説明

印字システム

【課題】 更新中に電源の瞬断が起こった場合、電源の再投入を行った時にファームウエアの更新状態へ自動移行できるようにする。
【解決手段】 ホストコンピュータからファームウエアの更新開始と更新終了時に、印字装置の起動状態を変更する。印字装置は起動状態を参照して起動処理の変更を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外部ホストインターフェースを介してホストコンピュータに接続され、ホストコンピュータから送信された印字データを解析して画像を形成し、それを用紙へ印字する印字装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの印字装置は、電気的に書き替え不可能な記憶素子(ROM)にファームウエアを格納することが一般的であった。
【0003】
近年の技術の進歩で電気的に書き替え可能な記憶素子(EEPROM等)にファームウエアを格納し、物理的に部品を交換することなく容易にファームウエアの変更が可能になってきている。
【0004】
このためファームウエアの更新に対する敷居が低くなり、ファームウエア開発者のみならず、技術的なことを知らない一般のユーザーでもファームウエアの更新が可能になった。
【0005】
しかし、これにより人為的ミスやその他事故によって起動不可能なファームウエアが書き込まれてしまう場合がある。また書き込みが不完全な状態で電源の瞬断が起こったりした場合でも、電源の再投入を行っても起動しなくなってしまう。
【0006】
従来、ファームウエアの更新を保障する技術として、ファームウエアを更新するための領域を2重に保有し、その片方を更新対象として更新し、起動時に正常起動する方を選択して起動する方法が採られていた。
【特許文献1】特開2002−73361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに近年装置、および装置のファームウエアが複雑になり、1つの装置が複数のファームウエアにより動作し、そのファームウエアの組み合わせに依存関係があり、特定の組み合わせでないと正常起動しない場合もありえる。
【0008】
ユーザー先でそのような状態になると復旧作業が必要になり、場合によってはハードウエアの交換といった大掛かりなものになってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題を鑑み、ホストコンピュータからファームウエアの更新開始と更新終了時に、印字装置の起動状態を変更する。印字装置は起動状態を参照して起動処理の変更を行う。これにより更新中に電源の瞬断が起こり、電源の再投入を行った時にファームウエアの更新状態へ自動移行することが可能になる。
【0010】
また、印字装置が持つファームウエアの組み合せ情報をホストコンピュータへ返信し、ホストコンピュータが持つあらかじめ定められたファームウエアの組み合せ情報と比較する。比較した結果をもって更新の必要なファームウエアを特定し、実際の更新処理を行うことで、正規の組み合わせであるかの確認が可能になる。
【0011】
この比較結果を元に印字装置の起動状態を変更することで、正規の組み合せ状態になるまでファームウエアの更新状態を維持することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
これら手順により、実行不可能なファームウエアが書き込まれることはなくなり、結果として煩雑な復旧作業が発生することを回避することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例1)
図1は、従来からある一般的な画像形成装置としての電子写真式プリンタの構成例を示すブロック図である。
【0014】
電子写真式プリンタ101は、コントローラーボード111とプリントエンジン112によって構成されている。電子写真式プリンタ101は図示しないホストコンピュータからの印字データをコントローラーボード111内にある外部インターフェース122から受信する。
【0015】
受信データはCPU121がROM124またはRAM123内のプログラム(ファームウェア)を実行することにより処理され、RAM123内に画像データが形成される。
【0016】
形成された画像データは、エンジンインターフェース125を介してプリントエンジン112へ送られる。プリントエンジン112は、図示しない熱定着器を備えており、これ以外にもトナーや感光ドラムなどを有し、RAM123内に形成された画像データを元にレーザを感光体上に走査して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーによって現像し、記録紙上に転写、定着して印字物を出力する。2次記憶126は、上記処理の過程の中で外部インターフェース122から受信する受信データの保存、またCPU121が形成した画像データの保存などに補助的に用いられる。
【0017】
図2は図1に示す電子写真式プリンタ搭載のファームウェア内部構成例を示すブロック図である。図2の201は図1の111へ、同様に202は112へそれぞれ対応する。
【0018】
