説明

原発性嚢胞性線維症欠陥を標的化する薬剤の効力を性質決定するための方法

一般に、原発性嚢胞性線維症欠陥を標的化する薬剤の効力を性質決定するための方法は、この薬剤を投与された被験体のサンプル集団における肺感染の状態における変化を、被験体のコントロールサンプル集団と比較して測定する工程を包含する。この方法において、サンプル集団中の被験体およびコントロールサンプル集団中の被験体は、原発性嚢胞性線維症欠陥を有しかつこの薬剤が投与される前には未感染であり;この方法において、コントロールサンプル集団と比較してサンプル集団における肺感染の存在における有益な変化は、処置効果を示し;そしてこの方法において、この薬剤は、内因性の抗生物活性を有さない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚢胞性線維症治療の臨床的な安全性および効力を実証するための方法に関連する。詳細には、嚢胞性線維症欠陥(cystic fibrosis defect)を標的化する薬剤の効力を、例えば臨床試験評価のために性質決定するための方法が、開示される。
【背景技術】
【0002】
嚢胞性線維症(CF)は、欧州および北米において最も一般的な寿命を縮める遺伝子疾患である。これは、CFTR(嚢胞性線維症膜貫通調節因子)遺伝子の2つの変異体対立遺伝子の遺伝形質によって起こり、そして肺において上皮膜を横切るイオンの変化およびサイトカイン調節の変化をもたらす。CFを有するヒトは、栄養酵素および消化酵素の補充によって管理され得、そして肺において厚い粘液を発達させ得る(これは、粘液線毛輸送機構を損ない、そして吸入した細菌を排除する宿主の能力を損なう)、種々のGI障害を経験し得る。2003年における、CFを有するヒトにおける死亡の90%よりも多くが、肺閉塞、細菌感染および局所的な炎症の周期からもたらされる肺機能の喪失に、直接的もしくは間接的に関連していた可能性がある(非特許文献1)。
【0003】
米国および欧州において、CFにおいて肺機能低下をもたらす厚い粘液および慢性的細菌感染と戦うための2つの商業的な治療が開発され、そして登録されている:ドルナーゼα(rhDNase)(Pulmozyme(登録商標))、およびトブラマイシン吸入溶液(TOBI(登録商標))である。両製品は、予測的な、無作為化した、偽薬コントロールを用いる盲検臨床研究において、肺機能における基線からの変化を、偽薬に対する変化と比較した場合に、CFを有するヒトにおいて有効である(FEV1%として予測された)ことが示された。両製品についての要法効力試験は、中程度〜重度の肺疾患(身長、年齢および性別に基づく予測値の25%と75%との間のFEV)を有する被験体において行われた。CFにおける肺機能の喪失の結果としての死亡の発生数の多さゆえに、ならびに肺機能がCFを有するヒトについての相対的生存の強力な独立した予測因子であることの実証ゆえに、肺機能における変化は、CFにおける臨床試験のエンドポイントとしての生存についての有効な代替であると考えられる。肺機能における変化は、臨床的効力の実証についてのエンドポイントとして、いくつかの有意な欠陥を有する。
【0004】
肺機能試験は、高度な変動性を有し、そして個々の個体の肺機能は、長時間にわたって十分に変動する。予測されるFEVの15%〜20%の集団標準偏差を観察することは、珍しくない。測定された平均値の大きな標準偏差は、研究肢間の処置応答における真の平均差を正確に見積もるために大きな集団サンプルの使用を必要とする(図1)。
【0005】
CFを有する個体は、疾患の進行を通じて肺機能の均一な喪失率を経験するわけではなく、そして個体間にはCF疾患重症度に(従って、肺機能の喪失の速度に)基づく有意な変動性が存在する。この結果、臨床試験の間の個体における肺機能における実質的な変化は、より軽度の疾患を有する被験体における軽度の変化によって希釈され得る。試験する「混合」集団の正味の結果として、低い処置効果が観察される。処置結果における観察される差が研究肢間で低下するので、観察される差が臨床的に有意に増加することを証明するために、サンプルの大きさが必要である(図1)。
【0006】
肺機能試験は、訓練および協調を必要とし、この理由ゆえに、6歳以前の測定は信頼性がないと考えられる。
【0007】
原発性CF欠陥を逆転させることを意図する薬剤の開発(それによってCFの「治癒」を提供すること)に、かなりの努力がなされている。種々のアプローチが、研究中であり、これらとしては、変異体CFTRタンパク質のプロセシングを改善すること、遺伝子治療によって機能的CFTRを提供すること、および代替的上皮イオンチャネルの機能を変えることが、挙げられる。これらの治療は、欠陥の下流の生物学的結果を緩和することよりも基になるCF欠陥を逆転させることを意図するので、これらは、理想的には、有意な疾患の進行が起こる前に投与される、長期的治療である。このことは、このような治療の開発者に対し、大きな挑戦を生み出す。ここで、現在受容されているエンドポイントである肺機能における変化は、有意な疾患進行が起こった後で、最低限の危険性および代償で使用されている。疾患進行の前に投与される治療の安全性および効力の実証は、測定可能な肺疾患を発達させる盲検偽薬コントロール集団を必要とする。このような研究は、測定可能な疾患進行を可能にするために、肢ごとに、そして何年もの間、数百人の被験体を必要とする。
