説明

双方向性アンテナ

【課題】 携帯電話,自動車電話その他の移動体通信において、制限された領域内の通信に好適に使用できること。
【解決手段】 円状に形成した導波管リングMRと、該導波管リングMRの略中央位置付近に取り付けられ,且つ前記導波管リングMR内に突出するプローブPとからなること。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話,自動車電話その他の移動体通信において、制限された領域内の通信に好適に使用できる双方向性アンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、通信技術の発達と、移動体通信端末(携帯電話端末,PHS端末,自動車電話端末,業務用通信端末,船舶無線端末,航空無線端末その他の非固定局又は移動可能な通信端末をいう。以下同じ。)の爆発的な普及により、多様な場面で移動体端末が利用されている。
【0003】とりわけ、徒歩中や,電車内,自動車内、トンネル内等から通信を行う機会が激増しているが、通信中に移動すると、通信が途絶えたり強制切断されることがある。即ち、比較的直線部分の長い道路上等にて自動車等に搭乗した状態で、その道路等を、基地局近傍を通過するようにして移動する。すると、ある所で、通信に使用中の基地局アンテナの指向特性エリア内(通信に必要な電界強度を得られるビームパターン内)から、自己の移動体通信端末が圏外となることが顕著にある。移動により、通信に必要な電界強度を得ることができるエリアから外れてしまったり、道路等の近傍の高層建築物の壁面による反射波の干渉を受けて電界強度が弱まる位置に偶然遭遇したりするからである。
【0004】その原因の一つに、基地局やトンネル内で使用されているアンテナ(空中線)の多くが、いわゆる垂直ダイポール型,ヘリカルロッド型,スコーン型,同軸ケーブルからの漏れ電磁波によるアンテナその他の無指向性アンテナであることが挙げられる。良好な双方向の指向特性を備えたアンテナが存在しないからである。
【0005】また、上述のような移動体通信に限らず、業務用無線,PHS,警察無線等であっても、道路や路線脇に設置されているアンテナの殆ども無指向性であることが多い。アンテナの構造が簡単で、受風面積も小さく、低いコストで、大量のアンテナを設置できるからである。
【0006】ところで、移動体の通信に関して、移動体通信事業者の交換設備の機能によっていわゆるテイクオーバー(ハンドオーバー)処理が行われている。異なる基地局のゾーン間を連続的に移動するような移動体通信であっても、通信を切断することなく通信の連続性を保証する処理であるが、同一基地局のエリア内で移動しながら通信する場合は、テイクオーバー等の処理は意味がない。したがって、依然、上述のような、移動体通信における電界強度の変化に起因した通信断等の問題が存在している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、同一基地局エリア内で通信端末が一定経路に沿って移動するような移動体通信において、移動体通信端末と好適に電磁波を送信又は受信することができるアンテナの登場が待望されている。特に、従来の無指向性アンテナの種々のコスト(設置コスト,製造コスト,維持コスト等)と比較しても十分に代替可能であるような新規なアンテナの登場が待望されている。
【0008】そこで発明者は、鋭意研究を重ねた結果、その発明を、円状に形成した導波管リングと、該導波管リングの略中央位置付近に取り付けられ,且つ前記導波管リング内に突出するプローブとからなる双方向性アンテナ等としたことで、極めて簡易な構造であって、且つビームパターンの決定も容易で、製造やメンテナンスも格段に容易となるので、同一基地局エリア内で通信端末が一定経路に沿って移動するような移動体通信においても、移動体通信端末と好適に電磁波を送信又は受信することができ、特に、従来の無指向性アンテナの種々のコストと比較しても十分に代替可能とすることができ、上記課題を解決したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の一形態について説明する。図1は、本発明の双方向性アンテナの第1実施形態に係る構成外略図である。本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナは、主に、円状に形成した導波管リングMRと、該導波管リングMRの略中央位置付近に取り付けられ,且つ前記導波管リングMR内に突出するプローブPとから構成される。
【0010】前記導波管リングMRは、2方向(z方向)に開口部A(第1開口部A1及び第2開口部A2:いずれが第1であっても第2であってもよい)を有する、円形状に形成した導波管である(図1参照)。その形状は、理想的には真円とするが、製造上生じ得るわずかな歪みを含んでいてもほぼ円形状であれば差し支えない。
