説明

原子価異性化に基づく時間−温度指示薬

本発明は、第1の異性形態の指示薬化合物を少なくとも1種含む時間−温度指示薬であって、時間および温度依存的手法で、前記指示薬化合物に結合した原子または化学基が移動しない原子価異性化反応において第1の異性形態の指示薬化合物を第2の形態の前記指示薬化合物に変換し、ここで指示薬の物理的特性をモニタリングすることにより、第2の異性形態の形成を検出することができる時間−温度指示薬に関する。本発明は、(a)マトリックス中、またはマトリックスの上部に前記指示薬化合物を埋め込むステップ;および(b)前記埋め込まれた指示薬化合物の準安定状態の形成を誘起するステップを含む、時間−温度指示薬の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の異性形態の指示薬化合物を少なくとも1種含み、温度の経時変化を示す時間−温度指示薬であって、時間および温度依存的手法で、前記指示薬化合物に結合した原子または化学基が移動しない原子価異性化反応において第1の異性形態の指示薬化合物を第2の形態の前記指示薬化合物に変換し、ここで指示薬の物理的特性をモニタリングすることにより、第2の異性形態の形成を検出することができる時間−温度指示薬に関する。本発明は、(a)マトリックス中、またはマトリックスの上部に前記指示薬化合物を埋め込むステップ;および(b)前記埋め込まれた指示薬化合物の準安定状態の形成を誘起するステップ、を含む、そのような時間−温度指示薬の製造方法にも関する。
【0002】
時間−温度指示薬、TTIは、腐敗し易い物品を包装する、またはそれに付着させる基材であり、熱で結合して物品の部分的または全体的な時間−温度履歴を報告することができる。
【0003】
温度による劣化は、時間を経た物品を損傷させる最も多く見られる原因の一つである。それゆえ、そのような腐敗し易い物品の時間−温度履歴を、好ましくは安価で消費者に分かりやすい手法を利用してモニタリングすることが重要で、かつ望ましい。時間−温度指示薬は、物質(つまり、関連する腐敗し易い物品)の時間−温度履歴の概要について視覚的に報告し得る物質である。時間−温度指示薬は、最終使用者に向けて設計されるため、通常、明確で視覚的な「はい/いいえ」の記号を報告するように設計される。
【0004】
US-B-3,999,946には、腐敗し易い生成物に時間/温度履歴を示す指示薬を備えることが提案されている。生成物の保存期間および保存温度に従って、本来無色のアセチレンを基剤とする指示薬が、特徴的で不可逆的な色変化を示すことで、保存した腐敗し易い物品の品質を推察できる。
【0005】
US-B-5,053,339(WO92/09870)には、指示薬を含む層と、指示薬に不透過性で活性化物質に透過性の遮断層と、活性化物質を含む層とからなる時間−温度指示薬(TTI)が記載されている。温度に応じて、活性化物質は遮断層を通り指示薬層に拡散して、そこで色の変化をもたらす。
【0006】
WO99/39197には、TTIのための活性化材料として結晶状態で埋め込まれたフォトクロミック着色剤の移動反応に基づく使用が記載されている。これらの材料に基づくTTIは、正確度および再現性が高く、刺激光を用いて荷電することができる。着色された光製品が時間−温度プロファイルに望ましくない光効果を誘導するのに十分光活性があるという事実から、ほとんどのフォトクロミック材料には幾つかの基本的制約が生じる。多くの場合、軽度の周囲光でさえも、着色物質の光退色が起こる。WO99/39197によれば、この問題は、活性物質の上部に特殊なフィルタを置き、こうしてUVおよび可視スペクトルのほとんどをろ過することにより克服することができる。先行技術の文献WO99/39197では、フォトクロミック指示薬は、移動反応に基づいているが、それは、原子の連結度の変化を含み、少なくとも1個の原子の再配列が、例えば水素原子(またはプロトンまたは水素化物)の移動を必要とする反応であると理解される。
【0007】
先行技術から出発して、紛らわしい様々な使用可能な指示薬が存在するが、更なる改善を可能にする示唆はない。WO99/39197には、移動反応を受けることができるフォトクロミック性を備えた指示薬を使用し得ることだけが教示されている。他の因子のうち、WO99/39197に開示された時間−温度指示薬系の着色および脱色の反復周期による光および疲労耐性は、依然ますます増加する要望の全てを満足する程に満たすことができない。
【0008】
こうして、製造コストについては安価で、明確な視覚情報が得られ信頼性のある電子的読み取りを可能にする市販のTTIについて要求がある。同じくTTIから引き出される情報は、正確度および再現性が高くなければならず、特に前記情報は、時間−温度履歴に完全に比例していなければならない。最後に、そのようなTTIは、商業的に利用される基材、例えば食品用の包装材料に印刷可能であるべきであり、更に、活性化前の室温での保存に十分安定であるべきである。それゆえ、本発明の根底にある問題は、既存の先行技術の時間−温度指示薬の欠点を克服し、商業的に興味深いTTIの前述の有利な特徴を有する時間−温度指示薬系を提供することである。
【0009】
驚くべきことに、本発明は、指示薬化合物の純粋な原子価異性化反応に基づく新規な時間−温度指示薬(TTI)系を提供することで、根底にある問題を解決して、従来技術の欠点を回避する。そのようなTTIの活性材料である指示薬化合物のこの原子価異性化反応は、指示薬化合物に結合した原子または基を移動させずに、この化合物の第1の異性形態を第2の異性形態に変換することを含む。好ましくは、TTIの活性材料は、両方向の原子価異性化を受けることができ、即ち、第1の異性形態から第2の異性形態に、そしてその逆にも変換することができる。これらの特異的な指示薬化合物を、本明細書では以後、可逆性指示薬化合物と呼ぶ。
【0010】
それゆえ、本発明の第1の実施形態は、第1の異性形態の指示薬化合物を少なくとも1種含み、温度の経時変化を示す時間−温度指示薬であって、時間および温度依存的手法で、前記指示薬化合物に結合した原子または化学基が移動しない原子価異性化反応において第1の異性形態の指示薬化合物を第2の形態の前記指示薬化合物に変換し、ここで指示薬の物理的特性をモニタリングすることにより、第2の異性形態の形成を検出することができる時間−温度指示薬に関する。前記指示薬化合物の第1の異性形態を第2の異性形態と区別させる検出可能なシグナルを生じ、そのシグナルが第1の異性形態または第2の異性形態の濃度に対応することにより、検出可能なシグナルが反応の進行時に光を発することを前提とすれば、その物理的特性は、指示薬の第1の異性形態または第2の異性形態の本来の性質ということになる。好ましくは、該指示薬化合物は、結晶形態である。
【0011】
本発明の時間−温度指示薬は、原子価異性化反応に基づき、指示薬化合物の第1の異性形態を第2の異性形態に変換する部分で、分子内閉環ステップまたは開環ステップを含むことも好ましい。
【0012】
指示薬化合物の第2の異性形態の形成が色の変化に関連し、第1または第2の異性体の指示薬形態の色をモニタリングすることにより、原子価異性化の進行を検出し得ることも好ましい。例えば、第1に異性形態が着色されていて、第2の異性形態が淡色または無色の反応生成物である。代わりに第1の異性形態が着色されていて、第2の異性形態が淡色または無色である。しかし、濃度に関連する両方の異性形態の物理的特性は、可視スペクトルの色に限定されず、IRまたはUV範囲の波長での吸収および/または発光も含む。
【0013】
用語「原子価異性化」は、σ結合および/またはπ結合が開裂および/または新たに形成され、原子間距離および結合角の値が変化して、開環、環縮小および環拡大ステップ、または他の環反応が起こる反応であると理解すべきである。しかしこれらの反応は、そのような異性化工程を受ける化合物に結合した原子または化学基の移動を含まない。原子価異性化は、熱または光化学エネルギーにより誘起され、一般に可逆的な工程である。代表的な原子価異性化は、単結合および二重結合の変換、またはシグマトロピー反応を含む電子環状反応を含み、単結合および二重結合の数を変化させないままにすることを特徴とする。原子価異性化反応は、Woodward-Hoffmann則に従い、同期的に進行する多中心反応として分類することができ、ペリ環状反応とも呼ばれる。
【0014】
好ましくは、本発明のTTIは、可逆的フォトクロミック指示薬化合物に依存する。フォトクロミック性があるため、該指示薬化合物は特異的なエネルギー範囲の光子を照射することにより、光誘起着色を受けることができ(第2の異性形態が第1の異性形態に変換)、その着色は、その後、時間−および温度−依存性の脱色を受ける(第1の異性形態が第2の異性形態に変換)。規定の時点、好ましくは、例えば基材(特に腐敗し易い材料の包装)に印刷した直後に、指示薬化合物の着色が行なわれることができる。TTIの活性材料であるフォトクロミック指示薬化合物は結晶形態である場合が好ましい。
【0015】
例えば、最初に無色の指示薬化合物にUV光または近UV光を照射すると、指示薬化合物内での原子価異性化(第2の異性形態を第1の異性形態に変換)、および関連の指示薬化合物の着色が起こる。その後、そのような光誘起原子価異性化は、時間および温度の関数として再度、別の方向に進行するため、指示薬は、逐次脱色される。先に記載されたTTI系、例えば移動反応に基づくWO99/39197に開示されたものと比較すると、指示薬化合物の第2の異性形態を第1の異性形態に変換するのに必要となる活性化エネルギーは、一般にそれよりもかなり高い。例えば、光子移動反応での単一プロトンの移動は、原子価異性化による複雑な有機化合物の炭素主鎖の構造再配列よりもエネルギー消費が少ない。特に、開環および/または閉環ステップを含む原子価異性化反応は、大きな配座変化に関連し、活性化エネルギーの増加により反映される。より高い活性化エネルギーに基づけば、既存のTTI系で可能なものよりも広範囲の時間−温度指示に及ぶことができるTTIの設計がここに可能になる。本明細書の以降に述べる指示薬化合物は全て、結晶形態で存在する場合にはフォトクロミックである。その上、本明細書の以降に記載されるフォトクロミク指示薬化合物は、多数の潜在的誘導体化部位を特徴とする。小さな置換基を導入した場合でも、結晶内の分子パッキングに対して強い影響を与えるため、広範囲の異なる活性化エネルギーが、得られたTTI誘導体を特徴づけることになる。これにより、前記指示薬化合物の置換様式を簡単に変化させることにより、単一の親指示薬化合物から出発してTTI族全体を作り出すための選択肢を供する。
【0016】
従って、所定の望ましい時点で時間−温度時計を開始することができ、指示薬合成の時に不可逆的に進行を始めることがない。本発明により考慮すれば脱色が好ましいが、着色工程で時間−温度時計の基礎を形成する指示薬の使用も容認できる。
【0017】
印刷および活性化の後、必要に応じて、時間−インテグレーターに、可逆性指示薬の再度の光誘起着色を防ぐ保護物質を設置する。そのような保護物質は、所定の波長範囲をフィルタで除外することにより時間−温度時計が開始した後の指示薬の望ましくない再着色を防ぐ意図のフィルタを含む保護コーティング(オーバープリントワニス)または保護ラミネートであってもよい。
【0018】
加えて、耐タンパー化の目的で、更なる不可逆性指示薬を、例えば可逆性指示薬のそばに、またはその上に配置されることが可能である。更なる指示薬は、不可逆性の色変化により、腐敗し易い物品の製造または包装の後に可逆性指示薬が再度着色を受けたことを示す。
【0019】
一つよりも多い特徴的時間ドメインを有する指示薬を使用することも可能である。そのような指示薬は、例えば相転移を有することができ、そこでは異なる相は異なる脱色挙動を示す。異なる時間ドメインを有する指示薬2種以上を一時的に使用するのも、同様に可能である。他の指示薬、例えば所定の限界を超える温度で腐敗し易い製品の保存を示すものを含むことも可能である。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明は、ジアリールエテン、好ましくは式Iで示されるジアリールエテン(以下参照)、およびスピロ芳香族化合物、好ましくは式IIで示されるスピロ芳香族化合物(以下参照)から選択される化合物を少なくとも1種含む活性材料を含む時間−温度指示薬に関する。好ましくは、前記活性化材料は、結晶形態である。
【0021】
ジアリールエテンおよびスピロ芳香族化合物は、時間および/または温度変化、ならびに光の変化に応じて色の変化を示す、可逆性で双安定性のフォトクロミック材料である。
【0022】
ジアリールエテンは、開環異性形態および環式異性形態で存在し、それらは原子価異性化により互いに変換することができる。開環形態が透明で、環式形態が着色していて、開環形態が熱力学的に安定した種であり、閉環形態が安定または準安定のいずれかの状態であるジアリールエテンが好ましい。ジアリールエテン、即ちスチレンの閉環/開環の可逆的工程の具体的な一例を以下に示す。
【0023】
【化8】