【0008】
鼻電位差(NPD)は、比較的非侵襲性の測定であり、これは、乳児において収集可能であるが、これは、認可のために生き残り可能なエンドポイントの主要な特徴を有さない。NPDは、上皮を横切るイオン移動に直接関連し、そしてNPDにおける変化は、CF欠陥の治療的緩和を実証するために使用され得る(非特許文献2)。年少の児童において、遠位気道の気管支鏡生検において電位差が測定されるNPDの変法が、現在提唱されている(非特許文献3)。不運なことに、個体の電位差が正常値から逸脱する大きさは、その個体のCF肺疾患進行の最終的な重症度を正確に予測しないようであり(非特許文献4)、そして電位差と疾患進行における変化とを相関させるためのアルゴリズムは存在しない。
【0009】
乳児においてそして有意な疾患進行前の肺疾患進行においてデータを得るための方法として、高分解コンピュータートモグラフィー(HRCT)が、提唱されている(非特許文献5;非特許文献6)。肺のHRCTは、より年少の被験体において実施され得、かつ最終的に肺機能の喪失をもたらす解剖学的事象を同定し得るという利益を有するが、HRCTは、エンドポイントとしての肺機能の基本的な制限を克服していない(測定において実質的な変動性が存在し、そして肺疾患はCFを有する乳児の人生の初期には検出可能に発症しない)。さらに、臨床医(または規制者)が、長期間にわたるHRCTグローバルスコアリングにおける初期の変化をCF疾患進行の危険性もしくは生存に外挿し得るデータセットは存在せず、乳児における一連のHRCTは、累積的な放射線曝露に起因する危険性が無くはない。
【非特許文献1】National Patient Registry Annual Data Report(2003)Cystic Fibrosis Foundation,Bethesda,MD
【非特許文献2】Konstanら,Hum.Gene Ther.(2004)15(12):1255−69
【非特許文献3】Daviesら,Am.J.Respir Crit.Care Med.(2005)176:1015−9
【非特許文献4】Fajacら,Thorax.(2004)59(11):971−6
【非特許文献5】Marchantら,Pediatr.Pulmonol.(2001)31(1):24−9
【非特許文献6】Brodyら,J.Pediatr.(2004)145(1):32−8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
治癒可能なCF治療の規制認可のための、効力のエンドポイントとしての肺機能における効果に対する挑戦を考慮し、原発性CF欠陥により直接的に関連する代替的な臨床的エンドポイントが、必要とされる。臨床的なエンドポイントはまた、CFを有する乳児において測定可能であることに加え、理想的には、方法論的に追跡可能であるべきであり(ここで、測定方法は、相対的に曖昧ではなく、そして被験体間で再現可能である)、統計学的に強力であり(ここで、発生数および/または測定値の大きさにおける、CFを有するヒトとCFを有さないヒトとの間の相違は、相対的に小さなサンプルサイズを用いて実証され得る)、臨床的に有効であり(ここで、臨床医は、発生数もしくは測定値の大きさにおける統計学的に有意な変化を、疾患進行の危険性に関して臨床的に意味があるとみなす)、そして機械論的に妥当である(測定されたエンドポイントは、何らかの方法で原発性欠陥に戻って関連付けられる)。本発明は、これらの挑戦に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CFを有するヒトは、低年齢でPseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureusおよびStenotrophomonas maltophiliaのような病原体による肺感染にかかりやすいという以前の観察を利用する。2003年に、米国における2歳未満のCFを有するヒトの約50%は、S.aureus感染を有したと報告され(CFF National Patient Registry)、そして約30%は、P.aeruginosa感染を有したと報告された。これらの日和見感染は、原発性CF欠陥によって引き起こされた、肥厚した粘液および粘液線毛輸送の喪失の結果であると考えられる。