I/Fドライバ制御部211は図示しないホストコンピュータからの印字データを受信し、受信バッファ212へ格納する。ここに格納されるデータは画像展開前のPDL(PAGE DESCRIPTION LANGUAGE)データである。
【0019】
描画データ生成部213は受信バッファ212に格納されているPDLデータをもとに描画データを生成し、画像バッファ214へ格納する。
【0020】
プリントエンジン制御部215は画像バッファ214へ格納されているデータをプリントエンジン202へ送り、最終的に印字物が得られるようになっている。
【0021】
図3は本実施例における画像形成装置としての電子写真式プリンタの構成例を示すブロック図である。本構成例ではファームウエアがROM1(324)とROM2(326)の2つで構成され、その組み合わせが正しくないと正常動作しない画像形成装置である。
【0022】
まず、印字が複数のファームウエアで動作しており、その組み合わせが意図した正しい組み合わせになるように更新を行う処理について説明する。
【0023】
図4は本実施例における、ファームウエアの更新処理を時系列で表現したものである。
【0024】
期間411においては、ホストPCからファームウエア更新に関する通信を開始する旨の指示が印字装置に対して送信され、印字装置がファームウエア更新に関する通信を開始しても良い状態であれば開始してよい旨の返信を行う。印字装置がファームウエア更新に関する通信を通信を開始してはいけない状態であれば、開始してはいけない旨の返信を行う(図示していない)。
【0025】
期間412においては、ホストPCから印字装置のファームウエアの構成を確認する旨の指示が印字装置に対して送信される。これを受けて印字装置は装置内のファームウエアを確認して構成情報を生成する。
【0026】
本印字装置においては図3にあるとおり、ROM1(324)とROM2(326)で構成されており、それぞれのバージョンがXとYであった場合は、例として構成情報702のようなテキストデータを生成する(図7参照)。
【0027】
印字装置はこの構成情報をホストPCに対して返信する。
【0028】
期間413においては、ホストPCが前述の構成情報702と自身が持つファームウエアの構成情報701とを比較し(図7参照)、更新が必要なファームウエアを特定し、送信を開始する。印字装置はファームウエアを受信し、受信が完了したら自身のファームウエアの書き替え処理を行い、更新完了の旨返信を行う。
【0029】
期間414においては、印字装置から更新完了の旨の返信を受け、かつ更新の必要が無くなった場合には、更新に関する通信を終了する旨送信する。
【0030】
図5は本実施例におけるホストPCの処理をフローチャートにしたものである。
【0031】
処理511において、ファームウエア更新に関する通信を開始する旨を送信する。処理512と処理513において、先の送信に対する印字装置からの返信を待ち受ける。印字装置から移行できる旨受信した場合は処理514へ進み、移行できない旨受信した場合は本処理を終了する。
【0032】
印字装置からファームウエア更新に関する通信が可能だった場合は処理514において印字装置に対してファームウエアの構成情報の問い合わせを行う。このとき印字装置からは、たとえば組み合せ情報702(図7参照)のようなテキストデータが返信されてくる。
【0033】
次の処理515において、ホストPCが持つ正しいファームウエアの組み合せ情報と比較を行う。たとえば正しいファームウエアの組み合せ情報が、組み合わせ情報701の状態だった場合は(図7参照)、ファームウエアA、ファームウエアB共に異なっていると判断される。
【0034】
比較によって組合せが正しいと判断された場合は処理519へ進み、組合せが正しくない場合は処理516へ進む。
【0035】
処理516において、ホストPCが持つファームウエアを印字装置に対して送信する。送信処理が完了したら、処理517、処理518において印字装置からの更新完了を返信を待つ。
【0036】
以上処理514から処理518を繰り返すことによって、ホストPCが持つ正しい組み合わせのファームウエアを印字装置に対して送信することができる。
【0037】
前述の通り印字装置のファームウエアの組合せが正しい状態になった場合には処理519へ進み、更新処理が完了したことを印字装置に対して送信し、全体の処理を終了する。
【0038】
以上一連の処理により、ホストPCが持つ正しい組み合わせのファームウエアが印字装置に対して送信され、印字装置内のファームエアが不正な組み合わせになるようなことは無くなる。
【0039】
次にファームウエア更新中に不慮の事故などにより更新状態が中断された場合に、次回起動時には組合せが保証されない場合に対する回避策を説明する。
【0040】
図6は本実施例における印字装置の更新に関連する処理をフローチャートにしたものである。
【0041】
処理611、処理612においてホストPCからのファームウエア更新に関する通信を開始する旨の待ち受け処理を行う。
【0042】
ホストPCからファームウエア更新に関する通信が開始された場合には、処理613において、更新中状態を示すフラグをセットする。このフラグの保存場所としては、電源を切断しても内容が保持される印字装置内の2次記憶装置327を用いることができる。
