説明

卵加工食品製造方法及び該方法で製造される卵加工食品

【課題】短時間で簡便に、ふんわりした食感を有する卵加工食品を製造することができる方法の提供。
【解決手段】卵加工食品の製造方法であって、
全卵と油脂を混合して得た卵−油脂混合組成物を容器内で加熱することにより、容器内面に卵凝固物を生成させ、該容器内面に生成した卵凝固物を剥ぎ取るとともに、残存する卵−油脂混合組成物を該容器内面に接触させる工程を含み、
ここで剥ぎ取った卵凝固物は残存する卵−油脂混合組成物中に浮遊し、
該工程を少なくとも2回以上行うことを特徴とする、卵加工食品製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵加工食品製造方法及び該方法により製造される卵加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭においては、スクランブルエッグや親子丼などの、とき卵を加熱、凝固させて作る料理は、通常数人分をフライパンや鍋等で調理して作られる。この程度(数人分)の分量を一度に作る場合は、使用する卵のすみずみにまで火が通り、ふんわりした凝固卵が得られる。
【0003】
しかしながら、このような家庭で作られる卵料理の食感を大量生産品で実現するのは難しい問題であった。大量の卵を使用するため、均一な加熱や撹拌が難しく、特に一度に大量のとき卵を加熱、凝固させてふんわりとした凝固卵を均一に得ることは難題であった。
【0004】
これまでにも、例えば、薄膜状凝固卵が多数集合してなる卵加工食品が開発されており、この卵加工食品は、オムライス用、あるいは親子丼等の丼用の凝固卵として、またあるいは中華スープの具等として用いられている。(例えば特許文献1、2)。
【0005】
しかしながら、当該薄膜状凝固卵は、加温した液体の流れに対してノズル等から全卵液又は卵白液を滴下し、凝固させて金網にとって水切りし、さらにこれを撹拌する等という、非常に複雑な工程を経て製造されるものであった。
【特許文献1】特開平11−75778号公報
【特許文献2】特許第2946503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、工業的にも、短時間で簡便に、ふんわりした食感を有する卵加工食品を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、驚くべき事に、まず全卵と油脂を混合し、さらにこれに必要に応じて卵白を混合して得た組成物を、容器に入れて加熱撹拌して連続的に卵凝固物を得、さらにこの卵凝固物が当該組成物中に浮遊しながら加熱撹拌がなされることによって、短時間で簡便に、大量のふんわりした食感を有する卵加工食品を得られることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0008】
例えば、本発明は以下の項1〜9の卵加工食品製造方法及び食品に係るものである。
項1.
卵加工食品の製造方法であって、
全卵と油脂を混合して得た卵−油脂混合組成物を容器内で加熱することにより、容器内面に卵凝固物を生成させ、該容器内面に生成した卵凝固物を剥ぎ取り、剥ぎ取った卵凝固物を残存する卵−油脂混合組成物中に浮遊させるとともに、残存する卵−油脂混合組成物を該容器内面に接触させる工程を含み、
該工程を少なくとも2回以上行うことを特徴とする、卵加工食品製造方法。
項2.
全卵と油脂を混合した後、さらに卵白を混合して卵−油脂混合組成物を得ることを特徴とする、項1に記載の卵加工食品製造方法。
項3.
卵−油脂混合組成物における全卵と油脂の混合比率が、全卵100重量部に対して油脂7〜42重量部であることを特徴とする、項1又は2に記載の卵加工食品製造方法。
項4.
油脂が、大豆油、菜種油、トウモロコシ油、米油、サフラワー油、ゴマ油及びヒマワリ油からなる群より選択される少なくとも1種の植物性油である、項1〜3のいずれかに記載の卵加工食品製造方法。
項5.
全卵、油脂及び卵白の混合比率が、(全卵:油脂:卵白)の重量比で(100:20〜40:20〜70)である、項2〜4のいずれかに記載の卵加工食品製造方法。
項6.
容器内面から剥ぎ取って得られる卵凝固物の厚さが3〜120mmである、項1〜5のいずれかに記載の卵加工食品製造方法。
項7.
容器内で加熱する卵−油脂混合組成物量が1〜400kgであることを特徴とする、項1〜6のいずれかに記載の卵加工食品製造方法。
項8.
項1〜7のいずれかに記載の卵加工食品製造方法により製造される卵加工食品。
項9.