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、原発性嚢胞性線維症欠陥を標的化する薬剤の効力を性質決定するための方法に関連し、この方法は、この薬剤を投与された被験体のサンプル集団における肺感染の存在における変化を、被験体のコントロールサンプル集団と比較して測定する工程を包含する。この方法において、サンプル集団中の被験体およびコントロールサンプル集団中の被験体は、原発性嚢胞性線維症欠陥を有しかつこの薬剤が投与される前には未感染であり;この方法において、コントロールサンプル集団と比較してサンプル集団における肺感染の存在における有益な変化は、処置効果を示し;そしてこの方法において、この薬剤は、内因性の抗生物活性を有さない。
【0013】
1つの局面において、本発明は、原発性嚢胞性線維症欠陥を処置する薬剤の効力をアッセイするかまたは性質決定するための方法に関する。1つの実施形態において、この方法は、所定の時間内での肺疾患の発生数を、被験体のコントロールサンプル集団における所定の時間内での肺感染の発生数と比較して測定する工程;および、サンプル集団における所定の時間内での感染の発生数を、コントロールサンプル集団における所定の時間内での感染の発生数と比較する工程を包含し、ここで、コントロールサンプル集団と比較したサンプル集団における該所定の時間内での感染の発生数の低下は、処置効果を示す。
【0014】
別の実施形態において、この方法は、上記薬剤を投与された被験体のサンプル集団における最初の肺感染までの時間を、被験体のコントロールサンプル集団における最初の肺感染までの時間と比較して計算する工程を包含し、ここで、コントロールサンプル集団と比較したサンプル集団における最初の感染までの時間の延長は、処置効果を示す。最初の感染までの中央値もしくは平均値である時間を使用することが、好ましい。時間中央値に基づく計算が、最も好ましい。
【0015】
サンプル集団中の被験体およびコントロールサンプル集団中の被験体は、原発性嚢胞性線維症欠陥を有する。薬剤は、CFまたはCFの症状を処置するための治療用薬物もしくは組成物を含む。被験体の肺は、この薬剤が投与される前には未感染である。上記方法において使用される薬剤は、内因性抗生活性を有してはならず、その結果、そのような活性が、肺感染の発生数の測定または最初の肺感染までの時間の計算に干渉しない。
【0016】
薬剤の効力を性質決定するための本発明の方法は、例えば、嚢胞性線維症のための処置を調べる臨床試験のような臨床試験における薬剤の効力の評価において有用である。
【0017】
好ましい実施形態において、サンプル集団の被験体およびコントロール集団の被験体は、乳児である。好ましくは、(好ましくは乳児の)サンプル集団は、疾患進行の非存在によって特徴付けられる。疾患進行の非存在は、慢性的呼吸器症状の提示前もしくは気道以上の検出前を意味する。気道以上は、高分解コンピュータートモグラフィーによって決定され得、エアトラッピング(air trapping)および/または気道壁肥厚が挙げられる。従って、好ましい患者集団は、慢性呼吸器症状を有さず、かつ/またはエアトラッピングもしくは気道壁肥厚のような気道異常を有さない、乳児である。1つの実施形態において、無症候性の被験体は、疾患進行を示さないCF患者を示す。
【0018】
好ましくは、コントロールサンプル集団は、偽薬を投与される。
【0019】
別の好ましい実施形態において、所定の時間内における感染の発生数の減少、または最初の感染までの時間中央値が長くなることに起因する処置効果は、有意な処置効果であり、これは、例えば、α=0.05である両側フィッシャーの直接確立検定を用いて測定され得る。
【0020】
1つの実施形態において、上記方法の肺感染は、シュードモナス属、ブドウ球菌属およびステノトロフォモナス属からなる群より選択される少なくとも1種の病原体(例えば、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、またはStenotrophomonas maltophilia)によって引き起こされ得る。
【0021】
好ましい実施形態において、感染の存在もしくは感染の発生数は、細菌のインビトロ培養によって測定されるか、または細菌に対する宿主抗体の定量によって測定される(例えば、被験体から得られた粘液もしくは血清のような流体を用いて測定される)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
1つの局面において、本発明は、薬剤を投与された被験体の1つの集団内での肺感染の存在における変化を、コントロールサンプルと比較して測定することに関する。肺感染の存在における「変化」は、肺感染の存在もしくは非存在に関連する任意の測定可能な変化に関連し得る。例えば、変化は、サンプル集団対コントロール集団における所定の時間内での肺感染の発生数を測定することによって測定され得る。別の局面において、肺感染の存在における変化は、サンプル集団対コントロール集団における最初の肺感染までの時間を計算することを包含し得る。
