説明

厨房家具

【課題】 シール性を確保した上で加熱調理器の上面とキャビネットの天板とを面一にし得る厨房家具の提供。
【解決手段】 キャビネットの天板に加熱調理器の本体が挿通される開口が形成され、加熱調理器の上面をキャビネットの天板と面一になるよう、加熱調理器の本体の上側において側方に突出するように周設された被支持部を支持するための支持部が設けられるとともに、支持部で加熱調理器の被支持部を支持した時にその被支持部の側面との間にシール部材が介在できるように開口の中心へ向けて下傾斜する傾斜面が、開口の縁辺部に形成されている厨房家具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所に設置されるシステムキッチン等の厨房家具に関し、特に加熱調理器の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、システムキッチン等の厨房家具には、IH(電磁誘導加熱)クッキングヒータ等の加熱調理器を備えるものがある。加熱調理器は、その外周部をキャビネットの天板に形成された開口の縁に載置するようにしてキャビネットに装着されている。
また、システムキッチン等の厨房家具では、シール性を確保するためにキャビネットの天板と加熱調理器の外周部との間にパッキン(シール部材)を挿入し、パッキンを水平面において挟持させるように構成している。
【特許文献1】特開2007−20697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の厨房家具において、加熱調理器はその外周部をキャビネットの天板に形成された開口の縁に載置するようにしているから、キャビネットの天板と加熱調理器はその外周部との関係として段差が生じている。このように段差が生じていると、鍋等の調理器具を移動させる際に不便であるから、加熱調理器の上面とキャビネットの天板とを面一にすることが考えられる。
【0004】
しかしながら、厨房家具では、シール性を確保するためにキャビネットの天板と加熱調理器の外周部との間にパッキンを挿入しているから、単に加熱調理器の上面とキャビネットの天板とを面一にしただけではシール性が確保できなくなるという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、シール性を確保した上で加熱調理器の上面とキャビネットの天板とを面一にし得る厨房家具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の厨房家具では、キャビネットの天板に加熱調理器の本体が挿通される開口が形成され、加熱調理器の上面をキャビネットの天板と面一になるよう、加熱調理器の本体の上側において側方に突出するように周設された被支持部を支持するための支持部が設けられるとともに、該支持部で加熱調理器の被支持部を支持した時にその被支持部の側面との間にシール部材が介在できるように前記開口の中心へ向けて下傾斜する傾斜面が、前記開口の縁辺部に形成されていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、加熱調理器の本体をキャビネットの天板の開口に挿通させると、傾斜面の上下方向の落下量(落下成分)によって加熱調理器がキャビネットに対して沈み込むようになるから、加熱調理器の上面をキャビネットの天板と面一にすることができ、しかも開口の縁辺部の傾斜面に、シール部材を介して加熱調理器の被支持部を支持するようになる。
また、シール部材が被支持部と傾斜面との間に介在することで、上方からシール部材を目視確認し易くなる。
【0008】
本発明の厨房家具では、金属板からなる天板がキャビネットの上板の上面に敷設され、該上板に天板の傾斜面の下方で開口の中心側に向けて延長した延長部が設けられて、該延長部が被支持部の下面を支持するための支持部とされていることを特徴としている。
【0009】
上記構成において、キャビネットの天板が金属からなることにより傾斜面を一体的に容易に形成することが可能であり、加熱調理器の上面をキャビネットの天板と面一にしつつ、キャビネットの上板に設けた延長部によって加熱調理器の被支持部の下面が確実に支持される。
【0010】
本発明の厨房家具では、支持部の上面は、加熱調理器の被支持部を支持した時にその被支持部の下面との間にシール部材が介在できるように前記開口の中心側へ向けた水平面とされていることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、水平面である支持部の上面に、シール部材を介して加熱調理器の被支持部が安定して支持される。
【0012】