項8に記載の卵加工食品を含む、レトルト食品、チルド食品又は冷凍食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る卵加工食品製造方法により、工業的にも、短時間で簡便に、ふんわりした食感を有する卵加工食品を製造することができる。また、当該卵加工食品を大量に製造することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0011】
なお、本発明において「%」は特に断りのない限り「重量%」を意味する。
【0012】
本発明において、全卵とは卵黄と卵白の混合物のことをいい、割卵して得られる液卵はもちろん、液卵の卵黄と卵白の混合比率と同程度の混合比率で卵黄と卵白が混合されたものも含む。食用にされる卵類としては、通常鳥類由来の卵が挙げられ、例えば鶏、ウズラ、アヒル、ダチョウ等の卵が好ましい。特に、入手容易性の観点から、現在一般によく流通している鶏の卵が好ましい。これらの卵を割卵して得られる液卵をそのまま全卵として用いてもよいし、一旦卵黄と卵白に分離し、それらを任意の比率で混合したものを全卵として用いてもよい。卵黄と卵白を混合したものを全卵として用いる場合は、卵黄1重量部に対し、卵白0.5〜4重量部を混合することが好ましく、卵白1〜3重量部を混合することがより好ましい。
【0013】
なお、本発明では、生卵を卵割して得られるものから、卵黄を除いたものを卵白と呼ぶ。また、本発明では、必ずしも同一種の生物の卵から得られた卵黄、卵白を用いる必要はない。
【0014】
全卵、卵黄及び卵白は、生卵を割卵したままの液卵や、殺菌を施したもの、冷凍した後解凍したもの、そして、乳化剤や糖類、塩類、デンプン類、多糖類、タンパク質類、アミノ酸、調味料等必要に応じ適宜添加したもの等であってもよい。また、全卵、卵黄及び卵白は、加熱凝固性の性質を失わないのであれば、例えばコレステロールや糖分、リゾチーム等の一部の成分が除去されていてもよい。
【0015】
本発明における油脂としては、常温で液体状の食用油脂であればよく、例えば菜種油、大豆油、トウモロコシ油、米油、サフラワー油、ゴマ油、ヒマワリ油等の植物性油が挙げられる。なかでも、大豆油、菜種油等が好ましい。これらは、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
本発明に係る卵加工食品製造方法では、まず全卵と油脂を混合する。特に制限されるものではないが、混合割合は、全卵100重量部に対して油脂7〜42重量部が好ましく、15〜35重量部がより好ましい。混合は、撹拌等通常用いられる方法により行うことができ、全体としてとろみを有する黄色の液状組成物となるまで行う。油脂を加えることにより、得られる卵加工食品のふんわり感が向上するので好ましい。
【0017】
また、必要に応じて当該混合物にさらに卵白を加え、混合する。卵白を加えることにより、得られる卵加工食品がつぶれにくくなり、食感が良好になっておいしさが増すので好ましい。但し、卵白を加え過ぎると、得られる卵加工食品が固くなってしまうので、添加量には注意する必要がある。混合比率は、全卵及び油脂混合物100重量部に対し、卵白0〜95重量部が好ましく、19〜48量部がより好ましい。
【0018】
またさらに、全卵、油脂及び卵白の混合比率が、(全卵:油脂:卵白)の重量比で(100:20〜40:20〜70)であることが好ましく、特に(100:30〜35:60〜65)であることが好ましい。この混合比率であれば、得られる卵凝固物がふんわりとするともに、適度なつぶれにくさを有する。
【0019】
全卵と油脂を混合する際、あるいは卵白を加える際に、その他の任意成分を添加することもできる。例えば、最終的に得られる卵加工品の黄色度を強めるため、必要に応じてβカロチン、クチナシ、アナトー色素などの着色成分を添加してもよい。また、その他、水、デンプン、増粘剤(キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガムなど)、調味料(食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、醤油、味噌、トレハロースなど)等を添加してもよい。これらの任意成分の添加量は、適宜設定することができる。
【0020】