【0023】
肺感染の状態における「有益な変化」は、主に、コントロールサンプル集団に対して、サンプル集団における肺感染の状態の任意の測定可能な減少に関連する。肺感染の状態は、肺感染の相対的な状態を意味する。例えば、この状態は、肺感染の存在もしくは非存在を意味し得る。状態の有益な変化は、例えば、コントロール集団と比較してサンプル集団における所定の時間内での感染の発生数の低下、またはコントロール集団と比較したサンプル集団の最初の感染までの時間の延長を包含し得る。このような有益な変化は、処置効果を示す。時間の延長は、実時間の延長、時間中央値の延長もしくは時間平均値の延長であり得るが、これらに限定されない。好ましくは、時間中央値が測定される。
【0024】
原発性CF欠陥を標的化しかつ内因性抗生物活性を有さない薬剤の効力を性質決定するための方法は、原発性CF欠陥の臨床的に有意な逆転がCFを有する未感染乳児における日和見感染の発生数を減少させるという仮説を利用する臨床研究において提唱される。感染の発生数もしくは感染の存在は、多くの確認された所定の方法によって測定され得、これらの方法としては、口腔咽頭スワブサンプルのインビトロ培養、気管支肺胞洗浄液のインビトロ培養、または細菌ハプテン(例えば外毒素A、エラスターゼまたはリポ多糖類)に対する被験体血清中の宿主抗体の定量が挙げられる(しかし、これらに限定されない)(Burnsら,J.Infect.Dis.(2001)183(3):444−52;Westら,JAMA(2002)287(22):2958−67)。
【0025】
CFを有する乳児は、一般集団よりも劇的に高い発生数で、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、およびStenotrophomonas maltophiliaを含む病原体による気道の日和見感染に罹りやすく、代表的な発生数は、2歳未満の米国におけるCFを有する乳児において20%〜50%の範囲に及ぶ(病原体に依存する)。(Cystic Fibrosis Foundation,National Patient Registry Annual Data Report(2003)Bethesda,MD(「CFF National Patient Registry」))。乳児コホートの比較的長期間にわたる分析は、2歳までの約50%(アッセイに依存する)、および3歳までの70%(Westら,前出)〜95%を超える(Burnsら,前出)P.aeruginosaによる気道感染(Westら,前出)を示している。乳児におけるP.aeruginosa気道感染は、その後の肺疾患の進行の強力な予測因子である(Demkoら,J.Clin.Epidemiol.(1995)48:1041−1049;Westら,前出;Liら,JAMA(2005)293(5):581−8)。肺機能の喪失が、CFにおける主な死因であるので(CFF National Patient Registry,前出)、臨床試験のエンドポイント(このエンドポイントにおいて、肺病理学における変化は感染の発生数の低下をもたらす)は、臨床医にとって臨床的に意味があることを証明する必要があり、ただしここで、この試験薬剤は、内因性抗生物活性を有さないことが条件である。
【0026】
CFを有する乳児における気道感染の発生数はかなり高いので、統計学的に有意な処置効果は、妥当に小さなサンプルサイズで実証され得る。50%処置効果(すなわち、ここで、感染の発生数は、所定の期間にわたり、処置によって50%減少する)を探索する研究について90%の力を保障するために必要とされるサンプルサイズは、コントロール肢感染発生数の関数として、表1に提供される。
【0027】
(表1 感染発生数の関数としての90%統計的検出力のためのサンプルサイズ)
【0028】
【表1】

例えば、2肢研究について90%の力を得るために必要なサンプルサイズは、感染発生数の処置に関連する30%〜15%の減少が、p=0.05において有意であった(肢あたり144人の被験体)ことを示すことを意図した。
【0029】
規制認可のための最初の感染臨床試験エンドポイントのおそらく最も重要な属性は、「治癒」が意図されるまさにその集団において試験が実施されることである。有利なことに、CFを有する乳児における安全性および効力のデータベースは、市場に出した後のより年長の危険のない被験体に由来する処置利益を乳児に戻した外挿に基づくのではなく、厳格に管理されかつモニタリングされた臨床試験条件の下で開発され得る。
【0030】
市場の考慮はまた、乳児におけるCF治癒をも支持する。例えば、無症候性患者の処置のために認可されたCF薬物の市場の大きさは、中程度〜重度の肺疾患を有する患者の処置のために認可された薬物よりもかなり大きい。これは、薬物製造業者が、比較的健康な被験体において安全かつ有効であることが示されたCF薬物はまた、より進行したCF疾患を有する患者の処置についても考慮されること、そしてこの集団への利益の外挿が逆よりもずっと生じやすいことに、自信を有し得るからである。
