説明

印字装置およびインクリボンカセット

【課題】インクを周囲に飛散させることなくインクリボンを切断する印字装置を提供する。
【解決手段】印字装置10は、カード50を収納するとともに、カード50を送り出すカード収納部11と、ID情報をカード50に印字するためのインクを含むインクリボン30を有するインクリボンカセット20と、インクリボン30のインクをカード50に転移させる印字部12と、を備えている。インクリボンカセット20は、インクリボン30と、インクリボン30を送り出す送出部23と、インクリボン30を巻き取る巻取部24と、を有している。また、インクリボンカセット20の内部であって、印字部12の下流側に、インクリボン30の第2非印字領域42をインクリボン30の送り出し方向に沿って切断する切断部15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ID情報を被印字体に印字する印字装置に係り、とりわけ、インクリボンを用いてID情報を被印字体に印字する印字装置に関する。また本発明は、インクリボンカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクリボンを用いて、カードなどの被印字体に文字などの像を印字する印字装置が、広く普及している。インクリボンは、帯状に延びるリボン(基材)と、リボン上に形成され、染料等を含んだインク層と、を有している。インクリボンを用いた印字においては、印字されるべき所望の像に対応したパターンで、インクが受像体に転移される。この場合、インク転移済みのインクリボンには、受像体への転移によりインクが抜けた領域が、印字された像に対応したパターンで存在している。このため、インク転移済みのインクリボンから、印字された像を特定することが可能である。従って、インクリボンを用いて、被印字体にID情報などの秘匿すべき情報を印字する場合、インク転移済みのインクリボンの取り扱いに注意が必要となる。
【0003】
このような問題に対応するため、例えば特許文献1において、インク転移済みのインクリボンを送り出し方向に沿って切断する複数のカッターを有するカッター機構が設けられたインクリボンカセットが提案されている。特許文献1に記載のインクリボンカセットにおいては、カッター機構を用いてインク転移済みのインクリボンを切断することにより、インク転移済みのインクリボンに残るID情報に関する痕跡が破壊される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−70475
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインクリボンカセットにおいては、カッター機構を用いてインク転移済みのインクリボンを切断する際、インクリボンの基材だけでなく、基材上のインク層も切断される。このため、切断によりインク層のインクが周囲に飛散し、これによって、インクリボンカセットの内部や印字装置、または被印字体がインクにより汚染されることが考えられる。
【0006】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る印字装置またはインクリボンカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1個人情報と第2個人情報とを含むID情報を被印字体に印字する印字装置において、送り出し方向に沿って各々配置された、前記第1個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、前記第2個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、前記印字領域間に位置するとともにインクが塗布されていない非印字領域と、を含むインクリボンと、前記インクリボンを送り出す送出部と、前記インクリボンを巻き取る巻取部と、を有するインクリボンカセットと、前記インクリボンカセットの前記巻出部と前記巻取部との間に設けられ、前記インクリボンのインクを被印字体に転移させる印字部と、前記インクリボンカセットの前記巻出部と前記巻取部との間であって、前記印字部の下流側に設けられ、前記インクリボンの前記非印字領域を送り出し方向に切断する切断部と、を備えたことを特徴とする印字装置である。
【0008】
本発明による印字装置において、前記切断部は、前記インクリボンカセットの内部に設けられていてもよく、若しくは、前記インクリボンカセットの外部に設けられていてもよい。
【0009】
本発明による印字装置は、前記切断部を移動自在に支持する駆動部と、被印字体に印字されるID情報に基づいて、前記切断部が前記インクリボンの前記非印字領域を切断するよう前記駆動部を制御する制御部と、をさらに備えていてもよい。
【0010】
本発明による印字装置において、前記切断部は、前記インクリボンの前記非印字領域との当接部分においてインクリボンの送り出し方向に向って凹となるブーメラン形状を有するカッターからなっていてもよい。
