説明

原料供給装置

【課題】 造粒装置に対する原料の供給時間を短縮することのできる原料供給装置を提供する。
【解決手段】 造粒装置(1)との間の圧力差による気体の移動に伴って造粒装置に原料を供給する原料供給装置(2)であって、原料を収容可能なホッパ(22、221)と、ホッパに収容された原料を造粒装置に供給するための供給管(222)とを有し、供給管の全長をL、供給管の内径をRとしたとき、L/R<209の条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層造粒乾燥装置といった造粒装置に対して原料(粉体)を供給するための原料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体(原料)の乾燥や造粒を行うための装置として、流動層造粒乾燥装置が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。この流動層造粒乾燥装置では、供給された粉体に対してバインダー等を用いて所定の粒径の粉体を製造している。
【0003】
ここで、流動層造粒乾燥装置には、原料としての粉体を収容し、流動層造粒乾燥装置に対して原料を供給するための原料供給装置が配管を介して接続されている。そして、流動層造粒乾燥装置の内部における圧力を外部よりも低く(減圧)し、原料供給装置に収容された原料を、圧力差を利用して流動層造粒乾燥装置に導くようにしている。
【特許文献1】特開2001−276598号公報
【特許文献2】特開2002−292266号公報
【特許文献3】特開2002−306944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の原料供給装置の構成では、流動層造粒乾燥装置への原料の供給に多くの時間を要していた。具体的には、1バッチ(例えば、130kg)の原料を流動層造粒乾燥装置に供給するのに、最大で40分の時間を要していた。そして、1日当たり8バッチの原料を供給するためには、320分(40分×8バッチ)の時間を要し、1ヶ月では9600分(320分×30日)の時間を要してしまう。
【0005】
このように、流動層造粒乾燥装置に原料を供給する時間が長くなると、作業者の負担が多くなってしまい、好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、造粒装置に対する原料の供給時間を短縮することのできる原料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、造粒装置との間の圧力差による気体の移動に伴って造粒装置に原料を供給する原料供給装置であって、原料を収容可能なホッパと、ホッパに収容された原料を造粒装置に供給するための供給管とを有し、供給管の全長をL、供給管の内径をRとしたとき、
L/R<209
の条件を満たすことを特徴とする。
【0008】
ここで、ホッパに対して振動を与えるためのフルイタイザを設けることができる。また、供給管のうち互いに異なる位置に接続され、外部の気体を供給管に導くための複数の導入管を設けることができる。
【0009】
導入管を設けた場合には、導入管に接続可能であって、導入管を介して供給管に導かれる気体の量を調節するための調節機構を設けることができる。また、各導入管における気体の取込口に、導入管への気体の進入を許容するフィルタを設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配管内の体積を増加させて、造粒装置に対して所定量の原料を供給する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1である造粒システムについて、図1を用いて説明する。ここで、図1は、本実施例の造粒システムの構成を示す概略図である。
【0013】
本実施例の造粒システムは、原料(粉体)の造粒や乾燥を行う流動層造粒乾燥装置(以下、造粒乾燥装置という)1と、造粒乾燥装置1に対して原料を供給する原料供給装置2とを有している。造粒乾燥装置1及び原料供給装置2は、配管3を介して接続されている。
【0014】
まず、造粒乾燥装置1の構成について説明する。この造粒乾燥装置1は、公知の装置であるため、詳細な説明は省略し、概要について説明する。なお、本実施例では、造粒乾燥装置1において原料の造粒及び乾燥を行うようにしているが、これに限るものではなく、少なくとも原料の造粒を行うものであればよい。
【0015】
造粒乾燥装置1の吹込口11には、外部の気体(空気等)を造粒乾燥装置1に供給するための外調機(不図示)が接続されている。外調機から導かれた気体は、吹込口11を介して造粒乾燥装置1の内部に供給される。造粒乾燥装置1の排気口12には、不図示の集塵機が接続されており、この集塵機は、造粒乾燥装置1の内部における気体を浄化してから外部に排出させるために用いられる。集塵機としては、バグフィルタを利用したものを用いることができる。
【0016】