【0031】
CF治癒の規制認可についての先例は存在せず、rhDNaseおよびTISの以前の認可のために使用された経路は、商業的に生き残っていないようである。感染までの時間の短縮は、CF治癒の規制認可のための、統計学的に有効でありかつ商業的に生き残り可能な効力エンドポイントであるようである。好ましくは、臨床的/統計学的総意は、気道感染を検出することを基準化するためにどのアッセイが必要であるか(例えば、Burnsら,前出;Westら,前出)についての総意、そしてエンドポイントをさらに確認しそして適正な要法試験の力を与えるために、選択されたアッセイにより測定された標準定期データが収集されなければならないことである。
【0032】
本発明は、現在の臨床エンドポイントを凌ぐ明らかな利益を有する:
(1)臨床試験は、薬物候補についての最終的な標的集団である、CFを有する乳児において実施され得る。このことは、CFの「治癒」としての臨床的効力のずっと直接的な評価を可能にし、そして製品の商品化を容易にする。
(2)CF乳児における肺細菌感染の発生数が相対的に高く、そして効力の試験は継続的測定(例えば肺機能)の集団平均の比較を必要としないので、効力を実証するためのサンプルサイズは、縮小される。
【0033】
乳児を含むサンプル集団もしくはコントロールサンプル集団は、好ましくは、6歳未満であり、より好ましくは3歳未満であり、そして最も好ましくは2歳未満である。2歳未満の乳児は、高リスク群を代表するので、本発明の方法のための好ましい被験体である。
【0034】
1つの局面において、この方法は、所定の時間内での肺感染の発生数を測定する工程を包含する。最適な時間は、コントロール集団における発生数に基づく。好ましくは、所定の時間は、6ヶ月であり、これは、慢性状態のための薬剤の規制のために(例えば、第III相試験において)FDAによって必要とされる最短の時間である。所定のより短い時間(例えば、3ヶ月)が、第II相試験のために使用され得、概念の証明を示し得る。肺感染の発生数が特定の集団において減少する場合、より長期間(例えば、1年以上)が、必要とされ得る。
【0035】
別の局面において、最初の肺感染までの時間中央値が、計算される。本質的に、この計算は、集団において感染が発達する速度を示し、従って、生存分析とみなされ得る。
【0036】
本発明の詳細な説明が、上記に提供された。以下の実施例は、本発明を説明する目的で示されるのであって、本発明の範囲または特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
200人の被験体を1:1の予測様式で無作為化し、膵臓不全、BMIおよびCF合併症(例えば胎便性腸閉塞(muconeum ilieus))の病歴のような公知のリスク因子について平衡化する研究を、提唱する。この研究に、CFの臨床診断(例えば、ピロカルピン汗試験)を有し、スクリーニング時点で細菌感染の事象を有さず、そして法定後見人のインフォームドコンセントを得た2歳未満でなければならない被験体を含める。被験体に、偽薬または活性治療のいずれかを、集団における25%の細菌感染の発生数をもたらすことが予測される所定の時間(例えば、6ヶ月)のスケジュールに従って投与する。被験体および調査者の両方を、処置の実態について目隠しする。研究を通じた間期において、被験体を、以前に確認されたアッセイ技術を用いて細菌感染の存在について評価する。研究の最後に、偽薬群における細菌感染の発生数を、処置肢における感染の発生数と比較する。総意における有意性を、α=0.05での両側フィッシャーの直接確立検定を用いて検定する。25%の感染発生数(すなわち、100人中25人の被験体)が偽薬肢で観察される場合、処置肢における13%(100人中13人の被験体)未満のいかなる感染発生数も、有意な処置効果を示す(図2)。
【0038】
(実施例2)
処置曝露期間が有意に短い(この研究期間にわたって比較可能な未処置集団における正味10%の感染発生数が予測される)ほかは、実施例1に匹敵する研究設計を使用した。各肢ごとに計300人の被験体を処置し、そして最後に細菌感染について評価した。10%(300人中30人)の感染発生数が偽薬肢において観察された場合、処置肢における5.7%(300人中17人の被験体)未満のいかなる感染発生数も、有意な処置効果を示す(表2)。
【0039】
(表2 600人の被験体研究における発生事象の関数としての処置効果の有意性)
【0040】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、臨床試験設計における効果の標準偏差および観察された処置効果を示す。