【0011】
本発明による印字装置において、被印字体に印字されるID情報のうち、第1個人情報は、被印字体を保有する人の氏名に関する情報であってもよい。
【0012】
本発明は、送り出し方向に沿って各々配置された、インクが塗布された第1印字領域と、インクが塗布された第2印字領域と、第1印字領域と第2印字領域の間に位置するとともにインクが塗布されていない非印字領域と、を含むインクリボンと、前記インクリボンを送り出す送出部と、前記インクリボンを巻き取る巻取部と、前記巻取部の近傍に設けられ、前記インクリボンの前記非印字領域を送り出し方向に切断する切断部と、を備えたことを特徴とするインクリボンカセットである。
【0013】
本発明によるインクリボンカセットにおいて、前記切断部は、前記インクリボンの前記非印字領域との当接部分においてインクリボンの送り出し方向に向って凹となるブーメラン形状を有するカッターからなっていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の印字装置によれば、インクリボンカセットのインクリボンは、送り出し方向に沿って各々配置された、第1個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、第2個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、前記印字領域間に位置するとともにインクが塗布されていない非印字領域と、を含んでいる。また、インクリボンカセットの巻出部と巻取部との間であって、印字部の下流側に、インクリボンの非印字領域を送り出し方向に切断する切断部が設けられている。このため、インク転移済みのインクリボンにおいて、第1個人情報を印字した印字領域と、第2個人情報を印字した印字領域とを分断することができる。これによって、第1個人情報と第2個人情報とが組み合わされたID情報が、インク転移済みのインクリボンから漏洩するのを防ぐことができる。また、切断される非印字領域にはインクが塗布されておらず、このため、切断の際にインクが周囲に飛散することはない。このことにより、切断部の周囲がインクにより汚染されるのを防ぐことができる。
【0015】
本発明のインクリボンカセットによれば、インクリボンは、送り出し方向に沿って各々配置された、インクが塗布された第1印字領域と、インクが塗布された第2印字領域と、第1印字領域と第2印字領域の間に位置するとともにインクが塗布されていない非印字領域と、を含んでいる。また、インクリボンカセットの巻出部の近傍に、インクリボンの非印字領域を送り出し方向に切断する切断部が設けられている。このように、切断される非印字領域にはインクが塗布されておらず、このため、切断の際にインクが周囲に飛散することはない。このことにより、切断部の周囲がインクにより汚染されるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における印字装置を示す図。
【図2】図2(a)は、図1に示す印字装置のインクリボンカセット、印字部および切断部を拡大して示す図、図2(b)は、切断部を拡大して示す図。
【図3】図3(a)は、本発明の第1の実施の形態におけるカードを示す図、図3(b)は、図3(a)に示すカードに印字されるID情報に対応する印字領域および非印字領域を有するインクリボンを示す図。
【図4】図4は、図3(b)に示すインクリボンのIV−IV線に沿った断面図。
【図5】図5(a)は、本発明の第2の実施の形態におけるカードを示す図、図5(b)は、図5(a)に示すカードに印字されるID情報に対応する印字領域および非印字領域を有するインクリボンを示す図。
【図6】図6は、図5(b)に示すインクリボンのVI−VI線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図4を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。はじめに図1を参照して、印字装置10の全体構造について説明する。
【0018】
印字装置
図1に示すように、ID情報をカード50(被印字体)に印字する印字装置10は、カード50を収納するとともに、カード50を矢印Pで示す搬送方向に沿って送り出すカード収納部11と、ID情報をカード50に印字するためのインクを含むインクリボン30を有するインクリボンカセット20と、インクリボン30のインクをカード50に転移させる印字部12と、カード50に印字されるID情報に応じて印字部12を制御する制御部17と、を備えている。
【0019】
このうちインクリボンカセット20は、図1に示すように、ケース21と、ケース21内に収納されたインクリボン30と、矢印Rで示す方向にインクリボン30を送り出す送出部23と、矢印Rで示す方向にインクリボン30を巻き取る巻取部24と、を有している。また、図1に示すように、印字部12は、送出部23と巻取部24との間に設けられた印字ヘッド13と、カード50を挟んで印字ヘッド13と対向するよう設けられ、カード50を支持するプラテンロール14と、を有している。