【0024】
これらの化合物の最も顕著な特徴は、耐疲労性である。着色−脱色周期を104回を超える回数繰り返しても、フォトクロミック性能を保持することができる。
【0025】
本発明に従うスピロ芳香族化合物では、2種の異性形態(開環および環式異性形態)が存在し、それらは原子価異性化により互いに変換することができる。閉環形態が熱力学的に安定した状態のスピロ芳香族誘導体が好ましい。
【0026】
【化9】

【0027】
活性化エネルギーが適切である場合には、材料の時間−温度履歴のモニタリングにおいてジアリールエテンの閉環形態の開環とスピロ芳香族材料の閉環とを、これらの工程に関連する色変化の代わりに利用することができる。
【0028】
全てのジアリールエテンおよびスピロ芳香族誘導体のうち、以下の特性を示す材料が、TTI適用に特に適している:
(1)系が熱工程を少なくとも1種有しており、それが一つの準安定状態から一つの安定状態に導き、その2つの状態は明白に異なる色および/または任意の他の測定可能な物理的パラメータ(ルミネセンス、屈折率、伝導率など)を特徴とする。
(2)安定状態を、刺激、とりわけ以下のプロセス:a)光子誘起、b)熱誘起、c)圧力誘起、d)電気誘起、またはe)化学誘起の内の一種またはそれらの任意の組合せ、を利用して、準安定状態に変換してもよい。
(3)温度以外では、準安定状態は、a)光誘起、b)圧力誘起、c)電子誘起、d)化学誘起のような刺激因子のいずれか一つ、またはそれらの任意の組合せに実質的に影響されない。
【0029】
本発明の活性材料は、結晶または多結晶粉末の形態であってもよく、その場合、前方向または逆方向反応が起こるか、あるいは代わりにガラスのような他の固相、ポリマー溶液の形態、ポリマーに結合した形態、または液体もしくは溶液の形態であってもよい。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、時間−温度指示薬中での使用に適した活性材料は、本明細書の以前に開示した要件を満足し、かつ一般式(I):
【0031】
【化10】

【0032】
(式中、
1およびR2は、それぞれ独立して、C6〜C14アリール、C4〜C12ヘテロアリール、共役複素環式化合物を表し;ここで、前記へテロアリールおよび共役複素環式化合物は、N、OまたはSから選択されるへテロ原子を1〜3個含んでいてもよく;前記アリール、ヘテロアリールまたは共役複素環式化合物は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、シアノ、ニトロ、スルホ、−CH=CH−CN、アジド、またはアミド1個以上により置換されていてもよく;
1’およびR2’は、それぞれ独立して、H、シアノ、ニトロ、スルホ、ヒドロキシル、チオール、−CH=CH−CNもしくはアミド;または置換もしくは非置換のC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物を表すか;あるいはR1’およびR2’は、結合する炭素原子と一緒になって、N、OまたはSから選択される環内または環外へテロ原子を1〜3個含むC5〜C8炭素環式化合物またはC4〜C7複素環式化合物を形成し;前記Nへテロ原子は、Hにより、またはC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、ヒドロキシルもしくは−CH=CH−CNから選択される置換もしくは非置換の基1もしくは2個により更に置換されていてもよく;前記Nへテロ原子が四置換されている場合、それは正荷電されかつ有機または無機陰イオンからなる群から選択される陰イオンと会合しており、前記C5〜C8炭素環式化合物は、ハロゲン1個以上、好ましくはフルオロ原子1個以上により置換されていてもよく;
1、R1’、R2およびR2’は、各々、荷電基または電荷を有する別の基により置換された基を表してよく;前記電荷は、局在化または非局在化していてもよく、正または負であってもよく、荷電基、例えば、アンモニウム、ホスホニウム、フェノラート、カルボキシラート、スルホナート、チオラート、セレナートなどから生じてもよく;
前記R1およびR2は、シスまたはトランス配座であってもよい)
を有するジアリールエテン主鎖を有する化合物を1種以上含む。
【0033】
一つの実施形態において、式(I)で示される化合物は、双性イオン性であり、ここでは基:R、R’、R2またはR2’の内の一つが、正荷電されてもよく、他の一つの基が負荷電されてもよい。
【0034】
一つの具体的な実施形態において、式(I)で示される化合物は、R1およびR2が、それぞれ独立して、N、OまたはSから選択されるへテロ原子を1〜3個含む置換されたヘテロアリールであり;ここで、前記ヘテロアリールは、ハロゲン、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、シアノ、ニトロ、スルホ、−CH=CH−CN、アジド、アミドまたはアミノ1個以上により置換されており;R1’およびR2’は、それぞれ独立して、H、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、シアノ、ニトロもしくは−CH=CH−CNを表すか;またはR1’およびR2’は結合する炭素原子と一緒になって、NもしくはSから選択される環内もしくは環外へテロ原子を1〜3個含むC5〜C8炭素環式環もしくはC4〜C7複素環式環を形成し;前記Nへテロ原子は、Hにより、または置換もしくは非置換のC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、もしくは−CH=CH−CNにより更に置換されており;ここで、前記C5〜C8炭素環式化合物は、ハロゲン1個以上、好ましくはフルオロ原子1個以上により置換されているものである。
【0035】
別の具体的な実施形態において、R1およびR2は同一であり、置換または非置換のインドール、ピロール、チオフェン、ベンゾチオフェンまたはフランから選択される。この実施形態において、R1’およびR2’も同一であり、シアノ、C1〜C6アルキル、またはC6〜C14アリールから選択される。
【0036】
更に別の実施形態において、R1およびR2は、置換または非置換のチオフェン、ベンゾチオフェン、インドールまたはピロールから選択され;R’およびR2’は、結合する炭素原子と一緒になって、シクロペンチル、シクロヘキシルまたは無水物環を形成し;前記シクロペンチルまたはシクロヘキシルは、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C6〜C14アリール、ヒドロキシル、アミノ、ニトロまたはシアノ基1個以上により更に置換されている。好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシルは、ハロゲンにより置換されている。最も好ましくはそれらは、過フッ素化されている。
【0037】
式Iで示される適切なジアリールエテンは、対称および非対称の両方のジアリールエテン化合物を含む。
【0038】
本発明のTTIとの使用に適し、一般式(I)に包含される対称のジアリールエテンの例は、
【0039】
【化11】


1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチルチオフェン−3−イル)エタン(1)
【0040】
【化12】


2,3−ビス(2,4,5−トリメチルチオフェン−3−イル)無水マレイン酸(2)
【0041】
【化13】


1,2−ビス(2−シアノ−1,5−ジメチル−4−ピロリル)ペルフルオロシクロペンテン(3)
【0042】
【化14】


1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−フェニルチオフェン−3−イル)ペルフルオロシクロペンテン(4)
【0043】
である。
【0044】
TTIに適し、一般式(I)に包含される非対称のジアリールエテンの例は、
【0045】
【化15】


2−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−3−(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)無水マレイン酸(5)
【0046】
【化16】


2−(メトキシベンゾ〔b〕チオフェン−3−イル)−3−(1,2−ジメチル−3−インドリル)無水マレイン酸(6)
【0047】
である。
【0048】
本発明の具体的な実施形態において、式(I)で示される化合物は、1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチルチオフェン−3−イル)エタン(1);2,3−ビス(2,4,5−トリメチルチオフェン−3−イル)マレイン酸無水物(2);1,2−ビス(2−シアノ−1,5−ジメチル−4−ピロリル)ペルフルオロシクロペンテン(3);および1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−フェニルチオフェン−3−イル)ペルフルオロシクロペンテン(4)のような対称のジアリールエテンである。
【0049】
別の具体的な実施形態において、式(I)で示される化合物は、2−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−3−(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイン酸無水物(5);および2−(メトキシベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3−(1,2−ジメチル−3−インドリル)マレイン酸無水物(6)のような非対称のジアリールエテンである。
【0050】
既に記載したとおりに、スピロ芳香族化合物も、本発明に従うTTI系中の指示薬化合物として適している。スピロ芳香族化合物は、構造的に、単一の炭素原子を通して結合する2種の炭素環式化合物からなり、その炭素原子から延長した4つの結合が別の炭素またはヘテロ原子に結合している。スピロ炭素中心から延びる4つの結合のうち、少なくとも1個は、ヘテロ原子に延びているため、制御可能な条件下での結合の切断および開環を可能にする。
【0051】
スピロピランは、スピロ芳香族化合物の1種であり、特に好ましい。スピロピランは、共通のスピロ炭素中心を経て別の複素環式環に結合するピラン環からなる。無色のスピロピランにUV光を照射すると、C−O結合が異方性分解を起こして、開環した着色種(多くの場合「メロシアニン」型と呼ばれる)を形成し、シス−(1,2)もしくはトランス−(1,3)型、またはオルトキノイダル型をとることができる。ピラン環は、通常、置換されたベンゾまたはナフトピランであるが、スピロ炭素中心を横切る位置にある複素環成分は、多数の環系、例えば非限定的に、インドール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾセレナゾール、キノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾピラン、ナフトピラン、キサンタン、ピロリジンおよびチアゾリジンなどから選択することができ、これらに限定しない。
【0052】
アリールエテンと同様に、本発明に用いられる活性材料は、一般式(II):
【0053】
【化17】