本発明の厨房家具では、天板が金属板から形成されてその傾斜面の下端部に開口を形成すべく水平方向に延長した延長部が形成されて、該延長部が支持部とされていることを特徴としている。
【0013】
キャビネットの天板が金属からなることにより傾斜面および延長部を一体的に容易に形成することが可能であり、延長部によって加熱調理器の被支持部の下面が確実に支持される。
【0014】
本発明の厨房家具では、支持部の上面は、加熱調理器の被支持部を支持した時にその被支持部の下面との間にシール部材が介在できるように延長された水平面とされていることを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、水平面である支持部の上面に、シール部材を介して加熱調理器の被支持部が安定して支持される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の厨房家具によれば、支持部で加熱調理器の被支持部を支持した時にその被支持部の側面との間にシール部材が介在できるように下傾斜する傾斜面を設けているから、加熱調理器の本体をキャビネットの天板の開口に挿通させると、傾斜面の上下方向の落下量(落下成分)によって加熱調理器がキャビネットに対して沈み込むようになって、加熱調理器の上面をキャビネットの天板と面一にすることができ、しかも支持部に加熱調理器の被支持部を支持することができる。
【0017】
加熱調理器の上面がキャビネットの天板と段差なく面一となることで、調理器具等の移動を支障なく行うことができ、使い易くなる。
また、シール部材が被支持部と傾斜面との間に介在することで、上方からシール部材を目視確認し易くなり、シールされていることを明確に知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る厨房家具を、システムキッチンを例として、図面に基づいて説明する。図1はシステムキッチンの上方からの概略斜視図である。
【0019】
システムキッチン1は、台所2に設置されるものである。システムキッチン1は、床面上に設置されたキャビネット3を有している。キャビネット3には、各種形状、構造の複数の引き出し4が引き出し収納自在に設けられている。
【0020】
キャビネット3は、コンロキャビネット5、調理台キャビネット6、シンクキャビネット7が順次並設された構成を有しており、キャビネット3の天板としてのワークトップ10がコンロキャビネット5、調理台キャビネット6、シンクキャビネット7の上部を覆うように取付けられている。
グリル11を備えた加熱調理器としてのコンロ12が、キャビネット3を構成するコンロキャビネット5に組込まれており、加熱調理器としてのコンロ12はIH(電磁誘導加熱)クッキングヒーターを用いたコンロである。
【0021】
図2はコンロキャビネット5部分の断面図である。キャビネット3のワークトップ10は、キャビネット3の上板13の上面13aに敷設されている。キャビネット3の上板(裏打ち材)13は、上板材14および下板材15の二枚重ねの木材板から構成されている。ワークトップ10はステンレスから一体的に形成されている。
【0022】
コンロキャビネット5部分の上板材14および下板材15において、それぞれに平面視して矩形で互いに相対形状の上開口20および下開口21が形成されている。
上開口20の開口面積は下開口21の開口面積に比べて大きく形成されており、これによって上開口20および下開口21の間に、下板材15の下開口21の外周部の上面からなる段付き面22が、上方に露出するよう形成されている。換言すれば、下板材15には上開口20を縮小する方向に水平方向に延長される平面視して矩形フレーム状の延長部23が一体的に形成されており、この延長部23の上面が段付き面22とされている。
【0023】
段付き面22は支持部に相当する部分であり、コンロ12にその本体24の上側において側方に突出するように鍔状に周設された被支持部25を支持するために用いられる。
本体24は、コンロ12における不図示の電気部品を内臓するとともにグリル11を備えた部分で、平面視して矩形をなしている。その平面視をした面積は、下開口21と同等か小さく形成されている。この構成によって、コンロ12の本体24は、下開口21に上下方向に挿通可能となっている。
【0024】
被支持部25の上面25aは鍋等の調理器具26を載置してこれを電磁的に加熱する部分であり、上面25aは水平な平坦面とされており、被支持部25は平面視して矩形に形成されてその平面視をした面積は、上開口20に比べて小さく設定されている。
また、被支持部25の上下方向高さHは、その上面25aが、被支持部25をシール部材27の矩形環部28を介して段付き面22に載置した際に、ワークトップ10の上面10aと実質的に面一となる高さに設定されている。
