説明

卵成熟プロセス

本発明は、経済的関心のある海洋無脊椎動物由来の卵母細胞の成熟プロセスであって、当該海洋無脊椎動物由来の1つ又は複数の卵母細胞が、有効量の棘皮動物抽出物と接触し、それにより成熟卵母細胞が得られることをを特徴とする、卵母細胞の成熟プロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋無脊椎動物、特にナマコ(sea cucumbers or holothurians)の育成(ナマコの養殖(holothuriculture))に関する。特に本発明は、海洋無脊椎動物、特にナマコの卵成熟(oocyte maturation:卵母細胞成熟)プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ナマコの養殖で重要なステップの1つは、大量に受精卵を得ることである。現在使用されている方法では、ナマコを熱ショック(heat chocks)にかける。実際には、雄を、室温の水槽から、数℃高い別の水槽へと繰り返し移動させる。繁殖期にこの処置を施すと、幾つかの個体は、熱ショック(thermal chocks)をかけてから数時間のうちに配偶子を放出することができる。しかしながら、この方法の信頼性はそれほど高くなく、得られる結果はかなりランダムであり、使用されるプロトコルによってだけではなく、使用される種によっても、又は使用される雄によっても大きく変動する。
【0003】
さらに、現在は、成熟雌の解剖によって得られる卵巣から集められる卵母細胞から、in vitroで受精を行うことは不可能である。実際、ナマコでは、卵形成が減数分裂の第一分裂前期でブロックされる。このブロックを解除すると、さらなる卵形成が可能となり、それにより卵成熟(それにより受精が可能となる)が動物の産卵直前に自然に起こる。結果的に、ナマコでは、卵成熟プロセス(細胞周辺への核の移動、核膜の破壊、及び2つの核小体の形成を連続して包含するプロセス)が外部環境で起こる。
【0004】
商業的に利用されるナマコの卵成熟を効率的に誘導する方法の開発は経済的関心が高く、たった1つの繁殖カップル(reproducing couple)から何十万もの受精卵を即座に得ることが可能となる(1匹の成熟雌の卵巣は、成熟を待つ数十万の卵母細胞を含有し得る)。この目的のため、様々なナマコ種について、幾つかの海洋無脊椎動物において卵成熟を誘導することが知られている分子(成熟誘導物質又はMIS)を試験した。試験した物質は、1−メチルアデニン(1MeA)、ジチオスレイトール(DTT)、2,3−ジメルカプトプロパノール(DMP又はBAL)、及びL−システイン(L−Cys)であった。これらの分子はすべて、卵成熟の誘導率が非常に低いか、又は誘導しても、卵母細胞が受精できないか、若しくは受精はできるが異常な幼生が産まれたため、ナマコの養殖には役に立たないことが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明は、上記で引用した不都合を改善することを目的とする。特に本発明は、量の制限なく生存可能な幼生を得ることを考慮した、ナマコにおける卵成熟を誘導するプロセスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、棘皮動物抽出物、好ましくはウニ抽出物の助けを借りて、ナマコ等の海洋無脊椎動物の卵成熟を誘導可能であることを見出した。
【0007】
本発明は第1に、少なくとも1つの棘皮動物由来のタンパク質分画の抽出を含む、卵成熟の誘導に好適な棘皮動物抽出物を得るプロセスに関する。好ましくは、当該抽出は、棘皮動物の生殖腺の単離を含む。
【0008】
本発明は、本発明によるプロセスによって得ることができる棘皮動物のタンパク質抽出物、及び海洋無脊椎動物の卵母細胞の成熟を誘導する当該抽出物の使用にも関する。
【0009】
本発明は、海洋無脊椎動物の卵母細胞の成熟プロセスであって、海洋無脊椎動物の1つ又は複数の卵母細胞が、有効量の棘皮動物抽出物と接触することにより、成熟卵母細胞が得られることを特徴とする、海洋無脊椎動物の卵母細胞の成熟プロセスにも関する。
【0010】
したがって本発明は、ナマコの卵母細胞の成熟プロセスであって、ナマコの1つ又は複数の卵母細胞が、有効量の棘皮動物抽出物と接触することにより、成熟卵母細胞が得られることを特徴とする、ナマコの卵母細胞の成熟プロセスにも関する。
【0011】
さらに本発明は、本発明によるプロセスによって得られるナマコの卵母細胞から得られるナマコの幼生にも関する。
【0012】