【0054】
(式中、
環Aは、N、OまたはSから選択されるへテロ原子を少なくとも1個含むC5〜C8炭素環式化合物またはC4〜C7複素環式化合物を表し;前記Nへテロ原子は、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、ヒドロキシルまたは−CH=CH−CNから選択される基1または2個により更に置換されていてもよく;ここで、前記Nへテロ原子が四置換されている場合、それは正荷電されかつ有機または無機陰イオンからなる群から選択される陰イオンと会合しており、
前記C5〜C8炭素環式化合物またはC4〜C7複素環式化合物は、ハロゲン、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、シアノ、ニトロ、スルホ、ヒドロキシル、チオール、−CH=CH−CN、アジド、アミドまたはアミノから選択される基1個以上により置換されていてもよく;
環Bは、ヘテロ原子Xを少なくとも1個含む置換または非置換の複素環式化合物を表し、前記Xは、N、OおよびSから選択され;ここで、前記N原子は、C1〜C12、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、ヒドロキシルまたは−CH=CH−CNから選択される基1または2個により更に置換されていてもよく;前記Nへテロ原子が四置換されている場合、それは正荷電されかつ有機または無機陰イオンからなる群から選択される陰イオンと会合しており;
前記環Bは、環内二重結合を1個以上含んでいてもよく、ハロゲン1個以上、好ましくはフルオロ原子1個以上により場合により置換されており;
前記環AおよびBは、置換または非置換の炭素環式化合物、C4〜C14複素環式化合物、C6〜C14アリールまたはC4〜C14ヘテロアリール環系1個以上に縮合していてもよい)で示されるスピロ芳香族材料のいずれか1種であってもよく、
式(II)で示される化合物は、中性、電荷、多電荷、外部陰イオンを有する正電荷、外部陽イオンを有する負電荷、または双性イオン性であってもよい。
【0055】
好ましくは、式(II)で示されるスピロ芳香族化合物は、環AおよびBが、それぞれN、OまたはSから選択されるへテロ原子を少なくとも1個含むC4〜C7複素環式化合物を表し;ここで、前記Nへテロ原子は、C〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物または−CH=CH−CNにより更に置換されていてもよく;
前記C4〜C7複素環式化合物は、ハロゲン、C〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、シアノ、ニトロ、スルホ、ヒドロキシル、−CH=CH−CN、アジド、アミドまたはアミノから選択される基1個以上により置換されており;
前記環AおよびBは、環内二重結合を1個以上含んでいてもよく、置換または非置換の炭素環式化合物、C4〜C14複素環式化合物、C6〜C14アリールまたはC4〜C14ヘテロアリール環系1個以上に縮合していてもよいものである。
【0056】
より好ましい実施形態では、式(II)で示されるスピロ芳香族化合物は、スピロピラン誘導体、好ましくは式(III):
【0057】
【化18】

【0058】
(式中、
3は、H、ハロゲン、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、またはアジドからなる群から選択され;ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび非芳香族炭素環式化合物は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、ニトロ、アジド、またはスルホから選択される基1個以上により置換されていてよく;
4は、H、ハロゲン、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、ヒドロキシルまたは−CH=CH−CNからなる群から選択され;
Yは、C1〜C25アルキル、好ましくはメチル、n−プロピルおよびn−オクタデシル)、およびC7〜C15アラルキルからなる群から選択され、ここで、前記アルキルおよびアラルキルは、ハロゲンから選択される基好ましくはフッ素1個以上により置換されていてもよい)で示される通りの1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)である。
【0059】
更に別の好ましい実施形態では、式(II)で示されるスピロ芳香族化合物は、式(IV):
【0060】
【化19】

【0061】
(式中、
AおよびLは、互いに独立して、H、ハロゲン、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニルおよび
【0062】
【化20】

【0063】
(式中、Rは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールおよびC7〜C15アラルキルである)からなる群から選択され;ここで、前記アルケニル、アルキニルおよび
【0064】
【化21】

【0065】
は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、ニトロ、アジド、スルホ、アリールおよびヘテロアリールから選択される基1個以上により置換されていてもよく;
Yは、C〜C25アルキル、好ましくは、メチル、n−プロピルおよびn−オクタデシル、およびC7〜C15アラルキルからなる群から選択され、ここで、前記アルキルおよびアラルキルは、ハロゲンから選択される基、好ましくはフッ素1個以上により置換されていてもよく;
Xは、C1〜C6アルコキシまたはLである)で示される1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)の誘導体である。
【0066】
より好ましい実施形態では、式(II)で示されるスピロ芳香族化合物は、式(IV)において、
Lが、水素;ハロゲン、好ましくはCl、BrもしくはI;CH3−(CH=CH)n−CH=CH2(式中、nは、1〜10の整数である);または−C≡C−アリール、好ましくは−C≡C−フェニルであり;
Yが、C〜C25アルキルまたは
【0067】
【化22】

【0068】
であり、
Xが、水素、メトキシまたはハロゲンであり;
Aが、水素である1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)の誘導体である。
【0069】
LがI、BrまたはClである場合が好ましく、LがIまたはBrである場合がより好ましくは、LがIである場合が最も好ましい。
【0070】
Yが
【0071】
【化23】

【0072】
で示される場合も好ましい。
【0073】
本発明によるTTI中で用いられる好ましいスピロ芳香族化合物の具体的な例としては、
【0074】
【化24】


1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)(7)
【0075】
【化25】


1’,3’,3’−トリメチル−6,8−ジニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)(8)
【0076】
【化26】


6−(4−ニトロフェニルアゾ)−1’,3’,3’−トリメチル−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)(9)
【0077】
【化27】


6−(4−クロロフェニルアゾ)−1’,3’,3’−トリメチル−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)(10)
【0078】
【化28】


1’−プロピル−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)(11)
【0079】
【化29】


1’,3’,3’,8−テトラメチル−5−ヒドロキシメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピリジン−2,2’−2H−インドール)(12)
【0080】
【化30】


1’,3’,3’,8−テトラメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕−2,2’−2H−インドール)(13)
【0081】
が挙げられる。
【0082】
本発明に従うTTI中で用いられる好ましいスピロ芳香族化合物の更に具体的な例としては、化合物(19)〜(36)が挙げられる:
【0083】
【表1】

【0084】
スピロ芳香族化合物(22)、(32)および(34)は、本発明のTTI中での使用に最も好ましい。
【0085】
式(II)で示されるスピロ芳香族化合物が1’,3’,3’,8−テトラメチル−5−ヒドロキシメチルスピロ(2H−ピラノ[2,3−c]ピリジン−2,2’−2H−インドール)および1’,3’,3’,8−テトラメチル−スピロ(2H−ピラノ[2,3−c]ピリジン−2,2’−2H−インドール)から選択される時間−温度指示薬が、特に好ましい。
【0086】
本発明の時間−温度指示薬の別の好ましい実施形態では、式(II)で示される化合物は、下記:1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール);1’,3’,3’−トリメチル−6,8−ジニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール);6−(4−ニトロフェニルアゾ)−1’,3’,3’−トリメチル−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール);1’−プロピル−3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール);および6−(4−クロロフェニルアゾ)−1’,3’,3’−トリメチル−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)の少なくとも1種が挙げられる。
【0087】
本発明の更に別の実施形態では、式(II)で示される化合物は、1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール);1’,3’,3’−トリメチル−6,8−ジニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール);6−(4−ニトロフェニルアゾ)−1’,3’,3’−トリメチル−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール);および6−(4−クロロフェニルアゾ)−1’,3’,3’−トリメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)のようなスピロピラン誘導体である。
【0088】
別の具体的な実施形態では、本発明のTTIにおいて用いられるスピロ芳香族化合物は、荷電したスピロピランである。荷電したスピロピランは、正に荷電され、負に荷電され、双性イオン性、または多荷電されることができる。好ましくは、これらの化合物は、正に荷電され、非限定的にヨウジド、クロリド、フルオリド、ブロミド、カーボネート、PF6-、BF4-、(フェニル)4-、ベンゾエートヒドロキシドなどの有機または無機対イオンである負荷電対イオンと会合している。
【0089】
本発明に従うTTI中で用いられる正荷電されたスピロピラン化合物の具体的な例としては、
【0090】
【化31】


1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−5−ヒドロキシメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピリジニウム−2,2’−2H−インドール)ヨージド(14)
1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−5−ヒドロキシメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピリジニウム−2,2’−2H−インドール)クロリド(14a)
1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−5−ヒドロキシメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピリジニウム−2,2’−2H−インドール)ヒドロキシド(14b)
1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−5−ヒドロキシメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピリジニウム−2,2’−2H−インドール)ベンゾエート(14c)
1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−5−ヒドロキシメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピリジニウム−2,2’−2H−インドール)ヘキサフルオロホスフェート(14d)
【0091】
【化32】


1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピラジニウム−2,2’−2H−インドール)ヨージド(15)
1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピラジニウム−2,2’−2H−インドール)クロリド(15a)
1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピラジニウム−2,2’−2H−インドール)ベンゾエート(15b)
1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピラジニウム−2,2’−2H−インドール)ヘキサフルオロホスフェート(15c)
1’,3’,3’,7,8−ペンタメチル−スピロ(2H−ピラノ〔2,3−C〕ピラジニウム−2,2’−2H−インドール)ヒドロキシド(15d)
【0092】
が挙げられる。
【0093】
更に別の実施形態において、式(II)で示される化合物は荷電している。
【0094】
別の具体的な実施形態において、スピロ芳香族化合物は、スピロオキサジン(16)またはその誘導体、スピロナフトオキサジン(17)またはその誘導体、およびスピロインドリノピリドベンゾオキサジン(18)またはその誘導体である:
【0095】
【化33】

【0096】
それらのスピロ芳香族化合物の好ましい誘導体としては、スピロオキサジン誘導体(16a)、スピロナフトオキサジン誘導体(17a)、およびスピロインドリノピリドベンゾオキサジン誘導体(18a):
【0097】
【化34】

【0098】
[式中、
AおよびLは、互いに独立して、H、ハロゲン、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニルおよび
【0099】
【化35】

