説明

原料ビーズの充填方法

【課題】キャビティ内に原料ビーズを均一に充填して、冷却時間の短縮を図ることができる原料ビーズの充填方法を提供する。
【解決手段】固定型3と移動型4とで形成されるキャビティ60内に、インジェクションエアにより原料ビーズを充填する原料ビーズの充填方法において、移動型4をボールネジによって移動される方式のものとして、この移動型4を、充填開始クラッキング位置にて位置させて原料ビーズの充填を開始する。その後、ボールネジを回転させてクラッキング間隙51を狭めつつキャビティ60内に原料ビーズを充填する。充填途中で、クラッキング間隙の拡大、縮小を繰り返して、キャビティ60内の原料ビーズに空気の膨張・圧縮による脈動を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂成形機における原料ビーズの充填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂成形機として、例えば特許文献1に開示された駆動シリンダ方式のもの、特許文献2に開示されたボールネジ方式のものが知られている。このような方式の発泡樹脂成形機を用いる発泡成形方法は、(1)金型を型閉めしてキャビティを形成し、このキャビティ内に、ポリスチレンなどの原料ビーズを充填する原料ビーズの充填工程。(2)この原料ビーズを加熱用スチームで加熱し、溶融発泡させる加熱工程、(3)その後、発泡体を冷却、固化させる冷却工程、(4)冷却後型開きして所定形状の発泡体として金型から取り外す離型工程、とからなる。
【0003】
原料ビーズの充填方法として、クラッキング充填法がある。この方法においては、図7に示すように、充填操作に際して固定型3と移動型4とを完全に閉じずに、その金型外周部にある程度の隙間、即ちクラッキング間隙51を残した状態として、原料供給機50に送入用インジェクションエアを供給して、その噴出力で原料ビーズを吸引しながらキャビティ60内に送入して充填する方法である。インジェクションエア自体は、クラッキング間隙51を通じて外部に排出される。
なお、原料供給機として特許文献3に開示されたものがある。
【0004】
以上のようなクラッキング充填法においては、クラッキング間隙51近傍の型嵌合部61においては、この部分が原料供給機50から遠いことや、静電気による原料ビーズのブリッジ形成等によって、充填密度の不足が生じやすい。
【0005】
また、キャビティ60に原料ビーズを充填後はクラッキング間隙51を完全に閉鎖して型閉めを行う。このため、特に原料供給機50に近いキャビティ60の中央部63や、型嵌合部61と中央部63の間の中間部62は、図8に示すように、クラッキング間隙Sの分だけ過充填となって充填密度が過度に高くなってしまう。このような充填密度の高い部分は低い部分より冷却に長時間を要することとなって、生産効率の低下を来すこととなる。
【特許文献1】特開平5―154930号公報 (図1)
【特許文献2】特開平5―193014号公報 (図1)
【特許文献3】特開2000−15707号公報 (図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、キャビティ内に原料ビーズを均一に充填することができ、且つ、冷却時間の短縮を図ることができる原料ビーズの充填方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の原料ビーズの充填方法は、固定型と移動型とで形成されるキャビティ内に、インジェクションエアにより原料ビーズを充填する原料ビーズの充填方法において、
移動型をボールネジによって移動される方式のものとして、
この移動型を移動させて充填開始クラッキング位置に位置したときに原料ビーズの充填を開始し、
その後ボールネジを連続的又は断続的に回転させて、クラッキング間隙を無段階又は多段階で狭めつつキャビティ内に原料ビーズを充填することを特徴とするものである。
【0008】
上記した発明において、移動型を移動させて充填開始クラッキング位置に位置したときにキャビティの型嵌合部に原料ビーズを充填する第1工程と、
クラッキング間隙を一段狭めてキャビティの中間部に原料ビーズを充填する第2工程と、
クラッキング間隙をさらに一段狭めてキャビティの中央部に原料ビーズを充填する第3工程と、