【0020】
印字ヘッド13は、いわゆる熱転写型の印字ヘッドである。この印字ヘッド13により、インクリボン30のインクがID情報に対応する所定のパターンで加熱され、これによって、ID情報に対応する所定のパターンで溶けたインクがカード50上に転移される。このようにして、カード50上にID情報が印字される。この際、印字ヘッド13における加熱パターンは、カード50に印字されるID情報に基づいて制御部17により制御される。ID情報が印字されたカード50は、図1に示すように、保護フィルム転写部18に送られる。保護フィルム転写部18においては、ID情報が印字されたカード50に保護フィルムが転写される。カード50は、その後、印字済カードスタッカ19に向けて排出される。
【0021】
また図1に示すように、インクリボンカセット20の内部であって、印字部12の下流側に、インクリボン30の後述する第2非印字領域42をインクリボン30の送り出し方向に沿って切断する切断部15が設けられている。以下、図2乃至図4を参照して、インクリボンカセット20および切断部15について詳細に説明する。
【0022】
インクリボンカセット
図2(a)を参照して、インクリボンカセット20について詳細に説明する。なお図2(a)においては、便宜上、図1に示すインクリボンカセット20のケース21が省略されている。
【0023】
図2(a)に示すように、インクリボンカセット20は、組み込まれる印字装置10の型式に対応して構成されたインクリボン、例えばテープ状のインクリボン30と、矢印Rで示す方向にインクリボン30を送り出す送出部23と、矢印Rで示す方向にインクリボン30を巻き取る巻取部24と、送出部23と巻取部24との間に設けられ、インクリボン30の送り出し経路を画定する複数のガイドロール25a〜25dと、を有している。
【0024】
図2(a)に示すように、インクリボン30は、ガイドロール25a〜25dに誘導されて印字ヘッド13とプラテンロール14との間を通る。また図2(a)に示すように、印字ヘッド13とプラテンロール14との間には、印字ヘッド13側にインクリボン30が位置し、プラテンロール14側にカード50が位置するよう、カード50が供給される。ここで、図2(a)においては、インクリボン30のプラテンロール14側の面が符号30aで表され、印字ヘッド13側の面が符号30bで表されている。
【0025】
印字ヘッド13は、インクリボン30をカード50に対して所望のタイミングで押し付けるよう、インクリボン30に対して移動自在となっている。また、後述するように、インクリボン30のプラテンロール14側の面30aの一部にはインクが塗布されている。このため、印字ヘッド13が、インクリボン30をカード50に対して加熱しながら押し付けると、インクリボン30のインクがカード50上に転移される。カード50上へのインクの転移が完了すると、印字ヘッド13はインクリボン30から離間する位置に戻される。
【0026】
切断部
図2(a)(b)を参照して、切断部15について詳細に説明する。図2(a)に示すように、印字部12の下流側に、インクリボン30の後述する第2非印字領域42をインクリボン30の送り出し方向に沿って切断する切断部15が設けられている。ここで切断部15は、図2(a)(b)に示すように、インクリボン30を、インクリボン30の厚さ方向において貫通する刃部15aを有している。また、インクリボンカセット20においては、インクリボン30に適度のテンションがかけられた状態で送出部23から巻取部24に向かって送り出されるよう、送出部23および巻取部24の回転が適切に制御されている。このため、インクリボン30が送出部23から巻取部24に向かって送り出されるとき、図2(a)に示す第2非印字領域42が、切断部15の刃部15aによってインクリボン30の送り出し方向に切断される。
【0027】
図2(a)に示すように、切断部15は駆動部16により支持されている。ここで駆動部16は、任意の方向に移動自在となっており、このため、インクリボン30の任意の位置において、切断部15の刃部15aをインクリボン30に貫通させることが可能である。このような駆動部16は、カード50に印字されるID情報に基づいて、切断部15がインクリボン30の所定の領域を切断するよう制御部17により制御されている。なお本実施の形態においては、切断部15が第2非印字領域42を切断するよう、駆動部16および切断部15が常に図2(a)に示す位置に配置されている。
【0028】
図2(b)に示すように、切断部15の刃部15aは、インクリボン30の第2非印字領域42との当接部分においてインクリボン30の送り出し方向に向って凹となるブーメラン形状を有している。このため、切断部15の刃部15aによって第2非印字領域42を容易に切断することができる。しかしながら、刃部15aの形状がこれに限られることはなく、直線形状、湾曲形状など、要求に応じて様々な形状を選択することができる。
【0029】
カードおよびインクリボン
