説明

即席麺およびその製造方法

【課題】 従来よりも短時間で湯戻しが可能であり、且つ良好な食感を有する即席麺およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 多孔質構造を有した麺であり、特に麺表面において膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒が、面積1.0mm2当たりに100〜390粒数の間で存在し、且つ表面積に対する膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の占める面積率が45〜80%の間である即席麺。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺は、小麦粉、澱粉またはソバ粉を主原料とした麺塊を容器に入れ、例えば、スープや具と一緒にして熱湯を注ぎ、通常3〜5分間で湯戻しして喫食される。一般的に、太い麺の場合には、細い麺に比べて長い湯戻し時間が必要とされる。使用者が空腹を強く感じている場合、通常の湯戻しの時間が非常に長く感じられることもある。また、それにより、実際に使用者が製造者の意図する時間よりも短時間で湯戻しをして食した場合や、注がれた湯が湯戻しのためには十分に高い温度でない場合に食した場合には、麺が硬く、硬さにムラがあるなど、食感が損なわれてしまう。
【0003】
一般に、即席麺の製造は次のように行われる。通常、小麦粉等を主原料とし、これに水、食塩、かんすい等をミキシングし、麺生地をつくり、この生地を圧延、切り出すことにより生麺線が製造される。切り出した生麺線は一般的に飽和蒸気により蒸され、この後、必要に応じて着味が行われ、所定の長さに切断して1食分計量され、油揚げ、熱風等により乾燥して即席麺が製造される。
【0004】
穀物(米、小麦粉等)やイモ類に含まれる澱粉は、原料粉状態では生澱粉と呼ばれ、分子構造が緻密で消化酵素が作用しにくく、そのため消化が悪い。生澱粉に水を加えて加熱すると分子構造が崩れ、糊状の澱粉となり、消化酵素の作用を受け易く消化し易い状態となる。このように澱粉を加水加熱処理によって、消化し易い形態に変えることを糊化と称している。
【0005】
即席麺の製造における生麺線の糊化は主に「蒸し」により行われている。例えば、切り出された生麺線をステンレス製のネットコンベヤ−に移乗させ、トンネル型の蒸し機内で麺線の糊化が行われる。蒸しは通常、飽和蒸気によって行われ、処理時間はおおよそ1〜3分である。この蒸しは、麺質に影響を与える重要な工程であり、目的とする麺の糊化の程度などに応じて、温度や時間、蒸気圧、蒸気エネルギー量などの条件を設定する。蒸気および熱量が不十分であると麺がもろく煮崩れし易くなり、多すぎると麺線が硬くなるなどの原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の目的は、従来よりも短時間で湯戻しが可能であり、また、同じ戻し時間であればより太いものに特徴が得られ、且つ良好な食感を有する即席麺およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1態様は、
多孔質構造を有した麺であり、特に、麺表面において蒸し工程にて膨潤しただけで乾燥した、即ち、膨潤したおよび/または乾燥時澱粉粒内部に出来た水蒸気の膨張圧により噴出孔が開いた即ち、小孔の開いた澱粉粒が面積1.0mm2当たりに100〜390粒数の間で存在し、且つ麺表面に対する膨潤したおよび小孔の開いた澱粉粒の占める面積率が45〜80%の間である即席麺。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、従来よりも短時間で湯戻しが可能であり、また、同じ戻し時間であればより太いものに特徴が得られ、且つ良好な食感を有する即席麺およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実態形態の1例の表面を示す図。
【図2】本実態形態の1例の断面を示す図。
【図3】本実態形態の1例の膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の粒数を項目ごとに示すグラフ。