なお、このようにして得られる全卵及び油脂の混合物を、以下「卵−油脂混合組成物」と表記することがある。卵−油脂混合組成物は、全体としてとろみを有する黄色の液状組成物である。
【0021】
次に、卵−油脂混合組成物は、容器に入れられ、撹拌しながら加熱される。当該組成物を入れる容器は特に限定されないが、お椀型(例えば平釜)又は筒型形状の容器(例えば炒め機)が好ましい。加熱方法は容器全体が均一に温められるのであれば特に制限されず、例えば、当該組成物を入れた容器を火にかけてもよいし、容器自体が自動的に温められる装置等を使用してもよい。なお、卵−油脂混合組成物を容器に入れる前に、予め容器に油脂を少量入れて温めておくと(つまり、油をひいておくと)、得られる卵凝固物の焦げを防止できる。
【0022】
撹拌方法は上記の項1に記載した工程をなし得るものであれば特に限定されず、卵−油脂混合組成物は容器に接している部分から加熱されて凝固し、卵凝固物となるため、容器と該卵凝固物との間に空間を作るように(すなわち該卵凝固物を剥ぎ取るように)撹拌できるものであればよい。このように撹拌することで、容器と接する卵−油脂混合組成物が凝固して卵凝固物となったところで剥がされ、凝固していない該組成物が容器と接し、これがさらに凝固することとなる。よって、容器と卵凝固物との間に空間を作るように撹拌することにより、連続的に卵−油脂混合組成物が凝固した卵凝固物を得ることができる。このように、容器内側壁面に接した卵凝固物が得られては剥がされ、得られては剥がされることで、連続的に卵凝固物を得ることができる。また、剥がされた卵凝固物は、卵−油脂混合組成物中に浮遊して存在するため、容器内面から剥がされた後、さらに加熱されて焦げたり、より固く凝固してしまうことはほとんどない。
【0023】
なお、卵−油脂混合組成物の多くが(約60%以上)卵凝固物となると、剥ぎ取った卵凝固卵は残存する当該組成物中に完全に浮遊することは難しくなり、当該組成物に接した状態で撹拌されるようになる。
【0024】
このような撹拌は、焦がさないように加熱条件、撹拌条件等を調整して行う。ヘラ等を用いて人の手で行ってもよいし、機械で行ってもよい。例えば、容器内面に沿って円運動し、順次容器内面に生成した卵凝固物を剥がしとることが可能な撹拌装置を用いるのが好ましい。具体的には、容器として平釜を用いる場合は、平釜内面に沿った形をしたブレードを回転させることで、当該撹拌を行い得る。また、このときの回転速度は、卵凝固物が生成する速度に応じて適宜設定できるが、容量10〜500Lの平釜に2〜400kgの卵−油脂混合組成物を入れて加熱、撹拌する場合は、7〜15回転/分程度が好ましい。
【0025】
このように加熱、撹拌することで、大量に製造する場合でも、非常に短時間で簡便に均一に加熱されて凝固した卵凝固物を得ることができる。また、このようにして得られた卵凝固物は、非常にふんわりとした食感を有する。限定的な解釈を望むものではないが、卵−油脂混合組成物中に浮遊することで、卵凝固物の熱により卵−油脂混合組成物がごく少量当該卵凝固物に接して柔らかく固まり、よりふんわりした食感を得ることができると考えられる。
【0026】
なお、上述ように、全ての卵−油脂混合組成物を同様に加熱して卵凝固物とする場合、少なくとも2回以上(好ましくは10回以上、さらに好ましくは100回以上)容器内面に生成する卵凝固物を剥ぎ取る工程が繰り返される。なお、容器内面に全体に沿って生成する卵凝固物を全て剥ぎ取ることをもって「1回」とカウントする。すなわち、回転式のブレード等で撹拌及び剥ぎ取りを行う場合は、当該ブレード等が1回転することを「1回」とカウントする。
【0027】
容器内面にできた卵凝固物は、ある程度の面積(例えば5〜600cm、好ましくは25〜300cm)を有する断片として剥がされればよい。また、当該卵凝固物の厚さが3mm以上になった時点で容器内面より卵凝固物を剥がすことが好ましく、4mm以上になった時点であることがより好ましく、5mm以上になった時点であることがさらに好ましい。卵凝固物の厚みが2mm以下であると、食したときにふんわりした食感を得ることができず、好ましくない。通常3〜120mm、好ましくは5〜80mmの厚さを有する断片として剥がされる。例えば下記製造例2に記載の条件で卵−油脂混合組成物の加熱撹拌を行うことにより、容易に3mm以上の厚さを有する卵凝固物断片を大量に得ることができる。
【0028】
