原核細胞で活性型の可溶性タンパク質を製造する方法及びそのためのポリシストロンベクター
原核細胞で活性型の可溶性目的タンパク質を製造する方法及びそのためのポリシストロンベクターを開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原核細胞で活性型の可溶性目的タンパク質を製造する方法及びそのためのポリシストロンベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
組み換え大腸菌を用いた外来タンパク質の生産システムは、細胞成長速度が速く、低価の基質を用いた高濃度培養が可能であり、他の生物体を用いた場合に比べると良く解明された遺伝子が使用されているので、外来タンパク質の高発現と精製の容易さのために様々な種類のベクターシステムを設計することができるという利点がある(非特許文献1)。
【0003】
ところが、大腸菌を真核細胞由来タンパク質生産の宿主細胞として用いる場合、タンパク質の成熟に必要な細胞内要素を備えていないため、グリコシル化(glycosylation)などの翻訳後修飾(post-translational modification)過程が行われないという欠点がある。また、外来タンパク質を過量に発現する場合には、不溶性沈殿物である封入体(inclusion body)の形で細胞質内に蓄積されることが多い。
【0004】
封入体は、目的タンパク質の生成速度と折り畳み速度間の不釣合いのため目的タンパク質の折り畳み中間体が外部に露出されている疎水性部位の相互結合によって形成される。この場合、封入体を容易に分離することができ、一般にタンパク質分解酵素の影響がより少なく、細胞内に高濃度で蓄積されるので生産性に優れるうえ、目的タンパク質を容易に分離することができるという利点を持っており、細胞内折り畳み(folding)が容易でないタンパク質の生産に利用されたりもする。ところが、封入体の形で生産された目的タンパク質は、再折り畳み過程を経て生物学的活性を回復しなければならない付加的工程を必要とする。活性型へのタンパク質の再折り畳み段階は、経験的であって必ずしも成功的に行われるのではなく、組み換えタンパク質を産業的規模に拡張して生産するには難しさがある。また、分子量の大きい抗体タンパク質、組織プラスミノゲン活性因子(tissue plasminogen activator)tPA及び因子VIIIなどは、再折り畳み過程を介して活性のあるタンパク質の形で得るのが非常に難しいものと知られている。
【0005】
上述したように、封入体を完全な構造と生物学的活性を呈するようにするためには再折り畳み過程を経なければならないため(非特許文献2)、細胞内でタンパク質の正しい3次構造の形成を誘導するために、いわゆるタンパク質の「細胞内折り畳み技術(in vivo protein folding technique)」を用いて可溶性タンパク質として発現している。これは、外来タンパク質を封入体の形で生産するときに誘発される問題点を改善するので、大腸菌で外来タンパク質を生産するにおいて産業的に重要な意味がある。
【0006】
タンパク質の細胞内折り畳みのために一般に用いられている方法は、次の通りである。
【0007】
第1の方法は、タンパク質の発現位置及び培養環境を調節する方法である。細胞質内でタンパク質を発現させると、目的タンパク質が細胞に有害なものの場合にも細胞が損傷しないうえ、大部分の場合、タンパク質の発現量が非常に多く、発現ベクターの製造が容易であるという利点がある。別の方法として、ペリプラズム(periplasm)にタンパク質を分泌させると、精製が単純になり、タンパク質分解酵素による分解が細胞質に比べて低くなり、相対的に酸化的な環境によってジスルフィド結合などがある程度可能になり、アミノ末端の分泌信号が切断されて天然型タンパク質が得られるという利点があるが、分泌されたタンパク質が凝集して封入体が形成でき、還元された折り畳みが発生する可能性がある。別の方法として、培地中にタンパク質を分泌させると、タンパク質の折り畳み問題と分解酵素による分解を解決することができるが、一般に大腸菌では倍地中にタンパク質が殆ど排出されず、排出されたとしても、タンパク質がすごく希釈されて却って精製を難しくするおそれがある。このような方法は、特定のタンパク質の場合にのみ効果があって、封入体の形成を防ぐ一般的な方法ではない。発酵工程条件の調節も、可溶性タンパク質を増加させる方法としてよく使用されており、大部分の場合、最も経済的な方法である(特許文献1)。培養温度の減少は、全てのタンパク質に適用されるのではないが、一般タンパク質の生成速度をタンパク質の折り畳み速度以下に遅めて相互凝集性の強い折り畳み中間体が蓄積されないようにするので、大部分の場合に非常に効果的な方法である(非特許文献3、非特許文献4)。
【0008】
第2の方法は、シャペロン(chaperone)及びタンパク質フォールダーゼ(foldase)の同時発現法である。シャペロンとは、タンパク質が所望の3次構造を持つように助ける役割、及び無駄な分子間または分子内の相互作用を防止する役割をする補助タンパク質をいう。折り畳み中間体を保護して凝集及び沈殿を防止する役割をするが、大腸菌ではGroEL、GroES、DnaK、HtpG、SecB、PapDなどがあり、PapD(細胞間膜に存在)を除いては全て細胞質に存在する(特許文献2、非特許文献5および非特許文献6)。フォールダーゼは、折り畳み段階において共有結合または異性化段階を容易にする役割をする補助タンパク質群をいう。例えば、タンパク質のジスルフィド結合の形成を促進するDsbA、DsbB、DsbC、DsbDなどがある(非特許文献7および非特許文献8)。
【0009】
第3の方法は、融合タンパク質を用いる方法である。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase)、マルトース−結合タンパク質(maltose-binding protein)、タンパク質A(Protein A)、腫瘍怪死因子−アルファ(tumor necrosis factor-α)、リシル−tRNA合成酵素などが融合タンパク質として開発された(非特許文献9、非特許文献10、特許文献11および特許文献3)。特許文献4には、ジスルフィドイソメラーゼ(disulphide isomerase)に融合させ、ジスルフィド結合を持つ真核細胞のタンパク質を可溶化させた。また、特許文献5では、H鎖ヒトフェリチンタンパク質と、大腸菌で不溶性の形で発現されるL鎖ヒトフェリチンタンパク質とを結合させ、可溶性融合タンパク質を生産したことがある。前述したように外来タンパク質を前記融合タンパク質と結合させて可溶性タンパク質の形で発現させようとする様々な試みが行われてきたが、ケース別にその影響が異なる。たとえば、各融合タンパク質の種類に応じて封入体の形で発現されることもあり、一部のみが可溶性の形で発現されることもあり、目的タンパク質に融合されるタンパク質が目的タンパク質の折り畳みを補助することもあるなど、様々な様相を示す(非特許文献12)。
【0010】
したがって、活性型の可溶性組み換えタンパク質を高効率及び高濃度で大量生産することが可能な技術が切実に求められている。
【特許文献1】韓国特許出願第1997−50023号
【特許文献2】韓国特許出願第2003−7008657号
【特許文献3】韓国特許出願第1996−44010号
【特許文献4】米国特許第6,027,888号
【特許文献5】韓国特許出願第2002−0040497号
【非特許文献1】Jeffrey G. T. and Amanda A. et al, (1997), Applied Biochemistry and Biotechnology 66, 197-238
【非特許文献2】Andrew D. Guise, Shauna M. West, and Julian B. Chaudhuri (1996), Molecular Biotechnology 6, 53-64
【非特許文献3】Schein, C. H. and M. H. M. Noteborn (1988), Biotechnology 6, 291-294
【非特許文献4】More, J. T., Uppal, F. Maley and G. F. Maley (1993), Protein. Expr. Purif. 4, 160-163
【非特許文献5】Hartl, F. U., R. Holdan and T. Langer (1994), Trends Biochem. Sci. 19, 20-25
【非特許文献6】Bernadea-Clark, E. and G. Georgiou (1994), American Chem. Soc. Symp. Ser. Vol. 470, ACS
【非特許文献7】Creighton, T. E., A. Zapun and N. J. Darby (1995), TIBTECH. 13, 18-27
【非特許文献8】Gottesman, M. E. and W. A. Hendrickson (2000). Curr. Opin. Microbiol. 3, 197-202
【非特許文献9】Smith, D. B. and Johnson, K. S. (1988), Gene 67, 31-40
【非特許文献10】Bedouelle, H. and Duplay, P. (1988), Euro. J. Biochem. 171, 541-549
【非特許文献11】Nisson, B. et al. (1987), Prot. Eng. 1, 107-113
【非特許文献12】Savvas C. Makrides (1996), Microbiological Review, 512-538
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような背景の下で、本発明者らは、遺伝子組み換え方法でタンパク質を生産するのに有用な融合タンパク質を探し出す代わりに、原核細胞で封入体として発現される外来タンパク質を活性のある形で大量製造することが可能な新しいベクターシステムを考案しようとした。
【0012】
その結果、原核細胞で目的タンパク質遺伝子及びβ−ラクタマーゼ遺伝子がポリシストロン的に発現(polycistronic expression)する発現ベクターシステムが、目的タンパク質を過量に発現すると同時にβ−ラクタマーゼを過量に発現するので、目的タンパク質を高い割合の可溶性の形で発現し大量生産するのに効果的であるという事実を見出し、このように構築された発現システムを用いて活性のある目的タンパク質を大量生産する方法を開発することにより、本発明を完成した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、原核細胞で発現の際に封入体を形成する外来目的タンパク質を活性型の可溶性タンパク質に製造する方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、前記活性型の目的タンパク質を製造するためのポリシストロンベクターシステムを提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一つの様態として、本発明は、目的タンパク質とβ−ラクタマーゼがそれぞれ第1シストロンと第2シストロンでポリシストロンの形で発現されることを特徴とする、原核細胞で活性型の可溶性目的タンパク質を生産する方法に関するものである。
【0016】
本発明者らは、原核細胞で発現の際に封入体を形成するヒト成長ホルモンタンパク質とβ−ラクタマーゼをポリシストロン的に発現させることにより、ヒト成長ホルモンとβ−ラクタマーゼが全て過量に発現され、この際、発現されたヒト成長ホルモンが活性を示す可溶性の形であることを確認した。反面、同一の条件でβ−ラクタマーゼの代わりにカナマイシンを用いて塩基性線維芽細胞成長因子と角質細胞成長因子の発現を試験した場合には、前記目的タンパク質の大部分が封入体として発現された。これを基礎に、医薬的に有用であるが原核細胞で発現の際に封入体を形成する多様な目的タンパク質をβ−ラクタマーゼとポリシストロン的に発現させ、その結果、目的タンパク質が活性を示す可溶性の形で製造された。
【0017】
したがって、別の様態として、本発明は、外来目的タンパク質を、活性を示す可溶性の形で製造するポリシストロンベクターに関するものである。
【0018】
具体的様態において、本発明は、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロン、及び(iii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンを持っていることを特徴とする、原核細胞で目的タンパク質を活性型の可溶性タンパク質として発現するためのポリシストロンベクターに関するものである。
【0019】
本願で使用された用語「ポリシストロン(polycistron)」は、一つのmRNAが同一のプロモータで合成され、各シストロンが終結コドンと開始コドンによって分離されており、各シストロンのためのリボソーム結合領域が存在して、各シストロンに該当するタンパク質が一つのプロモータで転写されたmRNAから同時に発現されるシステムをいう。ここで、「シストロン」とは、単一タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸のコート配列を意味し、シストロンは、5’開始コドンと3’終結コドンを含む。また、第1シストロン及び第2シストロンは、DNA配列上の順序を意味するのではなく、個別的なシストロンを指称するために使用された。
【0020】
好適な様態において、本発明のポリシストロンは、5’から3’方向に目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロンと、β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンとが作動可能に連結されるか、或いは5’から3’方向にβ−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンと、目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロンとが作動可能に連結できる。
【0021】
