説明

原料供給方法並びにその装置

【課題】原料を長期にわたって安定よく反応器側へ供給できるようにする。
【解決手段】シリンダチューブ2と、該シリンダチューブ2内を摺動可能であり、該シリンダチューブ2の内部を第1室3と第2室4とに区画するピストン5とを備えた複動式流体圧シリンダ6を用意する。第1室3又は第2室4の一方の室へ低圧用ポンプ8で流体原料を、他方の室へ加圧用ポンプ18で高圧水を交互に供給することで流体原料を反応器13側へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料供給方法並びにその装置に関し、特に、高温高圧の熱水の存在下で金属酸化物等の微粒子を生成する水熱合成において原料を長期にわたって安定よく反応器側へ供給することのできる原料供給方法並びにその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温高圧水を用いて微粒子を製造する装置として、先に、同一出願人により提案したものがある(特許文献1参照。)。
そこでは、高温高圧水を用いる微粒子製造装置が、蒸留水を溜めておく蒸留水槽から超臨界水または亜臨界水となる水を供給する水供給路と、原料供給槽から流体原料である金属塩水溶液を供給する原料供給路とを備える。そして、原料供給路では、金属塩水溶液を原料脱気部で脱気しこの脱気された金属塩水溶液を高圧ポンプよりなる原料加圧手段で加圧して反応器側へ圧送するものとしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−21724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高圧ポンプで流体原料を反応器側へ圧送する上記水熱合成装置では、原料溶液中(スラリー)の微粒子が高圧ポンプ内のシール部にかみ込んだり、詰まったりすることにより損傷、故障の原因になるという問題があった。このような問題は、上記水熱合成装置に限られた問題ではない。このような問題は、スラリーをある程度高い圧力で圧送する装置に共通する問題である。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、原料を長期にわたって安定よく反応器側へ供給することのできる、原料供給方法並びにその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の原料供給方法は、流体原料を反応器側に供給するに際し、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内を摺動可能であり、該シリンダチューブ内部を第1室と第2室とに区画するピストンとを備えた複動式流体圧シリンダを用意し、前記第1室又は第2室の一方の室へ第1ポンプで流体原料を、他方の室へ前記第1ポンプよりも高圧で水を供給可能な第2ポンプで前記水を交互に供給することで流体原料を反応器側に供給することに特徴を有するものである。この場合において、前記第1ポンプにはチュービングポンプを使用することが好ましい。
【0007】
これによると、流体原料は第1ポンプで複動式流体圧シリンダへ送り、水を第2ポンプで複動式流体圧シリンダへ送り込むことで複動式流体圧シリンダから流体原料を反応器側へ供給できるので、従来のような高圧ポンプを用いることなく、流体原料を反応器側へ供給することができる。すなわち、流体原料を複動式流体圧シリンダへ送るポンプとしては従来のような高圧ポンプを使用しないので、原料溶液中(スラリー)の微粒子が高圧ポンプ内のシール部にかみ込んだり、詰まったりするのを回避できる。また水を複動式流体圧シリンダへ送り込む第2ポンプは微粒子を含まない水を送るので、第2ポンプ内のシール部への微粒子のかみ込み等の問題が発生するようなことはない。
【0008】
本発明の原料供給装置は、流体原料を反応器側に供給する装置において、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内を摺動可能であり、該シリンダチューブ内部を第1室と第2室とに区画するピストンとを備えた複動式流体圧シリンダと、原料タンクと、前記原料タンクから流体原料を前記第1室又は第2室の一方の室へ供給する第1ポンプと、前記第1室又は第2室の他方の室へ前記第1ポンプよりも高圧で水を供給する第2ポンプと、を備え、前記第1室又は第2室の一方の室へ第1ポンプで流体原料を、他方の室へ水を交互に供給することで流体原料を反応器側に供給するように構成してあることに特徴を有するものである。この場合において、前記第1ポンプにはチュービングポンプを使用することが好ましい。また、前記第1室と第2室とのうち前記流体原料が供給される側の内部を攪拌する攪拌装置をさらに備えることが好ましい。