造粒乾燥装置1の内部には、目皿板13が配置されており、目皿板13は、造粒乾燥装置1の内部空間を流動室Aと流動風吹込室Bとに仕切っている。ここで、目皿板13には、複数の開口部が形成されており、これらの開口部は、吹込口11を介して流動風吹込室Bに供給された空気を流動室A側に通過させる機能を有する。
【0017】
造粒乾燥装置1のうち流動室Aには、造粒された原料を排出するための排出口14が形成されている。この排出口14には、造粒された原料を造粒乾燥装置1の外部に排出させるための排出装置が接続されている。排出装置によって排出された造粒物は、整粒機に輸送され、所望の粒径を有する造粒物と、これ以外の粒径を有する造粒物とに分けられる。そして、所望の粒径以外の造粒物(具体的には、所望の粒径よりも大きな粒径の造粒物)は、整粒機の中で解砕又は粉砕され、所望の粒径を有する造粒物とされる。
【0018】
排出口14の上方には、流動室Aの内部に液体(バインダー等)を供給するための供給口15が設けられている。供給口15は、不図示の導管を介してポンプユニット(不図示)に接続されている。ポンプユニットは、液体が収容されたタンク(不図示)に接続されており、タンク内の液体を造粒乾燥装置1の流動室Aに移動させる機能を有している。
【0019】
また、流動室Aのうち供給口15の上方には、原料が投入される投入口16が設けられている。投入口16は、配管3を介して原料供給装置2(後述するホッパ21)に接続されている。本実施例において、原料供給装置2に収容された原料は、造粒乾燥装置1の内部を減圧状態とすることにより、流動室Aに導かれる。すなわち、造粒乾燥装置1の内部を減圧状態にすると、原料供給装置2から造粒乾燥装置1に向かう気体の流れが発生し、この空気の移動を利用して原料供給装置2に収容された原料を造粒乾燥装置1の流動室Aに導くようにしている。ここで、造粒乾燥装置1に排気ファンを接続し、排気ファンによって造粒乾燥装置1の内部における気体を外部に排出させることにより、造粒乾燥装置1の内部を減圧状態とすることができる。
【0020】
原料供給装置2から造粒乾燥装置1の流動室Aに供給された原料は、流動風吹込室Bから目皿板13の開口部を介して流動室Aに供給される気体によって、流動室A内を循環することになる。そして、この状態において、供給口15から液体を供給することによって、原料の造粒を行うことができる。造粒された原料は、上述したように、排出口14を介して造粒乾燥装置1の外部に排出されることになる。
【0021】
次に、原料供給装置2の構成について説明する。図1に示すように、原料供給装置2は、原料を収容した原料フロービン21と、原料フロービン21に接続される輸送ホッパ22とを有している。原料フロービン21は、原料を収容する容器21aと、容器21aから輸送ホッパ22に供給される原料の量を調節するためのバルブ21bとを有している。バルブ21bの開閉動作によって、輸送ホッパ22側に原料が通過する容器21aの開口部の径を変更することができる。
【0022】
次に、輸送ホッパ22の構成について、図2及び図3を用いて説明する。ここで、図2は、本実施例の輸送ホッパの構成を示す概略図であり、図2(A)は、輸送ホッパの上面図であり、図2(B)は、輸送ホッパの側面図である。なお、図2(A)は、図2(B)の矢印A方向から見たときの図である。また、図3は、図2に示す輸送ホッパの構成において、外気の取り込み位置を変更したものである。
【0023】
輸送ホッパ22は、内面が円錐状に形成された容器221と、容器221の先端に接続された供給管222と、供給管222に接続された第1の導入管223a及び第2の導入管223bとを有している。供給管222は、図1に示した配管3にも接続されている。ここで、供給管222及び容器221の接続部分や、供給管222及び配管3の接続部分は、弾性変形可能な部材(例えば、樹脂製のホース)によって覆われている。
【0024】
また、容器221には、輸送ホッパ22を支持するための複数の脚部224が設けられている。容器221は、上述したように、原料フロービン21と着脱可能に接続される。容器221に原料フロービン21が接続された状態においては、原料フロービン21から容器221の内部に原料が移動する。そして、容器221の内部には、造粒乾燥装置1に供給するための原料が収容される。容器221の内部に収容された原料は、供給管222及び配管3を介して造粒乾燥装置1に供給されることになる。
【0025】
一方、容器221の側面には、容器221に対して振動を与えるためのフルイタイザ226が設けられている。フルイタイザ226によって容器221を振動させることにより、容器221の内面に付着した原料を落下させることができるとともに、容器221を介して原料を振動させて、供給管222における原料の詰まりを防止することができる。
【0026】
本実施例では、供給管222の内径R(図2(B)及び図3(B)参照)をφ47.8mm(従来)からφ59.5mmに変更している。また、供給管222は、この全長において略均一な径を有している。
【0027】