本願において使用された用語「ベクター」は、適切な宿主内でDNAを発現させることができる適切な調節配列に作動可能に連結されたDNA配列を含有するDNA製造物を意味し、具体的には、プロモータ配列、ターミネータ配列、マーカー遺伝子、その他の適切な配列を始めとして適切な調節配列を含むように製作することができる。このようなベクターは、プラスミド、ファージ、コスミドなどであってもよい(Molecular Cloning: Laboratory Mannual second edition, Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))。このようなベクターの製造、突然変異の誘発、配列分析、細部内へのDNAの導入、遺伝子発現及びタンパク質分析法は、文献[Current Protocols in Molecular Biology, edited by Ausubel et al., John Wiley & Sons (1992)]に詳細に記載されている。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムと関係なく複製し機能することができるか、或いは一部の場合にゲノムそれ自体に統合できる。プラスミドが現在ベクターの最も通常的に用いられる形であり、本願において、「プラスミド」及び「ベクター」は時々相互交換的に使用される。本願発明の目的上、ベクターは原核細胞における発現に適切なベクターであり、外来目的タンパク質とβ−ラクタマーゼをポリシストロン的に発現させるポリシストロンベクターである。
【0022】
本願において使用された用語「作動可能に連結された」は、発現調節配列が目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の転写及び解読を調節するように連結されたことをいい、発現調節配列(プロモータを含む)の調節の下にポリヌクレオチド配列が発現され、ポリヌクレオチド配列によってコードされる目的タンパク質のポリペプチドが生成されるように正確な解読フレームを維持させることを含む。
【0023】
本願において使用された用語「プロモータ」は、転写を引き起こすのに十分な最小限の配列を意味し、本願発明の目的上、外部シグナルまたは作用剤によって誘導可能なプロモータを使用する。原核細胞で目的タンパク質を発現するために使用することが可能なプロモータには、T7、tac、trc、lac、lpp、phoA、recA、araBAD、proU、cst−1、tetA、cadA、nar、lpp−lac、starvation promoters、cspA、T7−lac operator、T3−lac operator、T5−lac operator、T4 gene 32、nprM−lac operatorなどがある。好ましくは、T7、tac、lac、T7−lac operator、T3−lac operator、T5−lac operator、T4 gene 32、より好ましくはT7、tac、T7−lac operator、最も好ましくはT7プロモータである。T7プロモータは、T7 RNA重合酵素によって調節され、T7 RNA重合酵素の発現は、IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactoside)によって調節可能である。したがって、T7プロモータは、IPTGを用いて所望の時期に目的タンパク質の発現を誘導することができる。これは、原核宿主細胞、例えば大腸菌を培養して細胞数が増加するまで発現しないようにし、十分に大腸菌の数が増加した後に目的タンパク質の発現を誘導することが好ましいためである。
【0024】
リボソーム結合領域は、通常、開始コドンの約10bpの前に位置しており、ファージまたは原核細胞のポリシストロンオペロンシステムでmRNAの解読を正確且つ効率的に開始し得るようにする役割を果たす。
【0025】
本願発明のポリシストロンベクターを用いて発現させる目的タンパク質は、医薬的に利用可能な全てのタンパク質であり得る。特に、その間医薬的用途で使用することが要求されたが、遺伝子操作によって宿主細胞で大量発現されたとき、封入体を形成して不活性タンパク質を作るものと知られているタンパク質が、本願発明の目的タンパク質として使用するに適する。例えば、ヒト成長ホルモン(hGH)、顆粒球コロニー成長因子(G−CSF)、インターフェロン(IFN)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、角質細胞成長因子(KGF)、エリトロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、ヒト上皮細胞成長因子(EGF)、血素板誘導成長因子(PDGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、転換成長因子(TGF)、腫瘍怪死因子(TNF)、アンギオジェニン、アンギオテンシン、インターロイキン(IL)、組織プラスミノゲン活性因子(tPA)などを含み、より好ましくはhGH、G−CSF、IFN−α2b、bFGF、IGF−1、IGF−2、KGF、EPO、IL−7またはTPOなどを含む。このような目的タンパク質は、天然形であってもよく、変形された形であってもよい。これらタンパク質の全体配列またはその断片を含んで欠失、置換または付加などが行われた変形体を含む。本願発明の具体例では、hGH、G−CSF、IFN−α2b、bFGF、IGF−1、IGF−2及びKGFを発現する。
【0026】
本願発明で発現させようとする目的タンパク質は、目的タンパク質自体であリ得るが、精製を容易にし、或いは抗体または酵素と融合して様々な機能を持つようにし、或いは可溶性を増加させるために、可溶性を増加させる配列と融合させるなど、融合タンパク質の形を取ることができる。目的タンパク質が精製などを容易にするための配列を含む場合、目的タンパク質をこのような配列と融合タンパク質の形で発現させることができる。このように融合された目的タンパク質は、融合パートナー−連結ペプチド−目的タンパク質からなってもよく、それぞれの種類に応じて多様に製造されてもよい。さらに好ましくは、融合パートナーは、生産されたタンパク質の精製を容易にするためのもので、ヒスチジンが連結されたヒスチジン−tag、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase)、マルトース−結合タンパク質(maltose-binding protein)、タンパク質A(protein A)、タンパク質G(protein G)、flagペプチド、チオレドキシン(thiredoxin)、S−ペプチド、アビジン(avidin)、ストレプトアビジン(streptavidine)、ガラクトース結合タンパク質(galactose binding protein)、セルロース結合ドメイン(cellulose-binding domain)、キチン結合ドメイン(chitin-binding domain)、ポリアルギニン(polyarginine)、ポリシステイン(polycysteine)またはポリフェニルアラニン(polyphenylalanine)などを利用することができ、本願発明の具体例では、ヒスチジンが10個結合したヒスチジン−tagを利用した。このような融合パートナーと目的タンパク質とを分離させる連結ペプチドは、プロテアーゼによって切断できる配列を含み、配列特異性の強いエンテロキナーゼ、トロンビン、因子Xa、ウロキナーゼ、TEVプロテアーゼ、またはスブチリシン(subtilisin)の切断配列などを用いることができる。
【0027】
本願で使用された用語「活性型」は、組み換えベクターによって形質転換された形質転換体で安定的に発現され、完全な折り畳みを成すものであって、別途の変性または再折り畳み過程を経なくても生物学的活性を持つ可溶性タンパク質を意味する。
【0028】
本願に使用された用語「可溶性」は、タンパク質が水溶液に容易に沈殿されず、封入体またはその他の凝集体をよく形成しない性質を意味する。
【0029】
本願発明で使用されたβ−ラクタマーゼ(beta-lactamase;bla)は、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を選別するための因子であって、アンピシリン(ampicillin)に対する耐性を提供するタンパク質である。本願発明のポリシストロンベクターにおいて、目的タンパク質をコードするシストロンとβ−ラクタマーゼをコードするシストロンの配列順序は任意的に変化でき、好ましくはβ−ラクタマーゼをコードするシストロンが目的タンパク質をコードするシストロンの下部に位置する。
【0030】
本願発明の具体的実施で使用されたpT0類発現ベクターは、pET3aのT7プロモータの後ろに融合された目的タンパク質の遺伝子(融合パートナー−連結ペプチド−目的タンパク質の遺伝子)または目的タンパク質の遺伝子自体が作動可能に連結され、融合された目的タンパク質の遺伝子または目的タンパク質の遺伝子とβ−ラクタマーゼ遺伝子が同一プロモータの調節の下に転写されて目的タンパク質とβ−ラクタマーゼが過多発現されるベクターであって、融合されたhGH、G−CSF、IFN−α2b、bFGF、IGF−1、IGF−2及びKGF、または融合されていないKGF遺伝子がそれぞれ挿入されたpT0191、pT0−CSF、pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IGF2、pT0−KGF及びpT0N−KGFが製作された。これらベクターの発現結果、対照群の場合に比べると、目的タンパク質の大部分が可溶性の活性型で発現された。
【0031】
一方、本願発明の具体的実施で使用された対照群の発現ベクターpTT類は、発現ベクターpET3aのT7プロモータの直後に融合された目的タンパク質の遺伝子(融合パートナー−連結ペプチド−目的タンパク質の遺伝子)が作動可能に連結されたプラスミドであるが、融合された目的タンパク質の遺伝子とβ−ラクタマーゼ遺伝子がそれぞれ異なるプロモータの調節の下に調節されるベクターである。このようなベクターで形質転換された大腸菌は、融合された目的タンパク質を細胞内で過発現させることができるが、融合タンパク質の多くの量が封入体として発現された(実施例2)。別の対照群であるpTR0191は、発現ベクターpT0191でβ−ラクタマーゼ遺伝子を逆方向に転換させた後、T7プロモータの直後に融合されたヒト成長ホルモン遺伝子が作動可能に連結されたプラスミドであって、目的タンパク質とβ−ラクタマーゼ遺伝子が同一プロモータの調節の下に位置していない状態であり、pTR0191を宿主細胞で発現させたとき、大部分の融合タンパク質が封入体として発現され、β−ラクタマーゼは少量発現された(実施例5)。
【0032】
したがって、具体的な一様態として、本願発明は、β−ラクタマーゼを目的タンパク質自体または目的融合タンパク質と同時に過発現させながら目的タンパク質を高い割合の活性型で発現させるために、pTE3a発現ベクターから由来したpT0発現ベクターに融合されたhGH(配列番号5)、G−CSF(配列番号7)、IFN−α2b(配列番号9)、bFGF(配列番号11)、IGF−1(配列番号13)、IGF−2(配列番号15)、KGF(配列番号23)及び融合されていないKGF(配列番号25)をコードする遺伝子がそれぞれ挿入されたポリシストロン発現ベクターpT0191、pT0−CSF、pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IFG1、pT0−IGF2、pT0−KGF及びpT0N−KGFを提供する。特にpT0191及びpT0−IFNをE.coli BL21(DE3)に、pT0−CSFをE.coli BL21 Star(DE3)pLysSにそれぞれ形質転換させ、その形質転換体を2004年3月11日に大田市儒城区魚慇洞52番地に所在の韓国生命工学研究院内KCTC(Korean Collection for Type Cultures)に受託番号KCTC−10610BP、KCTC−10612BP及びKCTC−10611BPでそれぞれ寄託した。
【0033】
本発明のポリシストロン発現ベクターは、CaCl2を使用する化学的方法やエレクトロポレーション(electroporation)などを含む、当業界に公知になっている任意の方法を用いて、宿主細胞内に導入し、宿主細胞を形質転換させることができる。
【0034】
本願発明に使用された用語「形質転換」とは、ポリシストロン発現ベクターの遺伝子が発現されるように原核細胞に導入されることを意味する。
【0035】
融合タンパク質の組み換え核酸配列がその細胞内mRNAに適切に転写され、細胞がタンパク質を発現させることができれば、任意の原核宿主細胞が使用できるが、グラム陰性菌である大腸菌とグラム陽性菌であるバチルス菌などが好ましい。より好ましくは大腸菌、最も好ましくはE.coli BL21(DE3)、E.coli BL21 Star(DE3)pLysS、E.coli HMS(DE3)、E.coli AD494(DE3)などが使用可能である。前記宿主細胞は、バクテリオファージT7RNA重合酵素を持っており、これらの例に局限されない。本願発明で使用したバクテリオファージ由来T7プロモータは、大腸菌RNA重合酵素よりバクテリオファージT7RNA重合酵素によって発現されるのがさらに効率的なので(Studier FW et al. (1990), Method Enzymol. 185, 60-89)、発現ベクターpT0類を、バクテリオファージT7RNA重合酵素を持っているE.coli BL21(DE3)またはE.coli BL21 Star(DE3)pLysSなどに形質転換させて発現させることが好ましい。本願発明のpT0−CSF発現ベクターをE.coli BL21(DE3)、BL21 Star(DE3)pLysS、HMS(DE3)、またはAD494(DE3)に形質転換させる場合、目的融合タンパク質の70%以上を活性型で発現させることができる。
【0036】
したがって、別の様態として、本願発明は、前述したポリシストロン発現ベクターが導入された形質転換体を提供する。具体的例示として、pT0191、pT0−CSF、pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IGF2、pT0−KGFまたはpT0N−KGFで形質転換された大腸菌を含む。
【0037】
本願発明に係る発現ベクターによって形質転換された形質転換体は、目的タンパク質をコードするDNA配列が発現されるように、適切な培地及び条件の下で培養する。形質転換体を培養して組み換えタンパク質を発現させる方法は、当業界に公知になっている。例えば、形質転換体が成長し得る適切な培地に接種して種培養を行った後、これを本培養用培地に接種し、適切な条件で培養することにより、タンパク質の発現を誘導することができる。本培養の際、菌体成長段階と組み換えタンパク質の発現誘導段階を区別して実施することにより、組み換えタンパク質の生産性及び収率を増加させることができる。
