説明

原子炉燃料健全性モニタ

【課題】作業員の人手を介さずに原子炉の冷却材又は溶存ガスが定期的にサンプル採取点から採取され、冷却材又は溶存ガスに含まれる特定の放射性核種の濃度が測定可能な原子炉燃料健全性モニタを提供する。
【解決手段】原子炉燃料健全性モニタは、原子炉の被測定媒体の特定放射性核種のγ線を検出するγ線検出器と、被測定媒体を内部に保持し、γ線検出器の周囲を取り囲むサンプル容器と、一定量の被測定媒体をサンプル容器に取り込む制御を行うと共にγ線検出器が検出した単位時間当たりのγ線データと、サンプル容器に取り込まれる被測定媒体の容積から特定放射性核種の濃度を算出する計測制御装置と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉燃料の状態を監視する原子炉燃料健全性モニタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)や沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用する。原子炉の通常運転時に、原子炉冷却材は原子炉燃料の被覆管を冷却し被覆管の温度を低下させている。
【0003】
原子炉の通常運転時の原子炉燃料の健全性を確認するために、原子炉から定期的に、原子炉冷却材及び原子炉冷却材に溶存する溶存ガスを抜き取っている。そして、原子炉燃料から原子炉冷却材及び溶存ガスへ放出されるおそれのある特定の放射性核種の濃度が監視されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、原子炉冷却材に溶存する溶存ガスを抽出して、サンプルチェンバーに密封し、放射性ガスの放射線レベルをモニタする放射性ガス測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−235546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、原子炉冷却材に溶存する溶存ガスを抽出して、サンプルチェンバーに密封し、放射性ガス測定装置で測定する作業は、溶存ガスの抽出に時間を要する。また、溶存ガスをサンプルチェンバーに密封する作業は、作業員の人手を要する作業である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業員の人手を介さずに原子炉の冷却材又は溶存ガスが定期的にサンプル採取点から採取され、原子炉の冷却材又は溶存ガスに含まれる特定の放射性核種の濃度が測定可能な原子炉燃料健全性モニタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために本発明の原子炉燃料健全性モニタは、原子炉の被測定媒体の特定放射性核種のγ線を検出するγ線検出器と、前記被測定媒体を内部に保持し、前記γ線検出器の周囲を取り囲むサンプル容器と、一定量の前記被測定媒体を前記サンプル容器に取り込む制御を行うと共に前記γ線検出器が検出した単位時間当たりのγ線データと、前記サンプル容器に取り込まれる被測定媒体の容積から前記特定放射性核種の濃度を算出する計測制御装置と、を有することを特徴とする。
【0009】
サンプル容器がγ線検出器を前記被測定媒体が取り囲むような形状とされていることで、γ線検出器が検出できる被測定媒体の容積を増やすことができる。その結果、γ線検出器31が検出できるγ線の量が増えるので、γ線検出器31の検出効率を高めるために行っている被測定媒体の濃縮作業は不要となる。また、被測定媒体の供給を制御することにより一定量の被測定媒体をサンプル容器に取り込む制御を行うことで、定期的に作業員の人手をかけずに、サンプル容器に取り込まれる被測定媒体のγ線の測定が可能となる。また、本発明によれば、特定放射性核種毎の濃度を算出することが可能となる。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記サンプル容器は中空であって、スパイラル状に前記γ線検出器に巻き付けて取り囲んでいることが好ましい。
【0011】
サンプル容器が中空状なため、サンプル容器内の被測定媒体が残存することなく排出が効率よくできる。また、γ線検出器をスパイラル状に巻き付けて取り囲んでいるので、γ線検出器が検出できる被測定媒体の容積を増やすことができる。その結果、γ線検出器の検出出力が確保できる。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記被測定媒体が気体であって、前記特定放射性核種が放射性キセノンであることが好ましい。原子炉燃料から放射性キセノンが放出されるのであれば、警告を早期に発することができる。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記サンプル容器は凹部を有し、前記γ線検出器は前記凹部に配置されることが好ましい。これにより、γ線検出器の周囲を被測定媒体が取り囲み、γ線検出器が被測定媒体からのγ線を受ける量が増える。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記被測定媒体が原子炉の冷却材であって、前記特定放射性核種が放射性よう素であることが好ましい。原子炉燃料から放射性よう素が放出されるのであれば、警告を早期に発することができる。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記サンプル容器の入口側に活性アルミナカラムを有し、前記活性アルミナカラムを通過した後の前記冷却材が前記サンプル容器に取り込まれることが好ましい。作業員の人手を介さずに原子炉の冷却材が定期的に採取されても、妨害核種である放射性フッ素が放射性よう素と混在された状態でγ線検出器に供給されることはない。そして、放射性フッ素に妨害されずに、放射性よう素がγ線検出器で測定される。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために本発明の原子炉燃料健全性モニタは、原子炉の被測定媒体である気体が含む第1の特定放射性核種のγ線を検出する第1のγ線検出器と、前記気体を中空の内部に保持し、スパイラル状に前記第1のγ線検出器に巻き付けて取り囲んでいる第1のサンプル容器と、原子炉の被測定媒体である冷却材が含む第2の特定放射性核種のγ線を検出する第2のγ線検出器と、前記冷却材を内部に保持し、前記第2のγ線検出器を配置する凹部を有する第2のサンプル容器と、一定量の前記気体を前記第1のサンプル容器に取り込む制御及び一定量の前記冷却材を前記第2のサンプル容器に取り込む制御を行うと共に前記第1及び第2のγ線検出器が検出した単位時間当たりのγ線データと、前記第1及び第2のサンプル容器に取り込まれる被測定媒体の容積から前記第1及び第2の特定放射性核種の濃度を算出する計測制御装置と、を有することを特徴とする。