本実施例のように供給管222の内径を従来よりも大きくすることにより、容器221から造粒乾燥装置1に導かれる原料の移動量を増加させることができる。すなわち、供給管222の内部における体積を増加させて、多くの原料を造粒乾燥装置1に移動させることができる。ここで、供給管222に接続される配管3の内径も、供給管222の内径と同一寸法としている。
【0028】
このように造粒乾燥装置1に対する原料の供給量(単位時間当たりの供給量)を増加させることにより、造粒乾燥装置1に対する原料の供給時間を短縮することができる。しかも、原料の供給を行う作業者の負担を軽減することができる。
【0029】
ここで、造粒乾燥装置1に対する原料の供給量を増加させる方法としては、供給管222の内径を大きくする方法と、造粒乾燥装置1及び原料供給装置2の間における圧力差を大きくする方法とが考えられる。後者の方法では、原料供給装置2から造粒乾燥装置1に向かう気体の流速が速くなり、原料供給装置2から造粒乾燥装置1に原料を移動させる際の圧力損失が高くなってしまう。この場合には、原料供給装置2から造粒乾燥装置1に対して原料を効率良く供給することができなくなってしまう。そこで、本発明では、上述したように、供給管222の内径を変更するようにしている。
【0030】
本実施例及び従来の構成における数値実施例を、以下の表1に示す。
【表1】

【0031】
表1に示すように、本実施例では、従来例と比べて、圧力損失を増加させることなく、造粒乾燥装置1に対する原料の供給量を増加させることができる。具体的には、本実施例における原料の供給量は、従来例における原料の供給量の2倍となるため、所定量の原料を供給する場合において、本実施例では従来例よりも1/2の供給時間で済むことが分かる。
【0032】
ここで、本実施例における供給管222の全長L及び供給管222の内径Rは、下記式の関係を満たしている。
L/R<209
【0033】
すなわち、本発明における供給管222の内径Rは、従来例での内径よりも大きくすればよい。すなわち、供給管222の全長を一定とすれば、L/Rを、従来例におけるL/Rの値209.2(=10×10〔mm〕/47.8〔mm〕)よりも小さくすればよい。
【0034】
一方、第1及び第2の導入管223a,223bの先端には、吸気ユニット225が接続されるようになっている。吸気ユニット225は、図2及び図3に示すように、両端に開口部を有する管225aと、管225aの一端に設けられ、作業者によって操作される手動バルブ225bと、管225aの他端を覆うように設けられたフィルタ225cとを有している。
【0035】
吸気ユニット225は、第1及び第2の導入管223a,223bに対して選択的に接続される。ここで、図2に示す状態では、吸気ユニット225が第1の導入管223aに接続され、第2の導入管223bは、キャップ(不図示)によって塞がれている。また、図3に示す状態では、吸気ユニット225が第2の導入管223bに接続され、第1の導入管223aは、キャップ(不図示)によって塞がれている。なお、第1及び第2の導入管223a,223bのすべてに対して、吸気ユニット225を接続するようにしてもよい。
【0036】
本実施例では、上述したように、容器221から供給管222を介して造粒乾燥装置1に気体が流れるようになっているが、供給管222に第1及び第2の導入管223a,223bを設けることにより、供給管222に対して補助的な気体を供給することができる。すなわち、原料供給装置2から造粒乾燥装置1に原料を供給するときには、造粒乾燥装置1の内部を減圧状態としているため、吸気ユニット225の外部に位置する気体が、フィルタ225cを介して吸気ユニット225の内部に取り込まれることになる。そして、この気体は、導入管223a(又は導入管223b)を介して供給管222に導かれる。
【0037】
ここで、第1の導入管223a及び第2の導入管223bは、図2及び図3に示すように、供給管222に対して互いに異なる角度を持った状態で接続されている。これにより、第1の導入管223aを介して供給管222に導かれる気体の移動方向と、第2の導入管223bを介して供給管222に導かれる気体の移動方向とが互いに異なるようになっている。
【0038】
このように、供給管222に対して補助的な気体を導入することにより、供給管222及び容器221の内部における原料の詰まりを防止することができる。しかも、供給管222のうち、互いに異なる位置から補助的な気体を導入するようにすることで、供給管222における原料の詰まり状態に応じて、補助的な気体の導入位置を変更することができる。特に、本実施例のように、供給管222の内部に導かれる気体の移動方向を異ならせることにより、供給管222における原料の詰まりを効率良く解消させることができる。
【0039】
供給管222に対して第1及び第2の導入管223a,223bを接続する位置は、上述した供給管222や容器221の内部における原料の詰まりを防止することを考慮して適宜設定することができる。また、本実施例では、供給管222に対して2つの導入管223a,223bを接続しているが、これに限るものではない。すなわち、供給管222に対して補助的な気体を導入するための導入管の数は、適宜設定することができる。