【0038】
したがって、別の様態として、本発明は、前述した形質転換体を培養し、培養物から可溶性目的タンパク質を回収する段階を含む、活性型の可溶性タンパク質を生産する方法を提供する。
【0039】
形質転換体を培養して前記培養物から実質的に純粋な目的タンパク質を回収することにより、これを医薬的に使用することができる。組み換えタンパク質の回収は、当業界に公知になっている多様な分離及び精製方法によって達成することができる。通常、細胞残屑(cell debris)などを除去するために、前記細胞溶解物などを遠心分離した後、沈殿、透析、各種カラムクロマトグラフィーなどを適用する。イオン交換クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、HPLC、逆相−HPLC、Preparative SDS−PAGE、親和性カラムなどは、カラムクロマトグラフィーの例である。
【0040】
本願発明に係る可溶性活性型タンパク質の精製は、細胞破砕、遠心分離の後に再折り畳み工程(refolding process)を経なくても、超濾過やイオン交換クロマトグラフィーなどの一般な精製方法によって達成される。これにより、分離して活性型の目的タンパク質を容易に得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0042】
(実施例1:発現ベクターpTT191の構築)
本発明の対照群として、ヒト成長ホルモンを含有した融合タンパク質の大量が封入体として発現されるpTT191を製造した。
【0043】
ヒスチジン−tag及びエンテロキナーゼ認識配列に連結されたヒト成長ホルモン融合タンパク質(配列番号5)を合成するために、PCRライゲーション法(Willem P.C. Stemmer, and Herbert L. Heyneker (1995) Gene 164, 49-53; Scott W. Altmann, and Robert A. Kastelein (1995) Protein Expression and Purification 6, 722-726; Ana Paula de Mattos Areas, and Paulo Lee Ho (2002) Protein Expression and Purification 25, 481-487)を用いて融合ヒト成長ホルモン遺伝子を製造した。PCRライゲーション法は、次のような方法で行った。PCRチューブに、相補的に20個の塩基配列が重なり合った合成オリゴヌクレオチド対をそれぞれ50pmole、pfu重合酵素(Stratagene、米国)2.5U(1μL)、2.5mM dNTPs(Takara、日本)2L、pfu重合酵素緩衝10倍液2μLを順次入れた後、最終体積が20μLとなるように滅菌蒸留水を入れ、その後PCR機械(MJ research、米国)を用いて反応を行った。この際、各オリゴヌクレオチドは、テンプレートであると同時にプライマーとして作用する。PCR反応条件は、94℃で5分間変性させた後、95℃で1分、52℃で30秒、72℃で30秒間反応を20回繰り返し行った後、さらに72℃で10分間反応させた。各産物の末端に相補的な塩基(20bp)配列を有する2種のPCR産物を重合酵素連鎖反応のチューブに5μLずつ投入し、pfu重合酵素(Stratagene、米国)2.5U(1μL)、2.5mM dNTPs(Takara、日本)2μL、pfu重合酵素緩衝10倍液2μLを順次入れた後、最終体積が20μLとなるように滅菌蒸留水を入れ、PCR機械(MJ research、米国)を用いて反応を行った。PCR条件は、94℃で5分間変性させた後、95℃で1分、52℃で30秒、72℃で30秒間反応を20回繰り返し行い、さらに72℃で10分間反応させた。このような反応を繰り返し行い、最終段階のPCR反応は30回行って合成遺伝子を獲得した。合成された遺伝子は1%アガロースゲルに展開してQIAQuick gel extraction kit(Qiagen、米国)を用いて合成遺伝子を分離した。その結果、ヒスチジン−tag(配列番号1)及びエンテロキナーゼ認識配列(配列番号3)を含み、両端に制限酵素NdeIの認識配列を含んでいる融合されたヒト成長ホルモン(ソマトトロピン)遺伝子(配列番号5)を製造した。その後、発現ベクターpTT191は、図1に示すように製造された。合成された融合遺伝子を制限酵素NdeIで処理して1%アガロースゲル電気泳動して分離、精製し、NdeIと牛の小腸アルカリリン酸分解酵素(calf intestine alkine phosphatase、CIAP)(NEB、米国)で処理されたpET3a(Novagen、米国)と混合した。CIAP処理は、NdeIによって切断されたpET3aのセルフライゲーション(self ligation)を防止するために37℃で1時間反応した。融合遺伝子とpET3aの混合物は、T4 DNAリガーゼ(NEB、米国)で16℃で18時間反応させて連結してpTT191を製造した後、E.coli TOP10(Invitrogen、米国)に形質転換した。形質転換体でプラスミドを精製してE.coli BL21(DE3)(Novagen、米国)菌株に形質転換させた。発現ベクターpTT91で形質転換されたE.coli BL21(DE3)形質転換体は、アンピシリン(200g/mL)が含まれたLB平板培地から選別され、E.coli BL21(DE3)/pTT191と命名した。発現ベクターpTT191にヒト成長ホルモンの遺伝子を含んだ融合遺伝子が正しく挿入されたかを制限酵素AlwnI、HindIIIで切断した後、DNA配列分析によって遺伝子配列を確認した。
【0044】
(実施例2:E.coli BL21(DE3)/pTT191形質転換体での融合ヒト成長ホルモンの発現)
対照群である発現ベクターpTT191で形質転換された大腸菌におけるヒト成長ホルモン含有融合タンパク質の発現様相を調査した。
【0045】
発現ベクターpTT191で形質転換されたE.coli BL21(DE3)/pTT191をLB培地(Luria-Bertani medium)で30℃、12時間培養した後、IPTG(Isopropyl-β-D-Thiogalactopyranoside)で融合タンパク質の発現を誘導した。培養の後、遠心分離によって細胞を回収した後、細胞を破砕し、上澄み液を分離して融合タンパク質の発現を確認した。その結果、図2に示すように、ヒト成長ホルモン含有融合タンパク質が予測した約24kDaのサイズと一致したが、大部分は封入体として発現された。
【0046】
(実施例3:発現ベクターpT0191の構築)
ヒト成長ホルモン含有融合タンパク質を大量の可溶性タンパク質として発現するためのpT0191を製造した。
【0047】
融合ヒト成長ホルモンタンパク質をコードする遺伝子をpET3aベクターに挿入するために、pTT191をテンプレートとし、配列の端部に制限酵素NdeIとHindeIII認識部位が含まれるようにPCRを次の条件で行った。重合酵素連鎖反応チューブに、テンプレートとしてのpTT191プラスミド(実施例1)100ng、pfu重合酵素(Stratagene、米国)2.5U(1μL)、プライマーA(5’-AAACATATGGGCCATCATCATCATCATCATCATCATCATCAC−3’、配列番号19)30pmole、プライマーB(5’−AAAAAGCTTTTACTAGAAGCCACAGCTGCC−3’、配列番号20)30pmole、2.5mM dNTPs(Takara、日本)2μL、pfu重合酵素緩衝10倍液2μLを順次入れた後、最終体積が20μLとなるように滅菌蒸留水を入れ、その後PCR機械(MJ research、米国)を用いて反応を行った。反応条件は、94℃で5分間変性させた後、95℃で1分、58℃で30秒、72℃で2分間反応を30回繰り返し行い、さらに72℃で10分間反応させることである。製造された遺伝子を制限酵素NdeIとHindIIIで処理して1%アガロースゲル電気泳動によって分離、精製した。発現ベクターpET3aは、制限酵素NdeIとHindIIIで処理して1%アガロースゲル電気泳動によって4119bpサイズの切片を分離、精製して回収した。制限酵素NdeIとHindIIIでそれぞれ処理した融合遺伝子とpET3a切片をT4 DNAリガーゼで16℃で18時間反応させて連結してpT0191を製造した後、E.coli TOP10に形質転換した(図3)。前記形質転換体でプラスミドを精製してE.coli BL21(DE3)菌株に形質転換させた。発現ベクターpT0191で形質転換されたE.coli BL21(DE3)形質転換体は、アンピシリン200g/mLが含まれているLB平板培地で選別され、E.coli BL21(DE3)/pT0191(KCTC10610BP)と命名した。ヒト成長ホルモンの遺伝子を含んだ融合遺伝子が発現ベクターpT0191に正しく挿入されたかを、制限酵素AlwnI、HindIIIで切断した後、DNA配列分析によって遺伝子配列を確認した。
【0048】
(実施例4:E.coliBL21(DE3)/pT0191形質転換体での融合ヒト成長ホルモンの発現)
発現ベクターpT0191で形質転換された大腸菌におけるヒト成長ホルモン含有融合タンパク質の発現様相を調査した。
【0049】
発現ベクターpT0191で形質転換されたE.coli BL21(DE3)/pT0191をLB培地で30℃、12時間培養した後、IPTGで融合タンパク質の発現を誘導し、ヒト成長ホルモン含有融合タンパク質の発現を確認した。発現された融合タンパク質は、図4に示すように、発現された融合タンパク質の大部分が活性型で発現されて上澄み液に存在し、その大きさは約24kDaであった。E.coli BL21(DE3)/pTT191形質転換体の場合とは異なり、E.coli BL21(DE3)/pT0191形質転換体では、目的とした融合タンパク質と共にβ−ラクタマーゼも過発現されることを確認することができた。N末端の配列分析によって、発現されたβ−ラクタマーゼを確認することができた。
【0050】
(実施例5:発現プラスミドpTR0191の構築及びE.coli BL21(DE3)/pTR0191形質転換体でのヒト成長ホルモンの発現)
実施例3で構築されたpT0191プラスミドをSphI/HindIIIで処理して3812bpサイズの切片を精製して準備し、pT0191プラスミドにおいてβ−ラクタマーゼに該当する遺伝子を、2つのプライマー(プライマー1:5’−AAAAAGCTTAAGGAGATGGCGCCCA−3’(配列番号21)、プライマー2:5’−AAAGCATGCCTAGAAGCCACAGCTG−3’(配列番号22))を用いてPCRによって増幅させ、SphIとHindIII制限酵素の方向が変わった950bpサイズの切片を得て、T4 DNAリガーゼで接合することにより、ヒト成長ホルモンとβ−ラクタマーゼ遺伝子配列の方向が異なるpTR0191プラスミドを製造した(図5)。製造されたプラスミドをE.coli BL21(DE3)に形質転換させて30℃で発現を確認した。図6に示すように、発現された目的タンパク質は、大部分が封入体として発現され、β−ラクタマーゼの発現量は、pT0191の場合に比べて少量であった。
【0051】
(実施例6:発現ベクターpT0−CSFの構築)
ヒト顆粒球コロニー刺激因子を含む融合タンパク質を大量の可溶性タンパク質として発現するためのpT0−CSFを製造した。ヒスチジン−tag及びエンテロキナーゼ認識配列に連結されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)融合タンパク質をコードする遺伝子(配列番号7)を、実施例1と同様にPCRライゲーション方法で合成し、実施例3と同様にベクターを構成した(図3)。発現ベクターpT0−CSFで形質転換されたE.coli BL21 Star(DE3)pLysS(Invitrogen、米国)形質転換体をE.coli BL21 Star(DE3)pLysS/pT0-CSF(KCTC10611BP)と命名し、ヒト顆粒球コロニー刺激因子の遺伝子を含んだ融合遺伝子が発現ベクターpT0−CSFに正しく挿入されたかを、制限酵素NdeI、HindIIIで切断した後、DNA配列分析によって遺伝子配列を確認した。
【0052】
(実施例7:E.coli B21 Star(DE3)pLysS/pT0−CSF形質転換体での融合ヒト顆粒球コロニー刺激因子の発現)
発現ベクターpT0−CSFで形質転換された大腸菌におけるヒト顆粒球コロニー刺激因子含有融合タンパク質の発現様相を調査した。
【0053】
発現ベクターpT0−CSFで形質転換されたE.coli B21 Star(DE3)pLysS/pT0−CSFをLB培地で30℃、12時間培養した後、IPTGで融合タンパク質の発現を誘導した。発現された融合タンパク質は、図7に示すように、発現されたヒト顆粒球コロニー刺激因子含有融合タンパク質の大部分が活性型で発現されて上澄み液に存在し、その大きさは約20kDaであった。発現ベクターpT0−CSFで形質転換されたE.coli B21 Star(DE3)pLysS/pT0−CSFにおいても、E.coli BL21(DE3)/pT0191形質転換体の場合と同じように、目的とした融合−ヒト顆粒球コロニー刺激因子と共にβ−ラクタマーゼが過発現された。
【0054】
また、発現ベクターpT0−CSFをE.coli BL21(DE3)(Novagen、米国)、E.coli HMS(DE3)(Novagen、米国)及びE.coli AD494(DE3)(Novagen、米国)に形質転換させて融合−ヒト顆粒球コロニー刺激因子の発現を確認した結果、表1(pT0−CSFの宿主細胞の種類によって融合−ヒト顆粒球コロニー刺激因子の発現様相を比較)に示すように、融合タンパク質の大部分が活性型で発現されることが分かった。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例8:発現ベクターpT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IGF2、pT0−KGF及びpT0N−KGFの構築)
