説明

原子炉施設および原子炉格納容器冷却システム

【課題】冷却材漏えい時に、原子炉格納容器外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給する。
【解決手段】漏えい時冷却システムは、炉心および原子炉冷却材を内包する原子炉容器2と、原子炉容器2を格納する原子炉格納容器4と、原子炉容器2からの原子炉冷却材の漏えい時に原子炉格納容器4を外部から冷却する漏えい時冷却システムとを備える原子施設において、原子炉格納容器4の外部壁面を冷却するための冷却用水を原子炉格納容器4の上方まで移送する冷却用水供給ポンプ141と、漏えいした原子炉冷却材からの熱を利用して冷却用水供給ポンプ141へ動力を供給する冷却用水ポンプ動力供給部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉施設および原子炉格納容器冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにおいて配管の破断等により冷却材が原子炉格納容器内へ放出された場合、冷却材は減圧によって高温の蒸気となるため原子炉格納容器内の圧力が上昇する。
【0003】
このような場合に原子炉格納容器の圧力上昇を抑制し、健全性を確保するため、発生した蒸気を原子炉格納容器内の圧力抑制プールに誘導し凝縮させる方法や、格納容器スプレイ系によるスプレイ水により原子炉格納容器上部から内部に散水し、蒸気を凝縮させる方法が知られている(非特許文献1)。
【0004】
これらの方法では、圧力抑制プールやスプレイ水に蓄積された熱はポンプ等の動的機器により、熱交換器を介して最終的に外部へ放出する必要がある。
【0005】
これに対して、原子炉容器に原子炉冷却系配管が接続されており、これらを原子炉格納容器が格納している。原子炉格納容器と原子炉建屋の間には、原子炉格納容器を取り囲む形でアニュラス型の環状流路が設けられ、さらに原子炉格納容器の上部に上部冷却用水タンクが設置されている。
【0006】
上部冷却用水タンクに連通する上部散水管から水を原子炉格納容器の上部表面へ散水する。水は重力によってそのまま原子炉格納容器の側面を流れ落ちる過程で壁面からの熱伝達によって蒸発する。この際に蒸発潜熱に相当する熱を原子炉格納容器の表面から奪い、蒸発した蒸気は、環状流路の下部から流入した空気とともに上昇して煙突から排出される。
【0007】
これらの効果によって、動力源を用いることなく原子炉格納容器の内部を冷却、減圧することを可能とする構造が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2813412号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】原子力安全研究協会編、軽水炉発電所のあらまし、1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した原子炉格納容器の冷却構造は、原子炉格納容器の外面冷却のため、伝熱面積を比較的大きくとることができることと、重力によって散水するため、作動のための動力源を必要としない利点がある。
【0011】
一方で、蒸発した水は煙突からそのまま外部放出されるため、冷却期間に必要な冷却用水を原子炉格納容器の上部にあらかじめ蓄えておく必要がある。
【0012】
上部冷却用水タンクを大きくしようとすると、原子炉建屋の高さが高くなり原子炉建屋の重心も高くなり、建設性、耐震性の点で対策が必要となる。
【0013】
一方、事故発生時には、約1週間は炉心からの崩壊熱が比較的大きいため、冷却用水を原子炉格納容器の外面に散水し、その蒸発潜熱によって除熱性能を確保する必要がある。
【0014】
しかし前述のように耐震性の観点から、上部冷却用水タンクに確保できる容量は3日分程度である。それ以降の冷却用水は何らかの方法により外部より調達し、上部冷却用水タンクへ送水しなければならないという課題がある。
【0015】
