Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
卵巣がんの化学療法に対する抵抗性を予測および克服するための方法ならびに結腸がんの発生を予測するための方法
説明

卵巣がんの化学療法に対する抵抗性を予測および克服するための方法ならびに結腸がんの発生を予測するための方法

【課題】化学療法薬による治療または療法に対する抵抗性を低減または抑制するための医薬品に関する。
【解決手段】卵巣がん腫瘍細胞のシスプラチン抵抗性を低減させる医薬品の調製のために使用されるsiRNAを提供する。siRNA分子は、卵巣がん細胞において発現される細胞遺伝子の阻害因子として機能する。このsiRNAにより阻害される細胞遺伝子は、S100A10、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、ビネキシンβ、NM23D、グランカルシン、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、G−CSFR、IGFBP−7、SRB1、およびKIAA0082からなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある卵巣がん患者が化学療法に対して抵抗性であるかどうかを予測するための方法、ならびに個々の患者が結腸がんを有するかどうかを決定するための方法に関する。本発明はまた、卵巣がんを治療される患者における治療の有効性を観察するための方法にも関する。本発明はさらに、卵巣がんおよび結腸がんを治療するための方法にも関する。さらに、本発明は、腫瘍細胞、特に卵巣がん細胞または結腸がん細胞の増殖を抑制することができる化合物をスクリーニングする方法にも関する。本発明はまた、特に、従来の化学療法的治療法に対して抵抗性である卵巣がん細胞において、化学療法薬による治療または療法に対する抵抗性を低減または抑制するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣がんは、婦人科の悪性腫瘍のうちで最も致死的であり、死亡率は60%である。この疾患の様々な臨床病期に対する5年生存率は、次のとおり:病期I>90%、病期II=80%、病期III=20%、および病期IV=10%;であり、この疾患の後期では生存率が著しく低下する。この疾患の進行期に対する医療標準の治療には、腫瘍縮小手術とそれに続く化学療法が含まれる。
【0003】
全患者の約75%が疾患の病期IIIおよびIVで診断を受け、また、進行期の疾患の診断の遅れには予後不良が伴うため、大半の患者にとって、生き残る確率は低い。現在利用可能な化学療法剤に対する抵抗性は、別の主要な問題である。初期治療後に75%の患者で臨床的な完全寛解が実現されるにもかかわらず、大半の患者は、再発性の疾患を発症し、再治療を必要とするようになる。残念ながら、圧倒的多数が最終的には化学療法抵抗性を生じるようになり、その疾患に屈することになる。
【0004】
化学療法抵抗性は、いくつかの遺伝子および遺伝子産物の発現および生物活性の変化を伴う複雑な現象である。応答性の個体および非応答性の個体で異なって発現される遺伝子または遺伝子ファミリーは、一般に臨床的に使用されるような、ある特定の化学療法剤またはその組合せに対してどの患者が抵抗性であるかを予測するための分子マーカーとして使用することができる。さらに、化学療法抵抗性の個体で過剰発現される遺伝子は、1または複数の化学療法剤に対するがん細胞の抵抗性を低減させ得る、阻害のための標的となり得る。
【0005】
卵巣がんと同様に、結腸直腸がんの患者の生存率は、疾患が早期に診断されたときに最も良い。がんが早期に発見された場合は、結腸がん患者の5年生存率は約90%であるが、残念ながら、サーベイランスおよび予防手段の増加にもかかわらず、がんの37%しかこのような早期には発見されていない。がんが局部的に拡大して他の臓器に影響を与えている場合は、生存率は約64%に低下し、がんが転移した後では大幅に低下する(8%)(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Cancer Facts and Figures 2002;アメリカがん協会(American Cancer Society)発行物
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、疾患の進行過程で早期に結腸がんおよび卵巣がんを同定することが必要であり、化学療法抵抗性のがんを同定することが特に必要である。より詳細には、がん細胞の腫瘍形成能および化学療法薬に対する抵抗性の双方に関して、がん細胞の挙動は、完全には明確にされていない特定の遺伝子のセットの発現によって媒介されているとして当技術分野で理解されているため、卵巣がんの化学療法抵抗性についての有効な分子マーカーとしての機能を果たす遺伝子および遺伝子群または遺伝子セット、ならびに卵巣がんおよび結腸がんに対する臨床的に有効な治療標的を提供するそのような遺伝子または遺伝子セットを同定することが当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、化学療法薬による治療に対する抵抗性に関与する遺伝子、またはその発現が該抵抗性により修飾される遺伝子、あるいは、前記修飾された発現が抵抗性に関連し、または抵抗性を司っている遺伝子を同定するための方法および試薬を提供する。具体的には、本発明は、化学療法薬による治療に対する抵抗性に関与する遺伝子、またはその発現がそのように修飾される遺伝子、あるいは、前記修飾された発現が抵抗性に関連し、または抵抗性を司っている遺伝子、ならびに、化学療法薬抵抗性の細胞、特に薬物抵抗性の卵巣がん細胞に特徴的な、複数の遺伝子の修飾された遺伝子発現パターンを提供する。本発明はさらに、1または複数の前記遺伝子の発現または活性と相互に作用し、あるいはそれらに影響を及ぼす化合物を同定するための方法も提供する。また、卵巣がん、特に従来の化学療法的治療に対して抵抗性の、または抵抗性となってしまったがんを治療するための、化学療法剤の代替として有用な、または化学療法剤と併用すると有用な前記化合物も提供される。本発明はさらに、化学療法剤に対して抵抗性の腫瘍または抵抗性となった腫瘍を有する患者を同定するために化学療法的治療を観察するための方法および試薬も提供する。
【0009】
本発明は、化学療法剤に対して抵抗性である腫瘍細胞、最も好ましくは卵巣がん細胞の化学療法薬抵抗性を低減させ、かつ増殖を抑制、遅延、または防止する化合物を同定するための方法を提供する。この方法は、(a)化学療法薬抵抗性細胞がその化学療法薬に対して抵抗性であり、かつその細胞が化学療法抵抗性の卵巣がん細胞で過剰発現される少なくとも1種の遺伝子を発現している期間または濃度の化学療法薬の存在下で増殖している化学療法薬抵抗性細胞を、試験化合物と接触させる工程であって、その過剰発現遺伝子が(表1に示すGenBank登録番号で特定されている)S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused
toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン(Grancalcin)、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、(b)その試験化合物の存在下および不在下において1または複数の前記遺伝子または遺伝子産物の発現または活性について前記細胞を分析する工程、ならびに/あるいは、(c)その試験化合物の存在下および不在下において細胞増殖および/または遺伝子もしくは遺伝子産物のうちの少なくとも1種の発現もしくは活性を比較する工程からなり、試験化合物の存在下での遺伝子または遺伝子産物の発現または活性が、試験化合物の不在下での遺伝子発現と比べて低減している場合、または、細胞増殖がその化合物の存在下では抑制される場合、あるいはその双方の場合に、化合物が、化学療法抵抗性の腫瘍細胞の増殖を抑制する化合物として同定される。いくつかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって遺伝子発現を検出する。
【0010】
さらに、本発明は、化学療法剤に対して抵抗性である腫瘍細胞、最も好ましくは卵巣が
ん細胞の薬物抵抗性を低減させ、かつ増殖を抑制、遅延、または防止する化合物を同定するための方法も提供する。この方法は、(a)細胞がその化学療法薬に対して抵抗性であり、かつその細胞が化学療法感受性の細胞と比べて化学療法抵抗性の卵巣がん細胞では低いレベルで発現される遺伝子を発現している期間または濃度の化学療法薬の存在下で増殖している細胞を、試験化合物と接触させる工程であって、その遺伝子が、(表1に示すGenBank登録番号で特定されている)HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10である工程、b)試験化合物の存在下および不在下で細胞増殖および/または遺伝子発現もしくは遺伝子産物の活性について前記細胞を分析する工程、ならびにc)試験化合物の存在下および不在下での遺伝子の発現または遺伝子産物の活性を比較する工程からなり、(i)試験化合物の存在下での遺伝子の発現または遺伝子産物の活性が、試験化合物の不存下での遺伝子の発現または遺伝子産物の活性と比べて増大している場合、および/または(ii)細胞増殖がその化合物の存在下で抑制されている場合、および/または(iii)細胞増殖が抑制されている一方で、その遺伝子の発現および/または活性が増大している場合に、化合物は、化学療法抵抗性の腫瘍細胞の増殖を抑制する化合物として同定される。いくつかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって遺伝子発現を検出する。
【0011】
本発明は、腫瘍細胞の薬物抵抗性を低減させるため、または腫瘍細胞の増殖を抑制、遅延、もしくは防止するため、あるいはその双方のための方法を提供し、該方法は、腫瘍細胞を、その細胞が細胞遺伝子阻害因子の不在下では化学療法薬に対して抵抗性であるような期間または濃度の化学療法薬の存在下で、細胞遺伝子の少なくとも1種の阻害因子に接触させる工程であって、その細胞遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程からなる方法である。好ましい実施形態では、腫瘍細胞はヒトの腫瘍細胞であり、より好ましくは卵巣がん細胞である。特定の態様では、本発明によって同定される1または複数の遺伝子は、1または複数の前記遺伝子を標的にするように特異的に設計されたアンチセンスRNA分子またはsiRNA分子で阻害される。代替態様では、前記遺伝子の遺伝子産物が、それらのタンパク質の阻害因子を用いて阻害される。
【0012】
本発明は、腫瘍細胞の薬物抵抗性を低減させるための方法を提供し、該方法は、腫瘍細胞を、その細胞が細胞遺伝子HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10の発現または活性を増大させる化合物の不在下では化学療法薬に対して抵抗性である期間または濃度の化学療法薬の存在下または不在下で、HMT1、NAIP、eEFIε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10の発現または活性を増大させる少なくとも1種の化合物に接触させる工程からなる方法である。好ましい実施形態では、腫瘍細胞はヒトの腫瘍細胞であり、より好ましくは卵巣がん細胞である。
【0013】
本発明は、腫瘍細胞の増殖を抑制、遅延、または防止するための方法も提供し、該方法は、腫瘍細胞を、細胞増殖が、細胞遺伝子HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10の発現または活性を増大させる化合物の存在下では、前記化合物の不在下での細胞増殖と比べて減速または抑制される期間または濃度の化学療法薬の存在下または不在下で、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10の発現または活性を増大させる少なくとも1種の化合物に接触させる工程からなる方法である。好ましい実施形態では、腫瘍細胞はヒト
の腫瘍細胞であり、より好ましくは卵巣がん細胞である。
【0014】
別の態様では、本発明は、腫瘍細胞、最も好ましくは卵巣がん細胞の増殖を抑制、遅延、または防止するための方法を提供し、該方法は、腫瘍細胞を、1または複数の化学療法剤および細胞遺伝子の少なくとも1種の阻害因子の組合せに接触させる工程であって、その細胞遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、グランカルシン、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、またはKIAA0082である工程からなる方法である。特定の態様では、細胞遺伝子はMetAP2であり、化学療法剤はプラチナ系であり、少なくとも1種の阻害因子はフマギリンまたはフマギリン誘導体である。別の特定の態様では、細胞遺伝子はカルパイン2であり、化学療法剤はプラチナ系であり、少なくとも1種の阻害因子はN−アセチル−ロイシル−ロイシル−ノルロイシナール(ALLN)またはその誘導体である。表1に示す細胞遺伝子の阻害因子は、例えば、表1に示す遺伝子を標的にするように特異的に設計されたsiRNA分子もしくはshRNA分子であってもよいし、小分子阻害因子でもよい。
【0015】
別の態様では、本発明は、腫瘍細胞、最も好ましくは卵巣がん細胞の増殖を抑制、遅延、または防止するための方法を提供し、該方法は、腫瘍細胞を、1または複数の化学療法剤および細胞遺伝子の発現または活性を増大させる少なくとも1種の化合物の組合せに接触させる工程であって、その細胞遺伝子が、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10である工程からなる方法である。好ましい実施形態では、腫瘍細胞はヒトの腫瘍細胞であり、より好ましくは卵巣がん細胞である。
【0016】
本発明は、卵巣がん患者の腫瘍が化学療法的治療に対して抵抗性であるかどうかを予測する方法も提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子がS100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、(b)工程(a)で検出される1または複数の発現遺伝子または遺伝子産物に対応して、非腫瘍組織試料、最も好ましくは腫瘍の元の組織に由来する非腫瘍組織試料、または化学療法に良く反応した患者に由来する組織試料を含む対照試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子がS100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、ならびに(c)工程(a)で測定された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(b)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で検出される量が工程(b)で検出される量より少なくとも20%多い場合は、その患者が化学療法に対して抵抗性であると予測される方法である。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。特定の態様では、対照試料は化学療法に反応性のがん患者から得た生物試料である。いくつかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは
抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0017】
特定の態様では、この方法は、がん患者から得た生物試料で発現されるMetAP2の測定量が、化学療法薬に反応性の個体または卵巣がんではない個体から得た卵巣組織で検出される量より多いとき、患者がプラチナ系の化学療法に対して抵抗性であることを予測する。
【0018】
本発明はまた、卵巣がん患者の腫瘍が化学療法的治療に対して抵抗性であるかどうかを予測する方法も提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子がHMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10である工程、(b)工程(a)で検出される1または複数の発現遺伝子または遺伝子産物に対応する対照試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子がHMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10である工程、ならびに(c)工程(a)で測定された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(b)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で検出される量が工程(b)で検出される量より少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%少ない場合は、その患者が化学療法に対して抵抗性であると予測される方法である。特定の態様では、対照試料は化学療法に反応性のがん患者から得た生物試料である。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0019】
本発明はさらに、卵巣がん患者、特に化学療法的治療を受けている卵巣がん患者における疾患の進行を観察するための方法を提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、(b)その後の採取により患者から得た生物試料を用いて工程(a)を繰り返す工程、ならびに(c)工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(b)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で採取した生物試料に対する、その後採取した生物試料中の発現遺伝子または遺伝子産物の量の変化を検出することによって疾患の進行を観察し、その際、工程(b)で検出された発現遺伝子または発現遺伝子の産物の量が、工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比べて多いときに疾患の進行が検出される方法である。いくつかの実施形態では、患者は、工程(a)における遺伝子発現量の検出と工程(b)におけるその量の検出との間に化学療法的治療または他の治療を受ける。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。好ましい実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0020】
本発明はさらに、卵巣がん患者、特に化学療法的治療を受けている卵巣がん患者における疾患の進行を観察するための方法を提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB2
2A、NCOR2、MT1、またはMPP10である工程、(b)その後の採取により患者から得た生物試料を用いて工程(a)を繰り返す工程、ならびに(c)工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(b)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で採取した生物試料に対する、後で採取した生物試料中の発現遺伝子または遺伝子産物の量の変化を検出することによって疾患の進行を観察し、その際、工程(b)で検出された発現遺伝子または発現遺伝子の産物の量が、工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比べて少ないかまたは等しいときに疾患の進行が検出される方法である。いくつかの実施形態では、患者は、工程(a)における遺伝子発現量の検出と工程(b)におけるその量の検出との間に化学療法的治療または他の治療を受ける。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0021】
さらに、本発明は、患者のがん、特に卵巣がんまたは結腸がんを治療する薬剤としての、薬剤組成物の有効性を観察するための方法を提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、(b)ある量の薬剤組成物をその患者に投与する工程、(c)その後の採取により患者から得た生物試料を用いて工程(a)を繰り返す工程、ならびに(d)工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(c)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で採取した生物試料に対する、後で採取した生物試料中の発現遺伝子または遺伝子産物の量の変化を検出することによって、薬剤組成物の有効性を観察し、その際、工程(c)で検出された発現遺伝子または発現遺伝子の産物の量が、工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量より少ないとき、および、薬剤組成物の存在下で腫瘍の増殖が低減されている(すなわち、減速され、遅延され、または抑制されている)場合に、その薬剤組成物が有効であるとする方法である。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0022】
本発明は、患者のがん、特に卵巣がんを治療する薬剤としての、薬剤組成物の有効性を観察するための方法も提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10である工程、(b)ある量の薬剤組成物をその患者に投与する工程、(c)その後の採取により患者から得た生物試料を用いて工程(a)を繰り返す工程、ならびに(d)工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(c)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で採取した生物試料に対して、後で採取した生物試料中の発現遺伝子または遺伝子産物の量の変化を検出することによって薬剤組成物の有効性を観察し、その際、工程(c)で検出された発現遺伝子または発現遺伝子の産物の量が、工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量より多いとき、および薬剤組成物の存在下で腫瘍の増殖が低減されている(すなわち、減速され、遅延され、または抑制されている)場合に、その薬剤組成物が有効であるとする方法である。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。いく
つかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0023】
本発明は結腸がんを発見する方法も提供し、該方法は、(a)動物、好ましくはヒトから生物試料を得る工程、(b)生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、またはMetAP2である工程、(c)非腫瘍結腸組織試料を含む対照試料中で検出される1または複数の発現遺伝子または遺伝子産物の量を検出する工程、ならびに(d)工程(b)から得られる1または複数の発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(c)での量と比較する工程からなり、工程(c)での量と比べて工程(b)での量に差がある場合に結腸がんが検出される方法である。検出される差は、工程(c)で採取した生物試料に対する、工程(a)で採取した生物試料における1または複数の前記遺伝子の過剰発現でもよく、1または複数の前記遺伝子の不足または過小発現でもよい。例えば、S100A10、S100A11、SPARC、および/またはMetAP2の量が、工程(c)での量と比べて工程(b)において多い場合、ならびに/あるいはカルパイン2の量が、工程(c)での量より工程(b)において少ない場合は、結腸がんが発見される。いくつかの実施形態では、動物は、ヒト、好ましくは結腸がんを有するヒトである。好ましくは、生物試料は、結腸のスクリーニング作業をするための組織試料として当技術分野で一般に使用される、結腸組織試料、より好ましくはポリープ、さらにより好ましくは腺腫様(adematous)ポリープである。いくつかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0024】
さらに別の実施形態では、本発明は、動物、好ましくはヒトにおけるがんおよび/または化学療法薬抵抗性を診断するための方法を提供し、該方法は、2もしくは複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物量の変化のパターンを検出する工程からなる方法である。ある特定の実施形態では、これらの発現遺伝子は、表1に示される遺伝子である。一般に、本発明のこれらの方法は、(a)動物、好ましくはヒトから生物試料を得る工程、(b)その生物試料中の、表1に示される2もしくは複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程、(c)対照試料中で検出される2もしくは複数の発現遺伝子または遺伝子産物の量を検出する工程、ならびに(d)工程(b)から得られる2もしくは複数の発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(c)での量と比較することによって、2もしくは複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量の変化のパターンを決定する工程からなり、そのパターンが、がん、例えば、結腸がんもしくは卵巣がん、または薬物抵抗性、例えばシスプラチンに対する抵抗性と関連づけられる。いくつかの実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0025】
本発明は、卵巣がんの動物における化学療法薬抵抗性を検出するための方法も提供し、該方法は、(a)動物から採取した生物試料中の複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、(b)工程(a)で検出される複数の発
現遺伝子または遺伝子産物に対応する、非腫瘍卵巣組織または化学療法に反応性の患者に由来する腫瘍組織を含む対照試料中の前記複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子がS100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、ならびに、(c)工程(a)で測定された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(b)で測定された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で検出される量が工程(b)で検出される量より少なくとも20%多い場合は、その患者が化学療法に対して抵抗性であると予測される方法である。本明細書で提示するように、工程(a)で検出される量が工程(b)で検出される量より少なくとも20%多い複数の前記遺伝子は、化学療法薬に対して抵抗性である腫瘍試料に特異的な遺伝子発現パターンを定義づける。特定の態様では、対照試料は化学療法に反応性のがん患者から得た生物試料である。好ましくは、1または複数の前記遺伝子の発現は、工程(b)で検出される対照試料よりも、工程(a)で検出される腫瘍試料において多い。好ましい実施形態では、動物はヒトであり、最も好ましくはヒトのがん患者である。本明細書で開示するように、本発明はさらに、遺伝子発現パターンであって、該パターンが検出されたときに前記化学療法薬に対する抵抗性が予測される遺伝子発現パターンも提供する。好ましい実施形態では、特に、本明細書で特定する複数の遺伝子産物に特異的な核酸(遺伝子)プローブまたは抗体のアレイを用いて生物試料を分析することによって、遺伝子発現を検出する。
【0026】
都合のよいことに、本明細書で特定するいくつかの遺伝子は、これまで卵巣がんまたは結腸がんのいずれにも関連が認識されたことはなく、これらの疾患を治療処置するための新規な標的となる可能性がある。
【0027】
本発明の具体的な好ましい実施形態は、特定の好ましい実施形態に関する以下のより詳細な記述および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】化学療法薬に対する抵抗性が高い卵巣がん細胞株においてS100A10が高いレベルで発現されていることを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図2】化学療法薬に対する抵抗性が高い卵巣がん細胞株においてS100A11が高いレベルで発現されていることを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図3】化学療法に対する反応性がより高い患者から得た試料と比べて、抵抗性がより高い患者の腫瘍試料においてS100A10およびS100A11のmRNAレベルが上昇していることを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図4】化学療法抵抗性の細胞株でSPARCが高いレベルで発現していたことを実証する、定量的リアルタイムPCRの結果を示すグラフ。
【図5】がんが再発していた患者から採取した試料においてSPARCのmRNAが増大していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真。
【図6】化学療法抵抗性の卵巣がん細胞株でカルパイン2のmRNAレベルが上昇していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図7】シスプラチンを用いた治療に対して感受性の細胞株と比べて、化学療法抵抗性の細胞株においてグランカルシンのmRNAレベルが上昇していたことを実証するノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図8】MetAP2タンパク質の発現が化学療法抵抗性の極めて高い細胞株OVCA429において上昇しており、シスプラチン治療に対して感受性であるHey細胞株において下方制御されていたことを実証する、ウェスタンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびウェスタンブロットの結果のグラフ図。
【図9】シスプラチン系の化学療法に対する抵抗性のレベルが異なる3名の患者から得た組織試料におけるMetAP2のmRNA発現を示す、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。MetAP2は、化学療法に対する抵抗性が中間レベルの患者(CAP2)および低レベルの患者(CAP1)と比較して、最も抵抗性の高い腫瘍を有する患者(CAP3)から得た試料において最も増大している。
【図10】シスプラチンに対する抵抗性のレベルが最も高い卵巣がん細胞株においてeIF5の2種の転写物が検出され、いずれの発現レベルも上昇していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図11】腫瘍の再発前(CAP2)および再発後(CAP2+)の化学療法抵抗性の患者の腫瘍試料におけるeIF5の発現を示す、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図12】化学療法抵抗性の細胞株でeIF2BεのmRNAが増大していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図13】シスプラチンに対する抵抗性が最も高い卵巣がん細胞株においてeEF1εのmRNAが下方制御されていたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図14】シスプラチンに感受性の細胞株と比べて、抵抗性の細胞株においてSAPK/Erk1のmRNAレベルが上昇していたこと実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図15】TESK2のmRNAがシスプラチン抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図16】FASTキナーゼmRNAがシスプラチン抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図17】試験されたシスプラチン抵抗性の細胞株においてKLK6の発現レベルが増大されていたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図18】シスプラチン抵抗性の細胞においてHMT1の発現が下方制御されていたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図19】シスプラチン抵抗性の細胞においてARA9由来のmRNAが増大していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図20】化学療法感受性の卵巣がん細胞株と比較して化学療法抵抗性の細胞株でカルポニン2の発現が増大していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図21】シスプラチンに最も抵抗性の高い細胞株において、神経細胞アポトーシス阻害タンパク質の遺伝子発現が低下していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図22】シスプラチン抵抗性の細胞株においてRNPS1のレベルが増大していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図23】化学療法抵抗性の細胞株でHSF2のmRNAのレベルが上昇していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図24】化学療法感受性の細胞株と比較して化学療法抵抗性の細胞株でWDR1のmRNAが増大していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図25】シスプラチン抵抗性の細胞株においてFt1のmRNAレベルが上昇していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図26】化学療法抵抗性の細胞株でNME4のmRNAが増大していたことを実証する、ノーザンブロット解析の結果を示すオートラジオグラム写真およびノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図27】シスプラチン抵抗性の細胞株においてADAR1のmRNAが増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図28】NBR1のmRNAが、試験された他の細胞株と比較して最も化学療法抵抗性が高い細胞株であるOVCA429において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図29】亜鉛フィンガータンパク質262に対するmRNAが、試験された他の細胞株と比較して最もシスプラチン抵抗性が高い細胞株おいて増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図30】MRPL4のmRNAが、化学療法抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図31】HYA22のmRNAが、化学療法感受性の細胞株と比較して化学療法抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図32】ビネキシンβのmRNAが、化学療法抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図33】G−CSFRのmRNAが、化学療法抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図34】SRB1のmRNAが、化学療法抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図35】IGFBP−7のmRNAが、化学療法抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図36】RAB22AのmRNAが、化学療法抵抗性の細胞株において低下していたこと、および反応性のより高い細胞株において増大していることを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図37】KIAA0082のmRNAの発現が、化学療法抵抗性の細胞株において増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図38】NCOR2のmRNAが、シスプラチン感受性の細胞株と比較して抵抗性の細胞株において低減していたことを実証する、ノーザンブロット解析および結果のグラフ図。
【図39】MTTアッセイの結果に基づく、シスプラチンに対する感受性のレベルによる5種の卵巣がん細胞株の順位付けを示す図。
【図40】(上側パネル):フマギリンの濃度上昇がフマギリンへの曝露4時間後のOVCA429細胞生存率に与える効果を示すグラフ。(下側パネル):0.1μg/mlのフマギリンの存在下ではシスプラチンの効果が増大されたが、10μg/mlのフマギリンの存在下で4時間、シスプラチンで細胞を処理したときは効果が増大されなかったことを示すグラフ。
【図41】(上側パネル):フマギリンの濃度上昇がフマギリンへの曝露8時間後のOVCA429細胞生存率に与える効果を示すグラフ。(下側パネル):0.1μg/mlのフマギリンの存在下ではシスプラチンの効果が増大されたが、10μg/mlのフマギリンの存在下で8時間、シスプラチンで細胞を処理したときは効果が増大されなかったことを示すグラフ。
【図42】(上側パネル):フマギリンの濃度上昇がフマギリンへの曝露24時間後のOVCA429細胞生存率に与える効果を示すグラフ。(下側パネル):0.1μg/mlのフマギリンの存在下ではシスプラチンの細胞毒性効果が増大されたが、10μg/mlのフマギリンの存在下で24時間、シスプラチンで細胞を処理したときは効果が増大されなかったことを示すグラフ。
【図43】MetAP−2メッセンジャーRNAの異なる領域を標的とするように設計された、3種のsiRNA(#1:配列番号4、#2:配列番号5、#3:配列番号6)の概略図。
【図44】定量的リアルタイムPCRにより決定した、OVCA429におけるMetAP−2発現レベルに対するsiRNA#1の効果を示すグラフ。
【図45】siRNA#1の存在下でOVCA429をシスプラチンに曝露させた後にMTTアッセイにより決定した、細胞生存率の定量結果を示すグラフ。
【図46】MetAP−2のsiRNA#1でトランスフェクションしたOVCA429細胞に対するシスプラチンの効果を示すMTTアッセイ(図45に示す定量アッセイ)を実施した後の、OVCA429細胞の入った96ウェルプレートの写真。
【図47】SPARCのメッセージの異なる領域を標的とするように設計された、3種のsiRNA(#1:配列番号1、#2:配列番号2、#3:配列番号3)の概略図。
【図48】図47に示すsiRNAでトランスフェクションしたOVCA429細胞におけるSPARC発現の定量的リアルタイムPCR解析の結果を示すグラフ。
【図49】SPARCのsiRNA#2の存在下でのOVCA429細胞に対するシスプラチンの効果を測定するためにMTTアッセイを実施した後の、OVCA429細胞の入った96ウェルプレートの写真。
【図50】siRNAを介したSPARC遺伝子発現の低減がOVCA429細胞のシスプラチン感受性に与える効果を示すグラフ。
【図51】MT1のmRNAが、シスプラチンに対する感受性が最も高い細胞株(Hey)において著しく増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図52】シスプラチンに対する感受性が高くなるほど、MPP10のmRNAが増大していたことを実証する、ノーザンブロットの結果のグラフ図。
【図53】OVCA429細胞におけるカルパイン2遺伝子発現のsiRNAを介した低減の効果を示すグラフ。
【図54】OVCA429細胞のシスプラチン感受性に対するカルパイン2のsiRNA#3の効果を示すグラフ。
【図55】OVCA429細胞のシスプラチン感受性に対するカルパイン2阻害因子ALLNの効果を示すグラフ。
【図56】OVCA429細胞のシスプラチン感受性に対するSA100A10遺伝子発現のsiRNAを介した低減の効果を示すグラフ。
【図57】OVCA429細胞におけるS100A11遺伝子のmRNA発現レベルに対するsiRNAの効果を示すグラフ。
【図58】正常細胞および結腸がん細胞のcDNAにおけるMetAp−2のmRNA発現レベルを示すグラフ。
【図59】正常細胞および結腸がん細胞のcDNAにおけるSPARCのmRNA発現レベルを示すグラフ。
【図60】正常細胞および結腸がん細胞のcDNAにおけるS100A11のmRNA発現レベルを示すグラフ。
【図61】正常細胞および結腸がん細胞のcDNAにおけるS100A10のmRNA発現レベルを示すグラフ。
【図62】正常細胞および結腸がん細胞のcDNAにおけるカルパイン−2のmRNA発現レベルを示すグラフ。
【図63】OVCAR−3細胞(1500万個/注射、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection[米国バージニア州マナッサス(Manassas)所在]から入手、登録番号HTB−161)を注射し、35日後に、4μg/kg(体重)のシスプラチンを週に3回ずつ2週間、腹腔内投与して治療し、その後は1週間治療を行わなかったヌードマウス、または対照として生理食塩水溶液のみで処理したヌードマウス2匹の体重の関数として腫瘍の体積を示すグラフ。
【図64】OVCAR−3細胞におけるカルパイン2またはS100A11に対するsiRNAの安定な発現を示すグラフ。対照では、双方のmRNAの発現を、未処理の細胞または無関係なGFP siRNAを含む細胞において測定した。カルパイン2およびS100A11のmRNA発現は、関連性のあるsiRNAの場合に大きく低減された。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、腫瘍細胞の増殖を抑制、遅延、または防止する方法を提供し、該方法は、腫瘍細胞を、その細胞が抵抗性を有する濃度の化学療法薬の存在下で、1または複数の表1に示す細胞遺伝子の発現または活性を修飾する少なくとも1種の修飾因子に接触させる工程からなり、腫瘍細胞を前記遺伝子発現修飾因子に接触させることにより腫瘍細胞の薬物抵抗性が低減、抑制、遅延、または防止される。腫瘍細胞は、例えば、卵巣がんでよい。1実施形態では、腫瘍細胞は、in vivoで(例えば、患者から取り出されていない細胞として)接触させてよい。
【0030】
本明細書では、「生物試料」という用語は、それだけには限らないが、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトから得た組織または体液を含む。例えば、生物試料は、生検材料、骨髄試料、血液、血漿、血清、もしくはそれらの細胞画分、尿、唾液、涙、または生物供給源に由来する細胞でよい。1実施形態では、哺乳動物は、がん、特に卵巣がんまたは結腸がんに罹患していることが疑われるヒト、または、罹患していると以前に診断されたヒト、あるいは、それらのがんについてスクリーニングする必要があるヒトである。いくつかの実施形態では、生物試料は腫瘍試料である。
【0031】
本明細書では、「卵巣がん」という用語は、一般に上皮性卵巣がんを意味するものと理解されたい。上皮性卵巣がんは、卵巣組織に由来する全ての診断されたヒトのがんの約80%を占める。生殖細胞系由来の卵巣がんおよび卵巣明細胞がんを含む残りのがんは稀であり、しばしば誤診される。本明細書で開示する遺伝子発現の変化がこれら少数派の腫瘍のタイプでも認められる場合は、本発明の方法および組成物はそれらに適用される。
【0032】
本明細書では、遺伝子発現または遺伝子産物の活性の「修飾因子」は、遺伝子発現または遺伝子産物の活性を増大または低減させることができる任意の化学化合物、核酸分子、ペプチド、またはポリペプチドでよい。いくつかの実施形態では、本発明の修飾因子は、化学療法剤に対して抵抗性である腫瘍細胞において発現または活性が低減される1または複数の細胞遺伝子の発現または活性を増大させる化合物であり、このような修飾因子を本明細書では「活性化因子」と呼ぶ。他の実施形態では、修飾因子は、1または複数の細胞遺伝子、特に、化学療法剤に対して抵抗性である腫瘍細胞において発現が増大される遺伝子の発現または活性の阻害因子であり、このような修飾因子を本明細書では「阻害因子」と呼ぶ。
【0033】
本明細書では、「阻害因子」は、遺伝子産物の活性を低減させ、または遺伝子の発現を直接阻害することができる、任意の化学化合物、核酸分子、ペプチド、または遺伝子産物
に対する抗体などのポリペプチドでよい。本発明の阻害因子は、例えば、遺伝子にコードされているタンパク質の活性を直接的または間接的に阻害することができる。直接的な阻害は、例えば、タンパク質に結合し、該結合によりそのタンパク質が受容体など所期の標的に結合するのを防ぐことによって達成されうる。間接的な阻害は、例えば、受容体や結合相手などタンパク質の所期の標的に結合し、該結合によりそのタンパク質の活性を妨害または低減させることによって達成されうる。さらに、本発明の阻害因子は遺伝子の発現を低減または抑制することにより、特に、遺伝子発現(転写、プロセッシング、翻訳、翻訳後修飾)に干渉することにより、例えば、遺伝子のmRNAに干渉し、その遺伝子産物の翻訳を妨害することによって、または遺伝子産物の翻訳後修飾によって、あるいは、細胞内局在の変化を引き起こすことによって、遺伝子を阻害することもできる。
【0034】
本明細書では、「活性化因子」は、(例えば、遺伝子産物を安定化させること、遺伝子産物のタンパク質分解を防止すること、または、遺伝子産物の酵素活性もしくは結合活性を増大させること、あるいは遺伝子発現を直接活性化することによって)、遺伝子産物の活性を増大させることができる、任意の化学化合物、核酸分子、ペプチド、またはポリペプチドでよい。本発明の活性化因子は、遺伝子にコードされているタンパク質の活性を直接的または間接的に増大させることができる。直接的な活性化は、例えば、タンパク質に結合し、それによりそのタンパク質が受容体など所期の標的に結合するのを促進することによって達成されうる。間接的な活性化は、例えば、受容体や結合相手などタンパク質の所期の標的に結合し、活性を増大させる、例えば、その標的の有効濃度を高めることによって達成されうる。さらに、本発明の活性化因子は、遺伝子の発現を増大させることにより、例えば、遺伝子発現(転写、プロセッシング、翻訳、翻訳後修飾)を増大させることにより、例えば、遺伝子のmRNAを安定化し、もしくは、そのmRNA転写物の分解を妨害することによって、または遺伝子産物の翻訳後修飾によって、あるいは、細胞内局在の変化を引き起こすことによって、遺伝子を活性化することができる。
【0035】
本明細書で記述するように、化学療法抵抗性の卵巣腫瘍細胞におけるいくつかの遺伝子の発現は、化学療法感受性の卵巣腫瘍細胞における該遺伝子の発現と実質的に異なる。表1は、以下の実施例で記述する方法を用いて同定したそれらの遺伝子のリストを提供する。この表には、幅広く使用される化学療法剤であるシスプラチンに対して感受性または抵抗性の細胞における、これらの遺伝子の発現パターンもまとめて示す。
【0036】
【表1】