本発明によれば、原子炉燃料を気体と、冷却水との両方で、特定放射性核種を監視することができる。その結果、二重に原子炉燃料の状態を把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業員の人手を介さずに原子炉の冷却材又は溶存ガスが定期的にサンプル採取点から採取され、冷却材又は溶存ガスに含まれる特定の放射性核種の濃度が測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、原子力プラントを示す模式図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る原子炉燃料健全性モニタの一例を示す模式図である。
【図3】図3は、計測制御装置を示す模式図である。
【図4】図4は、原子炉燃料の状態を監視する手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施形態2に係る原子炉燃料健全性モニタの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0020】
(実施形態1)
図1は、原子力プラントを示す模式図である。本実施形態において、原子力プラント1は、原子力発電設備である。原子力プラント1を構成する原子炉2は、加圧水型原子炉である。
【0021】
原子力プラント1は、格納容器1W内に原子炉2、蒸気発生器3、加圧器4、原子炉冷却材ポンプ5、再生熱交換器11が配置される。また、格納容器1Wの外には、タービン8、復水器9及び発電機10が配置される。原子炉2は、圧力容器の内部に原子炉燃料2Cが配置されている。また、前記圧力容器の内部には原子炉冷却材(冷却水に相当し、例えば軽水が用いられる)C1が満たされている。原子炉冷却材ポンプ5と原子炉2とは原子炉冷却材第1供給通路6Aで接続され、原子炉2と蒸気発生器3とは、原子炉冷却材第2供給通路6Bで接続される。また、蒸気発生器3と原子炉冷却材ポンプ5とは、原子炉冷却材回収通路6Cで接続される。
【0022】
原子炉冷却材ポンプ5から吐出された原子炉冷却材C1は、原子炉冷却材第1供給通路6Aを通って原子炉2の圧力容器内へ供給される。そして、圧力容器の内部に配置される原子炉燃料2Cの核分裂反応によって発生した熱エネルギーで原子炉冷却材C1が加熱される。加熱された原子炉冷却材C1は、原子炉冷却材第2供給通路6Bを通って蒸気発生器3へ供給される。そして、原子炉冷却材C1は、蒸気発生器3の伝熱管3Tを通過した後、蒸気発生器3から流出し、原子炉冷却材回収通路6Cを通って原子炉冷却材ポンプ5へ戻り、再び原子炉冷却材第1供給通路6Aから原子炉2の圧力容器内へ吐出される。
【0023】
蒸気発生器3は、前述した伝熱管3Tを複数備えており、伝熱管3T内を流れる原子炉冷却材C1によって伝熱管3T外の二次冷却材C2が加熱されて沸騰し、二次冷却材C2の高温高圧の蒸気が生成される。蒸気発生器3とタービン8とは、蒸気供給通路7Sで接続されており、復水器9と蒸気発生器3とは、二次冷却材回収通路7Rで接続されている。これによって、蒸気発生器3で生成された二次冷却材C2の高温高圧の蒸気は、蒸気供給通路7Sを通ってタービン8へ供給されて、タービン8を駆動する。そして、タービン8の駆動軸に連結された発電機10によって電力を発生させる。タービン8を駆動した後の二次冷却材C2は、復水器9で液相になり、二次冷却材回収通路7Rを通って再び蒸気発生器3へ送られる。
【0024】
原子炉2は、加圧水型原子炉であり、加圧器4が原子炉冷却材第2供給通路6Bに接続されている。そして、加圧器4が原子炉冷却材第2供給通路6B内の原子炉冷却材C1に圧力を与える。このような構造により、原子炉冷却材C1は、原子炉燃料2Cの核分裂反応によって発生した熱エネルギーで加熱されても沸騰せず、液相の状態で原子炉2及びその冷却系を循環する。ここで、原子炉2の冷却系は、原子炉冷却材ポンプ5、原子炉冷却材第1供給通路6A、原子炉冷却材第2供給通路6B、蒸気発生器3、原子炉冷却材回収通路6Cで構成される原子炉冷却材C1が流れる系である。
【0025】
原子炉冷却材C1に含まれる不純物を除去するため、脱塩塔16が設けられる。脱塩塔16は、第1脱塩塔16A及び第2脱塩塔16Bで構成されており、格納容器1Wの外側に設けられる。第1脱塩塔16Aは冷却材温床式脱塩塔であり、第2脱塩塔16Bは、冷却材陽イオン脱塩塔である。原子炉2の冷却系から脱塩塔16へは、原子炉冷却材ポンプ5の入口側(上流側)から取り出された原子炉冷却材C1が供給されて脱塩処理が施され、脱塩後の原子炉冷却材C1は、原子炉冷却材ポンプ5の出口側(下流側)に戻される。
【0026】
原子炉冷却材C1の脱塩処理系は、原子炉冷却材取り出し通路13A、再生熱交換器11、原子炉冷却材通路13B、非再生熱交換器12、原子炉冷却材通路13C、脱塩塔16、原子炉冷却材通路13D、体積制御タンク14、原子炉冷却材戻し通路13E、13Fで構成される。原子炉冷却材取り出し通路13Aは、原子炉2の冷却系を構成する原子炉冷却材回収通路6Cと再生熱交換器11とを接続している。再生熱交換器11と非再生熱交換器12とは原子炉冷却材通路13Bで接続されており、また、非再生熱交換器12と脱塩塔16とは原子炉冷却材通路13Cで接続される。
【0027】
脱塩塔16と体積制御タンク14とは原子炉冷却材通路13Dで接続されており、体積制御タンク14と再生熱交換器11とは原子炉冷却材戻し通路13Eで接続される。また、再生熱交換器11と原子炉冷却材第1供給通路6Aとは、原子炉冷却材戻し通路13Fで接続される。原子炉冷却材戻し通路13Eには充填ポンプ15が設けられている。
【0028】
原子炉冷却材C1は、原子炉冷却材取り出し通路13A、すなわち、原子炉冷却材ポンプ5の入口側(上流側)から取り出される。原子炉2の冷却系から取り出された原子炉冷却材C1は、再生熱交換器11へ導かれた後、原子炉冷却材通路13B、非再生熱交換器12、原子炉冷却材通路13Cを通って脱塩塔16へ導かれ、ここで脱塩処理される。脱塩処理された原子炉冷却材C1は、原子炉冷却材通路13Dを通って体積制御タンク14へ一時的に貯められた後、原子炉冷却材戻し通路13Eに設けられる充填ポンプ15によって再生熱交換器11へ送られる。再生熱交換器11を通過した原子炉冷却材C1は、原子炉冷却材戻し通路13Fを通って原子炉冷却材第1供給通路6A、すなわち、原子炉冷却材ポンプ5の出口側(下流側)に戻される。