【図2】図2は、偽薬肢における25%感染の発生数によって1:1無作為化した研究における処置結果の有意性におけるサンプルサイズの効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原発性嚢胞性線維症欠陥を標的化する薬剤の効力を性質決定するための方法であって、該方法は、該薬剤を投与された被験体のサンプル集団における肺感染の状態における変化を、被験体のコントロールサンプル集団と比較して測定する工程を包含し、ここで、該サンプル集団中の該被験体および該コントロールサンプル集団中の該被験体は、該原発性嚢胞性線維症欠陥を有しかつ該薬剤が投与される前には未感染であり;該コントロールサンプル集団と比較して該サンプル集団における肺感染の該状態における有益な変化は、処置効果を示し;そして、該薬剤は、内因性の抗生物活性を有さない、方法。
【請求項2】
前記測定する工程は、
(a)前記薬剤を投与された被験体の前記サンプル集団における所定の時間内での肺感染の発生数を、被験体の前記コントロールサンプル集団における所定の時間内での肺感染の発生数と比較して測定する工程;および
(b)該サンプル集団における所定の時間内での肺感染の該発生数を、該コントロールサンプル集団における所定の時間内での肺感染の該発生数と比較する工程
を包含し、ここで、前記有益な変化は、該コントロールサンプル集団と比較した該サンプル集団における該所定の時間内での感染の発生数の低下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定する工程は、前記薬剤を投与された被験体の前記サンプル集団における最初の肺感染までの時間を、被験体の前記コントロールサンプル集団における最初の肺感染までの時間と比較して計算する工程を包含し、ここで、前記有益な変化は、該コントロールサンプル集団と比較した該サンプル集団における最初の感染までの時間の延長である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体の肺における前記感染の発生数は、細菌のインビトロ培養によって測定されるか、または細菌に対する宿主抗体の定量によって測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記最初の感染までの時間は、時間中央値である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプル集団および前記コントロール集団の前記被験体は、乳児である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記肺感染は、シュードモナス属、ブドウ球菌属およびステノトロフォモナス属からなる群より選択される少なくとも1種の病原体によって引き起こされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記病原体は、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、またはStenotrophomonas maltophiliaである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記処置効果は、有意な処置効果である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記有意な処置効果は、α=0.05である両側フィッシャーの直接確立検定を用いて決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、臨床試験における前記薬剤の効力を評価する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記臨床試験は、嚢胞性線維症のための処置を調べる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コントロールサンプル集団は、偽薬を投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記未感染の被験体は、前記測定工程の前には疾患の進行を有さない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−528032(P2008−528032A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553265(P2007−553265)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/002949
【国際公開番号】WO2006/081429
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(506361100)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】