説明

双ループアンテナ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、2基のループアンテナを組み合わせて成り、特に自動車に設置するに適した双ループアンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車電話等の各種放送通信波を自動車内で送受信するためにアンテナ装置が必要であり、従来多く用いられているポールアンテナは車体から突出して配設されるとともに、送受信性能の特性が十分に好ましいものであるといえず、この点を改良するために、アンテナ線を巻回して形成したループアンテナが自動車用アンテナとして用いられており、ループアンテナが指向性を有するために、電波を効率的に検出することのできる車体とループアンテナの位置する平面とが形成する角度である最適検出角度に設置することが困難であり、この問題を解決するために複数のループアンテナを組み合わせて成る自動車用アンテナ装置が知られている。
【0003】例えば特開昭61−128609号公報に記載されているものは、車体に取付けられ、車体に対向して開口が形成されている静電シールドケースと、アンテナ線を巻回した複数のループから成り、シールドケース開口に近接対向して静電シールドケース内に設けられたループアンテナとを備え、ループアンテナを構成する各ループをシールドケース開口側の辺を中心として扇状に拡開配置しており、車体に対する静電シールドケースの取付角度の如何にかかわらず、ループアンテナを構成する複数のループのうちの少なくとも1本のループが、放送波により車体に誘起される電波の最適検出角度に位置することになって、電波を効率的に検出することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のループアンテナを用いた自動車用アンテナ装置においては、指向性、周波数特性、電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio ;以下、VSWRという)から成るアンテナの特性について、所望の特性を備えた形状、大きさ等の設計を行うことが困難であった。例えば、アンテナの指向性については、通常の送受信特に受信の際には無指向性の方が望ましく、また、広い帯域特性を備える即ち広い周波数帯域においてVSWRが低くなることが望ましいものであり、このような特性を備えた自動車用アンテナ装置を得ることが困難で、特にこの様な特性を備えるとともに小型化することは難しいという問題があった。
【0005】本発明の目的は、アンテナ線を巻回して成るループを2基備えて成る双ループアンテナにおいて、指向性、周波数特性、電圧定在波比等について所望の特性を備えるとともに、小型化することのできる双ループアンテナを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の双ループアンテナは、ウィンドガラスにプリント配線され、アンテナ線を巻回して成るループを2基接続して成る双ループアンテナにおいて、各ループを二等辺三角形に形成して互いの頂角部分において対向させて一対の平行な短辺部で接続し、該二等辺三角形の底辺部に折り返し部を形成して、上下/左右対称形状の双ループアンテナを形成するとともに、双ループアンテナの上下/左右対称中心位置である一対の短辺の中央位置にそれぞれ給電点を設け、折り返し部を給電点から同一距離の位置に各々設けるとともに、該折り返し部は外端部と一対の平行な脚辺部とから成り、上下/左右対称形状に形成したもので、この折り返し部は片方のループの二等辺三角形の底辺部に複数設けても良いものであり、アンテナの指向性、或いは電圧定在波比(VSWR)を決定して、双ループアンテナの特性を決定するものであり、指向性を無指向化することができ、広い周波数帯域においてVSWRを低くする即ち広い帯域特性を備えることができるとともに、小型化を促進することができる。
【0007】
【実施例】図1において、双ループアンテナの構成について説明すると、双ループアンテナはアンテナ線を巻回して形成された2基のループ1,2を接続して成り、自動車のウィンドガラスにプリント配線されて設置されている。
【0008】ループ1(2)は全て直線部から形成されており、互いに長さが等しい斜辺部11、12(21, 22)と、中央で分割された底辺部13, 14 (23, 24) とから成る頂角αで、斜辺部11、12(21, 22)の頂点側端が開いた二等辺三角形に形成され、底辺部13, 14 (23, 24) の中央の分割位置に二等辺三角形の外方に突出する折り返し部10 (20) が設けられ、この折り返し部10 (20) は互いに平行な脚辺部15, 16(25, 26) と、脚辺部15, 16 (25, 26) の外端を連結する外端部17 (27)とから成るコ字形に形成されており、脚辺部15, 16 (25, 26) の間の距離w(w>0)と、脚辺部15, 16 (25, 26) の長さdとはループ1(2)の全長を所定値とした範囲で設定するもので、無指向性にする効果を奏するものである。
【0009】ループ1と2は二等辺三角形の頂点側で接続されており、斜辺部11と21、12と22の頂点側端がそれぞれ長さの等しい短辺部18, 19で接続され、短辺部18, 19の中央に給電点がそれぞれ設けられて正(+)側給電端子と負(−)側給電端子が接続されており、両給電点間の距離の大小に応じて帯域特性が変動するものである。
【0010】ループ1と2の位置関係は、二等辺三角形の頂点が重なる位置、即ちループ1の斜辺部11とループ2の斜辺部22、ループ1の斜辺部12とループ2の斜辺部21とがそれぞれ同一直線上にあり、その交点即ちループ1と2の両二等辺三角形の頂点が給電点A,Bを結ぶ直線上にある状態を基準としており、ループ1と2の両二等辺三角形の頂点が離れてその間に距離を生じると、底辺部13, 14と23, 24に平行な方向(通常は前後方向)に指向性を生ずる。