次に、図3(a)(b)および図4を参照して、カード50に印字されるID情報と、カード50にID情報を印字するために用いられるインクリボン30とについて詳細に説明する。図3(a)は、ID情報が印字されたカード50を示す図であり、図3(b)は、図3(a)に示すカード50に印字されたID情報に対応する印字領域および非印字領域を有するインクリボン30を示す図である。図4は、図3(b)に示すインクリボン30のIV−IV線に沿った断面図である。
【0030】
はじめに、カード50に印字されるID情報について説明する。図3(a)に示すように、カード50には、カード50を保有する人の氏名(第1個人情報)51と、ID番号(第2個人情報)52と、有効期限(第3個人情報)53とが印字される。なお図3(a)に示すように、カード50に写真54が貼付されていてもよく、カード50にその他の情報が印字されていてもよい。
なお本実施の形態において、ID情報とは、個々の個人情報を組み合わせることにより得られる、カード保有者の身元を特定するための情報のことである。
【0031】
次に、カード50にID情報を印字するために用いられるインクリボン30について説明する。図3(b)に示すように、インクリボン30は、送り出し方向に沿って各々配置された、印字領域31,32,33と非印字領域41,42,43,44とを含んでいる。ここで印字領域とは、インクリボン30が印字ヘッド13によって押し付けられる際、カード50のID情報が印字されるべき部分に当接する領域、および当該領域と送り出し方向において並ぶ領域であり、図3(a)(b)に示すように、氏名(第1個人情報)51に対応する第1印字領域31と、ID番号(第2個人情報)52に対応する第2印字領域32と、有効期限(第3個人情報)53に対応する第3印字領域33と、からなっている。また非印字領域とは、上記の各印字領域の間に位置する領域、および上記の印字領域とインクリボンの端部との間に位置する領域であり、図3(a)(b)に示すように、インクリボン30の一端30cと第1印字領域31との間に位置する第1非印字領域41と、第1印字領域31と第2印字領域32との間に位置する第2非印字領域42と、第2印字領域32と第3印字領域33との間に位置する第3非印字領域43と、第3印字領域33とインクリボン30の他端30dとの間に位置する第4非印字領域44と、からなっている。
【0032】
次に、図4を参照して、インクリボン30の層構成について説明する。図4に示すように、インクリボン30は、基材35と、基材35上に塗布されたインク36により形成されるインク層36aと、を含んでいる。ここで、図4に示すように、印字領域31,32,33には、氏名51、ID番号52および有効期限53を印字するためのインク36がそれぞれ塗布されている。一方、図4に示すように、第1印字領域31と第2印字領域32との間に位置する第2非印字領域42にはインク36が塗布されていない。このため、後述するように、切断部15により第2非印字領域42を送り出し方向に切断する際にインクが周囲に飛散するのを防ぐことができる。
【0033】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、印字装置10によりカード50にID情報が印字され、その後、切断部15によりインク転移済みのインクリボン30が切断される作用について説明する。
【0034】
まず、ホストコンピュータ(図示せず)などにより、制御部17に、カード50に印字されるID情報を入力する。次に、図1に示すように、カード収納部11内に収納されているカード50(印字前の生カード)を印字部12に向けて搬送する。一方、インクリボンカセット20においては、図2に示すように、送出部23から巻取部24に向かってインクリボン30が、適度なテンションがかけられた状態で送られている。
【0035】
カード50が印字部12の印字ヘッド13とプラテンロール14との間に到達すると、印字ヘッド13が、インクリボン30をID情報に対応する所定パターンで加熱しながらカード50に対して押し付けられる。これによって、インクリボン30のインク36が所定パターンでカード50上に転移される。このことにより、カード50上に、氏名51とID番号52と有効期限53とが印字される。カード50上へのインクの転移が完了すると、印字ヘッド13が、インクリボン30から離間する位置に戻される。次に、保護フィルム転写部18において、ID情報が印字されたカード50に保護フィルムが転写される。その後、カード50が、印字済カードスタッカ19内に収納される。
【0036】
一方、印字部12を経た後の、インク転移済みのインクリボン30は、図2に示すように、巻取部24に向かって送られる。ここで、図2に示すように、印字部12の下流側において、切断部15が、その刃部15aが第2非印字領域42を貫通するよう設けられている。このため、切断部15の刃部15aにより、インク転移済みのインクリボン30の第2非印字領域42が送り出し方向に切断される。これによって、インク転移済みのインクリボン30が、インク転移済みの第1印字領域31を含む第1リボン37と、インク転移済みの第2印字領域32を含む第2リボン38とに分断される。第1リボン37と第2リボン38とは、図2に示すように巻取部24に巻き取られ、その後、廃棄される。