様々な目的タンパク質自体または目的タンパク質を含む融合タンパク質を大量の可溶性タンパク質として発現するためのpT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IGF2、pT0−KGF及びpT0N−KGFを製造した。ヒスチジン−tag及びエンテロキナーゼ認識配列に連結されたインターフェロン−アルファ2b融合タンパク質(配列番号9)、塩基性線維芽細胞成長因子融合タンパク質(配列番号11)、インシュリン様成長因子−1融合タンパク質(配列番号13)、インシュリン様成長因子−2融合タンパク質(配列番号15)、角質細胞成長因子融合タンパク質(配列番号23)、及び融合されていない角質細胞成長因子タンパク質自体(配列番号25)をコードする遺伝子を、実施例1と同様のPCRライゲーション合成方法で製造し、pET3aベクターに融合タンパク質を挿入するためにコード遺伝子の配列の端部に制限酵素NdeI認識部位と制限酵素HindIII認識部位が含まれるようにデザインした。製造された遺伝子を制限酵素NdeIとHindIIIで処理して1%アガロースゲル電気泳動して分離、精製した。発現ベクターPET3aは、制限酵素NdeIとHindIIIで処理して1%アガロースゲル電気泳動によって4119bpサイズの切片を分離、精製して回収した。制限酵素NdeIとHindIIIでそれぞれ処理した融合遺伝子とpET3a切片をT4DNAリガーゼで16℃で18時間反応させて連結してそれぞれ発現ベクターpT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IFG2、pT0−KGF及びpT0N−KGFを製造した後、E.coli TOP10に形質転換した。前記形質転換体でプラスミドを精製してE.coli BL21(DE3)菌株にそれぞれ形質転換させた。それぞれの発現ベクターを制限酵素AlwnI、HindIIIで切断した後、DNA配列分析によって遺伝子配列を確認した。
【0057】
(実施例9:E.coli BL21(DE3)/pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IFG2、pT0−KGF及びpT0N−KGF形質転換体での各目的タンパク質の発現)
発現ベクターpT0−IFN、T0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IFG2、pT0−KGF及びpT0N−KGFそれぞれで形質転換されたそれぞれの大腸菌におけるそれぞれの目的タンパク質の発現様相を調査した。
【0058】
前記発現ベクターで形質転換されたE.coli BL21(DE3)をLB培地で30℃、12時間培養した後、IPTGで各目的タンパク質の発現を誘導した。その結果をそれぞれ図8〜図13に示した。図示の如く、それぞれの発現されたタンパク質は、大部分が上澄み液に存在して可溶性活性タンパク質として発現されるのを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によってβ−ラクタマーゼと目的タンパク質を共に過発現する発現ベクターを提供することにより、原核細胞で発現の際に封入体を形成する外来目的タンパク質を可溶性の活性型で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1はヒト成長ホルモン遺伝子が挿入された発現ベクターPTT191を製造する過程を図式化して示す。
【図2】図2は発現ベクターpTT19をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、ヒト成長ホルモンの発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:ヒト成長ホルモン標準品、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物。)
【図3】図3はそれぞれヒト成長ホルモン遺伝子及びヒト顆粒球コロニー刺激因子遺伝子が挿入された発現ベクターpT0191及びPT0−CSFを製造する過程を図式化して示す。
【図4】図4は発現ベクターpT0191をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、ヒト成長ホルモンの発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:ヒト成長ホルモン標準品、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た全体タンパク質、レイン4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン5:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物。)
【図5】図5はβ−ラクタマーゼが逆方向に置換された発現ベクターにヒト成長ホルモン遺伝子が挿入されたpTR0191を示す。
【図6】図6は発現ベクターpTR0191をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、ヒト成長ホルモンの発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:ヒト成長ホルモン標準品、レイン3及び4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン5及び6:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図7】図7は発現ベクターpT0−CSFをE.coliBL21 Star(DE3)pLysSに形質転換させた後、ヒト顆粒球コロニー成長因子の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導前の形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン3及び4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン5及び6:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物。)
【図8】図8は発現ベクターpT0−IFNをE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、インターフェロン−アルファ2bの発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図9】図9は発現ベクターpT0−bFGFをE.coliBL21(DE3)に形質転換させた後、塩基性線維芽細胞成長因子の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図10】図10は発現ベクターpT0−IGF1をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、インシュリン様成長因子−1の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図11】図11は発現ベクターpT0−IGF2をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、インシュリン様成長因子−2の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図12】図12は発現ベクターpT0−KGFをE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、角質細胞成長因子の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図13】図13は発現ベクターpT0N−KGFをE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、角質細胞成長因子の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導前の形質転換体全体、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物。)
【技術分野】
【0001】
本発明は、原核細胞で活性型の可溶性目的タンパク質を製造する方法及びそのためのポリシストロンベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
組み換え大腸菌を用いた外来タンパク質の生産システムは、細胞成長速度が速く、低価の基質を用いた高濃度培養が可能であり、他の生物体を用いた場合に比べると良く解明された遺伝子が使用されているので、外来タンパク質の高発現と精製の容易さのために様々な種類のベクターシステムを設計することができるという利点がある(非特許文献1)。
【0003】
ところが、大腸菌を真核細胞由来タンパク質生産の宿主細胞として用いる場合、タンパク質の成熟に必要な細胞内要素を備えていないため、グリコシル化(glycosylation)などの翻訳後修飾(post-translational modification)過程が行われないという欠点がある。また、外来タンパク質を過量に発現する場合には、不溶性沈殿物である封入体(inclusion body)の形で細胞質内に蓄積されることが多い。
【0004】
封入体は、目的タンパク質の生成速度と折り畳み速度間の不釣合いのため目的タンパク質の折り畳み中間体が外部に露出されている疎水性部位の相互結合によって形成される。この場合、封入体を容易に分離することができ、一般にタンパク質分解酵素の影響がより少なく、細胞内に高濃度で蓄積されるので生産性に優れるうえ、目的タンパク質を容易に分離することができるという利点を持っており、細胞内折り畳み(folding)が容易でないタンパク質の生産に利用されたりもする。ところが、封入体の形で生産された目的タンパク質は、再折り畳み過程を経て生物学的活性を回復しなければならない付加的工程を必要とする。活性型へのタンパク質の再折り畳み段階は、経験的であって必ずしも成功的に行われるのではなく、組み換えタンパク質を産業的規模に拡張して生産するには難しさがある。また、分子量の大きい抗体タンパク質、組織プラスミノゲン活性因子(tissue plasminogen activator)tPA及び因子VIIIなどは、再折り畳み過程を介して活性のあるタンパク質の形で得るのが非常に難しいものと知られている。
【0005】
上述したように、封入体を完全な構造と生物学的活性を呈するようにするためには再折り畳み過程を経なければならないため(非特許文献2)、細胞内でタンパク質の正しい3次構造の形成を誘導するために、いわゆるタンパク質の「細胞内折り畳み技術(in vivo protein folding technique)」を用いて可溶性タンパク質として発現している。これは、外来タンパク質を封入体の形で生産するときに誘発される問題点を改善するので、大腸菌で外来タンパク質を生産するにおいて産業的に重要な意味がある。
【0006】
タンパク質の細胞内折り畳みのために一般に用いられている方法は、次の通りである。
【0007】
第1の方法は、タンパク質の発現位置及び培養環境を調節する方法である。細胞質内でタンパク質を発現させると、目的タンパク質が細胞に有害なものの場合にも細胞が損傷しないうえ、大部分の場合、タンパク質の発現量が非常に多く、発現ベクターの製造が容易であるという利点がある。別の方法として、ペリプラズム(periplasm)にタンパク質を分泌させると、精製が単純になり、タンパク質分解酵素による分解が細胞質に比べて低くなり、相対的に酸化的な環境によってジスルフィド結合などがある程度可能になり、アミノ末端の分泌信号が切断されて天然型タンパク質が得られるという利点があるが、分泌されたタンパク質が凝集して封入体が形成でき、還元された折り畳みが発生する可能性がある。別の方法として、培地中にタンパク質を分泌させると、タンパク質の折り畳み問題と分解酵素による分解を解決することができるが、一般に大腸菌では倍地中にタンパク質が殆ど排出されず、排出されたとしても、タンパク質がすごく希釈されて却って精製を難しくするおそれがある。このような方法は、特定のタンパク質の場合にのみ効果があって、封入体の形成を防ぐ一般的な方法ではない。発酵工程条件の調節も、可溶性タンパク質を増加させる方法としてよく使用されており、大部分の場合、最も経済的な方法である(特許文献1)。培養温度の減少は、全てのタンパク質に適用されるのではないが、一般タンパク質の生成速度をタンパク質の折り畳み速度以下に遅めて相互凝集性の強い折り畳み中間体が蓄積されないようにするので、大部分の場合に非常に効果的な方法である(非特許文献3、非特許文献4)。
【0008】
第2の方法は、シャペロン(chaperone)及びタンパク質フォールダーゼ(foldase)の同時発現法である。シャペロンとは、タンパク質が所望の3次構造を持つように助ける役割、及び無駄な分子間または分子内の相互作用を防止する役割をする補助タンパク質をいう。折り畳み中間体を保護して凝集及び沈殿を防止する役割をするが、大腸菌ではGroEL、GroES、DnaK、HtpG、SecB、PapDなどがあり、PapD(細胞間膜に存在)を除いては全て細胞質に存在する(特許文献2、非特許文献5および非特許文献6)。フォールダーゼは、折り畳み段階において共有結合または異性化段階を容易にする役割をする補助タンパク質群をいう。例えば、タンパク質のジスルフィド結合の形成を促進するDsbA、DsbB、DsbC、DsbDなどがある(非特許文献7および非特許文献8)。
【0009】
第3の方法は、融合タンパク質を用いる方法である。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase)、マルトース−結合タンパク質(maltose-binding protein)、タンパク質A(Protein A)、腫瘍怪死因子−アルファ(tumor necrosis factor-α)、リシル−tRNA合成酵素などが融合タンパク質として開発された(非特許文献9、非特許文献10、特許文献11および特許文献3)。特許文献4には、ジスルフィドイソメラーゼ(disulphide isomerase)に融合させ、ジスルフィド結合を持つ真核細胞のタンパク質を可溶化させた。また、特許文献5では、H鎖ヒトフェリチンタンパク質と、大腸菌で不溶性の形で発現されるL鎖ヒトフェリチンタンパク質とを結合させ、可溶性融合タンパク質を生産したことがある。前述したように外来タンパク質を前記融合タンパク質と結合させて可溶性タンパク質の形で発現させようとする様々な試みが行われてきたが、ケース別にその影響が異なる。たとえば、各融合タンパク質の種類に応じて封入体の形で発現されることもあり、一部のみが可溶性の形で発現されることもあり、目的タンパク質に融合されるタンパク質が目的タンパク質の折り畳みを補助することもあるなど、様々な様相を示す(非特許文献12)。
【0010】
したがって、活性型の可溶性組み換えタンパク質を高効率及び高濃度で大量生産することが可能な技術が切実に求められている。
【特許文献1】韓国特許出願第1997−50023号