そこで本発明は、冷却材漏えい時に、原子炉格納容器外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明は、炉心および原子炉冷却材を内包する原子炉容器と、前記原子炉容器を格納する原子炉格納容器と、前記原子炉容器からの前記原子炉冷却材の漏えい時に前記原子炉格納容器を外部から冷却する漏えい時冷却システムとを備える原子施設において、前記漏えい時冷却システムは、前記原子炉格納容器の外部壁面を冷却するための冷却用水を外部水源から前記原子炉格納容器の上方まで移送する冷却用水供給ポンプと、漏えいした前記原子炉冷却材からの熱を利用して前記冷却用水供給ポンプへ動力を供給する冷却用水ポンプ動力供給部と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、原子炉容器からの原子炉冷却材の漏えい時に原子炉格納容器を外部から冷却する格納容器冷却システムにおいて、前記原子炉格納容器の外部壁面を冷却するための冷却用水を前記原子炉格納容器の上方まで移送する冷却用水供給ポンプと、漏えいした前記原子炉冷却材からの熱を利用して前記冷却用水供給ポンプへ動力を供給する冷却用水ポンプ動力供給部と、を備え、前記冷却用水ポンプ動力供給部は、前記原子炉格納容器内にあって前記原子炉冷却材からの熱を受けて蒸発する作動媒体を内包する蒸発器と、前記蒸発器からの作動媒体により駆動され前記冷却用水供給ポンプに動力を供給する冷却用水ポンプ駆動用タービンと、前記原子炉格納容器外部にあって前記外部への放熱によって前記作動媒体が凝縮する凝縮器と、前記蒸発器からの作動媒体により駆動され、前記凝縮器から凝縮した前記作動媒体を前記蒸発器へ送る作動媒体移送ポンプと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷却材漏えい時に、原子炉格納容器外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第1の実施形態の構成を示す概念図である。
【図2】本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第2の実施形態の構成を示す概念図である。
【図3】本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第3の実施形態の構成を示す概念図である。
【図4】本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第4の実施形態の構成を示す概念図である。
【図5】本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第5の実施形態の構成を示す概念図である。
【図6】本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第6の実施形態の構成を示す概念図である。
【図7】本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第7の実施形態の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る原子炉格納容器冷却システムの実施形態について説明する。ここで、同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第1の実施形態の構成を示す概念図である。
【0022】
原子炉容器2内に炉心1が設置され、原子炉容器2およびこれに接続する原子炉冷却系配管3内に原子炉冷却材が内包されている。原子炉容器2および原子炉冷却系配管3を原子炉格納容器4が格納しており、原子炉格納容器4は原子炉の通常運転時には密閉空間を構成する。
【0023】
原子炉格納容器4の外周には、原子炉建屋5が設けられており、原子炉建屋5の下端部には吸気口7が例えば地面との間に形成されている。原子炉建屋5は上部で半径が縮小し、排気口8を形成する。原子炉格納容器4と原子炉建屋5の間は環状流路6が形成され、吸気口7、環状流路6および排気口8を通じて空気の流路を形成する。
【0024】
原子炉格納容器4の上部には、上部冷却用水タンク143および原子炉格納容器4の外表面に冷却用水を散布するための上部散水管144が設けられている。上部散水管144には、原子炉の通常運転時には閉状態で、冷却材漏えい時には開状態となる散水弁145が設けられている。
【0025】
上部冷却用水タンク143には原子炉の通常運転時に冷却用水が貯留されているが、冷却材漏えい時に、上部冷却用水タンク143内の冷却用水を補給するために、外部水源150から冷却用水を上部冷却用水タンク143に移送するための冷却用水供給ポンプ141および送水管142が設けられている。
【0026】
ここで、外部水源150は、図示のような専用のタンクのようなものに限らず、冷却用水供給ポンプ141の入口に目詰り防止用のフィルタを用いる等の措置をすれば、貯水池、あるいは自然の河川や池等であってもよい。
【0027】