【0011】説明の便宜のため、3次元座標において前記導波管リングMRの中心位置を原点Oと符合させる。半径をa1(即ち直径が2a1)と,幅をdと,前記原点Oからの任意の距離rだけ離れた自由空間の一点を点Prと,z軸と線分OPrとがなす角をΘと,前記点Prからxy平面上に垂直に下ろした点Pr´が前記原点Oと結ぶ線分を線分OPr´と,該線分OPr´がx軸となす角をΦとする。前記半径a1と前記幅dとは、優先TE11モードで動作する標準的な円形導波管と同様にして求めることができる。しかし、前記幅dが小さい場合は、前記プローブPに近い開口部Aにおける振幅は複数のモードから構成され、前記プローブP付近の高位モードのエバネッセント波はかなり大きいレベルを有する。
【0012】前記プローブPは、前記導波管リングMRの略中央位置付近(正確に中央位置であってもよいし、その近傍であってもよい。以下同じ。)に取り付けられ,且つ前記導波管リングMR内に突出するようにして設けられる(図1参照)。具体的には、同軸ケーブルCCの図示しないアース線(網線等)が前記導波管リングMRに接続される。また、前記同軸ケーブルCCの図示しない芯線は、BNC型コネクタ,N型コネクタ等の整合特性が良好なメスコネクタCNに接続される。そのメスコネクタCNには、前記同軸ケーブルCCの芯線に対応するように適切な長さの銅線(実質的な前記プローブPとしての銅線)を接続する。
【0013】これにより、前記同軸ケーブルCCの芯線は、電磁波を前記導波管リングMR内に放射するためのプローブPとして実質的に機能する。該プローブPは、送信のためだけでなく、電磁波を受信するためにも使用される。そして、前記導波管リングMRの略中央位置付近に取り付けられる構成とする。
【0014】図2は、発信源(前記プローブP)からの距離の関数として前記導波管リングMR内における3つの最下位モードでの相対振幅のグラフである。発信源からの距離が0.075λ(TE11カットオフ周波数の1.03における動作周波数)であるとき、高位モードであるTE01及びTE21モードは優先モードの電力のおよそ1/16となり、高位モードの電力は無視できることになる。
【0015】図3は、動作周波数がTE11カットオフ周波数の1.03におけるE平面内〔図3(A)〕及びH平面内〔図3(B)〕の、放射パターンの理論値と実験値とに係るグラフである。これより、双方向に指向特性を得られたことがわかる。また、前記導波管リングMRの幅dが長くなる程、ビーム幅が広くなるが、幅dが0.15λ以下の場合はビーム幅は狭くならない。
【0016】図4は、前記導波管リングMRの幅dの関数としての指向特性を示す。これにより、最高6.9dBiの指向特性を得られる最適な幅dは、該幅dが(TE11カットオフ周波数の1.03における動作周波数としての)0.15λであることがわかる。前記幅dの寸法は、TE11基本モードが伝播できるように選択される。図5は、TE11モードカットオフ周波数における動作周波数と、前記導波管リングMRの幅(d/λ)との間の相関を示す。
【0017】図6乃至図8は、導波管リングMRの幅dと半径a1とを様々に変化させた場合の放射パターングラフである。幅dを概ね0.7λ以上にすると、ビームパターンは徐々にスプリットビームとなる。図6は前記半径a1=0.3019λときの各平面内ビームパターンを示す。図7はWC451導波管を適用した場合であって前記半径a1=0.3461λとしたときの各平面内ビームパターンを示す。図8はWC528導波管を適用した場合であって前記半径a1=0.4262λとしたときの各平面内ビームパターンを示す。
【0018】例えば、図6(A)は本発明の第1実施形態の双方向性アンテナの放射パターンを解析的に求めたE平面内のパターングラフである(後述する第2実施形態にも適用できる)が、これより、前記導波管リングMRの幅dを変化させることにより、ビームパターン特性も変化することがわかる。
【0019】ここで、本発明の双方向性アンテナの特性を特に良好とするために、前記導波管リングMRの外径の半径a1は、好ましくは前記プローブPに入射させる(又は前記プローブPを励振させる)入射波のおよそ0.25乃至0.35波長の長さと、より理想的には0.3乃至0.31波長の長さと、最も理想的には0.3019波長の長さとする。
【0020】また、前記導波管リングMRの幅dは、入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さと、より理想的には0.13波長乃至0.17波長の長さと、最も理想的には0.15波長の長さとする。
【0021】更に、前記プローブPの長さLは、入射波のおよそ0.2乃至0.3波長の長さと、より理想的には0.24波長乃至0.25波長の長さと、最も理想的には0.248波長の長さとして、前記導波管リングMR内に突出させる構成とする。
【0022】図9(A)は、このようにして本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナANT1から実際に電磁波を放射して実験したときの、E平面内におけるビームパターンを示す。また、図9(B)は同様にH平面内のビームパターンを示す。具体的には、半径a1=4.75cm,幅d=2.36cm,プローブPの長さL=3.93cm,プローブPの直径1mm,動作周波数f=1906.55MHzとしたときのビームパターンである。