【0029】
体積制御タンク14内部の原子炉冷却材C1は液相と気相に分かれており、原子炉冷却材C1と共に、気体Gを含む気相部14aが存在する。そして、体積制御タンク14には、溶存ガスである気相部14aの気体Gを一部採取可能な気相サンプル採取点21が設けられている。気相サンプル採取点21が設けられるのは、原子炉冷却材C1を内部に有し、液相と気相に分かれて存在するタンクであれば、体積制御タンク14に限られない。原子炉冷却材C1の脱塩処理系を構成する原子炉冷却材通路13Cには、原子炉冷却材C1の一部を採取可能な原子炉冷却材サンプル採取点25が設けられている。なお、原子炉冷却材サンプル採取点25が設けられるのは、原子炉冷却材通路13Cに限られない。
【0030】
図2は、実施形態1に係る原子炉燃料健全性モニタの一例を示す模式図である。図3は、計測制御装置を示す模式図である。図4は、原子炉燃料の状態を監視する手順を示すフローチャートである。
【0031】
図2に示すように、原子炉燃料健全性モニタ100は、放射性希ガス感知装置30と、計測制御装置80と、開閉弁41、42と、弁制御部43、44とを含んでいる。放射性希ガス感知装置30は、気相サンプル採取点21と、排気処理接続点45との間に配置され、気体通路24A、気体通路24C、気体通路46を介して気相サンプル採取点21及び排気処理接続点45に接続されている。気相サンプル採取点21から供給される気体Gは、気体通路24Aから分岐点23で気体通路24Cと気体通路24Bとに分岐する。気体通路24Bに分岐した気体Gは、分析装置22へ供給されている。
【0032】
放射性希ガス感知装置30は、γ線検出器31と、サンプル容器であるサンプルループ32と、鉛遮蔽33とを含んでいる。原子炉冷却材C1には、放射性希ガスとして、放射性アルゴン(Ar−41)、放射性クリプトン(Kr−85、Kr−85m、Kr−87)、放射性キセノン(Xe−133、Xe−135)が溶存することがある。原子炉燃料の状態を監視するためには、放射性キセノン(Xe−133、Xe−135)の濃度を監視することが重要である。放射性希ガス感知装置30は、放射性キセノン(Xe−133、Xe−135)を検出可能となっている。
【0033】
γ線検出器31は、例えば、NaIシンチレーション検出器又はGe半導体検出器が用いられる。NaIシンチレーション検出器及びGe半導体検出器は、γ線スペクトルを得ることができる。Ge半導体検出器よりもNaIシンチレーション検出器の方が検出効率は高く、かつメンテナンス性がよいので、後者をγ線検出器31として用いることが好ましい。NaIシンチレーション検出器の分解能は、全半値幅(FWHM(Full width at half maximum))で80keV程度である。そこで、NaIシンチレーション検出器は、Xe−133が放出する81.0keVのγ線と、Xe−135が放出する249.7keVのγ線は分別測定することができる。Xe−133及びXe−135の各々のエネルギー領域の計数率が分別算出されることにより、Xe−133及びXe−135の両放射性核種の定量が可能である。なお、NaIシンチレーション検出器は、NaIシンチレーション検出器の周囲を定温に保つことがノイズ防止の観点で好ましい。
【0034】
γ線検出器31の分解能を高めて、Xe−133及びXe−135の両放射性核種以外の放射性希ガスを検出する場合、γ線検出器31としては、NaIシンチレーション検出器よりもGe半導体検出器の方が好ましい。しかし、Ge半導体検出器は、NaIシンチレーション検出器のγ線感度の10%程度であるので、Ge半導体検出器をγ線検出器31として用いる場合には、被測定媒体である気体Gの容積を増やすことが好ましい。
【0035】
サンプルループ32は、被測定媒体である気体Gを内部に保持するサンプル容器である。サンプルループ32は、チューブ形状をしており、中空な内部に被測定媒体である気体Gを保持することができる。サンプルループ32は中空なチューブ形状をしているので気体Gがパージされやすい。このため、サンプルループ32内に新たな被測定媒体を供給して置き換えることが容易である。
【0036】
サンプルループ32は、γ線検出器31の周囲を取り囲むように配置される。例えば、図2に示すように、サンプルループ32は、γ線検出器31の周囲にスパイラル状に巻き付けられて、γ線検出器31の周囲を取り囲んでいる。サンプルループ32に保持されるγ線検出器31の周囲を被測定媒体である気体Gが取り囲んでいる。サンプルループ32の内容積と、γ線検出器31の周囲をスパイラル状に巻き付ける回数とは、被測定媒体である気体Gに含まれる放射性核種の濃度に合わせて設定される。例えば、γ線検出器31がNaIシンチレーション検出器である場合、サンプルループ32の内容積は20ml程度である。
【0037】
また、サンプルループ32が劣化した場合又は内容積を変更する場合にサンプルループ32を取り替える必要がある。このため、サンプルループ32は、γ線検出器31の周囲から取り外しでき、かつ交換可能となっていることが好ましい。
【0038】
鉛遮蔽33は、鉛の板である。鉛遮蔽33は、可能な限り厚みを厚くし、少なくともγ線検出器31と、サンプルループ32とを取り囲むように配置されている。鉛遮蔽33は、放射性希ガス感知装置30の外部からγ線検出器31へγ線が到達するのを防止する。
【0039】
気体通路24A、気体通路24C、気体通路46は、管状であって、気体Gを通気する。開閉弁41は、気体通路24Cに接続され、放射性希ガス感知装置30へ気体通路24Cから供給する気体Gの量を調整できる。開閉弁42は、気体通路46に接続され、放射性希ガス感知装置30から気体通路46へ排気する気体Gの量を調整できる。弁制御部43、44は、開閉弁41、42の開閉度合いを制御する。
【0040】
図2に示すように、気相サンプル採取点21から供給される気体Gが気体通路24Aに供給される。気体通路24Aは、分岐点23へ気体Gを供給する。分岐点23は、気体Gを気体通路24Bと気体通路24Cとに分配する。
【0041】
放射性希ガス感知装置30は、気体通路24Cから供給される気体Gを、開閉弁41を介して受け入れ可能にしている。また、開閉弁41、42が開いていると気体通路24Cから供給される気体Gに押し出されて、放射性希ガス感知装置30内の気体は、開閉弁42を介して気体通路46へ放出される。排気処理接続点45は、気体通路46から供給される気体Gが適切に処理される設備へ接続されている。
【0042】