冷却用水供給ポンプ141は、冷却用水ポンプ駆動タービン122により駆動される。作動媒体のサイクルは、原子炉格納容器4内の凝縮水を回収する原子炉格納容器内サンプ9の貯留水中に設けられた蒸発器101、原子炉格納容器4の外部に設けられた凝縮器111、作動媒体を循環させる作動媒体移送ポンプ121および作動媒体移送ポンプ121を駆動する作動媒体駆動タービン123を有する。
【0028】
原子炉格納容器内サンプ9からは、原子炉容器2と接続し、原子炉格納容器内サンプ9から原子炉容器2側にドレン勾配有する戻り管10が設けられている。また、戻り管10には、原子炉の通常運転時に閉状態で漏えい時に開状態となる戻り弁11が設けられている。なお、原子炉格納容器内サンプ9から原子炉容器2への凝縮水の戻りの経路は、原子炉格納容器内サンプ9が、炉心の冠水のために原子炉容器2に注水する低圧炉心注水系などの系統の取水源となっているような場合のように、別の系統の働きによって原子炉容器2に戻ることでもよい。
【0029】
凝縮器111は、外部水源150に設けられている。なお、本実施形態では、冷却用水供給ポンプ141の取水源である外部水源150と同一の水源中に凝縮器111を設けているが、別の水源であってもよい。
【0030】
ここで、作動媒体は、代替フロン類、アンモニア等の大気圧において100℃以下の沸点を有する低沸点媒体である。
【0031】
(作用)
原子炉冷却系配管3等から原子炉冷却材が漏えいする原子炉冷却材漏えい時には、原子炉格納容器4内に漏えいした原子炉冷却材は、減圧により破断蒸気となって原子炉格納容器4内に拡散し、原子炉格納容器4内に封じ込められた状態となる。
【0032】
原子炉格納容器4の内部の温度が上昇すると、環状流路6内の空気が加熱され、自然対流によって、空気は、吸気口7から環状流路6に流入して環状流路6内を上昇し、排気口8から外部に放出される。
【0033】
原子炉格納容器4の内圧が上昇すると、上部冷却用水タンク143から原子炉格納容器4の外面に冷却用水が散水されるため、内部の破断流蒸気は原子炉格納容器4の内壁で凝縮し、そのまま凝縮水として内壁をつたって落下し、原子炉格納容器内サンプ9に集積する。原子炉容器内サンプ9と原子炉容器2の間を結ぶ戻り管10に設置された戻り弁11は、原子炉冷却材漏えい時には開状態となるため、原子炉格納容器内サンプ9に集積した凝縮水は重力により原子炉容器2内へ戻る。原子炉容器2内の原子炉冷却材は、炉心1からの崩壊熱のため、長期に加熱される。
【0034】
原子炉格納容器内サンプ9内に集積している凝縮水は、原子炉格納容器内サンプ9内に設置された蒸発器101の内部の低沸点媒体を加熱するため、蒸発器101内の低沸点媒体は蒸発する。発生した低沸点媒体の蒸気は蒸発器101出口から冷却用水ポンプ駆動タービン122および作動媒体ポンプ駆動タービン123に導かれ、冷却用水ポンプ駆動タービン122および作動媒体ポンプ駆動タービン123を駆動する。
【0035】
冷却用水ポンプ駆動タービン122および作動媒体ポンプ駆動タービン123で仕事をした低沸点媒体は、外部水源150内の凝縮器111で冷却され凝縮し、作動媒体移送ポンプ121によって蒸発器101へ送られる。
【0036】
冷却用水ポンプ駆動タービン122により駆動された冷却用水供給ポンプ141は、外部水源150から取水した冷却用水を送水管142を介して上部冷却用水タンク143に供給する。
【0037】
以上の構成により、原子炉格納容器4の外面冷却に必要な冷却水を、内部の炉心1の崩壊熱に由来する熱を用いて格納容器上部へ送水することができる。それにより上部冷却水タンク143の容量は、原子炉冷却材の漏洩直後から、凝縮水が原子炉格納容器サンプ9に溜まり、蒸発器101内の低沸点媒体を加熱できるようになるまでの冷却に必要な容量に縮小することができる。
【0038】
本実施形態によれば、冷却材漏えい時に、原子炉格納容器4の外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給することができる。
【0039】
また、上部冷却用水タンク143が設けられていることにより、冷却材漏えい直後から、散水弁145を開くことにより、上部冷却用水タンク143に貯留していた冷却用水を自然落下により原子炉格納容器4の外面に上部から散水することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態では、冷却材漏えいの発生直後から、上部冷却用水タンク143からの冷却用水の重力落下により原子炉格納容器4の外面に上部から散水することができる。また、原子炉格納容器内サンプ9に漏えいした原子炉冷却材が溜まった段階から、その熱を回収して冷却用水ポンプ駆動タービン122が冷却用水供給ポンプ141を駆動することにより、上部冷却用水タンク143の容量を超えて冷却を行うことができる。