本発明の他の態様、特色、及び利点は、以下の記載及びそれを説明する実施例を読むことで明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】異なるMISの存在下及び棘皮動物抽出物(以下、「nirine」と称する)の存在下でインキュベートした後の、Holothuria scabra(ハネジナマコ)由来の卵母細胞の成熟率及び産卵率を示すグラフ(標準偏差を含む)である。2つの異なる連続記号(+&−又は−&+又はa&b又はb&a)は有意に異なる値を示す(クラスカルワーリス検定;有意性閾値(significant threshold)=0.05)。略語:濾過海水(ODM)、1-メチルアデニン(1MA)、ジメルカプトプロパノール(DMP又はBAL)、L−システイン(L−cyst)、ジチオスレイトール(DTT)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、有効な卵成熟誘導因子を見出した。
【0015】
「成熟」という用語は、卵母細胞を受精可能にするすべての生理的ステップ及び細胞学的ステップを含む。「卵成熟」という用語は、すべての雌性配偶子の発生プロセスを指すこともあり、それにより卵形成の同義語となる。
【0016】
したがって本発明は、海洋無脊椎動物の卵成熟の誘導に好適な棘皮動物抽出物を得るプロセスであって、
(a)棘皮動物から少なくとも一部を単離すること、
(b)ステップ(a)で得られた単離物を遠心すること、及び
(c)上記単離物から遠心ペレットを回収することであって、それにより棘皮動物抽出物が得られる、回収すること
を含む、海洋無脊椎動物の卵成熟の誘導に好適な棘皮動物抽出物を得るプロセスに関する。
【0017】
本発明の特定の実施形態によれば、上記棘皮動物はウニである。好ましくは、上記棘皮動物は正形類(又は正形ウニ)である。正形類は、明確な放射形対称(五放射相称)、ほぼ球状の殻、正反対に位置する口腔及び肛門を特徴とする。口腔は口側の面の中心にあり、周口膜(peristomeal membrane)を横切っている。肛門は反口側の面の中心にあり、頂板系とも称される頂端の円に内接する肛門周囲膜(periproctal membrane)を横切っている。
【0018】
好ましい実施形態によれば、上記棘皮動物は、ウニ、すなわち、ウニ綱、特に真ウニ亜綱、特にエキヌス上目、特にエキヌス目、Physomatoida、及びサンショウウニ目を含む群から、並びにAnthocidaris属、Arbacia属、Colobocentrotus属、Echinometra属、Echinostrephus属、Echinus属、Evechinus属、Heliocidaris属、Heterocentrotus属、Loxechinus属、Lytechinus属、Mespilia属、Paracentrotus属、Parasalenia属、Parechinus属、Pseudoboletia属、Pseudocentrotus属、Psammechinus属、Salmacis属、Sphaerechinus属、Sterechinus属、Stomechinus属、Temnopleurus属、Tetrapygus属、Toxopneustes属、Tripneustes属、Stomopneustes属、及びStrongylocentrotus属に属するこれらのすべての種の中から選択される。
【0019】
特定の実施形態によれば、上記プロセスは、ステップ(a)において、棘皮動物の器官を単離することを含み、好ましくは、当該プロセスは、ステップ(a)において、棘皮動物の生殖腺、好ましくは雌性生殖腺、より好ましくは棘皮動物の卵母細胞を単離することを含む。例えば、上記ステップ(a)は、棘皮動物の卵を単離することであり得る。
【0020】
特定の実施形態によれば、ステップ(c)の遠心ペレットは、それ自体を卵成熟の誘導に使用することができ、又は凍結乾燥することもできる。その後、凍結乾燥品は粉末にすることができる。
【0021】
特定の実施形態によれば、ステップ(c)で得られる上記棘皮動物抽出物は、タンパク質抽出物であり得る。
【0022】
特定の実施形態によれば、上記凍結乾燥抽出物は、クロマトグラフィによって分画することができる。好ましくは、本発明によるプロセスによって得られる上記棘皮動物抽出物は、少なくとも12000Daの少なくとも1つのタンパク質を含む、タンパク質抽出物である。
【0023】
本発明は、本発明によるプロセスによって得ることができる棘皮動物抽出物であって、タンパク質抽出物であることを特徴とする、棘皮動物抽出物にも関する。好ましくは、当該タンパク質抽出物は、棘皮動物の卵に由来する。特定の実施形態によれば、上記棘皮動物抽出物は、分子量12000Da超の少なくとも1つのタンパク質を含む。
【0024】
本発明による抽出物は、ナマコ等の海洋無脊椎動物由来の卵母細胞の成熟を誘導することが可能である。
【0025】
したがって本発明は、海洋無脊椎動物、例えば棘皮動物(ヒトデ綱の棘皮動物、ウニ綱の棘皮動物、及びナマコ綱の棘皮動物等)由来の卵母細胞の成熟を誘導するための、本発明による棘皮動物抽出物の使用にも関する。好ましくは、本発明は、ナマコの卵成熟のための棘皮動物抽出物の使用に関する。
【0026】
好ましくは、ナマコは、楯手目の(aspidochirote)ナマコであり、例えば、Actinopyga属、Bohadschia属、Holothuria属、Isostichopus属、Labidodemas属、Thelenota属、Pearsonothuria属、Stichopus属に属するすべての種の中から選択することができる。
【0027】
本発明は、海洋無脊椎動物の卵母細胞の成熟プロセスであって、成熟卵母細胞を得るために、海洋無脊椎動物の1つ又は複数の卵母細胞が、有効量の棘皮動物抽出物と接触することを特徴とする、海洋無脊椎動物の卵母細胞の成熟プロセスにも関する。
【0028】
好ましくは、上記棘皮動物抽出物は、本発明による抽出物であるか、又は当該抽出物は、本発明によるプロセスによって得られる。
【0029】
特定の実施形態によれば、上記プロセスは、
海洋無脊椎動物由来の卵母細胞の試料を採取すること、及び
試料を採取した卵母細胞を、有効量の上記抽出物で処理することであって、それにより当該卵母細胞の成熟を誘導する、処理すること
を含む。好ましくは、抽出物は、ウニ抽出物であり、好ましくはタンパク質抽出物である。
【0030】
特定の実施形態によれば、上記タンパク質抽出物は、10%〜0.01‰、例えば5%〜0.05‰、例えば5%〜0.1‰、例えば5%〜0.5‰の範囲の濃度、例えば40‰、30‰、20‰、15‰、10‰、9‰、8‰、7‰、6‰、5‰、4‰、3‰、2‰、1‰、0.8‰の濃度で使用される。
【0031】
本発明は、本発明によるプロセスによって得られる、海洋無脊椎動物、好ましくはナマコ由来の卵母細胞にも関する。
【0032】
棘皮動物抽出物、好ましくはウニ抽出物から得られるこの誘導因子(以下、nirineと称する)によって、海洋無脊椎動物、特にナマコの卵巣に含有される、卵黄形成期の卵母細胞の90%超の成熟が可能となり、これは一年中いつでも可能である(すなわち、nirineを使用することによって、種の本来の繁殖期中及び繁殖期外に、成熟卵母細胞(さらに受精可能)を得ることができる)。nirineは、ナマコの楯手目種(すなわち、ヒトの食品に利用されるすべての種のうち数百種)の卵巣に対して活性がある。nirineは、4℃及び凍結乾燥形態ではタンパク質の性質があり、その生物活性は、1年超の間保持される。特定の実施形態によれば、棘皮動物抽出物は、水性抽出物である。当該抽出物は、棘皮動物をすりつぶした後、遠心し、遠心ペレットを分画することによって得ることができる。
【0033】
本発明の特定の実施形態によれば、プロセスは、有効量の上記抽出物による、卵母細胞の処理(接触)後に、当該卵母細胞の成熟が誘導されることを含む。「有効量」という用語は、結果を達成するのに十分な棘皮動物抽出物の投与量と理解する必要がある。
【0034】
好ましい実施形態によれば、卵母細胞は、ヒトの食品で使用される楯手目のナマコから試料を採取される。
【0035】
本発明は、ナマコの卵母細胞の成熟のための棘皮動物抽出物の使用にも関する。
【0036】
さらに本発明は、本発明によるプロセスによって得られるナマコの卵母細胞にも関する。
【0037】
本発明のプロセス及び棘皮動物抽出物は、経済的関心が高いため、商業的に利用されるナマコの卵成熟を効率的に誘導する方法の開発が可能となった。したがって、本発明により、例えば、たった1つの繁殖カップルから何十万もの受精可能な卵を即座に得ることが可能となる。本発明により、量の制限なく生存可能な幼生を得ることも可能となる。
【実施例】
【0038】
本発明者らは、成熟誘導因子(ここでは「nirine」と称する)を見出し、ナマコの解剖によって試料を採取した成熟卵母細胞の90%超の受精を可能にする技法を開発した。
【実施例1】
【0039】
他の分子と比較したnirineの効力
成熟誘導分子は、1−メチルアデニン(1Mea)、ジチオスレイトール(DTT)、ジメルカプトプロパノール(BAL)、及びL−システイン(L−cyst)である。これらの物質をそれぞれ、Holothuria scabra由来の卵母細胞に対して異なる濃度で試験した。
【0040】
図1は、海水中に入れたHolothuria scabra由来の卵母細胞の成熟率(成熟卵母細胞数/観察卵母細胞数)及び受精率(受精卵数/観察卵数)を、1MeA、DMP(BAL)、L−システイン、DTT、又はnirineのいずれかとインキュベートしたものと比較する図である。使用した分子についてそれぞれ、最大の成熟率が観察された最適な用量を示す。DMP及び1MeAは、成熟の誘導が40%未満である。L−システイン及びDTTは、成熟の誘導が70%超であるが、これらの分子のうち1つで処理した卵母細胞は、受精可能なものが50%未満である。すべての場合において、受精卵からは、5日より長く生存できない異常な幼生が産まれる。一方で、卵母細胞をnirineとインキュベートすると、成熟が誘導され、その90%超の受精が可能となり、得られた胚は生存可能であり、発生が正常に起こる幼生及び幼若体が得られる。