放射性希ガス感知装置30のγ線検出器31は、計測制御装置80と接続されている。そして、γ線検出器31は、計測制御装置80と計測データisや指示信号を送受可能なように電気的に接続される。
【0043】
計測制御装置80は、開閉弁41の開閉度合いを制御する弁制御部43及び開閉弁42の開閉度合いを制御する弁制御部44への指示信号idを送出可能なように、弁制御部43と弁制御部44とに電気的に接続されている。
【0044】
また、気体通路24Bから供給された気体Gは、分析装置22へ移動する。例えば、分析装置22では、気体Gが含んでいる水素又は酸素の濃度等が検出される。実施形態1の原子炉燃料健全性モニタ100は、気相サンプル採取点21及び気体通路24Aを分析装置22と共用する。
【0045】
図3に示すように、計測制御装置80は、入力処理回路81と、入力ポート82と、処理部90と、記憶部94と、出力ポート83と、出力処理回路84と、表示装置85、必要があればキーボードなどの入力装置86とを有する。処理部90は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)91と、RAM92と、ROM93とを含んでいる。
【0046】
処理部90と、記憶部94と、入力ポート82及び出力ポート83とは、バス87、バス88、バス89を介して接続される。バス87、バス88及びバス89により、処理部90のCPU91は、記憶部94と、入力ポート82及び出力ポート83と相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。
【0047】
入力ポート82には、入力処理回路81が接続されている。入力処理回路81には、γ線検出器31からの計測データisが接続されている。そして、放射性希ガス感知装置30のγ線検出器31から出力される計測データisは、入力処理回路81に備えられるノイズフィルタやA/Dコンバータ等により、処理部90が利用できる信号に変換されてから、入力ポート82を介して処理部90へ送られる。これにより、処理部90は、放射性核種の濃度を算出するために必要な情報を取得することができる。
【0048】
出力ポート83には、出力処理回路84が接続されている。出力処理回路84には、表示装置85や、外部出力用の端子が接続されている。出力処理回路84は、表示装置制御回路、開閉弁の弁制御信号回路、信号増幅回路等を備えている。出力処理回路84は、処理部90で算出した放射性核種の濃度を、表示装置85に表示させる表示信号として出力したり、γ線検出器31及び弁制御部43、44へ伝達する指示信号idとして出力したりする。表示装置85は、例えば液晶表示パネルやCRT(Cathode Ray Tube)等を用いることができる。
【0049】
記憶部94には、原子炉燃料の状態を監視する手順を含むコンピュータプログラム及び放射性核種の濃度計測データのデータベース等が格納されている。ここで、記憶部94は、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ハードディスクドライブあるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0050】
上記コンピュータプログラムは、処理部90へすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、原子炉燃料の状態を監視する手順を実行するものであってもよい。また、この計測制御装置80は、コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、原子炉燃料の状態を監視する手順を実行するものであってもよい。
【0051】
また、原子炉燃料の状態を監視する手順は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション、あるいはプラント制御用コンピュータ等のコンピュータシステムで実行することによって実現することもできる。また、このプログラムは、ハードディスク等の記録装置、フレキシブルディスク(FD)、ROM、CD−ROM、MO、DVD、フラッシュメモリなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
【0052】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線網を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0053】
次に、図2、図3、図4を参照して、原子炉燃料の状態を監視する手順について説明する。まず、図2、図3に示す計測制御装置80が有する処理部90のCPU91は、入力装置86から入力された測定要求を、入力処理回路81及び入力ポート82を介して受け付け、RAM92又は記憶部94へ一時保存する(ステップS101)。あるいは、CPU91は、所定時間毎に繰り返される測定要求を予めRAM92又は記憶部94に保存している。CPU91は、測定要求をトリガーとして、開閉弁41、42の開閉度合いを制御する弁制御部43、44へ伝達する弁制御の指示信号を生成する。
【0054】
次に、CPU91は、出力ポート83を介して弁開放の指示信号を出力信号処理回路84から弁制御部43、44へ出力する。弁開放の指示信号を受け付けた弁制御部43、44は、開閉弁41、42を開放し、サンプルループ32内に被測定媒体である気体Gを気体通路24Cから供給するとともに、供給される気体Gでサンプルループ32内に残存する気体Gを押し出しすべて排気する。なお、排気は開閉弁41に三方弁を使用する等しておこなっても良い。次に、CPU91の弁閉鎖の指示信号に基づき、弁制御部44が開閉弁42を閉鎖する。次に、CPU91の弁閉鎖の指示信号に基づき、弁制御部43が開閉弁41を閉鎖し、サンプルループ32内に気体Gを密封する。そして、気体通路24Cから供給される気体Gでサンプルループ32内に残存する気体Gを押し出しすべて排気するので、サンプルループ32内の残存する気体から新たな被測定媒体の気体Gに置き換えられる(ステップS102)。
【0055】
次に、CPU91は、出力ポート83を介して指示信号idを出力信号処理回路84から放射性希ガス感知装置30へ出力する。この指示信号idを受け付けた放射性希ガス感知装置30のγ線検出器31は、測定を開始する。γ線検出器31が、例えば、NaIシンチレーション検出器である場合には、γ線検出器31の計測時間は600秒から1000秒である。そして、γ線検出器31の計測データisは、計測制御装置80へ入力される(ステップS103)。