【0041】
[第2の実施形態]
図2は、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第2の実施形態の構成を示す概念図である。
【0042】
本実施形態は第1の実施形態の変形であり、図示のように、第1の実施形態で設けられている上部用水タンク143が設けられておらず、冷却用水供給ポンプ141が、外部水源150からの冷却用水を、原子炉格納容器4の上部に供給する方式である。
【0043】
この場合においても、本実施形態では、冷却材漏えいの発生後、原子炉格納容器内サンプ9に漏えいした原子炉冷却材が溜まった段階から、その熱を回収して冷却用水ポンプ駆動タービン122が冷却用水供給ポンプ141を駆動することにより、第1の実施形態と同様の長期の冷却効果を得ることができる。
【0044】
[第3の実施形態]
図3は、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第3の実施形態の構成を示す概念図である。
【0045】
本実施形態は第1の実施形態の変形であり、作動媒体移送ポンプ121の駆動方式が異なっている。すなわち、冷却用水供給ポンプ141を駆動する冷却用水ポンプ駆動タービン122の軸に作動媒体移送ポンプ121が直結し、あるいはギアー等を介して機械的に結合している。作動媒体により駆動されるタービンの容量が第1の実施形態の場合に比べて大きくなるため、その分タービン効率が向上する。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、冷却材漏えい時に、原子炉格納容器4の外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給することができる。
【0047】
[第4の実施形態]
図4は、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第4の実施形態の構成を示す概念図である。
【0048】
本実施形態は第3の実施形態の変形であり、冷却用水供給ポンプ141および作動媒体移送ポンプ121は、冷却用水ポンプ駆動タービン122により駆動される発電機124から電力の供給を受ける。すなわち、崩壊熱により加熱された原子炉冷却材から作動媒体が受け取った熱エネルギを電気エネルギに変換する。
【0049】
冷却用水供給ポンプ141および作動媒体移送ポンプ121の駆動源が電力であることにより、ケーブルの引き回しにより電力を供給できるため、配置上の制約が減り、また、制御上も有利である。さらに、崩壊熱が大きい段階では、プラント内部の電動駆動の他機器への電力供給源あるいは計装電源として活用することが可能となる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、冷却材漏えい時に、原子炉格納容器4の外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給することができる。
【0051】
[第5の実施形態]
図5は、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第5の実施形態の構成を示す概念図である。
【0052】
本実施形態は第1の実施形態の変形であり、凝縮器111が原子炉格納容器4と原子炉建屋5の間に形成された環状流路6に設けられている。
【0053】
原子炉格納容器4の内部の温度の上昇により、環状流路6に空気の上昇流が形成されることから、凝縮器111内の作動媒体と環状流路6内の空気の上昇流との熱交換により、凝縮器111内の作動媒体が冷却され、第1の実施形態と同様の効果をもたらす。
【0054】
また、外部水源150は冷却用水供給ポンプ141で取水できるものであればよく、河川水や地下水など、凝縮器111の設置が困難な水源も適用することが可能となる。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、冷却材漏えい時に、原子炉格納容器4の外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給することができる。
【0056】
[第6の実施形態]
図6は、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第6の実施形態の構成を示す概念図である。