【0037】

【0038】

【0039】
表1において太字で表されている染色体位置は、卵巣がんに関連していることが報告されている(ペジョイク(Pejoic)、1995年、Ann.Med.第27巻、73〜78ページ)。
【0040】
1実施形態では、表1に示す細胞遺伝子の阻害因子は、例えば、小分子阻害因子、抗体、アンチセンス核酸などの核酸、低分子干渉RNA(siRNA)分子、またはショートヘアピンRNA(shRNA)分子でよい。さらに、このような阻害因子は、本明細書で
記述する方法または当技術分野で公知の方法を用いて特異的に設計することもできる。例えば、表1に示す遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体、特に中和抗体、好ましくはモノクローナル抗体を、例えば、本願明細書に援用するハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)による「Antibodies:A Laboratory Manual」(コールドスプリングハーバー出版(Cold Spring Harbor Press)、1988年)に記載されている従来手段によって作製することができる。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の阻害因子は、表1に示す遺伝子である標的遺伝子をコードするmRNAに結合するsiRNAである。
好ましい実施形態では、本発明により提供されるいくつかの阻害因子は、低分子干渉RNA(siRNA)の種類である。「低分子干渉RNA」または「siRNA」という用語は、本明細書では、例えば、バス(Bass)、2001年、Nature 第411巻、428〜429ページ;エルバシールら(Elbashir et al.)2001年、Nature 第411巻、494〜498ページ;クロイツェルら(Kreutzer et al.)、国際公開公報第00/44895号パンフレット;ゼルニッカ−ゴーツら(Zernicka−Goetz et al.)、国際公開公報第01/36646号パンフレット;ファイア(Fire)、国際公開公報第99/32619号パンフレット;プラエティンクら(Plaetinck et al.)、国際公開公報第00/01846号パンフレット;メローおよびファイア(Mello and Fire)、国際公開公報第01/29058号パンフレット;デシャン−デパイレツト(Deschamps−Depaillette)、国際公開公報第99/07409号パンフレット、ならびに、リら(Li et al.)、国際公開公報第00/44914号パンフレットで開示されているように、RNA干渉、すなわち「RNAi」の能力を有する2本鎖核酸分子を意味する。本明細書では、siRNA分子は、RNAのみを含むこれらの分子に限定される必要はなく、RNAiの能力または活性を有する化学的に改変されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドもさらに包含する。
【0042】
低分子干渉RNAを媒介としたRNAiは、様々な系で研究されている。ファイアら(Fire et al.)は、線虫(C.elegans)におけるRNAiを最初に観察した(1998年、Nature 第391巻、806ページ)。ウィアニー(Wianny)およびゴーツ(Goetz)は、マウス胚でのdsRNAによって媒介されるRNAiについて記述している(1999年、Nature Cell Biol.第2巻、70ページ)。ハモンドら(Hammond et al.)は、dsRNAでトランスフェクションしたショウジョウバエ細胞でのRNAiについて記述している(2000年、Nature 第404巻、293ページ)。エルバシールら(Elbashir et al.)は、ヒト胚性腎臓細胞およびHeLa細胞などの培養した哺乳動物細胞に21ヌクレオチドの合成RNAの2重鎖を導入することによって誘導されるRNAiについて記述している(2001年、Nature 第411巻、494ページ)。これらの研究は、21ヌクレオチドからなるsiRNA2重鎖が、2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含むときに最も高活性であることを示した。さらに、siRNAの1方または双方の鎖を2’−デオキシヌクレオチドまたは2’−O−メチルヌクレオチドで置換するとRNAi活性が失われるが、siRNAの3’末端ヌクレオチドをデオキシヌクレオチドで置換することは許容されることが示された。siRNA2重鎖の中央部にミスマッチ配列があっても、RNAi活性を無効にすることが示された。さらに、これらの研究は、標的RNAの切断部位の位置が、siRNAガイド配列の3’末端ではなく5’末端によって定められていることも示している(エルバシールら(Elbashir et al.)、2001年、EMBO J.第20巻、6877ページ)。他の研究は、siRNA2重鎖の標的に相補的な鎖上の5’リン酸がsiRNA活性に必要であること、およびそのsiRNA上の5’リン酸部分を維持するために細胞中でATPが利用されることを示
した。(ニッカネン(Nykanen et al.)、2001年、Cell 第107巻、309ページ)。しかし、5’リン酸を欠いているsiRNA分子を外因的に導入すると活性を有しており、これは、siRNA構築物の5’リン酸化がin vivoで起こり得ることを示唆している。一部の応用例では、化学的に改変したsiRNAを血流に直接注入することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の少なくとも1種のsiRNA分子をコードする核酸配列を、siRNA分子の発現が可能な方式で含む発現ベクターを提供する。例えば、このベクターは、2重鎖を含むsiRNA分子の双方の鎖をコードする配列を含むことができる。ベクターが、自己相補的であり、したがってsiRNA分子を形成する単一の核酸分子をコードする配列を含んでいてもよい。このような発現ベクターの非限定的な例は、ポールら(Paul et al.)2002年、Nature Biotechnology 第19巻、505ページ;宮岸および多比良(Miyagishi and Taira)、2002年、Nature Biotechnology 第19巻、497ページ;リーら(Lee et al.)、2002年、Nature Biotechnology 第19巻、500ページ;ならびにノビナら(Novina
et al.)、2002年、Nature Medicine、オンライン出版、2003年6月3日に記載されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明によるsiRNA分子は、特にリポソームなど、被験者に投与するための送達ビヒクル、担体および希釈剤ならびにそれらの塩を含んでよく、また、薬剤組成物中に存在してよい。核酸分子を送達するための方法は、例えば、アクタルら(Akhtar et al.)、1992年、Trends Cell Bio.第2巻、139ページ;Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics、アクタル(Akhtar)編、1995年;マウラーら(Maurer et al.)、1999年、Mol.Membr.Biol.第16巻、129〜140ページ;ホフランドおよびファン(Hofland and Huang)、1999年、Handb.Exp.Pharmacol.第137巻、165〜192ページ;ならびにリーら(Lee et
al.)、2000年、ACS Symp.Ser.第752巻、184〜192ページに記載されており、これら全てを本願明細書に援用する。ベイグルマンら(Beigelman et al.)の米国特許第6395713号およびサリバンら(Sullivan et al.)の国際公開公報第94/02595号パンフレットは、核酸分子を送達するための一般的な方法をさらに記載している。これらのプロトコールは、実質的にどんな核酸分子を送達するのにも利用することができる。核酸分子は、それだけには限らないが、リポソームへの封入、イオン浸透法、または、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性のナノカプセル、および生体接着性ミクロスフェアなど他の送達ビヒクル中への組み込み、あるいは、タンパク質性のベクター(例えば、オヘアおよびノルマン(O’Hare and Normand)、国際公開公報第00/53722号パンフレットを参照のこと)など、当業者に公知の様々な方法によって細胞に投与することができる。
【0045】
あるいは、直接注射することによって、または薬剤注入ポンプを使用することによって、核酸/ビヒクルの組合せを局所的に送達させることができる。本発明の核酸分子の直接注射は、皮下であれ、筋肉内であれ、皮内であれ、標準の針とシリンジによる方法を用いても、コンリーら(Conry et al.)、1999年、Clin.Cancer
Res.第5巻、2330〜2337ページ、およびバリーら(Barry et al.)、国際公開公報第99/31262号パンフレットに記載されている方法などの無針技術によっても行うことができる。当技術分野の多くの実施例により、浸透圧ポンプ(チュンら(Chun et al.)、1998年、Neuroscience Let
ters 第257巻、135〜138頁;ダルディンら(D’Aldin et al.)、1998年、Mol.Brain Research 第55巻、151〜164ページ;ドライデンら(Dryden et al.)、1998年、J.Endocrinol.第157巻、169〜175ページ;ギルニカルら(Ghirnikar et al.)、1998年、Neuroscience Letters 第247巻、21〜24ページ)、または直接注入(ブローダスら(Broaddus et al.)、1997年、Neurosurg.Focus 第3巻、第4論文)によるオリゴヌクレオチドの送達方法が記載されている。他の送達経路としては、それだけには限らないが、経口送達(錠剤または丸剤の形態などで)および/または髄腔内送達(ゴールド(Gold)、1997年、Neuroscience 第76巻、1153〜1158ページ)が挙げられる。核酸の送達および投与に関するより詳細な記述は、サリバンら(Sullivan et al.)による国際公開公報第94/02595号パンフレット、ドラパーら(Draper et al.)による国際公開公報第93/23569号パンフレット、ベイグルマンら(Beigelman et al.)による国際公開公報第99/05094号パンフレット、およびクリムクら(Klimuk et al.)による国際公開公報第99/04819号パンフレットに提供されており、これら全てを本願明細書に援用する。
【0046】
あるいは、本発明のある種のsiRNA分子を、細胞内部で真核生物プロモーターから発現させることができる(例えば、アイザントおよびウェイントローブ(Izant and Weintraub)、1985年、Science 第229巻、345ページ;マクギャリーおよびリンドキスト(McGarry and Lindquist)、1986年、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 第83巻、399ページ;スキャンロンら(Scanlon et al.)、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第88巻、10591〜5ページ;カシャニ−サベットら(Kashani−Sabet et al.)、1992年、Antisense Res.Dev.第2巻、3〜15ページ;ドロプリックら(Dropulic et al.)、1992年、J.Virol.第66巻、1432〜41ページ;ウィーラシンゲら(Weerasinghe et al.)、1991年、J.Virol.第65巻、5531〜4ページ:オジャングら(Ojwang et al.)、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第89巻、10802〜6ページ;チェンら(Chen et al.)、1992年、Nucleic Acids Res.第20巻、4581〜9ページ;サーバーら(Sarver et al.)、1990年、Science 第247巻、1222〜1225ページ;トンプソンら(Thompson et al.)、1995年、Nucleic Acids Res.第23巻、2259ページ;グッドら(Good et al.)、1997年、Gene
Therapy 第4巻、45ページ;宮岸ら(Miyagishi et al.)、2001年、Nucleic Acids Research 第29巻、2502ページ;ならびにクンケルおよびピーダースン(Kunkel and Pederson)、1989年、Nucleic Acids Research 第17巻、7371ページを参照のこと)。適切なDNA/RNAベクターを用いて、真核細胞中で任意の核酸を発現することができることは、当業者には認識されよう。このような核酸の活性は、該核酸を核酸酵素によって一次転写物から遊離させることにより増強することができる(ドレイパーら(Draper et al.)国際公開公報第93/23569号パンフレット;サリバンら(Sullivan et al.)国際公開公報第94/02595号パンフレット;大川ら(Ohkawa et al.)、1992年、Nucleic Acids Symp.Ser.第27巻、15〜6ページ;多比良ら(Taira
et al.)、1991年、Nucleic Acids Res.第19巻、5125〜30ページ;ベンチュラら(Ventura et al.)、1993年、Nucleic Acids Res.第21巻、3249〜55ページ;チョーリラら(C
howrira et al.)、1994年、J.Biol.Chem.第269巻、25856ページ)。
【0047】
本発明の別の態様では、本発明のRNA分子は、DNAベクターまたはRNAベクター中に挿入された転写単位(例えば、クチュールら(Couture et al.)、1996年、TIG 第12巻、510ページを参照のこと)から発現させることができる。これらの組換えベクターは、DNAプラスミドでもウイルスベクターでもよい。siRNAを発現するウイルスベクターは、例えば、それだけには限らないが、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、またはアルファウイルスをベースとして構築することができる。別の実施形態では、pol IIIベースの構築物を用いて、本発明の核酸分子を発現させる(例えば、トンプソン(Thompson)、米国特許第5902880号および同第6146886号を参照のこと)。siRNA分子を発現することができる組換えベクターは、前述したように送達され、標的細胞中に存在し続けてもよい。あるいは、核酸分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用することもできる。このようなベクターは、必要に応じて繰り返し投与することができる。発現されると、siRNA分子は標的mRNAと相互に作用し、RNAi反応が生じる。siRNA分子発現ベクターの送達は、静脈内投与もしくは筋肉内投与によって、被験者から取り出した標的細胞に投与した後、被験者に該細胞を再導入することによって、または所望の標的細胞中への導入を可能にすると考えられる他の任意の手段によってなど、全身的に行うことができる(総説は、例えば、クチュールら(Couture et al.)、1996年、TIG.第12巻、510ページを参照のこと)。
【0048】
1実施形態では、本発明は、少なくとも1種の本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターを提供する。この発現ベクターは、siRNA2重鎖の一方もしくは双方の鎖をコードするものでもよいし、または、自己ハイブリダイズしてsiRNA2重鎖となる単一の自己相補鎖をコードしてもよい。siRNA分子をコードしている核酸配列は、siRNA分子の発現を可能にする方式で、作動可能なように連結させることができる(例えば、ポールら(Paul et al.)、2002年、Nature
Biotechnology 第19巻、505ページ;宮岸および多比良(Miyagishi and Taira)、2002年、Nature Biotechnology 第19巻、497ページ;リーら(Lee et al.)、2002年、Nature Biotechnology 第19巻、500ページ;ならびにノビナら(Novina et al.)、2002年、Nature Medicine、オンライン出版、6月3日を参照のこと)。本明細書では、「作動可能なように連結される」という用語は、そのように記述されるフランキング配列が通常の機能を果たすように構成または組み立てられている、フランキング配列の配置を意味する。したがって、コード配列に作動可能なように連結したフランキング配列は、コード配列の複製、転写、および/または翻訳を実施することができることになるであろう。例えば、プロモーターがコード配列の転写を指示することができるとき、コード配列はそのプロモーターに作動可能なように連結している。フランキング配列は、正しく機能する限り、コード配列に連続的である必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写される介在配列がプロモーター配列とコード配列の間に存在してもよく、このようなプロモーター配列もコード配列に「作動可能なように連結している」とみなすことができる。
【0049】
別の態様では、本発明は発現ベクターを提供し、該発現ベクターは、a)転写開始領域(例えば、真核生物のpol I、II、またはIII開始領域)、b)転写終結領域(例えば、真核生物のpol I、II、またはIII終結領域)、ならびにc)本発明のsiRNA分子のうちの少なくとも1種をコードしている核酸配列を含み、前記配列が、siRNA分子の発現および/または送達を可能にする方式で前記開始領域および前記終結領域に作動可能なように連結している。このベクターは、本発明のsiRNAをコード
する配列の5’側もしくは3’側に作動可能なように連結された、タンパク質のオープンリーディングフレーム(ORF)、および/またはイントロン(介在配列)を任意選択で含んでよい。
【0050】
siRNA分子配列の転写は、真核生物のRNAポリメラーゼI(pol I)、RNAポリメラーゼII(pol II)、またはRNAポリメラーゼIII(pol III)のプロモーターから駆動することができる。pol IIまたはpol IIIプロモーターからの転写物は、全ての細胞において高レベルで発現されるが;ある種の細胞における所与のpol IIプロモーターのレベルは、近隣に存在する遺伝子調節配列(エンハンサー、サイレンサーなど)の性質に応じて変わる。原核生物のRNAポリメラーゼ酵素が適切な細胞で発現される場合には、原核生物のRNAポリメラーゼプロモーターも使用される(エルロイ−ステインおよびモス(Elroy−Stein and Moss)、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第87巻、6743〜7ページ;ギャオおよびファン(Gao and Huang)1993年、Nucleic Acids Res.第21巻、2867〜72ページ;リーバーら(Lieber et al.)、1993年、Methods Enzymol.第217巻、47〜66ページ;ジョウら(Zhou et al.)、1990年、Mol.Cell.Biol.第10巻、4529〜37ページ)。数人の研究者が、これらのプロモーターから発現される核酸分子が哺乳動物細胞中で機能できることを実証している(例えば、カシャニ−サベットら(Kashani−Sabet et al.)、1992年、Antisense Res.Dev.第2巻、3〜15ページ;オジャングら(Ojwang et al.)、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
第89巻、10802〜6ページ;チェンら(Chen et al.)、1992年、Nucleic Acids Res.第20巻、4581〜9ページ;ユら(Yu et al.)、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第90巻、6340〜4ページ;リューリェら(L’Huillier et al.)、1992年、EMBO J.第11巻、4411〜8ページ;リスジーウィッツら(Lisziewicz et al.)、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 第90巻、8000〜4ページ;トンプソンら(Thompson et al.)、1995年、Nucleic Acids Res.第23巻、2259ページ;サレンジャーおよびチェフら(Sullenger and Cech)、1993年、Science 第262巻、1566ページ)。より詳細には、U6低分子核内(snRNA)、転移RNA(tRNA)、およびアデノウイルスVA RNAをコードする遺伝子に由来するものなどの転写単位は、細胞でsiRNAなど所望のRNA分子を高濃度で生じさせるのに有用である(トンプソンら(Thompson et al.)、1995年、Nucleic Acids Res.第23巻、2259ページ;クチュールら(Couture et al.)、1996年、TIG 第12巻、510ページ;ヌーンバーグら(Noonberg et al.)、1994年、Nucleic
Acid Res.第22巻、2830ページ;ヌーンバーグら(Noonberg et al.)、米国特許第5624803号;グッドら(Good et al.)、1997年、Gene Ther.第4巻、45ページ;ベイグルマンら(Beigelman et al.)、国際公開公報第96/18736号パンフレット)。上記のsiRNA転写単位は、それだけには限らないが、プラスミドDNAベクター、ウイルスDNAベクター(アデノウイルスベクターやアデノ随伴ウイルスベクターなど)、またはウイルスRNAベクター(レトロウイルスベクターやアルファウイルスベクターなど;総説は、クチュールら(Couture et al.)、1996年、TIG 第12巻、510ページを参照のこと)などの、哺乳動物の細胞中に導入するための様々なベクター中に組み入れることができる。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、本発明のsiRNA分子のうちの少なくとも1種をコー
ドする核酸配列を、そのsiRNA分子の発現を可能にする方式で含む発現ベクターを提供する。特定の実施形態では、発現ベクターは、a)転写開始領域、b)転写終結領域、ならびにc)siRNA分子の少なくとも1本の鎖をコードしている核酸配列を含み、その配列は、siRNA分子の発現および/または送達を可能にする方式で開始領域および終結領域に作動可能なように連結している。
【0052】
別の実施形態では、発現ベクターは、a)転写開始領域、b)転写終結領域、c)オープンリーディングフレーム、ならびにd)siRNA分子の少なくとも1本の鎖をコードしている核酸配列を含み、該配列は、オープンリーディングフレームの3’末端に作動可能なように連結しており、かつ、該配列は、siRNA分子の発現および/または送達を可能にする方式で、開始領域、オープンリーディングフレーム、および終結領域に作動可能なように連結している。
【0053】
さらに別の実施形態では、発現ベクターは、a)転写開始領域、b)転写終結領域、c)イントロン、ならびにd)少なくとも1種のsiRNA分子をコードしている核酸配列を含み、該配列は、核酸分子の発現および/または送達を可能にする方式で、開始領域、イントロン、および終結領域に作動可能なように連結している。
【0054】
別の実施形態では、発現ベクターは、a)転写開始領域、b)転写終結領域、c)イントロン、d)オープンリーディングフレーム、ならびにe)siRNA分子の少なくとも1本の鎖をコードしている核酸配列を含み、該配列は、オープンリーディングフレームの3’末端に作動可能なように連結しており、かつ、該配列は、siRNA分子の発現および/または送達を可能にする方式で、開始領域、イントロン、オープンリーディングフレーム、および終結領域に作動可能なように連結している。
【0055】
1実施形態では、SPARCを阻害するsiRNAに腫瘍細胞を接触させることによって、腫瘍細胞の増殖を抑制する。あるいは、腫瘍細胞が抵抗性を示す濃度の化学療法薬の存在下で、腫瘍細胞をsiRNAと接触させてもよい。SPARCの阻害因子であるsiRNA分子の例には、例えば、
AATCC TGT CCA GGT GGA AGT A(配列番号1);
AAGCT CCA CCT GGA CTA CAT C(配列番号2);および
AATGA CAA GTA CAT CGC CCT G(配列番号3)
が挙げられる。
【0056】
別の実施形態では、MetAP2/p67を阻害するsiRNAに腫瘍細胞を接触させることによって、腫瘍細胞の増殖を抑制する。あるいは、腫瘍細胞が抵抗性を示す濃度の化学療法薬の存在下で、腫瘍細胞をsiRNAと接触させてもよい。MetAP2/p67の阻害因子であるsiRNA分子の例には、例えば、
AAAGA TCA GCA TTG GAA GAT A(配列番号4);
AAGCA CAT CGA CAA GTT AGA A(配列番号5);および
AAACA GTG CCG ATT GTG AAA G(配列番号6)
が挙げられる。
【0057】
別の実施形態では、カルパイン2を阻害するsiRNAに腫瘍細胞を接触させることによって、腫瘍細胞の増殖を抑制する。あるいは、腫瘍細胞が抵抗性を示す濃度の化学療法薬の存在下で、腫瘍細胞をsiRNAと接触させてもよい。カルパイン2の阻害因子であるsiRNA分子の例には、例えば、
AAGGC ATA CGC CAA GAT CAA C(配列番号7);
AAACT TCT TCC TGA CGA ATC G(配列番号8);および
AAACG CTA TTC AAG ATA TTT A(配列番号9)
が挙げられる。
【0058】
別の実施形態では、S100A10を阻害するsiRNAに腫瘍細胞を接触させることによって、腫瘍細胞の増殖を抑制する。あるいは、腫瘍細胞が抵抗性を示す濃度の化学療法薬の存在下で、腫瘍細胞をsiRNAと接触させてもよい。S100A10の阻害因子であるsiRNA分子の例には、例えば、
AAATG GAA CAC GCC ATG GAA A(配列番号59);
AAATT CGC TGG GGA TAA AGG C(配列番号60);および
AATAA TGA AGG ACC TGG ACC A(配列番号61)
が挙げられる。
【0059】
本発明は、腫瘍細胞の増殖を抑制、遅延、または防止するための方法であって、1または複数の化学療法剤と、表1に示す遺伝子である細胞遺伝子の少なくとも1種の阻害因子との組合せに、腫瘍細胞を接触させる工程からなる方法も提供する。好ましくは、腫瘍細胞は卵巣がん細胞である。化学療法剤は当技術分野で公知であり、例えば、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチン、エトポシド、ヘキサメチルアミン、メルファラン、およびアントラサイクリン類が含まれる。
【0060】
1実施形態では、表1に示す細胞遺伝子の阻害因子は、小分子の阻害因子でよい。本明細書では、「小分子」という用語は、分子量が約1500g/モル未満の分子を指す。小分子は、例えば、有機小分子、ペプチド、またはペプチド様分子でよい。例として、本発明の方法に適した小分子阻害因子は、PD147631、(25,35)−トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミド−3メチルブタンエチルエステル(E−64−d)、N−アセチル−ロイシル−ロイシル−ノルロイシナール(ALLN)、N−アセチル−Leu−Leu−Met−アール(ALLMまたはC1935S)、MDL18270などのカルパイン阻害因子;あるいは、TNP−470(AGM1470またはC1928CINOとしても知られている)、フマギリン(C2634)、シス−フマギリン(クォンら(Kwon et al.)、2000年、J.Antibiot.第53巻、799〜806ページを参照のこと)、フマガロン(ジョウら(Zhou et al.)、2003年、J.Med.Chem.第46巻、3452〜3454ページを参照のこと)、オバリシン(C1624)などのMetAP−2阻害因子でよい。ハンら(Han et al.)、2000年、Bioorganic&Medicinal Chem.Letters 第10巻、39〜43ページも参照のこと。