【図4】本実態形態の1例の膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の表面積に対する面積率を項目ごとに示すグラフ。
【図5】官能試験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0011】
多孔質構造を有した麺であり、前記孔に関連し、特に表面においては膨潤しただけで乾燥されたおよび/または乾燥時澱粉粒内に出来た水蒸気の膨張圧により噴出孔が開いた澱粉粒が、面積1.0mm2当たりに100〜390粒数の間で存在し、且つ麺表面に対する膨潤した澱粉粒および小孔の開いた澱粉粒の占める面積率が45〜80%の間である即席麺である。
【0012】
本即席麺は、表面から内部に亘り本多孔質構造を有する。
【0013】
図1(a)に本即席麺の表面の写真を写す。写真は500倍でデジタルマイクロスコープを使用して撮影した写真である。比較のために、一般的な従来の即席麺の表面を同様に撮影した写真を図1(b)に示す。
【0014】
図1(a)に示すように、本即席麺は、表面に細かな多数の孔と粒状の白い円が麺表面全体を覆っている。粒状の白い円は、蒸し工程にて膨潤した澱粉粒が乾燥工程にて内部で発生した水蒸気の膨張圧でも噴出孔が出来ず、その表面を澱粉に由来する薄膜にて粒を維持した状態で乾燥されていると考えられる。図1(b)と比較して明らかであるように、本即席麺は、従来の即席麺と比較して膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒が麺表面に多く存在している。また、本即席麺は崩壊し形が崩れた澱粉粒が少ない。
【0015】
図2(a)は、本即席麺の断面写真である。写真は、走査型電子顕微鏡で180倍で観察および撮影した写真である。比較のために一般的な従来の即席麺の断面を同様に撮影した写真を図2(b)に示す。図2(a)および(b)の上方が麺表面である。
【0016】
図2(a)に示す本即席麺の断面は、上部の麺表面から内部にまで細かな穴が存在する多孔質構造を有する。また、本即席麺は崩壊しない澱粉粒が数多く残っている表面(即ち、粗面)を有する。これに対して、図2(b)に示す一般的な従来の即席麺の場合、表面が糊化された澱粉で覆われているために滑らかな表面(即ち、滑面)を有する。これは、製造工程において、生地に含まれる澱粉粒が膨潤し、崩壊することにより、澱粉粒としての形が崩れ、澱粉質の糊化が進むためであると考えられる。
【0017】
ここで「澱粉粒」とは、生地に含まれる澱粉の粒を指す。また更に最終品としての「即席麺」における「澱粉粒」とは、澱粉粒の形態または輪郭を維持した状態で蒸し工程および乾燥を経た、生地に含まれる澱粉の粒に由来する澱粉質の領域を示す。
【0018】
従来の即席麺が製造される工程において、生地に含まれる澱粉粒は蒸し工程で膨潤する。このような従来の即席麺の蒸し工程における蒸しの程度が進むにつれて、澱粉粒は膨潤し、最大限に膨潤された澱粉粒の多くはやがて崩壊し、糊化される。従来の即席麺の製造の蒸し工程においては、輪郭のない、または輪郭の不明瞭な、即ち澱粉粒としての形状を維持しない状態で表面を覆う糊化された澱粉が多く存在するようになる。このような従来の蒸し工程を経た麺は、その後乾燥される。
【0019】
これに対して本即席麺の場合、蒸し工程において澱粉粒は膨潤されるが、蒸し工程において崩壊にまでは至らない澱粉粒が多い。本即席麺においては、生地に含まれる澱粉粒の膨潤が生じても、最大限に膨潤されて崩壊する澱粉粒は従来に比べて少なく、従って、澱粉粒の形態、または澱粉粒の輪郭が維持された状態のものが従来に比べて多い。本即席麺の製造の蒸し工程において、加熱による澱粉質の膨潤および/または糊化は従来の即席麺に比べて低い。そのため、最終産物としての本即席麺の表面には、従来の即席麺と比較してより多くの、澱粉粒の形状または澱粉粒の輪郭がはっきりと残って存在している。
【0020】
本即席麺は、多孔質構造を有した麺であり、特に麺表面において膨潤したおよび/または小孔が開いた澱粉粒が、面積1.0mm2当たりに、面積率45〜80%、好ましくは50〜75%、より好ましくは55〜70%の範囲で、100〜390粒数、好ましくは150〜340粒数の間、更に好ましくは165〜325粒数で存在する。