さらに、被支持部25の側面25bは被支持部25の中心へ向かって縮小するよう傾斜する縮径面とされ、被支持部25の底面25cは水平な平坦面とされている。
【0025】
コンロキャビネット5部分のワークトップ10において、上開口20の内側に中開口31を形成するよう、上開口20の上下中心軸線に向けて下傾斜する傾斜面32を有する傾斜壁33が開口四辺を形成するよう一体的に設けられている。
この傾斜壁33の下端部33aは段付き面22に当接するよう斜め下方に延長されており、その傾斜角度は、被支持部25の側面25bの傾斜角度と同等に設定されている。
【0026】
前記シール部材27は、傾斜面32と被支持部25の側面25bとの間、被支持部25の底面25cと段付き面22との間に介装されるものである。
すなわちシール部材27は、被支持部25の底面25cと段付き面22との間に介装される前記矩形環部28と、この矩形環部28の外端部から斜め上方に傾斜して一体的に設けられて傾斜面32と被支持部25の側面25bとの間に介装される平面視してフレーム状の角錐台部35とから形成されている。矩形環部28の中心には、平面視して下開口21より大きく中開口31より小さい開口36が形成されている。なお、シール部材27は合成ゴム等の弾性材料から形成されている。
【0027】
矩形環部28においてその上面28aが被支持部25の底面25cに接触する面であり、下面28bが段付き面22に接触する面である。角錐台部35において、その外側面35aが傾斜面32に接触する面であり、内側面35bが被支持部25の側面25bに接触する面である。
角錐台部35において、外側面35aと内側面35bとは実質的に平行で、これらは傾斜面32の傾斜と実質的に等しく設定されている。さらに、シール部材27の幅は傾斜面32間の幅と実質的に等しく設定されている。また、シール部材27の上下方向高さは段付き面22からワークトップ10の上面10aまでの高さに比べてわずかに小さく設定されている。
【0028】
図3はシール部材27をコンロキャビネット5に装着する前の断面図、図4はシール部材27をコンロキャビネット5に装着した後の断面図である。
上記構成において、コンロ12をコンロキャビネット5に装着する場合、先ずシール部材27をコンロキャビネット5に装着する。このとき、シール部材27の矩形環部28を段付き面22に載置するようにする。そうすると、シール部材27において、角錐台部35の外側面35aと傾斜面32の傾斜と実質的に等しく設定され、シール部材27の幅は傾斜面32間の幅と実質的に等しく設定されているから、角錐台部35の外側面35aが傾斜面32に密着するようにして、シール部材27は中開口31に対してしっくり嵌る。
【0029】
続いて、コンロ12をその本体24が下開口21を挿通するようにしてコンロ12を上方からコンロキャビネット5に装着するようにする。そうすると、角錐台部35の内側面35bの傾斜と被支持部25の側面25bの傾斜とは実質的に等しく設定されているから、被支持部25の側面25bが角錐台部35の内側面35bに密着するようになる。また、被支持部25の底面25cの外周部が矩形環部28の上面28aに載置され、被支持部25の上面25aは、被支持部25がシール部材27の矩形環部28を介して段付き面22に載置されると、ワークトップ10の上面10aとが実質的に面一となる(図2参照)。
【0030】
そして、角錐台部35の外側面35aが傾斜面32に密着するようにして、シール部材27は中開口31に対してしっくり嵌ることで、被支持部25の側面25bと傾斜面32との間がシール部材27の角錐台部35でシールされる。特に、シール部材27の矩形環部28は、被支持部25からコンロ12の重さの全部または一部の負荷を受けるから圧縮力を受けて潰れ、シール部材27の弾性復元力により高いシール性を確保することができる。
【0031】
また、平面視した際に被支持部25の側面25bと傾斜面32との間に中開口31による隙間が観られ、ここにシール部材27の角錐台部35を観ることが可能であるから、使用者に、シールがなされていることを知らせることができる。
【0032】
また、被支持部25の上面25aとワークトップ10の上面10aとが段差なく実質的に面一となることにより、図5および図6に示すように、鍋や俎板等の調理器具26を、コンロキャビネット5上から調理台キャビネット6上へ、調理台キャビネット6上からコンロキャビネット5上へ、持ち上げることなく、あるいは支障なく移動させることが容易に可能となる。
【0033】
他の実施形態を図7の断面図に基づいて説明する。これはコンロ12の被支持部25をその下方で支持するための支持部を、ワークトップ10の傾斜壁33の下端部33aに、水平方向に向けて開口36の中心側へ延長された支持枠体部40から構成したものである。