クラッキング間隙を閉鎖して型閉めを完了する第4工程と、の多段工程で原料ビーズを充填することができる。
【0009】
また、クラッキング間隙を狭めつつキャビティ内に原料ビーズを充填している途中で、ボールネジを逆転させて少なくとも一回クラッキング間隙を拡大した後に、再度ボールネジを正転させてクラッキング間隙を縮小させることによって、キャビティ内の原料ビーズに空気の膨張・圧縮による脈動を与えて、原料ビーズを充填することができる。
【0010】
また、第2工程終了後に少なくとも一回第1工程に戻って、第1工程と第2工程とを複数回繰り返して、クラッキング間隙の拡大と縮小とにより、キャビティ内の原料ビーズに空気の膨張・圧縮による脈動を与えて、原料ビーズを充填することができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、ボールネジを連続的又は断続的に回転させて、クラッキング間隙を無段階又は多段階で狭めつつキャビティ内に原料ビーズを充填するので、原料充填後にクラッキング間隙に相当する型閉めを行う必要がない。よって、キャビティ内に原料ビーズを過度に充填することがない。
【0012】
請求項2に係る発明は、クラッキング間隙を4段階で狭めつつキャビティ内に原料ビーズを充填するので、原料ビーズを過度に充填することがない
【0013】
請求項3、4に係る発明は、キャビティ内の原料ビーズに空気の膨張・圧縮による脈動を与えることができるので、キャビティ内に原料ビーズのブリッジが形成された場合にも、これらを空気の脈動により破壊して、原料ビーズを均一に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を図面に基づき説明する。
図1、2に、本発明方法を実施するためのボールネジ方式の発泡樹脂成形機を示す。図において、固定ダイプレート1に対向して移動ダイプレート2が配置されている。それぞれのダイプレート1、2は、固定型3と移動型4とを有している。固定型3の中央にはインジェクションエアにより原料ビーズを送出する原料供給機50が配設されている。また、移動型4を挟んで相対峙する位置には、2本のボールネジ5、6がナット部7を介して装着されている。
【0015】
そして、一方のボールネジ5の端部には、移動ダイプレート2の高速移動機構8が配設され、他方のボールネジ6の端部には、移動ダイプレート2の低速移動機構9が配設されている。そして、これらのボールネジ5、6の間には、一方のボールネジ5又は6の回転を他方に伝える動力伝達部材11、例えばベルトやチェーンなどが介装されている。
【0016】
高速移動機構8は、モータ軸12がボールネジ5に直結されたモータ13を備えている。高速移動機構は、移動型4を原料充填時のクラッキング位置へ移動する際、あるいは離型後成形品を取り出すために離型クラッキング位置から移動型4を後退させる際に使用される。
【0017】
低速移動機構9は、型閉め時に使用されるものであって、モータ21と、モータ21に接続された減速機22と、減速機22の回転をボールネジ6に伝達するギア24とからなる。即ち、モータ21の回転は減速機22により減速されてギア24を回転させるので、これによってボールネジ6を低速で回転させることができる。減速機22とギア24はエアにより係脱自在となっている。また、モータ21は必要に応じて回転が増減される。
【0018】
以上のように構成されたものにおいて、移動ダイプレート2を充填開始クラッキング位置に移動させるときには、高速移動機構8のモータ13を駆動しボールネジ5、6を高速で回転させる。これによって移動型4を高速で固定型3の方向に移動させて、充填開始クラッキング位置に位置させることができる。
【0019】
その後、クラッキング間隙を狭めて型閉めを行うときは、モータ13を停止し、低速移動機構9のモータ21を駆動する。これによって、移動型4を固定型3に低速で近づけてクラッキング間隙を狭めることができ、且つ、高い締付け力にて型閉めを行うことができる。
【0020】
図3に、発泡成形機における制御系統を示す。図において、原料充填機50にはタイマ52が接続され、このタイマ52がコントローラ53につながれている。一方、モータ21にはロータリエンコーダなどの移動型4の位置検出手段54が設けられ、この位置検出手段54はコントローラ53に接続されている。51はクラッキング間隙である。