【特許文献2】韓国特許出願第2003−7008657号
【特許文献3】韓国特許出願第1996−44010号
【特許文献4】米国特許第6,027,888号
【特許文献5】韓国特許出願第2002−0040497号
【非特許文献1】Jeffrey G. T. and Amanda A. et al, (1997), Applied Biochemistry and Biotechnology 66, 197-238
【非特許文献2】Andrew D. Guise, Shauna M. West, and Julian B. Chaudhuri (1996), Molecular Biotechnology 6, 53-64
【非特許文献3】Schein, C. H. and M. H. M. Noteborn (1988), Biotechnology 6, 291-294
【非特許文献4】More, J. T., Uppal, F. Maley and G. F. Maley (1993), Protein. Expr. Purif. 4, 160-163
【非特許文献5】Hartl, F. U., R. Holdan and T. Langer (1994), Trends Biochem. Sci. 19, 20-25
【非特許文献6】Bernadea-Clark, E. and G. Georgiou (1994), American Chem. Soc. Symp. Ser. Vol. 470, ACS
【非特許文献7】Creighton, T. E., A. Zapun and N. J. Darby (1995), TIBTECH. 13, 18-27
【非特許文献8】Gottesman, M. E. and W. A. Hendrickson (2000). Curr. Opin. Microbiol. 3, 197-202
【非特許文献9】Smith, D. B. and Johnson, K. S. (1988), Gene 67, 31-40
【非特許文献10】Bedouelle, H. and Duplay, P. (1988), Euro. J. Biochem. 171, 541-549
【非特許文献11】Nisson, B. et al. (1987), Prot. Eng. 1, 107-113
【非特許文献12】Savvas C. Makrides (1996), Microbiological Review, 512-538
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような背景の下で、本発明者らは、遺伝子組み換え方法でタンパク質を生産するのに有用な融合タンパク質を探し出す代わりに、原核細胞で封入体として発現される外来タンパク質を活性のある形で大量製造することが可能な新しいベクターシステムを考案しようとした。
【0012】
その結果、原核細胞で目的タンパク質遺伝子及びβ−ラクタマーゼ遺伝子がポリシストロン的に発現(polycistronic expression)する発現ベクターシステムが、目的タンパク質を過量に発現すると同時にβ−ラクタマーゼを過量に発現するので、目的タンパク質を高い割合の可溶性の形で発現し大量生産するのに効果的であるという事実を見出し、このように構築された発現システムを用いて活性のある目的タンパク質を大量生産する方法を開発することにより、本発明を完成した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、原核細胞で発現の際に封入体を形成する外来目的タンパク質を活性型の可溶性タンパク質に製造する方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、前記活性型の目的タンパク質を製造するためのポリシストロンベクターシステムを提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一つの様態として、本発明は、目的タンパク質とβ−ラクタマーゼがそれぞれ第1シストロンと第2シストロンでポリシストロンの形で発現されることを特徴とする、原核細胞で活性型の可溶性目的タンパク質を生産する方法に関するものである。
【0016】
本発明者らは、原核細胞で発現の際に封入体を形成するヒト成長ホルモンタンパク質とβ−ラクタマーゼをポリシストロン的に発現させることにより、ヒト成長ホルモンとβ−ラクタマーゼが全て過量に発現され、この際、発現されたヒト成長ホルモンが活性を示す可溶性の形であることを確認した。反面、同一の条件でβ−ラクタマーゼの代わりにカナマイシンを用いて塩基性線維芽細胞成長因子と角質細胞成長因子の発現を試験した場合には、前記目的タンパク質の大部分が封入体として発現された。これを基礎に、医薬的に有用であるが原核細胞で発現の際に封入体を形成する多様な目的タンパク質をβ−ラクタマーゼとポリシストロン的に発現させ、その結果、目的タンパク質が活性を示す可溶性の形で製造された。
【0017】
したがって、別の様態として、本発明は、外来目的タンパク質を、活性を示す可溶性の形で製造するポリシストロンベクターに関するものである。
【0018】
具体的様態において、本発明は、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロン、及び(iii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンを持っていることを特徴とする、原核細胞で目的タンパク質を活性型の可溶性タンパク質として発現するためのポリシストロンベクターに関するものである。
【0019】
本願で使用された用語「ポリシストロン(polycistron)」は、一つのmRNAが同一のプロモータで合成され、各シストロンが終結コドンと開始コドンによって分離されており、各シストロンのためのリボソーム結合領域が存在して、各シストロンに該当するタンパク質が一つのプロモータで転写されたmRNAから同時に発現されるシステムをいう。ここで、「シストロン」とは、単一タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸のコート配列を意味し、シストロンは、5’開始コドンと3’終結コドンを含む。また、第1シストロン及び第2シストロンは、DNA配列上の順序を意味するのではなく、個別的なシストロンを指称するために使用された。
【0020】
好適な様態において、本発明のポリシストロンは、5’から3’方向に目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロンと、β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンとが作動可能に連結されるか、或いは5’から3’方向にβ−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンと、目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロンとが作動可能に連結できる。
【0021】
本願において使用された用語「ベクター」は、適切な宿主内でDNAを発現させることができる適切な調節配列に作動可能に連結されたDNA配列を含有するDNA製造物を意味し、具体的には、プロモータ配列、ターミネータ配列、マーカー遺伝子、その他の適切な配列を始めとして適切な調節配列を含むように製作することができる。このようなベクターは、プラスミド、ファージ、コスミドなどであってもよい(Molecular Cloning: Laboratory Mannual second edition, Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))。このようなベクターの製造、突然変異の誘発、配列分析、細部内へのDNAの導入、遺伝子発現及びタンパク質分析法は、文献[Current Protocols in Molecular Biology, edited by Ausubel et al., John Wiley & Sons (1992)]に詳細に記載されている。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムと関係なく複製し機能することができるか、或いは一部の場合にゲノムそれ自体に統合できる。プラスミドが現在ベクターの最も通常的に用いられる形であり、本願において、「プラスミド」及び「ベクター」は時々相互交換的に使用される。本願発明の目的上、ベクターは原核細胞における発現に適切なベクターであり、外来目的タンパク質とβ−ラクタマーゼをポリシストロン的に発現させるポリシストロンベクターである。
【0022】
本願において使用された用語「作動可能に連結された」は、発現調節配列が目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の転写及び解読を調節するように連結されたことをいい、発現調節配列(プロモータを含む)の調節の下にポリヌクレオチド配列が発現され、ポリヌクレオチド配列によってコードされる目的タンパク質のポリペプチドが生成されるように正確な解読フレームを維持させることを含む。
【0023】
本願において使用された用語「プロモータ」は、転写を引き起こすのに十分な最小限の配列を意味し、本願発明の目的上、外部シグナルまたは作用剤によって誘導可能なプロモータを使用する。原核細胞で目的タンパク質を発現するために使用することが可能なプロモータには、T7、tac、trc、lac、lpp、phoA、recA、araBAD、proU、cst−1、tetA、cadA、nar、lpp−lac、starvation promoters、cspA、T7−lac operator、T3−lac operator、T5−lac operator、T4 gene 32、nprM−lac operatorなどがある。好ましくは、T7、tac、lac、T7−lac operator、T3−lac operator、T5−lac operator、T4 gene 32、より好ましくはT7、tac、T7−lac operator、最も好ましくはT7プロモータである。T7プロモータは、T7 RNA重合酵素によって調節され、T7 RNA重合酵素の発現は、IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactoside)によって調節可能である。したがって、T7プロモータは、IPTGを用いて所望の時期に目的タンパク質の発現を誘導することができる。これは、原核宿主細胞、例えば大腸菌を培養して細胞数が増加するまで発現しないようにし、十分に大腸菌の数が増加した後に目的タンパク質の発現を誘導することが好ましいためである。
【0024】
リボソーム結合領域は、通常、開始コドンの約10bpの前に位置しており、ファージまたは原核細胞のポリシストロンオペロンシステムでmRNAの解読を正確且つ効率的に開始し得るようにする役割を果たす。
【0025】
本願発明のポリシストロンベクターを用いて発現させる目的タンパク質は、医薬的に利用可能な全てのタンパク質であり得る。特に、その間医薬的用途で使用することが要求されたが、遺伝子操作によって宿主細胞で大量発現されたとき、封入体を形成して不活性タンパク質を作るものと知られているタンパク質が、本願発明の目的タンパク質として使用するに適する。例えば、ヒト成長ホルモン(hGH)、顆粒球コロニー成長因子(G−CSF)、インターフェロン(IFN)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、インシュリン様成長因子(IGF)、角質細胞成長因子(KGF)、エリトロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、ヒト上皮細胞成長因子(EGF)、血素板誘導成長因子(PDGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、転換成長因子(TGF)、腫瘍怪死因子(TNF)、アンギオジェニン、アンギオテンシン、インターロイキン(IL)、組織プラスミノゲン活性因子(tPA)などを含み、より好ましくはhGH、G−CSF、IFN−α2b、bFGF、IGF−1、IGF−2、KGF、EPO、IL−7またはTPOなどを含む。このような目的タンパク質は、天然形であってもよく、変形された形であってもよい。これらタンパク質の全体配列またはその断片を含んで欠失、置換または付加などが行われた変形体を含む。本願発明の具体例では、hGH、G−CSF、IFN−α2b、bFGF、IGF−1、IGF−2及びKGFを発現する。
【0026】
本願発明で発現させようとする目的タンパク質は、目的タンパク質自体であリ得るが、精製を容易にし、或いは抗体または酵素と融合して様々な機能を持つようにし、或いは可溶性を増加させるために、可溶性を増加させる配列と融合させるなど、融合タンパク質の形を取ることができる。目的タンパク質が精製などを容易にするための配列を含む場合、目的タンパク質をこのような配列と融合タンパク質の形で発現させることができる。このように融合された目的タンパク質は、融合パートナー−連結ペプチド−目的タンパク質からなってもよく、それぞれの種類に応じて多様に製造されてもよい。さらに好ましくは、融合パートナーは、生産されたタンパク質の精製を容易にするためのもので、ヒスチジンが連結されたヒスチジン−tag、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase)、マルトース−結合タンパク質(maltose-binding protein)、タンパク質A(protein A)、タンパク質G(protein G)、flagペプチド、チオレドキシン(thiredoxin)、S−ペプチド、アビジン(avidin)、ストレプトアビジン(streptavidine)、ガラクトース結合タンパク質(galactose binding protein)、セルロース結合ドメイン(cellulose-binding domain)、キチン結合ドメイン(chitin-binding domain)、ポリアルギニン(polyarginine)、ポリシステイン(polycysteine)またはポリフェニルアラニン(polyphenylalanine)などを利用することができ、本願発明の具体例では、ヒスチジンが10個結合したヒスチジン−tagを利用した。このような融合パートナーと目的タンパク質とを分離させる連結ペプチドは、プロテアーゼによって切断できる配列を含み、配列特異性の強いエンテロキナーゼ、トロンビン、因子Xa、ウロキナーゼ、TEVプロテアーゼ、またはスブチリシン(subtilisin)の切断配列などを用いることができる。