【0011】また、ループ1,2の線径dにより目標周波数帯域が変動するもので、目的に合致した周波数帯域幅を容易に設定することができる。
【0012】なお、ループ1(2)の頂角αは、小さくすると底辺部13, 14(23, 24)に平行な方向(通常は前後方向)に指向性を生じ、大きくすると無指向性になる傾向を有しており、また、頂角αが変化すると、各周波数における利得が変化し、各周波数におけるVSWRが変化する。
【0013】さらに、給電点Aから給電点Bまでのループ1(2)の中心線の距離の総計である片側ループ全長Lの長さによって各周波数における全方位の利得が変化し、最も必要性の高い周波数である目標周波数を設定することができる。
【0014】図2に示す比較例は、アンテナ線を巻回して二等辺三角形に形成された2基のループa,bは二等辺三角形の頂点側で接続されており、斜辺部a1とa2、b1とb2の頂点側端がそれぞれ長さの等しい短辺部c, dで接続され、該短辺部c, dの中央に給電点がそれぞれ設けられて正(+)側給電端子と負(−)側給電端子が接続され、斜辺部a1とa2、b1とb2の拡開側端が底辺部a3、b3で連結されている。
【0015】二等辺三角形の底辺部13, 14(23, 24)に折り返し部10 (20) が設けられた上記本発明の実施例と、ループの二等辺三角形の底辺部に折り返し部が設けられていない上記比較例とを比較すると、図3に 880MHZ における指向性即ち各方位における利得を、図4に 920MHZ における指向性を示されており、実施例は曲線Iで、比較例は曲線IIで示され、明らかに実施例(曲線I)の方が指向性が無い即ち各方位における利得が高いものである。
【0016】また、図5においては、横軸を周波数、縦軸を平均利得と最小利得との差としており、実施例は曲線III で、比較例は曲線IVで示されており、広い周波数範囲にわたって平均利得と最小利得との差が曲線III (実施例)が曲線IV(比較例)を下回っていることが示されており、平均利得と最小利得との差は零に近い方が安定したアンテナ利得を得ることができるものであるから、実施例が広い周波数帯域においてVSWRが低くなる即ち広い帯域特性を備えることができることを示している。
【0017】上記実施例においては、底辺部に設けられた折り返し部が二等辺三角形の頂点と反対側即ち外側に位置しているが、折り返し部を二等辺三角形の頂点側即ち内側に設けても同等の効果を得られるものであり、アンテナ装置を一層小型化することができる。
【0018】また、折り返し部を片側のループの二等辺三角形の底辺部に複数設けることにより、アンテナ装置の小型化を促進することができる。さらに、折り返し部をコ字形ではなく、横向きのV字形に形成しても良く、上下非対称としても良いものである。
【0019】
【発明の効果】本発明は上述のとおり構成されているから、以下に述べるとおりの効果を奏する。アンテナ線を巻回して成るループを2基備えた双ループアンテナにおいて、二等辺三角形の底辺部に折り返し部を形成したもので、この折り返し部は片方のループの二等辺三角形の底辺部に複数設けても良いものであり、アンテナの指向性やVSWRを決定して、双ループアンテナの特性を決定するものであり、指向性を無指向化することができ、広い周波数帯域においてVSWRを低くする即ち広い帯域特性を備えることができるとともに、小型化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である双ループアンテナの概略平面図である。
【図2】折り返し部を備えていない比較例の双ループアンテナの概略平面図である。
【図3】実施例と比較例との各方位における特性図である(周波数 880MHZ )。
【図4】実施例と比較例との各方位における特性図である(周波数 920MHZ )。
【図5】実施例と比較例との各周波数における特性図である。
【符号の説明】
1,2 (片側)ループ
11, 12, 21, 22 斜辺部
13, 14, 23, 24 底辺部
10, 20 折り返し部
α 頂角

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アンテナ線を巻回して成るループを2基接続して成る双ループアンテナにおいて、各ループを二等辺三角形に形成して互いの頂角部分において対向させて一対の平行な短辺部で接続し、該二等辺三角形の底辺部に折り返し部を形成して、上下/左右対称形状の双ループアンテナを形成するとともに、双ループアンテナの上下/左右対称中心位置である一対の短辺の中央位置にそれぞれ給電点を設け、折り返し部を給電点から同一距離の位置に各々設けるとともに、該折り返し部は外端部と一対の平行な脚辺部とから成り、上下/左右対称形状に形成したことを特徴とする双ループアンテナ。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3217818号(P3217818)
【登録日】平成13年8月3日(2001.8.3)
【発行日】平成13年10月15日(2001.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−278385
【出願日】平成3年9月30日(1991.9.30)
【公開番号】特開平6−97715
【公開日】平成6年4月8日(1994.4.8)
【審査請求日】平成10年7月27日(1998.7.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−138803(JP,A)
【文献】実開 平3−2712(JP,U)