【0037】
一般に、カード保有者の住所、氏名、生年月日、ID番号、有効期限などの個々の個人情報から、カード保有者の身元を特定し得る程度にカード保有者のID情報を復元するためには、一般に個人情報のうち、氏名と、氏名に対応するその他の個人情報とが組み合わされる必要があると考えられる。すなわち、個人情報のうち氏名のみが漏洩したとしても、これによってカード保有者のID情報を復元することはできないと考えられる。同様に、氏名以外の個人情報のみが漏洩したとしても、これによってカード保有者のID情報を復元することはできないと考えられる。
本実施の形態によれば、上述のように、インク転移済みのインクリボン30が、インク転移済みの第1印字領域31を含む第1リボン37と、インク転移済みの第2印字領域32を含む第2リボン38とに分断される。このため、仮に第1リボン37と第2リボン38とが適切に廃棄されなかった場合であっても、第1リボン37から得られる個人情報と、第2リボン38から得られる個人情報とを対応させることはできない。このため本実施の形態によれば、仮にインク転移済みのインクリボン30から個々の個人情報が読み取られた場合であっても、カード保有者のID情報が復元されるのを防ぐことができる。
【0038】
また本実施の形態によれば、上述のように、インクリボン30の送り出し方向に沿って一箇所でインク転移済みのインクリボン30を切断することにより、カード保有者のID情報が復元されるのを防ぐことができる。このため、複数のカッターによりインク転移済みのインクリボン30を複数の箇所で切断する場合に比べて、切断により生じるリボンの本数を少なくすることができる。
一般に、切断により生じるリボンの数が多くなると、各リボンを搬送する際に各リボンの位置が幅方向において変位し、これによって、各リボンの巻き取りが困難になることが考えられる。これに対して、本実施の形態によれば、切断により生じるリボンは、第1リボン37と第2リボン38の2本のみとなっている。このため、切断により3本以上のリボンが生じる場合に比べて、リボンの巻き取りを容易化することができる。
【0039】
ところで上述のように、本実施の形態において、第1印字領域31と第2印字領域32との間に位置する第2非印字領域42には、インク36が塗布されていない。このため、切断部15により第2非印字領域42を送り出し方向に切断する際、インク36が周囲に飛散することはない。このことにより、本実施の形態によれば、インクリボンカセット20、印字部12またはカード50などをインクにより汚染することなく、インク転移済みのインクリボン30を第1リボン37と第2リボン38とに分断することができる。
【0040】
なお本実施の形態において、インク36が、第1印字領域31と第2印字領域32との間に位置する第2非印字領域42にのみ塗布されていない例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、その他の非印字領域41,43,44においてもインク36が塗布されていなくてもよい。
【0041】
また本実施の形態において、切断部15が、駆動部16により移動自在に支持されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、切断部15を、印字部12の下流側であって、インクリボン30の第2非印字領域42に対応する位置に固定してもよい。この場合、切断部15は、インクリボンカセット20の内部に設けられていてもよく、若しくは、インクリボンカセット20の外部に設けられていてもよい。
【0042】
第2の実施の形態
次に図5(a)(b)および図6を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで図5(a)は、第2の実施の形態におけるカードを示す図であり、図5(b)は、図5(a)に示すカードに印字されるID情報に対応する印字領域および非印字領域を有するインクリボンを示す図である。図6は、図5(b)に示すインクリボンのVI−VI線に沿った断面図である。
【0043】
図5(a)(b)および図6に示す第2の実施の形態においては、図5(b)および図6に示すインクリボン30Aを用いて、図3(a)に示す態様のID情報、または、図5(a)に示す態様のID情報のいずれかが、カードに対して選択的に印字される。図5(a)(b)および図6に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施の形態においては、印字装置10により、カードに対して、以下に説明する2つの態様のうちのいずれかの態様によりID情報が印字される。