【0027】
本願で使用された用語「活性型」は、組み換えベクターによって形質転換された形質転換体で安定的に発現され、完全な折り畳みを成すものであって、別途の変性または再折り畳み過程を経なくても生物学的活性を持つ可溶性タンパク質を意味する。
【0028】
本願に使用された用語「可溶性」は、タンパク質が水溶液に容易に沈殿されず、封入体またはその他の凝集体をよく形成しない性質を意味する。
【0029】
本願発明で使用されたβ−ラクタマーゼ(beta-lactamase;bla)は、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を選別するための因子であって、アンピシリン(ampicillin)に対する耐性を提供するタンパク質である。本願発明のポリシストロンベクターにおいて、目的タンパク質をコードするシストロンとβ−ラクタマーゼをコードするシストロンの配列順序は任意的に変化でき、好ましくはβ−ラクタマーゼをコードするシストロンが目的タンパク質をコードするシストロンの下部に位置する。
【0030】
本願発明の具体的実施で使用されたpT0類発現ベクターは、pET3aのT7プロモータの後ろに融合された目的タンパク質の遺伝子(融合パートナー−連結ペプチド−目的タンパク質の遺伝子)または目的タンパク質の遺伝子自体が作動可能に連結され、融合された目的タンパク質の遺伝子または目的タンパク質の遺伝子とβ−ラクタマーゼ遺伝子が同一プロモータの調節の下に転写されて目的タンパク質とβ−ラクタマーゼが過多発現されるベクターであって、融合されたhGH、G−CSF、IFN−α2b、bFGF、IGF−1、IGF−2及びKGF、または融合されていないKGF遺伝子がそれぞれ挿入されたpT0191、pT0−CSF、pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IGF2、pT0−KGF及びpT0N−KGFが製作された。これらベクターの発現結果、対照群の場合に比べると、目的タンパク質の大部分が可溶性の活性型で発現された。
【0031】
一方、本願発明の具体的実施で使用された対照群の発現ベクターpTT類は、発現ベクターpET3aのT7プロモータの直後に融合された目的タンパク質の遺伝子(融合パートナー−連結ペプチド−目的タンパク質の遺伝子)が作動可能に連結されたプラスミドであるが、融合された目的タンパク質の遺伝子とβ−ラクタマーゼ遺伝子がそれぞれ異なるプロモータの調節の下に調節されるベクターである。このようなベクターで形質転換された大腸菌は、融合された目的タンパク質を細胞内で過発現させることができるが、融合タンパク質の多くの量が封入体として発現された(実施例2)。別の対照群であるpTR0191は、発現ベクターpT0191でβ−ラクタマーゼ遺伝子を逆方向に転換させた後、T7プロモータの直後に融合されたヒト成長ホルモン遺伝子が作動可能に連結されたプラスミドであって、目的タンパク質とβ−ラクタマーゼ遺伝子が同一プロモータの調節の下に位置していない状態であり、pTR0191を宿主細胞で発現させたとき、大部分の融合タンパク質が封入体として発現され、β−ラクタマーゼは少量発現された(実施例5)。
【0032】
したがって、具体的な一様態として、本願発明は、β−ラクタマーゼを目的タンパク質自体または目的融合タンパク質と同時に過発現させながら目的タンパク質を高い割合の活性型で発現させるために、pTE3a発現ベクターから由来したpT0発現ベクターに融合されたhGH(配列番号5)、G−CSF(配列番号7)、IFN−α2b(配列番号9)、bFGF(配列番号11)、IGF−1(配列番号13)、IGF−2(配列番号15)、KGF(配列番号23)及び融合されていないKGF(配列番号25)をコードする遺伝子がそれぞれ挿入されたポリシストロン発現ベクターpT0191、pT0−CSF、pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IFG1、pT0−IGF2、pT0−KGF及びpT0N−KGFを提供する。特にpT0191及びpT0−IFNをE.coli BL21(DE3)に、pT0−CSFをE.coli BL21 Star(DE3)pLysSにそれぞれ形質転換させ、その形質転換体を2004年3月11日に大田市儒城区魚慇洞52番地に所在の韓国生命工学研究院内KCTC(Korean Collection for Type Cultures)に受託番号KCTC−10610BP、KCTC−10612BP及びKCTC−10611BPでそれぞれ寄託した。
【0033】
本発明のポリシストロン発現ベクターは、CaCl2を使用する化学的方法やエレクトロポレーション(electroporation)などを含む、当業界に公知になっている任意の方法を用いて、宿主細胞内に導入し、宿主細胞を形質転換させることができる。
【0034】
本願発明に使用された用語「形質転換」とは、ポリシストロン発現ベクターの遺伝子が発現されるように原核細胞に導入されることを意味する。
【0035】
融合タンパク質の組み換え核酸配列がその細胞内mRNAに適切に転写され、細胞がタンパク質を発現させることができれば、任意の原核宿主細胞が使用できるが、グラム陰性菌である大腸菌とグラム陽性菌であるバチルス菌などが好ましい。より好ましくは大腸菌、最も好ましくはE.coli BL21(DE3)、E.coli BL21 Star(DE3)pLysS、E.coli HMS(DE3)、E.coli AD494(DE3)などが使用可能である。前記宿主細胞は、バクテリオファージT7RNA重合酵素を持っており、これらの例に局限されない。本願発明で使用したバクテリオファージ由来T7プロモータは、大腸菌RNA重合酵素よりバクテリオファージT7RNA重合酵素によって発現されるのがさらに効率的なので(Studier FW et al. (1990), Method Enzymol. 185, 60-89)、発現ベクターpT0類を、バクテリオファージT7RNA重合酵素を持っているE.coli BL21(DE3)またはE.coli BL21 Star(DE3)pLysSなどに形質転換させて発現させることが好ましい。本願発明のpT0−CSF発現ベクターをE.coli BL21(DE3)、BL21 Star(DE3)pLysS、HMS(DE3)、またはAD494(DE3)に形質転換させる場合、目的融合タンパク質の70%以上を活性型で発現させることができる。
【0036】
したがって、別の様態として、本願発明は、前述したポリシストロン発現ベクターが導入された形質転換体を提供する。具体的例示として、pT0191、pT0−CSF、pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IGF2、pT0−KGFまたはpT0N−KGFで形質転換された大腸菌を含む。
【0037】
本願発明に係る発現ベクターによって形質転換された形質転換体は、目的タンパク質をコードするDNA配列が発現されるように、適切な培地及び条件の下で培養する。形質転換体を培養して組み換えタンパク質を発現させる方法は、当業界に公知になっている。例えば、形質転換体が成長し得る適切な培地に接種して種培養を行った後、これを本培養用培地に接種し、適切な条件で培養することにより、タンパク質の発現を誘導することができる。本培養の際、菌体成長段階と組み換えタンパク質の発現誘導段階を区別して実施することにより、組み換えタンパク質の生産性及び収率を増加させることができる。
【0038】
したがって、別の様態として、本発明は、前述した形質転換体を培養し、培養物から可溶性目的タンパク質を回収する段階を含む、活性型の可溶性タンパク質を生産する方法を提供する。
【0039】
形質転換体を培養して前記培養物から実質的に純粋な目的タンパク質を回収することにより、これを医薬的に使用することができる。組み換えタンパク質の回収は、当業界に公知になっている多様な分離及び精製方法によって達成することができる。通常、細胞残屑(cell debris)などを除去するために、前記細胞溶解物などを遠心分離した後、沈殿、透析、各種カラムクロマトグラフィーなどを適用する。イオン交換クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、HPLC、逆相−HPLC、Preparative SDS−PAGE、親和性カラムなどは、カラムクロマトグラフィーの例である。
【0040】
本願発明に係る可溶性活性型タンパク質の精製は、細胞破砕、遠心分離の後に再折り畳み工程(refolding process)を経なくても、超濾過やイオン交換クロマトグラフィーなどの一般な精製方法によって達成される。これにより、分離して活性型の目的タンパク質を容易に得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0042】
(実施例1:発現ベクターpTT191の構築)
本発明の対照群として、ヒト成長ホルモンを含有した融合タンパク質の大量が封入体として発現されるpTT191を製造した。
【0043】
ヒスチジン−tag及びエンテロキナーゼ認識配列に連結されたヒト成長ホルモン融合タンパク質(配列番号5)を合成するために、PCRライゲーション法(Willem P.C. Stemmer, and Herbert L. Heyneker (1995) Gene 164, 49-53; Scott W. Altmann, and Robert A. Kastelein (1995) Protein Expression and Purification 6, 722-726; Ana Paula de Mattos Areas, and Paulo Lee Ho (2002) Protein Expression and Purification 25, 481-487)を用いて融合ヒト成長ホルモン遺伝子を製造した。PCRライゲーション法は、次のような方法で行った。PCRチューブに、相補的に20個の塩基配列が重なり合った合成オリゴヌクレオチド対をそれぞれ50pmole、pfu重合酵素(Stratagene、米国)2.5U(1μL)、2.5mM dNTPs(Takara、日本)2L、pfu重合酵素緩衝10倍液2μLを順次入れた後、最終体積が20μLとなるように滅菌蒸留水を入れ、その後PCR機械(MJ research、米国)を用いて反応を行った。この際、各オリゴヌクレオチドは、テンプレートであると同時にプライマーとして作用する。PCR反応条件は、94℃で5分間変性させた後、95℃で1分、52℃で30秒、72℃で30秒間反応を20回繰り返し行った後、さらに72℃で10分間反応させた。各産物の末端に相補的な塩基(20bp)配列を有する2種のPCR産物を重合酵素連鎖反応のチューブに5μLずつ投入し、pfu重合酵素(Stratagene、米国)2.5U(1μL)、2.5mM dNTPs(Takara、日本)2μL、pfu重合酵素緩衝10倍液2μLを順次入れた後、最終体積が20μLとなるように滅菌蒸留水を入れ、PCR機械(MJ research、米国)を用いて反応を行った。PCR条件は、94℃で5分間変性させた後、95℃で1分、52℃で30秒、72℃で30秒間反応を20回繰り返し行い、さらに72℃で10分間反応させた。このような反応を繰り返し行い、最終段階のPCR反応は30回行って合成遺伝子を獲得した。合成された遺伝子は1%アガロースゲルに展開してQIAQuick gel extraction kit(Qiagen、米国)を用いて合成遺伝子を分離した。その結果、ヒスチジン−tag(配列番号1)及びエンテロキナーゼ認識配列(配列番号3)を含み、両端に制限酵素NdeIの認識配列を含んでいる融合されたヒト成長ホルモン(ソマトトロピン)遺伝子(配列番号5)を製造した。その後、発現ベクターpTT191は、図1に示すように製造された。合成された融合遺伝子を制限酵素NdeIで処理して1%アガロースゲル電気泳動して分離、精製し、NdeIと牛の小腸アルカリリン酸分解酵素(calf intestine alkine phosphatase、CIAP)(NEB、米国)で処理されたpET3a(Novagen、米国)と混合した。CIAP処理は、NdeIによって切断されたpET3aのセルフライゲーション(self ligation)を防止するために37℃で1時間反応した。融合遺伝子とpET3aの混合物は、T4 DNAリガーゼ(NEB、米国)で16℃で18時間反応させて連結してpTT191を製造した後、E.coli TOP10(Invitrogen、米国)に形質転換した。形質転換体でプラスミドを精製してE.coli BL21(DE3)(Novagen、米国)菌株に形質転換させた。発現ベクターpTT91で形質転換されたE.coli BL21(DE3)形質転換体は、アンピシリン(200g/mL)が含まれたLB平板培地から選別され、E.coli BL21(DE3)/pTT191と命名した。発現ベクターpTT191にヒト成長ホルモンの遺伝子を含んだ融合遺伝子が正しく挿入されたかを制限酵素AlwnI、HindIIIで切断した後、DNA配列分析によって遺伝子配列を確認した。
【0044】
(実施例2:E.coli BL21(DE3)/pTT191形質転換体での融合ヒト成長ホルモンの発現)
対照群である発現ベクターpTT191で形質転換された大腸菌におけるヒト成長ホルモン含有融合タンパク質の発現様相を調査した。
【0045】
発現ベクターpTT191で形質転換されたE.coli BL21(DE3)/pTT191をLB培地(Luria-Bertani medium)で30℃、12時間培養した後、IPTG(Isopropyl-β-D-Thiogalactopyranoside)で融合タンパク質の発現を誘導した。培養の後、遠心分離によって細胞を回収した後、細胞を破砕し、上澄み液を分離して融合タンパク質の発現を確認した。その結果、図2に示すように、ヒト成長ホルモン含有融合タンパク質が予測した約24kDaのサイズと一致したが、大部分は封入体として発現された。
【0046】
(実施例3:発現ベクターpT0191の構築)
ヒト成長ホルモン含有融合タンパク質を大量の可溶性タンパク質として発現するためのpT0191を製造した。
【0047】