【0100】
(式中、Rは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールおよびC7〜C15アラルキルである)からなる群から選択され、ここで前記アルケニル、アルキニルおよび
【0101】
【化36】

【0102】
は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、ニトロ、アジド、スルホ、アリールおよびヘテロアリールから選択される基1個以上により置換されていてもよく;
Yは、C〜C25アルキル、好ましくはメチル、n−プロピル、およびn−オクタデシル、およびC7〜C15アラルキルからなる群から選択され、ここで、前記アルキルおよびアラルキルは、ハロゲンから選択される基、好ましくはフッ素1個以上により置換されていてもよく;
Xは、C1〜C6アルコキシまたはLである]が挙げられる。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、式(IV):
【0104】
【化37】

【0105】
[式中、
AおよびLは、互いに独立して、H、ハロゲン、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニルおよび
【0106】
【化38】

【0107】
(式中、Rは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールおよびC7〜C15アラルキルである)からなる群から選択され、ここで前記アルケニル、アルキニルおよび
【0108】
【化39】

【0109】
は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、ニトロ、アジド、スルホ、アリールおよびヘテロアリールから選択される基1個以上により置換されていてもよく;
Yは、C〜C25アルキルおよびC7〜C15アラルキルからなる群から選択され、ここで、前記アルキルおよびアラルキルは、ハロゲンから選択される基、好ましくはフッ素1個以上により置換されていてもよく;
Xは、C1〜C6アルコキシまたはLであり;
但し、L、AおよびXが水素である場合には、Yはn−プロピルでない]で示される1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)の誘導体からなるスピロ芳香族化合物の新規な分類にも関する。
【0110】
より好ましいのは、式(IV)において、
Lが、水素;ハロゲン、好ましくは、Cl、BrもしくはI;CH3−(CH=CH)n−CH=CH2(式中、nは、1〜10の整数である);または−C≡C−アリール、好ましくは−C≡C−フェニルであり;
Yが、C1〜C25アルキルまたは
【0111】
【化40】

【0112】
であり、
Xが、水素、メトキシまたはハロゲンであり;
Aが、水素であり;
但し、L、AおよびXが水素である場合には、Yはn−プロピルでない、1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)の誘導体である。
【0113】
LがI、BrまたはClである場合が好ましく、LがIまたはBrである場合がより好ましく、LがIである場合が最も好ましい。
【0114】
Yが
【0115】
【化41】

【0116】
である場合も好ましい。
【0117】
式(IV)で示される1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)の誘導体の好ましい例としては、化合物(19)〜(36):
【0118】
【表2】