1つの態様(以下、第1の印字態様)は、図3(a)に示すカード50のように、カードの上端側から順に氏名51とID番号52と有効期限53とが印字される態様である。この場合、インク転移済みのインクリボン30Aから得られる個人情報に基づいてカード保有者のID情報が復元されるのを防ぐためには、氏名(第1個人情報)51に対応する第1印字領域31とID番号(第2個人情報)52に対応する第2印字領域32との間の第2非印字領域42が、送り出し方向に沿って切断される必要がある。
もう1つの態様(以下、第2の印字態様)は、図5(a)に示すカード50Aのように、カードの上端側から順に有効期限53とID番号52と氏名51とが印字される態様である。この場合、インク転移済みのインクリボン30Aから得られる個人情報に基づいてカード保有者のID情報が復元されるのを防ぐためには、氏名(第1個人情報)51に対応する第3印字領域33とID番号(第2個人情報)52に対応する第2印字領域32との間の第3非印字領域43が、送り出し方向に沿って切断される必要がある。
すなわち本実施の形態においては、カードに印字されるID情報の態様に応じて、異なる箇所でインク転移済みのインクリボン30Aを切断する必要がある。
【0045】
上述のように、切断部15は駆動部16により移動自在に支持されており、駆動部16は制御部17により制御されている。本実施の形態において、制御部17は、カードに印字されるID情報の態様に応じて、切断部15の配置を制御する。すなわち、第1の印字態様でID情報が印字される場合、インク転移済みのインクリボン30Aの第2非印字領域42が切断部15により切断されるよう、制御部17により切断部15の配置が制御される。また、第2の印字態様でID情報が印字される場合、インク転移済みのインクリボン30Aの第3非印字領域43が切断部15により切断されるよう、制御部17により切断部15の配置が制御される。これによって、第1の印字態様および第2の印字態様の双方において、インク転移済みのインクリボン30Aを、氏名(第1個人情報)51に対応する第1印字領域31を含むリボンと、ID番号(第2個人情報)52に対応する第2印字領域32を含むリボンとに分断することができる。このことにより、仮にインク転移済みのインクリボン30Aから個々の個人情報が読み取られた場合であっても、カード保有者のID情報が復元されるのを防ぐことができる。
【0046】
また本実施の形態において、図6に示すように、インクリボン30Aの第2非印字領域42と第3非印字領域43とにはインク36が塗布されていない。このため、切断部15により第2非印字領域42または第3非印字領域43のいずれかを送り出し方向に切断する際、インク36が周囲に飛散することはない。このことにより、インクリボンカセット20、印字部12またはカード50などをインクにより汚染することなく、インク転移済みのインクリボン30Aを切断することができる。
【0047】
また本実施の形態によれば、1種類のインクリボン30Aが、上述の第1の印字態様および第2の印字態様の双方に対応している。このため、印字態様に応じて複数種類のインクリボンを用いる場合に比べて、インクリボンの調達コストや管理コストなどを低減することができる。
しかしながら、これに限られることはなく、印字態様に応じて複数種類のインクリボンを用いてもよい。この場合、第1の印字態様で印字が行われる際には、第2非印字領域42にインク36が塗布されていない第1のインクリボンが用いられ、また、切断部15によりインク転移済みの第1のインクリボンの第2非印字領域42が送り出し方向に沿って切断される。一方、第2の印字態様で印字が行われる際には、第3非印字領域43にインク36が塗布されていない第2のインクリボンが用いられ、また、切断部15によりインク転移済みの第2のインクリボンの第3非印字領域43が送り出し方向に沿って切断される。
【0048】
なお上記各実施の形態において、第1個人情報が、カードを保有する人の氏名に関する情報である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、他の個人情報と組み合わされることによりカード保有者のID情報を復元することが可能となる様々な個人情報を、第1個人情報とすることができる。
【0049】
また上記各実施の形態において、第1個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、第2個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、の間に位置する1つの非印字領域のみが切断部15により送り出し方向に沿って切断される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、インク転移済みのインクリボンを、複数の非印字領域において切断部15により切断してもよい。