【0021】
膨潤したおよび小孔の開いた澱粉粒の粒数を項目ごとに示す例を図3に示す。横軸が項目であり、縦軸が粒数(個)である。図3のグラフの右から3つ目までのデータが従来の即席麺を示すデータであり、同グラフの左から2つ目までのデータが本即席麺を示すデータである。ここで、従来の即席麺の場合、表面を形成するのは、乾燥工程において澱粉粒が崩壊し形が崩れて乾燥した(即ち、糊状の)固化物と、膨潤した澱粉粒と、小孔が開いた澱粉粒が存在する。従って、膨潤した澱粉粒と、小孔が開いた澱粉粒の存在の状態を観察することにより、本即席麺における澱粉の状態と、従来の即席麺における澱粉の状態とを適切に評価することが可能であると考えた。
【0022】
後述の実施例において詳しく示すが、図3に本願の即席麺と従来の即席麺との表面状態を実施例と比較例として比較したグラフを示している。このグラフの左から1つ目が本願発明の即席麺である実施例1であり、同3つ目が従来の即席麺である比較例1であり、更に左から2つ目が本発明の即席麺である実施例2であり、同4つ目が従来の即席麺である比較例2である。これらの実施例と比較例は、同じ組成の生地を用いて異なる蒸し条件で製造されたものである。本即席麺と従来の即席麺について得られた値の間には統計的な有意差がある。
【0023】
本即席麺の麺表面積に対する膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の占める面積の割合(即ち、面積率)は45〜80%、好ましくは50〜75%、より好ましくは55〜70%の間である。
【0024】
後述の実施例において詳しく示すが、本即席麺の膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の表面積に対する面積率を各実施例および各比較例の項目ごとに示す例を図4に示す。
【0025】
横軸が各項目であり、縦軸が面積率(%)である。図4のグラフの右から3つ目までのデータが従来の即席麺についての膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の分布を示すデータであり、同グラフの左から2つ目までのデータが本即席麺についての膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の分布を示すデータである。
【0026】
図4から分かるように、膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒は、その表面において、本即席麺の方が、従来の即席麺よりも多く存在する。また、図4のグラフの左から1つ目が本即席麺である実施例1、同3つ目が従来の即席麺である比較例1、さらに同左から2つ目が本即席麺である実施例2、同4つ目が従来の即席麺である比較例2である。これらの実施例と比較例は、同じ組成の生地を用いて異なる蒸し条件で製造されたものである。本即席麺と従来の即席麺について得られた値の間には統計的な有意差がある。
【0027】
本即席麺における澱粉の存在状態がその即席麺としての性質を決定づける上で特徴となるものであり、且つ本即席麺を特徴付けるものであると考えられる。またここにおいて、本即席麺は表面における澱粉の存在状態について言及してはいる。しかしながら、断定はできるものではないが、恐らく本即席麺と従来の即席麺の澱粉の状態は、表面のみに限るものではなく、麺内部における澱粉状態についても同様の相違があると推測される。
本即席麺の太さは、従来の太さでも良いし、同じ湯戻し時間で調理する場合であれば従来よりも、より太い麺としてもよい。
【0028】
本即席麺は、カップに収容されて提供される即席カップ麺であっても、即席袋麺であってもよい。具体的には、例えば、本即席麺は、カップ、箱または袋などそれ自体公知の何れかの容器に収容された状態で提供されてもよい。例えば、樹脂製の小袋に1食分として封入されて提供されても、複数食分が纏めて1つの樹脂製の袋に封入されて提供されてもよい。また、1食分または複数食分の本即席麺が、それぞれ小袋に封入されたスープの素および/またはかやくと共に1つの袋に封入されて提供されてもよい。
【0029】