【0119】
が挙げられる。
【0120】
スピロ芳香族化合物(22)、(32)および(34)が、特に好ましい。
【0121】
本明細書において用いられる用語「置換された」は、既存のC−H結合のいずれか1個以上が、C−W結合(式中、W原子は、示した置換基の内の1種以上、またはそれらの組み合わせであってもよい)によって置換された基を指す。例えば、表現「前記・・・アリール・・・は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、ニトロ、アジドまたはスルホから選択される基1個以上により置換されていてもよい」は、アリール基が、可能な限り、示した基により置換された結果、非限定的に、4−クロロフェニル、3−ビフェニル、1−アミノプロパン−2−オール−フェニル、2−メチルスルホニル−3−ニトロメトキシフェニルなどの置換されたアリール基に成っていることを指す。
【0122】
本明細書において用いられる用語「誘導体」は、別の化合物と構造が類似した化合物であって、Hをアルキル、アシル、アミノ、または他の基で置換するなど1個以上のステップで前記別の化合物から製造してもよい化合物を指す。対応する中性化合物の荷電系も誘導体として含まれる。例えば、本発明の範囲内では、化合物14は、化合物12の誘導体と考える。
【0123】
用語「環内二重結合」は、C=C、C=Yおよび/またはY=Y環内二重結合(式中、Cは、炭素原子であり、Yは、例えば非限定的に、N、OまたはSのようなヘテロ原子である)を1個以上含む環状基を指す。Yが二価ヘテロ原子、例えばOまたはSである場合、その系は荷電していてもよい。C=CおよびC=Y環内二重結合の例は、非限定的に、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、ベンゾピレニル、インドリル、2H−ベンゾ[e][1,3]オキサジニル、インダゾリルなどである。用語「環外二重結合」は、C=C、C=Yおよび/またはY=Y環外二重結合(式中、Yは、以前に定義したとおりである)を1個以上含む環状基を指す。環外二重結合を含む環状基についての例は、非限定的に、ジヒドロフリルジオン、フリル−2,5−ジオン、シクロペンタ−1−イル−3−オン、3,3,4,4−テトラフルオロ−5−メチレンシクロペンテン−1−イルなどである。
【0124】
用語「アルキル」は、典型的には、直鎖状または分枝状アルキル基を指し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシルなどが挙げられる。好ましいアルキル基は、メチル、エチルおよびプロピルである。用語「アルケニル」は、典型的には炭素原子2〜6個を有し、好ましくは末端二重結合を1個有する直鎖状または分枝状炭化水素を指し、例えば、ビニル、プロパ−2−エン−1−イル、ブタ−3−エン−1−イル、ペンタ−4−エン−1−イルなどが挙げられる。用語「アルコキシ」、「アルキルチオ」および「アルカノイル」は、それぞれ基:アルキル−O−、アルキル−S−およびアルキル−CO−(式中、「アルキル」は、以前に定義したとおりである)を指す。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、ヘキソキシなどである。アルキルチオの例は、メチルチオ、プロピルチオ、ペンチルチオなどであり、アルカノイルの例は、アセチル、プロパノイル、ブタノイルなどである。
【0125】
本明細書において用いる通りの用語「アリール」は、単環式化合物または多環式化合物からなり炭素原子を6〜14個有する芳香族炭素環基、例えばフェニル、ネフチル、フェナントリルなどを指す。用語「ヘテロアリール」は、N、S、および/またはOから選択されるヘテロ原子を1〜3個含む単環式、二環式または三環式へテロ芳香族基、例えば非限定的に、ピリジル、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、キノリニル、チアゾリル、ピラゾリル、キナゾリニル、1,3,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、インドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリルおよびベンゾオキサゾリルを指す。
【0126】
用語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。用語「ペルフルオロ」または「過フッ素化」は、水素原子が、全てF原子で置換された基を指す。例えば、過フッ素化メチル基は、−CF3を指す。
【0127】
式(I)、(II)または(III)で示される荷電化合物を使用するTTIも、本明細書に包含される。負荷電系は、金属またはアミン、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、または有機アミンを用いて形成してもよい。陽イオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。該陽イオンは、式:−NRR’R”+Z(式中、R、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、アルキルまたはベンジルであり、Zは、クロリド、ブロミド、ヨージド、O−アルキル、トルエンスルホナート、メチルスルホナート、スルホナート、ホスファート、ベンゾエート、ボラートまたはカルボキシレートを含む対イオンである)で示される第四級塩のような第四級塩であってもよい。
【0128】
該化合物の酸付加塩としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸のような無機塩から誘導される塩、ならびに脂肪族モノ−およびジ−カルボン酸、フェニル置換のアルカン酸、ヒドロキシルアルカン酸、芳香族酸、スルホン酸などの有機酸から誘導される塩が挙げられる。つまりそのような塩としては、スルファート、バイスルフィット、バイスルフィット、ニトレート、ホスファート、モノヒドロゲンホスファート、メタリンホスファート、クロリド、ブロミド、ヨージド、アセテート、プロピオナート、イソブチラート、オキサラート、マロナートなどの陽イオンが挙げられる。
【0129】
本発明のTTIを用いて正荷電の化合物を形成する酸付加塩は、従来の様式で、一般式I、IIまたはIIIで示される化合物の遊離塩基誘導体を十分な量の所望の酸と接触させて、塩を生成させることにより製造してもよい。該遊離塩基は、塩形態のものを塩基と接触させて遊離塩基を分離することにより再生してもよい。
【0130】
該遊離塩基化合物を十分な量のアルキル化剤、例えばヨウ化メチル、臭化メチルのようなアルキルハライドと接触させて、ヘテロ原子での置換に影響を与えることにより、正電荷系を製造してもよい。ブロミド、ヒドロキシド、カーボナートのような原子または基である負電荷対イオンを、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて異なる負荷電対イオンにより置換してもよい。
【0131】
本発明の範囲内では、用語「荷電したヘテロ原子」または「荷電したヘテロアリール」は、単荷電または多荷電され、局在化した電荷または非局在化した電荷を有する、本明細書の以前に定義した通りのヘテロアリール系を指す。
【0132】
原子1個以上に、局在化した電荷が存在してもよい。全て置換されたヘテロ原子、例えば四置換されたN原子の場合、本明細書の以前に記載したとおり電荷は正になる。ヘテロアリールは、本明細書の以前に記載したとおりに荷電されてもよく、この場合、ヘテロ原子は部分置換されており、非結合電子対を有している。正荷電および負荷電された系において、必ずしも離れた電荷(distant charge)の非局在化によらずに炭素原子が電荷を帯びていてもよい。
【0133】
用語「荷電基」は、負電荷または正電荷を帯びることができる基いずれか1個以上を指す。そのような基の例は、アンモニウム、ホスホニウム、フェノラート、カルボキシラート、スルホナート、チオラート、セレナート、および本明細書中前述したものである。電荷は、局在化または非局在化であってもよく、正または負であってもよい。用語「電荷を有する別の基により置換された基」は、本明細書の以前に定義した通りの荷電基により置換された中性基を指す。用語、荷電したヘテロ原子、荷電したヘテロアリール、または荷電基は、双性イオン系も包含する。
【0134】
本明細書の指示薬と共に用いられる化合物の合成は、文献において公知の任意の合成経路により製造してもよい。図2、6および7は、そのような合成の例を示している。
【0135】
本発明の別の態様によれば、上記の本発明の指示薬化合物、好ましくはジアリールエテンおよび/またはスピロ芳香族材料から選択される指示薬化合物を少なくとも1種含むアクティブマトリックスを有する時間−温度指示薬を製造する手段が提供される。
【0136】
本明細書の好ましい実施形態において、時間−温度指示薬の活性材料としての指示薬化合物は、インキ配合物中で提供され、前記包装材料またはラベルに直接印刷される。
【0137】
本発明の更に別の態様において、好ましくは上記の可逆性フォトクロミック指示薬から選択される上記の指示薬化合物、より好ましくは上記のジアリールエテンおよび/またはスピロ芳香族化合物から選択される上記の指示薬化合物、を少なくとも1種含む活性材料を含むTTIの製造方法であって、適切なマトリックス中、またはその上部に前記少なくとも1種の指示薬化合物を埋め込み;埋め込まれた少なくとも1種の指示薬化合物の準安定状態の形成を誘起すること、を含む製造方法が提供される。一つの実施形態において、該方法は、前記TTIを適切な被覆支持体で覆うことを更に含む。好ましくは該被覆支持体は、光再荷電または光脱色を回避するように設計される。
【0138】
具体的な適用例に応じて、必要な挙動を有するジアリールエテンまたはスピロ芳香族化合物を選択してもよい。上記系のほとんど、および実施例の全ては、無色の熱動力学的安定状態および着色の準安定状態が利用されることを特徴とする。更にこれらの分子は、活性化工程では比較的高い光量子収率により分子を着色に変化させ、時間および温度依存性反応工程では実質的に低い光量子収率で分子を脱色させることを特徴とする。着色状態では、温度以外の刺激因子では無視できるほどの影響しか見出されない。本発明のTTIがジアリールエテンに依存する場合、活性化工程は、好ましくは、閉環(またはスピロ芳香族化合物を用いる場合には開環)を含み、脱色工程は、好ましくは開環(またはスピロ芳香族化合物の場合には閉環)を伴う。
【0139】
本発明のTTIと共に用いる該化合物の準安定状態は、本明細書の前述の様々な刺激因子の一つにより達成してもよい。一つの実施形態において、準安定状態は光子誘起により生じ、その場合、該物質を埋め込まれたマトリックスが、光源の下に配置されるか、またはそこを通過して、光励起に適した波長および強度の光、例えばUVを発する。埋め込まれた物質が、それの色から所定の量の準安定状態形成を示す色に変化したら、光への暴露を終了する。
【0140】
別の実施形態において、準安定状態は、圧力誘起により達成される。この手順では、物質に埋め込まれたマトリックス、および/または物質の上部のマトリックスを、金属ロールのような2つの本体の間を通過させて、マトリックス表面に圧力を施し、それにより準安定状態の形成を誘起する。本体により活性材料に与えられる時間および圧力を調節することにより、TTIアクティブマトリックス中での安定状態から準安定状態への変換の度合いを制御することが可能である。
【0141】
更に別の実施形態において、準安定状態は、熱誘起により達成される。この具体的な誘起方法では、誘起される物質を埋め込まれたマトリックスを、通常は前記物質の融点よりも低い温度に加熱する。熱は、公知の方法で加えてもよい。一つの具体的な例では、2つの加熱した金属ロールを通しながら、マトリックスに熱を加える。この場合、表面にかけられた圧力は、それだけでは準安定状態の形成を誘起することができず、単に、ヒータと試料との間で熱接触の制御を確実に行う働きしかない。マトリックスと接触しているヒータ、即ち金属ロールおよびマトリックスそのものから熱移動した結果、準安定状態が達成される。
【0142】
しかし、圧力、光および熱誘起の任意の組合わせを利用することが望ましい、またはそれが必要な場合もあり得る。それゆえ、本発明の更なる実施形態は、刺激因子を組み合わせることにより、本発明のTTIと共に用いられる物質の準安定状態を達成することである。
【0143】
本発明において用いられ支持マトリックスは、ポリマー、例えばPVC、PMMA、PEO、ポリプロピレン、ポリエチレン、全種類の紙、全種類の印刷媒体など、または任意のガラス状フィルムであってもよい。活性指示薬を、マトリックス基材、例えばポリマー、ガラス、金属、紙などの内部、および/または上部に導入してもよく、誘導されたクロミック工程(chromic process)の可逆性を可能にするのに、マトリックスで任意の形態をとっていてもよい。そのような形態は、マトリックスの指示薬ドーピング、マトリックス中の指示薬のゾル−ゲル埋込み、小結晶、固形液などとしての指示薬の埋込みであってもまたはそれらから生じてもよい。
【0144】
一つの例では、本発明のTTIの製造方法での活性材料の付着は、それを、当該技術分野で公知の印刷法、例えばインクジェット印刷、フレキソ印刷、レーザ印刷などを用いて印刷に適した印刷可能なインキに変換することにより行われる。
【0145】
別の具体的な実施形態では、活性指示薬は、小結晶の形態でマトリックスに埋め込まれる。更に別の具体的な実施形態では、活性指示薬は、物品の包装材料に埋め込まれる。
【0146】
本発明に従う時間−温度指示薬は、好ましくは腐敗し易い物品、特に医薬、生物体、または食品品目に包装および/または結合されている。
【0147】
別の実施形態では、本発明は、時間および温度依存的様式で、指示薬に結合した原子または基が移動しない原子価異性化反応において前記指示薬化合物を変換するステップを含み、ここで濃度に対応する前記指示薬の第1または第2の異性形態の物理的特性をモニタリングすることにより、前記指示薬の第1の異性形態が第2の異性形態に変換したことを検出する、時間−温度指示の方法にも関する。
【0148】
好ましくは、反応生成物の形成は、指示薬の2種の異性形態の間の色の差に基づく色の変化により視覚化する。
【0149】
具体的な実施形態では、本発明は、時間経過−および温度−感応性製品の品質を測定する方法であって、以下のステップ:
a)指示薬、好ましくは以前に定義した通りのジアリールエテンおよびスピロ芳香族化合物に結合した原子または基が移動しない原子価異性化反応に基づくフォトクロミック性を有する指示薬を少なくとも1種含む時間−温度積算物質を基材に印刷するステップ、
b)指示薬を、好ましくは光誘起着色により、活性化するステップ、
c)場合により、保護物質を適用して指示薬の再度の光誘起着色を防ぐステップ、
d)時間−または温度−誘起脱色の度合いを測定し、脱色の度合い、つまり製品の品質を判断するステップ、
を含む、品質を測定する方法にも関する。
【0150】
インクジェット印刷を利用する場合、手順は、有利には以下のとおりである。
【0151】
ステップa)では、指示薬、好ましくは以前に定義した通りのジアリールエテンおよびスピロ芳香族化合物に結合した原子または基が移動しない原子価異性化反応に基づくフォトクロミック性を有する指示薬を少なくとも1種含む時間−温度積算物質を、インクジェット印刷により基材に、特に時間経過−および温度−感応性製品の包装に、または包装に適用するラベルに適用する。
【0152】
好ましい実施形態において、ステップa)では、更に、インクジェット印刷により、参照スケールを適用して、指示薬の色の変化を、時間の関数として再現することが可能であり、好ましくは黒色インキで、更なる文書(または情報)、例えば保証期間、製造番号、重量、内容などを適用することが可能である。
【0153】
ステップa)の後、ステップb)の活性化、特に可逆性指示薬の光誘起着色を行う。結合剤の光誘起硬化は、有利には指示薬の光誘起着色を含む。
【0154】
所望なら、ステップb)の後に、不可逆性光感応性指示薬を、時間−温度積算物質のカバーの形態で耐タンパー化物質として適用することができる。適切な不可逆性指示薬としては、例えば、ピロール誘導体、例えば2−フェニル−ジ(2−ピロール)メタン)が挙げられる。そのような材料は、UV光に暴露すると、不可逆的に赤色に変化する。
【0155】
ステップc)の後に、可逆性指示薬の再度の光誘起着色を防ぐ保護物質、特に色フィルタを適用する。UV感応性指示薬の場合、430nmを超える代表的波長を有する光のみに透過し得る黄色フィルタが考えられる。有利には保護フィルム、即ち、色フィルタは、同様に、インクジェット印刷によって適用することができる。
【0156】
時間−温度時計は、所定の望ましい時点で開始させることができる。本発明に従って考慮するために脱色が好ましいが、着色工程が時間−温度時計の基本を形成する指示薬を使用することも容認できる。
【0157】
時間経過−または温度−感応性製品の品質の実際の測定は、ステップb)での指示薬の活性化により進行する。以後の時点で、次いで時間−または温度−誘起脱色の度合いを測定し、それから製品の品質を推測する。人の眼で評価を行う場合、所定の品質等級、所定の時点などを所定の脱色度に割り当てる参照スケールを、例えば基材に並べてまたは基材の下に配置させると有利となり得る。それゆえ、脱色または着色の度合いを評価することにより製品の品質を測定する場合、参照スケールを用いることが好ましい。
【0158】
基材は、腐敗し易い物品用の包装材料を同時に形成することができ、または、例えばラベルの形態で、包装材料に適用することができる。
【0159】
更に別の実施形態では、本発明は、
a)指示薬、好ましくは以前に定義した通りのジアリールエテンおよびスピロ芳香族化合物から選択される指示薬に結合した原子または基が移動しない原子価異性化反応に基づくフォトクロミック性を有する指示薬を少なくとも1種含む時間−温度積算物質を基材に印刷するステップ、を含む、包装材料またはラベルを印刷する方法にも関する。
【0160】
印刷された参照スケールを時間−温度積算物質と共に使用すれば、品質等級の絶対測定が可能になる。時間−温度積算物質および参照スケールは、有利には読み取りを容易にするために、光着色基材上に配置される。
【0161】
適切な基材材料は、無機および有機の両方の材料であり、好ましくは従来の層および包装技術から公知のものである。例えば、ポリマー、ガラス、金属、紙、カード用厚紙などが挙げられる。
【0162】
基材は、物品の包装材料としての使用に適し、そして/または公知の方法によるそれへの付着に適している。本発明の指示薬は、食品業界での適用性がありかつ使用できること、そして本質的に、医薬または医療分野に用いることができる他の物品にも同様に有効であることを理解すべきである。
【0163】
本発明は、指示薬を含む印刷インキまたは印刷インキ濃縮物であって、前記指示薬が、時間および温度依存的様式で指示薬に結合した原子または基が移動しない原子価異性化反応を受けることができ、第1の異性形態を第2の異性形態に変換し、ここで濃度に対応する前記指示薬の第1または第2の異性形態の物理的特性をモニタリングすることにより前記変換を検出することを特徴とする印刷インキまたは印刷インキ濃縮物にも関する。
【0164】
好ましくは、印刷インキまたは印刷インキ濃縮物は、前記した通りの一般式(IV)で示されるスピロ芳香族化合物を少なくとも1種含む。
【0165】
該インキは、好ましくは、インキの全重量に基づいて、指示薬を全量で1〜35重量%、特に1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%含む。下限としては、1.5重量%、特に2重量%、より特別には3重量%の限界が好ましい。
【0166】
印刷インキは、例えば着色剤(指示薬)、結合剤、ならびに場合により溶媒および/または場合により水および添加剤を含む液状またはペースト形態分散物である。液状印刷インキ中には、結合剤および、適当ならば添加剤が、一般に溶媒に溶解されている。Brookfield粘度系での慣用的粘度は、例えば、液状印刷インキの場合、20〜5000mPa・s、例えば20〜1000mPa・sである。ペースト形態印刷インキの場合、値は、例えば、1〜100Pa・s、好ましくは5〜50Pa・sの範囲である。当業者は、印刷インキの成分および組成をよく知っていると思う。
【0167】
該印刷インキは、例えば、電子写真、凹版印刷、フレキソ写真印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、石版画、または活版印刷用に用いることができる。適切な印刷インキは、溶剤ベースの印刷インキ、および水ベースの印刷インキの両方である。興味深いものは、例えば水性アクリラートをベースにした印刷インキである。そのようなインキは、基:
【0168】
【化42】