【0056】
計測制御装置80は、入力されたγ線検出器31の計測データisから、Xe−133及びXe−135の各々のエネルギー領域の計数率を分別算出する。CPU91では、予めRAM92又は記憶部94へ保存されたサンプルループ32の内容積のデータと、Xe−133及びXe−135の各々のエネルギー領域の計数率とから、Xe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度を算出する。具体的には、Xe−133及びXe−135の各々のエネルギー領域おける、単位時間当たりの信号数をサンプルループ32の内容積で除した値が各々の放射性核種の濃度となる。
【0057】
CPU91は、Xe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度をRAM92又は記憶部94へ保存する。CPU91は、RAM92又は記憶部94に保存してある前回のXe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度の計測データがあるかどうかを照会し、前回のXe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度がある場合には、前回のXe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度と、今回のXe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度とを比較する。前回のXe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度の計測データがRAM92又は記憶部94に保存していない場合には、原子炉燃料の状態を監視する手順がステップS101に戻る。Xe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度変化率が例えば50%/週以内であれば、Xe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度が変化なし(ステップS104、No)として、原子炉燃料の状態を監視する手順がステップS101に戻る。Xe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度変化率が例えば50%/週を超える場合、Xe−133及びXe−135の各々の放射性核種の濃度が変化あり(ステップS104、Yes)としてステップS105に進む。そして、CPU91は、表示装置85に警告表示を出力する(ステップS105)。その後、再度計測が必要な場合、CPU91は、計測終了判断を否定し(ステップS106、No)、測定要求ステップS101に戻り、測定を継続する。再度計測が必要無い場合、CPU91は、計測終了判断を肯定し(ステップS106、Yes)測定を終了する。
【0058】
実施形態1の原子炉燃料健全性モニタ100は、原子炉の被測定媒体の特定放射性核種のγ線を検出するγ線検出器31と、γ線検出器31を被測定媒体が取り囲むような形状とされているサンプル容器であるサンプルループ32と、開閉弁41、42を制御することにより一定量の被測定媒体である気体Gをサンプルループ32に取り込む制御を行うと共にγ線検出器31が検出した単位時間当たりのγ線データと、サンプルループ32に取り込まれる被測定媒体である気体Gの容積から特定放射性核種の濃度を算出する計測制御装置80とを有する。これにより、作業員の人手を介さずに原子炉の原子炉冷却材C1に含まれる溶存ガスが気体Gとして、定期的に気相サンプル採取点21から採取され、気体Gに含まれる特定の放射性核種の濃度が測定可能となる。サンプルループ32は、γ線検出器31を被測定媒体である気体Gが取り囲むような形状とされているので、γ線検出器31が検出できる被測定媒体の容積を増やすことができる。γ線検出器31が検出できるγ線の量が増えるので、γ線検出器31の検出効率を高めるために行っている被測定媒体の濃縮作業は不要となる。また、開閉弁41、42を制御することにより一定量の被測定媒体をサンプル容器に取り込む制御を行うことで、作業員の人手を要さずに、定期的にサンプルループ32に取り込まれる被測定媒体のγ線の測定が可能となる。また、実施形態1の原子炉燃料健全性モニタ100は、特定放射性核種毎の濃度を算出することが可能となる。
【0059】
また、サンプル容器であるサンプルループ32が中空であって、γ線検出器31にスパイラル状に巻き付けられて、サンプルループ32内の気体Gが取り囲んでいる。サンプルループ32が中空なため、新たな被測定媒体を流し込むとサンプルループ32の古い気体が残存することなく被測定媒体の置き換えが実現できる。このため、サンプルループ32内に新たな被測定媒体である気体Gが入ると古い気体が押し出され置き換えられる。
【0060】
被測定媒体が気体Gであって、特定放射性核種が放射性キセノンであるので、原子炉燃料2Cから放射性キセノンが放出されるのであれば、警告を早期に発することができる。実施形態1の原子炉燃料健全性モニタ100は、定期的に測定要求を放射性希ガス感知装置30に行えば、気体Gに含まれる特定の放射性核種の濃度を一定期間毎に、連続的に測定できる。
【0061】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る原子炉燃料健全性モニタの一例を示す模式図である。なお、前述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0062】
図5に示すように、原子炉燃料健全性モニタ200は、放射性よう素感知装置50と、計測制御装置80と、開閉弁71、72と、弁制御部73、74と、前処理設備である活性アルミナカラム61及び脱気装置62とを含んでいる。放射性よう素感知装置50は、原子炉冷却材サンプル採取点25と、排水処理接続点75との間に配置され、原子炉冷却材通路26A、活性アルミナカラム61、原子炉冷却材通路26B、脱気装置62、原子炉冷却材通路26C、原子炉冷却材通路76を介して原子炉冷却材サンプル採取点25及び排水処理接続点75に接続されている。
【0063】