本即席麺の喫食法は、従来通りの簡便な調理操作による喫食方法に準ずる。
【0030】
上述した本即席麺は、その構造により従来よりも短時間、例えば、従来と同様の麺形状であれば、1〜2分程度の湯戻しの短縮が可能で、また同じ湯戻し時間であれば形状を太くおよび/または厚くすることが可能であり、且つ良好な食感を提供することが可能である。
【0031】
本即席麺の製造方法は、例えば、次のように行ってよい。まず、主原料を含む麺生地を用意する。この麺生地から、それ自身公知の何れかの手段により所望の形状の生麺線を作製する。得られた生麺線を、蒸し工程と、熱風または油揚げによる乾燥工程との両方の工程を経ることにより最終的な澱粉の糊化を達成する。蒸し工程における澱粉の糊化は最小限に、即ち、蒸し工程の熱により澱粉粒が崩壊されずに膨潤された限界の状態とする。その後、乾燥する。乾燥工程は、例えば、高温乾燥、例えば、熱風乾燥または油揚げ乾燥であってよい。このような状況で2段階に亘り澱粉を糊化することにより、蒸し工程により膨潤された澱粉粒が、乾燥工程で澱粉粒内部に出来た水蒸気の膨張圧により噴出孔が開いて乾燥した領域と、水蒸気の噴出孔が出来ずに膨潤しただけで乾燥して出来た領域を形成し、それにより細かな多数の孔と、粒状の白い円として観察される部分が発生すると考えられる。このような状態の観察される多孔質構造を有することにより、本製造方法は、上述のような短時間で且つ食感の優れた即席麺を提供することが可能である。
【0032】
本即席麺の製造時における麺生地の蒸し工程は、従来の即席麺の製造における蒸し工程と比べて、低温且つ短時間で行われるこのような蒸し条件による工程を特徴として含む製造方法によって製造されることにより、本即席麺では澱粉粒の崩壊が少ない。これにより、従来よりも短時間で湯戻しが可能であり、また、同じ戻し時間であればより太い麺を湯戻しが可能であり、且つ良好な食感を有する即席麺を製造することが可能となる。
【0033】
例えば、生麺線の蒸しの条件は次の通りである。蒸し時間は、約30秒〜約3分、好ましくは約1分〜約2分30秒である。蒸し温度は、95℃〜100℃以下、好ましくは97℃〜99℃である。
【0034】
乾燥工程の条件は、高温乾燥であればよく、例えば、熱風乾燥または油揚げ乾燥であってよい。乾燥温度は、それ自身公知の何れの条件でよいが、油揚げ乾燥にあっては、例えば、約140℃〜約160℃、好ましくは約145℃〜約155℃であってよい。乾燥時間は、約1分〜約2.5分での乾燥である。また、熱風乾燥にあっては、約90℃〜120℃であって、乾燥時間は約5分〜60分での乾燥である。
【0035】
「主原料」は、これらに限定されるものではないが、例えば、強力粉、準強力粉、薄力粉およびデュラムセモリナ粉などの小麦粉、並びに例えば、米粉およびトウモロコシ粉などを含むそれ自身公知の何れかの穀粉、例えば、ジャガイモおよびタピオカなどの澱粉、並びにこれらをそれ自身公知の手段により加工した加工澱粉などであってもよい。
【0036】
また、本即席麺において、麺生地に含まれる澱粉量を調整することも好ましい。例えば、主原料の総重量に対して約15重量%〜約50重量%で澱粉を含んでよく、好ましくは約重量20%〜約40重量%で澱粉を含んでよく、より好ましくは約25重量%から約 重量35%で澱粉を含んでよい。
【0037】
本即席麺において使用される澱粉、主原料に含まれる澱粉であっても、主原料に加えて、天然物由来の澱粉またはそれ自身公知の何れかの手段により加工した加工澱粉であってよい。
【0038】
麺生地は、主原料の他に、更に水、食塩および/またはその他の添加物を含んでもよい。
【0039】
その他の添加物の例は、これらに限定するものではないが、かんすい、植物性たんぱく質、卵粉、やまいも粉、乳化剤、増粘多糖類、色素および食品添加物として通常使用可能なそれ自身公知の添加物を含む。添加物の選択は、最終製品の特徴、例えば、麺の種類などに応じて、例えば、中華麺、ワンタン、パスタ、うどんおよびソバなどの特徴に応じて行えばよい。
【0040】