【0169】
を含むモノマーの少なくとも1種を重合することにより得られ、水または水含有有機溶媒に溶解されているポリマーまたはコポリマーを含むと理解すべきである。適切な有機溶媒は、当業者に慣用される水混和性溶媒、例えばアルコールメタノール、エタノール、ならびにプロパノール、ブタノールおよびペンタノールの異性体のようなアルコール、エチレングリコールメチルエーテルおよびエチレングリコールエチルエーテルのようなエチレングリコールおよびそのエーテル、およびアセトン、エチルメチルケトンまたはシクロヘキサノンのようなケトン、例えばイソプロパノールである。水およびアルコールが好ましい。
【0170】
適切な印刷インキは、例えば、結合剤として、主に、アクリラートポリマーまたはコポリマーを含み、溶媒は、例えば水、C1〜C5アルコール、エチレングリコール、2−(C1〜C5アルコキシ)エタノール、アセトン、エチルメチルケトン、およびそれらのいずれかの混合物からなる群から選択される。
【0171】
結合剤に加え、印刷インキは当業者に公知の慣用的添加剤を慣用的濃度で含んでいてもよい。凹版印刷またはフレキソ印刷では、印刷インキは、通常、印刷インキ濃縮物の希釈により調製され、その後、それ自体が公知の方法に従って用いることができる。印刷インキは、例えば、酸化的に乾燥させるアルキド系を含んでいてもよい。該印刷インキは、当該技術分野で慣用される公知の様式で、場合によりコーティングを加熱して乾燥させる。適切な水性印刷インキ組成物は、例えば、酵素特異性基質、分散剤および結合剤を含む。
【0172】
考えられる分散剤としては、例えば、慣用される分散剤、例えばアリールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物1種以上もしくは水溶性のオキシアルキル化フェノール1種以上を基にした水溶性分散剤、非イオン性分散剤、またはポリマー酸が挙げられる。
【0173】
アリールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物は、芳香族化合物、例えばナフタレンそのものまたはナフタレン含有混合物をスルホン化し、次に、得られたアリールスルホン酸をホルムアルデヒドと縮合することにより得ることができる。そのような分散剤は公知であり、例えばUS-A-5,186,846およびDE-A-19727767に記載されている。適切なオキシアルキル化フェノールも同様に公知であり、例えばUS-A-4,218,218およびDE-A-19727767に記載されている。適切な非イオン系分散剤は、例えば、アルキレンオキシド付加物、ビニルピロリドンの重合生成物、酢酸ビニル、ビニルアルコール、およびビニルピロリドンと、酢酸ビニルおよび/またはビニルアルコールとのコポリマーまたはターポリマーである。例えば、分散剤および結合剤の両方として作用するポリマー酸を用いることも可能である。
【0174】
挙げることができる適切な結合剤成分の例としては、アクリラート基含有、ビニル基含有、および/またはエポキシ基含有モノマー、プレポリマーおよびポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。更なる例は、メラミンアクリラートおよびシリコーンアクリラートである。アクリラート化合物は、非イオン的に修飾するか(例えばアミノ基を用いて得られる)、またはイオン的に修飾してもよく(例えば、酸基またはアンモニウム基を用いて得られる)、水性分散液またはエマルションの形態で用いてもよい(例えば、EP-A-704469,EP-A-12339)。その上、所望の粘度を得るために、無溶媒のアクリラートポリマーを、いわゆる反応性希釈剤、例えばビニル基含有モノマーと混合することができる。更に適した結合剤成分は、エポキシ基含有化合物である。
【0175】
該印刷インキ組成物は、更なる成分として、例えば水分保持作用を有する薬剤(保湿剤)、例えば、多価アルコール、ポリアルキレングリコールを含んで、組成物をインクジェット印刷に特に適したものにしてもよい。
【0176】
印刷インキは、印刷およびコーティング業界で慣用される更なる補助剤、例えば、防腐剤(グルタル酸ジアルデヒドおよび/またはテトラメチロールアセチレン尿素)、抗酸化剤、脱気剤/消泡剤、粘度調整剤、流れ改良剤、沈降防止剤、光沢改良剤、滑剤、接着促進剤、皮張り防止剤、つや消し剤、乳化剤、安定化剤、疎水剤、光安定化剤、取り扱い改良剤(handle improvers)、および静電気防止剤を含んでいてもよい。そのような薬剤が組成物中に存在する場合、それらの総量は、一般に、調製物の重量に基づいて1重量%以下である。
【0177】
印刷インキは、例えば可溶化剤、例えばε−カプロラクタムを含んでいてもよい。印刷インキは、とりわけ粘度を調整する目的で、天然または合成源の増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤の例としては、市販のアルギナート増粘剤、デンプンエーテル、またはイナゴ豆粉エーテルが挙げられる。印刷インキは、そのような増粘剤を、印刷インキの全重量に基づいて、例えば0.01〜2重量%の量で含む。
【0178】
印刷インキは、pH値を例えば5〜9、特に6.5〜8にするために、緩衝物質、例えば、ホウ砂、ボラート、ホスファート、ポリホスファートまたはシトラートを、例えば0.1〜3重量%の量で含むこともできる。
【0179】
更なる添加剤として、そのような印刷インキは、界面活性剤または保湿剤を含んでいてもよい。考えられる界面活性剤としては、市販のアニオン系およびノニオン系界面活性剤が挙げられる。考えられる保湿剤は、例えば、尿素、乳酸ナトリウム(有利には50〜60%の水溶液の形態で)およびグリセロール、および/またはプロピレングリコールの混合物を印刷インキ中に、例えば0.01〜30重量%、特に2〜30重量%で含む。
【0180】
その上、印刷インキは、慣用される添加剤、例えば泡減少剤、または特に真菌および/もしくは細菌の増殖を抑制する物質を含んでいてもよい。そのような添加剤は、通常、印刷インキの全重量に基づいて、0.01〜1重量%の量で用いられる。
【0181】
挙げることができる印刷材料としては、例えば:
− ワニスが塗られていてもよい、またはいくらかの他のコーティングを有していてもよいセルロース性材料、例えば、紙、板紙、カード用厚紙、
− ワニスが塗られていてもよい、またはいくらかの他のコーティングを有していてもよい金属材料、例えば、アルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛またはそれらの金属の合金の、箔、シート、または加工物、
− 同様に、コーティングされていてもよいケイ酸塩材料、例えば、ガラス、陶磁器、およびセラミックス、
− 全種類の高分子材料、例えば、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリラート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボナート、ポリ塩化ビニル、ならびに対応するコポリマーおよびブロックコポリマー、
− ポリエステル、改質ポリエステル、ポリエステルブレンドの、紡織材料、ニット品、織物、不織および二次製品、セルロース性材料、例えば、綿、混綿、ジュート、亜麻、麻、ラミー、ビスコース、羊毛、絹、ポリアミド、ポリアミドブレンド、ポリアクリロニトリル、トリアセタート、アセタート、ポリカーボナート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマイクロファイバ、およびガラス繊維織物、
− 食料品および化粧品、が挙げられる。
【0182】
特に適した印刷材料は、例えば、紙、コート紙、カード用厚紙、およびプラスチックまたは金属箔、例えばアルミ箔である。
【0183】
好ましいのは、水性印刷インキを用いた印刷方法である。印刷材料の印刷は、好ましくは、荷電制御型またはオンデマンド型インクジェット印刷により実行される。水性インクジェットインキが好ましい。
【0184】
該インキは、有機溶媒または有機溶媒混合物中の時間−温度指示薬の酵素の溶液からなる非水性インキであってもよい。この目的で用いられ得る溶媒の例は、アルキルカルビトール、アルキルセロソルブ、ジアルキルホルムアミド、ジアルキルアセトアミド、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、ジオキサン、酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、酢酸ブチル、リン酸トリエチル、酢酸エチルグリコール、トルエン、キシレン、テトラリン、または石油エーテル画分である。インキビヒクルとして最初に加熱しなければならない、溶媒としての固形ワックスの例は、ステアリン酸またはパルミチン酸である。
【0185】
該インキは、水混和性有機溶媒、例えば、C1〜C4アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールまたはイソブタノール;アミド、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトンまたはケトンアルコール、例えばアセトン、ジアセトンアルコール;エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン;窒素含有複素環式化合物、例えばN−メチル−2−ピロリドンまたは1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン;ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール;C2〜C6アルキレングリコールおよびチオグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコールおよびジエチレングリコール;更なるポリオール、例えばグリセロールまたは1,2,6−ヘキサントリオール;および多価アルコールのC1〜C4アルキルエーテル、例えば2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノールまたは2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エタノール;好ましくはN−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコール、グリセロールまたは特に1,2−プロピレングリコールを、インキの全重量に基づいて、通常は2〜30重量%、特に5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%の量で含んでいてもよい。
【0186】
該インキは、可溶化剤、例えばε−カプロラクタムを含んでいてもよい。該印刷インキは、とりわけ粘度を調整する目的で、天然または合成源の増粘剤を含んでいてもよい。
【0187】
更に、特に結合剤の硬化をUV光で実施すべき場合には、本発明に従う顔料調製物は、重合を開始する重合開始剤を含んでいてもよい。
【0188】
フリーラジカル光重合、即ち、アルクリラート、および所望ならビニル化合物の重合に適した光開始剤は、例えば、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体、例えば4−フェニルベンゾフェノンおよび4−クロロベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えば1−ベンゾイルシクロヘキサン−1−オール、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン、および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾインおよびベンゾインエーテル、例えばメチル−、エチル−およびブチル−ベンゾインエーテル、ベンジケタール、例えばベンジジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、アシルホルフィンオキシド、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドである。
【0189】
陽イオン性光重合、即ちビニル化合物またはエポキシ基含有化合物の重合に適切な光開始剤は、例えば、アリールジアゾニウム塩、例えば4−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスファート、ベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラートおよびトルエンジアゾニルムテトラフルオロアルセナート、アリールヨードニウム塩、例えばジフェニルヨードニウムヘキサフルオロサルセナート、アリールスルホニウム塩、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、ベンゼン−およびトルエン−スルホニウムヘキサフルオロホスファート、ならびにビス[4−ジフェニルスルホニオ−フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスファート、ジスルホン、例えばジフェニルジスルホンおよびフェニル−4−トリルジスルホン、ジアゾジスルホン、イミドトリフラート、ベンゾイントシラート、イソキノリニウム塩、例えばN−エトキシイソキノリニウムヘキサフルオロホスファート、フェニルピリジニウム塩、例えばN−エトキシ−4−フェニルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、ピコリニウム塩、例えばN−エトキシ−2−ピコリニウムヘキサフルオロホスファート、フェロセニウム塩、およびチタノセンである。
【0190】
光開始剤が本発明に従うインキ組成物中に存在し、それが一般に、UV光により硬化する結合剤に必要となる場合、その含量は、一般に0.1〜10重量%であり、好ましくは0.1〜8重量%である。
【0191】
挙げることができる増粘剤の例としては、市販のアルギナート増粘剤、デンプンエーテル、またはイナゴ豆粉エーテル、特にアルギン酸ナトリウムを単独で、または修飾セルロース、例えばメチル−、エチル−、カルボキシメチル−、ヒドロキシエチル−、メチルヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−、またはヒドロキシプロピルメチル−セルロース)と混和したもので、特にカルボキシメチルセルロースを、好ましくは20〜25重量%有するものが挙げられる。挙げることができる合成増粘剤は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸またはポリ(メタ)アクリルアミドをベースにしたものである。
【0192】
該インキは、そのような増粘剤を、インキの全重量に基づいて、例えば0.01〜2重量%、特に0.01〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%の量で含む。
【0193】
該インキは、緩衝物質、例えば、ホウ砂、ボラート、ホスファート、ポリホスファートまたはシトラートを含むことも可能である。例としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムが挙げられる。それらは、pH値を例えば4〜9、特に5〜8.5にするために、インキの全重量に基づいて、特に0.1〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%の量で用いられる。
【0194】
更なる添加剤として、該インキは、界面活性剤または保湿剤を含んでいてもよい。
【0195】
界面活性剤としては、市販のアニオン系およびノニオン系界面活性剤が考えられる。本発明に従うインキに適した保湿剤としては、例えば、尿素、乳酸ナトリウム(有利には50〜60%の水溶液の形態で)およびグリセロール、および/またはプロピレングリコールの混合物を、好ましくは0.1〜30重量%、特に2〜30重量%の量で含む。
【0196】
その上、該インキは、慣用される添加剤、例えば、防腐剤(グルタル酸ジアルデヒドおよび/またはテトラメチロールアセチレン尿素)、抗酸化剤、脱気剤/消泡剤、粘度調整剤、流れ改良剤、沈降防止剤、光沢改良剤、滑剤、接着促進剤、皮張り防止剤、つや消し剤、乳化剤、安定化剤、疎水剤、光安定化剤、取り扱い改良剤、および静電気防止剤を含んでいてもよい。そのような薬剤は、通常、インキの全重量に基づいて0.01〜1重量%の量で用いられる。
【0197】
該インキは、個々の成分を所望の量の水に一緒に混合することにより慣用的様式で製造することができる。
【0198】
本発明に従うインキは、インキが液滴の形態で小さな開口部から基材の方に向けられて基材上に像が形成される種類の記録系での使用に特に適している。適切な基材は、例えば、紙、紡織繊維材料、金属箔またはプラスチック箔である。適切な記録装置は、例えば、紙または紡織繊維の印刷に用いられる市販のインクジェットプリンタである。
【0199】
使用の性質に応じて、例えばインキの粘度または他の物理的特性、特に該当する基材へのインキの親和性に影響を及ぼすそれらの性質を、適応させることが必要となる場合もある。
【0200】
インクジェット印刷では、インキの個々の液滴が、制御された手法で、ノズルから基材に噴霧される。この目的で、主に荷電制御型インクジェット法およびオンデマンド法が利用される。荷電制御型インクジェット法では、液滴が連続的に生成され、印刷に必要ない液滴は、回収容器に運搬されてリサイクルされる。しかしオンデマンド法では、必要に応じて液滴が生成され印刷される;即ち液滴は、印刷に必要な時だけ生成される。液滴の生成は、例えば、ピエゾインクジェットヘッドにより、または熱エネルギー(バブルジェット)により行われることができる。
【0201】
続く結合剤の硬化、即ち、印刷物の固定は、熱または高エネルギー放射線の助けにより慣用的手法で実行されることができる。この目的で、印刷物に、不活性気体(例えば窒素)雰囲気下での電子(電子ビーム硬化)によるかまたは高エネルギー電磁放射線、好ましくは220〜450nmの波長範囲のもののいずれかを、照射させる。そのような手順では、指示薬の分解を回避するために、選択した光強度を硬化速度に適合させるべきである。
【0202】
本発明の別の実施形態は、前記した通りの時間−温度指示薬を含む包装材料またはラベルに関する。
【0203】
更に別の実施形態において、本発明は、前記した通りの一般式(IV)で示されるスピロ芳香族化合物を少なくとも1種含む高分子量材料にも関する。
【0204】
該高分子量有機材料は、天然または合成供給源のものであってもよく、一般に、103〜108g/モルの範囲の分子量を有する。それは、例えば、天然樹脂もしくは乾燥油、ゴムもしくはカゼイン、または修飾天然材料、例えば、塩素化ゴム、油修飾アルキド樹脂、ビスコース、セルロースエーテルもしくはセルロースエステル、例えば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、アセト酪酸セルロースまたはニトロセルロースであってもよいが、特に、重合、重縮合または重付加によって得られる通りの、全合成有機ポリマー(熱硬化性プラスチックおよび熱可塑性樹脂)、例えば、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリイソブチレン、置換されたポリオレフィン、例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸および/またはメタクリル酸エステルまたはブタジエンの重合生成物、または前述したモノマーの共重合生成物、特にABSまたはEVAであってもよい。重付加樹脂および重縮合樹脂の群から、ホルムアルデヒドと、フェノールとの縮合生成物、いわゆるフェノプラスト、ならびにホルムアルデヒドと、尿素、チオ尿素およびメラミンとの縮合生成物、いわゆるアミノプラスト、表面コーティング樹脂として用いられる飽和、例えばアルキド樹脂、もしくは不飽和、例えばマレイン酸樹脂のいずれかのポリエステル、また直鎖状ポリエステルおよびポリアミドまたはシリコーンが挙げられる。挙げた高分子量化合物は、プラスチック組成物または溶融体の形態で、個々にまたは混合物で存在してもよい。それらは、表面コーティング用または印刷インキ用の、塗膜形成剤または結合剤、例えば煮亜麻仁油、ニトロセルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、またはアクリル酸樹脂として、モノマーの形態でまたは溶解形態の重合状態で存在してもよい。
【0205】
本発明をよりよく理解するために、そして本発明を実際にどのようにして実施し得るのかを知るために、好ましい実施形態を非限定的実施例により添付の図面を参照しながらここに記載する。
【実施例】
【0206】
実施例1 ジアリールエテン化合物(3)から製造された結晶性アクティブマトリックスを有する時間−温度指示薬
(3)の結晶は、結晶ではフォトクロミックであり、照明をあてると深色を形成した。暗室では、環式光生成物が安定な無色の形態に転換した(τ1/2=室温で37s)。
【0207】
実施例2 N−プロピルニトロスピロピラン(11)から製造された結晶性アクティブマトリックスを有する時間−温度指示薬
【0208】
(a)合成
エタノール中で3,3−ジメチル−2−メチレン−1−プロピル−2,3−ジヒドロ−1H−インドールと2−ヒドロキシ−5−ニトロベンゾアルデヒドとの混合物を還流することにより、N−プロピルニトロスピロピラン(11)を図2に示すとおりに製造した。
【0209】
(b)性質
化合物(11)は、結晶ではフォトクロミックであり、図3に示すとおりに照明をあてると深青紫色を形成した。暗室では、その非環式光生成物は、二指数減少曲線をたどり安定な無色形態に転換し、退色速度は、系に吸着された凝集した熱に比例するため、有色期間の間にそれが経験した時間−温度履歴の指示薬として役割を果たした(図4)。
【0210】
(c)TTIの製造
無色の微細粒粉末(11)を不活性溶媒に懸濁させ、紙支持体に吸着させた。代わりに、エタノールまたはエーテル:ヘキサン混合物中の該化合物の溶液を適切な表面、例えば紙に噴霧し、溶媒を蒸発させ、支持マトリックス中に(11)を結晶化させた。活性スポットを参照色で取り囲み、2つのプラスチック箔の間に包み込んだ。別の例では、アクティブマトリックスを付着させる基材は、透明なポリプロピレンであり、それを(11)の付着後に、光再荷電ならびに光脱色を回避するように設計されたポリプロピレン色フィルタで覆い密封した。
【0211】
(d)結果
(11)の微細結晶粉末を加えたTTIに照明をあてると、それが深青色に変化した。照明によりTTIとしての系が活性化し、更に光をあてなければ、系は温度および時間のみに感応性であった。暗室では、図4に示したとおりに、アクティブマトリックスの非環式光生成物が安定な無色の形態に転換した。この実施例のTTIに記録された時間−温度プロファイルは:
31℃では:τ1/2=54分および5時間
25℃では:τ1/2=2.5時間および16.6時間
7℃では:τ1/2=27.8時間および242.6時間
4℃では:τ1/2=44時間および397時間
2℃では:τ1/2=60時間および544時間
【0212】
これらの結果は、図5に示すとおりに、
Ea=21.9±0.9Kcal mol-1、A=11.3±0.8および
Ea=23.4±0.8Kcal mol-1、A=13.2±0.6
の活性化エネルギーおよび頻度因子を表している。
【0213】
退色速度は、系に吸収され凝集した熱に比例するため、着色期間の間にそれが経験した時間−温度履歴の指示薬として役割を果たす。
【0214】
実施例3 イオン性スピロピランから製造された結晶性アクティブマトリックスを有する時間−温度指示薬
【0215】
(a)合成
3,3−ジメチル−2−メチレン−1−メチル−2,3−ジヒドロ−1H−インドールおよびそれぞれの各サリチアルデヒド誘導体をエタノール中で還流し、それぞれ図6および7に示すスピロ化合物(12)および(13)を得ることにより、イオン性スピロピラン(14)および(15)を製造した。その後、中性のスピロ化合物(12)および(13)をヨウ化メチルの存在下で図示したとおりに第四級化して、イオン性スピロピラン(14)および(15)を生成した。生成物は、メタノールから再結晶化させることにより容易に精製された。
【0216】
(b)性質
化合物(14)および(15)は、結晶状態ではフォトクロミックで、照明をあてると深赤色〜紫色を形成することが見出された。暗室では、その非環式光生成物は、安定な無色形態に転換した。退色速度は、系に吸着され凝集した熱に比例するため、これらの化合物は、着色期間の間にそれらが経験した時間−温度履歴の指示薬として適してものである。
【0217】
結晶状態では、(14)および(15)の光活性、ならびに熱転換(thermal reversion)は、具体的な材料の関数としてだけでなく、具体的な結晶パッキングの関数としても変動し、後者は、陽イオンだけでなくまた陰イオンの性質および特性により規定される。イオン交換クロマトグラフィー、または逆溶媒からの共沈、または当該技術分野で公知の別の方法のいずれかによって、陰イオンを変化させることにより、異なる時間−温度プロファイルを有する同じ有機物質の結晶材料を得ることができるため、同じ有機物質の異なる時間−温度プロファイルを有する異なるTTIが製造することができる。
【0218】
実施例4 圧力により荷電するピエゾクロミック時間−温度指示薬
イオン性スピロピラン(14)および(15)はピエゾクロミックであり、圧力を施すと有色に変化した。結晶性試料を2個の金属ドラムの間で通過させると、結晶の着色が誘起されたが、そのスペクトルは光活性物と同様であった。系の時間−温度特性は、光により活性化された同じ系と同様であることが見出された(結果は図示しない)。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1A】2−(2,4−ジニトロベンジル)−3−メチルピリジンに基づく時間−温度モニターの非荷電種および荷電種の光感受性を略図として示す。
【図1B】2−(2,4−ジニトロベンジル)−3−メチルピリジンに基づく時間−温度モニターの非荷電種および荷電種の光感受性を略図として示す。
【図2】化合物(11)の合成を示す。
【図3】化合物(11)の準安定状態から対応する無色状態への変換を示す。
【図4】化合物(11)の準安定状態の変換を温度の関数として示す。
【図5】化合物(11)の退色速度を活性化エネルギーおよび頻度因子に関してグラフで示す。
【図6】化合物(12)および(14)の合成を示す。
【図7】化合物(13)および(15)の合成を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の異性形態の指示薬化合物を少なくとも1種含み、温度の経時変化を示す時間−温度指示薬であって、時間および温度依存的手法で、前記指示薬化合物に結合した原子または化学基が移動しない原子価異性化反応において第1の異性形態の指示薬化合物を第2の形態の前記指示薬化合物に変換し、ここで第1または第2の異性形態の指示薬の物理的特性をモニタリングすることにより、第2の異性形態の形成を検出することができる時間−温度指示薬。
【請求項2】
少なくとも1種の指示薬化合物が、ジアリールエテンまたはスピロ芳香族化合物である、請求項1記載の時間−温度指示薬。
【請求項3】
ジアリールエテンが、式(I):
【化1】