【0023】前記幅dを増加させるとビームパターンを鋭くさせることができる。即ち、ある定点における電界強度だけを考えれば、その定点で受信した電磁波の電界強度(又は受信電力)は、従来のアンテナから放射された電磁波のときよりも、格段に強いものとすることができ、良好に通信状態を維持することができる。また、理論値と実験値とが非常に高い精度でほぼ一致していることから、設計・製造が極めて容易で、ビームパターンを確実に良好とすることができる。
【0024】このような第1実施形態の双方向性アンテナを、実際に高速道路の側壁上に設置し、ビームパターンが高速道路の延伸方向と平行となるようにした〔図10R>0(A)参照〕。このときの、前記プローブPから一定距離離れた測定点A,B,C,D,E及びFにおける、受信電界強度の測定結果を図10(B)に示す。
【0025】この実験結果より、本実施形態に係る双方向性アンテナによって2.15dBiの利得を得ることができる距離は、他の単方向性アンテナを用いた場合と比較して、約2倍となり、極めて優れた利得を得ることができる。
【0026】次に、本発明の第2の実施形態に係る方形状の双方向性アンテナの構造について説明する(図11参照)。本発明の第2実施形態に係る双方向性アンテナは、主に、方形状に形成した導波管(方形状導波管MT)と、該方形状導波管MTの略中央位置付近に取り付けられ,且つ前記方形状導波管MT内に突出するプローブPとから構成される。
【0027】前記方形状導波管MTは、2方向(x方向)に開口部を有する、方形状に形成した導波管である(図11参照)。説明の便宜のため、3次元座標において前記方形状導波管MTの中心位置を原点Oと符合させる。縦の長さ(長手方向の長さ)をa2と,横の長さ(開口部長手方向の長さ)をbと、幅の長さ(開口部短辺の長さ)をcと,前記原点Oからの任意の距離rだけ離れた自由空間の一点を点Qrと,z軸と線分OQとがなす角をΘと,前記点Qrからxy平面上に垂直に下ろした点Qr´が前記原点Oと結ぶ線分を線分OQr´と,該線分OQr´がx軸となす角をΦとする。
【0028】前記プローブPは、前記方形状導波管MTの長手方向側面における略中央位置付近に,且つ前記方形状導波管MT内に突出するようにして設けられる(図1111参照)。具体的には、第1実施形態の場合と同様に、N型コネクタ等のコネクタCNにて接続される。該プローブPは、送信のためだけでなく、電磁波を受信するためにも使用される。これを基本モードにて励振させると、前記方形状導波管MTの開口部A(第3開口部A3及び第4開口部A4)から電磁波を放射(受信)することができる。
【0029】ここで、前記方形状導波管MTの縦の長さ(長手方向の長さ)a2は、好ましくは入射波のおよそ0.6乃至0.8波長の長さと、より理想的には0.65乃至0.75波長の長さと、最も理想的には0.69波長の長さとする。
【0030】更に、前記方形状導波管MTの横の長さ(開口部長手方向の長さ)bは、好ましくは入射波のおよそ0.3乃至0.4波長の長さと、より理想的には0.33波長乃至0.37波長の長さと、最も理想的には0.35波長の長さとする。
【0031】また、前記方形状導波管MTの幅の長さ(開口部短辺の長さ)cは、好ましくは入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さと、より理想的には0.13波長乃至0.17波長の長さと、最も理想的には0.15波長の長さとする。
【0032】そして、前記プローブPの長さLは、入射波のおよそ0.2乃至0.3波長の長さと、より理想的には0.25波長乃至0.3波長の長さと、最も理想的には0.28波長の長さとして、前記方形状導波管MT内に突出させる構成とする。
【0033】図12(A)は、このようにして本発明の第2実施形態に係る双方向性アンテナから実際に電磁波を放射して実験したときの、E平面内におけるビームパターンを示す。また、図12(B)は同様にH平面内のビームパターンを示す。具体的には、前記方形状導波管MTの幅cを、0.075λ,0.1λ,0.15λとしたときのそれぞれのビームパターンであり、a2=10.92cm,横の長さb=5.46cm,幅c=2.37cm,プローブPの長さL=4.41cmとした。
【0034】これより、幅cを増加させるとビームパターンを鋭くさせることができる。即ち、ある定点における電界強度だけを考えれば、その定点で受信した電磁波の電界強度(又は受信電力)は、従来のアンテナから放射された電磁波のときよりも、格段に強いものとすることができ、良好に通信状態を維持することができる。また、理論値と実験値とは、非常に高い精度でほぼ一致していることから、設計・製造が極めて容易で、ビームパターンを確実に良好とすることができる。