【0061】
1実施形態では、表1に示す細胞遺伝子の阻害因子は、上記に定義した阻害因子でよい。例えば、表1に示す特定の遺伝子に対する複数の阻害因子、1または複数の特定の遺伝子をそれぞれ阻害する阻害因子の組合せ、または表1に示す複数の遺伝子を阻害する阻害因子、あるいはそれらの任意の組合せなど、阻害因子の任意の組合せを使用することができる。
【0062】
特定の実施形態では、本発明の方法は、MetAP2の阻害因子とプラチナ系の化学療法薬との組合せに腫瘍細胞を接触させる工程からなる。化学療法薬の主成分がシスプラチンまたはカルボプラチンであり、任意選択でタキソールまたはシクロホスファミドと組み合わされる場合、該化学療法薬は「プラチナ系」である。MetAP2の阻害因子は、例えば、フマギリンもしくはフマギリンの誘導体、または、それだけには限らないが配列番号4、配列番号5、配列番号6などのMetAP2のsiRNAでよい。
本発明は、卵巣がん患者の腫瘍が化学療法的治療に対して抵抗性であるかどうかを予測するための方法も提供する。これらの実施形態では、該方法は、(a)患者から得た生物試料中の、1または複数の表1に示されている発現遺伝子または該遺伝子によってコードさ
れる遺伝子産物の量を検出する工程、(b)対照試料中の、1または複数の表1に示されている発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程、(c)工程(a)で測定された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(b)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で検出された量が工程(b)で検出された量と少なくとも20%異なる場合は、その患者が化学療法に対して抵抗性であると予測される。1実施形態では、検出される量は、表1に示す遺伝子のmRNAの量でもよいし、表1に示す遺伝子によってコードされるタンパク質の量でもよい。別の実施形態では、対照試料は、反応性の被験者または正常な被験者、すなわち、治療法に反応する個体、または卵巣がんなどのがんに罹患していない個体から得た生物試料である。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。
【0063】
1実施形態では、工程(a)および工程(b)で発現される遺伝子は、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、KIAA0082のうちの1または複数であり、工程(a)で発現される遺伝子の量が工程(b)で発現される遺伝子の量より少なくとも約20%多い場合は、患者の腫瘍が化学療法的治療に対して抵抗性であると予測される。
【0064】
特定の実施形態では、工程(a)および工程(b)で発現される遺伝子は、ビネキシンβ、G−CSFR、KLK6、SPARC、HYA22、カルパイン2、SAPK/Erk1、SRB1、ADAR1、MRPL4、eIF5、eIF2Bε、WDR1、NM23D、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、RNPS1、S100A10、S100A11、MetAP2のうちの1または複数であり、工程(a)で発現される遺伝子の量が工程(b)で発現される遺伝子の量より少なくとも約20%多い場合は、患者の腫瘍が化学療法的治療に対して抵抗性であると予測される。
【0065】
別の実施形態では、工程(a)および工程(b)で発現される遺伝子は、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MPP10、MT1のうちの1または複数であり、工程(a)で発現される遺伝子の量が工程(b)で発現される遺伝子の量より少なくとも約20%、好ましくは50%少ない場合は、患者の腫瘍が化学療法的治療に対して抵抗性であると予測される。
【0066】
特定の実施形態では、工程(a)および工程(b)で発現される遺伝子は、HMT1、eEF1ε、NAIP、RAB22A、MT1のうちの1または複数であり、工程(a)で発現される遺伝子の量が工程(b)で発現される遺伝子の量より少なくとも約20%、好ましくは50%少ない場合は、患者の腫瘍が化学療法的治療に対して抵抗性であると予測される。
【0067】
したがって、本明細書で開示するように、本発明は、1または複数の遺伝子発現パターンまたは遺伝子産物活性のパターンを提供し、該パターンは、差次的に(すなわち、より多い量またはより少ない量で)発現される複数の遺伝子か、または、前記遺伝子によってコードされるタンパク質生成物が正常(すなわち、非腫瘍、または化学療法感受性の)細胞と比べて化学療法薬抵抗性の卵巣腫瘍細胞で差次的な活性を有する複数の遺伝子を含む。差次的な遺伝子発現またはタンパク質生成物の活性の前記パターンは、生物試料、最も好ましくは腫瘍試料中の化学療法薬抵抗性の細胞を検出するために、本発明の方法に従って使用され、したがって、著しい罹患率および死亡率を伴う効果の無い治療過程を臨床医が開始する前に、個体から得た腫瘍の薬物抵抗性を予測するのに有用である。
【0068】
本発明の方法の実施に際して、本明細書で特定する遺伝子のうちの1または複数の発現に関して患者の腫瘍試料を評価できることが、当業者には理解されよう。本明細書で特定する複数の遺伝子の各々は、個々の卵巣がん患者から単離した個々の腫瘍についてある比率で、最も好ましくは高い比率で、本明細書で開示する方法を用いて検出される差次的な遺伝子発現を示すことが予想される。本発明の予測方法を用いて得られる結果の信頼性は、本明細書で開示する差次的な遺伝子発現を示す前記遺伝子の分析される遺伝子数の増加とともに高まることも予想される。
【0069】
1実施形態では、本発明の方法は、実際に患者を化学療法剤で治療する前に、化学療法を用いた治療が必要なヒト患者をスクリーニングするために使用することができる。したがって、本発明の方法は、特定の化学療法剤を用いて患者を治療することが無効か否かを医療提供者が判断するのを可能にするために、患者をスクリーニングするのに使用することができる。本発明の方法に基づいて化学療法に対して抵抗性ではないと予測される患者は、化学療法および/または表1に示す遺伝子の阻害因子を用いた治療の候補者である。本発明の方法に基づいて化学療法に対して抵抗性であると予測される患者は、特に外科治療、および/または表1に示す遺伝子の阻害因子を併用する化学療法的治療、あるいは別の治療方法の候補者とすることができる。
【0070】
本発明の方法の実施に際して、本明細書で詳細に記述するように、例えば、ノーザンブロットやドットブロットなどのハイブリダイゼージョンアッセイにより、またはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)などの増幅方法、より好ましくはmRNAのcDNAへの逆転写を加え(RT−PCR)、さらに好ましくは定量的リアルタイムRT−PCRとして当技術分野で公知の技術を用いて、生物試料中で発現されている、本明細書で特定する遺伝子のうちの任意のものをコードするmRNAの量を検出することによって、遺伝子発現を検出する。他の手法には前記1または複数の遺伝子のタンパク質生成物の量を検出することが挙げられるが、非限定的な例として、タンパク質に特異的な抗血清、より好ましくは抗体、さらに好ましくは、本明細書で特定する任意の特定の遺伝子に対して特異的なモノクローナル抗体を用いて生物試料を分析することによって検出される。タンパク質生成物の酵素活性または抗原活性に関して生物試料を分析することによって、タンパク質発現レベルを測定することもできる。本発明はまた、化学療法薬に抵抗性の腫瘍、特に卵巣腫瘍および結腸腫瘍において過剰発現または過小発現される遺伝子の発現を検出するための遺伝子アレイまたは抗体アレイも提供し、該アレイは、アレイ中の核酸プローブもしくは抗体の配置が、腫瘍試料が化学療法薬に抵抗性であるときに認識可能な、好ましくは機械可読なパターンを生じ、かつ/または腫瘍試料が化学療法薬に感受性のときに認識可能な異なるパターンを生じる。
【0071】
例えば、本発明の方法によれば、患者から得た生物試料で発現されるMetAP2の量を測定し、卵巣がんに罹患しており化学療法に反応した人、または卵巣がんに罹患しており化学療法に反応しなかった人のいずれかで発現されるMetAP2の量と比較する。本明細書では、化学療法的治療が腫瘍のサイズを縮小し、または腫瘍の増殖を止める効果を示した場合、その人が化学療法に「反応」したとする。さらに、「反応性の患者」という用語は、外科的切除後に化学療法で治療され、少なくとも6ヶ月、疾患の臨床徴候が無いままである患者を意味するものとする。患者のMetAP2の量が、卵巣がんに罹患し化学療法に反応した人で発現されるMetAP2の量と等しいかまたはそれより少ない場合、その患者は、ある種の化学療法剤(例えば、プラチナ系化合物)に反応性であると予測される。患者のMetAP2の量が、卵巣がんに罹患し化学療法に反応した人で発現されるMetAP2の量より多い場合、その患者は、化学療法剤に対して抵抗性であると予測される。同様に、患者のMetAP2の量が、がんに罹患しているが化学療法に反応しなかった人で発現されるMetAP2の量より多い場合も、その患者は、化学療法剤に対し
て抵抗性であると予測される。
【0072】
表1および下記の実施例で示すように、卵巣がんでのMetAP2発現の増大は、プラチナ系の化学療法剤であるシスプラチンに対する抵抗性の増大に関連がある。したがって、1実施形態では、本発明の方法は、がん患者から得た生物試料で発現されるMetAP2の測定量が、反応性の個体で検出された所定の量より多い場合に、患者の腫瘍がプラチナ系の化学療法に対して抵抗性であると予測することができる。別の実施形態では、本発明の方法は、がん患者から得た生物試料で発現されるMetAP2の測定量が、反応性の個体で検出された所定の量と同等であるが、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、もしくはKIAA0082のうち1または複数の遺伝子の発現が、反応性の患者よりも過剰に発現しているか、かつ/またはHMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、MPP10遺伝子のうちの1または複数の発現が反応性の患者での発現と比べて低下している場合に、患者の腫瘍がプラチナ系の化学療法に対して抵抗性であると予測することができる。
【0073】
本発明はさらに、卵巣がん患者、特に化学療法的治療を受けている卵巣がん患者における疾患の進行を観察するための方法を提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、KIAA0082、MPP10、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、またはMT1である工程、(b)その後の採取により患者から得た生物試料を用いて工程(a)を繰り返す工程、ならびに(c)工程(a)で検出される発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(b)で検出される発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で採取した生物試料に対する、その後採取した生物試料中の発現遺伝子または遺伝子産物の量の差異を検出することによって、疾患の進行を観察する方法である。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。
【0074】
本明細書で説明するように、工程(a)および(b)で発現される1または複数の遺伝子がS100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1またはKIAA0082であり、工程(b)で検出される発現遺伝子または遺伝子産物の量が、工程(a)での発現遺伝子または遺伝子産物の量と比べて多いとき、疾患の進行が検出される。いくつかの実施形態では、患者は、工程(a)での遺伝子発現量と工程(b)での検出量との検出の間の期間、化学療法的治療または他の治療を受ける。
【0075】
本明細書で説明するように、工程(a)および(b)で発現される1または複数の遺伝子がHMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1またはMPP
10であり、工程(b)で検出される発現遺伝子または遺伝子産物の量が、工程(a)での発現遺伝子または遺伝子産物の量より少ないとき、疾患の進行が検出される。
【0076】
いくつかの実施形態では、患者は、工程(a)での遺伝子発現量と工程(b)での検出量との検出の間の期間、化学療法的治療または他の治療を受ける。いくつかの実施形態では、検出量は、表1に示す遺伝子のmRNAの量でもよいし、表1に示す遺伝子によってコードされるタンパク質の量でもよい。
【0077】
患者の卵巣がんの進行を観察するための本発明の方法は、例えば、患者が、化学療法的治療計画などのある種の治療計画に対して陽性に反応しているか陰性に反応しているかを判定するのに使用することができる。
【0078】
例えば、患者がある種の治療計画を開始した後のある時点で該患者から採取した生物試料において、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082の発現が、その治療計画が開始される前または開始時点で採取した生物試料での発現遺伝子の量と比べて、同じかまたは多い場合、患者は陰性に反応している。別の例では、患者がある種の治療計画を開始した後のある時点で該患者から採取した生物試料において、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10の発現が、その治療計画が開始される前または開始時点で採取した生物試料での発現遺伝子の量と比べて、同じかまたは少ない場合、患者は陰性に反応している。このような場合、医療提供者は、その治療計画が有効ではないと判断することができる。
【0079】
あるいは、患者がある種の治療計画を開始した後のある時点で該患者から採取した生物試料におけるS100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082の発現が、その治療計画が開始される前または開始時点で採取した生物試料での発現遺伝子の量と比べて少ない場合、患者は陽性に反応しており、治療の変更は必要とされない。さらに、患者がある種の治療計画を開始した後のある時点で該患者から採取した生物試料におけるHMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10の発現が、その治療計画が開始される前または開始時点で採取した生物試料での発現遺伝子の量と比べて多い場合、患者は陽性に反応している。
【0080】
さらに、本発明は、患者のがんを治療するための薬剤としての薬剤組成物の有効性を観察するための方法を提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、(
b)ある量の薬剤組成物を患者に投与する工程、(c)その後の採取により患者から得た生物試料を用いて工程(a)を繰り返す工程、ならびに(d)工程(a)で検出される発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(c)で検出される発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で採取した生物試料に対する、その後採取した生物試料中の発現遺伝子または遺伝子産物の量の変化を検出することによって薬剤組成物の有効性を観察する方法である。薬剤組成物を用いた治療後に採取した生物試料での遺伝子発現が、薬剤組成物を用いた治療の前に採取した生物試料での遺伝子発現より多いかまたは等しく、かつ、薬剤組成物を用いた治療の間、腫瘍の成長が減速、遅延、および抑制されなかった場合、その薬剤組成物はその患者のがんの治療には無効であるとみなすことができる。例えば、S100A10のmRNAの量が、患者を薬剤組成物で治療した後に得た試料においてより多い場合は、その患者はその薬剤組成物を用いたさらなる治療に対して抵抗性であると予測される。したがって、その薬剤組成物は、その患者のがんに対して無効であるとみなされる。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。
【0081】
本発明は、患者のがんを治療するための薬剤としての薬剤組成物の有効性を観察するための方法をさらに提供し、該方法は、(a)患者から採取した生物試料中の1または複数の発現遺伝子または該遺伝子によってコードされる遺伝子産物の量を検出する工程であって、その発現遺伝子が、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10である工程、(b)ある量の薬剤組成物を患者に投与する工程、(c)その後の採取により患者から得た生物試料を用いて工程(a)を繰り返す工程、ならびに(d)工程(a)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量を工程(c)で検出された発現遺伝子または遺伝子産物の量と比較する工程からなり、工程(a)で採取した、すなわち、薬剤組成物を用いて治療する前に採取した生物試料に対する、薬剤組成物を用いて治療した後に採取した生物試料中の発現遺伝子または遺伝子産物の量の変化を検出することによって薬剤組成物の有効性を観察する方法である。後で採取した(すなわち、薬剤組成物を用いた治療の後に採取した)生物試料での1または複数の前記遺伝子の遺伝子発現が、先に採取した生物試料(すなわち、薬剤組成物を用いる治療の前に採取した生物試料)での遺伝子発現より低いかまたはそれに等しく、かつ、薬剤組成物を用いた治療の間、腫瘍の成長が減速、遅延、および抑制されなかった場合、その薬剤組成物はその患者のがんの治療には無効であるとみなすことができ、その患者は、その薬剤組成物を用いたさらなる治療に対して抵抗性であると予測される。したがって、その薬剤組成物は、その患者のがんに対して無効であるとみなされる。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。
【0082】
本明細書では、「薬剤組成物」とは、結腸がんや卵巣がんなどのがんを治療するために使用される、または前記がんを治療する能力について試験される化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック、非ペプチド性有機分子、無機低分子、または核酸分子)を含む任意の配合物でよい。
【0083】
本発明は、腫瘍細胞、特に化学療法抵抗性の腫瘍細胞、最も具体的には化学療法抵抗性の卵巣がん細胞の増殖を抑制する化合物を同定するための方法も提供する。これらの実施形態では、この方法は、(a)化学療法抵抗性の卵巣がん細胞において過剰発現される1または複数の遺伝子を発現する細胞を試験化合物と接触させる工程であって、その遺伝子が、S100A10、S100A11、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、HSF2、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、ADAR1、グランカルシン、NBR1、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、MRPL4、ビネキシンβ、G−CSFR、IGFBP−7、FASTキナーゼ、TESK2、SRB1、またはKIAA0082である工程、(b)試験化合物の存在下および不在下での遺伝子の発現を検出する工程、ならびに(c)試験化合物の存在下で
の遺伝子発現を試験化合物の不在下での遺伝子発現と比較する工程からなり、試験化合物の存在下での遺伝子の発現が試験化合物の不存下での遺伝子発現と比べて低減されている場合、化合物は化学療法抵抗性の腫瘍細胞の増殖を抑制する化合物として同定される。特定の態様では、生物試料は腫瘍試料である。いくつかの実施形態では、この化合物は、化学療法薬の存在下で腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。
【0084】
さらに、本発明は、腫瘍細胞、特に化学療法抵抗性の腫瘍細胞、最も具体的には化学療法抵抗性の卵巣がん細胞の増殖を抑制する化合物を同定する方法を提供し、該方法は、(a)化学療法抵抗性の卵巣がん細胞において通常より低いレベルで発現される1または複数の遺伝子を発現する細胞を試験化合物に接触させる工程であって、その遺伝子が、HMT1、NAIP、eEF1ε、RAB22A、NCOR2、MT1、またはMPP10である工程、(b)その試験化合物の存在下および不在下でのその遺伝子の発現を検出する工程、ならびに(c)その試験化合物の存在下および不在下でのその遺伝子の発現を比較する工程からなり、試験化合物の存在下での遺伝子の発現が試験化合物の不存下での遺伝子発現と比べて増大している場合、化合物は化学療法抵抗性の腫瘍細胞の増殖を抑制する化合物として同定される。1実施形態では、この化合物は、化学療法薬の存在下で腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。
【0085】
実施された実験および得られた結果を含めて、以下の実施例は単に例示のために提供されるにすぎず、本発明を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例1】
【0086】
MTT細胞増殖アッセイ
標準のMTT細胞増殖アッセイを用いて、5種の卵巣がん細胞株(OVCA429、OVCA433、OVCA432、HEY、およびHEY A8)を、シスプラチンへの感受性のレベルに従って順位付けした。
【0087】
イーグルの最少培地(MEMα、インビトロジェンコーポレーション社(Invitrogen Corp.)[米国カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad)所在]から入手)、5%ウシ胎児血清(FBS、加熱して不活性化)、1%抗生物質/抗真菌剤混合物(インビトロジェン社(Invitrogen))中で細胞を増殖させた。MTT原液(5mg/mL;カルビオケム社(CALBIOCHEM)[米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在])を、HBSS(ハンクス平衡塩類溶液)中に色素を溶解させて調製し、前記混合物をろ過し、1mlの分注物として−20℃で保存した。各9mlの培地に対して1mlのMTT原液を使用した(総体積は10mlである)。細胞を光から保護するために、プレートを不透明なカバーで覆った。
【0088】
5、25、50、100、および200μMのシスプラチンで、4、8、および24時間、各細胞株を処理した。96ウェルプレートでのシスプラチン処理の96時間後にMTTアッセイを実施した。細胞から培地を除去し、新鮮なMTT培地200μlを細胞に添加し、また、対照となる空のウェルにも添加した。通常の細胞培養条件のもとで、3〜4時間、細胞をインキュベートした。次に、細胞が代謝活性の指標であるホルマザン結晶を形成しているかどうか確認した。培地を除去し、2−プロパノール200μlをウェルおよび対照ウェルに添加した。全ての結晶を均等に溶解した後、暗所、室温で20分間、細胞をインキュベートした。マイクロプレートリーダーで570nmにて結果を読み取った。
図39(上側パネル)は、様々な濃度のシスプラチンに曝露した4時間後の、これらの検討で使用した5種類の卵巣がん細胞株についてのMTTアッセイの結果を示す。使用したシスプラチン濃度および処理時間の全範囲にわたって各細胞株の成績を考慮した後に、抵抗性のレベルの高いほうから低いほうへ、細胞をOVCA429<OVCA433<HE
Y A8<OVCA432<HEYの順番に順位付けした(下側パネル)。
【0089】
前述とほぼ同じようにして、特定の遺伝子に対するsiRNAまたは薬物阻害因子に細胞を曝露することを含むMTTアッセイを実施した。細胞をsiRNAで48時間前処理してから、0、3.12、6.25、12.5、25、50、100、および200μMのシスプラチンで24時間処理した。薬物併用治療の実験(フマギリンまたはALLN)については、濃度を段階的に上げた試験対照の薬物と0、3.12、6.25、12.5、25、50、100、および200μMのシスプラチンとの併用治療に細胞を24時間曝露させた。
【実施例2】
【0090】
cDNAマイクロアレイ、ノーザンブロット、および定量的リアルタイムPCR解析
実施例1で特徴付けした細胞株を用いてマイクロアレイ解析を実施した。各細胞株から細胞ペレットを集め、1mlのTRI試薬(モレキュラーリサーチセンターインコーポレイテッド社(Molecular Research Center,Inc)[米国オハイオ州シンシナティ(Cincinnati)所在]から入手)またはTrizol(登録商標)(インビトロジェン(Invitrogen)社)中にペレットを溶解させることによって、細胞からRNAを単離した。次に、試料を5分間放置した。1−ブロモ−3−クロロプロパン(BCP)100μlを試料に添加して、相分離を行った。15秒間振とうした後、室温で15分間、試料をインキュベートし、続いて、13,000RCF、4〜25℃で16分間遠心分離した。ピペットで上清を取り出し、新しい微小遠心チューブ中に入れた。次に、上清を500μlの新しいイソプロパノールと混合することによってRNAを沈殿させ、室温で10分間インキュベートし、13,000RCF、4〜25℃で9分間遠心分離した。次に、上清をチューブから除去し、該チューブに1mlの75%エタノールを加え、ボルテックス(渦流混合)処理し、次いで13,000RCFにて4〜25℃で6分間遠心分離することによって、ペレットを洗浄した。液体を除去し、ペレットを約8分間、風乾させた。次に、ペレットをRNaseフリーの水に溶解し、すぐに使用する場合は氷中に置き、または−80℃で保存した。
【0091】
5000を超える配列確認済みのcDNAクローンを含むマイクロアレイ(リサーチジェネティックスインコーポレイティッド社(Research Genetics Inc.)から入手)を用いて、これらの細胞における遺伝子発現を調べた;マイクロアレイ解析は全て、製造業者の取扱説明書に従って実施した。各クローンは卵巣組織で発現することが周知のものである。最も抵抗性の高い細胞株(OVCA429)での遺伝子発現を、他の細胞株での遺伝子発現を比較する際の標準として用いた。データの解析から、OVCA429は、より感受性の高い細胞株と比較して、196種の遺伝子をより高いレベルで発現し、83種の遺伝子をより低いレベルで発現していることが明らかになった。
【0092】
遺伝子を、以下の基準を満たす場合にのみさらに解析するために選別した;基準とはすなわち、2連の(duplicate)メンブレンで検出した際に標準と比べて発現に少なくとも2倍の差があること、標準(OVCA429)と比較して、4種の細胞株のうち3種で差次的な発現が検出されること、および発現レベルが各細胞株のシスプラチン感受性と一致していることである。過剰発現された遺伝子は、OVCA429細胞で最も強く発現され、最も抵抗性の低い細胞株HEYにおいて最低レベルの発現に到達するまで発現は次第に弱くなった(また、OVCA429細胞で低いレベルで発現された遺伝子については逆であった)。
【0093】
他の細胞株と比較した際、最も抵抗性の高い細胞株(OVCA429)において差次的に(より高いレベルまたはより低いレベルで)発現された遺伝子のノーザンブロット解析および定量的リアルタイムPCR解析を用いて、マイクロアレイデータを検証し、さらに
解析するための目的遺伝子を特定した。特定した遺伝子を表2に示す。表2は、遺伝子の名称、細胞株における発現パターンの概要、および発現解析の結果を表す図面を示す。
【0094】
【表2】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】