(式中、
1およびR2は、それぞれ独立して、C6〜C14アリール、C4〜C12ヘテロアリール、共役複素環式化合物を表し、前記へテロアリールおよび共役複素環式化合物は、N、OまたはSから選択されるへテロ原子を1〜3個含んでいてもよく、前記アリール、ヘテロアリールまたは共役複素環式化合物は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、シアノ、ニトロ、スルホ、−CH=CH−CN、アジド、またはアミド1個以上により置換されていてもよく;
1’およびR2’は、それぞれ独立して、H、シアノ、ニトロ、スルホ、ヒドロキシル、チオール、−CH=CH−CNもしくはアミド;または置換もしくは非置換のC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物を表すか;あるいはR1’およびR2’は、結合する炭素原子と一緒になって、N、OまたはSから選択される環内または環外へテロ原子を1〜3個含むC5〜C8炭素環式化合物またはC4〜C7複素環式化合物を形成し;前記Nへテロ原子は、Hにより、またはC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、ヒドロキシルもしくは−CH=CH−CNから選択される置換もしくは非置換の基1もしくは2個により更に置換されていてもよく;前記Nへテロ原子が四置換されている場合、それは正荷電されかつ有機または無機陰イオンからなる群から選択される陰イオンと会合しており、場合により、前記C5〜C8炭素環式化合物は、ハロゲン1個以上、好ましくはフルオロ原子1個以上により置換されており;そして場合により、
1、R1’、R2およびR2’は、それぞれ独立して、荷電基または荷電した別の基により置換された基を表し;前記電荷は、局在化または非局在化していてもよく、正または負であってもよく;
前記R1およびR2は、シスまたはトランス配座である)で示される化合物である、請求項2記載の時間−温度指示薬。
【請求項4】
ジアリールエテンが、
(a)好ましくは、1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチルチオフェン−3−イル)エタン(1);2,3−ビス(2,4,5−トリメチルチオフェン−3−イル)マレイン酸無水物(2);1,2−ビス(2−シアノ−1,5−ジメチル−4−ピロリル)ペルフルオロシクロペンテン(3);および1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−フェニルチオフェン−3−イル)ペルフルオロシクロペンテン(4)からなる群から選択される、対称のジアリールエテン;または
(b)好ましくは、2−(1,2−ジメチル−3−インドリル)−3−(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイン酸無水物(5);および2−(メトキシベンゾ[b]チオフェン−3−イル)−3−(1,2−ジメチル−3−インドリル)マレイン酸無水物(6)からなる群から選択される、非対称のジアリールエテン、
である、請求項3記載の時間−温度指示薬。
【請求項5】
スピロ芳香族化合物が、式(II):
【化2】