【0035】
【発明の効果】請求項1の発明では、円状に形成した導波管リングMRと、該導波管リングMRの略中央位置付近に取り付けられ,且つ前記導波管リングMR内に突出するプローブPとからなる双方向性アンテナとしたことにより、簡易な構成であって,且つ優れた指向特性をもつ双方向性アンテナとすることができる結果、同一基地局エリア内で通信端末が一定経路に沿って移動するような移動体通信においても、移動体通信端末と好適に電磁波を送信又は受信することができるという画期的な効果を奏する。
【0036】具体的には、導波管を円形状に形成した導波管リングMRと、前記導波管リングMR内に突出するプローブPとからなる簡易な構成により、動作周波数(動作波長)を決定すれば、そのプローブPや,前記導波管リングMRの好適な寸法を決定することができる。したがって、従来の無指向性アンテナの種々のコスト(設置コスト,製造コスト,維持コスト等)と比較しても十分に代替可能である。
【0037】また、前記プローブPは、該導波管リングMRの略中央位置付近に取り付けられる構成である。これにより、前記プローブPは前記導波管リングMRとほぼ同一平面内に収まる厚さ数cm程度の平坦なアンテナとすることができる。したがって、受風面積も極めて小さく、軽量で、野外に設置しても倒壊したり吹き飛ばされたりすることがなく、設置コスト、製造コスト、維持コスト等を確実に低減させることができるという優れた利点もある。
【0038】このような本発明の双方向性アンテナは、前述の実験結果からも明らかなように、優れた双方向性指向特性を有するので、道路(高速道路,一般道路),作業構内,倉庫その他の制限された領域内で使用するアンテナとして極めて適している。例えば、2.15dBiの利得を得られる距離について比較すると、従来の単方向性アンテナのときと比べて、本発明の双方向性アンテナでは約2倍の距離となる。したがって、安定して通信できるアンテナからの距離を、従来よりも2倍遠い距離まで拡張することができるという画期的な効果を奏する。
【0039】次に、請求項2の発明では、請求項1記載において、前記プローブPは入射波のおよそ0.2乃至0.3波長の長さだけ前記導波管リングMR内に突出してなる双方向性アンテナとしたことにより、請求項1の発明による極めて優れた効果及び利点に加えて、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。即ち、前記プローブPの最適な長さは、入射波のおよそ0.2乃至0.3波長分であることが実験結果から判明した結果、前記プローブPを入射波のおよそ0.2乃至0.3波長の長さだけ前記導波管リングMR内に突出した構成としたことにより、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。
【0040】次に、請求項3の発明では、請求項1又は2記載において、前記導波管リングMRの幅を入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さとした双方向性アンテナとしたことにより、請求項1又は2の発明による極めて優れた効果及び利点に加えて、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。即ち、前記導波管リングMRの最適な幅が、入射波のおよそ0.1乃至0.2波長であることが実験結果から判明した結果、前記導波管リングMRの幅を入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さとした構成としたことにより、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。
【0041】次に、請求項4の発明では、請求項1,2又は3記載において、前記導波管リングMRの外径の半径を入射波のおよそ0.25乃至0.35波長の長さとした双方向性アンテナとしたことにより、請求項1,2又は3の発明による極めて優れた効果及び利点に加えて、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。即ち、前記導波管リングMRの外径の最適な半径が、入射波のおよそ0.25乃至0.35波長の長さであることが実験結果から判明した結果、前記導波管リングMRの外径の半径を入射波のおよそ0.25乃至0.35波長の長さとした構成としたことにより、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。
【0042】次に、請求項5の発明では、方形状導波管MTと、該方形状導波管MTの長手方向側面の略中央位置付近に取り付けられ,且つ前記方形状導波管MT内に突出するプローブPとからなる双方向性アンテナとしたことにより、簡易な構成であって,且つ優れた指向特性をもつ双方向性アンテナとすることができる結果、同一基地局エリア内で通信端末が一定経路に沿って移動するような移動体通信においても、移動体通信端末と好適に電磁波を送信又は受信することができるという画期的な効果を奏する。