【0009】
これによると、流体原料は第1ポンプで複動式流体圧シリンダへ送り、水を第2ポンプで複動式流体圧シリンダへ送り込むことで複動式流体圧シリンダから流体原料を反応器側へ供給できるので、従来のような高圧ポンプを用いることなく、流体原料を反応器側へ供給することができる。すなわち、流体原料を複動式流体圧シリンダへ送るポンプとしては従来のような高圧ポンプを使用しないので、原料溶液中(スラリー)の微粒子が高圧ポンプ内のシール部にかみ込んだり、詰まったりするのを回避できる。また水を複動式流体圧シリンダへ送り込む第2ポンプは微粒子を含まない水を送るので、第2ポンプ内のシール部への微粒子のかみ込み等の問題が発生するようなことはない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複動式流体圧シリンダを採用することによって、従来のような高圧ポンプを用いることなく、微粒子を含有した流体原料を反応器側へ安定良く長期にわたって供給することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例を示す水熱合成における原料供給装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態にかかる原料供給装置1は、水熱合成に用いられる。本実施形態にかかる原料供給装置1は、円筒状のシリンダチューブ2と、該シリンダチューブ2内を摺動可能であり、該シリンダチューブ2内部を第1室3と第2室4とに区画するピストン5とを備えた複動式流体圧シリンダ6と、水熱合成反応させる金属塩水溶液等の流体原料を貯留した原料タンク7と、原料タンク7から流体原料をシリンダチューブ2の第1室3へ供給するチュービングポンプよりなる低圧用ポンプ8と、第2室4へ高圧水を供給する加圧用ポンプ18および高圧用ポンプ20と、を備える。第1室3および第2室4の各端部にはそれぞれ出入口(給排口)9,10を設けている。第1室3の中に、攪拌装置24が取り付けられている。加圧用ポンプ18および高圧用ポンプ20は、低圧用ポンプ8よりも高圧で流体を供給可能である。さらに、本実施形態にかかる原料供給装置1は、円筒状のシリンダチューブ2´と、該シリンダチューブ2´内を摺動可能であり、該シリンダチューブ2´内部を第1室3´と第2室4´とに区画するピストン5´とを備えた複動式流体圧シリンダ6´も備える。第1室3´および第2室4´の各端部にもそれぞれ出入口(給排口)9´,10´を設けている。なお、低圧用ポンプ8によって流体原料を第2室4や第2室4´へ供給し、加圧用ポンプ18あるいは高圧用ポンプ20によって高圧水を第1室3や第1室3´へ供給してもよい。
【0014】
シリンダチューブ2の第1室3の出入口9と原料タンク7とはシリンダへの原料供給路11で接続される。シリンダチューブ2´の第1室3´の出入口9´と原料タンク7ともシリンダへの原料供給路11で接続される。シリンダへの原料供給路11には原料タンク7から流体原料をシリンダチューブ2の第1室3とシリンダチューブ2´の第1室3´とへ供給する低圧用ポンプ8を設けており、該原料供給路11の低圧用ポンプ8と出入口9との間に第1開閉弁12を設けている。低圧用ポンプ8と出入口9´との間に第1開閉弁12´を設けている。シリンダチューブ2の第1室3の出入口9と反応器13とは反応器13側への原料供給路14で接続され、該原料供給路14には第2開閉弁15を設けている。シリンダチューブ2´の第1室3´の出入口9´と反応器13とも反応器13側への原料供給路14で接続され、該原料供給路14には第2開閉弁15´を設けている。
【0015】
シリンダチューブ2の第2室4の出入口10と充填水タンク16とは高圧水供給路17で接続される。高圧水供給路17には第2室4へ高圧水を供給する加圧用ポンプ18を設けている。シリンダチューブ2´の第2室4´の出入口10´と充填水タンク16とは高圧水供給路17´で接続される。高圧水供給路17´も加圧用ポンプ18に接続される。
【0016】
シリンダチューブ2の出入口10と高圧用ポンプ20とは、水供給路19で接続される。すなわち、水供給路19から管が分岐し(その管の途中には第4開閉弁25が設けられている)、その管が高圧水供給路17に接続されているため、シリンダチューブ2の出入口10と高圧用ポンプ20とは、互いに接続されていることとなる。シリンダチューブ2´の出入口10´と高圧用ポンプ20とも、水供給路19で接続される。すなわち、水供給路19から管が分岐し(その管の途中には第4開閉弁25´が設けられている)、その管が高圧水供給路17´に接続されているため、シリンダチューブ2´の出入口10´と高圧用ポンプ20とは、互いに接続されていることとなる。なお、高圧用ポンプ20と反応器13とは、水供給路19で接続される。該高圧用ポンプ20と反応器13との間に第3開閉弁21を設けている。