【0021】
以下に、クラッキング間隙51を無段階で狭める原料ビーズの充填方法を、図4〜6に基づいて説明する。
充填開始クラッキング位置に移動型4が位置されたときに、インジェクションエアの吹き込みにより原料ビーズを吸引してキャビティ60内に原料ビーズを送入する。これによって、先ず型嵌合部61に原料ビーズが充填される(図4)。そして、充填の進行に対応してボールネジを低速回転させてクラッキング間隙51を狭めつつ中間部62、中央部63に原料ビーズを充填する(図5、6)。中央部63に所定量の原料ビーズが充填されたときに、クラッキング間隙51を完全に閉鎖して型閉めを完了させる。その後、必要に応じて原料ビーズを送入して特に中央部63付近の充填量を確保して充填を完了する。
【0022】
以上の充填方法は、以下のようにして実施される。すなわち、図3に示すタイマ52が原料ビーズ供給開始とともにカウントを開始する。カウントの進行とともにコントローラ53はモータ21を駆動しつつ、位置検出手段54からの信号により移動型4の位置を正確に把握する。なお、モータ21の回転速度は適宜調整することができる。
【0023】
そして、クラッキング間隙51を狭めつつ原料ビーズを充填する。タイマ52のカウントによる中央部63が適度に充填されるタイミングを見計らって、コントローラ53の指令によりクラッキング間隙51を閉鎖して型閉めを完了させる。型閉め後は、必要に応じてさらに原料ビーズを充填し、タイマ52のカウントアウトによって原料ビーズの送入を停止する。
【0024】
以上の工程において、クラッキング間隙51を無段階で狭めつつキャビティ60内に原料ビーズを充填している途中で、ボールネジを逆転させて少なくとも一回クラッキング間隙51を拡大することができる。なお、クラッキング間隙51の拡大は充填開始時のクラッキング間隙Sを超えないことが、原料ビーズの散出による無駄な消費を防ぐために必要である。クラッキング間隙51の拡大、縮小を多数回繰り返すことによって、原料ビーズによるブリッジが形成されていた場合にも、これらに空気の膨張・圧縮による脈動、振動を与えて崩すことができる。したがって、その後ボールネジを正転させることによって、クラッキング間隙51を無段階に狭めつつキャビティ60内に原料ビーズを均一に充填することができる。なお、インジェクションエアを高低圧に振ることによって、さらに均一に原料ビーズを充填することができる。
【0025】
また、原料ビーズの充填は、ボールネジを断続的に回転させてクラッキング間隙を多段階で狭めても行うことができる。
すなわち、第1工程においては、充填開始クラッキング位置に移動型4が位置したときに、キャビティ60内に原料ビーズを送入して型嵌合部61に原料ビーズを充填する(図4)。
【0026】
第2工程においては、移動型4を移動させてクラッキング間隙51を一段階狭めたうえで、中間部62に原料ビーズを充填する(図5)。なお、クラッキング間隙51を狭める途中においても原料ビーズの送入は行われている。
【0027】
第3工程においては、移動型4を移動させてクラッキング間隙51をさらに一段階狭めたうえで、中央部62に原料ビーズを適度に充填する(図6)。
【0028】
さらに第4工程においては、クラッキング間隙51を閉鎖して型閉めを完了する。そして、中央部62の充填が十分でない場合には原料ビーズをさらに送入して充填量を確保する。
【0029】
以上の4工程からなる充填方法は、以下のようにして実施することができる。すなわち、図3に示すタイマ52が原料ビーズ供給開始とともにカウントを開始する。型嵌合部61の充填が完了するカウントの進行とともに、コントローラ53はモータ21を駆動してクラッキング間隙51を一段狭める。中間部62の充填が完了するまでカウントが進行したときに、コントローラ53はモータ21を再駆動してクラッキング間隙51をさらに狭める。そして、中央部63に原料ビーズが所定量充填されたタイミングで型閉めを完了する。型閉め後は、必要に応じさらに不足する原料ビーズを充填し、タイマ52のカウントアウトによって原料ビーズの充填を終了する。
【実施例】
【0030】