かんすいとは、成分規格に適合する炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸類のカリウム塩もしくはナトリウム塩を原料とし、その1種もしくは2種以上を混合したもの又はこれらの水溶液もしくは小麦粉で希釈したものをいう(食品衛生法に基づく食品添加物公定書)。本即席麺の製造方法においては、前記成分規格の要件を満足するかんすいを使用することができる。また、かんすいとしての作用を奏するものであれば代替物質を使用することも、あるいはかんすいと代替物質とを併用することも可能である。穀粉、食塩、水及びその他の添加剤の配合比率は特に制限はない。
【0041】
麺生地の形成は、それ自身公知の何れかの手段を使用してよい。麺生地の形成に通常必要な材料であって、主原料を含む材料を、例えば、練り合わせればよい。麺生地の形成において、一般的に材料を練り合せるためには水分が存在する。使用される水分の量は、麺生地の形成に必要な水分量であればよい。例えば、それ自身公知の従来の何れかの水分量であればよく、例えば、主原料の総重量に対して約25重量%〜約50重量%であってよい。従来の即席麺を製造する場合、このような水分量の麺生地、例えば、約20重量%〜約50重量%を含む麺生地からなる生麺線を蒸す。
【0042】
生麺線の形状は、最終製品、例えば、中華麺、ワンタン、パスタ、うどんおよびソバなどの形態に依存して、一般的に麺として公知の何れの形態であってよい。例えば、中華麺、スパゲティ、うどんおよびソバなどの場合にはひも状であってよい。しかしながら、ショートパスタの場合では、ひも状に限らずそれ自身公知の任意の形状であってもよい。その場合「生麺線」は「生麺体」と読み替えてよい。或いは、当業者に公知の所望する何れかのパスタまたは中華麺に適した何れの形状であってもよい。
【0043】
[例]
実施例1 本即席麺の製造
主原料としての小麦粉1000gと、加工澱粉を330g(主原料に対して約25%)とをミキサーに投入した。470g(主原料に対して約35%)の水を別に用意し、これに食塩20g、かんすい5gを加えて撹拌溶解した後に、前記ミキサー内に投入し、混練して麺生地とした。次いで、前記麺生地を常法に従ってロール圧延して1.10mmの厚さとし、10番角刃で切り出して幅3.0mmの生麺線とした。この生麺線を定量カットし、澱粉粒を崩壊させない様蒸機庫内の蒸気噴出用配管からの噴出温度をコントロールした蒸気を使用し、(例えば蒸気に向けて水を噴き込み、(蒸気流量100Kg/hに0.05から1.0L/minの量で吹き込む)調湿し温度を下げた蒸気を使用し蒸気噴出用配管内の温度を100〜105℃で安定させる等)庫内温度98℃の蒸し条件で1分間蒸した。これを、リテーナーに収納して150℃で油揚げして乾燥して、実施例1の即席麺を得た。
【0044】
実施例2 本即席麺の製造
主原料としての小麦粉1000gと、加工澱粉を540g(主原料に対して約35%)とをミキサーに投入した。570g(主原料に対して約37%)の水を別に用意し、これに食塩20g、かんすい5gを加えて撹拌溶解した後に、前記ミキサー内に投入し、混練して麺生地とした。この麺生地を用い、ロール圧延で1.30mmの厚さとすること以外は実施例1と同様に即席麺を製造し、実施例2とした。
【0045】
比較例1 比較用即席麺の製造
実施例1と同様の組成と同様の方法により生麺線を製造した。この生麺線を定量カットし、従来通りの蒸気を使用し(蒸気噴出用配管内の温度が高い状態)庫内が温度102℃の蒸し条件で2分間蒸した。これを、リテーナーに収納して150℃で油揚げして乾燥して、比較例1の即席麺を得た。
【0046】
比較例2 比較用即席麺の製造
実施例2と同様の組成と同様の方法により生麺線を製造した。この生麺線を定量カットし、比較例1と同様の条件で蒸しおよび乾燥して、比較例2の即席麺を得た。
【0047】
比較例3
従来製法にて製品化された自社製市販の即席フライ中華麺を比較例3とした。
【0048】
比較例4
従来製法にて製品化された他社製市販の即席フライ中華麺を比較例4とした。
【0049】
例1.即席麺の表面
実施例1の本即席麺および比較例1の従来の即席麺の表面を観察した。
【0050】