【0099】
ノーザンブロット解析
マイクロアレイ解析で特定した発現パターンを確認するために、NorthernMax(登録商標)法(アンビオンコーポレーション社(Ambion Corp.)[米国テキサス州オースティン(Austin)所在]を用いてノーザンブロット解析を実施し、製造業者の取扱説明書に従ってStrip−EZ(登録商標)DNA標識キット(アンビオン社(Ambion))を用いてDNAプローブを標識した。
【0100】
定量的リアルタイムPCR
卵巣がん細胞株から単離した1μgの細胞内全RNA、1μgのオリゴdT、および水を一緒に混合して最終体積12μlとし、この混合物を70℃で10分間インキュベートし、次いで、5μlの2×反応混合液(Reaction Mix)、2μlのDTT、および1μlの酵素Superscript(商標)II(インビトロジェン社(Invitrogen))をこの混合物に加えることによって、cDNAを合成した。次に、この反応混合物を42℃で60分間インキュベートした。1:4〜1:256のcDNA希
釈液を調製した。「Qiagen QuantiTect SYBR Green PCR Handbook」(キアゲンコーポレーション社(Qiagen Corp.)[米国カリフォルニア州バレンシア(Valencia)所在]を用いて、最終体積50μl/ウェルとなるようにマスターミックス(Master mix)を調製した。使用したプレートの各ウェルに対して、25μlの2×QuantiTect(登録商標)SYBR Green PCR Master Mix(キアゲン社(Qiagen))、0.3μMの順行(フォワード)プライマー、0.3μMの逆行(リバース)プライマー、およびRNaseフリー水を加えて最終体積45μlとした。
【0101】
各遺伝子用のマスターミックスを完全に混合し、適切な体積量を分取して、PCRチューブまたはプレート中に以下のように入れた。すなわち、鋳型無し(対照)=遺伝子のマスターミックス45μl+HO 5μl;緩衝液ブランク=HO 25μl+SYBRミックス25μl;試験試料=遺伝子のマスターミックス45μl+cDNA(上記のように希釈したもの)5μlとした。
【0102】
ABI Prism(登録商標)7700(アプライドバイオシステムズインコーポレイテッド社(Applied Biosystems,Inc.)[米国カリフォルニア州フォスター市(Foster City)所在]配列検出システム、またはMJリサーチ(MJ Research)社([米国マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)所在])のOpticon(登録商標)IIシステムを用いて、以下のようにして配列検出を実施した:PCRの最初の活性化工程は、95℃で15分間実施した。試料を94℃で15秒間変性させ、53℃(OpticonIIシステムを使用するときは55℃)で30秒間アニーリングし、72℃で30秒間伸長させた(データはこの工程の間に取得した)。PCR反応を50サイクル繰り返した。以下の工程、すなわち95℃で15秒、60℃で20秒、95℃で20秒の工程を追加することによって、融解曲線解析の準備をした。
【0103】
さらに、プラチナ系の化学療法剤を用いた治療を受けたことがある化学療法感受性(すなわち反応性)および化学療法抵抗性(すなわち非反応性)の卵巣がん患者から得た組織試料からRNAを調製した。50〜100mgの組織試料を1mlのTRI試薬またはTrizol中で組織が液化されるまでホモジナイズすることによって、RNAを単離した。次に、試料を5分間放置した。BCP 100μlを試料に添加して、相分離を行った。15秒間振とうした後、室温で15分間、試料をインキュベートし、続いて、13,000×g(相対遠心力、RCF)、4〜25℃で9分間遠心分離した。ピペットで上清を取り出し、新しい微小遠心チューブ中に入れた。次に、上清を500μlの新しいイソプロパノールと混合することによってRNAを沈殿させ、室温で20分間インキュベートし、13,000RCF、4〜25℃で9分間遠心分離した。次に、上清をチューブから除去し、該チューブに1mlの75%エタノールを加え、ボルテックス混合し、次いで13,000RCF、4〜25℃で6分間遠心分離することによって、ペレットを洗浄した。液体を除去し、ペレットを約8分間、風乾させた。次に、ペレットをRNaseフリーの水に溶解し、すぐに使用する場合は氷中に置き、または−80℃で保存した。
【0104】
化学療法感受性の患者と化学療法抵抗性の患者との間の遺伝子発現の変化を検出するために、表3に示す遺伝子に対するプライマーを用いた定量的リアルタイムPCRを実施した。18S RNAの発現を用いて発現遺伝子の値を補正した。結果を以下の表3に示す。これらの結果は、細胞株由来のRNAを用いて行った実験から得られた観察結果を裏付けている。
【0105】
【表3】