例えば、第1個人情報と第2個人情報とが組み合わされて漏洩するのを防ぐだけでなく、第2個人情報と第3個人情報とが組み合わされて漏洩するのを防ぐのが好ましい場合が考えられる。この場合、第1個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、第2個人情報を印字するインクが塗布された印字領域との間に位置する非印字領域だけでなく、第2個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、第3個人情報を印字するインクが塗布された印字領域との間に位置する非印字領域も、切断部15により送り出し方向に沿って切断される。このとき、切断される2つの非印字領域の双方にインク36が塗布されていないことが好ましい。これによって、切断の際にインク36が周囲に飛散するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0050】
10 印字装置
11 カード収納部
12 印字部
13 印字ヘッド
14 プラテンロール
15 切断部
15a 刃部
16 駆動部
17 制御部
18 コーティング部
19 印字済カードスタッカ
20 インクリボンカセット
21 ケース
23 巻出部
24 巻取部
25a ガイドロール
25b ガイドロール
25c ガイドロール
25d ガイドロール
30 インクリボン
30A インクリボン
30a プラテンロール側の面
30b 印字ヘッド側の面
31 第1印字領域
32 第2印字領域
33 第3印字領域
35 基材
36 インク
36a インク層
41 第1非印字領域
42 第2非印字領域
43 第3非印字領域
44 第4非印字領域
50 カード
50A カード
51 第1個人情報
52 第2個人情報
53 第3個人情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1個人情報と第2個人情報とを含むID情報を被印字体に印字する印字装置において、
送り出し方向に沿って各々配置された、前記第1個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、前記第2個人情報を印字するインクが塗布された印字領域と、前記印字領域間に位置するとともにインクが塗布されていない非印字領域と、を含むインクリボンと、前記インクリボンを送り出す送出部と、前記インクリボンを巻き取る巻取部と、を有するインクリボンカセットと、
前記インクリボンカセットの前記巻出部と前記巻取部との間に設けられ、前記インクリボンのインクを被印字体に転移させる印字部と、
前記印字部の下流側に設けられ、前記インクリボンの前記非印字領域を送り出し方向に切断する切断部と、を備えたことを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記切断部は、前記インクリボンカセットの内部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記切断部は、前記インクリボンカセットの外部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項4】
前記切断部を移動自在に支持する駆動部と、
被印字体に印字されるID情報に基づいて、前記切断部が前記インクリボンの前記非印字領域を切断するよう前記駆動部を制御する制御部と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印字装置。
【請求項5】
前記切断部は、前記インクリボンの前記非印字領域との当接部分においてインクリボンの送り出し方向に向って凹となるブーメラン形状を有するカッターからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の印字装置。
【請求項6】
被印字体に印字されるID情報のうち、第1個人情報は、被印字体を保有する人の氏名に関する情報であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の印字装置。
【請求項7】
送り出し方向に沿って各々配置された、インクが塗布された第1印字領域と、インクが塗布された第2印字領域と、第1印字領域と第2印字領域の間に位置するとともにインクが塗布されていない非印字領域と、を含むインクリボンと、
前記インクリボンを送り出す送出部と、
前記インクリボンを巻き取る巻取部と、
前記巻取部の近傍に設けられ、前記インクリボンの前記非印字領域を送り出し方向に切断する切断部と、を備えたことを特徴とするインクリボンカセット。
【請求項8】
前記切断部は、前記インクリボンの非印字領域との当接部分においてインクリボンの送り出し方向に向って凹となるブーメラン形状を有するカッターからなることを特徴とする請求項7に記載のインクリボンカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156824(P2011−156824A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22417(P2010−22417)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】