融合ヒト成長ホルモンタンパク質をコードする遺伝子をpET3aベクターに挿入するために、pTT191をテンプレートとし、配列の端部に制限酵素NdeIとHindeIII認識部位が含まれるようにPCRを次の条件で行った。重合酵素連鎖反応チューブに、テンプレートとしてのpTT191プラスミド(実施例1)100ng、pfu重合酵素(Stratagene、米国)2.5U(1μL)、プライマーA(5’-AAACATATGGGCCATCATCATCATCATCATCATCATCATCAC−3’、配列番号19)30pmole、プライマーB(5’−AAAAAGCTTTTACTAGAAGCCACAGCTGCC−3’、配列番号20)30pmole、2.5mM dNTPs(Takara、日本)2μL、pfu重合酵素緩衝10倍液2μLを順次入れた後、最終体積が20μLとなるように滅菌蒸留水を入れ、その後PCR機械(MJ research、米国)を用いて反応を行った。反応条件は、94℃で5分間変性させた後、95℃で1分、58℃で30秒、72℃で2分間反応を30回繰り返し行い、さらに72℃で10分間反応させることである。製造された遺伝子を制限酵素NdeIとHindIIIで処理して1%アガロースゲル電気泳動によって分離、精製した。発現ベクターpET3aは、制限酵素NdeIとHindIIIで処理して1%アガロースゲル電気泳動によって4119bpサイズの切片を分離、精製して回収した。制限酵素NdeIとHindIIIでそれぞれ処理した融合遺伝子とpET3a切片をT4 DNAリガーゼで16℃で18時間反応させて連結してpT0191を製造した後、E.coli TOP10に形質転換した(図3)。前記形質転換体でプラスミドを精製してE.coli BL21(DE3)菌株に形質転換させた。発現ベクターpT0191で形質転換されたE.coli BL21(DE3)形質転換体は、アンピシリン200g/mLが含まれているLB平板培地で選別され、E.coli BL21(DE3)/pT0191(KCTC10610BP)と命名した。ヒト成長ホルモンの遺伝子を含んだ融合遺伝子が発現ベクターpT0191に正しく挿入されたかを、制限酵素AlwnI、HindIIIで切断した後、DNA配列分析によって遺伝子配列を確認した。
【0048】
(実施例4:E.coliBL21(DE3)/pT0191形質転換体での融合ヒト成長ホルモンの発現)
発現ベクターpT0191で形質転換された大腸菌におけるヒト成長ホルモン含有融合タンパク質の発現様相を調査した。
【0049】
発現ベクターpT0191で形質転換されたE.coli BL21(DE3)/pT0191をLB培地で30℃、12時間培養した後、IPTGで融合タンパク質の発現を誘導し、ヒト成長ホルモン含有融合タンパク質の発現を確認した。発現された融合タンパク質は、図4に示すように、発現された融合タンパク質の大部分が活性型で発現されて上澄み液に存在し、その大きさは約24kDaであった。E.coli BL21(DE3)/pTT191形質転換体の場合とは異なり、E.coli BL21(DE3)/pT0191形質転換体では、目的とした融合タンパク質と共にβ−ラクタマーゼも過発現されることを確認することができた。N末端の配列分析によって、発現されたβ−ラクタマーゼを確認することができた。
【0050】
(実施例5:発現プラスミドpTR0191の構築及びE.coli BL21(DE3)/pTR0191形質転換体でのヒト成長ホルモンの発現)
実施例3で構築されたpT0191プラスミドをSphI/HindIIIで処理して3812bpサイズの切片を精製して準備し、pT0191プラスミドにおいてβ−ラクタマーゼに該当する遺伝子を、2つのプライマー(プライマー1:5’−AAAAAGCTTAAGGAGATGGCGCCCA−3’(配列番号21)、プライマー2:5’−AAAGCATGCCTAGAAGCCACAGCTG−3’(配列番号22))を用いてPCRによって増幅させ、SphIとHindIII制限酵素の方向が変わった950bpサイズの切片を得て、T4 DNAリガーゼで接合することにより、ヒト成長ホルモンとβ−ラクタマーゼ遺伝子配列の方向が異なるpTR0191プラスミドを製造した(図5)。製造されたプラスミドをE.coli BL21(DE3)に形質転換させて30℃で発現を確認した。図6に示すように、発現された目的タンパク質は、大部分が封入体として発現され、β−ラクタマーゼの発現量は、pT0191の場合に比べて少量であった。
【0051】
(実施例6:発現ベクターpT0−CSFの構築)
ヒト顆粒球コロニー刺激因子を含む融合タンパク質を大量の可溶性タンパク質として発現するためのpT0−CSFを製造した。ヒスチジン−tag及びエンテロキナーゼ認識配列に連結されたヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)融合タンパク質をコードする遺伝子(配列番号7)を、実施例1と同様にPCRライゲーション方法で合成し、実施例3と同様にベクターを構成した(図3)。発現ベクターpT0−CSFで形質転換されたE.coli BL21 Star(DE3)pLysS(Invitrogen、米国)形質転換体をE.coli BL21 Star(DE3)pLysS/pT0-CSF(KCTC10611BP)と命名し、ヒト顆粒球コロニー刺激因子の遺伝子を含んだ融合遺伝子が発現ベクターpT0−CSFに正しく挿入されたかを、制限酵素NdeI、HindIIIで切断した後、DNA配列分析によって遺伝子配列を確認した。
【0052】
(実施例7:E.coli B21 Star(DE3)pLysS/pT0−CSF形質転換体での融合ヒト顆粒球コロニー刺激因子の発現)
発現ベクターpT0−CSFで形質転換された大腸菌におけるヒト顆粒球コロニー刺激因子含有融合タンパク質の発現様相を調査した。
【0053】
発現ベクターpT0−CSFで形質転換されたE.coli B21 Star(DE3)pLysS/pT0−CSFをLB培地で30℃、12時間培養した後、IPTGで融合タンパク質の発現を誘導した。発現された融合タンパク質は、図7に示すように、発現されたヒト顆粒球コロニー刺激因子含有融合タンパク質の大部分が活性型で発現されて上澄み液に存在し、その大きさは約20kDaであった。発現ベクターpT0−CSFで形質転換されたE.coli B21 Star(DE3)pLysS/pT0−CSFにおいても、E.coli BL21(DE3)/pT0191形質転換体の場合と同じように、目的とした融合−ヒト顆粒球コロニー刺激因子と共にβ−ラクタマーゼが過発現された。
【0054】
また、発現ベクターpT0−CSFをE.coli BL21(DE3)(Novagen、米国)、E.coli HMS(DE3)(Novagen、米国)及びE.coli AD494(DE3)(Novagen、米国)に形質転換させて融合−ヒト顆粒球コロニー刺激因子の発現を確認した結果、表1(pT0−CSFの宿主細胞の種類によって融合−ヒト顆粒球コロニー刺激因子の発現様相を比較)に示すように、融合タンパク質の大部分が活性型で発現されることが分かった。
【0055】
【表1】
【0056】
(実施例8:発現ベクターpT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IGF2、pT0−KGF及びpT0N−KGFの構築)
様々な目的タンパク質自体または目的タンパク質を含む融合タンパク質を大量の可溶性タンパク質として発現するためのpT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IGF2、pT0−KGF及びpT0N−KGFを製造した。ヒスチジン−tag及びエンテロキナーゼ認識配列に連結されたインターフェロン−アルファ2b融合タンパク質(配列番号9)、塩基性線維芽細胞成長因子融合タンパク質(配列番号11)、インシュリン様成長因子−1融合タンパク質(配列番号13)、インシュリン様成長因子−2融合タンパク質(配列番号15)、角質細胞成長因子融合タンパク質(配列番号23)、及び融合されていない角質細胞成長因子タンパク質自体(配列番号25)をコードする遺伝子を、実施例1と同様のPCRライゲーション合成方法で製造し、pET3aベクターに融合タンパク質を挿入するためにコード遺伝子の配列の端部に制限酵素NdeI認識部位と制限酵素HindIII認識部位が含まれるようにデザインした。製造された遺伝子を制限酵素NdeIとHindIIIで処理して1%アガロースゲル電気泳動して分離、精製した。発現ベクターPET3aは、制限酵素NdeIとHindIIIで処理して1%アガロースゲル電気泳動によって4119bpサイズの切片を分離、精製して回収した。制限酵素NdeIとHindIIIでそれぞれ処理した融合遺伝子とpET3a切片をT4DNAリガーゼで16℃で18時間反応させて連結してそれぞれ発現ベクターpT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IFG2、pT0−KGF及びpT0N−KGFを製造した後、E.coli TOP10に形質転換した。前記形質転換体でプラスミドを精製してE.coli BL21(DE3)菌株にそれぞれ形質転換させた。それぞれの発現ベクターを制限酵素AlwnI、HindIIIで切断した後、DNA配列分析によって遺伝子配列を確認した。
【0057】
(実施例9:E.coli BL21(DE3)/pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IFG2、pT0−KGF及びpT0N−KGF形質転換体での各目的タンパク質の発現)
発現ベクターpT0−IFN、T0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IFG2、pT0−KGF及びpT0N−KGFそれぞれで形質転換されたそれぞれの大腸菌におけるそれぞれの目的タンパク質の発現様相を調査した。
【0058】
前記発現ベクターで形質転換されたE.coli BL21(DE3)をLB培地で30℃、12時間培養した後、IPTGで各目的タンパク質の発現を誘導した。その結果をそれぞれ図8〜図13に示した。図示の如く、それぞれの発現されたタンパク質は、大部分が上澄み液に存在して可溶性活性タンパク質として発現されるのを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によってβ−ラクタマーゼと目的タンパク質を共に過発現する発現ベクターを提供することにより、原核細胞で発現の際に封入体を形成する外来目的タンパク質を可溶性の活性型で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1はヒト成長ホルモン遺伝子が挿入された発現ベクターPTT191を製造する過程を図式化して示す。
【図2】図2は発現ベクターpTT19をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、ヒト成長ホルモンの発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:ヒト成長ホルモン標準品、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物。)
【図3】図3はそれぞれヒト成長ホルモン遺伝子及びヒト顆粒球コロニー刺激因子遺伝子が挿入された発現ベクターpT0191及びPT0−CSFを製造する過程を図式化して示す。
【図4】図4は発現ベクターpT0191をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、ヒト成長ホルモンの発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:ヒト成長ホルモン標準品、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た全体タンパク質、レイン4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン5:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物。)
【図5】図5はβ−ラクタマーゼが逆方向に置換された発現ベクターにヒト成長ホルモン遺伝子が挿入されたpTR0191を示す。
【図6】図6は発現ベクターpTR0191をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、ヒト成長ホルモンの発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:ヒト成長ホルモン標準品、レイン3及び4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン5及び6:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図7】図7は発現ベクターpT0−CSFをE.coliBL21 Star(DE3)pLysSに形質転換させた後、ヒト顆粒球コロニー成長因子の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導前の形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン3及び4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン5及び6:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物。)
【図8】図8は発現ベクターpT0−IFNをE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、インターフェロン−アルファ2bの発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図9】図9は発現ベクターpT0−bFGFをE.coliBL21(DE3)に形質転換させた後、塩基性線維芽細胞成長因子の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図10】図10は発現ベクターpT0−IGF1をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、インシュリン様成長因子−1の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図11】図11は発現ベクターpT0−IGF2をE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、インシュリン様成長因子−2の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図12】図12は発現ベクターpT0−KGFをE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、角質細胞成長因子の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液。)