【0034】
また、傾斜面32と被支持部25の側面との間にシール部材41を介装させている。図ではシール部材41の断面は三角形状に形成されて、傾斜面32と被支持部25の側面との間の隙間を充填するように構成されている。シール部材41の上面は平坦面である。
【0035】
この構成では、ワークトップ10の支持枠体部40にコンロ12の被支持部25を載置した後に傾斜面32と被支持部25との間にシール部材41を上方から嵌め込むようにすることで組付けることができ、被支持部25が水平方向に向けて延長された支持枠体部40に直接載置されているから、弾性変形するシール部材41の変形量を考慮することなく被支持部25の上面25aとワークトップ10の上面10aとを正確に面一にすることができる。
【0036】
上記何れの実施形態においても、傾斜面32の落とし込み量によって被支持部25の上面25aとワークトップ10の上面10aとを実質的に面一とすることができ、鍋や俎板等の調理器具26を、コンロキャビネット5上から調理台キャビネット6上へ、調理台キャビネット6上からコンロキャビネット5上へ、持ち上げることなく、あるいは支障なく移動させることが容易に可能となり、平面視した際に被支持部25の側面25bと傾斜面32との間にシール部材を観ることが可能であるから、使用者に、シールがなされていることを知らせることができる。
【0037】
上記各実施形態では、裏打ち材の上板材14は木材とし、これにステンレス製のワークトップ10を上に重ねるようにし、ワークトップ10の一部に傾斜面32を一体的に形成した。
しかしながら本願発明はこれに限定されるものではなく、ワークトップ10を省略し、上板材14を大理石等の石材、あるいは合成樹脂から形成し、その開口端部を傾斜させるように形成して傾斜面32を設けるよう構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態を示すシステムキッチンの上方からの概略斜視図
【図2】同じくコンロキャビネット部分の断面図
【図3】同じくシール部材をコンロキャビネットに装着する前の断面図
【図4】同じくシール部材をコンロキャビネットに装着した後の断面図
【図5】同じくコンロキャビネットの使用状態を示す断面図
【図6】同じくコンロキャビネットの使用状態を示す断面図
【図7】別の実施形態を示すコンロキャビネット部分の断面図
【符号の説明】
【0039】
1…システムキッチン、2…台所、3…キャビネット、5…コンロキャビネット、6…調理台キャビネット、7…シンクキャビネット、10…ワークトップ、10a…上面、11…グリル、12…コンロ、13…上板、13a…上面、14…上板材、15…下板材、20…上開口、21…下開口、22…段付き面、23…延長部、24…本体、25…被支持部、25a…上面、25b…側面、25c…底面、26…調理器具、27…シール部材、28…矩形環部、28a…上面、28b…下面、31…中開口、32…傾斜面、33…傾斜壁、33a…下端部、35…角錐台部、35a…外側面、35b…内側面、36…開口、40…支持枠体部、41…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの天板に加熱調理器の本体が挿通される開口が形成され、
加熱調理器の上面をキャビネットの天板と面一になるよう、加熱調理器の本体の上側において側方に突出するように周設された被支持部を支持するための支持部が設けられるとともに、
該支持部で加熱調理器の被支持部を支持した時にその被支持部の側面との間にシール部材が介在できるように前記開口の中心へ向けて下傾斜する傾斜面が、前記開口の縁辺部に形成されていることを特徴とする厨房家具。
【請求項2】
金属板からなる天板がキャビネットの上板の上面に敷設され、該上板に天板の傾斜面の下方で開口の中心側に向けて延長した延長部が設けられて、該延長部が被支持部の下面を支持するための支持部とされていることを特徴とする請求項1記載の厨房家具。
【請求項3】
支持部の上面は、加熱調理器の被支持部を支持した時にその被支持部の下面との間にシール部材が介在できるように前記開口の中心側へ向けた水平面とされていることを特徴とする請求項2記載の厨房家具。
【請求項4】
天板が金属板から形成されてその傾斜面の下端部に開口を形成すべく水平方向に延長した延長部が形成されて、該延長部が支持部とされていることを特徴とする請求項1記載の厨房家具。
【請求項5】
支持部の上面は、加熱調理器の被支持部を支持した時にその被支持部の下面との間にシール部材が介在できるように延長された水平面とされていることを特徴とする請求項4記載の厨房家具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate