説明

原動機付き車両の車室内温度を検出するセンサ装置

【課題】構造的に簡易であるとともに安価である上、エアコン装置のコントロールユニットの位置にかかわらず設けることが可能なセンサ装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも前面パネル14及び背面パネル18を備えつつ内部が断熱部材で充填されているケーシングと、前面パネル14の背面側に固設された第1の温度センサ16と、背面パネル18の内側における前面パネル14と対向する面に設けられた第2の温度センサ17とを備えて成り、エアコン装置のコントロールユニットの少なくとも一部を構成する、原動機付き車両の車室内温度を検出するセンサ装置において、前面パネル14を、原動機付き車両における車室内パネル15の一部として形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも前面パネル及び背面パネルを備えつつ内部が断熱部材で充填されているケーシングと、前記前面パネルの背面側に固設された第1の温度センサと、前記背面パネル内側における前記前面パネルと対向する面に設けられた第2の温度センサとを備えて成り、エアコン装置のコントロールユニットの少なくとも一部を構成する、原動機付き車両(以下単に「車両」という。)の車室内温度を検出するセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両内には、所定の温度を維持するために制御されるエアコン装置が設けられている。また、車室内の実際の温度を検出するために様々なセンサが設けられている。これらセンサは、回路的なユニットを形成するために、車両のエアコン装置用コントロールユニットに組み込まれることが多い。これについて、実際の温度を検出するためには、センサ装置に対する様々な影響を考慮する必要がある。
【0003】
特に、センサ装置に直射日光が当たることにより測定値が誤ったものとなり、車室内温度の制御が不十分なものとなってしまう。また、日光以外にも、例えば空気循環、周囲の装置の温度、コントロールユニット自体の熱などを考慮するとともに、これらの影響を測定値から除去する必要がある。
【0004】
ところで、実際の車室内温度を検出するためのセンサ装置が特許文献1に開示されており、これには、エアコン装置のコントロールユニットの外側に社室内温度を検出するセンサ装置を設けることが記載されている。このセンサ装置は温度センサを備えており、この温度センサは、センサ装置の前面パネルの背面側に、該前面パネルと熱的に良好に接触するよう固設されている。また、センサケーシングは、その背面側でバスタブ状の合成樹脂製ケーシングによってコントロールユニットの内部に対して閉鎖されている。
【0005】
まだ公開されていない特許文献2には、車両の車室内温度を検出するセンサ装置が記載されている。このセンサ装置は、エアコン装置(特にエアコン装置のコントロールユニット)の一部であり、前面パネル及び背面パネルを備えた閉じたケーシングと、互いに対向配置された2つの温度センサとを備えている。ここで、熱を伝達する前面パネルの背面に固設された第1のセンサは車室内温度を検出し、センサ装置の背面部に固設された第2のセンサはセンサ装置に対する背面側の熱輻射を検出する。
【0006】
これら2つの温度センサが互いに独立して動作するよう、センサ装置のケーシングにおけるこれら2つの温度センサの間には断熱部材が設けられている。これにより、温度センサに作用する熱源を互いに独立して解析することが可能となっている。また、コントロールユニットに向きつつ前面パネルの背面に固設された温度センサは、良好な熱伝導性を有する前面パネルに固設されている。なお、エアコン装置のコントロールユニットにセンサ装置を組み付けるために、前面パネルの表面にラッカーを塗布することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1415829号明細書
【特許文献2】独国特許出願第102007009672号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、構造的に簡易であるとともに安価である上、エアコン装置のコントロールユニットの位置にかかわらず設けることが可能なセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、前面パネルを、原動機付き車両における車室内パネルの一部として形成したことを特徴としている。ここで、前面パネルの厚さは、当該全パネルを通して熱移動がなされるように設定されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセンサ装置によれば、エアコン装置のコントロールユニットにおける任意の箇所にセンサ装置を設けることができるし、例えばインストルメントパネル、センタコンソール、ライニングなどのその他の箇所にもセンサ装置を設けることが可能である。
【0011】
また、温度センサを車室内パネルの背面部に設けることで、車室内パネルを車両のインテリアに合わせることができるとともに、センサ装置を任意の箇所に設けることができる上、周囲の装置による熱輻射の影響が及ぶ範囲外において車両に取り付けることが可能である。さらに、本発明によるセンサ装置は、従来技術のものに比べて、エアコン装置のコントロールユニットにおける幾何学上の位置、設計技術上の位置及び美観上の位置にとらわれることがない。そのため、エアコン装置のコントロールユニットの形成において大きな空間を得ることが可能である。これにより、エアコン装置のコントロールユニットの設計技術上の配置について有利であるとともに、車両内における測定について最適な箇所にセンサ装置を設けることができる。
【0012】
したがって、車両内において、車室内温度を測定するのに最適な箇所を設定することが可能である。例えば、コントロール上の理由から、日光の当たらない箇所にエアコン装置のコントロールユニットを設けることができる。ここで、センサ装置を直射日光が当たらない箇所に移動することができるという本発明の基本的な効果が得られる。
【0013】
また、本発明によれば、部品点数を削減してセンサ装置を機能させることが可能である。すなわち、従来技術によるセンサ装置においては、熱伝導性の良好な前面パネルを例えば車室内パネルやインストルメントパネルなどのインテリアとは無関係に設けている一方、本発明によれば、分離して独立した前面パネルを排除することで手間を大きく削減してセンサ装置を製造することができ、これに伴い製造コストの削減を図ることも可能である。
【0014】
さらに、本発明によれば、センサ装置が属するエアコン装置のコントロールユニットの部品の分配を容易化することが可能である。本発明によるセンサ装置は、設計技術上のハンデにとらわれず、エアコン装置のコントロールユニットの構成部材に応じて、配置についての可能性を広げる箇所に設けることができる。このような取付空間についての利点は、構成上も好ましいものであり、製造コストについての効果を際立たせるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車両におけるセンサ装置の断面図である。
【図2】本発明によるセンサ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1には特許文献2に基づく表面センサ1が示されており、この表面センサ1は、当該表面センサ1の一部である前面パネル2と、特に合成樹脂で形成されてケーシング背面部を構成する背面パネル3と、第1及び第2の温度センサ4,5と、これら第1及び第2の温度センサ4,5に接続されたフレキシブルケーブル6と、前面パネル2と背面パネル3の間をふさぐように設けられつつ第1の温度センサ4と第2の温度センサ5の間を断熱する断熱部材7とを備えて構成されている。
【0018】
また、表面センサ1は、エアコン装置のコントロールユニットのパネル8に対して面一又はほぼ面一に設けられているとともに、ガイド部材9によりパネル8内で支持されている。この表面センサ1の背面におけるエアコン装置のコントロールユニットの内部空間10には回路基板11が設けられており、この回路基板11上には第3の温度センサ12が固設されている。
【0019】
なお、上記説明した従来技術についての開示内容は、本発明についての開示内容を含むものである。
【0020】
従来技術を基礎として、本発明によるセンサ装置13は、車両の車室内パネル15の一部に相当する前面パネル14を備えている。車室内パネル15の一部としてのこの前面パネル14は同様に合成樹脂で形成されているが、この前面パネル14を、当該前面パネル14を介して良好な熱伝達がなされるよう例えば合成樹脂の薄膜で形成することが考えられる。
【0021】
また、図2に示す本発明によるセンサ装置13は第1の温度センサ16を備えており、この第1の温度センサ16は、前面パネル14の背面側に固設されている。さらに、背面パネル18の内側における前面パネル14と対向する面に第2の温度センサ17が設けられている。なお、センサ装置13の内部空間19には断熱部材を設けることが可能である。また、図示の例においては、センサ装置13が車室内パネル15に嵌合されている。
【0022】
しかして、センサ装置13の背面には回路基板20が設けられており、この回路基板上には、周囲環境センサとしての第3の温度センサ21が設けられている。ここで、この第3の温度センサ21は、回路基板20及び/又は周囲の部材からの熱輻射並びに回路基板20の加熱を検出するようになっている。この第3の温度センサによって検出された温度は、測定値として、内部温度(車室内温度)算出のためのエネルギーバランスモデルに供給される。なお、第1〜第3の温度センサ16,17,21は、特にNTCサーミスタとして形成されている。
【0023】
ところで、例えば日光、センサ装置13への指の接触などによる外乱が生じる場合には、エネルギーバランスとの比較及び適当な演算によって測定値の妥当性を確認し、また、必要な場合には、理論的に算出した温度を第1の温度測定値に対する基礎としてエアコン装置の制御に適用することが考えられる。この場合、エネルギーバランスモデルは、必要なすべてのセンサ測定値及び動作特性値を算出するものである。なお、動作特性値とは、制御装置及び車載ネットワークにおいて利用されるものであり、例えば外気温、ベンチレーション開口部での吹出し温度、エアディストリビューション、空気流量、太陽センサなどである。
【0024】
本発明の基本的な利点は、前面パネル14を車室内パネル15と一体に形成する場合に得られる。これによれば、車両のエアコン装置のコントロールユニット、車両の車室内パネルなどにセンサ装置13を適宜組み込むことが可能である。また、センサ表面(前面パネル14)は、周囲の構造物に対して断熱されている一方、車室内空間22に対しては良好に熱伝達がなされるように形成されている。このような形成は、合成樹脂の薄膜という形態でなされる。
【0025】
さらに、本発明によれば、第1の温度センサ16における少なくとも一部において、合成樹脂を熱伝導可能に形成することが考えられる。このような形成は、例えば部分的に熱を伝導するアルミニウム製又は銅製の粒子を前面パネル14の合成樹脂内に添加することでなされる。また、好ましい合成樹脂としては、ポリカーボネート(PC)及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられる。この場合、車両の車室内用の第1の温度センサ16における厚さは約0.6mmであり、前面パネル14の厚さは、0.2〜2mm、好ましくは0.4〜1.2mm、更に好ましくは0.6〜0.8mmである。
【符号の説明】
【0026】
1 表面センサ
2 前面パネル
3 背面パネル
4 第1の温度センサ
5 第2の温度センサ
6 フレキシブルケーブル
7 断熱部材
8 車室内パネル
9 ガイド部材
10 エアコン装置のコントロールユニットの内部空間
11 回路基板
12 第3の温度センサ
13 センサ装置
14 前面パネル
15 車室内パネル
16 第1の温度センサ
17 第2の温度センサ
18 背面パネル
19 センサ装置の内部空間
20 回路基板
21 第3の温度センサ
22 車室内空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面パネル(14)及び背面パネル(18)を備えつつ内部が断熱部材で充填されているケーシングと、
前記前面パネル(14)の背面側に固設された第1の温度センサ(16)と、
前記背面パネル(18)の内側における前記前面パネル(14)と対向する面に設けられた第2の温度センサ(17)と
を備えて成り、エアコン装置のコントロールユニットの少なくとも一部を構成する、原動機付き車両の車室内温度を検出するセンサ装置において、
前記前面パネル(14)を、原動機付き車両における車室内パネル(15)の一部として形成したことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記車室内パネル(15)を、前記エアコン装置のコントロールユニットの一部として形成したことを特徴とする請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記前面パネル(14)を、特にポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の熱可塑性樹脂で形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記ケーシングに対する熱輻射を検出できるよう、少なくとも1つの更なるセンサ(21)を前記背面パネル(18)に固設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記エアコン装置のコントロールユニットの内部の当該センサ装置の背面の少なくとも一部に回路基板(20)を固定し、該回路基板(20)上に更なるセンサ(21)を固設したことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
少なくとも前記第1の温度センサ(16)の近傍において、前記前面パネル(14)を形成する材料に熱伝導を補助する添加物を添加したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記車室内パネル(15)における当該センサ装置(13)の範囲に、前記エアコン装置のコントロールユニットに対応する表面部を設けたことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−538887(P2010−538887A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524402(P2010−524402)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007505
【国際公開番号】WO2009/033698
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(504162556)プレー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (24)
【Fターム(参考)】