【0057】
本実施形態は第5の実施形態の変形であり、第5の実施形態では凝縮器111が環状流路6内に設けられているのに対して、本実施形態では冷却塔112内に設けられている。冷却塔112は、原子炉建屋5の外側に配置されており、空気の自然対流により冷却を行う。
【0058】
この場合は、原子炉格納容器4内の温度によらず冷却効果があることから、融通性のある設計ができる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、冷却材漏えい時に、原子炉格納容器4の外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給することができる。
【0060】
[第7の実施形態]
図7は、本発明に係る原子炉格納容器の冷却装置の第7の実施形態の構成を示す概念図である。
【0061】
蒸発・凝縮器102が原子炉容器2より高い位置に設置されている。蒸発・凝縮器102と原子炉容器2の間は入口配管132および出口配管133により接続され、入口配管132には入口弁134が、出口配管133には出口弁135が設けられている。入口弁134および出口弁135は原子炉格納容器4の外部から操作が可能である。
【0062】
熱交換器である蒸発・凝縮器102の管側は入口配管132と出口配管133に接続され蒸気状態の原子炉冷却材が凝縮し、胴側は作動媒体が流れ原子炉冷却材から受けた熱により蒸発する構成であり、構造上有利であることから原子炉冷却材が流れる領域を管としている。
【0063】
冷却材漏えい時には、入口弁134および出口弁135を開状態とすることにより、原子炉容器2内の原子炉冷却材を入口配管132を通じて蒸発・凝縮器102内に誘導し、蒸発・凝縮器102内部の作動媒体を蒸発させ、冷却用水ポンプ駆動タービン122および作動媒体ポンプ駆動タービン123へ誘導する。
【0064】
蒸発・凝縮器102において熱交換を行った原子炉冷却材は、温度低下もしくは凝縮に伴う密度差によって蒸発・凝縮器102から出口配管133を通じて原子炉容器2内に戻る。
【0065】
なお、本構成では、作動媒体を冷却用水供給ポンプ141の駆動用に使用するだけでなく、原子炉冷却材の原子炉格納容器4内への漏洩が起こっていない場合でも、作動媒体を蒸発・凝縮器102にて蒸発させることにより、原子炉容器2内の炉心1で発生する崩壊熱の除去に活用することが可能である。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、漏えい時に、原子炉格納容器4の外面に上部から散水する場合に、冷却用水を外部の動力源を用いずに補給することができる。
【0067】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、各実施形態では、水を冷却材に使用する原子炉について説明したが、冷却材として、溶融金属やガスを使用する原子炉についても適用できる。
【0068】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。例えば、凝縮器111の冷却方式と、蒸発器101の加熱方式は各実施形態のものを組み合わせてもよいし、複数の方式を併用してもよい。
【0069】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、作動媒体を使用してのポンプの駆動方式は、タービンについて説明したが、これと同等のものを使用してもよい。
【0070】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
1・・・炉心
2・・・原子炉容器
3・・・原子炉冷却系配管
4・・・原子炉格納容器
5・・・原子炉建屋
6・・・環状流路
7・・・吸気口
8・・・排気口
9・・・原子炉格納容器内サンプ
10・・・戻り管
11・・・戻り弁
101・・・蒸発器
102・・・蒸発・凝縮器
111・・・凝縮器
112・・・冷却塔
121・・・作動媒体移送ポンプ
122・・・冷却用水ポンプ駆動タービン
123・・・作動媒体ポンプ駆動タービン
124・・・発電機
131・・・伝熱管
132・・・入口配管
133・・・出口配管
134・・・入口弁
135・・・出口弁
141・・・冷却用水供給ポンプ
142・・・送水管
143・・・上部冷却用水タンク
144・・・上部散水管
145・・・散水弁