【0040】
吸気ユニット225のフィルタ225cは、原料の通過を阻止し、気体(空気等)の通過を許容する開口部を有している。すなわち、フィルタ225cは、外部の気体を導入管223a(又は導入管223b)の内部に導き易くする機能を有しているとともに、容器221から供給管222を通過する原料が吸気ユニット225を介して外部に排出されるのを阻止する機能を有している。また、フィルタ225cを設けることにより、フィルタ225cにおける気体を吸い込む音によって、供給管222に導かれる気体の流速を判別することもできる。
【0041】
フィルタ225cの大きさや開口部の面積は、上述した機能を確保するうえで、適宜設定することができる。
【0042】
吸気ユニット225の手動バルブ225bは、手動レバー225b1を操作することによって、吸気ユニット225を流れる気体の量を調節することができる。すなわち、手動レバー225b1を一方の方向に回動させれば、吸気ユニット225(管225a)における気体通過口の径を小さくでき、吸気ユニット225における気体の通過量を減らすことができる。また、手動レバー225b1を他方の方向に回動させれば、吸気ユニット225(管225a)における気体通過口の径を大きくでき、吸気ユニット225における気体の通過量を増加させることができる。
【0043】
ここで、原料の流動性によって供給管222における気体の流速が変化するため、手動バルブ225bによって供給管222に対する気体の導入量を調節することにより、上述した流速の変化に対応させることができる。
【0044】
本実施例(上記表1に示す構成)によれば、1バッチの原料を供給する時間を10分にすることができ、従来に比べて30分の時間短縮を図ることができる。そして、1日当たり8バッチの原料を供給するためには、80分(10分×8バッチ)の時間で済み、1ヶ月では240分(80分×30日)の時間で済むことになる。このように原料の供給時間を従来に比べて大幅に短縮することにより、作業者の負担を軽減することができる。
【0045】
また、本実施例では、造粒乾燥装置1を減圧状態にしながら、造粒乾燥装置1に対する原料の供給を行っているため、原料の供給時間を短縮することにより、造粒乾燥装置1を減圧状態とする時間も短縮することができる。これにより、長時間での減圧状態による造粒乾燥装置1への負荷を低減することができる。しかも、原料の供給時間を短縮することで、造粒乾燥装置1に接続された集塵機におけるフィルタの目詰まりを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1である造粒システムの構成を示す概略図である。
【図2】実施例1における輸送ホッパの正面図(A)及び側面図(B)である。
【図3】実施例1における輸送ホッパの正面図(A)及び側面図(B)である。
【符号の説明】
【0047】
1:流動層造粒乾燥装置
2:原料供給装置
21:原料フロービン
22:輸送ホッパ
221:容器
222:供給管
223a,223b:導入管
225:吸気ユニット
225b:手動バルブ
225c:フィルタ
3:配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造粒装置との間の圧力差による気体の移動に伴って前記造粒装置に原料を供給する原料供給装置であって、
原料を収容可能なホッパと、
前記ホッパに収容された原料を前記造粒装置に供給するための供給管とを有し、
前記供給管の全長をL、前記供給管の内径をRとしたとき、
L/R<209
の条件を満たすことを特徴とする原料供給装置。
【請求項2】
前記ホッパに対して振動を与えるためのフルイタイザを有することを特徴とする請求項1に記載の原料供給装置。
【請求項3】
前記供給管のうち互いに異なる位置に接続され、外部の気体を前記供給管に導くための複数の導入管を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の原料供給装置。
【請求項4】
前記各導入管に接続可能であって、前記導入管を介して前記供給管に導かれる気体の量を調節するための調節機構を有することを特徴とする請求項3に記載の原料供給装置。
【請求項5】
前記各導入管における気体の取込口に設けられ、前記導入管への気体の進入を許容するフィルタを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の原料供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−95716(P2009−95716A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267752(P2007−267752)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】