なお、卵凝固物断片の厚さとは、容器内面より剥ぎ取った卵凝固物を無作為に10断片回収し、これらの厚みを測定した時の平均値である。
【0029】
加熱撹拌時の容器の温度は、容器により異なるが、一般に卵−油脂混合組成物を入れる時点で容器が80〜130℃に熱せられていることが好ましく、100〜120℃に熱せられていることがより好ましい。
【0030】
なお、加熱撹拌中に組成物の温度が75〜80℃となれば、その時点で容器の加熱を停止し、余熱で組成物を全て凝固させる方が、凝固物が硬くなり過ぎずふんわりした食感を得ることができ、また焦げも防止できるため好ましい。余熱だけでは全量が凝固しなかった場合は、適宜加熱を再開してもよい。
【0031】
一度に容器に入れられ、加熱に供される卵−油脂混合組成物量は、特に制限されるものではなく、用いる容器の形状及び容量によって適宜設定することができる。最初に容器内面に接してできる卵凝固物が撹拌により剥がされた後、卵−油脂混合組成物中を浮遊することができるよう、一度に全て凝固してしまう程度の量よりもはるかに多量を容器に入れることが好ましい。例えば、1〜400kg、好ましくは2〜350kgの卵−油脂混合組成物を用いることができる。また、容器としては、卵凝固物が卵−油脂混合組成物中を浮遊できる程度の深さを有するものが好ましい。
【0032】
例えば、容器として平釜を用いる場合は、平釜の容量の0.1〜0.7倍容量の卵−油脂混合組成物を用いるのが好ましい。具体的には、300Lの平釜を容器として使用する場合、30〜200kgの卵−油脂混合組成物を用いるのが好ましい。この場合、平釜を100から120℃に予め加熱した上で卵−油脂混合組成物全量を入れ、上述のように撹拌を行うことで8〜45分程度で全量を卵凝固物とすることができる。
【0033】
上述のようにして、3mm以上の厚みを有する卵凝固物の断片の集合物を得ることができる。なお、撹拌されることで卵凝固物は、容器内面より剥がされる際の卵凝固物の断片より幾分小さな面積(例えば0.25〜100cm)の断片となる。全量の90%以上が1〜100cmの面積を有する集合物が好ましい。なお、当該厚みは、卵凝固物の断片を無作為に10断片回収し、これらの厚みを測定したときの平均値である。
【0034】
また、当該卵凝固物の断片の集合物は均一で安定した品質のものを工業的に大量生産することが可能であるから、卵加工食品として市場に流通させるのに適している。例えば、業務向けあるいは家庭向けに提供するため、パウチ、缶、ビン、プラスチックケース等の容器に詰めて食品(例えばレトルト食品)として出荷することができる。また、当該卵凝固物の断片の集合物に加え、適宜他の具材、調味液等をも容器へ分注することで、例えば、ふんわりした食感の卵凝固物を含む丼の素、オムレツの素等の食品(例えばレトルト食品)とすることもできる。お弁当や、総菜パック等に添えることもできる。さらに、容器に詰めたうえで、チルド食品や冷凍食品とすることもできる。特に、本願発明に係る卵加工食品は、チルド食品、冷凍食品として一定期間低温で保存された後、食するのに適した温度まで加温されたときも、ふんわりした食感を維持するという効果も有する。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
製造例1
下記表1に記載した量の全卵(鶏卵を割卵して得た液卵;以下の例も同じ)、大豆油、及び卵白(鶏卵由来;以下の例も同じ)を混合した。但し、まず全卵及び大豆油を混合した後、さらに卵白を加えて撹拌して混合を行った。表1に記載のように、全卵のみの撹拌物をコントロール、全卵及び大豆油の混合物(卵−油脂混合組成物)をT−1、全卵、大豆油及び卵白の混合物(卵−油脂混合組成物)をT−2、T−3とした。
【0036】
【表1】

【0037】
4つの小型の平釜(容量10L)を用意し、内面に大豆油をしいた後100℃まで加熱した。そして、各混合物を一気にそれぞれの平釜中へ投入し、ヘラを用いて1分間に10回転する速度で、容器内面に生成する卵凝固物を剥ぎ取りながら、全量が卵凝固物となるまで加熱撹拌した。このとき剥ぎ取った卵凝固物は、撹拌に伴って容器中の混合物中を浮遊した。また、混合物の多くが卵凝固物となった後は、剥ぎ取った卵凝固物が混合物に接した状態で撹拌した。
【0038】
このようにして得られた卵凝固物を8人のパネラーに食してもらい、その後ディスカッションをしてそれぞれの卵凝固物の食感をまとめてもらった。結果は、表2のようになった。