以上の4工程からなる原料ビーズの充填方法によって、充填開始クラッキング間隙Sを5mmとして20mmの肉厚を有する漁箱を発泡樹脂成形した。その結果、中間部62,中央部63の過充填を防止することができ、成形後の冷却時間を20%短縮することができた。
【0031】
上記した発明において、第2工程終了後に少なくとも一回第1工程に戻って、第1工程と第2工程とを複数回繰り返すことができる。このようにクラッキング間隙の拡大、縮小を繰り返すことによって、キャビティ内の空気の膨張と圧縮により原料ビーズに脈動、振動を与えることができて、ブリッジを破壊して型嵌合部61や中間部62に原料ビーズを均一に充填することができる。
【0032】
以上のように、本願発明方法は、型閉めを連続的にあるいは断続的に行いながら原料ビーズを充填することを特徴とする。すなわち、型閉め完了とともに充填も完了する、あるいは型閉め完了後に不足分を補充するので、従来のような原料ビーズ充填後に型閉めを行うことがない。よって、型閉めに伴う過充填を招くことがない。また、充填の途中でクラッキング間隙の拡大と縮小とを行うので、空気の脈動によりブリッジを破壊して均一に原料ビーズを充填できるという大きな利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を実施するための発泡成形機の平面図である。
【図2】図1の発泡成形機の正面図である。
【図3】制御系統を併せて示す発泡成形機の概略構成図である。
【図4】型嵌合部に原料ビーズが充填された状態を示す説明図である。
【図5】中間部にも原料ビーズが充填された状態を示す説明図である。
【図6】中央部にも原料ビーズが充填された状態を示す説明図である。
【図7】従来方法における型閉め前の状態を示す説明図である。
【図8】従来方法における型閉め後の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
3 固定型、4 移動型、51 クラッキング間隙、60 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と移動型とで形成されるキャビティ内に、インジェクションエアにより原料ビーズを充填する原料ビーズの充填方法において、
移動型をボールネジによって移動される方式のものとして、
この移動型を移動させて充填開始クラッキング位置に位置したときに原料ビーズの充填を開始し、
その後ボールネジを連続的又は断続的に回転させて、クラッキング間隙を無段階又は多段階で狭めつつキャビティ内に原料ビーズを充填することを特徴とする原料ビーズの充填方法。
【請求項2】
移動型を移動させて充填開始クラッキング位置に位置したときにキャビティの型嵌合部に原料ビーズを充填する第1工程と、
クラッキング間隙を一段狭めてキャビティの中間部に原料ビーズを充填する第2工程と、
クラッキング間隙をさらに一段狭めてキャビティの中央部に原料ビーズを充填する第3工程と、
クラッキング間隙を閉鎖して型閉めを完了する第4工程と、の多段工程で原料ビーズを充填する請求項1に記載の原料ビーズの充填方法。
【請求項3】
クラッキング間隙を狭めつつキャビティ内に原料ビーズを充填している途中で、ボールネジを逆転させて少なくとも一回クラッキング間隙を拡大した後に、再度ボールネジを正転させてクラッキング間隙を縮小させることによって、キャビティ内の原料ビーズに空気の膨張・圧縮による脈動を与えて、原料ビーズを充填することを特徴とする請求項1に記載の原料ビーズの充填方法。
【請求項4】
第2工程終了後に少なくとも一回第1工程に戻って、第1工程と第2工程とを複数回繰り返して、クラッキング間隙の拡大と縮小とにより、キャビティ内の原料ビーズに空気の膨張・圧縮による脈動を与えて、原料ビーズを充填することを特徴とする請求項2に記載の原料ビーズの充填方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−44215(P2008−44215A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221364(P2006−221364)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(391023057)株式会社ダイセン工業 (14)
【Fターム(参考)】