【0106】
リアルタイムPCRによって遺伝子発現を検証するために、以下のプライマー配列を用いた。
250654(この遺伝子は、特異的な分子ビーコンプローブを用いて最初に検証したが、その後の検討はSYBRグリーンを用いて実施した)
分子ビーコンを用いた検証:
ビーコン:FAM−CGCGTATGAACTGGGCTTATGTGACGCG−DABCYL(配列番号13)
隣接順行プライマー:CTGGGCTCTGCCTTAAACAC(配列番号14)隣接逆行プライマー:GCTCCCAAAAGTTTGAACCA(配列番号15)
内部順行プライマー:TTGCCTGAGGCTGTAACTGA(配列番号16)
内部逆行プライマー:GCTCCCAAAAGTTTGAACCA(配列番号62)
SYBRグリーンの場合:
順行:CCA CTT CTT TGC CAC AAA GT(配列番号17)
逆行:GAA TTC GGT CAG CTC AGA GT(配列番号18)
810612(この遺伝子は、特異的な分子ビーコンプローブを用いて検証した)
ビーコン:FAM−CGCCTGGGTGGGTTTGAAGGAGGCG−DABCYL(配列番号19)
隣接順行プライマー:ATCGAGTCCCTGATTGCTGT(配列番号20)
隣接逆行プライマー:GCCTGCATGAGGTGGTTAGT(配列番号21)
内部順行プライマー:CTTGCCATGACTCCTTCCTC(配列番号22)
内部逆行プライマー:GCCTGCATGAGGTGGTTAGT(配列番号63)
39093
順行:GCA GAA GCA CAT CGA CAA GT(配列番号23)
逆行:GCC TGC ATT TAA TCC ATT CTC(配列番号24)
882511
順行:TAA CCA CGT CCT GCT GAA GT(配列番号25)
逆行:GCT TTA AGA AAG TTC TTA TCA AC(配列番号26)
950367
順行:GCA CAG CGG AGT GGT AAG A(配列番号27)
逆行:CAG AGG AGT CAG ACA CAT TG(配列番号28)
34140
順行:GTA TAC TTA CTT CAG TGC TGT T(配列番号29)逆行:CAT TCT TGC TAT AAC GTT TAA CA(配列番号30)
726147
順行:CTC TGT GAC TTC GGC ATC A(配列番号31)
逆行:CAG ACA TCA GAG CGG ACA T(配列番号32)
427980
順行:AAG AAC TGG GTT CAG TGG AAA(配列番号33)
逆行:GAG AGT GCA TGG TCT TGA GT(配列番号34)
123980
順行:AGC CAC CAG CTA AGT ACC TT(配列番号35)
逆行:CAT CGA TTT CAA CCG GAA CAA(配列番号36)
824568
順行:GTG TGT GGA CCT CCA TGT TA(配列番号37)
逆行:AGC ACA CCA TTA CAG ACA AGT(配列番号38)
1636620
順行:GGA ACC AGT TTC TGC AGG AA(配列番号39)
逆行:CTC CAG CAG CAC CTC AAT G(配列番号40)
809639
順行:ATC CAA GGT TAT GTG GTT TCT T(配列番号41)逆行:CAC CTC CTG GGC TTC TGA A(配列番号42)
756687
順行:GAT CCA TGA AGC TAA TGT ACA A(配列番号43)逆行:ACG GGC AGA AGC CTT CGT T(配列番号44)
845441
順行:CCT GAG GTT CTC CGA GAT G(配列番号45)逆行:TCC AGC CCG AAA TTC TCT GT(配列番号46)
68605
順行:CAA GAG GCG GAA GGG TAA A(配列番号47)
逆行1:CAG CCG CTC GGG TAG GT(配列番号48)
逆行2:CAC TAT GGA AGG ACC TTG CT(配列番号49)
838636
順行:GGA TAC AGG TGT AGG TAA ATC(配列番号50)
逆行:TCC CAG ATT AGG AAT TTA TGT A(配列番号51)
345077
順行:CTT CTG GAA CAG GCG AAG A(配列番号52)
逆行1:GCT GGC CCA GAC GAC GAA(配列番号53)
逆行2:GCA GAC ACA CGT GGA TGG T(配列番号54)
825214
順行:GAT GAA GTT AAA TCC TCC TTT G(配列番号55)逆行:CCT CTT CTG TGC TGT CAC TT(配列番号56)
297392
順行:CCT GCA AGA AGA GCT GCT G(配列番号57)
逆行:CAC AGC TGT CCT GGC ATC A(配列番号58)
897594
順行:AGC ACC AGC ACT GGC TCA TCA A(配列番号109)
逆行:AGA GCC AGA AGA GCT GCT A(配列番号110)
713886
順行:AAC CGA CAA GTG TGA CAA CT(配列番号111)’
逆行:TGT GCC TTG CGG GCA GTA(配列番号112)
884867
順行:C ACC ACC ACC ACC AAA TGA A(配列番号113)
逆行:CA TCC ATT CGA CGC CTT TGA(配列番号114)
321247
順行:CCA GCA GCA CAG TCA ACA AA(配列番号115)
逆行:TGG TAG CTT CTG CTT CAC AA(配列番号116)
1630998
順行:CCA GAG CTG CAC TCA TTC C(配列番号117)
逆行:CAC TGT TGG TGA TAA AGC AAT T(配列番号118)
756595
順行:GGA TAA AGG CTA CTT AAC AAA G(配列番号119)
逆行:CCA CTT TGC CAT CTC TAC AC(配列番号120)
549728
順行:GAG CCG AGG AGG TTG AAA G(配列番号121)
逆行:CTC CTC TGG GTC TAT AGT GT(配列番号122)
203003
順行:GAC CCT GGT GGC GGT GAA(配列番号123)
逆行:GGT GCC TGC AGC ATC TTC A(配列番号124)
814731
順行:GGA GAG CCC TGG CAC GTA(配列番号125)
逆行:CCT TCA TCT GCA GGT TCT TG(配列番号126)
714196
順行:ACG ACG GAC ACA TTA ATT ACT(配列番号127)
逆行:TCC ATG CTG CAG CTG ATG A(配列番号128)
809784
順行:C CTT CGG CAA AGG GAG AGT(配列番号128)
逆行:CTG GAT GAG TTC AGA GAG TTT(配列番号130)
825293
順行:GCC TCG ACA GGC AGA GAT(配列番号131)
逆行:CTT GTA GCT GAA GAT GTC AAT(配列番号132)
246120
順行:CTC TAT GCC CGG GAC AAG T(配列番号133)
逆行:AAG ACA TGT CGA AGC CAT ACA (配列番号134)’
シスプラチンに対して抵抗性の卵巣がん細胞で上方制御または下方制御される遺伝子の概要
EFハンドタンパク質をコードしている遺伝子
カルシウムにより活性化されるEFハンドタンパク質をコードする5種の遺伝子、すなわち、S100A10、S100A11、SPARC、カルパイン2、およびグランカルシンが同定された。4種の遺伝子のうちの2種、すなわちS100A10およびS100A11は、第1染色体の1q21に互いに隣接して位置している(ペイヨヴィッチ(Pejovic)、1995年、Ann.Med.第27巻、73〜78ページ;リーディンガーら(Ridinger et al.)、1998年、Biochimica et
Biophysica Acta 第1448巻、254〜263ページ)。第1染色体のこの領域は、卵巣がんにおける染色体再編成の温床の1つとして報告されている(ペイヨヴィッチ(Pejovic)、1995年、Ann.Med.第27巻、73〜78ページ)。S100A10およびS100A11の正確な生物学的機能は分かっていない。S100A10およびS100A11はいずれも、より抵抗性の高い卵巣がん細胞株においてより高いレベルで発現される(それぞれ図1および図2を参照のこと)。図3は、S100A10およびS100A11のmRNAも、化学療法に対する反応性の高い患者と比較すると、抵抗性がより高い患者では上昇していることを示す。
【0107】
SPARC(オステオネクチンおよびBM40としても知られている)は分泌タンパク質である(レーンおよびセージ(Lane and Sage)、1994年、FASEB J.第8巻、163〜173ページ)。SPARCは、腫瘍性卵巣の間質で高度に発現されることが示されており(ペイリーら(Paley et al.)、2000年、Gynecologic Oncology 第78巻、336〜341ページ)、また、卵巣がん細胞でアポトーシスを誘発することが示されている(イウら(Yiu et al.)、2001年、Am.J.Pathol.第159巻、609〜622ページ)。しかし、高レベルのSPARCが、黒色腫(レッダら(Ledda et al.)、1997年、J.Invest.Dermatol.第108巻、210〜214ページ)および結腸直腸がん(ポルトら(Porte et al.)、1995年、Int.J.Cancer 第64巻、70〜5ページ)において検出されており、また、前立腺がん(トーマスら(Thomas et al.)、2000年、Clin.Cancer Res.第6巻、1140〜9ページ)および神経膠芽腫(ゴレムビースキーら(Golembieski et al.)、1999年、Int.J.Dev.Neurosci.第17巻、463〜72ページ)において細胞の遊走および浸潤を促進することも報告されている。SPARCの過剰発現は、乳がん細胞の運動性および浸潤の増大にも寄与する(ブリッグスら(Briggs et al.)、2002年、Oncogene 第21巻、7077〜91ページ)。本明細書で示すように、SPARCは、化学療法抵抗性のより高い卵巣がん細胞株においてはより高いレベルで発現されることが発見された(図4)。図5で示すように、腫瘍が再発していた患者から採取した試料においても、SPARCのmRNAは増加していた。
【0108】
カルパイン2はカルシウム活性化プロテアーゼである。カルパイン2活性の阻害因子が
、ヒトの急性リンパ芽球性白血病および非ホジキンリンパ腫、ならびに固形腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発することが最近報告された(ファンおよびワン(Huang and Wang)、2001年、TRENDS in Molecular Medicine 第7巻、355ページ)。カルパイン2のmRNAレベルは、化学療法抵抗性のより高い卵巣がん細胞株で上昇していた(図6)。
【0109】
グランカルシンは、EFハンドタンパク質のペンタEFハンドサブファミリーに属する、最近報告されたCa2+結合タンパク質であり、Ca2+が結合すると膜に移行する(ロリークら(Lollike et al.)、2001年、J.Biol.Chem.第276巻、17762〜9ページ)。グランカルシンmRNAは、シスプラチンを用いた治療に対して反応性がより高い細胞株と比べて、シスプラチンに対する抵抗性がより高い細胞株において増加していることが発見された(図7)。
【0110】
タンパク質の翻訳および翻訳制御に関与するタンパク質をコードする遺伝子
MetAP2:メチオニンアミノペプチダーゼ2(eIF−2が結合したp67としても知られている)の発現は、卵巣がんに関連づけられたことはなかった。この遺伝子によってコードされているタンパク質は、2つの機能を有しているようである。同タンパク質は、新しく合成されたタンパク質から最初のメチオニンを除去し(リおよびチャン(Li
and Chang)、1996年、Biochem.Biophys.Res.Commun.第227巻、152〜9ページ)、また、真核生物の開始因子2α(eIF−2α;GTP結合タンパク質)にも結合し、そのリン酸化を阻害する(ウーら(Wu et al.)、1993年、J.Biol.Chem.第268巻、10796〜10801ページ)。MetAP2に対する抗体を用いると、MetAP2の発現は、抵抗性の最も高い細胞株OVCA429で増大されており、Hey(シスプラチン感受性が最も高い細胞株;図8を参照のこと)で下方制御されているようである。さらに、シスプラチン系の化学療法に対する抵抗性のレベルが異なる3名の患者から得た組織試料でMetAP2のmRNA発現を調べると、MetAP2は、化学療法に対する抵抗性が中間レベルの患者(CAP2;図9)および低レベルの患者(CAP1;図9)と比較して、最も抵抗性の高い患者(図9のCAP3)から得た試料において最も増大しているようであった。MetAP2を特異的標的とする薬物TNP−470は、現在、いくつかのヒトの腫瘍における血管新生阻害剤として臨床試験中である(クルガーおよびフィグ(Kruger and Figg)、2000年、Expert Opin.Investig.Drugs 第9巻、1383〜96ページ)。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてMetAP2の細胞内レベルを低下させると、アポトーシスを誘発することが示されている(ダッタおよびダッタ(Datta and Datta)、1999年、Exp.Cell Res.第246巻、376〜83ページ)。これらの観察結果は、このタンパク質が卵巣がん治療の重要な標的となり得ることを示唆する。
【0111】
eIF5は、GTPアーゼ活性化タンパク質として機能する、翻訳開始およびタンパク質合成の別の中心的タンパク質である(ポーリンら(Paulin et al.)、2001年、Current Biol.第11巻、55〜9ページ;ダスら(Das et al.)、2001年、J.Bio.Chem.第276巻、6720〜6ページ)。2種類の転写物が検出され、どちらの発現レベルも、シスプラチンに対する抵抗性が最も高レベルの卵巣がん細胞株(図10)および抵抗性のより高い患者(図11)において上昇していた。
【0112】
eIF2BεのmRNAは、シスプラチンに対して最も高い抵抗性を示す卵巣がん細胞株において上方制御されている(図12)。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、5つのサブユニットからなるグアニンヌクレオチド交換因子複合体の調節性のεサブユニットである(プラウド(Proud)、2001年、Prog.Mol.Subce
ll.Biol.第26巻、95〜114ページ)。
【0113】
eEF1イプシロンのmRNAは、シスプラチンに対して最も高い抵抗性を示す卵巣がん細胞株において下方制御されていた(図13)。eEFは、ポリペプチドのアセンブリに関与している(ブラウンおよびプラウド(Browne and Proud)、2002年、Eur.J.Biochem.第269巻、5360〜8ページ)。
【0114】
キナーゼ:
SAPK/Erkキナーゼ1は、JNK1、JNK2、およびp38を活性化するがErk1およびErk2は活性化しない2重特異性キナーゼである(クエンダ(Cuenda)、2000年、Int.J.Biochem.Cell Biol.第32巻、581〜7ページ)。この遺伝子およびそのタンパク質は、これまでは卵巣がんには関連づけられていなかった。この遺伝子のmRNAレベルは、感受性のより高い細胞株と比べて、抵抗性のより高い細胞株において上昇していることが見出された(図14)。
【0115】
TESK2:このセリン/トレオニンキナーゼは、主に細胞核内に位置している。しかし、不活性なときは細胞質に移動する。TESK2はコフィリンを(Ser3で)特異的にリン酸化するが、コフィリンは、アクチン脱重合因子とともに、アクチンフィラメントの脱重合および切断を促進することにより、アクチンフィラメントの迅速な代謝回転およびアクチンに基づく再編成において極めて重要な役割を果たしているタンパク質である(十島(Toshima)、2001年、J.Biol.Chem.第276巻、31449〜58ページ)。卵巣がんに対する関連は、これまで報告されていなかった。TESK2のmRNAは、抵抗性のより高い細胞株において増大されている(図15)。
【0116】
FASTキナーゼ:これは、Fasによって媒介されるアポトーシスに関与していると考えられているFas活性化セリン/トレオニンキナーゼである(ティアンら(Tian
et al.)、1995年、J.Exp.Med.第182巻、865〜74ページ)。FASTキナーゼのmRNAは、化学療法抵抗性のより高い細胞株において増大されている(図16)
その他:
KLK6:これは、ザイムおよびニューロシンとしても知られているセリンプロテアーゼである。この遺伝子は、ヒトのカリクレイン遺伝子ファミリーに属し、この遺伝子ファミリーは、すでに前立腺がんのマーカーとして使用されている前立腺特異抗原(PSA)などの良く知られた分子も含み、また、卵巣がんのマーカーとしても調査されている(ディアマンディス(Diamandis)、2000年、Clinical Biochem.第33巻、579〜83ページ)。正常な対照と比べて、卵巣がん患者においてKLK6の血清レベルが上昇していることが報告されている(ディアマンディス(Diamandis)、2000年、Clinical Biochem.第33巻、579〜83ページ)。この遺伝子の発現レベルは、試験した化学療法抵抗性のより高い細胞株において上昇していた(図17)。この遺伝子が、卵巣がんにおいて染色体再編成の頻度の高い別の領域に位置していることも注目に値する(ペイヨヴィッチ(Pejovic)、1995年、Ann.Med.第27巻、73〜78ページ)。 HMT1(PRMT1としても知られている):この遺伝子は、タンパク質のアルギニンN−メチルトランスフェラーゼをコードし、そのバリアント2種の発現は、乳がんで下方制御されていることが発見された(スコーリスら(Scorlis et al.)、2000年、Biochem.Biophys.Res.Commun.第278巻、349〜59ページ)。
【0117】
HMT1発現は、シスプラチンに対する抵抗性がより高い細胞において下方制御されていた(図18を参照のこと)。HMT1が、KLK6をコードしている遺伝子が存在するのと同じ染色体領域内の第19染色体上の19q13.3に位置していることに注目する
ことも興味深い。
【0118】
ARA9(アリール炭化水素受容体相互作用タンパク質(AIP)およびXAP2としても知られている)は、AHR媒介シグナル伝達においてある役割を果たしていると考えられている(カズラウスカスら(Kazlauskas et al.)、2002年、J.Biol.Chem.第277巻、11795〜801ページ)。この遺伝子に由来するmRNAは、シスプラチンに対する抵抗性がより高い細胞株において増加していた(図19)。ARA9も、卵巣がんに関連づけられている染色体再編成の頻度の高い別の領域である第11染色体上(11q13.3)に位置している(ペイヨヴィッチ(Pejovic)、1995年、Ann.Med.第27巻、73〜78ページ)。
【0119】
カルポニン2は、筋上皮がんにおいて研究されてきたが(モスンジャックら(Mosunjac et al.)、2000年、Diagn.Cytophathol.第23巻、151〜5ページ)卵巣がんでは研究されていない。カルポニン2の発現は、シスプラチン感受性のより高い卵巣がん細胞株と比べて、抵抗性のより高い細胞株においてわずかに増加していた(図20)。
【0120】
神経細胞アポトーシス阻害タンパク質(NAIP)は、シスプラチン抵抗性の最も高い細胞株においてわずかに下方制御されていることが分かった(図21)。NAIPは、卵巣がんと関連づけられたことはなかった(タムら(Tamm et al.)、2000年、Clin.Cancer Res.第6巻、1796〜1803ページ)。
【0121】
RNA結合タンパク質S1(RNPS1)は、mRNA前駆体スプライシングの一般的な活性化因子であり、アポトーシスの促進に関与しているASAPおよびSART3腫瘍拒絶抗原との複合体を形成することができる(シュベルクら(Schwerk et al.)、2003年、Mol.Cell Biol.第23巻、2981〜90ページ;原田ら(Harada et al.)、2001年、Int.J Cancer 第93巻、623〜8ページ)。RNPS1のレベルは、シスプラチン抵抗性の細胞株において上昇していることが分かった(図22)。
【0122】
熱ショック転写因子(HSF2)は、熱ショックタンパク質の遺伝子の発現を調節する(マシューら(Mathew et al.)、1998年、Mol.Cell Biol.第18巻、5091〜8ページ)。HSF2は、その調節サブユニットPR65との結合に関してタンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)の触媒サブユニットと競合することもできるようであり、新規のPP2A調節タンパク質として作用すると考えられている(ホンら(Hong et al.)、2000年、Biochem.Biophys.Res.Commun.第272巻、84〜9ページ)。HSF2のmRNAレベルは、抵抗性のより高い細胞株において上昇していた(図23)。
【0123】
WDR1:WD反復タンパク質は全ての真核生物に存在し、シグナル伝達、転写、および増殖を含めて、多種多様な細胞機能の調節において重要な役割を果たしている(リら(Li et al.)、2000年、Biochem.Biophys.Res.Commun.第274巻、117〜23ページ)。しかし、WDR1の正確な機能は分かっていない。この遺伝子のmRNAは、感受性のより高い細胞株と比べて、抵抗性のより高い細胞株において増加していた(図24)。
【0124】
Ft1:この遺伝子のオープンリーディングフレームは、ユビキチン結合酵素に対する類似性を示しており、マウスでは、Rb関連p130遺伝子の近くに位置している(レシェら(Lesche et al.)、1997年、Mamm.Genome 第8巻、879〜83ページ)。細胞遺伝学的には、Ft1は、ヒトのがんにおいて繰り返し改変
される領域である第16染色体の16q12.2領域に位置している。卵巣がんのこの染色体領域では、ヘテロ接合性の喪失が報告されている。Ft1のmRNAレベルは、シスプラチンに対する抵抗性がより高い細胞株において上昇していた(図25)。
【0125】
NME4(nm23−h4としても知られている)は、腎細胞がんで中程度に過剰発現され、結腸直腸がんで強く過剰発現されるヌクレオシド二リン酸キナーゼである(ハイアーら(Hayer et al.)、2001年、Anticancer Res.第21巻、2821〜5ページ)。NME4のmRNAは、抵抗性のより高い細胞株において上昇していた(図26)。
【0126】
ADAR1:ADAR1などのアデノシンデアミナーゼによりアデノシンからイノシンへとRNAが編集されると、別のスプライシング部位が作られたり、コドンが変わったりするので、タンパク質の機能に変化が生じる(ワンら(Wang et al.)、2000年、Science 第290巻、1765ページ)。ADAR1遺伝子が、S100A10およびS100A11と同じ頻繁に再編成される染色体領域内である、第1染色体上の1q21.1〜q21.2に位置していることに注目することも興味深い(ペイヨヴィッチ(Pejovic)、1995年、Ann.Med.第27巻、73〜78ページ)。ADAR1のmRNAは、シスプラチンに対する抵抗性がより高い細胞株において上昇していた(図27)。
【0127】
NBR1:NBR1の正確な分子機能は分かっていない。(当業者には、本発明の方法における遺伝子の有用性は、ある遺伝子の機能特性についての詳細または正確な概念に依存するものではないことが理解されよう。)マッピング研究により、NBR1遺伝子はBRCA1遺伝子と非常に近接して位置していることが明らかになった(ホワイトハウスら(Whitehouse et al.)、2002年、Eur.J.Biochem.第269巻、538〜45ページ)。NBR1の卵巣がんとの関連は報告されていない。NBR1のmRNAは、シスプラチンに対する抵抗性が最も高い細胞株OVCA429において増大していた(図28)。
【0128】
亜鉛フィンガータンパク質262/MYM:MYM亜鉛結合モチーフを含むタンパク質をコードする遺伝子ファミリーのメンバーである(スメドレーら(Smedley et
al.)、1999年、Genomics 第60巻、244〜7ページ)。このタンパク質は卵巣がんと関連づけられたことはなかったが、この遺伝子のmRNAは、試験した他の細胞株と比べて、化学療法抵抗性の最も高い細胞株において増大していた(図29)。
【0129】
MRPL4:この遺伝子およびそのタンパク質は、卵巣がんに関連づけられたことはなかった。しかし、この遺伝子は、卵巣がんで頻繁に再編成される領域である第19染色体の19p13.2に位置している(ペイヨヴィッチ(Pejovic)、1995年、Ann.Med.第27巻、73〜78ページ)。MRPL4のmRNAは、化学療法抵抗性の細胞株において増大していた(図30)。
【0130】
HYA22:この遺伝子およびそのタンパク質は、卵巣がんに関連づけられたことはなかった。しかし、この遺伝子は、卵巣がんでの染色体再編成に関連した領域である第3染色体の3p21.3に位置している(ペイヨヴィッチ(Pejovic)、1995年、Ann.Med.第27巻、73〜78ページ;プロトポポフら(Protopopov
et al.)、2003年、Cancer Res.第63巻、404〜12ページ;センチェンコら(Senchenko et al.)、2003年、Oncogene 第22巻、2984〜92ページ)。HYA22のmRNAは、シスプラチンに対する感受性がより高い細胞株と比べて、抵抗性がより高い細胞株において増大していた(図
31)。
【0131】
ビネキシンβ:SCAM−1としても知られており、この遺伝子は、ビネキシンβ、CAP/ポンシン、およびArgBP2も含むタンパク質ファミリーに属するアダプタータンパク質をコードする(木岡ら(Kioka et al.)、2002年、Cell Structure and Function 第27巻、1〜7ページ)。ビネキシンが卵巣がんに関係していることは従来技術では知られていなかった。ビネキシンβのmRNAは、化学療法抵抗性の細胞株において増大されていた(図32)。
【0132】
G−CSFR:顆粒球コロニー刺激因子受容体(G−CSFR)は、原発性の卵巣がんのほぼいたるところで発現される。しかし、そのリガンドのG−CSFの発現は、研究事例の半分でしか同じ細胞内でみとめられず、自己分泌系の存在が示唆された(サバレーゼら(Savarese et al.)、2001年、Cancer Letters 第162巻、105〜15ページ)。研究事例の別の3分の1では、G−CSFは間質に局在し、受容体を発現しているがん細胞に対して間葉細胞がリガンドを提供できる傍分泌系が存在し得ることが示唆された(サバレーゼら(Savarese et al.)、2001年、Cancer Letters 第162巻、105〜15ページ)。予備的な遡及評価から、自己分泌系を発現している卵巣がん患者と比べて、傍分泌ループのみを発現している患者の方が、全体的な生存率が悪いことが示唆された(サバレーゼら(Savarese et al.)、2001年、Cancer Letters 第162巻、105〜15ページ)。G−CSFおよびその受容体は、正常な卵巣および一部の両性の卵巣腫瘍においても共発現され得る。G−CSFRのmRNAは、化学療法抵抗性の細胞株において増大していた(図33)。
【0133】
SRB1:CLA−1としても知られており、この遺伝子は、負に帯電したリポソームおよびアポトーシス細胞の双方を認識する受容体をコードしている。腫瘍細胞は、アポトーシス細胞およびアポトーシス小体の取込みおよび除去に関与していることが報告されている(深澤ら(Fukasawa et al.)、 1996年、Exp.Cell Res.第222巻、246〜50ページ)。これらの観察結果の生物学的意義は良く理解されていない。SRB1の発現と卵巣がんとの関連に関する開示はこれまでなかった。SRB1のmRNAは、化学療法抵抗性の細胞株において増大していた(図34)。
【0134】
IGFBP−7:最近同定された、IGF結合タンパク質のメンバーであり、このタンパク質は、比較的低い親和力でIGF−IおよびIGF−IIに結合する(オー(Oh)、1998年、Breast Cancer Res.Treat.第47巻、283〜93ページ)IGFBP−7のmRNAは、化学療法抵抗性の細胞株において増大していた(図35)。
【0135】
RAB22Aは、Rasタンパク質のRABサブファミリーに属している(カピら(Kauppi et al.)、2002年、J.Cell Science 第115巻、899〜911ページ)。RAB22AのmRNAは、化学療法抵抗性の細胞株において減少し、シスプラチンに対する反応性がより高い細胞株において増大していた(図36)。
【0136】
KIAA0082:KIAA0082は、公表された情報が無い完全長遺伝子である。この遺伝子のmRNA発現は、シスプラチンに対して抵抗性である細胞株において増大していた(図37)。
【0137】
NCOR2:これは、甲状腺ホルモン受容体に対する特異的な相互作用ドメインを有するSMRTに近縁なコリプレッサータンパク質である(ジェプセンおよびローゼンフェル
ド(Jepsen and Rosenfeld)、2002年、J.Cell Science 第115巻、689〜98ページ)。この遺伝子に対するmRNA発現は、シスプラチンに対して感受性の細胞株と比べて、化学療法抵抗性の細胞株において低下していた(図38)。
【0138】
MT1:メタロチオネイン1L(MT1)の正確な生理的役割はわかっていないが、以前の研究により、シスプラチンに対して抵抗性であるヒト卵巣がん細胞においてMTレベルが上昇していること(アンドリューおよびハウエル(Andrews and Howell)、1990年、Cancer Cells 第2巻、35〜43ページ)、ならびにMT遺伝子でトランスフェクトされた細胞がシスプラチンに対して抵抗性となったこと(中野ら(Nakano et al.)、2003年、Anticancer Res.第23巻、299〜304ページ)が報告されている。MTは、細胞質でシスプラチンを捕捉し、それによってシスプラチンに対する細胞の抵抗力を増大させる働きをすると考えられている(中野ら(Nakano et al.)、2003年、Anticancer Res.第23巻、299〜304ページ)。逆説的に、MT1のmRNAレベルは、シスプラチンに対する感受性が最も高い細胞(Hey)において著しく上昇しているようであった(図51)。
【0139】
MPP10:M期リンタンパク質(MPP10)は、大部分は細胞質タンパク質であるが、分泌されることも可能であり、ヒトのU3核内低分子リボ核タンパク質の構成成分である。このタンパク質の大半は、フィブリラリンと共に局在化しており(バセルガら(Baserga et al.)、1997年、Nucleic Acids Symp.Ser.第36巻、64〜7ページ)、rRNAのプロセッシングに関与している。この遺伝子または該遺伝子の産物と卵巣がんとの関連は報告されていなかった。MPP10の発現レベルは、シスプラチンに対する感受性が高くなるにつれ上昇した(図52)。
【実施例3】
【0140】
治療標的としてのSPARCのin vitro試験
SPARCは、試験した他の細胞株と比べて、シスプラチン抵抗性の最も高い細胞株(OVCA429)において最も高いレベルで発現された(図4)。このタンパク質が、接着を調節し、組織の再構築ならびに腫瘍の進行および侵襲性を促進する血管新生において重要な役割を果たし得るカルシウム結合性糖タンパク質であることは、当技術分野で公知である(レッダら(Ledda et al.)、1997年、J.Invest.Dermatol.第108巻、210〜214ページ)。
【0141】
腫瘍縮小手術を受ける前の個体、および患者の腫瘍が再発していたときは手術から9ヵ月後の時点の個体から得たヒトの腹水試料においてSPARC発現を試験した(図5;SPARCについて観察される2種の転写物は、差次的なポリアデニル化に起因して生じる;レッダら(Ledda et al.)、1997年、J.Invest.Dermatol.第108巻、210〜214ページ)。手術後のSPARC発現レベルは大きく上昇しており、この患者の不良転帰と相関した。この観察結果は、他の形態の固形がんを研究している他のグループによって得られた研究結果とも一致しており(ゴレムビエスキーら(Golembieski et al.)、1999年、Int.J.Dev.Neurosci.第17巻、463〜72ページ;ブリッグスら(Briggs et al.)、2002年、Oncogene 第21巻、7077〜91ページ;ファンおよびワン(Huang and Wang)、2001年、TRENDS in Molecular Medicine 第7巻、355ページ;ロリークら(Lollike
et al.)、2001年、J.Biol.Chem.第276巻、17762〜9ページ)、SPARC発現の増大から、卵巣がんだけでなく他のタイプの固形がんにおける化学療法的治療の成功および疾患の進行を予測することができることが示唆された。
【0142】
最も抵抗性が高い卵巣がん細胞株であるOVCA429においてSPARCタンパク質発現レベルを低下させると、シスプラチン抵抗性が低減されるかどうかを試験するために、SPARCのメッセージの異なる領域を標的とするように3種のsiRNAを設計した。使用したSPARCのsiRNAは以下の:
#1標的配列:AATCC TGT CCA GGT GGA AGT A(配列番号1);
#2標的配列:AAGCT CCA CCT GGA CTA CAT C(配列番号2);および
#3標的配列:AATGA CAA GTA CAT CGC CCT G(配列番号3)
であった。
【0143】