【0039】
【表2】

【0040】
表2に示すように、卵−油脂混合組成物が容器内面に接してできる卵凝固物を剥がし、これが卵−油脂混合組成物中に浮遊するよう撹拌を行うことで、ふんわりとした食感を有する卵凝固物が得られることが確認された。
【0041】
また、全卵及び大豆油を混合した後、さらに卵白を加えて撹拌して得た卵−油脂混合組成物の方が、全卵及び大豆油を混合したものよりも、得られる卵凝固物がつぶれにくさを有し、好ましい食間が得られることがわかった。具体的には、T−1では、口中でつぶれやすく、少し物足りない食感となることがあるのに対して、卵白を混合した卵−油脂混合組成物を用いたT−2及びT−3では、口中で比較的つぶれにくく、しっかりとした食感を得ることができ、結果として美味しい卵凝固物となることがわかった。
【0042】
さらに、T−2及びT−3の結果から、特に卵−油脂混合組成物を作るときの(全卵:油脂:卵白)の重量比が(100:20〜40:20〜70)であるときにふんわりとした食感とともに適度なつぶれにくさも得ることができ、中でも(100:30〜35:60〜65)であるときが好ましいこともわかった。
【0043】
製造例2
全卵19kg及び大豆油6.3kgを撹拌容器に入れ、その撹拌容器の羽を105rpmの速度で、2分間撹拌した。そして、その撹拌容器に卵白12kgを追加し、同速度にて、1.5分間撹拌した。その後、その他調味液として、食塩0.4kg、トレハロース1.5kg、カロチンパウダー0.05kg、キサンタンガム、0.12kg、でん粉、1.0kg、水14kg等を含む溶液を撹拌容器に入れ、泡立てないように、分離がなくなるまで、同速度にて撹拌を実施(5分間)し、卵―油脂混合組成物を得た。当該工程を独立して3回繰り返し、得られた卵―油脂混合組成物を1つの器にまとめた。
【0044】
二重構造で蒸気の間接加熱を行う平釜(容量300L)に入れ、焦げ付き防止用の大豆油を8.4kg入れて(すなわち、油をしいて)、100℃まで予め加熱した。その後、上述の工程により得られた卵−油脂混合組成物を一気に投入し、平釜に付属の撹拌羽(ブレード)により7回転/分で継続的に撹拌(及び卵凝固物の剥ぎ取り)を行いながら、当該組成物が80℃になるまで加熱を実施した(概ね30分)。その後は蒸気を止めて、加熱を中止し、余熱にて残りの卵―油脂混合組成物が全量凝固して、卵凝固物となるまで同様に撹拌した。
【0045】
全量凝固に要した時間は約45分であった。
これをパネラー8人に食してもらい、ディスカッションにて食感を評価してもらったところ、ふんわりとした食感とともに適度なつぶれにくさを有しており、製造例1におけるT−3と同等であると全員が評価した。
【0046】
なお、このようにして得られた卵凝固物を80g、丼用のだし70g、さらに玉ねぎ30g、鶏肉20gを1袋としてプラスチックパウチに充填し、これをボイル加熱し、親子丼の素を作製した。これを使用して親子丼を作製し、同じパネラー8人に評価してもらったところ、当該親子丼の素の卵凝固物は、つくりたてのふんわり感及び適度なつぶれにくさを保っていると全員が評価した。
【0047】
以上のことから、本願の卵加工食品製造方法によれば、一度に大量に製造した場合でも、ふんわりとした食感とともに適度なつぶれにくさを有した卵加工食品を得ることができること、及び当該卵加工食品を用いたレトルト食品等もふんわり感、適度なつぶれにくさを維持していること、が確認できた。
【0048】
このように、本発明に係る卵加工食品製造方法により、短時間で簡便に、大量のふんわりした食感及び適度なつぶれにくさを有する卵加工食品を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵加工食品の製造方法であって、
全卵と油脂を混合して得た卵−油脂混合組成物を容器内で加熱することにより、容器内面に卵凝固物を生成させ、該容器内面に生成した卵凝固物を剥ぎ取り、剥ぎ取った卵凝固物を残存する卵−油脂混合組成物中に浮遊させるとともに、残存する卵−油脂混合組成物を該容器内面に接触させる工程を含み、
該工程を少なくとも2回以上行うことを特徴とする、卵加工食品製造方法。
【請求項2】
全卵と油脂を混合した後、さらに卵白を混合して卵−油脂混合組成物を得ることを特徴とする、請求項1に記載の卵加工食品製造方法。