【実施例2】
【0041】
ナマコの卵母細胞の成熟に対するnirineの効果
解剖によってナマコの卵母細胞の試料を採取した。生殖腺を手で回収し、濾過海水で2回洗浄した。次いで、生殖管(gonadic tubules)を0.5cm長の片に切断し、配偶子放出の一助とした。次に、卵母細胞を、篩(メッシュ径500gm)を使用して、生殖管の細片から分離し、室温の濾過海水で満たした容器に入れた。試験中、最大の卵母細胞のみを使用した。
【0042】
以下に記載する溶液のうちの1つで2時間インキュベートした後、顕微鏡で観察した最初の100個の卵母細胞から、胚胞(germinative vesicle)を含まず、且つ極体を放出した卵母細胞の数を計数することによって、卵成熟を顕微鏡で検査した。濾過海水10ml中でのナマコの卵母細胞のインキュベーションを陰性対照とした。所定濃度のnirine溶液(卵母細胞濃度40/ml)中での卵母細胞のインキュベーションを陽性対照とした。
【0043】
nirineの活性を、異なるナマコ種の卵母細胞に関して試験した:Holothuria scabra、Holothuria leucospilota(ニセクロナマコ)、Holothuria edulis(アカミシキリ)、Holothuria fuscogilva(イシナマコ)、Holothuria maculosa、Bohadschia subrubra、Thelenota ananas(バイカナマコ)、及びHolothuria tubulosa。すべての引用種において、濾過海水に入れた卵母細胞が17%しか成熟しなかったのに対し、2‰のnirine存在下では、平均70%の卵母細胞が成熟した。これらの種は、楯手目に属した。
【0044】
楯手目の他の種を試験した:Holothuria cinerascens(クロホシアカナマコ)、Pearsonothuria graeffei(クロテナマコ)、Actinopyga echinites(トゲクリイロナマコ)。2‰のnirine溶液中でインキュベートした、これら3つの楯手目種の卵成熟の割合は、海水に入れた卵母細胞の25%に対し、平均で88%であった。
【実施例3】
【0045】
成熟を誘導するタンパク質抽出物の抽出
好ましい実施形態によるタンパク質抽出物は、ウニである、Tripneustes gratilla(シラヒゲウニ)の卵由来の凍結乾燥遠心ペレットである。ナマコの卵成熟を誘導する性質は、Tripneustes gratillaの卵に特有なわけではない。というのも、正形ウニである、Stomopneustes variolaris(クロウニ)、Echinometra mathaei(ナガウニ)、及びParacentrotus lividus(ヨーロッパムラサキウニ)の卵が非常に良好な結果を与えるからである(ブランクの19%に対し、平均92%の卵成熟)。
【0046】
タンパク質抽出物を得るために、最初に、これらのウニの卵を刺激した。これらは、機械的ストレスによって誘導した(動物を数分間手で振盪することにより、動物が成熟した際の配偶子の自発放出を刺激した)。産まれた卵母細胞を、5000rpmで10分間遠心した。5000rpm(1分間当たりの回転)の速度で2×10分間遠心した新鮮な卵のペレットから、成熟誘導産物を調製した。遠心ペレットを、そのまま使用するか、又は凍結、凍結乾燥(24時間)、粉末化して、実験時まで冷蔵庫で保存した。
【0047】
このタンパク質抽出物粉末を、適切な濃度(2‰)で海水に希釈し、実験前に溶液を濾過した。
【0048】
透析膜の使用により、タンパク質抽出物に含有された卵成熟誘導剤の最小分子量を確認することができた。この目的で、3mlのタンパク質抽出物(2‰)を、排除バリア(exclusion barrier)(カットオフ)が12000Daの透析膜(SPECTRUM)に入れた。この膜を3lのトリス緩衝液を含有するビーカー中に撹拌しながら浸漬した。3lの緩衝液を24時間で3回交換した。膜に含有されたnirineを回収し、Holothuria scabraの卵母細胞に対して試験した。成熟試験からは、活性剤は、海水又は緩衝液のいずれに対しても24時間透析した後もその効力をすべて保持することが示された。したがって、活性物質は12000Da超である。
【0049】