本明細書で記述するsiRNA実験は、siPORT(商標)Lipidプロトコール(アンビオン社(Ambion))を用いて実施した。実験を実施する時点で細胞が30〜70%コンフルエントになるように、トランスフェクションの24時間前に、10%FBS含有MEMα培地中に細胞を播種した。FBSまたは抗生物質を含まない培地を用いて、siPORTおよびsiRNAの複合体を調製した。siPORTについては、6ウェルのプレートにはウェル当たり4マイクロリットル、96ウェルプレートにはウェル当たり0.5マイクロリットルとなるように培地に加え、ボルテックス処理して混合し、室温で25分間インキュベートした。siRNAについては、培地中で希釈した1〜25nM(通常は12.5nMを使用)の濃度のsiRNAを使用した。siPORTをsiRNA混合物に加え、穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートした。無血清培地で細胞を洗浄した後、プレートに細胞を加えた(96ウェルプレートを使用する場合は、4.5×10の密度で細胞を播いた;6ウェルプレートを使用する場合は、1〜5×10の密度で細胞を播種した)。siPORT/siRNA複合体を各プレート/ウェルに加え、プレートを穏やかに揺り動かして細胞表面全体に複合体を行き渡らせた。通常の細胞培養条件のもとで4時間インキュベーションした後、10%FBSを含有する追加の培地を細胞に加えた。48時間後に、全RNAを抽出した。
【0144】
供給業者(アンビオン(Ambion)社)の取扱い説明書に従って、siRNA構築物で細胞をトランスフェクトした。6ウェルプレートの場合は、ウェル当たり12.5nMのsiRNAをトランスフェクションに使用した。siRNAのOD260の測定を1:100の希釈率で2連にて実施した。測定値を平均し、次に希釈係数を掛け、次いで40を掛けて(OD260の値1は40μg/mlのRNAに等しい)、μg/mlの単位でのsiRNAの最終濃度を得た。その数値を14(平均的な21merのdsRNA1ナノモル中のRNAのμg数)で割って、μMの単位でのsiRNAの最終濃度を得、次に、濃度がnMとなるように変換した。
【0145】
これらの研究の結果を図48に示す。3種類のsiRNAは全て、これらの細胞においてSPARCのmRNAレベルを低減させた。siPORTのみ、またはsiRNA#2のセンス鎖のみで処理した細胞は、SPARCのmRNA発現の有意な低減を示さなかった。しかし、3種のsiRNA全てを一緒に含む併用処理ではいくらか効果を示された(図48)。
【0146】
SPARCのsiRNAの存在下でOVCA429細胞がシスプラチンに抵抗する能力についても調べた。細胞は、siPORTのみで処理するか、あるいは、siRNA#2のセンス鎖のみ、または完全なsiRNA#2でトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間の間、これらの細胞を回復させ、次に、段階的に濃度を上げたシスプラチン、または対応する濃度の対照のDMSOで処理した。細胞を薬物に24時間曝露させ
、その後薬物を取り除き、さらに72時間、細胞を回復させた。次に、細胞生存率に対するこの処理の効果をMTTアッセイによって評価した。結果を図49に示す;図50は、細胞に対する効果を定量化した後のこれらの結果を示す。このデータは、シスプラチンに曝露させる前に完全なsiRNA#2で細胞を処理すると、細胞の抵抗性のレベルが半分に低減することを示唆した(siPORTのみ、またはセンス鎖のみで処理した対照ではIC50が25〜50μMであるのに対し、siRNA#2で処理した後はIC50が〜12.5μMとなった)。
【0147】
これらの実験の結果は、SPARCが卵巣がんの治療標的およびマーカーであることを示した。
【実施例4】
【0148】
治療標的としてのMetAP2/p67のin vitro試験
MetAP−2/p67 は、いずれも細胞増殖に重要な機能を有する二機能性タンパク質である(リおよびチャン(Li and Chang)、1996年、Biochem.Biophys.Res.Commun.第227巻、152〜9ページ;ウーら(Wu et al.)、1993年、J.Biol.Chem.第268巻、10796〜10801ページ)。一方の役割では、このタンパク質は真核生物の開始因子2(eIF−2)に結合してそのリン酸化を阻害し、また、他方の役割では、このタンパク質のC末端ドメインが、いくつかの細胞性タンパク質からのN末端メチオニンの加水分解を触媒する酵素活性を有している(ウーら(Wu et al.)、1993年、J.Biol.Chem.第268巻、10796〜10801ページ)。eIF−2のリン酸化によりeIF−2の翻訳レパートリーが改変されて、様々なメッセージが様々なリン酸化状態で翻訳されるのが可能となる。さらに、メチオニンアミノペプチダーゼ活性は、一般にタンパク質の機能にとって重要であり、N末端メチオニンの除去が行われないと不活性なタンパク質が生成されることが多い(リおよびチャン(Li and Chang)、1996年、Biochem.Biophys.Res.Commun.第227巻、152〜9ページ)。
【0149】
アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)に由来するフマギリン、およびその合成アナログのTNP−470は、MetAP−2に共有結合してそのメチオニンアミノペプチダーゼ活性を阻害するが、近縁のMetAP−1の活性は阻害しない(グリフィスら(Griffith et al.)、2998年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第95巻、15183〜8ページ)。いくつかの異なる種類の細胞をフマギリンで処理すると、MetAP−2の発現が増大されたことに注目することも重要である(ワンら(Wang et al.)、2000年、J.Cell.Biochem.第77巻、465〜73ページ);これらの細胞は、MetAP−2の発現レベルを上昇させることによって、MetAP−2の機能喪失に適応していると考えられる。
【0150】
本明細書で記述する実験は、OVCA429が、シスプラチンに対する感受性が最も高い細胞株Heyと比べて約7倍多くのMetAP−2を発現することを示した(図8)。ノーザンブロット解析も、MetAP−2発現のレベルが、臨床的にシスプラチン系化学療法に対する抵抗性がより高い患者でも上昇していることを裏付けた。図9は、最も抵抗性の高い患者(CAP3)のMetAP−2のmRNAレベルが、最も抵抗性の低い患者(CAP1)の約3倍高かったことを示す。シスプラチン系化学療法に対する抵抗性が中程度のレベルの患者も、中程度のレベルのMetAP−2 mRNAを示した。
【0151】
MTTによるアッセイを実施した。該アッセイでは、フマギリンのみ、シスプラチンのみ、および様々な濃度のシスプラチンとフマギリンの組合せを用いて、4、8、および2
4時間、OVCA429細胞を処理した。結果を図40、41、および42に示す。図40(上側パネル)は、フマギリンの濃度上昇がOVCA429細胞の生存率に与える効果を示す。細胞死がいくらか認められたが、細胞の80%までは、フマギリンが極めて高濃度でも生存していた。シスプラチンのみで細胞を処理すると(下側パネル)、シスプラチンのIC50は約100μMとなった。段階的にレベルを上げたシスプラチンに加えて0.1μg/mlのフマギリンが存在すると、IC50は約50μMに低下した。しかし、10μg/mlのフマギリンの存在下で細胞をシスプラチンで処理すると、細胞生存率が高まり、IC50は約200μMとなった。
【0152】
インキュベーション時間の長さにかかわらず、0.1μg/mlのフマギリンの存在下ではシスプラチンの効果が増大されたが、10μg/mlのフマギリンの存在下で細胞をシスプラチンで処理したときは逆の効果が増大された(図41および42)。これらの観察結果から、フマギリンが低濃度であるときに好ましいバランスが保たれ、フマギリンがシスプラチンと相乗的に作用してより多くの細胞の死滅をもたらすことが示唆された。
【0153】
MetAP−2発現を抑制する効果を測定するために、MetAP−2メッセージの異なる領域を標的とするように3種類のsiRNAを設計した(図43)。これらのMetAp−2のsiRNAは、
#1 標的配列:AAAGA TCA GCA TTG GAA GAT A(配列番号4)
#2 標的配列:AAGCA CAT CGA CAA GTT AGA A(配列番号5)
#3 標的配列:AAACA GTG CCG ATT GTG AAA G(配列番号6)
であった。
【0154】
図44は、OVCA429におけるMetAP−2の発現レベルに対するsiRNA#1の効果を示す。対照の細胞は、同じsiRNAのセンス鎖のみでトランスフェクションするか、または、トランスフェクション剤(siPort(商標)脂質)で処理した。siRNA#1で細胞をトランスフェクションすると、トランスフェクション効率が100%ではなかったにもかかわらず、MetAP−2の発現レベルは半分に低減された。これらの細胞のGAPDH発現レベルに対する効果はほとんど認められず、この処理によって遺伝子発現が一様に影響されるわけではないことが示された。さらに、siRNA#2および#3で細胞を処理しても、MetAP−2発現は低減されなかった。
【0155】
siRNA#1、#1のセンス鎖のみ、またはsiPort脂質のみでOVCA429細胞を処理することによって、MetAP−2の発現が妨害されたときの、シスプラチンに対するOVCA429の抵抗性を試験した。siRNAとともに48時間インキュベーションした後、様々な濃度のシスプラチン、または対応する濃度のその溶媒すなわちDMSOに、細胞を24時間曝露させた。この実験の結果を定量化し、図45に示す。これらの結果は、siRNA#1が存在すると、OVCA429のIC50が25μMから約3μMに低下することを示した。図46は、MTTアッセイを実施した後の96ウェルプレートの写真を示す。
【0156】
総合すると、これらの結果は、MetAP−2が卵巣がんにおける治療処置の有用な標的であることを示した。
【実施例5】
【0157】
治療標的としてのカルパイン2およびS100A10のin vitro試験、ならびにOVCA429細胞におけるS100A11発現の低減
549728(カルパイン2)
前述の方法を用いて、カルパイン2メッセージの異なる領域を標的とするように3種類のsiRNAを設計した。これらのカルパイン2のsiRNAは
#1 AA GGC ATA CGC CAA GAT CAA C(配列番号7);
#2 AA ACT TCT TCC TGA CGA ATC G(配列番号8);および
#3 AA ACG CTA TTC AAG ATA TTT A(配列番号9)
であった。
【0158】
前述したようにして、各siRNAをOVCA429細胞に導入した。図53は、これらの配列を用いたOVCA429細胞におけるノックダウン実験の結果を示す。前述のプロトコールを用いることによって、配列#1および#3は、遺伝子の発現レベルを約50%低下させた。さらに、siRNA#3を含むOVCA429細胞を様々な濃度のシスプラチンで処理した。通常、シスプラチンに24時間曝露させた後のOVCA429細胞のIC50は、シスプラチン約25μMである。図54に示すように、カルパイン2のsiRNA#3は、IC50を3.12μMに低減させ、それによって、シスプラチンに対する細胞の感受性を数倍増大させた。同様に、シスプラチンの存在下または不在下で、濃度を段階的に上げたカルパイン阻害因子I(ALLN)でOVCA429細胞を処理した。図55に示すように、ALLNはシスプラチンの存在下でこれらの細胞のIC50を12.5μMに低減させた。したがって、カルパイン2のsiRNA#3は、シスプラチンに対するOVCA429細胞の感受性に対してALLNより大きな効果を有していた。
【0159】
756595(S100A10)
S100A10メッセージに対して3種類のsiRNA:
#1 AA ATG GAA CAC GCC ATG GAA A(配列番号59);#2 AA ATT CGC TGG GGA TAA AGG C(配列番号60);および
#3 AA TAA TGA AGG ACC TGG ACC A(配列番号61)
を作製した。
【0160】
図56で示すように、siRNA#3は、OVCA429細胞のIC50をシスプラチン25μMから6.25μMに低減させ、それによって、細胞のシスプラチン感受性を増大させた。
【0161】
810612(S100A11) 前述の方法を用いて、S100A11メッセージの異なる領域を標的とするように3種類のsiRNAを設計した。これらのS100A11のsiRNAは、
#1 AA AGG ATG GTT ATA ACT ACA C(配列番号10);#2 AA GAA ACT GGA CAC CAA CAG T(配列番号11);および
#3 AA TCT GAT TGG TGG CCT AGC T(配列番号12)
であった。
【0162】
前述したようにして、各siRNAをOVCA429細胞に導入した。図57は、前述の方法を用いることによって、siRNA#1および#2がOVCA429細胞における遺伝子の発現レベルをそれぞれ50%および25%低下させたことを示す。
【実施例6】
【0163】
結腸がんにおけるMetAP−2、SPARC、カルパイン2、S100A10、およびS100A11の発現
市販の、5名の個体から単離された、非腫瘍組織および隣接する腫瘍組織から得られた対応する結腸cDNAセットをBDバイオサイエンスインコーポレイテッド社(BD Biosciences,Inc.)[米国カリフォルニア州サンホゼ(San Jose)所在]から入手した。
【0164】
正常結腸組織および腫瘍結腸組織におけるMetAP−2、SPARC、S100A10、S100A11、およびカルパイン2の発現レベルを決定するために、定量的リアルタイムPCR実験を実施した。図58は、5対の対応する結腸cDNAにおけるMetAP−2の発現レベルを示す。このデータは、患者らのうち2名の腫瘍cDNAにおける発現レベルが、対応する非腫瘍cDNAと比べて著しく上昇していたことを示している(患者BおよびC;図58)。別の1名の患者の腫瘍cDNAにおける発現レベルは、対応する非腫瘍cDNAと比べてわずかしか上昇していなかった(患者A;図58)。OVCA429における発現レベルを参照として使用した。以前の報告により、MetAP−2阻害因子TNP−470によって、ヒト結腸がんの肝臓転移を防ぐことができることが示されている(田中ら(Tanaka et al.)、1995年、Cancer Res.第55巻、836〜9ページ)。
【0165】
図59は、SPARCのmRNA発現レベルが、5つの対応腫瘍試料のうちの4つにおいて、対応する非腫瘍cDNAと比べて上昇していたことを示す。図60は、S100A11のmRNA発現レベルが、全ての対応腫瘍試料において、対応する非腫瘍cDNAと比べて上昇していたことを示す。図61は、S100A10のmRNA発現レベルが、5つの対応腫瘍試料のうちの4つにおいて、対応する非腫瘍cDNAと比べて上昇していたことを示す。図62は、カルパイン2のmRNA発現レベルが、全ての対応腫瘍試料において、対応する非腫瘍cDNAと比べて上昇していたことを示す。
【0166】
総合すると、これらの観察結果は、MetAP−2、ならびにSPARC、S100A11、S100A10、およびカルパイン2が、結腸がん患者のための治療標的であることを示唆している。
【実施例7】
【0167】
血清中の分泌タンパク質を検出するためのサンドイッチELISA
96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを、目的の遺伝子産物に対して作製した抗体でコーティングした。一定量の精製した組換え標的遺伝子産物を段階希釈し、定量のための検量線を作成するのに使用する。次に、一定量の患者の血清を各ウェルに添加する。蒸発を最小限に抑えるためにプレートにカバーをかけ、数時間から一晩、4℃でインキュベートする。抗原を取り除き、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でウェルを3回洗浄する。300μlのブロッキング溶液(魚類ゼラチンの3%(w/v)PBS溶液)を各ウェルに加え、室温で2時間インキュベートする。ブロッキング溶液を取り除き、PBSで3回、ウェルを洗浄する。次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合させた適切な抗体を各ウェルに加え(ウェル当たり100μl)、室温で1〜2時間インキュベートする。次に、抗体を取り除き、NP−40溶液(NP−40の0.05%(v/v)PBS溶液)でウェルを3回洗浄する。室温で30分間、ABTS(ロックランドイムノケミカルズ(Rockland Immunochemicals)社)を(ウェル当たり100μlで)各ウェルに加え、マイクロプレートリーダーを用いて405nmでの吸光度を測定することによって、結合を検出する。ペルオキシダーゼの代わりにアルカリ性リン酸塩結合体を使用する場合は、結合を検出するために、ABTSの代わりにpNPP(ロックランドイムノケミカルズ(Rockland Immunochemicals)社)を使用する。
【0168】
精製タンパク質を用いて作成した検量線から検出限界を決定した後、がんに罹患してい
ない数人の被験者、およびがんまたは良性の病態であると診断された数人の患者を試験して、目的の特定の遺伝子産物について予想される濃度範囲を決定する。がん患者についての予想範囲から、卵巣がん患者または疾患を再発している患者を、応答性の患者またはがんではない健康な被験者から特定または区別するために使用することができる境界が決まる。
【実施例8】
【0169】
siRNAを介した遺伝子発現の「ノックダウン」:
上述のプロトコールに従って、いくつかの遺伝子に対して特異的なsiRNAが、卵巣がん細胞株においてそれぞれの遺伝子を低減させる(または「ノックダウンする」)能力について試験した。各例において、試験対象のsiRNAとGC含有量が一致する対照の(非特異的な)siRNA(ダーマコンインコーポレイテッド社(Dharmacon,Inc)[米国コロラド州ラフィエット(Lafayette)所在]から入手)に対して、いくつかのsiRNAを試験した。いくつかの例では、陰性対照(処理なし)も含めた。発現ノックダウンのレベルはsiRNAの種類によって変動した。特定の遺伝子および特定の遺伝子それぞれに対するsiRNA配列について以下に述べる。
【0170】
1.SAPK/Erk1(L36870)に対して2種類のsiRNAを作製した:
L36870(726147)
標的配列#1(配列番号64):AAA TGG GAC GAG GAG CTT ATG(コード配列の第320塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号65):AAG CGC ATC ACG ACA AGG ATA(コード配列の第831塩基対から始まる)
いずれの配列もSAPKの発現を低減させるのに成功し、配列#2はmRNAレベルを60%低減させた。
【0171】
2.eEF1ε(BC005291)に対して3種類のsiRNAを作製した:
BC005291(306921)
標的配列#1(配列番号66):AAC AGG ATT GAC TAC TAT AGC(コード配列の第123塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号67):AAT ACA GGG TCA CTC AAG TAG(コード配列の第227塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号68):AAA TAT CTT AAT GTG TCT CGC(コード配列の第412塩基対から始まる)
標的配列#1および#2は、eEF1εの発現を低減させるのに成功し、配列#1はmRNAレベルを65%低減させた。
【0172】
3.G−CSFR(M59818)に対して3種類のsiRNAを作製した:
M59818(809639)
標的配列#1(配列番号69):AAG TGT GAG CTG CGC CAC AAG(コード配列の第793塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号70):AAG AGC CCC CTT ACC CAC TAC(コード配列の第1666塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号71):AAC AGG AAG AAT CCC CTC TGG(コード配列の第1957塩基対から始まる)
標的配列#1および#3は、G−CSFRの発現レベルを低下させ、配列#1はmRNAレベルを53%低減させた。
4.ARA9/XAP2(U31913)に対して3種類のsiRNAを作製した:
U31913(814731)
標的配列#1(配列番号72):AAA CGT GTG ATA CAG GAA G
GC(コード配列の第48塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号73):AAC AAG TAC GAC GAC AAC GTC(コード配列の第775塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号74):AAC GTC AAG GCC TAC TTC AAG(コード配列の第790塩基対から始まる)
標的配列#2および#3は、ARA9発現の低減をもたらし、配列#3はmRNAレベルを50%低減させた。
【0173】
5.RNPS1(AF015608)に対して3種類のsiRNAを作製した:
AF015608(897594)
標的配列#1(配列番号75):AAT ATT CAT ACG GCA TGG ACT(コード配列の第327塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号76):AAC CTA AAA TAG AAG ACC CCT(コード配列の第680塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号77):AAA AGA TGC TGA CTC AGA AAA(コード配列の第752塩基対から始まる)
3種の配列はいずれもRNPS1の発現を低減させるのに成功し、配列#1はmRNAレベルを35%低減させた。
【0174】
6.フューズドトウ(Fused toes)(BC001134)に対して、3種類のsiRNAを作製した:
BC001134(321247)
標的配列#1(配列番号78):AAC CTA AAA TAG AAG ACC CCT(コード配列の第680塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号79):AAG ACC CCT ATG CAA TTA GCT(コード配列の第692塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号80):AAA AAG CCT GAA GAA CAG CAC(コード配列の第769塩基対から始まる)
3種の配列はいずれもフューズドトウ(Fused toes)の発現を低減させるのに成功し、配列#2はmRNAレベルを43%低減させた。
【0175】
7.グランカルシン(BC005214)に対して3種類のsiRNAを作製した:
BC005214(34140)
標的配列#1(配列番号81):AAA TGG GAT TTA ATG CAT TCA(コード配列の第323塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号82):AAC TTC ATG ACT GTT GAT CAA(コード配列の第379塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号83):AAC ATC ATG AGT TGC GTC AAG(コード配列の第419塩基対から始まる)
3種の配列はいずれもグランカルシンの発現を低減させるのに成功し、配列#2はmRNAレベルを83%低減させた。
【0176】
8.SRB1/CLA1/CD3611(BC022087)に対して3種類のsiRNAを作製した:
BC022087(756687)
標的配列#1(配列番号84):AAG CAG CAG GTC CTT AAG AAC(コード配列の第109塩基対から始まる)標的配列#2(配列番号85):AAT
CTC ATC AAC AAG TAC TTT(コード配列の第565塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号86):AAT TCA GAA CGT CAG CAC C
TG(コード配列の第981塩基対から始まる)
標的配列#1および#3は、SRB1の発現を低減させるのに成功し、配列#1はmRNAレベルを60%低減させた。
【0177】
9.KIAA0082(BC031890)に対して3種類のsiRNAを作製した:
BC031890(825293)
標的配列#1(配列番号87):AAG AGG AGA ACT GAC CCA GAA(コード配列の第4塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号88):AAA TGA GCG ATT GGA TGG TGG(コード配列の第509塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号89):AAG ATC ATC AAG GGC TCC AGT(コード配列の第2164塩基対から始まる)
配列#1は、mRNAレベルを65%低減させた。配列#2および#3は、mRNAレベルに対する効果を示さなかった。
【0178】
10.eIF2Bε(BC013590)に対して3種類のsiRNAを作製した:
BC013590 (1630998)
標的配列#1(配列番号90):AAT GTG GTT CGA ATA ATT ACA(コード配列の第352塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号91):AAA CTC GAG ATG ACT TTG TGC(コード配列の第800塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号92):AAT CAA CAG CTG CAG AGG TTC(コード配列の第2098塩基対から始まる)
配列#1はmRNAレベルを57%低減させ、配列#2はmRNAレベルを54%低減させ、配列#3はmRNAレベルを43%低減させた。
【0179】
11.カルポニン2(D83735)に対して3種類のsiRNAを作製した:
D83735(713886)
標的配列#1(配列番号93):AAG GAT GGA ACT ATC TTA TGC(コード配列の第163塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号94):AAT TTC GAC GAT GCC ACC ATG(コード配列の第457塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号95):AAC CGA CAA GTG TGA CAA CTC(コード配列の第708塩基対から始まる)
3種の配列はいずれも遺伝子発現のレベルを低減させ、配列#3はmRNAレベルを75%低減させた。
【0180】
12.HYA22(D88153)に対して3種類のsiRNAを作製した:
D88153(123980)
標的配列#1(配列番号96):AAA GAA ATG TGT GGT CAT TGA(コード配列の第507塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号97):AAA TCG ATG GAA CTA TAC ATC(コード配列の第596塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号98):AAC TAT ACA TCA GGT GTA TGT(コード配列の第606塩基対から始まる)
3種の配列はいずれも遺伝子発現のレベルを低減させ、配列#3はmRNAレベルを60%低減させた。
【0181】
13.CA125(BC009808)に対して3種類のsiRNAを作製した:
BC009808(CA125)
標的配列#1(配列番号99):AAT GGT TTC ACC CAT CAG AGC(コード配列の第235塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号100):AAG GGC TCA GCT ACA TTC AAC(コード配列の第2203塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号101):AAT ACA ACG TCC AGC AAC AGT(コード配列の第3380塩基対から始まる)
配列#3は、mRNAレベルを50%低減させた。
【0182】
14.HMT1(AF222689)に対して2種類のsiRNAを作製し、Hey細胞で試験した:
AF222689
標的配列#1(配列番号102):AAC TCC ATG TTT CAT AAAC
CGG(コード配列の第202塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号103):AAC GTG TAT GGC TTC GAC ATG(コード配列の第619塩基対から始まる)
いずれの配列もHMT1のmRNA発現を低減させることに成功し、配列#1は約70%、配列#2は60%を少し超える程度低減させた。
【0183】
15.MPP10(X98494)に対して3種類のsiRNAを作製し、Hey細胞で試験した:
X98494
標的配列#1(配列番号104):AAG TTC CAG AAA TCT GAA ATA(コード配列の第357塩基対から始まる)
標的配列#2(配列番号105):AAG AAA ATC CAG AAC ATG TAG(コード配列の第1043塩基対から始まる)
標的配列#3(配列番号106):AAA ACA GTA GCT TCG GAG AAG(コード配列の第1414塩基対から始まる)
3種の配列はいずれもmRNA発現を低減させ、配列#1はほぼ90%の低減をもたらし、配列#2および#3は、それぞれ約30%および40%低減させた。
【0184】
16.IGFBP−7(BC017201)に対して2種類のsiRNAを作製し、OVCA429で試験した。
BC017201
標的配列#1:AAG GTA AAA AGG GGT CAC TAT(コード配列の第583塩基対から始まる)(配列番号107)
標的配列#2:AAA GGG GTC ACT ATG GAG TTC(コード配列の第590塩基対から始まる)(配列番号108)
配列#1のみが、mRNAレベルの低減をもたらし、対照と比べて約60%であった。
【0185】
17.NM23−D(BC004880)に対して1種類のsiRNAを作製し、OVCA429細胞で試験した:
BC004880(203003)
標的配列#3:AAT GTC ATC CAC GCC AGC GAC(最初のATGから442塩基対の位置で始まる)(配列番号135)
標的配列#3のみが、対照と比べて約50%mRNAレベルを低減させた。
【0186】
18.WDR1(AB010427)に対して3種類のsiRNAを作製し、OVCA429細胞で試験した:
AB010427
標的配列#1:AAT GGA AAG TGC GTC ATC CTA(最初のAT
Gから106塩基対の位置で始まる)(配列番号136)
標的配列#2:AAG TTC ACA ATT GGC GAC CAC(最初のATGから544塩基対の位置で始まる)(配列番号137)
標的配列#3:AAG TGC TTC AGC ATC GAC AAC(最初のATGから1309塩基対の位置で始まる)(配列番号138)
標的配列はいずれもmRNAレベルを低減させ、対照と比べて、配列#1は約85%、配列#2は約75%、配列#3は約70%低減させた。
【0187】
19.ビネキシンβ(AF037261)に対して1種類のsiRNAを作製し、OVCA429細胞で試験した:
AF037261
標的配列#2:AAG AGT TAC CTA GAA GCA CCT(配列番号139)
標的配列#1および#3は対照と比べてmRNAレベルを低減させなかったのに対し、配列#2はmRNAを対照と比べて約50%低減させた。
【0188】
20.KLK6(BC015525)に対して3種類のsiRNAを作製し、OVCA429細胞で試験した:
BC015525
標的配列#1:AAA AAA CCG AAT CTT CAG GTC(配列番号140)
標的配列#2:AAA CTC TCT GAA CTC ATC CAG(配列番号141)
標的配列#3:AAC TGG ATC CAA AAA ACC ATT(配列番号142)
標的配列#1は対照と比べてmRNAレベルを低減させなかったのに対し、配列#2は約42%、配列#3は約55%、対照と比べてmRNAを低減させた。
【0189】
21.eIF5(U49436)に対して1種類のsiRNAを作製し、OVCA429細胞で試験した:
U49436
標的配列#1 mRNA標的配列:AAT GAC CGT TAC ATT GTC AAT(配列番号143)
標的配列#2および#3は、対照と比べてmRNAレベルを低減させなかったのに対し、配列#1は、対照と比べて約59%、mRNAを低減させた。
【0190】
22.亜鉛フィンガータンパク質262/MYM(AB007885)に対して1種類のsiRNAを作製し、OVCA429細胞で試験した:
AB007885
標的配列#3:AAA ATA TGG GAA CCT ACA ATA(最初のATGから3058塩基対の位置で始まる)(配列番号144)
標的配列#1および#2は、対照と比べてmRNAレベルを低減させなかったのに対し、配列#3は、対照と比べて約45%、mRNAを低減させた。
【実施例9】
【0191】
検証された遺伝子のin vitro機能試験
特異的なsiRNAがOVCA429細胞およびOVCAR−3細胞のシスプラチン感受性を高める能力を、ほぼ上記の実施例3〜5で開示したようにして検査した。各事例において、シスプラチン感受性は、特異的siRNAの存在下で増大したが、非特異的な(対照の)siRNA、または陰性対照(未処理)では増大しなかった。データは、試験し
た遺伝子が卵巣がん細胞株におけるシスプラチン抵抗性の発現に機能的に関与している可能性があることを示した。これらの結果を表4に要約する。
【0192】
【表4】