【0017】
次に、上記のように構成した原料供給装置1を用いて原料を反応器13側へ供給する方法について説明する。
【0018】
予め、シリンダチューブ2´の第1室3´に流体原料が満杯または満杯近くに充填されていることとする。いま、第1開閉弁12および第2開閉弁15´が開き、第2開閉弁15および第1開閉弁12´が閉じて、低圧用ポンプ8が駆動することによりシリンダチューブ2の第1室3へ流体原料が出入口9を介して供給される。第1室3の中の流体原料は、攪拌装置24によって攪拌される。これにより、流体原料中の微粒子は均一に分散される。この間、高圧用ポンプ20は、水供給路19および高圧水供給路17´を介してシリンダチューブ2´の第2室4´に高圧水を供給している(加圧用ポンプ18が高圧水を供給しても良いし、加圧用ポンプ18と高圧用ポンプ20とが協調して高圧水を供給しても良い)。シリンダチューブ2´の第2室4´に高圧水が供給されると、その高圧水の圧力がピストン5´に働いてピストン5´が第1室3´の方へ動くので、第1室3´から流体原料が出入口9´を介して反応器13側へ向けて押出し供給される。その後、第1室3´の流体原料が空または空近くになると、第1室3´の端部に取り付けた磁気近接スイッチ等よりなるセンサ23´がピストン5´の位置を検出し、第4開閉弁25がその検出信号を入力して開き、水供給路19および高圧水供給路17を経てシリンダチューブ2の第2室4に高圧水が供給される。この供給開始と同時に、第1開閉弁12および第2開閉弁15´が閉じ、第2開閉弁15および第1開閉弁12´が開く。この状態で第2室4に高圧水が供給されると、高圧水の圧力がピストン5に働いてピストン5が第1室3の方へ動くことにより第1室3から流体原料が出入口9を介して反応器13側へ向けて押出し供給される。一方、第2開閉弁15´が閉じ、第1開閉弁12´が開き、かつ、低圧用ポンプ8が駆動しているので、シリンダチューブ2´の第1室3´へ流体原料が出入口9´を介して供給される。第1室3´の中の流体原料は、攪拌装置24´によって攪拌される。これにより、流体原料中の微粒子は均一に分散される。その後、第1室3の流体原料が空または空近くになると、第1室3の端部に取り付けた磁気近接スイッチ等よりなるセンサ23がピストン5の位置を検出し、第4開閉弁25´がその検出信号を入力して開き、水供給路19および高圧水供給路17´を経てシリンダチューブ2´の第2室4´に高圧水が供給される。この供給開始と同時に、第1開閉弁12´および第2開閉弁15が閉じ、第2開閉弁15´および第1開閉弁12が開く(本実施形態において、このような弁の開閉は、図示された通信経路や図示されていない通信経路を経て信号が通信されることにより、可能となっている)。この状態で第2室4´に高圧水が供給されると、高圧水の圧力がピストン5´に働いてピストン5´が第1室3´の方へ動くことにより第1室3´から流体原料が出入口9´を介して反応器13側へ向けて押出し供給される。
【0019】
このように複動式流体圧シリンダ6の第1室3と複動式流体圧シリンダ6の第1室3とへ低圧用ポンプ8で流体原料を、第2室4と第2室4´とへ高圧用ポンプ20で(あるいは、上述したように、加圧用ポンプ18と高圧用ポンプ20とのうち少なくとも一方で)高圧水を交互に供給することで、従来の高圧ポンプを用いることなく、流体原料を反応器13側へ供給することができる。
【0020】
図示例の水熱合成における原料供給装置では、上記複動式流体圧シリンダ6にはもう一つの同じ複動式流体圧シリンダ6´を並列に配設することにより、一つの複動式流体圧シリンダ6内の流体原料が反応器13側へ供給されて残り少なくなると、引き続いてもう一つの複動式流体圧シリンダ6´から流体原料を反応器13側へ供給することができるようにしているが、一つの複動式流体圧シリンダ6のみで原料供給装置を構成するものであってもよい。以下に、そのように構成した原料供給装置を用いて原料を反応器13側へ供給する方法について説明する。
【0021】