【0043】具体的には、方形状導波管MTと、該方形状導波管MT内に突出するプローブPとからなる簡易な構成により、動作周波数(動作波長)を決定すれば、そのプローブPや,前記方形状導波管MTの好適な寸法を決定することができる。したがって、従来の無指向性アンテナの種々のコスト(設置コスト,製造コスト,維持コスト等)と比較しても十分に代替可能である。
【0044】また、前記プローブPは、該方形状導波管MTの略中央位置付近に取り付けられる構成である。これにより、前記プローブPは前記方形状導波管MT内に収まる厚さ数cm程度の平坦なアンテナとすることができる。したがって、受風面積も極めて小さく、軽量で、野外に設置しても倒壊したり吹き飛ばされたりすることがなく、設置コスト、製造コスト、維持コスト等を確実に低減させることができるという優れた利点もある。
【0045】このような本発明の双方向性アンテナは、前述の実験結果からも明らかなように、優れた双方向性指向特性を有するので、道路(高速道路,一般道路),作業構内,倉庫その他の制限された領域内で使用するアンテナとして極めて適している。例えば、2.15dBiの利得を得られる距離について比較すると、従来の単方向性アンテナのときと比べて、本発明の双方向性アンテナでは約2倍の距離となる。したがって、安定して通信できるアンテナからの距離を、従来よりも2倍遠い距離まで拡張することができるという画期的な効果を奏する。
【0046】次に、請求項6の発明では、請求項5記載において、前記プローブPは入射波のおよそ0.2乃至0.3波長の長さだけ前記方形状導波管MT内に突出してなる双方向性アンテナとしたことにより、請求項5の発明による極めて優れた効果及び利点に加えて、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。即ち、前記プローブPの最適な長さは、入射波のおよそ0.2乃至0.3波長分であることが実験結果から判明した結果、前記プローブPは入射波のおよそ0.2乃至0.3波長の長さだけ前記方形状導波管MT内に突出した構成としたことにより、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。
【0047】次に、請求項7の発明では、請求項5又は6記載において、前記方形状導波管MTの幅cを入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さとした双方向性アンテナとしたことにより、請求項5又は6の発明による極めて優れた効果及び利点に加えて、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。即ち、前記方形状導波管MTの最適な幅cが、入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さであることが実験結果から判明した結果、前記方形状導波管MTの幅cを入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さとした構成としたことにより、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。
【0048】請求項8の発明では、請求項5,6又は7記載において、前記方形状導波管MTの長手方向の長さa2を入射波のおよそ0.6乃至0.8波長の長さと,且つ前記方形状導波管MTの開口部長手方向bの長さを入射波のおよそ0.3乃至0.4波長の長さとした双方向性アンテナとしたことにより、請求項5,6又は7の発明による極めて優れた効果及び利点に加えて、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。即ち、前記方形状導波管MTの長手方向の最適な長さa2が入射波のおよそ0.6乃至0.8波長の長さと,且つ前記方形状導波管MTの開口部長手方向bの最適な長さが入射波のおよそ0.3乃至0.4波長の長さであることが、実験結果から判明した結果、前記方形状導波管MTの長手方向の長さa2を入射波のおよそ0.6乃至0.8波長の長さと,且つ前記方形状導波管MTの開口部長手方向bの長さを入射波のおよそ0.3乃至0.4波長の長さとした構成としたことにより、更にビームパターンを良好な特性とすることができるという優れた利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの構成概略図
【図2】本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの相対振幅グラフ
【図3】(A)は動作周波数がTE11カットオフ周波数の1.03におけるE平面内の放射パターンの理論値と実験値とを示すグラフ
(B)は動作周波数がTE11カットオフ周波数の1.03におけるH平面内の放射パターンの理論値と実験値とを示すグラフ