【図13】図13は発現ベクターpT0N−KGFをE.coli BL21(DE3)に形質転換させた後、角質細胞成長因子の発現をSDS−PAGEで分析した結果の写真である。(レイン1:タンパク質サイズマーカー、レイン2:発現誘導前の形質転換体全体、レイン3:発現誘導した形質転換体を破砕して得た上澄み液、レイン4:発現誘導した形質転換体を破砕して得た沈殿物。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的タンパク質とβ−ラクタマーゼがそれぞれ第1シストロンと第2シストロンでポリシストロンの形で発現されることを特徴とする、原核細胞で活性型の可溶性目的タンパク質を生産する方法。
【請求項2】
前記ポリシストロンが、5’から3’方向に作動可能に連結された、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロン、及び(iii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンを有する組み換えベクターから由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリシストロンが、5’から3’方向に作動可能に連結された、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロン、及び(iii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロンを有する組み換えベクターから由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
目的タンパク質が、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン、塩基性線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子、角質細胞成長因子、エリトロポエチン、トロンボポエチン、ヒト上皮細胞成長因子、血素板誘導成長因子、血管内皮成長因子、神経成長因子、転換成長因子、腫瘍怪死因子、アンギオジェニン、アンギオテンシン、及びインターロイキンよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
目的タンパク質が、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ2b、塩基性線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子−1、インシュリン様成長因子−2、及び角質細胞成長因子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
原核細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
大腸菌が、E.coli BL21(DE3)、E.coli BL21 Star(DE3)pLysS、E.coli HMS(DE3)、及びE.coli AD494(DE3)よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロン、及び(iii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンを持っていることを特徴とする、原核細胞で目的タンパク質を活性型の可溶性タンパク質として発現するためのポリシストロンベクター。
【請求項9】
5’から3’方向に作動可能に連結された、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロン、及び(iii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンを持っていることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
5’から3’方向に作動可能に連結された、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロン、及び(iii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロンを持っていることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項11】
目的タンパク質が、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン、塩基性線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子、角質細胞成長因子、エリトロポエチン、トロンボポエチン、ヒト上皮細胞成長因子、血素板誘導成長因子、血管内皮成長因子、神経成長因子、転換成長因子、腫瘍怪死因子、アンギオジェニン、アンギオテンシン、及びインターロイキンよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項12】
目的タンパク質が、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ2b、塩基性線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子−1、インシュリン様成長因子−2、及び角質細胞成長因子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
プロモータが、T7、tac、trc、lac、lpp、phoA、recA、araBAD、proU、cst−1、tetA、cadA、nar、lpp−lac、starvation promoters、cspA、T7−lac operator、T3−lac operator、T5−lac operator、T4 gene 32、及びnprM−lac operatorよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項14】
プロモータがT7プロモータであることを特徴とする、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
pT0191、pT0−CSF、pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IFG2、pT0−KGF及びpT0N−KFGよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項16】
請求項8に記載の発現ベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項17】
大腸菌である、請求項16に記載の形質転換体。
【請求項18】
請求項17に記載の形質転換体を培養し、培養物から目的タンパク質を回収することを特徴として、活性型の可溶性目的タンパク質を生産する方法。
【請求項1】
目的タンパク質とβ−ラクタマーゼがそれぞれ第1シストロンと第2シストロンでポリシストロンの形で発現されることを特徴とする、原核細胞で活性型の可溶性目的タンパク質を生産する方法。
【請求項2】
前記ポリシストロンが、5’から3’方向に作動可能に連結された、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロン、及び(iii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンを有する組み換えベクターから由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリシストロンが、5’から3’方向に作動可能に連結された、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロン、及び(iii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロンを有する組み換えベクターから由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
目的タンパク質が、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン、塩基性線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子、角質細胞成長因子、エリトロポエチン、トロンボポエチン、ヒト上皮細胞成長因子、血素板誘導成長因子、血管内皮成長因子、神経成長因子、転換成長因子、腫瘍怪死因子、アンギオジェニン、アンギオテンシン、及びインターロイキンよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
目的タンパク質が、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ2b、塩基性線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子−1、インシュリン様成長因子−2、及び角質細胞成長因子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
原核細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
大腸菌が、E.coli BL21(DE3)、E.coli BL21 Star(DE3)pLysS、E.coli HMS(DE3)、及びE.coli AD494(DE3)よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロン、及び(iii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンを持っていることを特徴とする、原核細胞で目的タンパク質を活性型の可溶性タンパク質として発現するためのポリシストロンベクター。
【請求項9】
5’から3’方向に作動可能に連結された、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロン、及び(iii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロンを持っていることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
5’から3’方向に作動可能に連結された、(i)原核細胞で作動可能なプロモータ、(ii)β−ラクタマーゼをコードするDNA配列を含む第2シストロン、及び(iii)目的タンパク質をコードするDNA配列を含む第1シストロンを持っていることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項11】
目的タンパク質が、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン、塩基性線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子、角質細胞成長因子、エリトロポエチン、トロンボポエチン、ヒト上皮細胞成長因子、血素板誘導成長因子、血管内皮成長因子、神経成長因子、転換成長因子、腫瘍怪死因子、アンギオジェニン、アンギオテンシン、及びインターロイキンよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項12】
目的タンパク質が、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロン−アルファ2b、塩基性線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子−1、インシュリン様成長因子−2、及び角質細胞成長因子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
プロモータが、T7、tac、trc、lac、lpp、phoA、recA、araBAD、proU、cst−1、tetA、cadA、nar、lpp−lac、starvation promoters、cspA、T7−lac operator、T3−lac operator、T5−lac operator、T4 gene 32、及びnprM−lac operatorよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項14】
プロモータがT7プロモータであることを特徴とする、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
pT0191、pT0−CSF、pT0−IFN、pT0−bFGF、pT0−IGF1、pT0−IFG2、pT0−KGF及びpT0N−KFGよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のベクター。
【請求項16】
請求項8に記載の発現ベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項17】
大腸菌である、請求項16に記載の形質転換体。
【請求項18】
請求項17に記載の形質転換体を培養し、培養物から目的タンパク質を回収することを特徴として、活性型の可溶性目的タンパク質を生産する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−535923(P2007−535923A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511267(P2007−511267)
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001393
【国際公開番号】WO2005/108585
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506122512)デウン カンパニー,リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001393
【国際公開番号】WO2005/108585
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506122512)デウン カンパニー,リミテッド (6)
【Fターム(参考)】
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