実施例1の本即席麺および比較例1の従来の即席麺をそれぞれ、石油エーテルで3時間脱脂し、麺線から余分な油脂を除去した状態で、デジタルマイクロスコープ(キーエンス、DIGITAL MICROSCOPE VHX-1000)を用いて表面を観察した。その結果を図1(a)および(b)に示す。図1(a)に示す実施例1の本即席麺は、表面を細かな多数の孔および粒状の円(即ち、白い円)が表面全体を覆っていた。多数の孔は、乾燥時澱粉粒内部に出来た水蒸気の膨張圧により噴出孔が外部に向けて開口した澱粉粒であり、白い円は水蒸気による噴出孔が出来ずに膨潤しただけで、表面の生地に由来する薄膜部にて粒を維持された状態で乾燥された領域であると考えられた。
【0051】
これに対して、図1(b)に示す、比較例の即席麺は、本即席麺よりもやや大き目の孔が存在し、且つ粒状の円がまばらに存在するに留まっていた。
【0052】
例2.断面の観察
実施例1の本即席麺および比較例1の従来の即席麺の断面を観察した。
【0053】
実施例1の本即席麺および比較例1の従来の即席麺をそれぞれ、石油エーテルで3時間脱脂し、麺線から余分な油脂を除去した状態で、麺線の相互付着、割れ欠けの無い部分を選択し、切断し、断面を走査型電子顕微鏡(日本電子JEIL JSM-5800LV)を用いて180倍で断面を観察した。その結果を図2(a)および(b)に示す。図2(a)および(b)は、上方が表面側であり、下部に行くに従い麺内部を示している。
【0054】
図2(a)に示す実施例1では、細かな孔が存在しており、また、崩壊しない澱粉粒が数多く残っている表面(即ち、粗面)であった。
【0055】
これに対して図2(b)の比較例1は、そこに存在する孔が実施例1よりも明らかに粒数が少なく、また表面は滑らかな(即ち、滑面)状態であった。これは、比較例1が蒸し工程により十分に澱粉の糊化が達成されているために、表面を糊化された澱粉からなる糊が覆っているためであると考えられた。
【0056】
例3.表面の分析
実施例1および2、比較例1および2、並びに市販の即席フライカップ中華麺(比較例3)についてそれぞれの表面を分析した。
【0057】
各麺を石油エーテルで3時間脱脂し、麺線から余分な油脂を除去した状態で、デジタルマイクロスコープ(キーエンス、DIGITAL MICROSCOPE VHX-1000)を用いて表面を撮影し、画像を記録した。得られた各画像をデジタルマイクロスコープ(500倍(キーエンス、DIGITAL MICROSCOPE VHX-1000))にて澱粉粒の1つ1つをなぞり、VHX-1000の機能にて、それぞれの表面積を自動計算させた後、単位面積当たりの粒数および面積率を算出した。その結果を図3および図4に平均値とそのばらつきも合わせて示した。
【0058】
図3は、膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の粒数を、各実施例および各比較例の項目ごとに示す。横軸が各項目であり、縦軸が粒数(個)である。図3のグラフの右から3つ目までのデータが比較例を示すデータであり、同グラフの左から2つ目までのデータが実施例を示すデータである。
【0059】
図3から分かるように本即席麺である実施例は、従来の即席麺である比較例に存在する膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の約1.5倍量以上の粒数が存在していた。
【0060】
図4は、膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒の表面積に対する割合、即ち面積率を各実施例および各比較例の項目ごとに示す。
【0061】
横軸が各項目であり、縦軸が面積率(%)である。図4のグラフの右から3つ目までのデータが比較例についての分布を示すデータであり、同グラフの左から2つ目までのデータが実施例についての分布を示すデータである。
【0062】
図4から分かるように、表面における膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒は、本即席麺である実施例の方が、従来の即席麺である比較例よりも多く存在していた。
【0063】
図3、4で得た平均値から面積率%と粒数について平均値の偏差の分布を算出すると、本即席麺の膨潤したおよび小孔が開いた澱粉粒の面積1.0mm当たりの面積率は、45〜80%、好ましくは50〜75%、より好ましくは55〜70%の範囲で粒数は100〜390粒数、好ましくは150〜340粒数の間、より好ましくは165〜325粒数に存在する