【実施例10】
【0193】
in vivo実験:
OVCAR−3細胞およびヌードマウスを用いて腫瘍の増殖を検査するために、以下のプロトコールを作成した:OVCAR−3細胞(1500万個/注射)をヌードマウスの上腕部分に接種した。25日後に目に見える腫れ物が現れた。接種後約35日目に腫瘍は測定可能な大きさとなった。次に、動物を、1週3回2週間の腹腔内注射投与により4μg/kg(体重)のシスプラチンで治療し、その後1週間は治療をしないもの、あるいは、対照として生理食塩水のみで処置するもののいずれかとした。図63は、マウス2匹の体重の関数として腫瘍体積を示すグラフである。このデータは、腫瘍を有する対照の動物が、化学療法がまったくなされない場合は腫瘍を増殖し続けることを実証した(マウス#1)。一方、シスプラチン治療を受けた動物は、腫瘍サイズの安定化を示した(マウス#2)。シスプラチン治療前後の腫瘍の写真も示す。
【0194】
このプロトコールを、本明細書で特定した遺伝子(MetAP−2、SPARC、S100A10、S100A11、およびカルパイン2)に対するsiRNAを発現する安定な細胞株を用いて繰り返す。カルパイン2またはS100A11のsiRNAを発現している安定なOVCAR−3細胞株、ならびに緑色蛍光タンパク質(GFP、細胞増殖に関
連しないマーカータンパク質)に対する安定なsiRNAを発現している対照のOVCAR−3細胞株を作製した;定量的リアルタイムPCRによって測定した、カルパイン2およびS100A11の発現ならびにsiRNA発現の効果を図64に示す。15匹のマウスを5匹ずつの3群に分ける。1つの群を対照として扱い、siRNAを発現していないOVCAR−3細胞を注射する。第2群にはsiRNAを発現しているOVCAR−3細胞を注射し、第3群にはGFP特異的siRNAを発現しているOVCAR−3細胞を注射する。測定可能な腫瘍が認められるようになった後、対照群には生理食塩水を注射し、第2群および第3群には標準のシスプラチン治療を施す。前述したように、体重の関数として腫瘍の増殖を観察する。
【0195】
別の実験では、15匹のマウスを5匹ずつの群に分け、純粋な(すなわち、組換え体ではない)OVCAR−3細胞を接種し、腫瘍を増殖させた。1つの群は対照として扱う。測定可能な腫瘍が認められるようになった後、対照群には生理食塩水を注射し、第2群には前述したように標準のシスプラチン治療を施し、第3群にはTNP−470(臨床的に認められているフマギリン誘導体)を併用する標準のシスプラチン治療を施す。前述したように、体重の関数として腫瘍の増殖を観察する。
【0196】
実施例で開示した情報は以下のように要約することができる。
【0197】
【表5】