【図4】本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの幅dの関数としての指向特性グラフ
【図5】本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの、TE11モードカットオフ周波数における動作周波数と導波管リングの幅との間の相関グラフ
【図6】(A)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの幅を様々に変化させた場合の放射パターングラフ
(B)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの幅を様々に変化させた場合の放射パターングラフ
【図7】(A)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの幅を様々に変化させた場合の放射パターングラフ
(B)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの幅を様々に変化させた場合の放射パターングラフ
【図8】(A)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの幅を様々に変化させた場合の放射パターングラフ
(B)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナの幅を様々に変化させた場合の放射パターングラフ
【図9】(A)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナから実際に電磁波を放射して実験したときの、E平面内におけるビームパターングラフ
(B)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナから実際に電磁波を放射して実験したときの、H平面内におけるビームパターングラフ
【図10】(A)は本発明の第1実施形態に係る双方向性アンテナを高速道路に設置して実験した場合のビームパターンを示す概略図
(B)は(A)の実験による測定結果の概略図
【図11】本発明の第2の実施形態に係る双方向性アンテナの構成概略図
【図12】(A)は本発明の第2実施形態に係る双方向性アンテナから電磁波を放射して実験したときの、E平面内におけるビームパターングラフ
(B)は本発明の第2実施形態に係る双方向性アンテナから電磁波を放射して実験したときの、H平面内におけるビームパターングラフ
【符号の説明】
1…導波管リングの外径の半径
2…方形状導波管の長手方向の長さ
b…方形状導波管の開口部長手方向
c…方形状導波管の幅
d…導波管リングの幅
R…導波管リング
T…方形状導波管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 円状に形成した導波管リングと、該導波管リングの略中央位置付近に取り付けられ,且つ前記導波管リング内に突出するプローブとからなることを特徴とする双方向性アンテナ。
【請求項2】 請求項1記載において、前記プローブは入射波のおよそ0.2乃至0.3波長の長さだけ前記導波管リング内に突出してなることを特徴とする双方向性アンテナ。
【請求項3】 請求項1又は2記載において、前記導波管リングの幅を入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さとしたことを特徴とする双方向性アンテナ。
【請求項4】 請求項1,2又は3記載において、前記導波管リングの外径の半径を入射波のおよそ0.25乃至0.35波長の長さとしたことを特徴とする双方向性アンテナ。
【請求項5】 方形状導波管と、該方形状導波管の長手方向側面の略中央位置付近に取り付けられ,且つ前記方形状導波管内に突出するプローブとからなる特徴とする双方向性アンテナ。
【請求項6】 請求項5記載において、前記プローブは入射波のおよそ0.2乃至0.3波長の長さだけ前記方形状導波管内に突出してなることを特徴とする双方向性アンテナ。
【請求項7】 請求項5又は6記載において、前記方形状導波管の幅を入射波のおよそ0.1乃至0.2波長の長さとしたことを特徴とする双方向性アンテナ。
【請求項8】 請求項5,6又は7記載において、前記方形状導波管の長手方向の長さを入射波のおよそ0.6乃至0.8波長の長さと,且つ前記方形状導波管の開口部長手方向の長さを入射波のおよそ0.3乃至0.4波長の長さとしたことを特徴とする双方向性アンテナ。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【公開番号】特開2001−313517(P2001−313517A)
【公開日】平成13年11月9日(2001.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−130097(P2000−130097)
【出願日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】