例4.官能試験
実施例1および、比較例1、比較例3および比較例4について官能試験を行なった。
【0064】
実施例1および比較例1、比較例3および比較例4をそれぞれ湯戻しした後に10名のパネラーにより評価を行い、その評価を5段階評価、即ち、専門パネラー10名による5点法で行なった。
【0065】
それぞれの湯戻しは次のように行なった。実施例1および比較例1については熱湯を注ぎ、5分間湯戻しした。比較例3および4については熱湯を注ぎ、5分間湯戻しした。比較例3および比較例4は製造者が推奨する標準的な調理法である。
【0066】
評点は次の通りである;5=非常に良い、4=やや良い、3=良い、2=やや悪い、1=悪い。結果を表1に示す。
【表1】

【0067】
以上の結果から、比較例に比べて実施例の方が、湯戻りが良く、更に、滑らかさと歯切れなどの食感についての評価が優れていることが分かった。
【0068】
例5.官能評価
実施例1、比較例1、比較例3および比較例4について、複数の食感に関する評価項目について定量的記述分析法(Quantitative Descriptive Analysis ; QDA法)により官能評価を行った(日本官能評価学科誌Vol 6, No.2, pp. 138-145, 2002)。各即席麺の調理は例4と同様に行なった。
【0069】
使用したQDA法による官能検査は、それ自身公知の標準的なQDA法による官能評価を麺食感評価に応用した分析型官能評価である。QDA法による官能評価法は、個人差を最小限にした統計的な信頼性を有する客観的評価法である。評価者は、分析機器と同等の精度を発揮できるようにQDA法に基づきトレーニングされた者である。複数の食感に関する指標、例えば、弾性および復元性などについて数値データを得た。それらの数値データから総合的な特徴を把握するために、統計学的処理である主成分分析を行った。その結果を図5に示す。
【0070】
図5に示すマッピングでは、主成分1が食感の弾力や湯戻りに関する指標、主成分2が滑らかさや経時変化に関する指標を表している。この評価により、本願発明に従う即席麺は、これまでの即席麺類に無かった戻りの良さと滑らかな喉越しを有するなど優れた食感を有することが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造を有した麺であり、麺表面において膨潤した澱粉粒および小孔の開いた澱粉粒が、面積1.0mm2当たりに100〜390粒数の間で存在し、且つ麺表面に対する膨潤した澱粉粒および小孔の開いた澱粉粒の占める面積率が45〜80%の間である即席麺。
【請求項2】
主原料を含む麺生地から形成した生麺線を、温度95℃〜100℃以下で、30秒〜3分間、の条件化で前記生麺線を蒸し、且つ高温乾燥することにより、当該生麺線に含まれる澱粉の糊化を達成されることを具備する方法により製造された、多孔質構造を有した麺であり、麺表面において膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒が、面積1.0mm2当たりに100〜390粒数の間で存在し、且つ表面積に対する膨潤したおよび小孔が開いた澱粉粒の占める面積率が45〜80%の間である即席麺。
【請求項3】
主原料を含む麺生地から形成した生麺線を、温度95℃〜100℃以下で、30秒〜3分間、の条件下で前記生麺線を蒸し、且つ高温乾燥することにより、当該生麺線に含まれる澱粉の糊化を達成し、多孔質構造を有した麺であり、麺表面において膨潤した澱粉粒および小孔が開いた澱粉粒が、面積1.0mm2当たりに100〜390粒数の間で存在し、且つ表面積に対する膨潤したおよび小孔が開いた澱粉粒の占める面積率が45〜80%の間である即席麺を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−100588(P2012−100588A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251718(P2010−251718)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000222783)東洋水産株式会社 (21)
【Fターム(参考)】