【0198】

【0199】

【0200】
以上の開示内容は本発明の一部の特定の実施形態を強調するものであり、該実施形態に等価な全ての修正形態または代替形態は添付の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨および範囲に含まれると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵巣がん細胞において発現される細胞遺伝子の阻害因子としての少なくとも1種のsiRNA分子の使用であって、該使用は、卵巣がん腫瘍細胞のシスプラチン抵抗性を低減させる医薬品の調製のための使用であり、
前記阻害される細胞遺伝子は、S100A10、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、ビネキシンβ、NM23D、グランカルシン、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、G−CSFR、IGFBP−7、SRB1、およびKIAA0082からなる群から選択され、
前記卵巣がん細胞は、前記阻害因子の不存在下と比較して、前記阻害因子の存在化においてシスプラチンに対する抵抗性がより低い、使用。
【請求項2】
前記阻害される遺伝子は、MetAP2である
請求項1に記載の阻害因子の使用。
【請求項3】
前記siRNAは、配列番号4で示される
請求項2に記載の阻害因子の使用。
【請求項4】
前記阻害される遺伝子は、SPARCである
請求項1に記載の阻害因子の使用。
【請求項5】
前記siRNAは、配列番号2で示される
請求項4に記載の阻害因子の使用。
【請求項6】
前記阻害される遺伝子は、カルパイン2である
請求項1に記載の阻害因子の使用。
【請求項7】
前記siRNAは、配列番号9で示される
請求項6に記載の阻害因子の使用。
【請求項8】
前記阻害される遺伝子は、S100A10である
請求項1に記載の阻害因子の使用。
【請求項9】
前記siRNAは、配列番号61で示される
請求項8に記載の阻害因子の使用。
【請求項10】
前記阻害される遺伝子は、KLK6である
請求項1に記載の阻害因子の使用。
【請求項11】
前記siRNAは、配列番号141または配列番号142で示される
請求項10に記載の阻害因子の使用。
【請求項12】
前記阻害される細胞遺伝子は、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、WDR1、フューズドトウ(Fused toes)、ビネキシンβ、NM23D、グランカルシン、SAPK/Erk1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、G−CSFR、IGFBP−7、SRB1、またはKIAA0082である
請求項1に記載の阻害因子の使用。
【請求項13】
前記siRNAは、配列番号74、95、75、143、90、136、79、139、135、82、65、144、98、69、107、84、または87で示される
請求項12に記載の阻害因子の使用。
【請求項14】
卵巣がん細胞において発現される細胞遺伝子の阻害因子としての少なくとも1種のsiRNA分子の使用であって、該使用は、卵巣がん腫瘍細胞のシスプラチン抵抗性を低減させる医薬品の調製のためのシスプラチンと組合せでの使用であり、
前記阻害される細胞遺伝子は、S100A10、カルパイン2、SPARC、MetAP2、KLK6、ARA9、カルポニン2、RNPS1、eIF5、eIF2Bε、フューズドトウ(Fused toes)、NM23D、グランカルシン、SAPK/Erk1、WDR1、亜鉛フィンガータンパク質−262MYM、HYA22、G−CSFR、IGFBP−7、SRB1、またはKIAA0082である、使用。
【請求項15】
前記siRNAは、配列番号61、9、2、4、142、74、95、75、143、90、136、79、139、135、82、65、144、98、69、107、84、または87で示される
請求項14に記載の阻害因子の使用。
【請求項16】
前記少なくとも1種の阻害因子は、MetAP2活性の阻害因子である
請求項14に記載の阻害因子の使用。
【請求項17】
前記少なくとも1種の阻害因子は、SPARC活性の阻害因子である
請求項14に記載の阻害因子の使用。
【請求項18】
前記少なくとも1種の阻害因子は、カルパイン2活性の阻害因子である
請求項14に記載の阻害因子の使用。
【請求項19】
前記少なくとも1種の阻害因子は、S100A10活性の阻害因子である
請求項14に記載の阻害因子の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate

【図48】
image rotate

【図49】
image rotate

【図50】
image rotate

【図51】
image rotate

【図52】
image rotate

【図53】
image rotate

【図54】
image rotate

【図55】
image rotate

【図56】
image rotate

【図57】
image rotate

【図58】
image rotate

【図59】
image rotate

【図60】
image rotate

【図61】
image rotate

【図62】
image rotate

【図63】
image rotate

【図64】
image rotate


【公開番号】特開2013−79261(P2013−79261A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−271426(P2012−271426)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2010−81265(P2010−81265)の分割
【原出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【出願人】(500273296)ザ・ペン・ステート・リサーチ・ファンデーション (14)
【Fターム(参考)】