放射性よう素感知装置50は、少なくともγ線検出器51と、サンプル容器52と、鉛遮蔽53とを含んでいる。また、放射性よう素感知装置50は、電子冷却装置54を有する。なお、電子冷却装置54は、必要に応じて設ければよく、必須の装置ではない。原子炉冷却材C1には、放射性核種として、放射性よう素(I−131、I−132、I−133、I−134、I−135)、放射性フッ素(F−18)、放射性アルゴン(Ar−41)が溶存されることがある。原子炉燃料の状態を監視するためには、放射性よう素(I−131、I−132、I−133、I−134、I−135)のうち、放射性よう素(I−131、I−133、I−135)の濃度を監視することが重要である。放射性よう素感知装置50は、放射性よう素(I−131、I−132、I−133、I−134、I−135)を感知可能となっている。
【0064】
γ線検出器51は、例えば、NaIシンチレーション検出器又はGe半導体検出器が用いられる。γ線検出器51は、検出効率又はメンテナンス性よりも分解能を優先するため、NaIシンチレーション検出器よりもGe半導体検出器の方が好ましい。
【0065】
図5に示すように、サンプル容器52は、γ線検出器51を挿入するサンプル容器凹部52aを有している。サンプル容器52が保持する被測定媒体である原子炉冷却材C1がγ線検出器51の周囲を取り囲んでいる。γ線検出器51の周囲を被測定媒体である原子炉冷却材C1が取り囲むので、γ線検出器51が被測定媒体である原子炉冷却材C1からのγ線を受ける量が増える。例えば、放射性よう素を陰イオン交換フィルタで濃縮捕集してからγ線検出器51に密着させて検出する従来の方法では、原子炉冷却材C1は、10mlから50mlが使用されていた。実施形態2のサンプル容器52は、原子炉冷却材C1が100mlから200mlの容積で保持される。そして、被測定媒体でγ線検出器51の周囲が取り囲まれることで、γ線検出器51は、放射性よう素を陰イオン交換フィルタで濃縮捕集してからγ線検出器51に密着させて検出する従来の方法と同程度の感度で、サンプル容器52中の原子炉冷却材C1からの放射性よう素に起因するγ線を検知できる。
【0066】
サンプル容器52は、被測定媒体である原子炉冷却材C1の液面を上方へ押し上げる容積調節部52bを有している。容積調節部52bを有しているので余分な気体の気泡がγ線検出器51の周囲から取り除かれる。その結果、γ線検出器51の周囲に存在する原子炉冷却材C1の容積は一定となる。
【0067】
また、原子炉燃料健全性モニタ200は、被測定媒体である原子炉冷却材C1が含む放射能濃度に応じて容積を変更したサンプル容器52を複数準備しておき、適切な容積のサンプル容器52をγ線検出器51の周囲に取り付け可能となっている。サンプル容器52は、取り替え可能であるので、取り替え時に、サンプル容器52の容器内を洗浄できる。
【0068】
鉛遮蔽53は、鉛の板である。鉛遮蔽53は、少なくともγ線検出器51と、サンプル容器52とを取り囲むように配置されている。鉛遮蔽53は、放射性よう素感知装置50の外部からγ線検出器51へγ線が到達するのを防止するため、可能な限り厚みを厚くするのが好ましい。
【0069】
γ線検出器51がGe半導体検出器である場合には、Ge半導体検出器の漏れ電流やノイズを低減するため、電子冷却装置54をGe半導体検出器へ接続する。電子冷却装置54は、Ge半導体検出器を、例えば液体窒素と同程度の温度に冷却する。電子冷却装置54ではなく、液体窒素を使用して、Ge半導体検出器が冷却されてもよい。
【0070】
図5に示すように、放射性よう素感知装置50は、原子炉冷却材サンプル採取点25から採取された原子炉冷却材C1が、原子炉冷却材通路26Aと、前処理設備である活性アルミナカラム61と、原子炉冷却材通路26Bと、前処理設備である脱気装置62と、原子炉冷却材通路26Cと、開閉弁71とを介して、通水されている。放射性よう素感知装置50は、開閉弁72と、原子炉冷却材通路76とを介して排水処理接続点75へ原子炉冷却材C1を放出可能にしている。排水処理接続点75は、原子炉冷却材通路76から供給される原子炉冷却材C1を適切に処理できる設備に接続されている。また、放射性よう素感知装置50のγ線検出器51は、計測制御装置80と接続されている。そして、γ線検出器51の計測データisは、計測制御装置80へ入力される。また、計測制御装置80の指示信号idは、γ線検出器51へ入力可能とされる。
【0071】
計測制御装置80は、開閉弁71の開閉度合いを制御する弁制御部73及び開閉弁72の開閉度合いを制御する弁制御部74への指示信号idを送出可能なように、弁制御部73と弁制御部74とに接続されている。計測制御装置80は、実施形態1で説明したものと同様である。
【0072】
前処理設備である活性アルミナカラム61は、活性アルミナが充填されたカラムであり、原子炉冷却材サンプル採取点25から注入される原子炉冷却材C1を通水可能となっている。
【0073】
原子炉冷却材C1に含まれる放射性フッ素(F−18)は、放射性よう素(I−131、I−132、I−133、I−134、I−135)をγ線検出器51で分析する妨害核種となる。一般的には、原子炉冷却材C1は、陰イオン交換フィルタに通水され、陰イオン交換フィルタに放射性フッ素と放射性よう素とが濃縮捕集される。そして、放射性フッ素が短半減期核種であるので、放射性フッ素の崩壊を待ってから、放射性よう素がγ線検出器で分析されていた。γ線計測の検出感度は、γ線検出器と測定対象のサンプルとの位置関係に大きく影響を受ける。陰イオン交換フィルタ上に捕集した放射性よう素は、γ線検出器に密着させて測定可能となるので、検出効率は高いが、作業員の人手を介さずに自動化することは費用の面からも機構の面からも難しい。一般的な方法では、放射性フッ素の崩壊に時間を要すること及び濃縮捕集に人手を要する。このため、作業員の人手を介さずに原子炉の原子炉冷却材C1を定期的に原子炉冷却材サンプル採取点25から採取し、採取した原子炉冷却材C1に含まれる特定の放射性核種の濃度を測定することは困難であった。
【0074】
実施形態2の活性アルミナカラム61は、原子炉冷却材C1が通水されると、活性アルミナに放射性フッ素が吸着され、放射性フッ素が取り除かれた原子炉冷却材C1が脱気装置62へと排出される。このため、実施形態2の原子炉燃料健全性モニタ200は、作業員の人手を介さずに原子炉の原子炉冷却材C1が定期的に原子炉冷却材サンプル採取点25から採取されても、妨害核種である放射性フッ素が放射性よう素感知装置50へ供給されることはない。なお、活性アルミナカラム61は、定期的に交換可能とされている。
【0075】