作用スペクトルの大きいタンパク質消化酵素であるプロテイナーゼKの作用により、クロマトグラフィによって得られた活性分画中に存在する成熟誘導剤がタンパク質の性質を有することを示すことができた。この目的で、クロマトグラフィによって得られた活性分画に、プロテイナーゼK(濃度0.01mg/ml)を、pH7、40℃で3時間、作用させた。この溶液を100℃で30分間加熱することによって、プロテイナーゼKの効果を阻害した。室温で冷却したこの溶液の活性を、Holothuria scabra由来の卵母細胞に対して試験した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵成熟の誘導に好適な棘皮動物抽出物を得るプロセスであって、
(a)棘皮動物から少なくとも一部を単離すること、
(b)ステップ(a)で得られた単離物を遠心すること、及び
(c)前記単離物から遠心ペレットを回収することであって、それにより前記棘皮動物抽出物が得られる、回収すること
を含む、卵成熟の誘導に好適な棘皮動物抽出物を得るプロセス。
【請求項2】
前記棘皮動物がウニであることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記棘皮動物が正形ウニであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(a)が、前記棘皮動物の卵を単離することを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記棘皮動物抽出物の凍結乾燥を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができる棘皮動物抽出物。
【請求項7】
タンパク質抽出物であることを特徴とする、棘皮動物抽出物。
【請求項8】
前記タンパク質抽出物が前記棘皮動物の卵に由来することを特徴とする、請求項7に記載の棘皮動物抽出物。
【請求項9】
分子量12000Da超の少なくとも1つのタンパク質を含む、請求項7又は8に記載の棘皮動物抽出物。
【請求項10】
海洋無脊椎動物、好ましくは棘皮動物、より好ましくはナマコの卵母細胞の成熟を誘導するための、請求項6〜9のいずれか一項に記載の棘皮動物抽出物の使用。
【請求項11】
前記棘皮動物抽出物がタンパク質抽出物であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
海洋無脊椎動物の1つ又は複数の卵母細胞が、有効量の棘皮動物抽出物と接触し、それにより成熟卵母細胞が得られることを特徴とする、海洋無脊椎動物の卵母細胞の成熟プロセス。
【請求項13】
前記棘皮動物抽出物が請求項6〜9のいずれか一項に記載の抽出物であるか、又は該棘皮動物抽出物が請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセスによって得られることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
海洋無脊椎動物由来の卵母細胞の試料を採取すること、及び
前記試料を採取した卵母細胞を、有効量の前記棘皮動物抽出物で処理することであって、それにより該卵母細胞の成熟を誘導する、処理すること
を含むことを特徴とする、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記棘皮動物抽出物がウニ抽出物であることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記棘皮動物抽出物がタンパク質抽出物であることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記タンパク質抽出物が、10%〜0.01‰の範囲の濃度で使用されることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれか一項に記載のプロセスによって得られるナマコの卵母細胞。


【図1】
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【公表番号】特表2009−541457(P2009−541457A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517249(P2009−517249)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056665
【国際公開番号】WO2008/003691
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(507338138)
【出願人】(509005764)インスティテュート ハリュウティクエ イーティー デス サイエンシズ マリーンズ デ エル’ユニヴァルシテ デ トリアラ (1)
【出願人】(509005753)
【Fターム(参考)】