いま、第1開閉弁12が開き、第2開閉弁15が閉じて、低圧用ポンプ8が駆動することによりシリンダチューブ2の第1室3へ流体原料が出入口9を介して供給される。第1室3に流体原料が満杯または満杯近くになると、第2室4の端部に取り付けた磁気近接スイッチ等よりなるセンサ22がピストン5の位置を検出し、低圧用ポンプ8がその検出信号を入力して駆動を自動停止し、流体原料の供給を止める。この供給停止と同時に、第1開閉弁12が閉じ、第2開閉弁15が開いて、加圧用ポンプ18と高圧用ポンプ20とのうち少なくとも一方が駆動することにより第2室4へ高圧水を出入口10を介して供給し、高圧水の圧力がピストン5に働いてピストン5が第1室3の方へ動くことにより第1室3から流体原料が出入口9を介して反応器13側へ向けて押出し供給される。
【0022】
第1室3から流体原料を押出し終えると、センサ23がピストン5の位置を検出し、高圧水を供給していたポンプがその検出信号を入力して駆動を自動停止して第2室4への高圧水の供給を止め、再び前述のように低圧用ポンプ8が駆動して流体原料を第1室3へ供給する。なお、このようなポンプの駆動開始や自動停止は、図示された通信経路や図示されていない通信経路を経て信号が通信されることにより、可能となっている。
【0023】
このように複動式流体圧シリンダ6の第1室3へ低圧用ポンプ8で流体原料を、第2室4へ加圧用ポンプ18で(あるいは、加圧用ポンプ18と高圧用ポンプ20とのうち少なくとも一方で)高圧水を交互に供給することで、従来の高圧ポンプを用いることなく、流体原料を反応器13側へ供給することができる。
【0024】
ちなみに、本実施形態にかかる原料供給装置1は、水熱合成以外の用途に用いられてもよい。この場合にも、スラリーその他微粒子を含む流体原料を反応器に供給する際、その流体原料を安定良く長期にわたって供給することができる。
【0025】
また、攪拌装置24,24´は必ずしも必要なものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 水熱合成における原料供給装置
2,2´ シリンダチューブ
3,3´ 第1室
4,4´ 第2室
5,5´ ピストン
6,6´ 複動式流体圧シリンダ
7 原料タンク
8 低圧用ポンプ
9,9´,10,10´ 出入口
13 反応器
18 加圧用ポンプ
20 高圧用ポンプ
24,24´ 攪拌装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体原料を反応器側に供給するに際し、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内を摺動可能であり、該シリンダチューブ内部を第1室と第2室とに区画するピストンとを備えた複動式流体圧シリンダを用意し、前記第1室又は第2室の一方の室へ第1ポンプで流体原料を、他方の室へ前記第1ポンプよりも高圧で水を供給可能な第2ポンプで前記水を交互に供給することで流体原料を反応器側に供給することを特徴とする、原料供給方法。
【請求項2】
前記第1ポンプがチュービングポンプである、請求項1記載の原料供給方法。
【請求項3】
流体原料を反応器側に供給する装置において、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内を摺動可能であり、該シリンダチューブ内部を第1室と第2室とに区画するピストンとを備えた複動式流体圧シリンダと、原料タンクと、前記原料タンクから流体原料を前記第1室又は第2室の一方の室へ供給する第1ポンプと、前記第1室又は第2室の他方の室へ前記第1ポンプよりも高圧で水を供給する第2ポンプと、を備え、前記第1室又は第2室の一方の室へ第1ポンプで流体原料を、他方の室へ水を交互に供給することで流体原料を反応器側に供給するように構成してあることを特徴とする、原料供給装置。
【請求項4】
前記第1ポンプがチュービングポンプである、請求項3記載の原料供給装置。
【請求項5】
前記原料供給装置が、前記第1室と第2室とのうち前記流体原料が供給される側の内部を攪拌する攪拌装置をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載の原料供給装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−188270(P2010−188270A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34482(P2009−34482)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「超ハイブリッド材料技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(598084895)株式会社アイテック (24)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】