また、原子炉冷却材C1に含まれる放射性アルゴン(Ar−41)は、放射性フッ素(F−18)と同様に、放射性よう素(I−131、I−132、I−133、I−134、I−135)をγ線検出器51で分析する妨害核種となる。放射性アルゴン(Ar−41)は、活性アルミナカラム61では除去されない。そこで、活性アルミナカラム61からの原子炉冷却材C1を脱気装置62へ通水する。脱気装置62は、放射性アルゴン(Ar−41)を除去し、放射性アルゴン(Ar−41)が取り除かれた原子炉冷却材C1を放射性よう素感知装置50へ排出する。また、脱気装置62は、放射性アルゴン(Ar−41)以外の原子炉冷却材C1に溶存する溶存ガスも除去する。
【0076】
実施形態2では、原子炉冷却材C1は、活性アルミナカラム61、脱気装置62の順番で前処理されて、放射性フッ素(F−18)と放射性アルゴン(Ar−41)とが取り除かれる。なお、活性アルミナカラム61と脱気装置62とが配置される順番は逆でもよい。また、原子炉冷却材C1に放射性ナトリウム(Na−24)が含まれていて、放射性よう素をγ線検出器51で分析する妨害核種となる場合には、前処理としてさらに、陽イオン交換カラムを増設してもよい。
【0077】
次に、図3、図4、図5を参照して、原子炉燃料の状態を監視する手順について説明する。まず、図3、図5に示す計測制御装置80が有する処理部90のCPU91は、入力装置86から入力された測定要求を、入力処理回路81及び入力ポート82を介して受け付け、RAM92又は記憶部94へ一時保存する(ステップS101)。あるいは、CPU91は、所定時間毎に繰り返される測定要求を予めRAM92又は記憶部94に保存している。CPU91は、測定要求を変換し、開閉弁71、72の開閉度合いを制御する弁制御部73、74へ伝達する指示信号idとする(ステップS101)。
【0078】
次に、CPU91は、出力ポート83を介して弁開放の指示信号を出力信号処理回路84から弁制御部73、74へ出力する。弁開放の指示信号を受け付けた弁制御部73、74は、開閉弁71、72を開放し、サンプル容器52内に被測定媒体である原子炉冷却材C1を原子炉冷却材通路26Cから供給するとともに、供給される原子炉冷却材C1でサンプル容器52内に残存する原子炉冷却材C1を排出する。次に、CPU91の弁閉鎖の指示信号に基づき、弁制御部74が開閉弁72を閉鎖する。次に、CPU91の弁閉鎖の指示信号に基づき、弁制御部73が開閉弁71を閉鎖し、サンプル容器52内に原子炉冷却材C1を密封する。そして、原子炉冷却材通路26Cから供給される原子炉冷却材C1でサンプル容器52内の残存する原子炉冷却材C1から新たな被測定媒体の原子炉冷却材C1に置き換えられる(ステップS102)。原子炉冷却材C1には、短半減期核種を含む可能性があるので、減衰時間が例えば80分程度とられることが好ましい。
【0079】
次に、CPU91は、出力ポート83を介して指示信号idを出力信号処理回路84から放射性よう素感知装置50へ出力する。この指示信号idを受け付けた放射性よう素感知装置50のγ線検出器51は、測定を開始する。γ線検出器51が例えば、Ge半導体検出器である場合には、γ線検出器51の計測時間は15分である。そして、γ線検出器51の計測データisは、計測制御装置80へ入力される(ステップS103)。
【0080】
計測制御装置80は、入力されたγ線検出器51の計測データisから、I−131、I−132、I−133、I−134、I−135の各々のエネルギー領域の計数率を分別算出する。CPU91では、予めRAM92又は記憶部94へ保存されたサンプル容器52の内容積のデータと、I−131、I−132、I−133、I−134、I−135の各々のエネルギー領域の計数率とから、I−131、I−132、I−133、I−134、I−135の各々の放射性核種の濃度を算出する。具体的には、I−131、I−132、I−133、I−134、I−135の各々のエネルギー領域おける、単位時間当たりの信号数をサンプル容器52の内容積で除した値が各々の放射性核種の濃度となる。
【0081】
CPU91は、I−131、I−132、I−133、I−134、I−135の各々の放射性核種の濃度をRAM92又は記憶部94へ保存する。CPU91は、RAM92又は記憶部94に保存してある前回のI−131、I−133、I−135の各々の放射性核種の濃度の計測データがあるかどうかを照会し、前回のI−131、I−133、I−135の各々の放射性核種の濃度の計測データがある場合には、と、前回のI−131、I−133、I−135の各々の放射性核種の濃度と今回のI−131、I−133、I−135の各々の放射性核種の濃度とを比較する。前回のI−131、I−133、I−135の各々の放射性核種の濃度の計測データがRAM92又は記憶部94に保存していない場合には、原子炉燃料の状態を監視する手順がステップS101に戻る。放射性よう素(I−131、I−133、I−135)の各々の放射性核種の濃度変化率が例えば50%/週以内であれば、放射性よう素(I−131、I−133、I−135)の各々の放射性核種の濃度が変化なし(ステップS104、No)として、原子炉燃料の状態を監視する手順がステップS101に戻る。放射性よう素(I−131、I−133、I−135)の各々の放射性核種の濃度変化率が例えば50%/週を超える場合、放射性よう素(I−131、I−133、I−135)の各々の放射性核種の濃度が変化あり(ステップS104、Yes)として次のステップに進む。そして、CPU91は、表示装置85に警告表示を出力する(ステップS105)。その後、再度計測が必要な場合、CPU91は、計測終了判断を否定し(ステップS106、No)、測定要求ステップS101に戻り、測定を継続する。再度計測が必要無い場合、CPU91は、計測終了判断を肯定し(ステップS106、Yes)測定を終了する。
【0082】
実施形態2の原子炉燃料健全性モニタ200は、原子炉の被測定媒体の特定放射性核種のγ線を検出するγ線検出器51と、γ線検出器51を被測定媒体が取り囲むような形状とされているサンプル容器52と、開閉弁71、72を制御することにより一定量の被測定媒体である原子炉冷却材C1をサンプル容器52に取り込む制御を行うと共にγ線検出器51が検出した単位時間当たりのγ線データと、サンプル容器52に取り込まれる被測定媒体である原子炉冷却材C1の容積から特定放射性核種の濃度を算出する計測制御装置80とを有する。これにより、作業員の人手を介さずに原子炉の原子炉冷却材C1が定期的に原子炉冷却材サンプル採取点25から採取され、原子炉冷却材C1に含まれる特定の放射性核種の濃度が測定可能となる。サンプル容器52は、γ線検出器51を被測定媒体である原子炉冷却材C1が取り囲むような形状とされていることで、γ線検出器51が検出できる被測定媒体の容積を増やすことができる。γ線検出器31が検出できるγ線の量が増えるので、γ線検出器31の検出効率を高めるために行っている被測定媒体の濃縮作業は不要となる。また、開閉弁71、72を制御することにより一定量の被測定媒体をサンプル容器52に取り込む制御を行うことで、定期的に作業員の人手をかけずに、サンプル容器52に取り込まれる被測定媒体のγ線の測定が可能となる。また、実施形態2の原子炉燃料健全性モニタ200は、特定放射性核種毎の濃度を算出することが可能となる。