【0043】
次に処理614において、図示しないホストPCとさまざまな通信処理、およびファームウエアの更新処理などを行う。
【0044】
処理615において各種通信処理の中で、ファームウエアの更新に関する通信を終了する旨の通信が行われたと判断された場合には、処理616において更新中状態を示すフラグをリセットする。
【0045】
以上で印字装置の更新に関連する処理を終了する。本処理では更新処理を開始するとき、完了したときに更新中状態を示すフラグを操作するだけであるが、本フラグは以下に説明する電源投入時の処理で参照される。
【0046】
図8は本実施例における印字装置の電源投入時に起動処理の選択を行う処理をフローチャートにしたものである。
【0047】
処理801において、更新中状態のフラグを確認する。このフラグがセットされている場合は、更新中状態の処理へ移行する。またこのフラグがセットされていなければ、通常の起動処理へ移行する。
【0048】
このフラグがセットされている期間は、先に説明したとおり、印字装置が更新処理を開始してから完了するまでの間である。よってこの期間中に不慮の事故により電源の瞬断などが行われた可能性がある。
【0049】
この場合はファームウエアの組合せが正しくない可能性が高く、通常の起動処理を行っても正常に起動しないことが考えられる。
【0050】
しかしながら本処理を行うことで、通常の起動処理を行わずに更新状態へ移行することで、更新処理を再度実行することが可能になる。
【0051】
これにより正しくないファームウエアの組合せで通常起動処理に移行することを防止し、動作不定な状態にならなくなる。また更新中状態へ自動移行することで、ファームウエアの組合せを正しくするように促すことが可能になる。
【0052】
(他の実施例)
本発明は電子写真式の印字装置だけでなく、インクジェット式等、他の印字方式の印字装置においても当てはまることは言うまでもない。
【0053】
(他の実施例)
本発明は印字装置だけでなく、印字機能を持つ複写機やFAXにおいても当てはまることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来からある印字装置の構成例である。
【図2】従来からある印字装置の論理的な構成例である。
【図3】本実施例における印字装置の構成例である。
【図4】本実施例におけるホストPC、印字装置の通信シーケンスを示す図である。
【図5】本実施例におけるファームウエア更新時のホストPC側の処理をフローチャートにしたものである。
【図6】本実施例におけるファームウエア更新時の印字装置側の処理をフローチャートにしたものである。
【図7】本実施例における、ファームウエアの組合せ情報を具体的に図示したものである。
【図8】本実施例における、電源導入時の印字装置の処理をフローチャートにしたものである。
【符号の説明】
【0055】
324 印字装置内のコントローラーボードのファームウエアが格納されたROMである
326 印字装置内のプリントエンジンのファームウエアが格納されたROMである
701 ホストPCが持つ、正しいファームウエアの組み合せ情報を表現したものである
702 印字装置内のファームウエアの種類とそのバージョンを示す情報をテキスト形式で表現したものである

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ホストコンピュータと、
外部ホストコンピュータから送信されたデータを元に内部で画像データを形成し記録材へ画像を形成する印字装置とで構成される印字システムであって、
印字装置において、
機器を制御するためのファームウエアを格納する格納手段と、
前記格納手段の内容を更新するための更新手段と、
前記格納手段の内容を更新中であるかの情報を格納するための更新中記憶手段と、
前記ホストコンピュータからの指示で前記更新中記憶手段の状態を変更する変更手段と、
前記更新中記憶手段の状態に従い電源投入時の処理を切り換える起動処理切り換え手段と、
機器内の1つ以上のファームウエアの情報を前記ホストコンピュータへ通知する通知手段を備え、
ホストコンピュータにおいて、
機器のファームウエアの送信開始時に印字装置に対して更新開始の旨通知を行う通知手段と、
機器のファームウエアを印字装置に送信する送信手段と、
機器のファームウエアの情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により得られた印字装置内のファームウエアバージョンと自身が持つファームウエアバージョンとを比較し適切な組み合せの状態になったら更新完了した旨通知する通手段と、
を備えることを特徴とする印字システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−171322(P2008−171322A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5832(P2007−5832)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】