(式中、
環Aは、N、OまたはSから選択されるへテロ原子を少なくとも1個含むC5〜C8炭素環式化合物またはC4〜C7複素環式化合物を表し;前記Nへテロ原子は、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員非芳香族複素環式化合物、ヒドロキシルまたは−CH=CH−CNから選択される基1または2個により更に置換されていてもよく;前記Nへテロ原子が四置換されている場合、それは正荷電されかつ有機または無機陰イオンからなる群から選択される陰イオンと会合しており、
前記C5〜C8炭素環式化合物またはC4〜C7複素環式化合物は、ハロゲン、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、シアノ、ニトロ、スルホ、ヒドロキシル、チオール、−CH=CH−CN、アジド、アミドまたはアミノから選択される基1個以上により置換されていてもよく;
環Bは、ヘテロ原子Xを少なくとも1個含む置換または非置換の複素環式化合物を表し、前記Xは、N、OおよびSから選択され;前記N原子は、C1〜C12、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、ヒドロキシルまたは−CH=CH−CNから選択される基1または2個により更に置換されていてもよく;前記Nへテロ原子が四置換されている場合、それは正荷電されかつ有機または無機陰イオンからなる群から選択される陰イオンと会合しており;
前記環Bは、環内二重結合を1個以上含んでいてもよく、ハロゲン1個以上、好ましくはフルオロ原子1個以上により場合により置換されており;
前記環AおよびBは、置換または非置換の炭素環式化合物、C4〜C14複素環式化合物、C6〜C14アリールまたはC4〜C14ヘテロアリール環系1個以上に縮合していてもよい)で示される化合物であって、
式(II)で示される化合物は、中性、荷電され、多荷電され、外部陰イオンを有する正荷電され、外部陽イオンを有する負荷電され、または双性イオン性であってもよい、請求項2記載の時間−温度指示薬。
【請求項6】
スピロ芳香族化合物が、好ましくは、1’,3’,3’,8−テトラメチル−5−ヒドロキシメチルスピロ(2H−ピラノ[2,3−c]ピリジン−2,2’−2H−インドール)および1’,3’,3’,8−テトラメチル−スピロ(2H−ピラノ[2,3−c]ピリジン−2,2’−2H−インドール)からなる群から選択されるスピロピラン誘導体である、請求項5記載の時間−温度指示薬。
【請求項7】
スピロピラン誘導体が、式(III):
【化3】


(式中、
3は、H、ハロゲン、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、またはアジドからなる群から選択され;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび非芳香族炭素環式化合物は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、ニトロ、アジド、またはスルホから選択される基1個以上により置換されていてよく;
4は、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環式化合物、C3〜C8員環非芳香族複素環式化合物、ヒドロキシルまたは−CH=CH−CNからなる群から選択され;
Yは、C1〜C25アルキル、好ましくはメチル、n−プロピルおよびn−オクタデシル、およびC7〜C15アラルキルからなる群から選択され、前記アルキルおよびアラルキルは、ハロゲンから選択される基、好ましくはフッ素1個以上により置換されていてもよい)で示される1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)の誘導体である、請求項5記載の時間−温度指示薬。
【請求項8】
スピロ芳香族化合物が、以下のもの:スピロオキサジンまたはその誘導体、スピロナフトオキサジンまたはその誘導体、およびスピロインドリノピリドベンゾオキサジンまたはその誘導体、を少なくとも1種含む、請求項5記載の時間−温度指示薬。
【請求項9】
一般式(IV):
【化4】


[式中、
AおよびLは、互いに独立して、H、ハロゲン、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニルおよび
【化5】


(式中、Rは、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールおよびC7〜C15アラルキルである)からなる群から選択され;ここで前記アルケニル、アルキニルおよび
【化6】


は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、ニトロ、アジド、スルホ、アリールおよびヘテロアリールから選択される基1個以上により置換されていてもよく;
Yは、C1〜C25アルキルおよびC7〜C15アラルキルからなる群から選択され、前記アルキルおよびアラルキルは、ハロゲンから選択される基、好ましくはフッ素1個以上により置換されていてもよく;
Xは、C1〜C6アルコキシまたはLであり、
但し、L、AおよびXが水素である場合には、Yはn−プロピルでない]で示されるスピロ芳香族化合物。
【請求項10】
Lが、水素、Cl、BrまたはIであり;
Yが、メチル、n−プロピル、n−オクタデシルまたは
【化7】


であり、
Xが、水素またはメトキシであり;
Aが、水素であるが、
但し、LおよびXが水素である場合には、Yがn−プロピルでない、請求項9記載のスピロ芳香族化合物。
【請求項11】
請求項9または10記載のスピロ芳香族化合物を含む印刷インキまたは印刷インキ濃縮物。
【請求項12】
請求項9または10記載のスピロ芳香族化合物を含む高分子量材料。
【請求項13】
(a)マトリックス中、またはマトリックスの上部に前記少なくとも1種の指示薬化合物を埋め込むステップ;および
(b)前記埋め込まれた少なくとも1種の指示薬化合物の準安定状態の形成を誘起するステップ、を含む、請求項1〜8のいずれか一に記載の時間−温度指示薬を製造する方法。
【請求項14】
時間−温度指示薬を、好ましくは光再荷電(photo recharging)および/または光退色を回避するよう設計された、被覆支持体で覆うステップを更に含む、請求項9記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−531873(P2007−531873A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551838(P2006−551838)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050291
【国際公開番号】WO2005/075978
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(506173178)フレッシュポイント・ホールディングス・ソシエテ・アノニム (7)
【氏名又は名称原語表記】FRESHPOINT HOLDINGS S.A.
【Fターム(参考)】