【0083】
サンプル容器52にサンプル容器凹部52aを備え、γ線検出器51をサンプル容器凹部52aに挿入するので、γ線検出器51の周囲を被測定媒体である原子炉冷却材C1が取り囲み、γ線検出器51が被測定媒体である原子炉冷却材C1からのγ線を受ける量が増える。
【0084】
また、原子炉燃料2Cから放射性よう素が放出されるのであれば、警告を早期に発することができる。実施形態2の原子炉燃料健全性モニタ200では、定期的に測定要求を放射性よう素感知装置50に行えば、原子炉冷却材C1に含まれる特定の放射性核種の濃度が一定期間毎に連続的な測定が行われる。
【0085】
また、被測定媒体である原子炉冷却材C1を活性アルミナカラム61に通水してサンプル容器52に取り込むので、作業員の人手を介さずに原子炉の原子炉冷却材C1が定期的に原子炉冷却材サンプル採取点25から採取されても、妨害核種である放射性フッ素が放射性よう素感知装置50へ供給されることはない。そして、放射性フッ素に妨害されずに、放射性よう素がγ線検出器51で測定される。
【0086】
原子力プラント1には、実施形態1の原子炉燃料健全性モニタ100と、実施形態2の原子炉燃料健全性モニタ200とが両方接続されていてもよい。この場合、原子炉燃料健全性モニタ100が第1の特定放射性核種のγ線を検出する第1のγ線検出器と、第1のサンプル容器とを有し、原子炉燃料健全性モニタ200が第2の特定放射性核種のγ線を検出する第2のγ線検出器と、第2のサンプル容器とを有することになる。また、計測制御装置80は、一定量の前記気体を前記第1のサンプル容器に取り込む制御及び一定量の前記冷却材を前記第2のサンプル容器に取り込む制御を行うと共に、前記第1及び第2のγ線検出器が検出した単位時間当たりのγ線データと、前記第1及び第2のサンプル容器に取り込まれる被測定媒体の容積から前記第1及び第2の特定放射性核種の濃度を算出する。両方の原子炉燃料健全性モニタ100、200を有することにより、気体Gと原子炉冷却材C1との両方の計測結果に基づいて原子炉燃料の状態を監視することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係る原子炉燃料健全性モニタは、原子炉に有用であり、特に、原子炉燃料の健全性を評価することに適している。
【符号の説明】
【0088】
1 原子力プラント
1W 格納容器
2 原子炉
2C 原子炉燃料
3 蒸気発生器
3T 伝熱管
4 加圧器
5 原子炉冷却材ポンプ
13A 原子炉冷却材取り出し通路
13B、13C、13D 原子炉冷却材通路
13E、13F 原子炉冷却材戻し通路
14 体積制御タンク
14a 気相部
15 充填ポンプ
16 脱塩塔
21 気相サンプル採取点
22 分析装置
23 分岐点
24A、24B、24C 気体通路
25 原子炉冷却材サンプル採取点
26A、26B、26C 原子炉冷却材通路
30 放射性希ガス感知装置
31 γ線検出器
32 サンプルループ
33 鉛遮蔽
41、42 開閉弁
43、44 弁制御部
45 排気処理接続点
46 気体通路
50 放射性よう素感知装置
51 γ線検出器
52 サンプル容器
52a サンプル容器凹部
52b 容積調節部
53 鉛遮蔽
54 電子冷却装置
61 活性アルミナカラム
62 脱気装置
71、72 開閉弁
73、74 弁制御部
75 排水処理接続点
76 原子炉冷却材通路
80 計測制御装置
90 処理部
91 CPU
92 RAM
93 ROM
94 記憶部
100、200 原子炉燃料健全性モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の被測定媒体の特定放射性核種のγ線を検出するγ線検出器と、
前記被測定媒体を内部に保持し、前記γ線検出器の周囲を取り囲むサンプル容器と、
一定量の前記被測定媒体を前記サンプル容器に取り込む制御を行うと共に前記γ線検出器が検出した単位時間当たりのγ線データと、前記サンプル容器に取り込まれる被測定媒体の容積から前記特定放射性核種の濃度を算出する計測制御装置と、
を有することを特徴とする原子炉燃料健全性モニタ。
【請求項2】
前記サンプル容器は中空であって、スパイラル状に前記γ線検出器に巻き付けて取り囲んでいることを特徴とする請求項1に記載の原子炉燃料健全性モニタ。
【請求項3】
前記被測定媒体が気体であって、前記特定放射性核種が放射性キセノンであることを特徴とする請求項2に記載の原子炉燃料健全性モニタ。
【請求項4】
前記サンプル容器は凹部を有し、前記γ線検出器は前記凹部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の原子炉燃料健全性モニタ。
【請求項5】
前記被測定媒体が原子炉の冷却材であって、前記特定放射性核種が放射性よう素であることを特徴とする請求項4に記載の原子炉燃料健全性モニタ。
【請求項6】
前記サンプル容器の入口側に活性アルミナカラムを有し、
前記活性アルミナカラムを通過した後の前記冷却材が前記サンプル容器に取り込まれることを特徴とする請求項5に記載の原子炉燃料健全性モニタ。
【請求項7】
原子炉の被測定媒体である気体が含む第1の特定放射性核種のγ線を検出する第1のγ線検出器と、
前記気体を中空の内部に保持し、スパイラル状に前記第1のγ線検出器に巻き付けて取り囲んでいる第1のサンプル容器と、
原子炉の被測定媒体である冷却材が含む第2の特定放射性核種のγ線を検出する第2のγ線検出器と、
前記冷却材を内部に保持し、前記第2のγ線検出器を配置する凹部を有する第2のサンプル容器と、
一定量の前記気体を前記第1のサンプル容器に取り込む制御及び一定量の前記冷却材を前記第2のサンプル容器に取り込む制御を行うと共に前記第1及び第2のγ線検出器が検出した単位時間当たりのγ線データと、前記第1及び第2のサンプル容器に取り込まれる被測定媒体の容積から前記第1及び第2の特定放射性核種の濃度を算出する計測制御装置と、
を有することを特徴とする原子炉燃料健全性モニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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