150・・・外部水源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心および原子炉冷却材を内包する原子炉容器と、前記原子炉容器を格納する原子炉格納容器と、前記原子炉容器からの前記原子炉冷却材の漏えい時に前記原子炉格納容器を外部から冷却する漏えい時冷却システムとを備える原子施設において、
前記漏えい時冷却システムは、
前記原子炉格納容器の外部壁面を冷却するための冷却用水を外部水源から前記原子炉格納容器の上方まで移送する冷却用水供給ポンプと、
漏えいした前記原子炉冷却材からの熱を利用して前記冷却用水供給ポンプへ動力を供給する冷却用水ポンプ動力供給部と、
を有することを特徴とする原子炉施設。
【請求項2】
前記冷却用水ポンプ動力供給部は、
前記原子炉格納容器内にあって前記原子炉冷却材からの熱を受けて蒸発する作動媒体を内包する蒸発器と、
前記蒸発器からの作動媒体により駆動され前記冷却用水供給ポンプに動力を供給する冷却用水ポンプ駆動タービンと、
前記原子炉格納容器外部にあって外部への放熱によって前記作動媒体が凝縮する凝縮器と、
前記蒸発器からの作動媒体により駆動され、前記凝縮器から凝縮した前記作動媒体を前記蒸発器へ送る作動媒体移送ポンプと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の原子炉施設。
【請求項3】
前記作動媒体移送ポンプは、前記冷却用水ポンプ駆動タービンと機械的に連結して駆動されることを特徴とする請求項2に記載の原子炉施設。
【請求項4】
前記作動媒体移送ポンプは、前記作動媒体により駆動される作動媒体ポンプ駆動タービンにより駆動されることを特徴とする請求項2に記載の原子炉施設。
【請求項5】
前記作動媒体移送ポンプは、前記冷却用水ポンプ駆動タービンによって駆動される発電機から電力の供給を受けて駆動されることを特徴とする請求項2に記載の原子炉施設。
【請求項6】
前記凝縮器は、前記外部水源に放熱することを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の原子炉施設。
【請求項7】
前記凝縮器は、前記原子炉格納容器外面と原子炉建屋の間の空気流路内に配設されることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の原子炉施設。
【請求項8】
前記凝縮器は、原子炉建屋外部に設けられた建屋空調系の冷却塔内に配設されることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の原子炉施設。
【請求項9】
前記蒸発器は、前記原子炉格納容器内に設けられた原子炉格納容器内の凝縮水を回収するサンプタンク内に配設されることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか一項に記載の原子炉施設。
【請求項10】
前記原子炉容器と前記蒸発器とを接続する蒸発器入口配管および蒸発器出口配管と、
前記蒸発器入口配管および前記蒸発器出口配管のそれぞれに配設された格納容器外側から操作可能な入口弁および出口弁と、
をさらに備え、
前記蒸発器は、前記原子炉容器よりも高い位置に配設される、
ことを特徴とする請求項2ないし請求項9のいずれか一項に記載の原子炉施設。
【請求項11】
原子炉容器からの原子炉冷却材の漏えい時に原子炉格納容器を外部から冷却する格納容器冷却システムにおいて、
前記原子炉格納容器の外部壁面を冷却するための冷却用水を前記原子炉格納容器の上方まで移送する冷却用水供給ポンプと、
漏えいした前記原子炉冷却材からの熱を利用して前記冷却用水供給ポンプへ動力を供給する冷却用水ポンプ動力供給部と、
を備え、
前記冷却用水ポンプ動力供給部は、
前記原子炉格納容器内にあって前記原子炉冷却材からの熱を受けて蒸発する作動媒体を内包する蒸発器と、
前記蒸発器からの作動媒体により駆動され前記冷却用水供給ポンプに動力を供給する冷却用水ポンプ駆動用タービンと、
前記原子炉格納容器外部にあって前記外部への放熱によって前記作動媒体が凝縮する凝縮器と、
前記蒸発器からの作動媒体により駆動され、前記凝縮器から凝縮した前記作動媒体を前記蒸発器へ送る作動媒体移送ポンプと、
を有することを特徴とする原子炉格納容器冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96928(P2013−96928A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241931(P2011−241931)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】