の積算光量(単位;mJ/cm)を取り、また、横軸にはUV照射光の光強度(単位;mW/cm)を取って示してある。UVインクの硬化度は鉛筆硬化試験で調べた。また、図5中、完全硬化したときの値は○で示し、未硬化または不完全硬化の場合の値を×で示した。
一般に知られているラジカル重合の反応速度Vrは、以下に示す式(1)のように照射光強度Iの1/2乗に比例して速くなることが知られている。
Vr∝I1/2………(1)
図5より、上述の照射強度(照射光の光強度)Iが増加するにつれ、Iの−1/2乗に従って硬化に必要なUVエネルギーが低下していくのが理解できる。この結果を図5中右下がりの点線で結んで示してある。
【0027】
したがって、集光手段としてのシリンドリカルレンズ30を用いない場合は積算光量、すなわち総UVエネルギー量が、前者は200−300mJ/cm程度であるときに完全硬化していることが判る。そのときの照射光の強度Iは300−1000mW/cm程度である。
これに対し、シリンドリカルレンズ30を用いて1200−2000mW/cm程度まで光強度を高めた本実施例のUV−LEDユニット20の場合、150mJ/cm程度のUV−LED光のエネルギーで上述のUVインクが完全に硬化することを確かめることができた。
【0028】
以上のことからも明らかなように、実施の形態のプリンタ10において、集光手段であるシリンドリカルレンズ30を用いてUV−LEDユニット20からの照射光を集光することにより、UVインクの硬化に必要なエネルギー値を、シリンドリカルレンズ30を用いない場合と比較して低下させることができる。実施の形態の特性を有するUV−LEDユニット20を用いて紫外線の照射を行う場合、シリンドリカルレンズ30を用いて例えば1200−2000mW/cmの光強度でメディア50に記録したUVインクの硬化を行う場合、上述したように150mJ/cm程度の積算光量でUVインクを完全に硬化させることができるため、UV光の照射に係るエネルギー値を大幅に低下させることができるといえる。このように、低下させたエネルギー値の範囲にUV−LEDの紫外線の照射に係る総エネルギー量(積算光量)を設定することにより、シリンドリカルレンズ30を用いない場合と比較して、UV−LEDユニット20の動作に係る消費電力を低下させることができるため、UV−LEDの省エネルギー化・長寿命化を達成することができる。また、UV−LEDの照射光を集光手段により集光することで、光強度の制御ができるため、インクを硬化させるのに係る時間を短くして工程の短時間化・高効率化を図ることも可能である。
【0029】
上述の設定について、たとえば用いるUVインクの特性や、シリンドリカルレンズ30の形状などによる特性により、図5に示す積算光量とインクの硬化に必要なエネルギー値の関係が変化するため、実際の特性による差異を考慮した上で、所望の設定値を得られるようにする。
【0030】
次に、実施の形態の変形例1について説明をする。実施の形態の変形例1においては、UV−LEDとヘッドとが一体化した構成の印刷装置、すなわち実施の形態プリンタ10のような構成の印刷装置である場合、メディア50に記録されたインクに対し紫外線を照射する際に、シリンドリカルレンズ30を用いない場合と比較してヘッドユニット12の走行速度を速くする。このように、ヘッドユニット12の走行速度を相対的に速くして、紫外線を照射する時間を短くすることにより、インクの硬化に必要なエネルギー値を低下させ、この低下させたエネルギー値の範囲に、紫外線の照射に使用する総エネルギー量を設定する。
上述のエネルギー値の具体的な設定については、例えば使用するインクや集光手段の特性により、集光手段を用いない場合と光強度と積算光量との関係を調べた上で、所望の最適な値に設定する。例えば本実施の形態の場合、積算光量を150mJ/cm、インクの硬化に必要なエネルギー値を1200−2000mW/cmに設定し、その値が得られるためのヘッドの走行速度に設定することにより、実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、紫外線を照射する光量を低下させずに、インクを硬化させる時間を短くすることにより、作業効率を向上させることもできる。
【0031】
次に、実施の形態の変形例2について説明をする。変形例2においては、シリンドリカルレンズ30を用いない場合よりもUV−LEDユニット20からの紫外線の照度を低下させることにより、低下させたインクの硬化に必要なエネルギー値の範囲に、紫外線の照射に使用する総エネルギー量を設定する。この紫外線の照度の低下は、具体的には、UV−LED素子の個数を削減したり、UV−LED素子の1灯当たりの出力エネルギーを低下させたりすることにより行う。例えば複数のUV−LED素子20aの消費電力の総和であるUV−LEDユニット20の消費電力を1kW以下(例えば200〜1kW)に抑え、この出力エネルギーでUV光の照射を行う。このようにして個々のUV−LED素子から照射する紫外線の照度を低下させても、集光手段によりインクの硬化に必要な強度の光を得ることができ、かつ集光手段を用いない場合と比較してインクの硬化に必要なエネルギー値を低下させて、その結果、集光手段を用いない場合よりも紫外線の照射に係る総エネルギー量を低下させることができる。したがって、UV−LEDの動作に係る消費電力を低下させることができ、長寿命化を達成することが可能である。
【0032】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施の形態に記載の範囲には限定されない。
例えば、プリンタは、例えばフラットヘッド型のインクジェットプリンタであってもよい。この場合のプリンタは、縦型のインクジェットプリンタ特有の構成に代えて、フラットヘッド型のインクジェットプリンタに必要な構成を適宜備えるものとする。
また、集光手段として、例えばシリンドリカルレンズではなく、他の光学系のレンズ等を用いた適切な集光手段を用いても良い。例えば、この集光手段として、複数のUV−LED素子20aの下に配置される各種の棒状又は直線状のレンズを好適に用いることもできる。また、例えば複数のレンズを重ねて配置した構造の集光光学系等を用いることもできる。その他、断面が円形の円柱状のレンズでも良い。その場合においても、UV−LEDユニット20から照射する紫外線を、適切に集光することができ、これによりインクの硬化効率を適切に高めることができる
その他、発明の内容を逸脱しない範囲で実施の形態から自由に変更することが可能である。
また更に、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
UV硬化性のインクを用いた、プリンタ等の印刷装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 プリンタ(印刷装置)、
12 ヘッドユニット、12a インクジェットヘッド、
15 ガイドレール、
20 UV−LEDユニット、20a UV−LED素子、
30 シリンドリカルレンズ(集光手段)、
50 メディア(被記録媒体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型のインクをヘッドから吐出して被記録媒体に印刷を行う印刷装置において、
前記紫外線を照射するUV−LEDと、該UV−LEDから照射した紫外線を集光させる集光手段とを有し、
前記集光手段は、当該集光手段を用いずに前記UV−LEDから紫外線を照射した場合と比較して、
前記紫外線の照射光の光強度を大きくして前記インクの硬化に必要なエネルギーを低下させる
ことにより、当該低下させた前記インクの硬化に必要なエネルギー値の範囲に、前記紫外線の照射に使用する総エネルギー量を設定した
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記設定は、前記UV−LEDと前記ヘッドとが一体化した構成の印刷装置である場合、前記被記録媒体に記録された前記インクに対し紫外線を照射する際に、前記集光手段を用いない場合と比較して前記ヘッドの走行速度を速くすることにより行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記設定は、前記集光手段を用いない場合と比較して、前記UV−LEDからの紫外線の照度を低下させることにより行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記集光手段は、シリンドリカルレンズであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96377(P2012−96377A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243390(P2010−243390)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本画像学会年次大会(通算105回)“Imaging Conference JAPAN 2010”論文集 発行者:一般社団法人日本画像学会 発行日:平成22年6月9日
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】